約数関数

同義語:divisor function約数和関数約数総和関数約数の個数関数

概要

約数関数(divisor function)とは、正の整数 $n$ に約数の $k$ 乗の和 $\sigma_k(n)=\sum_{c\mid n}c^k$ を対応させる関数のことで、$k=0$ の $d(n)$ は約数の個数、$k=1$ の $\sigma(n)$ は約数の総和である。どれも乗法的である。$d(n)$ は小さい素数を多く含む $n$ で大きくなり、対数のどんな冪にも押さえられないが、どんな $\varepsilon>0$ についても $d(n)=O(n^\varepsilon)$ である。平均をとると振る舞いは規則正しく、$\sum_{n\le x}d(n)=x\log x+(2\gamma-1)x+O(\sqrt x)$(Dirichlet)、$\sum_{n\le x}\sigma(n)=\frac{\pi^2}{12}x^2+O(x\log x)$ が成り立つ。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 約数, 乗法的関数, 数論的関数, Landau記号

正の整数 $n$ の正の約数の個数 $d(n)$ や、約数の総和 $\sigma(n)$ は、整数論で最もよく使われる関数である。これらは、約数の $k$ 乗の和 $\sigma_k(n)=\sum_{c\mid n}c^k$ の $k=0$、$k=1$ の場合で、まとめて 約数関数 と呼ばれる。素因数分解が分かれば値は公式で計算でき、互いに素な数の積では値が積になる。これらの初等的な性質は 約数 の記事と 約数の個数と約数の総和 の記事にある。
この記事の主題は、約数関数の 大きさ である。$d(n)$ は素数では $2$ だが、小さい素数をたくさん含む数では大きくなり、どんな $(\log n)^A$ にも押さえられない(thm-dvf-not-log-power)。それでも、どんな小さな $\varepsilon>0$ についても $n^\varepsilon$ の定数倍には収まる(thm-dvf-small-power)。個々の値がこのように大きく揺れる一方で、平均をとると振る舞いは規則正しくなり、$d(1)+\dots+d(N)$ は $N\log N+(2\gamma-1)N$ に $\sqrt N$ 程度の誤差で等しい(thm-dvf-dirichlet)。$\sigma(n)$ の和も $\frac{\pi^2}{12}N^2$ に近い(thm-dvf-sigma-average)。

定義

以下、$c\mid n$ は $c$ が $n$ の正の約数であることを表し、$\sum_{c\mid n}$ は $n$ の正の約数全体にわたる和とする。$\log$ は自然対数である。

約数関数

実数 $k$ に対し、正の整数 $n$ に
$$ \sigma_k(n):=\sum_{c\mid n}c^k $$
を対応させる関数 $\sigma_k$ を 約数関数(divisor function)という。$d(n):=\sigma_0(n)$ は $n$ の正の約数の個数で、約数の個数関数 という。$\sigma(n):=\sigma_1(n)$ は $n$ の正の約数の総和で、約数和関数(約数総和関数)という。

$d(n)$ を $\tau(n)$ と書く流儀もある(約数 の記事は $\tau$ を使う)。数論的関数 の記事の言葉では、$\mathbf{1}(n):=1$、$\mathrm{id}_k(n):=n^k$ として $\sigma_k=\mathbf{1}*\mathrm{id}_k$(Dirichlet 積)、とくに $d=\mathbf{1}*\mathbf{1}$ である。複素数 $k$ についても同じ式で定義でき、以下の代数的な性質(prop-dvf-basic)はそのまま成り立つ。

約数関数の基本性質

$k$ を実数とする。

  1. $\sigma_k$ は乗法的である。すなわち $\sigma_k(1)=1$ で、互いに素な $m,n$ について $\sigma_k(mn)=\sigma_k(m)\sigma_k(n)$ である。
  2. 素数 $p$ と $a\ge1$ について $\sigma_k(p^a)=1+p^k+p^{2k}+\dots+p^{ak}$ であり、$n=\prod_ip_i^{a_i}$ なら $\sigma_k(n)=\prod_i\sigma_k(p_i^{a_i})$ である。とくに $d(n)=\prod_i(a_i+1)$ である。
  3. $\sigma_{-k}(n)=n^{-k}\sigma_k(n)$ である。とくに $\sigma(n)/n=\sum_{c\mid n}1/c$ である。

