Engel 形の不等式(Engel form)とは、実数 $x_1,\dots,x_n$ と正の数 $y_1,\dots,y_n$ について $\frac{x_1^2}{y_1}+\cdots+\frac{x_n^2}{y_n}\ge\frac{(x_1+\cdots+x_n)^2}{y_1+\cdots+y_n}$ が成り立つという不等式で、等号は比 $\frac{x_i}{y_i}$ がすべて等しいときに限る。$\sum y_i\bigl(t-\frac{x_i}{y_i}\bigr)^2\ge0$ を $t$ の 2 次式とみた判別式から示され、重み付き内積の Cauchy–Schwarz の不等式にあたる。分子が 2 乗、分母が正の分数の和を下から評価するのに使い、条件つきの最小値や数学オリンピックの不等式に応用される。分母に負の数があると成り立つとは限らない。
前提知識: 判別式で示す不等式, Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学), 分数式
分子が 2 乗、分母が正の分数をいくつか足した式を、1 つの分数で下から押さえる不等式がある。まず 2 項の場合を、高校の方法(通分して差をとる)で示す。
実数 $x_1,x_2$ と正の数 $y_1,y_2$ について
$$
\frac{x_1^2}{y_1}+\frac{x_2^2}{y_2}\ge\frac{(x_1+x_2)^2}{y_1+y_2}
$$
を示す。左辺から右辺を引いて通分すると、分子は
$$
x_1^2y_2(y_1+y_2)+x_2^2y_1(y_1+y_2)-(x_1+x_2)^2y_1y_2=x_1^2y_2^2+x_2^2y_1^2-2x_1x_2y_1y_2=(x_1y_2-x_2y_1)^2
$$
となり($x_1^2y_1y_2$ と $x_2^2y_1y_2$ の項が打ち消し合う)、
$$
\frac{x_1^2}{y_1}+\frac{x_2^2}{y_2}-\frac{(x_1+x_2)^2}{y_1+y_2}=\frac{(x_1y_2-x_2y_1)^2}{y_1y_2(y_1+y_2)}\ge0
$$
である。分母は正、分子は 2 乗なので $0$ 以上である。等号は $x_1y_2=x_2y_1$、すなわち $\frac{x_1}{y_1}=\frac{x_2}{y_2}$ のときに限る。
数で確かめると、$x=(1,2)$、$y=(1,3)$ では左辺 $1+\frac43=\frac73$、右辺 $\frac{3^2}4=\frac94$ で、差は $\frac73-\frac94=\frac1{12}$ である。式の右辺も $\frac{(1\cdot3-2\cdot1)^2}{1\cdot3\cdot4}=\frac1{12}$ で一致する。
正の数 $x,y$ が $x+y=1$ を満たすとき、$\frac1x+\frac4y$ の最小値を求める。ex-efi-two-terms を分子 $1,2$、分母 $x,y$ に使うと
$$
\frac{1^2}x+\frac{2^2}y\ge\frac{(1+2)^2}{x+y}=9
$$
である。等号は $\frac1x=\frac2y$、すなわち $y=2x$ のときで、$x+y=1$ と合わせて $x=\frac13$、$y=\frac23$ である。このとき $3+6=9$ なので、最小値は $9$ である。
項が 3 つ以上になると、通分の計算は急に大変になる。この記事では、判別式を使って項の数によらず一度に示す。答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 通分して差を 2 乗の形にする | ex-efi-two-terms | Lagrange の恒等式の重み付き版 |
| $\sum y_i\bigl(t-\frac{x_i}{y_i}\bigr)^2\ge0$ の判別式 | prop-efi-engel | 重み付き内積の Cauchy–Schwarz |
| 等号は比がそろうとき | 比 $\frac{x_i}{y_i}$ がすべて等しい | 1 次従属 |
| 係数を等号の場合から逆算する | 最良の $t_0=\frac{\sum x_i}{\sum y_i}$ | 正射影の係数 |
$n\ge1$ とし、実数 $x_1,\dots,x_n$ と正の数 $y_1,\dots,y_n$ について
