Wolstenholmeの定理

同義語:ウォルステンホルムの定理Wolstenholme's theorem

概要

Wolstenholmeの定理(Wolstenholme's theorem)とは、$5$ 以上の素数 $p$ について、$1$ から $p-1$ までの逆数の和 $1+\frac12+\dots+\frac1{p-1}$ を既約分数にしたときの分子が $p^2$ で割り切れる、という定理である。同値な形として、二項係数について $\binom{2p-1}{p-1}\equiv1\pmod{p^3}$ が成り立つ。証明は、項 $k$ と $p-k$ を組にして $p$ を一つくくり出し、残りを $p$ を法とする平方の逆数の和に帰着させるもので、$1,\dots,p-1$ を根にもつ多項式の係数を調べる方法もある。$p=3$ では成り立たず、法を $p^3$(逆数の和)や $p^4$(二項係数)に上げても一般には成り立たない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 合同式, Fermatの小定理, 二項係数, 合同式の割り算と逆元

素数 $p$ について $1$ から $p-1$ までの逆数の和を計算すると、
$$ 1+\frac12+\frac13+\frac14=\frac{25}{12},\qquad 1+\frac12+\dots+\frac16=\frac{49}{20},\qquad 1+\frac12+\dots+\frac1{10}=\frac{7381}{2520}=\frac{11^2\cdot61}{2520} $$
となり、既約分数にしたときの分子がそれぞれ $5^2$、$7^2$、$11^2$ で割り切れている。分子が $p$ で割り切れることは、和の項 $k$ と $p-k$ を組にすればすぐ分かるが、$p^2$ で割り切れるのは偶然ではない。Wolstenholme の定理 は、$p\ge5$ のすべての素数でこれが成り立つことを主張する。同じ定理は、二項係数 $\binom{2p-1}{p-1}$ を $p^3$ で割った余りが $1$ であるという形でも述べられる。
この記事では、分母が $p$ で割り切れない分数の合同式を準備したうえで、Wolstenholme の定理を逆数の和と二項係数の両方の形で証明し(thm-wol-main)、$p$ を法とする多項式の恒等式を使う別証明も与える。$p\ge5$ という条件が必要なこと、法を $p^3$ や $p^4$ に上げると一般には成り立たないことも、反例で確かめる。

分数の合同式

逆数の和を合同式で扱うため、分母が $p$ と互いに素な分数の合同を定める。

分母が $p$ と互いに素な分数の合同

$p$ を素数とし、既約分数で表したとき分母が $p$ で割り切れない有理数の全体を $\mathbb Z_{(p)}$ と書く。$r,s\in\mathbb Z_{(p)}$ と整数 $k\ge1$ について、$r-s=p^kc$ となる $c\in\mathbb Z_{(p)}$ があるとき、$r\equiv s\pmod{p^k}$ と書く。

$r=a/b$($p\nmid b$)について $r\equiv0\pmod{p^k}$ は、$a$ が $p^k$ で割り切れることと同値である。特に、逆数の和の「分子が $p^2$ で割り切れる」は「和が $p^2$ を法として $0$ と合同」と言い換えられる。

分数の合同式の計算規則

$p$ を素数、$k\ge1$ とする。

  1. $\mathbb Z_{(p)}$ は足し算・引き算・掛け算で閉じており、$p\nmid a$ となる $a/b\in\mathbb Z_{(p)}$ の逆数 $b/a$ も $\mathbb Z_{(p)}$ に入る。
  2. $\equiv\pmod{p^k}$ は同値関係で、足し算と掛け算と両立する。整数どうしについては通常の合同式と一致する。
  3. $r\equiv s\pmod{p^k}$ で、$r,s$ がどちらも $\mathbb Z_{(p)}$ の中に逆数をもつなら、$1/r\equiv1/s\pmod{p^k}$ である。
  4. $p\nmid b$ のとき、$bb'\equiv1\pmod{p^k}$ を満たす整数 $b'$ について $a/b\equiv ab'\pmod{p^k}$ である。
分母を払う

