混線内接円

同義語:mixtilinear incircle

概要

混線内接円(mixtilinear incircle)とは、三角形 $ABC$ の辺 $AB$、$AC$ に接し、外接円に内側から接する円である(頂点 $A$ の混線内接円)。どの三角形にもただ 1 つあり、中心は $\angle A$ の二等分線の上にある。内接円の半径を $r$ とすると、その半径は $\frac{r}{\cos^2(A/2)}$ で、内接円より大きい。また、辺 $AB$、$AC$ との 2 つの接点を結ぶ線分の中点は、三角形の内心である。証明では、$\angle A$ の二等分線が外接円ともう一度交わる点 $M$ までの長さ $AM=\frac{r}{\sin(A/2)}+2R\sin\frac{A}{2}$($R$ は外接円の半径)を使い、中心での方べきを計算する。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 三角形の内心と傍心, 2円の位置関係と共通接線, 方べきの定理(高校数学), Eulerの三角形の定理

高校での出発点:2 辺と外接円に接する円

三角形の 3 辺に接する円が内接円である。では、3 辺のうち 2 辺だけに接し、3 本目の辺の代わりに 外接円 に内側から接する円はどうだろうか。頂点 $A$ から出る 2 辺 $AB$、$AC$ にはさまれた角の中で、円を少しずつ大きくしていくと、どこかで外接円にぶつかる。そのときの円を、座標で求めてみる。

直角三角形で円を求める

$A(0,0)$、$B(3,0)$、$C(0,4)$ の直角三角形を考える。3 辺は $AB=3$、$AC=4$、$BC=5$ である。
(1) 外接円。$\angle A=90^\circ$ なので、斜辺 $BC$ が外接円の直径になる。中心は $BC$ の中点 $O\left(\dfrac32,2\right)$、半径は $R=\dfrac52$ である。
(2) 内接円。内接円の半径 $r$ は、面積 $S=\dfrac12\cdot3\cdot4=6$ と $3$ 辺の和の半分 $s=\dfrac{3+4+5}2=6$ から $r=\dfrac Ss=1$ である(三角形の内心と傍心)。内心は $I(1,1)$ である。
(3) 2 辺 $AB$($x$ 軸)、$AC$($y$ 軸)に接し、第 1 象限にある円は、中心が $(t,t)$、半径が $t$ の円である($t>0$)。この円が外接円に内側から接する条件は、中心どうしの距離が半径の差に等しいこと
$$ \sqrt{\left(t-\frac32\right)^2+(t-2)^2}=\frac52-t $$
である(2円の位置関係と共通接線。右辺が正になるよう $t<\dfrac52$ とする)。両辺を 2 乗すると
$$ t^2-3t+\frac94+t^2-4t+4=\frac{25}4-5t+t^2 $$
で、整理すると $t^2-2t=0$、つまり $t(t-2)=0$ である。$t>0$ なので $t=2$ である。
(4) 円の中心は $P(2,2)$、半径は $\rho=2$ である。$x$ 軸との接点は $K(2,0)$、$y$ 軸との接点は $L(0,2)$ で、どちらも辺の上にある。外接円との接点 $T$ は、$O$ から $P$ の向きに半径 $\dfrac52$ だけ進んだ点で、$\overrightarrow{OP}=\left(\dfrac12,0\right)$ の向きに進むので $T(4,2)$ である。
(5) 接点を結ぶ線分 $KL$ の中点は
$$ \left(\frac{2+0}2,\frac{0+2}2\right)=(1,1) $$
で、内心 $I$ と一致する。半径は $\rho=2=2r$ である。

ex-mix-start の円を、頂点 $A$ の 混線内接円 という(定義は def-mix-def)。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. このような円はいつもただ 1 つあるか。半径はいくつか。→ thm-mix-radius
  2. 接点を結ぶ線分 $KL$ の中点が内心になったのは偶然か。→ thm-mix-midpoint
  3. 内接円・傍接円とどう違うか。条件を変えるとどうなるか。→ 節「内接円・傍接円と比べる」と節「例と反例」
    ex-mix-start では $\angle A=90^\circ$ で、$\cos^2\dfrac A2=\dfrac12$ なので、$\rho=2r=\dfrac{r}{\cos^2\frac A2}$ になっている。これが一般に成り立つことを示す。
    高校の計算この記事での見方ボックス
    角の二等分線と内心、$AI=\dfrac r{\sin\frac A2}$円の中心は二等分線の上lem-mix-center
    弧の中点 $M$ で $MB=MI$弦 $AM$ の長さlem-mix-am
    方べきの定理直線 $AM$ の上の点の方べきlem-mix-power
    2 円が内側から接する:中心の距離 $=$ 半径の差半径 $\rho_A=\dfrac r{\cos^2\frac A2}$thm-mix-radius
    直角三角形の辺の比接点の弦の中点は内心thm-mix-midpoint
    直角三角形 ABC の 2 辺 AB、AC に接し外接円に内側から接する円と、接点 K、L、T。線分 KL の中点が内心 I になる 直角三角形 ABC の 2 辺 AB、AC に接し外接円に内側から接する円と、接点 K、L、T。線分 KL の中点が内心 I になる
    図 1 は ex-mix-start の円である。灰色の円が外接円、青の円が混線内接円、緑の小さい円が内接円である。

言葉の準備:混線内接円

以下、三角形 $ABC$ の辺の長さを $a=BC$、$b=CA$、$c=AB$、頂点の角の大きさを $A$、$B$、$C$ で表す。外接円を $\Gamma$、その中心を $O$、半径を $R$ とし、内心を $I$、内接円の半径を $r$ とする。

