中国剰余定理

同義語:Chinese remainder theoremCRT中国式剰余定理中国剰余定理(数論)

概要

中国剰余定理(Chinese remainder theorem)とは、対ごとに互いに素な正の整数 $m_1,\dots,m_k$ を法とする連立合同式 $x\equiv a_i\pmod{m_i}$ が、任意の $a_1,\dots,a_k$ に対して解をもち、解が積 $M=m_1\cdots m_k$ を法としてただ 1 つであるという定理である。環の言葉では $\mathbb{Z}/M\mathbb{Z}\cong\prod_i\mathbb{Z}/m_i\mathbb{Z}$ であり、一般の可換環では対ごとに互いに素なイデアルについて $A/(I_1\cdots I_k)\cong\prod_iA/I_i$ となる。解は Bézout の等式から明示的に作れる。全体の最大公約数が $1$ であるだけでは足りない。Euler の φ 関数の乗法性などに使われる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 整数, 合同式, 互いに素, Bézoutの等式, 剰余環

動機

「3 で割ると 2 余り、5 で割ると 3 余り、7 で割ると 2 余る数は何か」という問題は、中国の古い算術書『孫子算経』に現れ、定理の名はこれに由来する。答えは $23$ であり、$105=3\cdot5\cdot7$ を足し引きした $23+105k$ もすべて答えである。中国剰余定理(Chinese remainder theorem, CRT)は、法がどの 2 つも互いに素であれば、このような連立合同式がいつも解をもち、解が法の積を法としてただ 1 つに決まることを述べる。
言い換えると、$M=m_1\cdots m_k$ を法とする整数の類は、各 $m_i$ で割った余りの組によって過不足なく決まる。大きな法での問題を小さな法での問題の組に分け、答えを貼り合わせて戻せるので、数論では「素数冪を法とする問題への帰着」として、計算の場面では大きな整数の計算を小さな法に分けて並列に行う方法として使われる。同じ現象は一般の可換環でも起こり、互いに素なイデアルによる剰余環の直積環への分解として述べられる(thm-crt-ring)。

仮定と定理

以下、$m\ge1$ を整数とする。整数 $a,b$ について $m\mid a-b$ のとき $a\equiv b\pmod m$ と書き、$a$ と $b$ は $m$ を法として合同であるという。$a$ の属する類を $\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$ の元とみて $a\bmod m$ と書く。

対ごとに互いに素な法

正の整数 $m_1,\dots,m_k$($k\ge1$)が対ごとに互いに素であるとは、$i\neq j$ であるどの $i,j$ についても $\gcd(m_i,m_j)=1$ であることをいう。$k=1$ のときは条件は空である。

$k=2$ では両者は同じ条件であるが、$k\ge3$ では、対ごとに互いに素であることは全体の最大公約数が $1$ であること(全体として互いに素)より真に強い。$6,10,15$ は $\gcd(6,10,15)=1$ であるが、$\gcd(6,10)=2$ なので対ごとには互いに素でない(互いに素 の記事の例「反例:全体として互いに素だが対ごとには互いに素でない整数」)。中国剰余定理の仮定は強い方である(ex-crt-6-10-15)。

中国剰余定理

$m_1,\dots,m_k$ を対ごとに互いに素な正の整数とし、$M=m_1m_2\cdots m_k$ とおく。任意の整数 $a_1,\dots,a_k$ に対し、連立合同式
$$ x\equiv a_1\pmod{m_1},\quad x\equiv a_2\pmod{m_2},\quad\dots,\quad x\equiv a_k\pmod{m_k} $$
は整数解 $x$ をもつ。さらに、$x_0$ を 1 つの解とすると、解全体は $x_0+M\mathbb{Z}=\{x_0+Mt\mid t\in\mathbb{Z}\}$ である。すなわち解は $M$ を法としてただ 1 つである。