1:$a/b\pm c/d=(ad\pm bc)/(bd)$、$(a/b)(c/d)=ac/(bd)$ で、$p\nmid b,d$ なら $p\nmid bd$ である。約分しても分母は $bd$ の約数なので $p$ で割り切れない。逆数については、$a/b$ を既約分数とすると $b/a$ も既約で、$p\nmid a$ だから $b/a\in\mathbb Z_{(p)}$ である。
2:反射律・対称律は $0=p^k\cdot0$、$s-r=p^k(-c)$ から、推移律は $r-s=p^kc$、$s-t=p^kc'$ を足して $r-t=p^k(c+c')$ から従う(1 により $c+c'\in\mathbb Z_{(p)}$)。$r\equiv s$、$r'\equiv s'$ なら $(r+r')-(s+s')=p^k(c+c')$、$rr'-ss'=r(r'-s')+s'(r-s)=p^k(rc'+s'c)$ である。整数 $m,n$ について $m-n=p^kc$($c=u/v$、$p\nmid v$)なら $v(m-n)=p^ku$ で、$p\nmid v$ なので $p^k\mid m-n$ である。逆は $c\in\mathbb Z$ ととればよい。
3:$1/r-1/s=(s-r)\cdot\frac1{rs}$ で、$\frac1{rs}=\frac1r\cdot\frac1s\in\mathbb Z_{(p)}$ なので、$s-r=p^k(-c)$ から $1/r-1/s=p^k\bigl(-c/(rs)\bigr)$ である。
4:$a/b-ab'=a(1-bb')/b$ で、$1-bb'$ は $p^k$ の倍数、$1/b\in\mathbb Z_{(p)}$ なので、$p^k$ を法として $0$ と合同である。$\square$

4 により、分数の合同式は、分母の逆元(合同式の割り算と逆元)を使った整数の合同式と同じことである。

定理

平方の逆数の和

$p\ge5$ を素数とすると
$$ \sum_{k=1}^{p-1}\frac1{k^2}\equiv0\pmod p $$
である。

逆数をとる写像は並べ替え

$1\le k\le p-1$ に対し、$kk'\equiv1\pmod p$ を満たす $1\le k'\le p-1$ がただ一つあり、$k\mapsto k'$ は $\{1,\dots,p-1\}$ の並べ替えである($k'$ の逆元は $k$ だから全単射)。prop-wol-rational-rules の 4 と 2 により $1/k^2\equiv k'^2\pmod p$ なので、
$$ \sum_{k=1}^{p-1}\frac1{k^2}\equiv\sum_{k=1}^{p-1}k'^2=\sum_{j=1}^{p-1}j^2=\frac{(p-1)p(2p-1)}6\pmod p $$
である。右辺は平方の和なので整数であり、$(p-1)p(2p-1)$ は $6$ で割り切れる。$p\ge5$ なので $\gcd(p,6)=1$ であり、$(p-1)(2p-1)$ が $6$ で割り切れる。よって右辺は $p\cdot\frac{(p-1)(2p-1)}6$ と書けて $p$ の倍数である。$\square$

$p=3$ では $1+\frac14=\frac54$ で、$\frac{(p-1)p(2p-1)}6=5$ は $3$ の倍数にならない。$6$ で割る操作が $p=3$ で $p$ の因子を消してしまうからである。

Wolstenholme の定理

$p\ge5$ を素数とすると、次が成り立つ。
$$ \text{(1)}\quad\sum_{k=1}^{p-1}\frac1k\equiv0\pmod{p^2},\qquad\text{(2)}\quad\binom{2p-1}{p-1}\equiv1\pmod{p^3}. $$
(2) は $\binom{2p}p\equiv2\pmod{p^3}$ とも書ける。また $p=3$ を含む $p\ge3$ のすべての素数について、$\binom{2p-1}{p-1}\equiv1\pmod{p^2}$ が成り立つ。

