Legendreの三平方定理(Legendre's three-square theorem)とは、0 以上の整数 $n$ が 3 つの整数の平方の和 $x^2+y^2+z^2$ で書けるための必要十分条件は、$n$ が $4^a(8b+7)$ の形でないことである、という定理である。書けない向きは平方数を 8 で割った余りが 0, 1, 4 に限ることから従い、書ける向きは、行列式 1 の正定値な 3 変数の整数係数二次形式がすべて $x^2+y^2+z^2$ と同値であることと、Dirichlet の算術級数定理を使って $n$ をとる行列式 1 の形式を作ることで示される。系として、すべての 0 以上の整数が 3 つの三角数の和で書けることや、Lagrange の四平方定理が従う。
前提知識: 平方数, Jacobi記号, Dirichletの算術級数定理, 正定値行列
$1=1^2$、$2=1^2+1^2$、$3=1^2+1^2+1^2$、$5=2^2+1^2$、$6=2^2+1^2+1^2$ のように、小さい正の整数の多くは 3 つの平方数の和で書ける($0^2$ も使ってよい)。ところが $7$ はどう組み合わせても書けず、$15,23,28,31$ も書けない。Lagrangeの四平方定理によればどの正の整数も 4 つの平方数の和で書けるが、3 つでは足りない場合がある。どの整数が 3 つで足りるかを完全に決めるのが Legendre の三平方定理 で、答えは「$4^a(8b+7)$ の形でないもの」である。
書けない向きは法 $8$ の計算で終わるが、書ける向きは深い。この記事では、行列式 $1$ の正定値な 3 変数の整数係数二次形式がすべて $x^2+y^2+z^2$ と同値であること(thm-l3s-det-one)と、$n$ を表す行列式 $1$ の形式が作れること(lem-l3s-construction)を示して証明する。後者にはDirichletの算術級数定理と Jacobi記号 の相互法則を使う。「三平方」という名前は、直角三角形の 三平方の定理(Pythagoras の定理)とは関係がない。
$n\ge0$ を整数とする。$n=x^2+y^2+z^2$ となる整数 $x,y,z$ があるための必要十分条件は、$n$ が $4^a(8b+7)$($a,b$ は $0$ 以上の整数)の形でないことである。
書けない向きは prop-l3s-necessity、書ける向きは thm-l3s-det-one と lem-l3s-construction を合わせた prf-l3s-main で示す。
$100$ 以下で $4^a(8b+7)$ の形の数は
$$
7,\ 15,\ 23,\ 28,\ 31,\ 39,\ 47,\ 55,\ 60,\ 63,\ 71,\ 79,\ 87,\ 92,\ 95
$$
の 15 個である($28=4\cdot7$、$60=4\cdot15$、$92=4\cdot23$)。それ以外の $0$ から $100$ までの整数はすべて 3 つの平方数の和である。
整数 $x$ について、$x^2$ を $8$ で割った余りは $0,1,4$ のいずれかで、$x$ が奇数なら $1$ である。$x^2$ を $4$ で割った余りは $0$ か $1$ で、$x$ が偶数のとき $0$ である。
$x=2m$ なら $x^2=4m^2$ で、$m^2$ の偶奇に応じて $x^2\equiv0,4\pmod8$ である。$x=2m+1$ なら $x^2=4m(m+1)+1$ で、$m(m+1)$ は偶数なので $x^2\equiv1\pmod8$ である。$\square$
$4^a(8b+7)$ の形の整数は 3 つの平方数の和で書けない。
$a=0$ のとき:3 つの数 $x^2,y^2,z^2$ の法 $8$ の余りはそれぞれ $0,1,4$ のどれかで、3 つの余りの組の和は $0,1,2,3,4,5,6,8,9,12$ のいずれかで($0,1,4$ から重複を許して 3 つ選ぶ 10 通り)、$8$ で割った余りは $0,1,2,3,4,5,6,0,1,4$ であり、$7$ にはならない。
$a\ge1$ のとき:$4^a(8b+7)=x^2+y^2+z^2$ とする。左辺は $4$ で割り切れる。lem-l3s-mod8 により各 $x^2,y^2,z^2$ は法 $4$ で $0$ か $1$ であり、和が $0$ になるのは 3 つとも $0$、すなわち $x,y,z$ がすべて偶数のときに限る。すると $4^{a-1}(8b+7)=(x/2)^2+(y/2)^2+(z/2)^2$ となり、帰納法の仮定に反する。$\square$