証明

解の公式による証明

余りを 1 つずつ担う元

存在。各 $i$ について
$$ M_i:=\frac{M}{m_i}=\prod_{j\neq i}m_j $$
とおく。$j\neq i$ なら $\gcd(m_i,m_j)=1$ なので、$m_i$ は積 $M_i$ とも互いに素である(互いに素 の記事の命題「互いに素な因子の消去」の 2 を繰り返す。$k=1$ なら $M_1=1$)。よって Bézoutの等式 により
$$ M_iy_i+m_iz_i=1 $$
となる整数 $y_i,z_i$ があり、$e_i:=M_iy_i$ とおくと $e_i\equiv1\pmod{m_i}$ である。また $j\neq i$ なら $m_j\mid M_i$ なので $e_i\equiv0\pmod{m_j}$ である。そこで
$$ x:=a_1e_1+a_2e_2+\cdots+a_ke_k $$
とおくと、各 $j$ について和の第 $j$ 項以外は $m_j$ を法として $0$ であり、$x\equiv a_je_j\equiv a_j\pmod{m_j}$ となる。よって $x$ は解である。
解全体。$x_0$ を解とする。$x=x_0+Mt$ なら、$m_i\mid M$ より $x\equiv x_0\equiv a_i\pmod{m_i}$ なので $x$ も解である。逆に $x$ が解なら、各 $i$ で $x\equiv a_i\equiv x_0\pmod{m_i}$、すなわち $m_i\mid x-x_0$ である。$m_1\cdots m_j\mid x-x_0$ を $j$ に関する帰納法で示す。$j=1$ は成り立っている。$m_1\cdots m_{j-1}\mid x-x_0$ とすると、$m_j$ は $m_1,\dots,m_{j-1}$ のそれぞれと互いに素なのでその積とも互いに素であり、$m_j\mid x-x_0$ と合わせて、互いに素 の記事の命題「互いに素な因子の消去」の 3 により $m_1\cdots m_j\mid x-x_0$ である。$j=k$ として $M\mid x-x_0$、すなわち $x\in x_0+M\mathbb{Z}$ である。$\square$

証明の $e_i$ は「$m_i$ を法として $1$、他の $m_j$ を法として $0$」という元であり、解は
$$ x\equiv\sum_{i=1}^{k}a_iM_iy_i\pmod M,\qquad M_i=\frac{M}{m_i},\quad M_iy_i\equiv1\pmod{m_i} $$
と明示的に書ける。$y_i$ は $M_i$ の $m_i$ を法とする逆元であり、拡張Euclid互除法で求められる(Bézoutの等式 の記事の命題「互除法による係数の計算」)。

孫子算経の問題

$x\equiv2\pmod3$、$x\equiv3\pmod5$、$x\equiv2\pmod7$ を解く。$M=105$、$M_1=35$、$M_2=21$、$M_3=15$ である。

  • $35\equiv2\pmod3$ で、$2\cdot2=4\equiv1\pmod3$ なので $y_1=2$、$e_1=70$。
  • $21\equiv1\pmod5$ なので $y_2=1$、$e_2=21$。
  • $15\equiv1\pmod7$ なので $y_3=1$、$e_3=15$。
    よって
    $$ x\equiv2\cdot70+3\cdot21+2\cdot15=233\equiv23\pmod{105} $$
    であり、実際 $23=3\cdot7+2=5\cdot4+3=7\cdot3+2$ である。解全体は $23+105\mathbb{Z}$ である。
    各 $e_i$ が担当する法だけで $1$ になり、合成結果が指定余りを再現することは次の表で確かめられる。
    法$e_1=70$ の剰余$e_2=21$ の剰余$e_3=15$ の剰余指定余り$233$ の剰余
    $3$$1$$0$$0$$2$$2$
    $5$$0$$1$$0$$3$$3$
    $7$$0$$0$$1$$2$$2$

逐次代入による解法

法が多いときや、法が大きく $M_i$ の逆元を求めるのが手間なときは、合同式を 1 つずつ満たしていく方が計算が軽い。$x\equiv a_1\pmod{m_1}$ の解を $x=a_1+m_1t$ と書き、これを 2 番目の合同式に代入すると $m_1t\equiv a_2-a_1\pmod{m_2}$ となる。$\gcd(m_1,m_2)=1$ なので $m_1$ は $m_2$ を法として逆元 $m_1'$ をもち、$t\equiv m_1'(a_2-a_1)\pmod{m_2}$ と解ける。こうして得た解は $m_1m_2$ を法としてただ 1 つであり(thm-crt を $k=2$ で用いる)、次の合同式に同じ操作を続ける。

逐次代入の計算

$x\equiv1\pmod4$、$x\equiv2\pmod9$、$x\equiv3\pmod{25}$ を解く。$4,9,25$ は対ごとに互いに素で、$M=900$ である。

  1. $x=1+4t$ を 2 番目に代入して $4t\equiv1\pmod9$。$4\cdot7=28\equiv1\pmod9$ なので $t\equiv7\pmod9$ で、$x=1+4\cdot7=29$、すなわち $x\equiv29\pmod{36}$。
  2. $x=29+36s$ を 3 番目に代入して $36s\equiv3-29=-26\pmod{25}$、すなわち $11s\equiv24\pmod{25}$。$11\cdot16=176\equiv1\pmod{25}$ なので $s\equiv16\cdot24=384\equiv9\pmod{25}$。
    よって $x=29+36\cdot9=353$、すなわち $x\equiv353\pmod{900}$ である。実際 $353=4\cdot88+1=9\cdot39+2=25\cdot14+3$ である。