項を $k$ と $p-k$ で組にする
  1. の証明:$p$ は奇数なので、$k$ と $p-k$($1\le k\le(p-1)/2$)を組にすると
    $$ \sum_{k=1}^{p-1}\frac1k=\sum_{k=1}^{(p-1)/2}\Bigl(\frac1k+\frac1{p-k}\Bigr)=p\sum_{k=1}^{(p-1)/2}\frac1{k(p-k)} $$
    である。したがって $S:=\sum_{k=1}^{(p-1)/2}\frac1{k(p-k)}\equiv0\pmod p$ を示せばよい($S\in\mathbb Z_{(p)}$ なので、$S=pc$ から和は $p^2c$ になる)。$k(p-k)=pk-k^2\equiv-k^2\pmod p$ で、両辺とも $p$ で割り切れない整数なので、prop-wol-rational-rules の 3 により $\frac1{k(p-k)}\equiv-\frac1{k^2}\pmod p$ である。よって
    $$ S\equiv-\sum_{k=1}^{(p-1)/2}\frac1{k^2}\pmod p $$
    である。一方、$(p-k)^2\equiv k^2\pmod p$ から同様に $\frac1{(p-k)^2}\equiv\frac1{k^2}$ なので、
    $$ \sum_{k=1}^{p-1}\frac1{k^2}=\sum_{k=1}^{(p-1)/2}\Bigl(\frac1{k^2}+\frac1{(p-k)^2}\Bigr)\equiv2\sum_{k=1}^{(p-1)/2}\frac1{k^2}\pmod p $$
    である。左辺は lem-wol-inverse-squares により $p$ を法として $0$ と合同であり、$2$ は $p$ を法として逆数をもつので、$\sum_{k=1}^{(p-1)/2}\frac1{k^2}\equiv0$、したがって $S\equiv0\pmod p$ である。
  2. の証明:
    $$ \binom{2p-1}{p-1}=\frac{(p+1)(p+2)\cdots(p+p-1)}{1\cdot2\cdots(p-1)}=\prod_{k=1}^{p-1}\Bigl(1+\frac pk\Bigr) $$
    である。$e_j$ を $\frac11,\frac12,\dots,\frac1{p-1}$ の $j$ 次の基本対称式($j$ 個の異なる数の積の和、$e_0=1$)とすると、右辺を展開して
    $$ \binom{2p-1}{p-1}=1+pe_1+p^2e_2+\sum_{j=3}^{p-1}p^je_j $$
    である。各 $e_j$ は $\mathbb Z_{(p)}$ に入る(prop-wol-rational-rules の 1)ので、$j\ge3$ の項は $p^3$ を法として $0$ と合同である。$e_1=\sum1/k$ は (1) により $p^2$ を法として $0$ と合同なので、$pe_1\equiv0\pmod{p^3}$ である。$e_2$ については、展開 $e_1^2=\sum_k\frac1{k^2}+2e_2$ から
    $$ e_2=\frac12\Bigl(e_1^2-\sum_{k=1}^{p-1}\frac1{k^2}\Bigr) $$
    で、$e_1\equiv0$ と lem-wol-inverse-squares により括弧の中は $p$ を法として $0$ と合同、$\frac12\in\mathbb Z_{(p)}$ なので $e_2\equiv0\pmod p$、よって $p^2e_2\equiv0\pmod{p^3}$ である。以上から $\binom{2p-1}{p-1}\equiv1\pmod{p^3}$ であり、両辺は整数なので通常の合同式として成り立つ(prop-wol-rational-rules の 2)。$\binom{2p}p=\frac{2p}p\binom{2p-1}{p-1}=2\binom{2p-1}{p-1}$ なので、$\binom{2p}p\equiv2\pmod{p^3}$ でもある。
    $p^2$ を法とする主張:$p\ge3$ なら、上の組にする式から $e_1=pS$ で $S\in\mathbb Z_{(p)}$ なので $pe_1\equiv0\pmod{p^2}$、また $p^je_j\equiv0\pmod{p^2}$($j\ge2$)である。よって $\binom{2p-1}{p-1}\equiv1\pmod{p^2}$ である。$\square$

逆数の和の形は HW60 §7.8、Theorem 115(p. 88)で、同書は分母の逆元を使った形(Theorem 116、p. 89)との同値性も示している。これは prop-wol-rational-rules の 4 にあたる。同書の注(p. 93)によれば、定理は Wolstenholme の 1862 年の論文による。

小さい素数での確認

$p=5$:$\sum_{k=1}^4\frac1k=\frac{25}{12}$、$\binom94=126=1+125$。$p=7$:$\sum_{k=1}^6\frac1k=\frac{49}{20}$、$\binom{13}6=1716=1+5\cdot343$。$p=11$:分子 $7381=11^2\cdot61$、$\binom{21}{10}=352716=1+265\cdot1331$。$p=13$:分子 $86021=13^2\cdot509$。平方の逆数の和は $p=5$ で $\frac{205}{144}$($205=5\cdot41$)、$p=7$ で $\frac{5369}{3600}$($5369=7\cdot767$)であり、lem-wol-inverse-squares のとおり分子が $p$ で割り切れる。