混線内接円

三角形 $ABC$ の辺 $AB$、$AC$(線分)に接し、外接円 $\Gamma$ に内側から接する円を、頂点 $A$ の 混線内接円 という。記号 $\omega_A$ で表し、中心を $P$、半径を $\rho_A$(または単に $\rho$)とする。$\omega_A$ と辺 $AB$、$AC$ の接点を $K$、$L$、$\omega_A$ と $\Gamma$ の接点を $T$ とする。頂点 $B$、$C$ の混線内接円 $\omega_B$、$\omega_C$ も同じように定める。

ここで「辺 $AB$ に接する」とは、直線 $AB$ に接し、接点が線分 $AB$ の上にあることをいう。「内側から接する」とは、$\Gamma$ と $\omega_A$ が 1 点だけを共有し、$\omega_A$ のそれ以外の点が $\Gamma$ の内部にあることで、中心どうしの距離について $OP=R-\rho$($\rho< R$)が成り立つことと同じである(2円の位置関係と共通接線 の定理「2 円の位置関係」の 4)。
「混線」は、2 本の線分(辺 $AB$、$AC$)と 1 本の曲線(外接円)という、種類の混ざった 3 つの線に接することを表す。1 つの三角形に混線内接円は 3 つある($\omega_A$、$\omega_B$、$\omega_C$)。この記事では主に $\omega_A$ を扱う。

中心は角の二等分線の上

頂点 $A$ の混線内接円 $\omega_A$ の中心 $P$ は、$\angle A$ の二等分線(半直線 $AI$)の上にあり、
$$ AP=\frac{\rho}{\sin\frac A2},\qquad AK=AL=AP\cos\frac A2=\frac{\rho}{\tan\frac A2} $$
である。

直角三角形の合同

要点:接点では半径が辺に垂直なので、直角三角形 $AKP$ と $ALP$ は斜辺 $AP$ と $PK=PL=\rho$ を共有して合同になる。よって半直線 $AP$ は半直線 $AB$、$AC$ と同じ鋭角をなし、$\angle A$ の二等分線になる。直角三角形 $AKP$ の $\angle KAP=\dfrac A2$ から長さの式が出る。

詳しい証明を開く

方針:接点 $K$、$L$ で半径が辺に垂直になることから、2 つの直角三角形 $AKP$、$ALP$ が合同になることを示す。

段 1($K\ne A$)。$K=A$ と仮定する。接点では半径が接線に垂直なので、$P$ は $A$ を通り $AB$ に垂直な直線の上にある。また $A$ は円の上にあり、直線 $AC$ は $L$ で円に接する。接線は円と接点だけを共有するので $L=A$ であり、$P$ は $A$ を通り $AC$ に垂直な直線の上にもある。2 本の垂線は $A$ だけで交わるので $P=A$ となり、半径 $PK=0$ になって円にならない。よって $K\ne A$ で、同じく $L\ne A$ である。

段 2(合同)。三角形 $AKP$ と $ALP$ は、$\angle AKP=\angle ALP=90^\circ$(接点で半径は接線に垂直)、$PK=PL=\rho$、斜辺 $AP$ が共通なので、直角三角形の斜辺と他の 1 辺がそれぞれ等しく、合同である。よって $AK=AL$、$\angle KAP=\angle LAP$ である。

段 3(二等分線)。$\angle KAP$ は直角三角形 $AKP$ の鋭角である。$K$ は半直線 $AB$ の上、$L$ は半直線 $AC$ の上にあるので、半直線 $AP$ は、半直線 $AB$、$AC$ の両方と同じ鋭角をなす。そのような半直線は $\angle BAC$ の二等分線だけである(二等分線と反対向きの半直線は、両方と鈍角 $180^\circ-\dfrac A2$ をなす)。よって $P$ は半直線 $AI$ の上にあり、$\angle KAP=\dfrac A2$ である。

段 4(長さ)。直角三角形 $AKP$ で $\sin\dfrac A2=\dfrac{PK}{AP}=\dfrac{\rho}{AP}$、$\cos\dfrac A2=\dfrac{AK}{AP}$ なので、$AP=\dfrac{\rho}{\sin\frac A2}$、$AK=AP\cos\dfrac A2=\dfrac{\rho\cos\frac A2}{\sin\frac A2}=\dfrac\rho{\tan\frac A2}$ である。$\square$

中心の位置を確かめる
  1. ex-mix-start では $\dfrac A2=45^\circ$、$\rho=2$ なので、$AP=\dfrac{2}{\sin45^\circ}=2\sqrt2$、$AK=\dfrac{2}{\tan45^\circ}=2$ である。実際、$P(2,2)$ は $A$ から $2\sqrt2$ の距離にあり、$K(2,0)$ は $A$ から $2$ の距離にある。
  2. 3 辺が $13,14,15$ の三角形 $A(5,12)$、$B(0,0)$、$C(14,0)$ では、$a=14$、$b=15$、$c=13$ である。余弦定理から
    $$ \cos A=\frac{b^2+c^2-a^2}{2bc}=\frac{225+169-196}{390}=\frac{33}{65} $$
    で、半角の公式から
    $$ \sin^2\frac A2=\frac{1-\cos A}2=\frac{16}{65},\qquad \cos^2\frac A2=\frac{1+\cos A}2=\frac{49}{65} $$
    である。$\sin\dfrac A2=\dfrac4{\sqrt{65}}$、$\cos\dfrac A2=\dfrac7{\sqrt{65}}$、$\tan\dfrac A2=\dfrac47$ なので、半径 $\rho$ の混線内接円なら、$AP=\dfrac{\sqrt{65}}4\rho$、$AK=\dfrac74\rho$ である。

lem-mix-center から、$\omega_A$ は半径 $\rho$ が決まれば 1 つに決まる。中心は半直線 $AI$ の上で $A$ から $\dfrac\rho{\sin\frac A2}$ の点である。あとは「外接円に内側から接する」という条件で $\rho$ を決めればよい。

