線グラフ

同義語:line graphライングラフ

概要

線グラフ(line graph)とは、単純グラフ $G$ の辺を頂点とし、端点を共有する 2 辺を結んだグラフ $L(G)$ のことである。$G$ の辺彩色は $L(G)$ の頂点彩色に、マッチングは $L(G)$ の独立集合に対応し、$L(G)$ のクリークは 1 頂点に集まる辺か三角形の辺から来るので、$L(G)$ の彩色数は $\Delta(G)$ と $\Delta(G)+1$ の間にある。線グラフは爪 $K_{1,3}$ を誘導部分グラフに含まず、各頂点が高々 2 つに属するクリークへの辺の分割をもつこと(Krausz の特徴づけ)で判定でき、隣接行列の固有値はすべて $-2$ 以上である。連結グラフは $K_3$ と $K_{1,3}$ の組を除いて線グラフから決まり(Whitney)、辺の問題を頂点の問題に移す道具として彩色・マッチング・スペクトルの理論で使われる。

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前提知識: グラフ, 辺彩色, 独立集合

グラフ $G$ の線グラフ $L(G)$ は、$G$ の辺を頂点とし、端点を共有する 2 辺を結んだグラフである。辺どうしの「隣り合い」を頂点どうしの隣接に置き換える操作であり、辺についての問題を頂点についての問題に読み替える道具になる。たとえば辺彩色は $L(G)$ の頂点彩色であり、マッチングは $L(G)$ の独立集合である。
線グラフはどんなグラフでもよいわけではなく、強い制約を受ける。$L(G)$ は爪 $K_{1,3}$ を誘導部分グラフとして含まず、隣接行列の固有値はすべて $-2$ 以上である。どのグラフが線グラフかは、辺をクリークに分ける仕方(Krausz の特徴づけ)で正確に判定できる。
この記事では、線グラフを定義し、次数・辺の数・クリーク・独立集合の対応、爪をもたないこと、Krausz の特徴づけ、固有値の下界と正則グラフの線グラフのスペクトル、Euler 閉路との関係を証明する。

定義

この記事では、特に断らない限り、グラフは有限な単純グラフ $G=(V,E)$ とする。辺は $V$ の 2 元部分集合であり、$\{u,v\}$ を $uv$ と書く。頂点 $x$ の次数を $d(x)$、最大次数を $\Delta(G)$ と書く。

線グラフ

単純グラフ $G=(V,E)$ の線グラフ(line graph)$L(G)$ とは、頂点集合を $E$ とし、相異なる 2 辺 $e,f\in E$ を、$e\cap f\ne\emptyset$(端点を共有する)とき、かつそのときに限り結んだ単純グラフである。
単純グラフ $H$ が線グラフであるとは、ある単純グラフ $G$ について $H\cong L(G)$ となることをいう。

単純グラフでは相異なる 2 辺が共有する端点は高々 1 個なので、$e\cap f\ne\emptyset$ は $|e\cap f|=1$ と同じである。$L(G)$ の各辺 $\{e,f\}$ には、$e$ と $f$ の共通の端点がただ 1 つ対応する。以下の証明はこの事実を何度も使う。

孤立点と多重辺の扱い
  1. $G$ の孤立点(次数 $0$ の頂点)は $L(G)$ に何の影響も与えない。孤立点を取り除いたグラフも同じ線グラフをもつ。
  2. 多重辺を許すグラフについても、辺を頂点とし端点を共有する辺どうしを結ぶことで線グラフを考えられる。ただし 2 本の平行辺は端点を 2 つ共有するので、次数の公式などは形が変わる(反例の表を参照)。この記事では単純グラフだけを扱う。

