Vitaliの収束定理(Vitali convergence theorem)とは、σ-有限な測度空間上で $1\le p<\infty$ とし、$f_n\in L^p$ がほとんど至る所で $f$ に収束するとき、$f\in L^p$ かつ $\|f_n-f\|_p\to0$ となるための必要十分条件は $\{|f_n|^p\}$ が一様可積分であることである、という定理である。可積分な関数による支配を仮定する優収束定理を含み、支配関数がない場合にも $L^p$ 収束を判定できる。測度が有限なら、測度の小さい集合の上の積分が一様に小さいことだけで足りる。ほとんど至る所の収束を測度収束に替えても同じ同値性が成り立ち、$p=1$ で $f\in L^1$ のときは、一様可積分性は $\|f_n\|_1\to\|f\|_1$ と同値になる。
優収束定理 によれば、ほとんど至る所 $f_n\to f$ で、$|f_n|\le g$ となる $g\in L^p$ があれば、$L^p$ で $f_n\to f$ である。しかし支配する関数 $g$ の存在は収束に必要ではない。一方で、区間 $(0,1)$ 上の $f_n:=n1_{(0,1/n)}$ はほとんど至る所 $0$ に収束するのに $\|f_n\|_1=1$ のままで、何の仮定もなしには収束は起こらない。
Vitaliの収束定理(Vitali convergence theorem)は、σ-有限な測度空間の上で $1\le p<\infty$ のとき、$L^p$ の列 $(f_n)$ がほとんど至る所 $f$ に収束するならば、$L^p$ で $f$ に収束するための必要十分条件が、$\{|f_n|^p\}$ の一様可積分性であることを述べる。優収束定理の支配条件は一様可積分性の十分条件の 1 つにすぎず、Vitali の定理は収束の条件をちょうど過不足なく与える。測度が有限なら、測度の小さい集合の上での一様性だけで足りる。
この記事を通して、$(\Omega,\mathcal{A},\mu)$ は測度空間、$1\le p<\infty$ とし、関数は実数値の可測関数とする。$L^p:=L^p(\Omega,\mu)$ と書く。主定理では $\mu$ は σ-有限とする。
$\mu$ を σ-有限とする。$F\subset L^1$ が一様可積分であるとは、次の 3 条件が成り立つことをいう(一様可積分性 の定義「一様可積分性」)。
この記事では、$f_n\in L^p$ について族 $\{|f_n|^p\mid n\ge1\}\subset L^1$ にこの定義を当てる。$\mu(\Omega)<\infty$ なら (c) は自動的に成り立つ。
証明では、凸関数 $t\mapsto t^p$ の凸性から従う不等式
$$
|a-b|^p\le2^{p-1}\bigl(|a|^p+|b|^p\bigr)\qquad(a,b\in\mathbb{R}) \qquad(1)
$$
を何度も使う($|a-b|\le|a|+|b|$ と $\bigl(\frac{s+t}2\bigr)^p\le\frac{s^p+t^p}2$ による)。
$\mu(\Omega)<\infty$ とし、$f_n\in L^p$ がほとんど至る所で可測関数 $f$ に収束するとする。さらに次を仮定する:任意の $\varepsilon>0$ に対し $\delta>0$ があり、$\mu(E)<\delta$ となるすべての可測集合 $E$ とすべての $n$ について $\int_E|f_n|^p\,d\mu<\varepsilon$ となる。
このとき $f\in L^p$ であり、$\|f_n-f\|_p\to0$ である。
Egorovの定理 の定理「Egorovの定理」により、任意の $\eta>0$ に対し、$\mu(A)<\eta$ となる可測集合 $A$ で、$\Omega\setminus A$ の上で $f_n\to f$ が一様収束するものがある。
$f\in L^p$ であること。 $\varepsilon=1$ に対する $\delta_1$ をとり、$\mu(A)<\delta_1$ で $\Omega\setminus A$ の上で一様収束する $A$ をとる。ある $n_0$ について $\Omega\setminus A$ の上で $|f-f_{n_0}|\le1$ なので、(1) から
$$
\int_{\Omega\setminus A}|f|^p\,d\mu\le2^{p-1}\Bigl(\int_\Omega|f_{n_0}|^p\,d\mu+\mu(\Omega)\Bigr)<\infty
$$