準備:弧の中点と方べき

$\angle A$ の二等分線(直線 $AI$)は、外接円 $\Gamma$ と $A$ のほかにもう 1 点で交わる。この点を $M$ とする。$M$ は、$A$ を含まない弧 $BC$ の中点である。Eulerの三角形の定理 で使った点で、次の事実がそこで示されている。

  • 直線 $AI$ の上で、$A$、$I$、$M$ はこの順に並ぶ(同記事の補題「弧の中点の位置」)。
  • $MB=MC=MI$ である(同記事の補題「弧の中点から等距離の点」)。
弦 $AM$ の長さ

$$ AM=\frac{r}{\sin\frac A2}+2R\sin\frac A2 $$
である。

内心で弦を 2 つに分ける

要点:$A$、$I$、$M$ はこの順に並ぶので $AM=AI+IM$ である。$AI=\dfrac r{\sin\frac A2}$ は内心から辺 $AB$ に下ろした垂線で作る直角三角形から、$IM=MB=2R\sin\dfrac A2$ は円周角 $\angle BAM=\dfrac A2$ と正弦定理から出る。

詳しい証明を開く

方針:$A$、$I$、$M$ はこの順に並ぶので $AM=AI+IM$ である。2 つの部分をそれぞれ求める(Eulerの三角形の定理 の補題「内心を通る弦の 2 つの部分」と同じ計算である)。

段 1($AI$)。内心 $I$ から辺 $AB$ に下ろした垂線の足を $Z$ とすると、$Z$ は内接円と辺 $AB$ の接点で、$IZ=r$ である。直角三角形 $AZI$ で $\angle IAZ=\dfrac A2$ なので、$\sin\dfrac A2=\dfrac{IZ}{AI}=\dfrac r{AI}$、つまり $AI=\dfrac r{\sin\frac A2}$ である。

段 2($IM$)。$MI=MB$ である。三角形 $ABM$ の外接円は $\Gamma$ で、$\angle BAM=\dfrac A2$ は弦 $BM$ に対する円周角なので、正弦定理(正弦定理(高校数学))から $MB=2R\sin\dfrac A2$ である。よって $IM=2R\sin\dfrac A2$ である。

段 3。段 1・段 2 を足して $AM=AI+IM=\dfrac r{\sin\frac A2}+2R\sin\dfrac A2$ である。$\square$

弦 $AM$ の長さを確かめる
  1. ex-mix-start の直角三角形。直線 $AI$ は $y=x$ で、外接円 $\left(x-\dfrac32\right)^2+(y-2)^2=\dfrac{25}4$ に $y=x$ を代入すると $2x^2-7x=0$ となり、$x=0$(点 $A$)と $x=\dfrac72$ を得る。$M\left(\dfrac72,\dfrac72\right)$、$AM=\dfrac{7\sqrt2}2$ である。一方、$\sin45^\circ=\dfrac{\sqrt2}2$ から
    $$ \frac{r}{\sin\frac A2}+2R\sin\frac A2=\frac{1}{\frac{\sqrt2}2}+2\cdot\frac52\cdot\frac{\sqrt2}2=\sqrt2+\frac{5\sqrt2}2=\frac{7\sqrt2}2 $$
    で一致する。
  2. 13, 14, 15 の三角形(ex-mix-center の (2))。$r=4$、$R=\dfrac{65}8$ である(面積 $84$、$r=\dfrac{84}{21}$、$R=\dfrac{abc}{4\cdot84}=\dfrac{2730}{336}$)。$\sin\dfrac A2=\dfrac4{\sqrt{65}}$ なので
    $$ AI=\frac{4}{\frac4{\sqrt{65}}}=\sqrt{65},\qquad IM=2\cdot\frac{65}8\cdot\frac4{\sqrt{65}}=\sqrt{65},\qquad AM=2\sqrt{65} $$
    である。内心は $I(6,4)$ で、$AI=\sqrt{1^2+8^2}=\sqrt{65}$ と合っている。$M$ は $A$ から $I$ の向きに $I$ と同じ距離だけ先に進んだ点 $M=2I-A=(7,-4)$ で、外接円の中心 $O\left(7,\dfrac{33}8\right)$ の真下、$OM=\dfrac{33}8+4=\dfrac{65}8=R$ にある。

次の補題は、方べきの定理を直線 $AM$ の上の点に使ったものである。

直線 $AM$ の上の点の方べき

半直線 $AM$ の上の点 $X$ で、$AX=d$ とすると
$$ R^2-OX^2=d\,(AM-d) $$
である。$X$ が $A$ と $M$ の間にあれば右辺は正、$M$ より先にあれば負である。

符号つきの方べきの定理

要点:方べきの定理(高校数学) の符号つきの形 $\overrightarrow{XA}\cdot\overrightarrow{XM}=OX^2-R^2$ で、左辺の内積が $X$ の位置によらず $-d(AM-d)$ になることを確かめる。

詳しい証明を開く

方べきの定理(高校数学) の定理「方べきの定理(符号つきの形)」により、点 $X$ を通る直線が $\Gamma$ と $A$、$M$ で交わるとき $\overrightarrow{XA}\cdot\overrightarrow{XM}=OX^2-R^2$ である。