$$
\frac{x_1^2}{y_1}+\frac{x_2^2}{y_2}+\cdots+\frac{x_n^2}{y_n}\ge\frac{(x_1+x_2+\cdots+x_n)^2}{y_1+y_2+\cdots+y_n}
$$
が成り立つ。等号が成り立つのは、比 $\frac{x_1}{y_1},\dots,\frac{x_n}{y_n}$ がすべて等しいときに限る。
方針:$t$ の 2 次式 $Q(t):=\sum_{i=1}^ny_i\bigl(t-\frac{x_i}{y_i}\bigr)^2$ を作る。$y_i>0$ なので各項は $0$ 以上で、$Q(t)\ge0$ である。これを展開して、判別式で示す不等式 の補題(すべての実数 $t$ で $at^2+2bt+c\ge0$ ⇔ $a\ge0$、$c\ge0$、$b^2\le ac$。さらに、すべての実数 $t$ で $at^2+2bt+c\ge0$ が成り立ち $a>0$ であるとき、$at^2+2bt+c=0$ となる $t$ があることと $b^2=ac$ は同値で、その $t$ は $-\frac ba$ だけ)を使う。以下、和はすべて $i=1$ から $n$ までとする。
段 1(展開):各項を展開すると
$$
y_i\Bigl(t-\frac{x_i}{y_i}\Bigr)^2=y_i\Bigl(t^2-\frac{2x_i}{y_i}t+\frac{x_i^2}{y_i^2}\Bigr)=y_it^2-2x_it+\frac{x_i^2}{y_i}
$$
である。$i$ について足すと
$$
Q(t)=\Bigl(\sum y_i\Bigr)t^2-2\Bigl(\sum x_i\Bigr)t+\sum\frac{x_i^2}{y_i}
$$
となる。
段 2(判別式):$Q(t)$ はすべての実数 $t$ で $0$ 以上なので、補題を $a=\sum y_i$、$b=-\sum x_i$、$c=\sum\frac{x_i^2}{y_i}$ に使うと
$$
\Bigl(\sum x_i\Bigr)^2\le\Bigl(\sum y_i\Bigr)\Bigl(\sum\frac{x_i^2}{y_i}\Bigr)
$$
を得る。$\sum y_i>0$ で両辺を割ると、示すべき不等式になる。
段 3(等号 ⇒ 比がそろう):等号が成り立つなら $b^2=ac$ である。$Q(t)$ はすべての実数 $t$ で $0$ 以上であり、$a=\sum y_i>0$ なので、補題の後半が使えて、$Q(t_0)=0$ となる $t_0$($t_0=-\frac ba$)がある。$Q(t_0)$ は $0$ 以上の数 $y_i\bigl(t_0-\frac{x_i}{y_i}\bigr)^2$ の和なので、各項が $0$ である。$y_i>0$ なので $t_0=\frac{x_i}{y_i}$ がすべての $i$ で成り立ち、比はすべて $t_0$ に等しい。
段 4(比がそろう ⇒ 等号):すべての $i$ で $\frac{x_i}{y_i}=s$ なら、$x_i=sy_i$ なので左辺は $\sum\frac{s^2y_i^2}{y_i}=s^2\sum y_i$、右辺は $\frac{(s\sum y_i)^2}{\sum y_i}=s^2\sum y_i$ で等しい。$\square$
この不等式は Engel 形とも、Titu の補題とも呼ばれる。段 1 の式を平方完成すると、
$$
t_0:=\frac{x_1+\cdots+x_n}{y_1+\cdots+y_n}
$$
として
$$
Q(t)=\Bigl(\sum y_i\Bigr)(t-t_0)^2+\Bigl(\sum\frac{x_i^2}{y_i}-\frac{(\sum x_i)^2}{\sum y_i}\Bigr)
$$
となる。$\sum y_i>0$ なので第 1 項は $0$ 以上で、$0$ になるのは $t=t_0$ のときだけである。よって $Q(t)$ は $t=t_0$ でいちばん小さくなり、最小値 $Q(t_0)$ はちょうど「左辺 $-$ 右辺」に等しい。
ex-efi-two-terms の $x=(1,2)$、$y=(1,3)$ で、
$$
Q(t)=1\cdot(t-1)^2+3\Bigl(t-\frac23\Bigr)^2=4t^2-6t+\frac73