直感

$G$ を道路網と見ると、$L(G)$ は「道路の区間」を点とし、交差点で接続している区間どうしを結んだ図である。交差点 $x$ に集まる $d(x)$ 本の区間は互いにすべて接続しているので、$L(G)$ の中で $d(x)$ 頂点の完全グラフ(クリーク)をなす。つまり線グラフは、$G$ の各頂点に対応するクリークを、$G$ の各辺に対応する頂点のところで貼り合わせたものである。各辺はちょうど 2 つの端点をもつので、$L(G)$ の各頂点はちょうど 2 つのクリーク(端点の次数が $1$ ならそのうち一方は 1 点だけのクリーク)に属する。この見方を正確にしたものが Krausz の特徴づけ(thm-lg-krausz)である。

例

基本的な線グラフ
  1. 道.$n$ 頂点の道 $P_n$($n\ge2$)の辺を順に $e_1,\dots,e_{n-1}$ とすると、$e_i$ と $e_j$ が端点を共有するのは $|i-j|=1$ のときだけである。よって $L(P_n)\cong P_{n-1}$ である。
  2. 閉路.$n$ 頂点の閉路 $C_n$($n\ge3$)でも同様に、辺を巡回的に並べると隣り合う辺だけが端点を共有するので、$L(C_n)\cong C_n$ である。
  3. 星.完全二部グラフ $K_{1,n}$ の $n$ 本の辺はすべて中心を共有するので、$L(K_{1,n})\cong K_n$ である。
  4. 三角形と爪.$L(K_3)\cong K_3$ であり、3 の場合から $L(K_{1,3})\cong K_3$ でもある。同型でない 2 つの連結グラフが同じ線グラフをもつ例であり、後で見るとおり、連結グラフではこれが唯一の例外である(thm-lg-whitney)。
  5. 完全グラフ $K_4$.$K_4$ の 6 本の辺のうち、与えられた辺 $ab$ と端点を共有しないのは $cd$ だけである。よって $L(K_4)$ は $K_6$ から 3 本の互いに交わらない辺を除いたグラフ、すなわち正八面体のグラフ $K_{2,2,2}$ である。
  6. 完全グラフ $K_n$.$L(K_n)$ は $\{1,\dots,n\}$ の 2 元部分集合を頂点とし、交わる 2 つを結んだグラフである。これを三角グラフ $T(n)$ という。$\{1,\dots,5\}$ の 2 元部分集合のうち交わらない 2 つを結んだグラフは Petersenグラフ なので、$T(5)$ の補グラフは Petersen グラフである。

次数と辺の数

次数と辺の数

単純グラフ $G=(V,E)$ と辺 $uv\in E$ について次が成り立つ。

  1. $L(G)$ における $uv$ の次数は $d(u)+d(v)-2$ である。
  2. $L(G)$ の辺の数は $\displaystyle\sum_{x\in V}\binom{d(x)}{2}$ である。
  3. $G$ が $k$-正則($k\ge1$)なら、$L(G)$ は $(2k-2)$-正則である。

1.$uv$ の $L(G)$ での隣接頂点は、$uv$ と異なり $u$ または $v$ を端点にもつ辺である。$u$ を端点にもち $uv$ と異なる辺は $d(u)-1$ 本、$v$ を端点にもち $uv$ と異なる辺は $d(v)-1$ 本ある。両方に属する辺は $u$ と $v$ をともに端点にもつので $uv$ 自身であり、$uv$ はどちらにも数えていない。よって 2 つの集合は交わらず、次数は $(d(u)-1)+(d(v)-1)$ である。
2.$L(G)$ の各辺 $\{e,f\}$ に、$e$ と $f$ の共通の端点 $x$ を対応させる。単純グラフなので $x$ はただ 1 つに決まる。逆に頂点 $x$ を共通の端点とする辺の組は、$x$ に接続する $d(x)$ 本の辺から 2 本を選ぶ組であり、$\binom{d(x)}2$ 個ある。$x$ ごとに数えて足せば主張を得る。
3.1 により、各辺の $L(G)$ での次数は $k+k-2$ である。$\square$