帰結・補足

剰余環の直積への分解

thm-crt は、環の言葉で次のように言い換えられる。

剰余環の直積としての言い換え

$m_1,\dots,m_k$ を対ごとに互いに素な正の整数、$M=m_1\cdots m_k$ とする。写像
$$ \Phi\colon\mathbb{Z}/M\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}/m_1\mathbb{Z}\times\cdots\times\mathbb{Z}/m_k\mathbb{Z},\qquad x\bmod M\mapsto(x\bmod m_1,\dots,x\bmod m_k) $$
は環の同型である。

解の存在と一意性の読み替え

$x\equiv x'\pmod M$ なら $m_i\mid M$ より $x\equiv x'\pmod{m_i}$ なので、$\Phi$ は代表元の取り方によらず定まる。各成分 $x\bmod M\mapsto x\bmod m_i$ は和と積を保ち $1$ を $1$ に送るので、$\Phi$ は環準同型である。任意の $(a_1\bmod m_1,\dots,a_k\bmod m_k)$ に対し、thm-crt の解 $x$ は $\Phi(x\bmod M)=(a_1\bmod m_1,\dots,a_k\bmod m_k)$ を満たすので $\Phi$ は全射である。$\Phi(x\bmod M)=\Phi(x'\bmod M)$ なら $x$ と $x'$ は同じ連立合同式の解なので、thm-crt の後半により $x\equiv x'\pmod M$ であり、$\Phi$ は単射である。$\square$

両辺はどちらも $M$ 個の元をもつので、全射性は単射性から数えても分かる。一般の可換環では次の形になる。整数の場合は $A=\mathbb{Z}$、$I_i=(m_i)$ としたものであり、$(m_i)+(m_j)=\mathbb{Z}$ が $\gcd(m_i,m_j)=1$ と同値であること(互いに素 の記事の定理「整数が互いに素であることの言い換え」)による。

可換環における中国剰余定理

$A$ を可換環、$I_1,\dots,I_k$($k\ge1$)を $A$ のイデアルとし、$i\neq j$ のとき $I_i+I_j=A$(対ごとに互いに素)であるとする。このとき $I_1\cap\cdots\cap I_k=I_1I_2\cdots I_k$ であり、$a\mapsto(a+I_1,\dots,a+I_k)$ は環の同型
$$ A/(I_1I_2\cdots I_k)\cong A/I_1\times\cdots\times A/I_k $$
を引き起こす。逆に、写像 $A\to A/I_1\times\cdots\times A/I_k$ が全射ならば $I_1,\dots,I_k$ は対ごとに互いに素である。

可換環の場合の証明の所在

thm-crt-ring は 互いに素 の記事の定理「剰余環の直積への分解」で証明されている(AM69 Chapter 1、DF04 §7.6 も参照)。証明の要点は、$1=u_i+e_i$($u_i\in I_i$、$e_i\in\prod_{j\neq i}I_j$)と分けた元 $e_i$ が「$I_i$ を法として $1$、他の $I_j$ を法として $0$」を満たすことで、これは prf-crt の $e_i=M_iy_i$ と同じ役割を果たす。$e_i$ の像は直積環の第 $i$ 成分だけが $1$ の冪等元である。

多項式の補間

$K$ を体、$a_1,\dots,a_k\in K$ を相異なる元とする。$i\neq j$ なら $(x-a_i)-(x-a_j)=a_j-a_i$ は $0$ でない定数なので、多項式環 $K[x]$ のイデアル $(x-a_i)$ は対ごとに互いに素である。$f\equiv b\pmod{x-a}$ は $f(a)=b$ と同じなので(多項式環 の記事の系「剰余定理と因数定理」)、thm-crt-ring は「任意の $b_1,\dots,b_k\in K$ に対し $f(a_i)=b_i$(すべての $i$)となる $f\in K[x]$ があり、それは $\prod_i(x-a_i)$ を法としてただ 1 つ、すなわち次数 $k-1$ 以下のものがただ 1 つある」ことを述べる。prf-crt の $e_i$ にあたるのは
$$ e_i(x)=\prod_{j\neq i}\frac{x-a_j}{a_i-a_j} $$
であり、$f=\sum_ib_ie_i$ は Lagrange補間の公式である。