1:$\mathbf{1}$ と $\mathrm{id}_k$ は乗法的なので、その Dirichlet 積 $\sigma_k$ も乗法的である(Möbius関数 の記事の命題「Dirichlet積の基本性質」の 4)。2:$p^a$ の正の約数は $1,p,\dots,p^a$ なので最初の式を得る。後半は 1 による。3:写像 $c\mapsto n/c$ は $n$ の正の約数全体の全単射なので(約数 の記事の命題「約数の組 $d$ と $\frac{n}{d}$」の 1)、$\sigma_{-k}(n)=\sum_{c\mid n}(n/c)^{-k}=n^{-k}\sum_{c\mid n}c^k$ である。$\square$

2 の $k=0,1$ の場合は 約数 の記事の定理「約数の個数と総和の公式」と同じであり、HW60 Theorems 273–275(§16.7、p. 239)にもある。

直感

$d(n)$ は素因数分解の指数 $a_i$ だけで決まり、どの素数を使うかには依らない。だから、指数の組を固定して素数を小さくとるほど、同じ $d(n)$ を小さい $n$ で実現できる。$2\cdot3\cdot5\cdot7\cdots$ のように小さい素数をたくさん掛けた数で $d(n)$ は大きくなり、素数では $2$ に落ちる。ところが平均をとると、$n$ 以下の数のうち $c$ で割り切れるものは約 $n/c$ 個なので、$d(1)+\dots+d(N)\approx\sum_{c\le N}N/c\approx N\log N$ となり、平均 $\log N$ が浮かび上がる。この「数え直し」を精密にしたのが Dirichlet の定理である。

例

小さな値
$n$$1$$2$$6$$12$$16$$60$$360$$720$
素因数分解$1$$2$$2\cdot3$$2^2\cdot3$$2^4$$2^2\cdot3\cdot5$$2^3\cdot3^2\cdot5$$2^4\cdot3^2\cdot5$
$d(n)$$1$$2$$4$$6$$5$$12$$24$$30$
$\sigma(n)$$1$$3$$12$$28$$31$$168$$1170$$2418$
$\sigma_2(n)$$1$$5$$50$$210$$341$$5460$$201110$$806806$

$\sigma(6)=12=2\cdot6$ なので $6$ は完全数である(完全数)。$\sigma_2(12)=\sigma_2(4)\sigma_2(3)=(1+4+16)(1+9)=210$、$\sigma_2(60)=21\cdot10\cdot26=5460$ である。$\sigma(360)=15\cdot13\cdot6=1170$ である。

約数の個数の記録

$n$ より小さいどの正の整数よりも $d(n)$ が大きい $n$ は、$1,2,4,6,12,24,36,48,60,120,180,240,360,720,\dots$ と続く($d$ はそれぞれ $1,2,3,4,6,8,9,10,12,16,18,20,24,30$)。いずれも指数が素数の順に広い意味で減少する形 $2^{a}3^{b}5^{c}\cdots$($a\ge b\ge c\ge\cdots$)をしている。指数の組が同じなら、大きい指数を小さい素数に割り当てたほうが数が小さくなるからである。

個々の値の大きさ

約数の個数は対数の冪では押さえられない

約数の個数は対数のどんな冪よりも大きくなりうる

どんな正の実数 $A$ と $C$ についても、$d(n)>C(\log n)^A$ となる $n\ge2$ が無限に多くある。すなわち $d(n)=O\bigl((\log n)^A\bigr)$ はどの $A$ についても成り立たない。

$r$ を $A$ より大きい整数とし、最初の $r$ 個の素数の積を $P$ とする。正の整数 $m$ について $n_m:=P^m$ とおくと、$n_m$ は $r$ 個の素数をそれぞれ指数 $m$ で含むので、prop-dvf-basic の 2 により $d(n_m)=(m+1)^r$ である。一方 $\log n_m=m\log P$ なので
$$ \frac{d(n_m)}{(\log n_m)^A}=\frac{(m+1)^r}{m^A(\log P)^A}>\frac{m^{r-A}}{(\log P)^A} $$
であり、$r-A>0$ だから右辺は $m\to\infty$ で限りなく大きくなる。よって $C$ を超える $m$ が無限に多くある。$\square$