2 の右辺は、$G$ の「長さ 2 の道」の個数でもある(中央の頂点 $x$ と、$x$ から出る 2 本の辺を選ぶ)。

クリーク・独立集合・彩色

$L(G)$ のクリークは「どの 2 本も端点を共有する辺の集まり」であり、独立集合は「どの 2 本も端点を共有しない辺の集まり」すなわちマッチングである。前者の形は次の補題で完全に決まる。

互いに交わる辺の族

$G$ を単純グラフとし、$F\subset E$ を、どの相異なる 2 本も端点を共有する辺の集合とする。このとき次のどちらかが成り立つ。

  1. $F$ のすべての辺が共通の頂点を端点にもつ($F$ は 1 頂点に集まる星である)。
  2. $F$ はある三角形の 3 本の辺 $\{ab,bc,ca\}$ である。
    特に $|F|\ge4$ なら 1 が成り立つ。

$|F|\le2$ なら、$F=\emptyset$ のときは 1 が空虚に成り立ち、$F$ が 1 本または端点を共有する 2 本のときは共有する端点が共通の頂点である。
$|F|\ge3$ とする。$F$ の 2 本 $e_1,e_2$ をとると端点を 1 つ共有するので、$e_1=ab$、$e_2=ac$($b\ne c$)と書ける。$F$ のすべての辺が $a$ を含むなら 1 が成り立つ。そうでなければ、$a$ を含まない辺 $e_3\in F$ がある。$e_3$ は $ab$ と $ac$ の両方と端点を共有し、$a$ を含まないので $b$ と $c$ を含む。よって $e_3=bc$ である。
このとき $F$ のどの辺 $e$ も三角形の 3 辺 $ab,bc,ca$ のうち自分以外のすべてと端点を共有する。$e$ が三角形の辺でないと仮定する。$e$ は $ab,bc,ca$ の 3 本すべてと端点を共有する。$e$ の端点が両方とも $\{a,b,c\}$ に入るなら $e$ は三角形の辺になるので、$e$ の端点の一方 $x$ は $\{a,b,c\}$ の外にある。すると $e$ のもう一方の端点 $y$ が $ab$、$bc$、$ca$ のすべてに属さなければならないが、$\{a,b\}\cap\{b,c\}\cap\{c,a\}=\emptyset$ なので矛盾する。よって $F\subset\{ab,bc,ca\}$ であり、$F\supset\{ab,ac,bc\}$ と合わせて 2 が成り立つ。
$|F|\ge4$ なら 2 は起こりえないので 1 が成り立つ。$\square$

クリーク数・独立数・彩色数

$G$ を辺を 1 本以上もつ単純グラフとする。$L(G)$ のクリーク数を $\omega(L(G))$、独立数を $\alpha(L(G))$、彩色数を $\chi(L(G))$ と書き、$G$ のマッチングの最大の大きさを $\alpha'(G)$、辺彩色数を $\chi'(G)$ と書く。

  1. $G$ が三角形を含まないか $\Delta(G)\ge3$ なら $\omega(L(G))=\Delta(G)$ である。$G$ が三角形を含み $\Delta(G)=2$ なら $\omega(L(G))=3$ である。
  2. $\alpha(L(G))=\alpha'(G)$ である。
  3. $\chi(L(G))=\chi'(G)$ であり、$\Delta(G)\le\chi(L(G))\le\Delta(G)+1$ である。

1.$L(G)$ のクリークは、どの 2 本も端点を共有する辺の集合 $F$ である。lem-lg-intersecting により、$F$ は 1 頂点 $x$ に集まる星(大きさは $d(x)\le\Delta(G)$ 以下)か三角形の 3 辺である。逆に、次数 $\Delta(G)$ の頂点に接続する辺全体は大きさ $\Delta(G)$ のクリークであり、三角形の 3 辺は大きさ 3 のクリークである。したがって $\omega(L(G))$ は、三角形がなければ $\Delta(G)$、あれば $\max\{\Delta(G),3\}$ である。三角形があれば $\Delta(G)\ge2$ なので、主張の 2 つの場合に分かれる。
2.$L(G)$ の独立集合は、どの 2 本も端点を共有しない辺の集合、すなわち $G$ のマッチングである。大きさの最大値をとれば等式を得る。
3.$\chi(L(G))=\chi'(G)$ は、彩色 の命題「辺彩色と線グラフの頂点彩色」により、$G$ の $k$-辺彩色と $L(G)$ の $k$-頂点彩色が同じ写像として一対一に対応することから従う。下界は、クリークの頂点に相異なる色が要ることと 1 から $\chi(L(G))\ge\omega(L(G))\ge\Delta(G)$ である。上界は 辺彩色 の定理「Vizing の定理」の $\chi'(G)\le\Delta(G)+1$ である。$\square$