$$
である。$t_0=\frac{1+2}{1+3}=\frac34$ で最小になり、$Q\bigl(\frac34\bigr)=4\cdot\frac9{16}-6\cdot\frac34+\frac73=\frac94-\frac92+\frac73=\frac1{12}$ である。これは ex-efi-two-terms で求めた差 $\frac1{12}$ と一致する(図 1)。2 つの比 $1$ と $\frac23$ が違うので、$Q(t)$ はどの $t$ でも $0$ にならず、等号は成り立たない。
図1:Q(t) = (t − 1)² + 3(t − 2/3)² のグラフと各項。t₀ = 3/4 で最小値 1/12(左辺と右辺の差)をとる
$\mathbb{R}^n$ に重み $y_i>0$ の内積 $\langle a,b\rangle_y:=\sum_iy_ia_ib_i$ を入れ、$u:=\bigl(\frac{x_1}{y_1},\dots,\frac{x_n}{y_n}\bigr)$、$v:=(1,\dots,1)$ とおくと
$$
\langle u,v\rangle_y=\sum x_i,\qquad\langle u,u\rangle_y=\sum\frac{x_i^2}{y_i},\qquad\langle v,v\rangle_y=\sum y_i
$$
である。Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学) $\langle u,v\rangle_y^2\le\langle u,u\rangle_y\langle v,v\rangle_y$ がちょうど prop-efi-engel であり、等号条件「$u$ が $v$ の実数倍」は「比 $\frac{x_i}{y_i}$ がすべて等しい」ことである。prop-efi-engel の証明の $Q(t)$ は $\langle tv-u,tv-u\rangle_y$ にほかならず、$t_0v$ は $u$ を $v$ の向きに正射影した点である。
正の数 $x,y,z$ が $x+y+z=1$ を満たすとき、$\frac1x+\frac4y+\frac9z$ の最小値を求める。prop-efi-engel を分子 $1,2,3$、分母 $x,y,z$ に使うと
$$
\frac{1^2}x+\frac{2^2}y+\frac{3^2}z\ge\frac{(1+2+3)^2}{x+y+z}=36
$$
である。等号は $\frac1x=\frac2y=\frac3z$ のとき、つまり $(x,y,z)$ が $(1,2,3)$ に比例するときで、$x+y+z=1$ と合わせて $(x,y,z)=\bigl(\frac16,\frac13,\frac12\bigr)$ である。このとき $6+12+18=36$ なので、最小値は $36$ である。
正の数 $a,b,c$ について $(a+b+c)\bigl(\frac1a+\frac1b+\frac1c\bigr)\ge9$ を示す。prop-efi-engel を分子 $1,1,1$、分母 $a,b,c$ に使うと
$$
\frac{1^2}a+\frac{1^2}b+\frac{1^2}c\ge\frac{(1+1+1)^2}{a+b+c}=\frac9{a+b+c}
$$
であり、両辺に $a+b+c>0$ を掛ければよい。等号は $\frac1a=\frac1b=\frac1c$、すなわち $a=b=c$ のときに限る。$a,b,c=1,2,3$ では左辺は $6\cdot\frac{11}6=11\ge9$ である。
正の数 $a,b$ について $\frac{a^2}b+\frac{b^2}a\ge a+b$ を示す。prop-efi-engel から
$$
\frac{a^2}b+\frac{b^2}a\ge\frac{(a+b)^2}{b+a}=a+b
$$
である。等号は $\frac ab=\frac ba$、すなわち $a=b$ のときに限る($a,b>0$ なので $a^2=b^2$ から $a=b$)。$a=1$、$b=2$ では左辺 $\frac12+4=\frac92$、右辺 $3$ である。