$X$ が $A$ と $M$ の間にある($0< d< AM$)とき、$\overrightarrow{XA}$ と $\overrightarrow{XM}$ は逆向きで、長さは $d$ と $AM-d$ なので、内積は $-d(AM-d)$ である。$X$ が $M$ より先にある($d>AM$)とき、2 つは同じ向きで長さは $d$ と $d-AM$ なので、内積は $d(d-AM)=-d(AM-d)$ である。$X=A$ または $X=M$ のときは両辺とも $0$ である。どの場合も $OX^2-R^2=-d(AM-d)$ で、両辺の符号を変えると主張の式になる。$\square$

3 辺が 13、14、15 の三角形で、角 A の二等分線が外接円と交わる点 M。直線 AM の上に A、I、P、M がこの順に並び、P での方べきが PA と PM の積になる 3 辺が 13、14、15 の三角形で、角 A の二等分線が外接円と交わる点 M。直線 AM の上に A、I、P、M がこの順に並び、P での方べきが PA と PM の積になる
図 2 は、次の節で使う配置である。混線内接円の中心 $P$ は弦 $AM$ の上にあり、$A$ から見て $I$ より先、$M$ より手前にある(thm-mix-radius の $AP=\dfrac{AI}{\cos^2\frac A2}>AI$ と、$P$ が $\Gamma$ の内部にあることから分かる。13, 14, 15 の三角形では $AI=\sqrt{65}\approx8.06$、$AP=\dfrac{65\sqrt{65}}{49}\approx10.70$、$AM=2\sqrt{65}\approx16.12$)。

主定理 1:半径は $\dfrac{r}{\cos^2\frac A2}$

混線内接円の半径

どの三角形 $ABC$ にも、頂点 $A$ の混線内接円 $\omega_A$ はただ 1 つある。その半径と、中心 $P$ までの距離は
$$ \rho_A=\frac{r}{\cos^2\frac A2},\qquad AP=\frac{r}{\sin\frac A2\cos^2\frac A2} $$
である。

証明を読む前に、ex-mix-start の数で確かめておく。$r=1$、$\cos^2 45^\circ=\dfrac12$ なので $\rho_A=2$、$AP=\dfrac{1}{\frac{\sqrt2}2\cdot\frac12}=2\sqrt2$ で、(4) の $P(2,2)$ と合っている。

方べきで半径の方程式を立てる

方針:中心 $P$ は半直線 $AI$ の上にある(lem-mix-center)。$AP=d$ とおき、「内側から接する」条件 $OP=R-\rho$ を lem-mix-power に入れて $d$ の方程式を作る。段 1 で「あるとすればこの $d$ しかない」ことを、段 2・段 3 で「この $d$ で本当に混線内接円になる」ことを示す。以下 $\sigma=\sin\dfrac A2$ と書く。$0<\sigma<1$ である。
段 1(ただ 1 つしかない)。$\omega_A$ があるとし、中心を $P$、半径を $\rho$、$AP=d$ とする。lem-mix-center により $P$ は半直線 $AI$(半直線 $AM$ と同じ)の上にあり、$\rho=d\sigma$ である。$\omega_A$ は $\Gamma$ に内側から接するので $OP=R-\rho$ である。lem-mix-power を $X=P$ に使うと
$$ R^2-(R-\rho)^2=d\,(AM-d) $$
である。左辺は $2R\rho-\rho^2=2Rd\sigma-d^2\sigma^2$ なので
$$ 2Rd\sigma-d^2\sigma^2=d\cdot AM-d^2 $$
である。$d>0$ で両辺を割ると $2R\sigma-d\sigma^2=AM-d$、移項して
$$ d\,(1-\sigma^2)=AM-2R\sigma $$
である。lem-mix-am により右辺は $\left(\dfrac r\sigma+2R\sigma\right)-2R\sigma=\dfrac r\sigma$、左辺の $1-\sigma^2$ は $\cos^2\dfrac A2$ である。よって
$$ d=\frac{r}{\sigma\cos^2\frac A2},\qquad \rho=d\sigma=\frac{r}{\cos^2\frac A2} $$
で、$d$ と $\rho$ はただ 1 通りに決まる。したがって、混線内接円は多くても 1 つである。
段 2(外接円に内側から接する円がある)。逆に、半直線 $AI$ の上で $AP=d=\dfrac{r}{\sigma\cos^2\frac A2}$ となる点 $P$ をとり、$\rho=d\sigma$ とする。$P$ は $\angle A$ の二等分線の上にあるので、直線 $AB$、$AC$ までの距離はどちらも $AP\sin\dfrac A2=\rho$ である。中心 $P$、半径 $\rho$ の円を $\omega$ とすると、$\omega$ は直線 $AB$、$AC$ に接する。接点 $K$、$L$ は $P$ から下ろした垂線の足で、$\angle PAK=\dfrac A2<90^\circ$ なので半直線 $AB$、$AC$ の上にあり、$AK=AL=d\cos\dfrac A2>0$ である。
段 1 の式変形は逆にもたどれるので、lem-mix-power から $R^2-OP^2=2R\rho-\rho^2$、つまり
$$ OP^2=(R-\rho)^2,\qquad OP=\lvert R-\rho\rvert $$
である。ここで $\rho< R$ を示す。直角三角形 $AKP$ で斜辺 $AP=d$ は $PK=\rho$ より長い($d>d\sigma=\rho$)ので、$A$ は $\omega$ の外部にある。もし $\rho\ge R$ なら $OP=\rho-R$ で、三角形の不等式から
$$ AP\le AO+OP=R+(\rho-R)=\rho $$
となり、$A$ が $\omega$ の外部にあることに反する。よって $\rho< R$、$OP=R-\rho$ で、$\omega$ は $\Gamma$ に内側から接する(2円の位置関係と共通接線 の定理「2 円の位置関係」の 4)。
段 3(接点は辺の上)。$\omega$ の点 $X$ はどれも $OX\le OP+PX=(R-\rho)+\rho=R$ を満たすので、$\omega$ は $\Gamma$ の周と内部にある。$K$ もそうである。直線 $AB$ のうち $\Gamma$ の周と内部にある部分は線分 $AB$(弦)なので、半直線 $AB$ の上の点 $K$ は線分 $AB$ の上にある。さらに $K\ne B$ である。もし $K=B$ なら、$B$ は $\omega$ と $\Gamma$ の両方の上にあり、2 円の共有点は接点 $T$ だけなので $B=T$ である。接点 $T$ での $\omega$ の接線は $\Gamma$ の接線でもある(2円の位置関係と共通接線 の系「接する 2 円の接点」)ので、直線 $AB$ が $\Gamma$ に接することになるが、直線 $AB$ は $\Gamma$ と 2 点 $A$、$B$ で交わるので矛盾する。同じく $L$ は線分 $AC$ の上にあり $L\ne C$ である。
段 1〜段 3 から、$\omega$ は混線内接円であり、混線内接円はこれだけである。$\square$