これは HW60 Theorem 314(§18.1、p. 260)と同じ論法である。素数 $p$ では $d(p)=2$ なので(同書 Theorem 313)、$d(n)$ は $2$ と $(\log n)^A$ を超える値のあいだを揺れ動く。

どんな正の冪よりは小さい

約数の個数の上界

$0<\varepsilon\le1$ とする。すべての正の整数 $n$ について
$$ d(n)\le\Bigl(\frac1{\varepsilon\log2}\Bigr)^{2^{1/\varepsilon}}n^\varepsilon $$
が成り立つ。とくに、どんな $\varepsilon>0$ についても $d(n)=O(n^\varepsilon)$ であり、さらに $d(n)/n^\varepsilon\to0$($n\to\infty$)である。

$n=\prod_ip_i^{a_i}$ と素因数分解すると、prop-dvf-basic の 2 により
$$ \frac{d(n)}{n^\varepsilon}=\prod_i\frac{a_i+1}{p_i^{a_i\varepsilon}} $$
である。各因子を 2 通りに評価する。

  • $p_i\ge2^{1/\varepsilon}$ のとき、$p_i^\varepsilon\ge2$ なので $p_i^{a_i\varepsilon}\ge2^{a_i}\ge a_i+1$ であり、因子は $1$ 以下である($2^a\ge a+1$ は $a$ についての帰納法で分かる)。
  • $p_i< 2^{1/\varepsilon}$ のとき、$p_i\ge2$ なので $p_i^{a_i\varepsilon}\ge2^{a_i\varepsilon}=e^{\lambda a_i}$($\lambda:=\varepsilon\log2$)である。$0<\lambda\le\log2< 1$ である。実数 $t\ge0$ の関数 $h(t):=(1+t)e^{-\lambda t}$ は、$h'(t)=e^{-\lambda t}(1-\lambda-\lambda t)$ なので $t=1/\lambda-1$ で最大値 $\frac1\lambda e^{-(1-\lambda)}\le\frac1\lambda$ をとる。よって因子は $1/\lambda$ 以下である。
    $2^{1/\varepsilon}$ より小さい素数は $2^{1/\varepsilon}$ 個未満で、$1/\lambda>1$ だから、すべての因子の積は $(1/\lambda)^{2^{1/\varepsilon}}$ 以下である。これが最初の不等式である。$\varepsilon>1$ では $d(n)\le n\le n^\varepsilon$ である。最後の主張は、$\varepsilon':=\min(\varepsilon,1)/2$ に最初の不等式を使えば $d(n)/n^\varepsilon\le d(n)/n^{2\varepsilon'}\le C_{\varepsilon'}\,n^{-\varepsilon'}\to0$ となることによる($C_{\varepsilon'}$ は $n$ によらない定数)。$\square$

これは HW60 Theorem 315(§18.1、pp. 260–262)で、同書は乗法的関数についての一般の補題(Theorem 316)から導く方法と、素数を大小で分けて因子を評価する直接の方法の 2 通りを示している。2 つの定理を合わせると、$d(n)$ の大きさは「対数のどんな冪より大きくなりうるが、どんな正の冪よりも小さい」となる。より精密には、$\varepsilon>0$ を与えると、十分大きいすべての $n$ で $d(n)< 2^{(1+\varepsilon)\log n/\log\log n}$ であり、無限に多くの $n$ で $d(n)> 2^{(1-\varepsilon)\log n/\log\log n}$ であることが知られている(同書 Theorem 317、p. 262)。

約数の総和の大きさ

約数の総和の上下の評価
  1. $n\ge2$ について $n+1\le\sigma(n)\le n(1+\log n)$ である。
  2. $\sigma(n)/n$ は有界でない。実際、正の整数 $m$ について $\sigma(m!)/m!>\log(m+1)$ である。