正の数 $a,b,c$ について $\frac a{b+c}+\frac b{c+a}+\frac c{a+b}\ge\frac32$ を示す。分子と分母に $a$ などを掛けて、分子を 2 乗の形にする:
$$
\frac a{b+c}+\frac b{c+a}+\frac c{a+b}=\frac{a^2}{a(b+c)}+\frac{b^2}{b(c+a)}+\frac{c^2}{c(a+b)}\ge\frac{(a+b+c)^2}{2(ab+bc+ca)}
$$
である(分母の和は $a(b+c)+b(c+a)+c(a+b)=2(ab+bc+ca)$)。さらに
$$
(a+b+c)^2-3(ab+bc+ca)=a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca=\frac12\bigl\{(a-b)^2+(b-c)^2+(c-a)^2\bigr\}\ge0
$$
なので $(a+b+c)^2\ge3(ab+bc+ca)$ であり、右辺は $\frac{3(ab+bc+ca)}{2(ab+bc+ca)}=\frac32$ 以上である。等号は、Engel 形の等号条件(比 $\frac a{a(b+c)}=\frac1{b+c}$ などがそろう、つまり $b+c=c+a=a+b$)と $(a-b)^2+(b-c)^2+(c-a)^2=0$ がともに成り立つとき、すなわち $a=b=c$ のときに限る。$a=b=c=1$ では左辺は $3\cdot\frac12=\frac32$ である。$a,b,c=1,2,3$ では左辺 $\frac15+\frac24+\frac33=1.7$、途中の値 $\frac{36}{22}=1.63\ldots$ で、$1.7\ge1.63\ldots\ge1.5$ となっている。
調和平均が相加平均以下であることを含む平均の大小関係は 平均の大小関係 で扱う。
| 外した条件 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 分母がすべて正 | 不等式そのもの | ex-efi-negative |
| 比がすべて等しい | 等号 | ex-efi-t0 |
$x=(1,1)$、$y=\bigl(1,-\frac12\bigr)$ とする。$y_1+y_2=\frac12>0$ だが、$y_2<0$ である。左辺は $\frac11+\frac1{-1/2}=1-2=-1$、右辺は $\frac{(1+1)^2}{1/2}=8$ で、$-1\ge8$ は成り立たない。満たす性質は「分母の和が正」、満たさない性質は「各分母が正」である。prop-efi-engel の証明では、各項 $y_i\bigl(t-\frac{x_i}{y_i}\bigr)^2$ が $0$ 以上であることを使ったが、$y_2<0$ だとこの項は $0$ 以下になり($t\ne\frac{x_2}{y_2}$ で負)、$Q(t)\ge0$ が崩れる。ただし、分母に負の数があっても不等式が成り立つ場合はある。たとえば $x=(1,1)$、$y=(1,-3)$ では、左辺 $1-\frac13=\frac23$、右辺 $\frac{(1+1)^2}{1-3}=-2$ で成り立つ。反例 1 つが示すのは「成り立つとは限らない」ことである。
正の実数 $a,b,c$ が $abc=1$ を満たすとき、
$$
\frac1{a^3(b+c)}+\frac1{b^3(c+a)}+\frac1{c^3(a+b)}\ge\frac32
$$
を証明せよ。
出典:国際数学オリンピック(1995 年、トロント大会)第 2 問(Oly95)。和訳は本記事による。
図 2 は、$abc=1$ を保ったまま $a=b=s$、$c=\frac1{s^2}$ と動かしたときの左辺のグラフで、$s=1$($a=b=c=1$)で最小値 $\frac32$ をとっている。
段 1(置き換え):$x:=\frac1a$、$y:=\frac1b$、$z:=\frac1c$ とおくと、$x,y,z>0$、$xyz=1$ であり、
$$
\frac1{a^3(b+c)}=\frac{x^3}{\frac1y+\frac1z}=\frac{x^3yz}{y+z}=\frac{x^2\cdot xyz}{y+z}=\frac{x^2}{y+z}
$$
である(2 つ目の等号は分母分子に $yz$ を掛けた)。他の 2 項も同様なので、示すべきことは
$$