半径の公式を 2 つの三角形で確かめる
  1. 13, 14, 15 の三角形(ex-mix-center の (2)、ex-mix-am の (2))。$r=4$、$\cos^2\dfrac A2=\dfrac{49}{65}$ なので
    $$ \rho_A=\frac{4}{\frac{49}{65}}=\frac{260}{49},\qquad AP=\frac{\rho_A}{\sin\frac A2}=\frac{260}{49}\cdot\frac{\sqrt{65}}4=\frac{65\sqrt{65}}{49} $$
    である。$AI=\sqrt{65}$ なので、$P$ は $A$ から $I$ の向きに $AI$ の $\dfrac{65}{49}$ 倍だけ進んだ点で
    $$ P=A+\frac{65}{49}(I-A)=(5,12)+\frac{65}{49}(1,-8)=\left(\frac{310}{49},\frac{68}{49}\right) $$
    である。$O\left(7,\dfrac{33}8\right)$ との差は $\left(-\dfrac{33}{49},-\dfrac{1073}{392}\right)=\dfrac1{392}(-264,-1073)$ で、$264^2+1073^2=69696+1151329=1221025=1105^2$ なので $OP=\dfrac{1105}{392}$ である。一方 $R-\rho_A=\dfrac{65}8-\dfrac{260}{49}=\dfrac{3185-2080}{392}=\dfrac{1105}{392}$ で、一致する。
    鈍角三角形($\angle A=120^\circ$)での確かめを開く

    (2) $\angle A=120^\circ$ の鈍角三角形 $A(0,0)$、$B(5,0)$、$C\left(-\dfrac32,\dfrac{3\sqrt3}2\right)$。$c=AB=5$、$b=AC=3$ で、余弦定理から $a^2=25+9-2\cdot5\cdot3\cos120^\circ=49$、$a=7$ である。面積は $S=\dfrac12\cdot5\cdot3\sin120^\circ=\dfrac{15\sqrt3}4$、$s=\dfrac{15}2$ から $r=\dfrac Ss=\dfrac{\sqrt3}2$、正弦定理から $R=\dfrac{a}{2\sin A}=\dfrac{7}{\sqrt3}$ である。$\cos^2 60^\circ=\dfrac14$ なので$$\rho_A=\frac{\frac{\sqrt3}2}{\frac14}=2\sqrt3,\qquad AP=\frac{2\sqrt3}{\sin60^\circ}=4$$で、中心は二等分線(向き $60^\circ$)の上の $P(2,2\sqrt3)$ である。外心は $O\left(\dfrac52,\dfrac{11\sqrt3}6\right)$ で、$OP^2=\dfrac14+\left(\dfrac{\sqrt3}6\right)^2=\dfrac13$、$OP=\dfrac{\sqrt3}3$ である。$R-\rho_A=\dfrac{7\sqrt3}3-\dfrac{6\sqrt3}3=\dfrac{\sqrt3}3$ で一致する。

半径の大きさと別の形
  1. $0<\cos^2\dfrac A2<1$ なので $\rho_A>r$ である。混線内接円はいつも内接円より大きい。$\angle A$ が大きいほど $\cos^2\dfrac A2$ は小さく、比 $\dfrac{\rho_A}r$ は大きい。正三角形では $\cos^2 30^\circ=\dfrac34$ で $\rho_A=\dfrac43r$、直角では $\rho_A=2r$、$120^\circ$ では $\rho_A=4r$ である。
  2. Carnotの定理(三角形) の補題「内接円の半径を半角で書く」の $r=4R\sin\dfrac A2\sin\dfrac B2\sin\dfrac C2$ を使うと、$\rho_A=\dfrac{4R\sin\frac A2\sin\frac B2\sin\frac C2}{\cos^2\frac A2}$ と、外接円の半径で書くこともできる。