別証明:$p$ を法とする多項式の恒等式

主定理 (1) は、$1,2,\dots,p-1$ を根にもつ多項式の係数を調べる方法でも示せる。同じ多項式の定数項からは Wilsonの定理 も得られる。

多項式 $(x-1)(x-2)\cdots(x-p+1)$ の係数

$p$ を奇素数とし、整数 $A_1,\dots,A_{p-1}$ を
$$ (x-1)(x-2)\cdots(x-p+1)=x^{p-1}-A_1x^{p-2}+A_2x^{p-3}-\dots+A_{p-1} $$
で定める($A_i$ は $1,\dots,p-1$ から異なる $i$ 個を選んだ積の和)。このとき $1\le i\le p-2$ について $p\mid A_i$ であり、$A_{p-1}=(p-1)!\equiv-1\pmod p$ である。

$x^{p-1}-1$ の係数と比べる

Wilsonの定理 の記事の証明「多項式の因数分解による証明」で示されているとおり、多項式として
$$ (x-1)(x-2)\cdots(x-p+1)\equiv x^{p-1}-1\pmod p $$
が成り立つ(両辺の差は $p-2$ 次以下で、Fermatの小定理 により $1,\dots,p-1$ を法 $p$ の根にもつので、体 $\mathbb Z/p\mathbb Z$ 上の多項式として $0$ になる)。係数を比べると、$x^{p-1-i}$($1\le i\le p-2$)の係数から $\pm A_i\equiv0$、定数項から $A_{p-1}\equiv-1\pmod p$ を得る。$p-1$ は偶数なので定数項の符号は $+$ である。$\square$

定数項の比較 $(p-1)!\equiv-1\pmod p$ が Wilson の定理である(HW60 §7.5、Theorems 112・113、p. 86)。この補題を使って、thm-wol-main の (1) をもう一度証明する。

多項式に $x=p$ を代入する

$p\ge5$ とする。lem-wol-polynomial の等式に $x=p$ を代入すると、左辺は $(p-1)!=A_{p-1}$ なので
$$ 0=p^{p-1}-A_1p^{p-2}+A_2p^{p-3}-\dots+A_{p-3}p^2-A_{p-2}p $$
となる($p-1$ が偶数なので $A_i$ の項の符号は $(-1)^i$)。両辺を $p$ で割って
$$ A_{p-2}=p^{p-2}-A_1p^{p-3}+\dots+A_{p-3}p $$
を得る。$p\ge5$ なので $p-2\ge3$ で $p^{p-2}$ は $p^2$ の倍数であり、$1\le i\le p-3$ の項 $A_ip^{p-2-i}$ は $p\mid A_i$ と $p-2-i\ge1$ から $p^2$ の倍数である。よって $p^2\mid A_{p-2}$ である。一方 $A_{p-2}$ は $1,\dots,p-1$ から $1$ 個を除いた積の和なので $A_{p-2}=(p-1)!\sum_{k=1}^{p-1}\frac1k$ である。$(p-1)!$ は $p$ と互いに素なので、$\sum_{k=1}^{p-1}\frac1k=A_{p-2}/(p-1)!\equiv0\pmod{p^2}$ である。$\square$

この証明は HW60 §7.8(p. 90)による。同じ係数から lem-wol-inverse-squares も得られる。$\sum_k\frac1{k^2}=e_1^2-2e_2$ で、$e_1=A_{p-2}/(p-1)!$、$e_2=A_{p-3}/(p-1)!$ はどちらも $p$ を法として $0$ と合同だからである(HW60 Theorem 117、p. 90 は $p>3$ でこの和の分子が $p$ で割り切れることを述べる)。

直感

逆数の和が $p$ で割り切れることは、$\frac1k+\frac1{p-k}=\frac p{k(p-k)}$ という組み合わせから一目で分かる。Wolstenholme の定理は、この組の残り $\frac1{k(p-k)}$ の和がもう一度 $p$ で割り切れることを主張しており、それは $p$ を法として $\frac1{k(p-k)}\equiv-\frac1{k^2}$ と平方の和に化けることによる。$1$ から $p-1$ までの平方の和は $\frac{(p-1)p(2p-1)}6$ で、$p\ge5$ では $6$ が $p$ と互いに素なので $p$ の因子が残る。二項係数の形は、$\binom{2p-1}{p-1}=\prod(1+p/k)$ を $p$ の冪で展開したとき、$p$ と $p^2$ の係数が、それぞれ逆数の和と、逆数の和と平方の逆数の和の組み合わせになっていることから従う。つまり定理の 2 つの形は、同じ 2 つの合同式(lem-wol-inverse-squares と主定理 (1))から出てくる。