3 から、単純グラフの線グラフ $H$ では $\omega(H)\le\chi(H)\le\omega(H)+1$ が成り立つ。一般のグラフでは彩色数とクリーク数の差はいくらでも大きくなる(彩色数)ので、これは線グラフが強い制約を受けることの一つの表れである。

線グラフの特徴づけ

爪をもたないこと

完全二部グラフ $K_{1,3}$ を爪(claw)という。グラフ $H$ が爪を誘導部分グラフとして含まないとき、$H$ は爪をもたないという。すなわち、ある頂点の 3 つの隣接頂点で、どの 2 つも隣接しないものが存在しない。

線グラフは爪をもたない

単純グラフ $G$ の線グラフ $L(G)$ は爪をもたない。

$L(G)$ の頂点 $e=uv$ と、その 3 つの相異なる隣接頂点 $f_1,f_2,f_3$ をとる。各 $f_i$ は $e$ と端点を共有するので、$u$ か $v$ を含む。鳩の巣原理により、ある 2 つ $f_i,f_j$($i\ne j$)が同じ端点($u$ または $v$)を含む。すると $f_i$ と $f_j$ は端点を共有し、$L(G)$ で隣接する。よって $e,f_1,f_2,f_3$ は誘導部分グラフとして爪をなさない。$\square$

爪をもたないことは線グラフであるための必要条件だが、十分条件ではない(ex-lg-k5-minus-e)。

Krausz の特徴づけ

単純グラフ $H$ の頂点集合 $K$ がクリークであるとは、$K$ のどの相異なる 2 頂点も隣接することをいう(1 頂点の集合もクリークとする)。クリーク $K$ の辺とは、両端が $K$ に属する $H$ の辺のことである。

Krausz の特徴づけ

単純グラフ $H$ について、次の 2 条件は同値である。

  1. $H$ は線グラフである。
  2. $H$ のクリークの族 $(K_i)_{i\in I}$(同じ集合が重複して現れてもよい)で、次を満たすものがある。
    • (a) $H$ の各辺は、ちょうど 1 つの $K_i$ の辺である。
    • (b) $H$ の各頂点は、高々 2 つの $K_i$ に属する(属する添字 $i$ の個数が $2$ 以下)。