法が互いに素でない場合

仮定を外すと、解は存在することも存在しないこともある。2 つの合同式については次のように判定できる。

2 つの合同式の可解条件

$m_1,m_2$ を正の整数、$d=\gcd(m_1,m_2)$、$L$ を $m_1,m_2$ の最小公倍数とする。連立合同式 $x\equiv a_1\pmod{m_1}$、$x\equiv a_2\pmod{m_2}$ が解をもつことと $a_1\equiv a_2\pmod d$ であることは同値である。解をもつとき、解は $L$ を法としてただ 1 つである。

Bézout係数による構成

解 $x$ があれば、$d\mid m_1\mid x-a_1$ かつ $d\mid m_2\mid x-a_2$ なので $d\mid a_1-a_2$ である。逆に $a_1-a_2=ds$($s\in\mathbb{Z}$)とする。Bézoutの等式 により $m_1u+m_2v=d$ となる整数 $u,v$ がある。$x:=a_1-m_1us$ とおくと $x\equiv a_1\pmod{m_1}$ であり、
$$ x=a_1-(d-m_2v)s=a_1-ds+m_2vs=a_2+m_2vs $$
なので $x\equiv a_2\pmod{m_2}$ である。
解 $x_0$ を 1 つとる。$x$ が解であることは、$m_1\mid x-x_0$ かつ $m_2\mid x-x_0$、すなわち $x-x_0$ が $m_1,m_2$ の公倍数であることと同値である。公倍数は最小公倍数 $L$ の倍数にほかならない($c$ を公倍数とし $c=qL+r$、$0\le r< L$ と割ると、$r=c-qL$ も公倍数なので $L$ の最小性から $r=0$)。よって解全体は $x_0+L\mathbb{Z}$ である。$\square$

$d=1$ なら条件は常に満たされ $L=m_1m_2$ なので、これは $k=2$ の thm-crt を含む。3 つ以上の合同式は、2 つずつまとめて順に適用すれば判定できる。

法が互いに素でない連立合同式
  1. $x\equiv5\pmod{12}$、$x\equiv3\pmod{14}$:$d=2$ で $5-3=2$ は $2$ で割り切れるので解がある。$12\cdot(-1)+14\cdot1=2$ より $u=-1$、$s=1$ で、$x=5-12\cdot(-1)\cdot1=17$。解全体は $17+84\mathbb{Z}$($L=84$)であり、$17=12+5=14+3$ である。
  2. $x\equiv0\pmod4$、$x\equiv1\pmod6$:$d=2$ で $0-1=-1$ は $2$ で割り切れないので解がない。実際、1 番目から $x$ は偶数、2 番目から奇数である。
反例:全体として互いに素なだけでは足りない法

法 $6,10,15$ は全体として互いに素である($\gcd(6,10,15)=1$)が、対ごとには互いに素でない。このとき
$$ \mathbb{Z}/900\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/10\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/15\mathbb{Z},\qquad x\bmod900\mapsto(x\bmod6,\ x\bmod10,\ x\bmod15) $$
は同型でない。$x$ が $6,10,15$ のすべてで割り切れることは $30\mid x$ と同値なので、この写像の核は $30\mathbb{Z}/900\mathbb{Z}$($30$ 個の元)であり、単射でない。像は $900/30=30$ 個の元しかもたず、全射でもない。たとえば $x\equiv0\pmod6$、$x\equiv1\pmod{10}$、$x\equiv0\pmod{15}$ には偶奇の食い違いから解がない。
この例は「法の全体の最大公約数が $1$」を満たすが「対ごとに互いに素」を満たさず、含意「全体として互いに素な法について thm-crt の結論が成り立つ」を破る。2 つの法でも、$2$ と $2$ のように互いに素でなければ $\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ と $\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ は同型でない(互いに素 の記事の例「反例:互いに素でない法」)。

Euler関数の乗法性

$n\ge1$ に対し、$1\le a\le n$ で $\gcd(a,n)=1$ となる $a$ の個数を $\varphi(n)$ と書き、$\varphi$ を Eulerのφ関数という。$a\bmod n$ が単元であることと $\gcd(a,n)=1$ は同値である(Bézoutの等式 による。$ax+ny=1$ ⟺ $ax\equiv1\pmod n$)ので、$\varphi(n)$ は単元群 $(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^\times$ の位数に等しい。

