Titsの建物(Tits building)とは、Coxeter 複体と同型な部分複体(アパートメント)の族で覆われた部屋複体で、任意の 2 つの単体が共通のアパートメントに含まれ、2 つのアパートメントが単体と部屋を共有すればそれらを固定する同型があるものである。体上のベクトル空間の部分空間の旗の全体は、基底の座標部分空間からなる旗をアパートメントとする厚い建物になり、一般線形群はそこに強推移的に作用して、部屋とアパートメントの固定部分群が上三角行列と単項行列の Tits 系を与える。Tits 系(生成系 $S$ が有限なもの)をもつ群は一般にこのように建物に作用し、$p$ 進体上の群にはアフィン型の建物(2 次の場合は木)が付随する。
Titsの建物(単に 建物 ともいう)は、Coxeter複体 のコピー(アパートメント)をたくさん貼り合わせてできる単体複体で、任意の 2 つの部屋が共通のアパートメントに含まれ、アパートメントどうしが共通部分を保って同型になるものである。Coxeter 複体ではどの壁面もちょうど 2 つの部屋に接する(薄い)のに対し、建物では 1 つの壁面に 3 つ以上の部屋が接してよい(厚い)。
もっとも基本的な例は、体 $K$ 上の $n$ 次元ベクトル空間 $V$ の部分空間の旗である。真部分空間を頂点、包含で一列に並ぶ部分空間の組(旗)を単体とすると、部屋は完全旗 $V_1\subset V_2\subset\cdots\subset V_{n-1}$($\dim V_i=i$)になる。$V$ の基底を 1 つ選ぶと、基底ベクトルの張る座標部分空間からなる旗は対称群 $S_n$ の Coxeter 複体をなし、これがアパートメントである。2 つの完全旗が共通の基底で書けることは Bruhat分解 の言いかえであり、一般線形群はこの建物に「部屋とアパートメントの組」に推移的に作用する。逆に、Tits系(生成系 $S$ が有限なもの)をもつ群は、すべてこのように建物に作用する群として得られる。建物は、行列の群を体を取り替えながら幾何学的に調べる舞台であり、$p$ 進体上の群に対してはアフィン型の建物(1 次元なら木)が現れる。
単体複体・部屋複体・部屋・壁面・隣接・薄い/厚い・部屋複体の射は Coxeter複体 の定義(「抽象単体複体」「部屋複体」「薄い部屋複体と厚い部屋複体」「部屋複体の射」)に従う。単体複体の部分複体 $\Sigma$ が部屋複体で、その部屋がすべて全体の部屋であるとき、$\Sigma$ を 部屋部分複体 という。
部屋複体 $\Delta$ と、$\Delta$ の部屋部分複体からなる集合 $\mathcal{A}$ の組 $(\Delta,\mathcal{A})$ が次の 3 条件を満たすとき、$(\Delta,\mathcal{A})$ を 建物(building)または Titsの建物 といい、$\mathcal{A}$ の元を アパートメント(apartment)、$\mathcal{A}$ を アパートメント系 という。
Coxeter 複体 $\Sigma(W,S)$ 自身は、$\mathcal{A}=\{\Sigma(W,S)\}$ とすると薄い建物である((B1) は明らか、(B2) は恒等写像でよい)。Gar97 §4.1(p. 52)は (B0) の代わりに「各アパートメントは薄い部屋複体である」ことだけを課して厚い建物を定義し、そのアパートメントが自動的に Coxeter 複体になり、すべてのアパートメントが共通の Coxeter 系 $(W,S)$ の Coxeter 複体と同型であることを示している(同 §4.3 の系とその後の議論、pp. 54–55。この記事では証明しない)。この $(W,S)$ を建物の 型 という。
$(\Delta,\mathcal{A})$ を建物とし、$\Sigma,\Sigma'\in\mathcal{A}$ が部屋 $C$ を共通に含むとする。このとき $C$ の各頂点を固定する同型 $\varphi\colon\Sigma\to\Sigma'$ はただ 1 つ存在し、$\varphi$ は $\Sigma\cap\Sigma'$ の各頂点を固定する。
存在は (B2) で $A=C$ とすればよい。一意性:$\Sigma'$ は (B0) により Coxeter 複体と同型なので薄い部屋複体であり(Coxeter複体 の定理「Coxeter複体は薄い部屋複体」)、$\Sigma$ と $\Sigma'$ は部屋 $C$ を共有するので階数が等しい。単体複体の同型は部屋を部屋に、隣接する 2 つの部屋を異なる部屋に写すので、非退化な部屋複体の射である。$C$ の各頂点で一致する 2 つの同型は、Coxeter複体 の補題「一意性補題」により等しい。