である。$A$ の上では $|f_n|^p1_A\to|f|^p1_A$ がほとんど至る所で成り立つので、Fatouの補題 から $\int_A|f|^p\le\liminf_n\int_A|f_n|^p\le1$ である。よって $f\in L^p$ である。
収束。 $\varepsilon>0$ に対する $\delta$ をとり、$\mu(A)<\delta$ で $\Omega\setminus A$ の上で一様収束する $A$ をとる。上と同じく Fatou の補題から $\int_A|f|^p\le\varepsilon$ である。$\Omega\setminus A$ と $A$ に分け、$A$ の上で (1) を使うと
$$
\int_\Omega|f_n-f|^p\,d\mu\le\mu(\Omega)\sup_{\Omega\setminus A}|f_n-f|^p+2^{p-1}\Bigl(\int_A|f_n|^p\,d\mu+\int_A|f|^p\,d\mu\Bigr)\le\mu(\Omega)\sup_{\Omega\setminus A}|f_n-f|^p+2^p\varepsilon
$$
である。右辺の第 1 項は $n\to\infty$ で $0$ に収束するので $\limsup_n\|f_n-f\|_p^p\le2^p\varepsilon$ であり、$\varepsilon$ は任意である。$\square$
ノルムの有界性 (a) は仮定していない。1 点が正の測度をもつ空間では (b) から (a) は従わないが(一様可積分性 の例「反例の確認」の 1)、その点での値の収束はほとんど至る所の収束が保証するので、結論は変わらない。$p=1$ の場合は Egorovの定理 の節「応用」で述べた形と同じ主張である。この形の定理は Bre11 Exercise 4.14 の 4(p. 122)に演習として置かれている。
$\mu$ を σ-有限とし、$f_n\in L^p$ がほとんど至る所で可測関数 $f$ に収束するとする。次は同値である。
2 ⇒ 3 は定義から明らかである。
3 ⇒ 1。 $\varepsilon>0$ とし、(c) から $\mu(\omega)<\infty$ で、すべての $n$ について $\int_{\Omega\setminus\omega}|f_n|^p<\varepsilon$ となる $\omega$ をとる。$\Omega\setminus\omega$ の上で Fatou の補題を使うと $\int_{\Omega\setminus\omega}|f|^p\le\liminf_n\int_{\Omega\setminus\omega}|f_n|^p\le\varepsilon$ である。測度有限な $\omega$ に $\mu$ を制限すると、$f_n|_\omega$ は (b) を満たすので、thm-vit-finite により $f|_\omega\in L^p(\omega)$ かつ $\int_\omega|f_n-f|^p\to0$ である。$\varepsilon=1$ の場合から $\int_\Omega|f|^p\le\int_\omega|f|^p+1<\infty$ なので $f\in L^p$ である。また (1) から
$$
\int_\Omega|f_n-f|^p\,d\mu\le\int_\omega|f_n-f|^p\,d\mu+2^{p-1}\Bigl(\int_{\Omega\setminus\omega}|f_n|^p\,d\mu+\int_{\Omega\setminus\omega}|f|^p\,d\mu\Bigr)
$$
であり、右辺の第 2 項は $2^p\varepsilon$ 以下なので $\limsup_n\|f_n-f\|_p^p\le2^p\varepsilon$ である。
1 ⇒ 2。 $g_n:=|f_n-f|^p$ とおくと $\|g_n\|_1\to0$ であり、(1) から $|f_n|^p\le2^{p-1}(g_n+|f|^p)$ である。(a):$\sup_n\|g_n\|_1<\infty$ なので $\sup_n\|f_n\|_p^p\le2^{p-1}\bigl(\sup_n\|g_n\|_1+\|f\|_p^p\bigr)<\infty$ である。(b):$\varepsilon>0$ に対し、$n>N$ なら $\|g_n\|_1<\varepsilon$ となる $N$ をとる。有限集合 $\{|f_1|^p,\dots,|f_N|^p,|f|^p\}$ は一様可積分なので(一様可積分性 の命題「一様可積分な族の作り方」の 3)、これについて $\varepsilon$ に対する $\delta$ をとる。$\mu(E)<\delta$ なら、$n\le N$ では $\int_E|f_n|^p<\varepsilon$、$n>N$ では