主定理 2:接点を結ぶ弦の中点は内心

接点の弦の中点

頂点 $A$ の混線内接円 $\omega_A$ と辺 $AB$、$AC$ の接点を $K$、$L$ とする。線分 $KL$ の中点は内心 $I$ である。

二等辺三角形の高さを比べる

方針:$KL$ の中点も内心も $\angle A$ の二等分線の上にあるので、$A$ からの距離が等しいことを示せばよい。
段 1(中点の位置)。lem-mix-center により $AK=AL$ なので、三角形 $AKL$ は二等辺三角形である。頂角 $A$ の二等分線は底辺 $KL$ の垂直二等分線でもあり、底辺と中点 $N$ で垂直に交わる。直角三角形 $AKN$ で $\angle KAN=\dfrac A2$ なので
$$ AN=AK\cos\frac A2 $$
である。
段 2(長さを入れる)。lem-mix-center と thm-mix-radius から
$$ AK=AP\cos\frac A2=\frac{r}{\sin\frac A2\cos^2\frac A2}\cdot\cos\frac A2=\frac{r}{\sin\frac A2\cos\frac A2} $$
である。段 1 に入れると
$$ AN=\frac{r}{\sin\frac A2\cos\frac A2}\cdot\cos\frac A2=\frac{r}{\sin\frac A2} $$
となる。
段 3(内心と比べる)。内心から辺 $AB$ に下ろした垂線で作る直角三角形から(lem-mix-am の証明) $AI=\dfrac{r}{\sin\frac A2}$ である。$N$ と $I$ はどちらも半直線 $AI$ の上にあり、$A$ からの距離が等しいので、$N=I$ である。$\square$

証明の段 2 では、thm-mix-radius の分母の $\cos^2\dfrac A2$ が、$AK$ と $AN$ を求めるときに掛かる 2 つの $\cos\dfrac A2$ とちょうど打ち消し合っている。式で書くと
$$ AN=\underbrace{\frac{r}{\sin\frac A2\cos^2\frac A2}}_{AP}\cdot\underbrace{\cos\frac A2}_{AK\text{ へ}}\cdot\underbrace{\cos\frac A2}_{AN\text{ へ}}=\frac r{\sin\frac A2}=AI $$
である。主定理 1 の半径の式と主定理 2 は、同じことの 2 つの言い方になっている。

接点の座標で確かめる
  1. 13, 14, 15 の三角形(ex-mix-radius の (1))。$AK=AL=AP\cos\dfrac A2=\dfrac{65\sqrt{65}}{49}\cdot\dfrac7{\sqrt{65}}=\dfrac{65}7$ である。$AB=13$、$AC=15$ なので
    $$ K=A+\frac{65/7}{13}(B-A)=(5,12)+\frac57(-5,-12)=\left(\frac{10}7,\frac{24}7\right), $$
    $$ L=A+\frac{65/7}{15}(C-A)=(5,12)+\frac{13}{21}(9,-12)=\left(\frac{74}7,\frac{32}7\right) $$
    である。中点は $\left(\dfrac{84}{14},\dfrac{56}{14}\right)=(6,4)$ で、内心 $I(6,4)$ と一致する。
    鈍角三角形($\angle A=120^\circ$)での確かめを開く

    (2) $\angle A=120^\circ$ の三角形(ex-mix-radius の (2))。$AK=AP\cos60^\circ=2$ なので $K(2,0)$、$L$ は $AC$ の向き $120^\circ$ に $2$ 進んだ点 $(-1,\sqrt3)$ である。中点は $\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ である。内心は、重み $a=7$、$b=3$、$c=5$ の重み付きの平均$$I=\frac{7A+3B+5C}{15}=\frac{(0,0)+(15,0)+\left(-\frac{15}2,\frac{15\sqrt3}2\right)}{15}=\left(\frac12,\frac{\sqrt3}2\right)$$で(三角形の内心と傍心)、一致する。

3 辺が 13、14、15 の鋭角三角形の混線内接円。接点 K、L を結ぶ線分の中点が内心 I で、外接円との接点 T は辺 BC の下の弧にある 3 辺が 13、14、15 の鋭角三角形の混線内接円。接点 K、L を結ぶ線分の中点が内心 I で、外接円との接点 T は辺 BC の下の弧にある
角 A が 120 度の鈍角三角形の混線内接円。鈍角でも線分 KL の中点は内心 I で、半径は内接円の半径の 4 倍になる 角 A が 120 度の鈍角三角形の混線内接円。鈍角でも線分 KL の中点は内心 I で、半径は内接円の半径の 4 倍になる

図 3 と図 4 は ex-mix-midpoint の 2 つの三角形である。どちらでも $KL$ は $AI$ に垂直で、$I$ で 2 等分されている。外接円との接点 $T$ は、$A$ を含まない弧 $BC$ の上にある。
主定理 2 から、混線内接円は定規とコンパスで作図できる。

混線内接円の作図

内心 $I$ を通り直線 $AI$ に垂直な直線が、辺 $AB$、$AC$ と交わる点を $K$、$L$ とする。$K$ で $AB$ に立てた垂線と直線 $AI$ の交点を $P$ とすると、中心 $P$、半径 $PK$ の円が頂点 $A$ の混線内接円である。

中点を通る垂線は 1 本だけ

thm-mix-radius により混線内接円 $\omega_A$ があり、その接点を $K'$、$L'$ とする。thm-mix-midpoint と prf-mix-midpoint の段 1 により、線分 $K'L'$ は $I$ を通り $AI$ に垂直である。$I$ を通り $AI$ に垂直な直線はただ 1 本なので、それが辺 $AB$、$AC$ と交わる点は $K'$、$L'$ で、$K=K'$、$L=L'$ である。$\omega_A$ の中心は、$K$ で $AB$ に立てた垂線(接点での半径)と二等分線 $AI$(lem-mix-center)の交点なので $P$ であり、半径は $PK$ である。$\square$