$A$ を $\Sigma\cap\Sigma'$ の単体とすると、(B2) により $A$ と $C$ の各頂点を固定する同型 $\varphi_A\colon\Sigma\to\Sigma'$ がある。$\varphi_A$ も $C$ の各頂点を固定するので、一意性から $\varphi_A=\varphi$ であり、$\varphi$ は $A$ の各頂点を固定する。$\square$
この命題は Gar97 §4.1 の補題(p. 52)である。Coxeter複体 の一意性補題は、建物の中ではアパートメントの間の同型を 1 つの部屋で決めてしまう道具として働く。
この節では $K$ を体、$V$ を $K$ 上の $n$ 次元ベクトル空間($n\ge2$)とする。
どの旗も部分空間を書き足して完全旗にできるので、$\Delta(V)$ の極大な単体はちょうど完全旗で、どれも $n-1$ 個の頂点をもつ。$\mathrm{GL}(V)$ の元 $g$ は部分空間を同じ次元の部分空間に写し包含を保つので、$\Delta(V)$ の自己同型を定め、$g\Sigma_F=\Sigma_{gF}$ である。
段 1:アパートメントの形((B0))。 枠 $F=\{\ell_1,\dots,\ell_n\}$ について $0$ でない $v_i\in\ell_i$ をとると $V$ の基底になり、$\ell_I$ は $I$ の外の座標が $0$ のベクトルの全体である。よって $\dim\ell_I=\lvert I\rvert$、$\ell_I\cap\ell_J=\ell_{I\cap J}$ であり、$\ell_I\subset\ell_J$ と $I\subset J$ は同値である。したがって $I\mapsto\ell_I$ は、$\{1,\dots,n\}$ の空でない真部分集合の全体から $\Sigma_F$ の頂点の全体への順序を保つ全単射で、$\Sigma_F$ は「空でない真部分集合の包含の鎖」のなす単体複体と同型である。Coxeter複体 の例「対称群のCoxeter複体」により、これは $\Sigma(S_n,S)$ と同型である。$\Sigma_F$ の部屋は、$F$ の直線の並べ方 $(\ell_{\pi(1)},\dots,\ell_{\pi(n)})$ ごとの完全旗 $\ell_{\pi(1)}\subset\ell_{\pi(1)}\oplus\ell_{\pi(2)}\subset\cdots$ であり、$\Delta(V)$ の部屋である。
段 2:(B1)。 $e_1,\dots,e_n$ を $V$ の基底、$C_0$ を完全旗 $\langle e_1\rangle\subset\langle e_1,e_2\rangle\subset\cdots$、$F_0:=\{Ke_1,\dots,Ke_n\}$ とする。完全旗は、それに沿う基底($V_i$ が最初の $i$ 個で張られる基底)をとれば $gC_0$ の形に書ける。$C_0$ の固定部分群は可逆な上三角行列の群 $B$ であり、置換行列は $F_0$ の直線を入れ替えるので $\Sigma_{F_0}$ を保つ。2 つの完全旗 $C=gC_0$、$D=hC_0$ をとる。Bruhat分解 の定理「一般線形群の Bruhat 分解」により $g^{-1}h=bwb'$($b,b'\in B$、$w$ は置換行列)と書ける。アパートメント $\Sigma_{gbF_0}=gb\,\Sigma_{F_0}$ は $gbC_0=gC_0=C$ と $gbwC_0=gbwb'C_0=hC_0=D$ を含む。任意の 2 つの単体は部屋の面で、アパートメントは部分複体なので、それらを含む部屋 $C,D$ を含むアパートメントに含まれる。とくに任意の 2 つの部屋は部屋複体 $\Sigma_F$ の中で回廊で結ばれ、$\Delta(V)$ は部屋複体である。
段 3:(B2)。 $\Sigma_F$ と $\Sigma_{F'}$ が部屋 $C=(V_1\subset\cdots\subset V_{n-1})$ を共通に含むとする。段 1 により各 $V_k$ は $\ell_{I_k}$($\lvert I_k\rvert=k$、$I_1\subset I_2\subset\cdots$)と書けるので、$F$ の番号を付け替えて $V_k=\ell_1\oplus\cdots\oplus\ell_k$ とし、$F'$ も同様に $V_k=\ell'_1\oplus\cdots\oplus\ell'_k$ とする。$\varphi(\ell_I):=\ell'_I$ は段 1 の同型を 2 つ合成したもので、同型 $\Sigma_F\to\Sigma_{F'}$ であり、$C$ の各頂点を固定する。