$$
\int_E|f_n|^p\,d\mu\le2^{p-1}\Bigl(\|g_n\|_1+\int_E|f|^p\,d\mu\Bigr)<2^p\varepsilon
$$
である。(c) も、同じ有限集合について $\varepsilon$ に対する $\omega$ をとれば同様である。$\square$
1 ⇒ 2 ではほとんど至る所の収束を使っていない。$L^p$ で収束する列の $\{|f_n|^p\}$ はいつも一様可積分である。
$|f_n|\le g$ となる $g\in L^p$ があれば、$|f_n|^p\le g^p\in L^1$ なので $\{|f_n|^p\}$ は一様可積分であり(一様可積分性 の命題「一様可積分な族の作り方」の 2)、thm-vit-main から $L^p$ での優収束定理が従う。逆は成り立たない。$(0,1)$ 上で $f_n:=n1_{(1/(n+1),1/n)}$ とおくと、$\|f_n\|_1=1/(n+1)\to0$ なので $L^1$ で $0$ に収束するが、$\sup_nf_n(x)$ は $x\in(1/(n+1),1/n)$ で $n$ に等しく、$\int_0^1\sup_nf_n\,dx=\sum_n\frac1{n+1}=\infty$ なので、可積分な支配関数はない。
$f_n$ が $f$ に測度収束するとは、任意の $\eta>0$ について $\mu(\{|f_n-f|>\eta\})\to0$ となることをいう。確率空間では確率収束と呼ばれる。ほかの収束との含意の全体は 可測関数列の収束 にまとめてある。
$\mu$ を σ-有限とし、$f_n\in L^p$ が可測関数 $f$ に測度収束するとする。$f\in L^p$ かつ $\|f_n-f\|_p\to0$ となるための必要十分条件は、$\{|f_n|^p\}$ が一様可積分であることである。
要点:必要性は prf-vit-main の 1 ⇒ 2 と同じである。十分性は、測度収束する列がほとんど至る所収束する部分列をもつことを使い、「どの部分列もさらに $L^p$ で収束する部分列をもつ」ことから列全体の収束を導く。
必要性:prf-vit-main の 1 ⇒ 2 はほとんど至る所の収束を使っていない。
部分列:測度収束する列 $(h_n)$(極限 $h$)について、$\mu(\{|h_{n_k}-h|>2^{-k}\})<2^{-k}$ となる $n_1< n_2<\cdots$ をとり、$B_k:=\{|h_{n_k}-h|>2^{-k}\}$ とおく。$B:=\bigcap_m\bigcup_{k\ge m}B_k$ は各 $m$ で $\mu(B)\le\sum_{k\ge m}2^{-k}=2^{1-m}$ なので $\mu(B)=0$ である。$x\notin B$ ならある $m$ 以降 $x\notin B_k$ なので $|h_{n_k}(x)-h(x)|\le2^{-k}$ となり、$h_{n_k}\to h$ はほとんど至る所で成り立つ(可測関数列の収束 の定理「Rieszの部分列定理」)。
十分性:$(f_n)$ の任意の部分列 $(f_{n'})$ も $f$ に測度収束し、$\{|f_{n'}|^p\}$ は一様可積分な族の部分集合なので一様可積分である。上の議論により、さらに部分列 $(f_{n''})$ がほとんど至る所 $f$ に収束し、thm-vit-main により $f\in L^p$ かつ $\|f_{n''}-f\|_p\to0$ である。実数列 $a_n:=\|f_n-f\|_p$ のどの部分列も $0$ に収束する部分列をもつので、$a_n\to0$ である(そうでなければ、ある $\eta>0$ と部分列で $a_{n'}\ge\eta$ となり矛盾する)。$\square$
確率論の言葉では、可積分な確率変数の列 $X_n$ が $X$ に確率収束するとき、$E|X_n-X|\to0$ となるための必要十分条件は $(X_n)$ が一様可積分であることである。
$p=1$ では、ほとんど至る所の収束のもとで、一様可積分性はノルムの収束と同値になる。
$(\Omega,\mathcal{A},\mu)$ を任意の測度空間とし、$f_n,f\in L^1$、ほとんど至る所 $f_n\to f$ とする。$\|f_n-f\|_1\to0$ となるための必要十分条件は $\|f_n\|_1\to\|f\|_1$ である。