1 ⇒ 2.$H=L(G)$ としてよい。$G$ の次数 $1$ 以上の頂点 $x$ ごとに、$x$ に接続する辺全体の集合 $K_x\subset E=V(H)$ をとる。$K_x$ のどの 2 辺も $x$ を共有するので、$K_x$ は $L(G)$ のクリークである。
(a):$L(G)$ の辺 $\{e,f\}$ について、$e$ と $f$ の共通の端点 $x$ はただ 1 つである。$\{e,f\}$ が $K_y$ の辺であることは、$e,f$ がともに $y$ を含むこと、すなわち $y$ が共通の端点であることと同値なので、$\{e,f\}$ は $K_x$ だけの辺である。
(b):$L(G)$ の頂点 $e=xy$ が $K_z$ に属するのは $z\in\{x,y\}$ のときだけなので、$e$ はちょうど 2 つの $K_x,K_y$ に属する。
2 ⇒ 1.族 $(K_i)_{i\in I}$ が (a)(b) を満たすとする。属する $K_i$ が $2$ 個未満の頂点 $v$ ごとに、足りない個数($2$ から属する個数を引いた数)だけ新しい添字を足して 1 点集合 $\{v\}$ を族に加え、どの頂点もちょうど 2 つの族の元に属するようにする。1 点集合はクリークであり、辺をもたないので (a) は保たれる。こうして得た族も $(K_i)_{i\in I}$ と書き、頂点 $v$ が属する添字の集合を $I_v$ とすると、$|I_v|=2$ である。
グラフ $G$ を、頂点集合を $I$、辺集合を $\{I_v: v\in V(H)\}$ として定める。各 $I_v$ は $I$ の 2 元部分集合である。
写像 $v\mapsto I_v$ は単射である。実際、相異なる $v,w$ について $I_v=I_w=\{i,j\}$ とすると、$v,w$ はともに $K_i$ と $K_j$ に属する。$v,w$ の 2 点を含むので $K_i,K_j$ は 1 点集合でなく、もとの族の元である。クリークなので $vw$ は $H$ の辺であり、$K_i$ の辺でも $K_j$ の辺でもある。$i\ne j$ なのでこれは (a) に反する。したがって $G$ は単純グラフで、$v\mapsto I_v$ は $V(H)$ から $E(G)$ への全単射である。
この全単射が隣接関係を保つことを示す。$v,w$ が $H$ で隣接するなら、(a) により辺 $vw$ はある $K_i$ の辺であり、$i\in I_v\cap I_w$ なので $I_v$ と $I_w$ は端点 $i$ を共有する。逆に $I_v$ と $I_w$($v\ne w$)が端点 $i$ を共有するなら、$v,w\in K_i$ であり、$K_i$ はクリークなので $v,w$ は隣接する。よって $H\cong L(G)$ である。$\square$

2 ⇒ 1 の証明は、$H$ から $G$ を具体的に作る手順になっている。$G$ の頂点が族のクリーク、$G$ の辺が $H$ の頂点である。

反例:爪をもたないが線グラフでないグラフ

完全グラフ $K_5$ から 1 本の辺 $ab$ を除いたグラフ $H=K_5-ab$ を考える。頂点を $a,b,c,d,e$ とする。
爪をもたない.爪の中心の 3 つの隣接頂点はどの 2 つも隣接しない必要があるが、$H$ で隣接しない頂点の組は $\{a,b\}$ だけなので、3 頂点を選ぶとどこかに隣接する組が入る。
線グラフでない.$H\cong L(G)$ と仮定する。$\{a,c,d,e\}$ と $\{b,c,d,e\}$ はどちらも 4 頂点のクリークなので、$G$ の 4 本の辺で、どの 2 本も端点を共有するものに対応する。lem-lg-intersecting により、$a,c,d,e$ に対応する辺はある頂点 $x$ を共有し、$b,c,d,e$ に対応する辺はある頂点 $y$ を共有する。$x\ne y$ なら、$c$ と $d$ に対応する 2 本の辺はともに $x,y$ を端点にもち、単純グラフで同じ辺になるので矛盾する。よって $x=y$ であり、$a$ と $b$ に対応する辺が $x$ を共有するので、$a$ と $b$ は $L(G)$ で隣接する。これは $ab\notin E(H)$ に反する。

爪をもたないグラフのうちどれが線グラフかを、禁止する誘導部分グラフの一覧で述べる定理もある。この記事ではその一覧は扱わず、Krausz の特徴づけを判定の基準とする。

同型を決めること

Whitney の線グラフの同型定理

$G,G'$ を連結な単純グラフとし、$\{G,G'\}\ne\{K_3,K_{1,3}\}$(同型を除いて)とする。$L(G)\cong L(G')$ なら $G\cong G'$ である。

Whitney の定理の出典と例外

この定理は Whitney による。この記事では証明しない(BH12 Theorem 14.4.12 の証明の中で、Whitney の結果として述べられている)。ex-lg-basic の 4 の $L(K_3)\cong L(K_{1,3})$ が、除外された唯一の組である。連結性を外すと結論は成り立たない(反例の表)。