$U$ を $\Sigma_F\cap\Sigma_{F'}$ の頂点とし、$U=\ell_I=\ell'_J$ と書く。各 $k$ について $U\cap V_k=\ell_{I\cap\{1,\dots,k\}}=\ell'_{J\cap\{1,\dots,k\}}$ なので、次元を比べて $\lvert I\cap\{1,\dots,k\}\rvert=\lvert J\cap\{1,\dots,k\}\rvert$ であり、$k$ を $1$ から順に動かすと $I=J$ を得る。よって $\varphi(U)=\ell'_I=U$ であり、$\varphi$ は $\Sigma_F\cap\Sigma_{F'}$ の各頂点を固定する。とくに (B2) が成り立つ。
段 4:厚さ。 部屋 $C$ から $V_j$ を除いた壁面を含む部屋は、$V_{j-1}\subset U\subset V_{j+1}$($V_0=0$、$V_n=V$)となる $j$ 次元部分空間 $U$ と 1 対 1 に対応し、それは 2 次元空間 $V_{j+1}/V_{j-1}$ の 1 次元部分空間、すなわち 射影直線 $\mathbb{P}^1(K)$ の点と対応する。その個数は $q$ 元体で $q+1\ge3$、無限体で無限である。
段 5:推移性。 $\Sigma_F$ の部屋 $C$ は、$\ell_k$ を「$V_k$ に含まれ $V_{k-1}$ に含まれない $F$ の唯一の直線」とすることで $F$ の並べ方を定め、逆に並べ方は部屋を定める。2 つの組 $(\Sigma_F,C)$、$(\Sigma_{F'},C')$ について、並べた直線 $\ell_k$、$\ell'_k$ から $0$ でない $v_k\in\ell_k$、$v'_k\in\ell'_k$ をとり、$g(v_k)=v'_k$ で $g\in\mathrm{GL}(V)$ を定めると、$gF=F'$、$gC=C'$ である。$\square$
この定理は Gar97 §9.1–9.3(pp. 132–137)の内容で、同書は (B1) を 2 つの旗を組成列とみる Jordan–Hölder 型の議論で、(B2) を次元の比較で示している。段 2 は Bruhat分解 を使ったが、2 つの完全旗に共通に沿う基底を直接作ることもできる。
主張:完全旗 $(V_i)$、$(W_j)$($V_0=W_0=0$、$V_n=W_n=V$)に対し、基底 $v_1,\dots,v_n$ と置換 $\pi$ で、$V_i=\langle v_1,\dots,v_i\rangle$、$W_j=\langle v_k\mid\pi(k)\le j\rangle$ となるものがある。$n$ についての帰納法で示す。$n=1$ は明らか。$j_0$ を $V_1\subset W_j$ となる最小の $j$ とし、$\bar V:=V/V_1$ を考える。$\bar V_i:=V_{i+1}/V_1$ は $\bar V$ の完全旗である。$\bar W_j:=(W_j+V_1)/V_1$ は $j< j_0$ で次元 $j$、$j\ge j_0$ で次元 $j-1$ なので、重複する $\bar W_{j_0}=\bar W_{j_0-1}$ を除くと完全旗になる。帰納法の仮定により、両方に沿う $\bar V$ の基底 $\bar v_2,\dots,\bar v_n$($\bar v_k\in V_k/V_1$)がある。$\bar v_k$ が属する最小の $\bar W_j$ の添字を $\pi(k)$ とする。$V_1\subset V_k$ なので $V_k\cap(W_j+V_1)=(V_k\cap W_j)+V_1$ であり、$\bar v_k$ は $V_k\cap W_{\pi(k)}$ の元 $v_k$ に持ち上がる。$0$ でない $v_1\in V_1$ と $\pi(1):=j_0$ を加えると、$v_1,\dots,v_n$ は基底で $V_i=\langle v_1,\dots,v_i\rangle$ である。$W_j$ は $\pi(k)\le j$ の $v_k$ をすべて含み、その個数は $\dim\bar W_j$ に、$j\ge j_0$ なら $v_1$ の分の $1$ を足したもので、ちょうど $j$ である。一次独立な $j$ 個の元が $j$ 次元の $W_j$ に含まれるので $W_j=\langle v_k\mid\pi(k)\le j\rangle$ であり、各 $j$ で個数が $j$ なので $\pi$ は置換である。この基底の直線の枠 $F$ について、$\Sigma_F$ は 2 つの完全旗を含む。