書ける向きを示すため、整数係数の二次形式の言葉を用意する。以下、$k$ 次の整数成分の対称行列 $A=(a_{ij})$ に二次形式 $f_A(x):=x^{\top}Ax=\sum_{i,j}a_{ij}x_ix_j$ を対応させる(交差項 $x_ix_j$ の係数は $2a_{ij}$ で偶数)。
$k$ 次の整数成分の対称行列 $A$ が正定値行列であるとき、$f_A$ を 正定値な整数形式 という。整数成分で行列式が $\pm1$ の $k$ 次正方行列の群を $\operatorname{GL}_k(\mathbb{Z})$ と書く。ある $P\in\operatorname{GL}_k(\mathbb{Z})$ で $A'=P^{\top}AP$ となるとき、$A$ と $A'$($f_A$ と $f_{A'}$)は 同値 であるという。
$f_{A'}(x)=f_A(Px)$ であり、$x\mapsto Px$ は $\mathbb{Z}^k$ の全単射なので、同値な形式は整数ベクトルで同じ値の集合をとる。$\det A'=(\det P)^2\det A=\det A$ である。単位行列 $I_3$ の形式は $x_1^2+x_2^2+x_3^2$ であり、$n$ が 3 つの平方数の和であることは、$f_{I_3}$ が $n$ をとることと同じである。
成分の最大公約数が $1$ の $v\in\mathbb{Z}^k$ について、第 1 列が $v$ の $P\in\operatorname{GL}_k(\mathbb{Z})$ がある。
要点:Euclidの互除法を成分に施す。
「ある成分から別の成分の整数倍を引く」「2 つの成分を入れ替える」「成分の符号を変える」操作は、行列式 $\pm1$ の整数行列を左から掛けることで実現できる。成分のうち $0$ でないものが 2 つ以上ある間、絶対値が最小の $0$ でない成分を $v_i$ として、ほかの成分 $v_j$ を $v_j$ を $v_i$ で割った余りに置き換える。成分の絶対値の和は真に減るので、有限回で $0$ でない成分は 1 つになり、その値は最大公約数 $\pm1$ である(各操作で成分の最大公約数は変わらない)。入れ替えと符号の変更で $e_1$ にできる。こうして $Qv=e_1$ となる $Q\in\operatorname{GL}_k(\mathbb{Z})$ が得られ、$P:=Q^{-1}$ の第 1 列は $Pe_1=v$ である。$\square$
$f_A$ を正定値な整数形式とする。$0$ でない整数ベクトルでの $f_A$ の値の最小値 $m$ があり、$m$ は正の整数である。さらに $A$ と同値で $(1,1)$ 成分が $m$ の行列がある。
要点:正定値なので値が一定以下の整数ベクトルは有限個で、最小値をとるベクトルは原始的になり、lem-l3s-primitive で第 1 の基底にできる。
$A$ の最小固有値を $\lambda>0$ とすると $f_A(x)\ge\lambda\lvert x\rvert^2$ なので(正定値行列 の定理「正定値行列の特徴づけ」)、$f_A(x)\le C$ となる整数ベクトル $x$ は有限個で、最小値 $m$ がとられる。$f_A$ の値は整数なので $m$ は正の整数である。最小値をとる $v$ の成分の最大公約数を $g$ とすると、$v/g$ も整数ベクトルで $f_A(v/g)=m/g^2$ なので、最小性から $g=1$ である。lem-l3s-primitive の $P$ をとると $P^{\top}AP$ の $(1,1)$ 成分は $f_A(Pe_1)=f_A(v)=m$ である。$\square$
$B$ を行列式 $D$ の 2 次の正定値な整数形式の行列とする。$0$ でない整数ベクトルでの $f_B$ の最小値 $m$ は $m\le\sqrt{4D/3}$ を満たす。
要点:最小値を $(1,1)$ 成分に移し、平行移動で $(1,2)$ 成分を $m/2$ 以下にすると $D\ge\frac34m^2$ になる。