作図の手順を座標でたどる

ex-mix-start の直角三角形で、$I(1,1)$ を通り $AI$(直線 $y=x$)に垂直な直線は $x+y=2$ である。これが $x$ 軸、$y$ 軸と交わる点は $K(2,0)$、$L(0,2)$ である。$K$ で $x$ 軸に立てた垂線 $x=2$ と $y=x$ の交点は $P(2,2)$ で、半径は $PK=2$ である。ex-mix-start の (4) と同じ円が得られた。

内接円・傍接円と比べる

混線内接円の中心も、内心・傍心と同じく $\angle A$ の二等分線の上にある。3 つの円を同じ観点で並べる(内接円・傍接円の半径は 三角形の内心と傍心 の命題「内接円・傍接円の半径と面積」による。$S$ は面積、$s=\dfrac{a+b+c}2$)。

内接円混線内接円 $\omega_A$傍接円($A$ に向かい合う)
接する相手3 辺辺 $AB$、$AC$ と外接円(内側から)辺 $BC$ と、辺 $AB$、$AC$ の延長
中心内心 $I$半直線 $AI$ の上の点 $P$傍心 $I_A$(半直線 $AI$ の上)
$A$ から中心まで$\dfrac{r}{\sin\frac A2}$$\dfrac{r}{\sin\frac A2\cos^2\frac A2}$$\dfrac{r_a}{\sin\frac A2}$
半径$r=\dfrac Ss$$\rho_A=\dfrac{r}{\cos^2\frac A2}$$r_a=\dfrac{S}{s-a}$
3, 4, 5($A=90^\circ$)の半径$1$$2$$6$
13, 14, 15 の半径$4$$\dfrac{260}{49}$$12$

どれも $A$ から中心までの距離は、半径を $\sin\dfrac A2$ で割ったものになっている。中心が二等分線の上にあり、辺 $AB$ までの距離が半径になるからである(lem-mix-center と同じ直角三角形)。3 つの円の違いは、二等分線の上のどこで止まるかを決める「3 本目の条件」だけである。

例と反例

thm-mix-radius、thm-mix-midpoint の条件を外すと、次のように崩れる。

外す条件反例成り立たなくなること
外接円に 内側から 接する(このとき接点が辺 $AB$、$AC$ の上にあることも外れる)直線 $AB$、$AC$ に接し、外接円に外側から接する円(接点は辺の延長の上。ex-mix-cx-outer)接点を結ぶ線分の中点が内心でなく、傍心 $I_A$ になる
外接円に接する内接円(辺 $AB$、$AC$ に接するが、外接円には接しない。ex-mix-cx-incircle)接点を結ぶ線分の中点が内心にならない
反例:外接円に外側から接する円

ex-mix-start の直角三角形で、中心 $(t,t)$、半径 $t$ の円が外接円に 外側から 接する条件は、中心どうしの距離が半径の和に等しいこと
$$ \sqrt{\left(t-\frac32\right)^2+(t-2)^2}=\frac52+t $$
である。両辺を 2 乗して整理すると
$$ 2t^2-7t+\frac{25}4=t^2+5t+\frac{25}4,\qquad t^2-12t=0 $$
で、$t>0$ から $t=12$ である。円の中心は $(12,12)$、半径は $12$ で、$x$ 軸、$y$ 軸との接点は $(12,0)$、$(0,12)$ である。これは辺 $AB$、$AC$ の上ではなく、$B$、$C$ の先に延ばした部分にある。
2 つの接点を結ぶ線分の中点は $(6,6)$ で、内心 $(1,1)$ ではない。$(6,6)$ は $A$ に向かい合う傍心 $I_A$ である。実際、$(6,6)$ から $x$ 軸、$y$ 軸までの距離は $6$、直線 $BC$($4x+3y-12=0$)までの距離は $\dfrac{\lvert 24+18-12\rvert}{5}=6$ で、傍接円の半径 $r_a=\dfrac{S}{s-a}=\dfrac61=6$ と合う。
13, 14, 15 の三角形で同じ円を求めると、中心 $\left(\dfrac{440}{49},-\dfrac{972}{49}\right)$、半径 $\dfrac{780}{49}$、接点 $\left(-\dfrac{40}7,-\dfrac{96}7\right)$、$\left(\dfrac{152}7,-\dfrac{72}7\right)$ で、中点は傍心 $I_A(8,-12)$ である(図 5)。

13, 14, 15 の三角形での確かめを開く

中心 $P'$ は半直線 $AI$ の上にあり、$A$ から $I$ の向きに $AI$ の $\dfrac{195}{49}$ 倍だけ進んだ点 $P'=(5,12)+\dfrac{195}{49}(1,-8)=\left(\dfrac{440}{49},-\dfrac{972}{49}\right)$ である。直線 $AB$ までの距離は $AP'\sin\dfrac A2=\dfrac{195\sqrt{65}}{49}\cdot\dfrac4{\sqrt{65}}=\dfrac{780}{49}$ である。$O\left(7,\dfrac{33}8\right)$ との差は $\left(\dfrac{97}{49},-\dfrac{9393}{392}\right)=\dfrac1{392}(776,-9393)$ で、$776^2+9393^2=602176+88228449=88830625=9425^2$ なので $OP'=\dfrac{9425}{392}$ である。$R+\dfrac{780}{49}=\dfrac{3185+6240}{392}=\dfrac{9425}{392}$ で、外側から接している。接点は $A$ から $AP'\cos\dfrac A2=\dfrac{195}7$ の距離にあり、$K'=(5,12)+\dfrac{15}7(-5,-12)=\left(-\dfrac{40}7,-\dfrac{96}7\right)$、$L'=(5,12)+\dfrac{13}7(9,-12)=\left(\dfrac{152}7,-\dfrac{72}7\right)$ である。中点は $\left(\dfrac{112}{14},-\dfrac{168}{14}\right)=(8,-12)$ である。傍心は重み $(-a:b:c)=(-14:15:13)$ の平均 $\dfrac{-14A+15B+13C}{14}=\dfrac{(-70,-168)+(182,0)}{14}=(8,-12)$ である(三角形の内心と傍心)。