1:$1$ と $n$ は相異なる約数なので $\sigma(n)\ge n+1$ である。prop-dvf-basic の 3 により $\sigma(n)/n=\sum_{c\mid n}1/c$ で、$n$ の約数は $1$ 以上 $n$ 以下の相異なる整数なので、これは $H_n:=\sum_{j=1}^n1/j$ 以下である。調和級数 の記事の命題「積分による上下の評価」により $H_n\le1+\log n$ である。
2:$1\le j\le m$ なら $j$ は $m!$ を割り切るので、同じく $\sigma(m!)/m!=\sum_{c\mid m!}1/c\ge H_m$ であり、同じ命題により $H_m>\log(m+1)$ である。$\square$

1 の上界は大まかで、実際には $\limsup_{n\to\infty}\sigma(n)/(n\log\log n)=e^\gamma$ であることが知られている($\gamma$ は Euler の定数。HW60 Theorem 323、p. 266)。$\sigma(n)$ の揺れは $d(n)$ よりずっと小さく、つねに $n$ に「ほとんど比例」している。

平均の大きさ

$\gamma$ を Euler の定数とする。調和級数 の記事の定理「Eulerの定数の存在」により、すべての正の整数 $u$ について
$$ H_u:=\sum_{a=1}^u\frac1a=\log u+\gamma+\varepsilon_u,\qquad0<\varepsilon_u<\frac1u $$
である。

Dirichlet の約数の個数の平均の公式

実数 $x\ge4$ について
$$ \Bigl\lvert\sum_{n\le x}d(n)-x\log x-(2\gamma-1)x\Bigr\rvert\le13\sqrt x $$
である。とくに $\sum_{n\le x}d(n)=x\log x+(2\gamma-1)x+O(\sqrt x)$ であり、$d(n)$ の平均 $\frac1x\sum_{n\le x}d(n)$ は $\log x+2\gamma-1+O(1/\sqrt x)$ である。

段 1(格子点の数え上げ).$D(x):=\sum_{n\le x}d(n)$ は、$ab\le x$ を満たす正の整数の組 $(a,b)$ の個数に等しい(各 $n\le x$ について $ab=n$ となる組がちょうど $d(n)$ 個ある)。$u:=\lfloor\sqrt x\rfloor$ とおく。$ab\le x$ なら $a\le u$ か $b\le u$ である(両方が $u+1>\sqrt x$ 以上なら $ab> x$)。$a\le u$ かつ $ab\le x$ の組は $\sum_{a\le u}\lfloor x/a\rfloor$ 個、$b\le u$ の側も同数で、両方を満たす組は $a,b\le u$ の $u^2$ 個(このとき $ab\le u^2\le x$ は自動的に成り立つ)なので、
$$ D(x)=2\sum_{a=1}^u\Bigl\lfloor\frac xa\Bigr\rfloor-u^2 $$
である(双曲線 $ab=x$ の下の格子点を、対称性を使って数えている)。
段 2(床関数を外す).$\lfloor x/a\rfloor=x/a-\theta_a$($0\le\theta_a<1$)なので $\sum_{a\le u}\lfloor x/a\rfloor=xH_u-R$、$0\le R< u$ である。$H_u$ の式を代入して
$$ D(x)=2x\log u+2\gamma x+2x\varepsilon_u-2R-u^2 $$
を得る。
段 3($u$ を $\sqrt x$ に替える).$u=\sqrt x-t$($0\le t<1$)とおく。$x\ge4$ なので $\sqrt x\ge2$、$z:=t/\sqrt x< 1/2$ である。$0\le z\le1/2$ では $0\le-\log(1-z)=\sum_{k\ge1}z^k/k\le z/(1-z)\le2z$ なので、
$$ 2x\log u=x\log x+2x\log(1-z),\qquad\lvert2x\log(1-z)\rvert\le4xz=4t\sqrt x<4\sqrt x $$
である。また $u^2=x-2t\sqrt x+t^2$ なので $\lvert u^2-x\rvert\le2\sqrt x+1$ である。$u\ge\sqrt x-1\ge\sqrt x/2$ なので $0<2x\varepsilon_u<2x/u\le4\sqrt x$、$0\le2R<2u\le2\sqrt x$ である。
段 4(まとめ).以上から
$$ D(x)-x\log x-(2\gamma-1)x=2x\log(1-z)+2x\varepsilon_u-2R-(u^2-x) $$
で、右辺の絶対値は $4\sqrt x+4\sqrt x+2\sqrt x+(2\sqrt x+1)\le13\sqrt x$ である($1\le\sqrt x/2$)。$\square$