lem-l3s-minimum により $B=\begin{pmatrix}m&b\\b&c\end{pmatrix}$ としてよい。基底 $e_1,e_2$ を $e_1,e_2+te_1$($t\in\mathbb{Z}$)に替えると $(1,2)$ 成分は $b+tm$ に、$(2,2)$ 成分は $f_B(e_2+te_1)$ になり、行列式は変わらない。$t$ を選んで $\lvert b\rvert\le m/2$ としてよい。$c=f_B(e_2)\ge m$ なので $D=mc-b^2\ge m^2-m^2/4=\frac34m^2$ である。$\square$
行列式が $1$ の 3 次の正定値な整数形式は、$x_1^2+x_2^2+x_3^2$ と同値である。すなわち、整数成分の正定値対称行列 $A$ で $\det A=1$ のものは、ある $P\in\operatorname{GL}_3(\mathbb{Z})$ によって $A=P^{\top}P$ と書ける。
$f=f_A$ の $0$ でない整数ベクトルでの最小値を $m$ とする。lem-l3s-minimum により $a_{11}=m$ としてよい。平方完成により
$$
m\,f(x)=(mx_1+a_{12}x_2+a_{13}x_3)^2+g(x_2,x_3)
$$
と書ける。ここで $g$ は行列 $G=\bigl(ma_{ij}-a_{1i}a_{1j}\bigr)_{i,j=2,3}$ の 2 変数の形式で、成分は整数である。$G/m$ は $A$ の $(1,1)$ 成分に関する Schur 補行列なので正定値で(正定値行列 の補題「Schur 補行列による分解」)、$\det A=m\det(G/m)$ から $\det G=m^2\det(G/m)=m$ である。
lem-l3s-binary により、$0$ でない整数ベクトル $(y_2,y_3)$ で $g(y_2,y_3)\le\sqrt{4m/3}$ となるものがある。整数 $y_1$ を $\lvert my_1+a_{12}y_2+a_{13}y_3\rvert\le m/2$ となるように選ぶと、$y=(y_1,y_2,y_3)\ne0$ なので $f(y)\ge m$ であり、
$$
m^2\le m\,f(y)\le\frac{m^2}4+\sqrt{\frac{4m}3}
$$
となる。よって $\frac34m^2\le\sqrt{4m/3}$、両辺を 2 乗して $\frac9{16}m^4\le\frac43m$、すなわち $m^3\le\frac{64}{27}$ であり、$m\le\frac43$ である。$m$ は正の整数なので $m=1$ である。
$a_{11}=1$ なので、$x_1\mapsto x_1-a_{12}x_2-a_{13}x_3$(行列式 $1$ の整数係数の変数変換)によって $f$ は $x_1^2+h(x_2,x_3)$ の形の同値な形式になる。$h$ は 2 変数の正定値な整数形式で、行列式は $\det A=1$ に等しい。lem-l3s-binary の証明の行列を $h$ に使うと、最小値 $m'$ は $m'\le\sqrt{4/3}$ から $m'=1$、$(1,2)$ 成分 $b'$ は $\lvert b'\rvert\le\frac12$ から $b'=0$、$(2,2)$ 成分は行列式 $1=1\cdot c'-0$ から $c'=1$ である。よって $h$ は $x_2^2+x_3^2$ と同値で、$f$ は $x_1^2+x_2^2+x_3^2$ と同値である。$A$ が $I_3$ と同値であることは、$Q^{\top}AQ=I_3$ となる $Q\in\operatorname{GL}_3(\mathbb{Z})$ があることで、$P:=Q^{-1}$ とおけば $A=P^{\top}P$ である。$\square$
同じ議論を一般の行列式 $\Delta$ で行うと、3 変数の正定値な整数形式の最小値について $m\le\frac43\Delta^{1/3}$ が得られる。行列式 $1$ を仮定したので、最小値が $1$ に決まり、1 変数ずつ切り離せた。
残るのは、$n$ をとる行列式 $1$ の正定値な形式を作ることである。
$n$ を正の整数で、$8$ で割った余りが $1,2,3,5,6$ のいずれかであるものとする。このとき、行列式 $1$ の 3 次の正定値な整数形式 $f_A$ で、$f_A(0,0,1)=n$ となるものがある。