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
$p\ge5$$p=3$$\sum_{k< p}1/k\equiv0\pmod{p^2}$、$\binom{2p-1}{p-1}\equiv1\pmod{p^3}$
$p\ge5$(lem-wol-inverse-squares)$p=3$$\sum_{k< p}1/k^2\equiv0\pmod p$
$p$ が素数$n=4$、$n=9$$\binom{2n-1}{n-1}\equiv1\pmod{n^2}$
法 $p^2$ を $p^3$ に上げる$p=5$、$p=7$$\sum_{k< p}1/k\equiv0\pmod{p^3}$
法 $p^3$ を $p^4$ に上げる$p=5$$\binom{2p-1}{p-1}\equiv1\pmod{p^4}$
反例の確認

1 行目:$p=3$ で $1+\frac12=\frac32$ の分子 $3$ は $9$ で割り切れず、$\binom52=10\not\equiv1\pmod{27}$ である。ただし $10\equiv1\pmod9$ で、thm-wol-main の最後の主張($p^2$ を法とする形)は $p=3$ でも成り立っている。2 行目:$1+\frac14=\frac54$ の分子 $5$ は $3$ で割り切れない。3 行目:$n=4$ では $\binom73=35$ で $35-1=34$ は $16$ で割り切れず、$n=9$ では $\binom{17}8=24310$ で $24310-1=24309=81\cdot300+9$ は $81$ で割り切れない。逆数の和も、$n=4$ で $\frac{11}6$、$n=9$ で $\frac{761}{280}$ と分子が $n$ で割り切れない。4 行目:$\frac{25}{12}$、$\frac{49}{20}$ の分子は $p^2$ ちょうどで、$p^3$ では割り切れない。5 行目:$\binom94=126$ で $126-1=125$ は $5^4=625$ で割り切れない。

補足

$p^4$ を法としても成り立つ素数

$\binom{2p-1}{p-1}\equiv1\pmod{p^4}$ が成り立つ素数 $p$ は非常にまれで、$p=16843$ と $p=2124679$ で成り立つ(計算で確かめられる)。$5\le p<20000$ の素数でこれを満たすのは $16843$ だけである(同じく計算による)。

合成数との区別

thm-wol-main の (2) は素数の性質なので、$\binom{2n-1}{n-1}\equiv1\pmod{n^3}$ を満たす合成数 $n$ があるかが問題になる。$n<3000$ の合成数を調べると、$n^3$ どころか $n^2$ を法としても $\binom{2n-1}{n-1}\equiv1$ を満たすものはない(計算で確かめられる)。擬素数 が Fermat の小定理を満たす合成数であったのと対照的に、小さい範囲ではこの合同式を満たす合成数は現れない。

高い冪の逆数の和

lem-wol-inverse-squares の証明は、$p-1$ で割り切れない $m\ge1$ について $\sum_{k=1}^{p-1}\frac1{k^m}\equiv\sum_{k=1}^{p-1}k^m\equiv0\pmod p$ に一般化できる。$g$ を法 $p$ の 原始根 とすると $\sum_{k=1}^{p-1}k^m\equiv\sum_{j=0}^{p-2}g^{jm}$ で、$g^m\not\equiv1$ なので等比数列の和の公式 $(g^{m(p-1)}-1)/(g^m-1)$ の分子が $p$ の倍数、分母が $p$ と互いに素になるからである。奇数乗の逆数の和についてはさらに強く、整数 $\nu\ge0$ が $2\nu< p-3$ を満たせば $\sum_{k=1}^{p-1}\frac1{k^{2\nu+1}}\equiv0\pmod{p^2}$ となる(HW60 §8.8、Theorem 131、p. 104。$\nu=0$ が主定理 (1) である。この記事では $\nu\ge1$ の場合を証明しない)。主定理 (1) は $\sum_{k=1}^{p-1}\frac1k$ の $p^2$ を法とする値を与えており、有限多重ゼータ値 の記事ではこれが深さ $1$ の値として現れる。

関連項目

参考文献

[1]
G. H. Hardy and E. M. Wright, An Introduction to the Theory of Numbers, 4th ed., Oxford, Clarendon Press, 1960, §7.5, Theorems 112–113(p. 86:$(x-1)\cdots(x-p+1)\equiv x^{p-1}-1$ と係数の整除)、§7.8, Theorems 115–117(pp. 88–90:Wolstenholme の定理、分母の逆元による形との同値、多項式の係数による証明、平方の逆数の和)、第 VII 章の注 §7.8(p. 93:Wolstenholme 1862)、§8.8, Theorem 131(p. 104:奇数乗の逆数の和)

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