$V=K^n$ とし、$C_0$、$F_0$ を prf-bld-vector の段 2 のものとする。$\mathrm{GL}_n(K)$ の中で、$C_0$ の固定部分群 $B$ は可逆な上三角行列の群、$\Sigma_{F_0}$ の固定部分群 $N$ は各行・各列にちょうど 1 つ $0$ でない成分をもつ行列(単項行列)の群であり、$B\cap N$ は可逆な対角行列の群 $T$ で、$N/T\cong S_n$ は $\Sigma_{F_0}$ の部屋に単純推移的に作用する。
$g$ が $C_0$ を固定することは $g\langle e_1,\dots,e_i\rangle=\langle e_1,\dots,e_i\rangle$(すべての $i$)と同値で、これは上三角であることと同値である。$\Sigma_F$ の 1 次元の頂点はちょうど $F$ の直線なので、$g\Sigma_{F_0}=\Sigma_{gF_0}$ が $\Sigma_{F_0}$ に等しいことは $gF_0=F_0$、すなわち $g$ が直線 $Ke_i$ を置換することと同値で、これは単項行列であることと同値である。上三角な単項行列は対角行列である。$g\in N$ に直線の置換を対応させる準同型 $N\to S_n$ は置換行列があるので全射で、核は各直線を保つ行列、すなわち $T$ である。$\Sigma_{F_0}$ の部屋は直線の並べ方と 1 対 1 に対応する(prf-bld-vector の段 5)ので、$S_n$ は部屋に単純推移的に作用する。$\square$
$(B,N)$ が $\mathrm{GL}_n(K)$ の Tits 系をなすことは Bruhat分解 の命題「$(B,N)$ は Tits 系をなす」で示されており、その Weyl 群 $N/T\cong S_n$ は Weyl群 の命題「一般線形群の Weyl 群」の群である。建物の言葉では、Bruhat 分解 $\mathrm{GL}_n(K)=\bigsqcup_{w\in S_n}BwB$ は「部屋の組 $(C_0,D)$ を $\mathrm{GL}_n(K)$ で動かした軌道(相対的な位置)が $S_n$ の元でちょうど分類される」ことを表す。実際、段 2 と段 5 により任意の部屋の組は $(C_0,wC_0)$($w\in S_n$)の形の組に $\mathrm{GL}_n(K)$ で移る。
prop-bld-bn は一般の Tits 系で成り立つことの例である。群 $G$ が建物 $(\Delta,\mathcal{A})$ に単体複体の自己同型として作用し、$\mathcal{A}$ を保ち、組 $(\Sigma,C)$($\Sigma\in\mathcal{A}$、$C$ は $\Sigma$ の部屋)の全体に推移的に作用するとき、作用は 強推移的 であるという。
この記事では thm-bld-bn を証明しない。1 は Gar97 §5.2(pp. 64–70)、2 は同 §5.7 の定理(p. 80)による。同書の BN 対の公理は、Tits系 の公理に、その記事の定理「Tits系の基本定理」と定理「標準的放物型部分群の分類」が与える性質($(W,S)$ が Coxeter 系であること、Bruhat 分解、細胞の積の規則、$B$ を含む部分群が $BW_IB$ の形であること)を合わせたものである。$\mathrm{GL}(V)$ の場合、2 の建物の部屋は $B$ の共役、すなわち完全旗の固定部分群に当たる(prop-bld-bn と thm-bld-vector の 3)。
$K$ を離散付値体、$\mathcal{O}$ をその付値環、$\varpi$ を素元、$\kappa:=\mathcal{O}/\varpi\mathcal{O}$ を剰余体とする(たとえば $K=\mathbb{Q}_p$、$\mathcal{O}=\mathbb{Z}_p$、$\kappa=\mathbb{F}_p$)。$V=K^2$ の有限生成 $\mathcal{O}$ 部分加群で $V$ を $K$ 上張るもの(格子)を、$0$ でないスカラー倍の違いを除いて考えた類 $[L]$ を頂点とし、$\varpi L\subsetneq M\subsetneq L$ となる代表をもつ 2 つの類 $[L],[M]$ を辺で結ぶ。この 1 次元の単体複体に、$V$ の枠 $\{\ell_1,\ell_2\}$ ごとに、$\ell_1$ の格子と $\ell_2$ の格子の直和で表せる類からなる部分複体をアパートメントとして与えると、厚い建物になる(Gar97 §19.1–19.2、pp. 322–329)。各アパートメントは整数点で区切った直線、すなわち無限二面体群の Coxeter 複体で、アフィンWeyl群 の例「階数 1:数直線の折り返し」のアルコーブの分割と同じ形である。建物の幾何学的実現は可縮であり(同 §14.4 の系、p. 227)、このグラフは 木 である。