整数 $D\ge1$、$c\ge1$、$b$ を
$$
c=nD-1,\qquad b^2\equiv-D\pmod c
$$
となるように選べたとする(この 2 条件を ($\ast$) と呼ぶ)。$a:=(b^2+D)/c$ は正の整数であり、
$$
A:=\begin{pmatrix}a&b&1\\b&c&0\\1&0&n\end{pmatrix}
$$
は $(3,3)$ 成分が $n$ で、$\det A=n(ac-b^2)-c=nD-c=1$ である。首座小行列式 $a$、$ac-b^2=D$、$\det A=1$ はすべて正なので、$A$ は正定値である(正定値行列 の定理「正定値行列の特徴づけ」)。よって ($\ast$) を満たす $D,c,b$ を見つければよい。以下、平方剰余の判定には Jacobi記号 の相互法則と補充法則(平方剰余の相互法則 の定理「Jacobi記号の相互法則」)を使う。正の奇数 $u,v$ について $\left(\frac{-1}u\right)=(-1)^{(u-1)/2}$、$\left(\frac2u\right)=(-1)^{(u^2-1)/8}$、互いに素なら $\left(\frac uv\right)\left(\frac vu\right)=(-1)^{\frac{u-1}2\frac{v-1}2}$ である。
$n\equiv2,6\pmod8$ の場合。 $n-1$ は奇数で $n$ と互いに素なので、$\gcd(4n,n-1)=1$ である。Dirichletの算術級数定理により、$p\equiv n-1\pmod{4n}$ となる素数 $p$ があり、$0\le n-1<4n$ なので $p=n(4j+1)-1$($j\ge0$)と書ける。$D:=4j+1$、$c:=p$ とおく。$n\equiv2\pmod4$ なので $p\equiv1\pmod4$、$\left(\frac{-1}p\right)=1$ である。$p=nD-1\equiv-1\pmod D$ なので $p$ と $D$ は互いに素で、$D\equiv1\pmod4$ から相互法則の符号は $1$ であり、
$$
\left(\frac Dp\right)=\left(\frac pD\right)=\left(\frac{-1}D\right)=1
$$
である。よって $\left(\frac{-D}p\right)=1$ であり、$b^2\equiv-D\pmod p$ となる $b$ がある。
$n\equiv1,3,5\pmod8$ の場合。 $n\equiv1\pmod4$ なら $c_0:=3$、$n\equiv3\pmod4$ なら $c_0:=1$ とおき、$r:=(c_0n-1)/2$ とおく。$c_0n\equiv3\pmod4$ なので $r$ は奇数であり、$\gcd(r,n)$ は $\gcd(c_0n-1,n)=1$ を割り切るので、$\gcd(4n,r)=1$ である。Dirichlet の定理により素数 $p\equiv r\pmod{4n}$ があり、$0< r<4n$ なので $p=r+4nj$($j\ge0$)と書ける。$D:=c_0+8j$ とおくと $nD-1=2r+8nj=2p$ である。$c:=2p$ とする。$2p\equiv-1\pmod D$ なので $p$ と $D$ は互いに素であり、相互法則と $\left(\frac{2p}D\right)=\left(\frac{-1}D\right)$ から
$$
\left(\frac{-D}p\right)=\left(\frac{-1}p\right)\left(\frac Dp\right)=\left(\frac{-1}p\right)(-1)^{\frac{D-1}2\frac{p-1}2}\left(\frac{-1}D\right)\left(\frac2D\right)
$$
である。$p\equiv r\pmod4$、$D\equiv c_0\pmod8$ を使って右辺の 4 つの因子を計算すると、次の表のとおりで、どの場合も積は $1$ である。
| $n\bmod8$ | $c_0$ | $p\bmod4$ | $D\bmod8$ | $\left(\frac{-1}p\right)$ | 符号 | $\left(\frac{-1}D\right)$ | $\left(\frac2D\right)$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $1$ | $3$ | $1$ | $3$ | $1$ | $1$ | $-1$ | $-1$ |