\frac{x^2}{y+z}+\frac{y^2}{z+x}+\frac{z^2}{x+y}\ge\frac32\qquad(xyz=1)
$$
である。
段 2(1 項ずつの評価):等号は $x=y=z=1$ で成り立つと予想され、そのとき $\frac{x^2}{y+z}=\frac12$、$\frac{y+z}4=\frac12$ である。そこで
$$
\frac{x^2}{y+z}-x+\frac{y+z}4=\frac{\bigl(x-\frac{y+z}2\bigr)^2}{y+z}\ge0
$$
を使う(右辺の分子を展開すると $x^2-x(y+z)+\frac{(y+z)^2}4$ で、$y+z$ で割ると左辺になる)。同様の 3 つの不等式を足すと、$S:=x+y+z$ として
$$
\frac{x^2}{y+z}+\frac{y^2}{z+x}+\frac{z^2}{x+y}\ge S-\frac{2S}4=\frac S2
$$
である($(y+z)+(z+x)+(x+y)=2S$ を使った)。
段 3(3 数の相加相乗平均):正の数 $p,q,r$ について、因数分解
$$
p^3+q^3+r^3-3pqr=\frac12(p+q+r)\bigl\{(p-q)^2+(q-r)^2+(r-p)^2\bigr\}\ge0
$$
が成り立つ。$p=\sqrt[3]x$、$q=\sqrt[3]y$、$r=\sqrt[3]z$ とすると $pqr=\sqrt[3]{xyz}=1$ なので $S=x+y+z\ge3$ である。
段 4(まとめ):段 2・段 3 から、左辺 $\ge\frac S2\ge\frac32$ である。等号は $x=y=z$ かつ $xyz=1$、すなわち $a=b=c=1$ のときに成り立つ。$\square$
図2:abc = 1 を保つ断面 a = b = s、c = 1/s² で見た左辺。s = 1 で最小値 3/2 をとる
段 2 の「1 項ずつの評価」は、何を足したのかが分かりにくく、係数 $\frac14$ は等号の場合から逆算して見つけたものである。prop-efi-engel の側から見ると、これは次のように説明できる。
分母を $y_1:=y+z$、$y_2:=z+x$、$y_3:=x+y$、分子の平方根を $x_1:=x$、$x_2:=y$、$x_3:=z$ とすると、prop-efi-engel の証明の 2 次式から、すべての実数 $t$ について
$$
\sum_{i=1}^3\frac{x_i^2}{y_i}-2t\sum_{i=1}^3x_i+t^2\sum_{i=1}^3y_i=\sum_{i=1}^3y_i\Bigl(t-\frac{x_i}{y_i}\Bigr)^2\ge0
$$
である。高校の解の「1 項ずつの評価を足したもの」は、この式で $t=\frac12$ としたものにほかならない。一方、Engel 形は $t$ を最良の値 $t_0=\frac{\sum x_i}{\sum y_i}$ にとったものであり、ここでは $\sum y_i=2S$ なので $t_0=\frac S{2S}=\frac12$ となる。つまり、係数 $\frac14=t_0^2$ は偶然ではなく、Cauchy–Schwarz の不等式が自動的に選ぶ最良の係数である。prop-efi-engel を直接使えば
$$
\frac{x^2}{y+z}+\frac{y^2}{z+x}+\frac{z^2}{x+y}\ge\frac{(x+y+z)^2}{2(x+y+z)}=\frac S2
$$
が 1 行で得られる。
この見方から、1 項ずつの評価がいつ効くかも分かる。$t$ を定数に決めて足す方法が最良の評価を与えるのは、最良の $t_0=\frac{\sum x_i}{\sum y_i}$ が変数によらない定数になるときである。この問題では $\sum y_i=2\sum x_i$ がつねに成り立つので、$t_0=\frac12$ は定数であった。$t_0$ が変数によるときは、定数の係数で評価を足すと損をするが、Engel 形はそのまま使える。最初の置き換え $x=\frac1a$ は、分母の次数を下げて、分子が 2 乗、分母が 1 次の Engel 形に合う形を作る操作と読める。
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