頂点 $[L]$ に隣接する頂点は、$\varpi L\subsetneq M\subsetneq L$ となる $M$ と 1 対 1 に対応する($M$ と $\varpi^jM$($j\ne0$)が同時にこの条件を満たすことはない)。$M\mapsto M/\varpi L$ により、それは 2 次元 $\kappa$ ベクトル空間 $L/\varpi L$ の 1 次元部分空間と対応するので、各頂点の次数は $\lvert\kappa\rvert+1$ である。$K=\mathbb{Q}_p$ なら各頂点から $p+1$ 本の辺が出る、$(p+1)$ 正則な木である。$\mathrm{SL}_2(K)$ はこの木に作用し、その部屋(辺)の固定部分群とアパートメントの固定部分群から アフィンWeyl群 を Weyl 群とする Tits 系が得られる(同 §19.3–19.4、pp. 329–331)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| (B1)(def-bld) | $V=\mathbb{F}_2^2$ の $\Delta(V)$(3 点)に、アパートメントを $\{\langle e_1\rangle,\langle e_2\rangle\}$ の 1 つだけ与える | 部屋 $\langle e_1\rangle$ と $\langle e_1+e_2\rangle$ を共に含むアパートメントがない |
| (B2)(prop-bld-iso) | 4 頂点の完全グラフ $K_4$ に、3 つの 4 辺の閉路をアパートメントとして与える | 部屋 $\{a,b\}$ を共有する 2 つのアパートメントの間に、共通部分を固定する同型がない |
| 行き先が薄い(prop-bld-iso の一意性) | $\Sigma=\{\langle e_1\rangle,\langle e_2\rangle\}$ から 3 点の $\Delta(\mathbb{F}_2^2)$ への射 | 部屋 $\langle e_1\rangle$ を固定する非退化な射が 2 つあり、一意でない |
| (B0)(厚い建物では、アパートメントが薄いことと他の公理から従う) | 3 頂点・3 辺の閉路を唯一のアパートメントとする | (B1)・(B2) は成り立つが、アパートメントは Coxeter 複体でない |
2 行目:閉路 $\Sigma:a\text{-}b\text{-}c\text{-}d\text{-}a$ と $\Sigma':a\text{-}b\text{-}d\text{-}c\text{-}a$ はどちらも二面体群 $\operatorname{Dih}_2$ の Coxeter 複体(4 辺の閉路)と同型で、どの 2 辺・2 頂点もある 4 辺の閉路に含まれるので (B0)・(B1) は成り立つ。$a,b$ を固定する同型 $\Sigma\to\Sigma'$ は、$\Sigma$ で $b$ の $a$ でない隣の頂点 $c$ を、$\Sigma'$ で $b$ の $a$ でない隣の頂点 $d$ に写すしかないので、共通の頂点 $c$ を固定できない。3 行目:$\langle e_2\rangle$ の行き先を $\langle e_2\rangle$ と $\langle e_1+e_2\rangle$ のどちらにしても非退化な部屋複体の射になる。$\Delta(\mathbb{F}_2^2)$ は厚いので Coxeter複体 の一意性補題が使えない。4 行目:Coxeter複体 の注意「反例:Coxeter複体でない部屋複体」の 2 により、3 辺の閉路は薄い部屋複体だが Coxeter 複体でない。アパートメントが薄くても、$\Delta$ が厚くなければ (B0) を他の公理から導けない。
アパートメントが有限の Coxeter 複体(球面の三角形分割)である建物を 球体型、アフィン Weyl 群の Coxeter 複体(Euclid 空間の三角形分割)である建物を アフィン型 という。thm-bld-vector は球体型の基本例で、Gar97 第 10 章(pp. 143–144)は斜交群・直交群・ユニタリ群についても全等方部分空間の旗から球体型の建物を作っている。アフィン型の建物は離散付値体上の群に付随し、ex-bld-tree はその 1 次元の場合である。$\mathrm{SL}_n$ の場合のアパートメントは アフィンWeyl群 の例「$A_{n-1}$ 型」のアルコーブの分割である(Gar97 第 19 章)。
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