| $5$ | $3$ | $3$ | $3$ | $-1$ | $-1$ | $-1$ | $-1$ |
| $3$ | $1$ | $1$ | $1$ | $1$ | $1$ | $1$ | $1$ |
($n\equiv1\pmod8$ なら $3n-1\equiv2\pmod8$ で $r\equiv1\pmod4$、$n\equiv5$ なら $3n-1\equiv6\pmod8$ で $r\equiv3\pmod4$、$n\equiv3$ なら $n-1\equiv2\pmod8$ で $r\equiv1\pmod4$ である。)よって $b_0^2\equiv-D\pmod p$ となる $b_0$ があり、$b_0$ と $b_0+p$ の一方は $D$ と同じ偶奇なので、それを $b$ とすれば $b^2+D$ は $p$ でも $2$ でも割り切れ、$b^2\equiv-D\pmod{2p}$ である。$\square$
$n\equiv7\pmod8$ の場合に同じ計算をすると、$c_0=1$、$p\equiv3\pmod4$、$D\equiv1\pmod8$ で積は $-1$ になり、構成は止まる。これはprop-l3s-necessityと合っている。
必要性は prop-l3s-necessity である。十分性を示す。$n=0$ は $0^2+0^2+0^2$ である。$n\ge1$ が $4^a(8b+7)$ の形でないとし、$n=4^am$($4\nmid m$)と書く。$m$ は $4^0(8b+7)$ の形でないので $m\not\equiv7\pmod8$ であり、$4\nmid m$ と合わせて $m\bmod8\in\{1,2,3,5,6\}$ である。lem-l3s-construction により、$\det A=1$ の正定値な整数形式 $f_A$ で $f_A(e_3)=m$ となるものがある。thm-l3s-det-one により $A=P^{\top}P$($P\in\operatorname{GL}_3(\mathbb{Z})$)と書けるので、$Pe_3=(x,y,z)^{\top}$ とおけば
$$
m=e_3^{\top}Ae_3=\lvert Pe_3\rvert^2=x^2+y^2+z^2
$$
であり、$x,y,z$ は整数である。よって $n=(2^ax)^2+(2^ay)^2+(2^az)^2$ である。$\square$
$n=6\equiv6\pmod8$ では $p\equiv5\pmod{24}$ の最小の素数 $p=5$($j=0$)をとり、$D=1$、$c=5$ である。$b^2\equiv-1\pmod5$ から $b=2$、$a=(4+1)/5=1$ で
$$
A=\begin{pmatrix}1&2&1\\2&5&0\\1&0&6\end{pmatrix},\qquad f_A=(x_1+2x_2+x_3)^2+(x_2-2x_3)^2+x_3^2
$$
となる(右辺を展開すると $x_1^2+5x_2^2+6x_3^2+4x_1x_2+2x_1x_3$ に戻る)。$(x_1,x_2,x_3)=(0,0,1)$ を代入すると $6=1^2+(-2)^2+1^2$ が得られる。
$0$ 以上のすべての整数は、3 つの三角数 $T_k=k(k+1)/2$($k\ge0$、$T_0=0$)の和で書ける。
$N\ge0$ について $8N+3$ は $8$ で割って $3$ 余るので $4^a(8b+7)$ の形でなく、thm-l3s-main により $8N+3=x^2+y^2+z^2$ と書ける。lem-l3s-mod8 により各平方は法 $8$ で $0,1,4$ であり、和が $3$ になるのは 3 つとも $1$、すなわち $x,y,z$ がすべて奇数のときに限る。$x=2u+1$ などと書くと $8N+3=4\bigl(u(u+1)+v(v+1)+w(w+1)\bigr)+3$ なので $N=T_u+T_v+T_w$ である。$T_{-u-1}=T_u$ なので $u,v,w\ge0$ としてよい。$\square$
$0$ 以上のすべての整数は 4 つの平方数の和で書ける。