どちらの三角形でも中点は傍心になっている。一般に、外側から接する円では中点が傍心 $I_A$ になることも方べきの同じ計算で示せるが、この記事では証明しない。

13、14、15 の三角形で、直線 AB、AC に接し外接円に外側から接する円。接点を結ぶ線分の中点は内心 I ではなく傍心 IA になる 13、14、15 の三角形で、直線 AB、AC に接し外接円に外側から接する円。接点を結ぶ線分の中点は内心 I ではなく傍心 IA になる

反例:内接円の接点

ex-mix-start の直角三角形で、内接円(中心 $(1,1)$、半径 $1$)は辺 $AB$、$AC$ に $(1,0)$、$(0,1)$ で接する。この 2 点を結ぶ線分の中点は $\left(\dfrac12,\dfrac12\right)$ で、内心 $(1,1)$ ではない。
一般に、内接円と辺 $AB$、$AC$ の接点を結ぶ線分の中点は、prf-mix-midpoint の段 1 と同じ計算で、$A$ から $AI\cos\dfrac A2\cdot\cos\dfrac A2=AI\cos^2\dfrac A2$ の距離にある。$\cos^2\dfrac A2<1$ なので、中点はいつも内心より $A$ に近い。中点が内心に来るのは、半径が $\dfrac r{\cos^2\frac A2}$ の円、つまり混線内接円だけである(cor-mix-construct)。

大学数学で見る:接点 $T$ と相似拡大・反転

この記事では接点 $T$ をほとんど使わなかった。$T$ に注目すると、混線内接円は相似拡大と反転で見通しよく扱える。ここでは主張を紹介し、数値で確かめる。

相似拡大と反転で見る話を開く

(1) 相似拡大。$\omega_A$ と $\Gamma$ は $T$ で内側から接しているので、$T$ を中心とし比 $\dfrac R{\rho_A}$ の相似拡大は $\omega_A$ を $\Gamma$ に移す(相似変換と相似の中心)。この相似拡大は直線を平行な直線に移すので、$K$ での接線 $AB$ は、$AB$ に平行な $\Gamma$ の接線に移る。その接点は、$C$ を含まない弧 $AB$ の中点である。つまり、直線 $TK$ は $C$ を含まない弧 $AB$ の中点を通る。同じく直線 $TL$ は $B$ を含まない弧 $AC$ の中点を通る。この考え方は Sawayamaの補題 の証明で使う。

(2) 一直線に並ぶ 3 点。接点 $T$、内心 $I$、$A$ を含む弧 $BC$ の中点 $M'$ は一直線上にある。13, 14, 15 の三角形では $T\left(\dfrac{86}{17},-\dfrac{64}{17}\right)$、$I(6,4)$、$M'\left(7,\dfrac{49}4\right)$ で、$\overrightarrow{TI}=\dfrac1{17}(16,132)$、$\overrightarrow{IM'}=\left(1,\dfrac{33}4\right)$ の傾きはどちらも $\dfrac{33}4$ である。$\angle A=120^\circ$ の三角形でも、$\angle A\approx130^\circ$ の三角形 $A(1,0.8)$、$B(0,0)$、$C(5,0)$ でも、数値計算で一直線上にあることを確かめた。この記事では証明しない。

(3) 反転。$A$ を中心とし半径 $\sqrt{bc}$ の円に関する反転(円に関する反転)のあとで $\angle A$ の二等分線に関して折り返す変換は、$B$ と $C$ を入れかえ、外接円 $\Gamma$ と直線 $BC$ を入れかえ、直線 $AB$ と $AC$ を入れかえる。この変換で、混線内接円 $\omega_A$ は $A$ に向かい合う傍接円に移り、接点 $T$ は傍接円と辺 $BC$ の接点に移る。上の 3 つの三角形で、$\omega_A$ の上の点の像が傍接円の上にあることを数値で確かめた(誤差 $10^{-13}$ 以下)。この記事では証明しない。


(3) から、直線 $AT$ と、$A$ と傍接円の接点を結ぶ直線は、$\angle A$ の二等分線に関して対称になる。混線内接円の性質の多くは、このように「よく知っている円に移して読む」ことで説明できる。

さらに先へ

  • 混線内接円は、2 本の直線と 1 つの円に接する円である。2 本の線分の代わりに、辺 $BC$ の上の点 $D$ から引いた線分 $DA$、$DB$ と外接円に接する円を考えると、接点を結ぶ線分がやはり内心を通る。これが Sawayamaの補題 で、点 $D$ が頂点 $C$ に重なった場合は、頂点 $C$ の混線内接円について thm-mix-midpoint を述べたものになる。
  • 外接円に接する円どうしの関係は、Caseyの定理 や Descartesの円定理 で扱う。
  • $\omega_A$、$\omega_B$、$\omega_C$ の半径は $\dfrac r{\cos^2\frac A2}$、$\dfrac r{\cos^2\frac B2}$、$\dfrac r{\cos^2\frac C2}$ で、どれも内接円より大きい(rem-mix-size)。

関連項目

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