必要性は $\bigl|\|f_n\|_1-\|f\|_1\bigr|\le\|f_n-f\|_1$ による。十分性:$\varphi_n:=|f_n|-|f_n-f|$ とおくと、三角不等式から $|\varphi_n|\le|f|$ であり、ほとんど至る所 $\varphi_n\to|f|$ である。優収束定理 から $\int\varphi_n\to\int|f|$、すなわち $\|f_n\|_1-\|f_n-f\|_1\to\|f\|_1$ である。$\|f_n\|_1\to\|f\|_1$ と合わせて $\|f_n-f\|_1\to0$ を得る。$\square$
σ-有限な測度で thm-vit-main と合わせると、ほとんど至る所 $f_n\to f$、$f_n,f\in L^1$ のとき、$(f_n)$ が一様可積分であることと $\|f_n\|_1\to\|f\|_1$ は同値である。たとえば確率密度関数 $f_n\ge0$、$f\ge0$($\int f_n=\int f=1$)がほとんど至る所 $f_n\to f$ を満たせば、$\|f_n-f\|_1\to0$ である。この判定法は Bre11 Exercise 4.13 の 3(p. 121)に演習として置かれている。$1< p<\infty$ でも、ほとんど至る所 $f_n\to f$、$f_n,f\in L^p$ のとき、$\|f_n\|_p\to\|f\|_p$ なら $\|f_n-f\|_p\to0$ である(Brezis–Liebの補題 の系「ノルムの収束による判定」)。
$\mu$ を σ-有限とし、$f_n,f\in L^1$ とする。$L^1$ で $f_n\to f$ が弱収束し(弱位相 $\sigma(L^1,L^\infty)$)、かつほとんど至る所 $f_n\to f$ ならば、$\|f_n-f\|_1\to0$ である。
Dunford–Pettisの定理 の系「弱収束列と弱収束部分列」の 1 により、弱収束する列 $(f_n)$ は一様可積分である。$p=1$ の thm-vit-main の 2 ⇒ 1 を使えばよい。$\square$
弱収束だけ、またはほとんど至る所の収束だけでは、ノルム収束は従わない(ex-vit-counter の 3 と 1)。この系は Bre11 Problem 23 の C1(p. 468)に問題として置かれている。
$\mu(\Omega)<\infty$、$1\le p< q<\infty$ とし、$f_n\to f$ がほとんど至る所で成り立ち、$\sup_n\|f_n\|_q<\infty$ とする。$h_n:=|f_n|^p$ は $\|h_n\|_{q/p}=\|f_n\|_q^p$ により $L^{q/p}$ で有界であり、$q/p>1$ なので $\{h_n\}$ は一様可積分である(一様可積分性 の例「Lp で有界な族」)。thm-vit-main から $f\in L^p$ かつ $\|f_n-f\|_p\to0$ である。$q=p$ ではこの結論は成り立たない(ex-vit-counter の 4 は $p=q=2$ の場合である)。
thm-vit-main の 3 ⇒ 1 の仮定を 1 つずつ外す。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| (b) 小さな集合での一様性 | $(0,1)$ 上の $f_n=n1_{(0,1/n)}$、$p=1$ | $L^p$ 収束 |
| (c) 無限遠での一様性 | $\mathbb{R}$ 上の $f_n=1_{(n,n+1)}$、$p=1$ | $L^p$ 収束 |
| ほとんど至る所の収束 | $(0,1)$ 上の $r_n(x)=(-1)^{\lfloor2^nx\rfloor}$(Rademacher関数)、$p=1$ | $L^p$ 収束 |
| $\{\lvert f_n\rvert^p\}$ の一様可積分性($\{\lvert f_n\rvert\}$ の一様可積分性に弱める) | $(0,1)$ 上の $f_n=n^{1/2}1_{(0,1/n)}$、$p=2$ | $L^p$ 収束 |
Vitali の名の付いた定理には、Vitaliの被覆定理 もあるが、これは被覆に関する別の定理である。また Vitali–Hahn–Saks の定理は、測度の列の一様な絶対連続性に関する別の定理である。この記事の定理は、ほとんど至る所の収束と $L^p$ 収束の関係を述べるものである。
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