$n$ が $4^a(8b+7)$ の形でなければ $n=x^2+y^2+z^2+0^2$ である。$n=4^a(8b+7)$ なら $n-4^a=4^a(8b+6)=2^{2a+1}(4b+3)$ を割り切る $2$ の冪の指数 $2a+1$ は奇数なので、$n-4^a$ は $4^c(8d+7)$ の形でなく、3 つの平方数の和である。これに $(2^a)^2$ を加えればよい。$\square$
Lagrangeの四平方定理 の記事は、この系を三平方定理を使わずに Euler の四平方恒等式と降下法で証明し、注意「三平方定理の出典」で上の導き方にも触れている。
$N$ 以下の正の整数のうち $4^a(8b+7)$ の形のものの個数は、各 $a$ について $\lfloor(N/4^a+1)/8\rfloor$ 個なので、その総数を $N$ で割ったものは、$N\to\infty$ で $\sum_{a\ge0}\frac1{8\cdot4^a}=\frac16$ に近づく。つまり、3 つの平方数の和で書けない正の整数はおよそ $\frac16$ の割合で現れる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 平方数を 3 つ使う(2 つに減らす) | $n=3$ | $4^a(8b+7)$ の形でなければ書ける |
| thm-l3s-det-one の「3 変数」(8 変数に替える) | $E_8$ 格子の形式 | 平方和 $x_1^2+\dots+x_8^2$ と同値 |
| thm-l3s-det-one の「正定値」 | $-x_1^2-x_2^2+x_3^2$ | 平方和 $x_1^2+x_2^2+x_3^2$ と同値 |
| lem-l3s-construction の「$n\not\equiv7\pmod8$」 | $n=7$ | $n$ をとる行列式 $1$ の正定値な形式がある |
1 行目:$3=8\cdot0+3$ は $4^a(8b+7)$ の形でないが、$a^2+b^2\le3$ を満たす平方数の組は $0+0,0+1,1+1$ で、和は $3$ にならない。2 行目:$E_8$ 格子は行列式 $1$ の 8 変数の正定値な整数形式を与え、その値はすべて偶数である(Zag08 §3.2、p. 34)。平方和 $x_1^2+\dots+x_8^2$ は $1$ をとるので、両者は同値でない。3 行目:行列 $\operatorname{diag}(-1,-1,1)$ は行列式 $1$ の整数行列だが、形式は $-1$ をとる。平方和は負の値をとらないので同値でない。4 行目:そのような形式があれば、thm-l3s-det-one により $7$ が 3 つの平方数の和になり、prop-l3s-necessity に反する。
HW60 §20.10(pp. 310–311)は書けない向き(prop-l3s-necessity)を示し、書ける向きは 3 変数の二次形式の理論によると述べて証明を省いている。この記事の証明はその 3 変数の形式による方法で、行列式 $1$ の形式の同値(thm-l3s-det-one)と、Dirichlet の定理による形式の構成(lem-l3s-construction)の 2 段に分けた。N. C. Ankeny は、Minkowskiの凸体定理を使う別の証明を与えた(Ank57)。そこでは平方因子をもたない $n\equiv3\pmod8$ の場合を詳しく扱い、Dirichlet の定理で選んだ素数から 3 次元の格子を作って凸体定理で $n=R^2+2v$ となる整数を見つけ、$2v$ が 2 つの平方数の和であること(Fermatの二平方定理)に帰着させる。ほかの剰余類は同じ方針の変更として概略だけが述べられている。どちらの証明も、Dirichlet の算術級数定理を本質的に使う。
整数を平方数の和で表す問題は、正定値な整数形式がどの整数をとるかという問題に一般化される。thm-l3s-det-one は 3 変数で行列式 $1$ の形式が 1 種類しかないことを述べているが、変数を増やすと 2 行目の $E_8$ のように平方和と同値でない形式が現れる。形式がとる値の個数(表し方の数)は、テータ級数としてモジュラー形式や保型形式の理論で調べられる(Zag08 §3.1、pp. 26–27 は 2 個と 4 個の平方数の和の表し方の個数をこの方法で求めている)。
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