Euler関数の乗法性

$m,n$ が互いに素な正の整数ならば $\varphi(mn)=\varphi(m)\varphi(n)$ である。

乗法性の証明の所在

互いに素 の記事の系「Euler関数の乗法性」で、thm-crt-iso の同型 $\mathbb{Z}/mn\mathbb{Z}\cong\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ が単元群の同型 $(\mathbb{Z}/mn\mathbb{Z})^\times\cong(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^\times\times(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z})^\times$ を引き起こすことから証明されている(Apo76 Chapter 2 も参照)。環の同型は単元を単元に送り、直積環の元が単元であることは各成分が単元であることと同じだからである。互いに素でなければ成り立たない。$\varphi(4)=2$ であるが $\varphi(2)\varphi(2)=1$ である。

Euler関数の公式

$n\ge2$ の素因数分解を $n=p_1^{e_1}\cdots p_r^{e_r}$($p_i$ は相異なる素数、$e_i\ge1$)とすると
$$ \varphi(n)=\prod_{i=1}^{r}\bigl(p_i^{e_i}-p_i^{e_i-1}\bigr)=n\prod_{i=1}^{r}\Bigl(1-\frac1{p_i}\Bigr) $$
である。

素数冪への帰着

素数 $p$ と $e\ge1$ について、$1\le a\le p^e$ の $a$ が $p^e$ と互いに素でないことは、$a$ が $p$ で割り切れることと同値である($p^e$ の約数で $1$ より大きいものはすべて $p$ で割り切れる)。$p$ の倍数は $p,2p,\dots,p^{e-1}\cdot p$ の $p^{e-1}$ 個なので $\varphi(p^e)=p^e-p^{e-1}$ である。$p_1^{e_1},\dots,p_r^{e_r}$ は対ごとに互いに素であり、$p_1^{e_1}\cdots p_{j-1}^{e_{j-1}}$ と $p_j^{e_j}$ も互いに素なので、cor-crt-euler-phi を $r-1$ 回用いて $\varphi(n)=\prod_i\varphi(p_i^{e_i})$ を得る。最後の等式は $p^e-p^{e-1}=p^e(1-1/p)$ による。$\square$

たとえば $\varphi(900)=\varphi(4)\varphi(9)\varphi(25)=2\cdot6\cdot20=240$ である。

合同方程式の解の個数

解の個数の乗法性

$f$ を整数係数の多項式とし、正の整数 $m$ について $f(x)\equiv0\pmod m$ の $m$ を法とする解の個数を $N(m)$ と書く。$m,n$ が互いに素ならば $N(mn)=N(m)N(n)$ である。

同型による対応

$f(x)\equiv0\pmod{mn}$ であることは、$f(x)\equiv0\pmod m$ かつ $f(x)\equiv0\pmod n$ であることと同値である($\Leftarrow$ は 互いに素 の記事の命題「互いに素な因子の消去」の 3)。$f(x)\bmod m$ は $x\bmod m$ だけで決まるので、thm-crt-iso の全単射 $x\bmod mn\mapsto(x\bmod m,\ x\bmod n)$ は、$mn$ を法とする解の集合を、$m$ を法とする解と $n$ を法とする解の組の集合へ全単射に写す。$\square$

たとえば $x^2\equiv1\pmod{15}$ は、$x^2\equiv1\pmod3$ の解 $\pm1$ と $x^2\equiv1\pmod5$ の解 $\pm1$ の組に対応する $2\cdot2=4$ 個の解 $x\equiv1,4,11,14\pmod{15}$ をもつ。$x\equiv4$ は $(x\bmod3,x\bmod5)=(1,-1)$ に対応する。多項式が高々次数個の根しかもたないのは整域(特に体)の上の話であり、$\mathbb{Z}/15\mathbb{Z}$ は整域でない($3\cdot5=0$)ので 2 次式が 4 個の根をもちうる。このように合同方程式の問題は素数冪を法とする場合に帰着され、そこから先は Henselの補題 などで扱われる。

文献

整数の中国剰余定理と連立合同式の解法、Euler 関数は Apo76 Chapter 5(合同式と中国剰余定理)と Chapter 2(Euler 関数)に、可換環の場合は DF04 §7.6、AM69 Chapter 1 にある。

関連項目

参考文献

[1]
Tom M. Apostol, Introduction to Analytic Number Theory, Springer, 1976, Chapter 2(Euler 関数)、Chapter 5(合同式と中国剰余定理)
[2]
David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004, §7.6(中国剰余定理と comaximal なイデアル)
[3]
Michael F. Atiyah and Ian G. Macdonald, Introduction to Commutative Algebra, Addison-Wesley, 1969, Chapter 1(互いに素なイデアルと剰余環の直積)

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