固有値

$G$ の頂点を $v_1,\dots,v_n$、辺を $e_1,\dots,e_m$ とし、$v_i\in e_j$ のとき $1$、そうでないとき $0$ を $(i,j)$ 成分とする $n\times m$ 行列 $B$ を、$G$ の(向きをつけない)接続行列という。$A(G)$ を隣接行列、$D$ を次数を並べた対角行列とする。

線グラフの固有値

$G$ を $n$ 頂点 $m$ 辺の単純グラフ、$B$ をその接続行列とする。

  1. $B^{\mathsf T}B=2I_m+A(L(G))$、$BB^{\mathsf T}=D+A(G)$ である。
  2. $A(L(G))$ の固有値はすべて $-2$ 以上である。$m>n$ なら $-2$ は重複度 $m-n$ 以上の固有値である。
  3. $G$ が $k$-正則($k\ge2$)で、$A(G)$ の固有値が $\theta_1,\dots,\theta_n$(重複度込み)なら、$A(L(G))$ の固有値は重複度込みで $\theta_i+k-2$($i=1,\dots,n$)と、$m-n$ 個の $-2$ である。

1.$B^{\mathsf T}B$ の $(j,l)$ 成分は $\sum_iB_{ij}B_{il}$、すなわち $e_j$ と $e_l$ の共通の端点の個数である。$j=l$ なら $2$、$j\ne l$ なら端点を共有するとき $1$、しないとき $0$ である。これは $2I_m+A(L(G))$ の成分である。同様に $BB^{\mathsf T}$ の $(i,k)$ 成分は $v_i$ と $v_k$ をともに含む辺の本数で、$i=k$ なら $d(v_i)$、$i\ne k$ なら隣接するとき $1$ である。
2.$B^{\mathsf T}B$ は実対称行列で、任意の $x\in\mathbb{R}^m$ について $x^{\mathsf T}B^{\mathsf T}Bx=(Bx)^{\mathsf T}(Bx)\ge0$ なので、固有値はすべて $0$ 以上である。1 により $A(L(G))$ の固有値は $B^{\mathsf T}B$ の固有値から $2$ を引いたものなので $-2$ 以上である。また $B^{\mathsf T}B$ の階数は $B$ の階数 $\le n$ 以下なので、$m>n$ なら固有値 $0$ の重複度は $m-n$ 以上であり、$A(L(G))$ の固有値 $-2$ の重複度も $m-n$ 以上である。
3.まず、任意の実 $n\times m$ 行列 $B$ について、変数 $t$ の多項式として
$$ t^{\,n}\det(tI_m-B^{\mathsf T}B)=t^{\,m}\det(tI_n-BB^{\mathsf T}) $$
が成り立つことを示す。$t\ne0$ とし、ブロック行列 $M=\begin{pmatrix}I_n&B\\B^{\mathsf T}&tI_m\end{pmatrix}$ の行列式を 2 通りに計算する。左上の $I_n$ で掃き出すと $\det M=\det(tI_m-B^{\mathsf T}B)$、右下の $tI_m$ で掃き出すと $\det M=t^{\,m}\det(I_n-t^{-1}BB^{\mathsf T})=t^{\,m-n}\det(tI_n-BB^{\mathsf T})$ である。両辺に $t^{\,n}$ を掛けると、$0$ でない $t$ で等式が成り立つので、多項式として等しい。
$G$ が $k$-正則なら $D=kI_n$ なので $BB^{\mathsf T}=A(G)+kI_n$ の固有値は $\theta_i+k$ であり、$\det(tI_n-BB^{\mathsf T})=\prod_i(t-\theta_i-k)$ である。$k\ge2$ なら $m=kn/2\ge n$ なので、上の等式から $\det(tI_m-B^{\mathsf T}B)=t^{\,m-n}\prod_i(t-\theta_i-k)$ を得る。よって $B^{\mathsf T}B$ の固有値は $\theta_i+k$ と $m-n$ 個の $0$ であり、1 により $A(L(G))$ の固有値はそれぞれから $2$ を引いたものである。$\square$

3 は BH12 Proposition 1.4.1・Corollary 1.4.2(§1.4.5)の形である。$\theta_i=-k$($G$ が二部グラフの成分をもつとき)では $\theta_i+k-2=-2$ となり、$-2$ の重複度は $m-n$ より大きくなる。

三角グラフのスペクトル

$K_n$($n\ge3$)は $(n-1)$-正則で、隣接行列 $J-I$($J$ は全成分 $1$)の固有値は $n-1$(重複度 $1$)と $-1$(重複度 $n-1$)である。thm-lg-spectrum の 3 を $k=n-1$、$m=n(n-1)/2$ で使うと、$T(n)=L(K_n)$ の固有値は
$$ 2n-4\ (\text{重複度}\ 1),\qquad n-4\ (\text{重複度}\ n-1),\qquad -2\ \Bigl(\text{重複度}\ \tfrac{n(n-1)}{2}-n=\tfrac{n(n-3)}{2}\Bigr) $$
である。$n=4$ では $T(4)=K_{2,2,2}$(ex-lg-basic の 5)の固有値 $4,0,0,0,-2,-2$ になる。

Euler 閉路と Hamilton 閉路

Euler 閉路から Hamilton 閉路へ

単純グラフ $G$ が 3 本以上の辺をもち、Euler閉路をもつなら、$L(G)$ は Hamilton閉路をもつ。

Euler 閉路を、通る順に辺の列 $e_1,e_2,\dots,e_m$ として書く($m=|E|\ge3$)。各 $e_i$ と $e_{i+1}$ はその間で通過する頂点を共有し、$e_m$ と $e_1$ は閉路の出発点を共有する。Euler 閉路は各辺をちょうど 1 回ずつ通るので $e_1,\dots,e_m$ は相異なり、$L(G)$ の全頂点を尽くす。したがって $e_1e_2\cdots e_me_1$ は $L(G)$ の長さ $m\ge3$ の閉路で、全頂点を 1 回ずつ通る。$\square$

逆は成り立たない。$K_{1,3}$ は次数 $3$ の頂点をもつので Euler 閉路をもたないが、$L(K_{1,3})=K_3$ は Hamilton 閉路をもつ。

反例の表

外す条件反例成り立たなくなること
$\{G,G'\}\ne\{K_3,K_{1,3}\}$(thm-lg-whitney)$G=K_3$、$G'=K_{1,3}$$L(G)\cong L(G')$ から $G\cong G'$
$G,G'$ の連結性(thm-lg-whitney)$G=K_3\sqcup K_{1,3}$、$G'=K_3\sqcup K_3$$L(G)\cong L(G')\cong K_3\sqcup K_3$ だが $G\not\cong G'$
Krausz の条件(thm-lg-krausz)を爪をもたないことに弱める$K_5-ab$(ex-lg-k5-minus-e)線グラフであること
$G$ が三角形を含まない(prop-lg-clique の 1)$G=K_3$$\omega(L(G))=\Delta(G)$($\omega=3$、$\Delta=2$)
$G$ が単純グラフ(prop-lg-degree の 1)2 頂点 $u,v$ を結ぶ 2 本の平行辺 $e,f$次数の公式($d(u)+d(v)-2=2$ だが $e$ の隣接頂点は $f$ だけ)
$G$ が Euler 閉路をもつ(prop-lg-euler)$G=P_4$$L(G)$ が Hamilton 閉路をもつこと($L(P_4)=P_3$)

関連項目

参考文献

[1]
Andries E. Brouwer, Willem H. Haemers, Spectra of Graphs, Universitext, Springer, 2012, §1.4.5 Line graphs(Proposition 1.4.1、Corollary 1.4.2、三角グラフ T(n) のスペクトル)、§14.4(Theorem 14.4.12 の証明で引かれる Whitney の定理)

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