この定理は Dirichlet によるもので、HW60 Theorem 320(§18.2、pp. 264–265)にある。同書も格子点を双曲線の対称性で数える同じ方法をとっている。主要項 $x\log x$ だけなら、段 1 の対称性を使わずに $D(x)=\sum_{a\le x}\lfloor x/a\rfloor$ から得られる(約数 の記事の命題「約数の個数の平均」は、この方法で平均が $\log(n+1)-1$ と $1+\log n$ のあいだにあることを示している)。対称性を使うと、誤差が $x$ の程度から $\sqrt x$ の程度まで下がり、第 2 項 $(2\gamma-1)x$ が見える。
平均が $\log x$ だからといって、たいていの $n$ で $d(n)$ が $\log n$ 程度であるわけではない。ほとんどすべての $n$ で $d(n)$ は $(\log n)^{\log2}$ 程度であり、平均は少数の $d(n)$ の大きい数が押し上げていることが知られている(HW60 §18.2、p. 265。証明は同書 §22.13)。誤差項の指数 $1/2$ をどこまで小さくできるかは Dirichlet の約数問題 と呼ばれ、難しい問題として知られている(同書 第 18 章の注、p. 272)。

約数の総和の平均

実数 $x\ge2$ について
$$ \Bigl\lvert\sum_{n\le x}\sigma(n)-\frac{\pi^2}{12}x^2\Bigr\rvert\le x(2+\log x) $$
である。とくに $\sum_{n\le x}\sigma(n)=\frac{\pi^2}{12}x^2+O(x\log x)$ で、$\sigma(n)$ の平均は $\frac{\pi^2}{12}x$ に近い。

$\sigma(n)=\sum_{cm=n}m$($cm=n$ となる正の整数の組 $(c,m)$ にわたる和)なので、$S(x):=\sum_{n\le x}\sigma(n)$ は $cm\le x$ となる組 $(c,m)$ にわたる $m$ の和である。$c$ を固定すると $m$ は $1$ から $N_c:=\lfloor x/c\rfloor$ まで動くので
$$ S(x)=\sum_{c\le x}\frac{N_c(N_c+1)}2 $$
である。$y:=x/c\ge1$、$N_c=y-\theta$($0\le\theta<1$)とおくと
$$ \frac{N_c(N_c+1)}2=\frac{y^2}2+\frac{y(1-2\theta)}2+\frac{\theta^2-\theta}2 $$
で、最後の 2 項の絶対値の和は $y/2+1/8\le y$ 以下である。よって
$$ \Bigl\lvert S(x)-\frac{x^2}2\sum_{c\le x}\frac1{c^2}\Bigr\rvert\le\sum_{c\le x}\frac xc\le x(1+\log x) $$
である(調和級数 の記事の命題「積分による上下の評価」)。次に $N:=\lfloor x\rfloor$ とすると、$c\ge2$ で $1/c^2<1/(c(c-1))=1/(c-1)-1/c$ なので $\sum_{c>N}1/c^2<1/N\le2/x$ である。$\sum_{c\ge1}1/c^2=\pi^2/6$(Basel問題)なので
$$ 0<\frac{\pi^2}{12}x^2-\frac{x^2}2\sum_{c\le x}\frac1{c^2}=\frac{x^2}2\sum_{c>N}\frac1{c^2}< x $$
である。2 つを合わせて結論を得る。$\square$

これは HW60 Theorem 324(§18.3、p. 266)にある。$d(n)$ と違い $\sigma(n)$ の平均は $n$ に比例し、比例定数 $\pi^2/12$ は $\frac12\zeta(2)$ である。一般に $\sigma_k=\mathbf{1}*\mathrm{id}_k$ の Dirichlet 級数は $\zeta(s)\zeta(s-k)$ であり、$d$ では $\zeta(s)^2$ である(数論的関数 の記事の定理「絶対収束する Dirichlet 級数の積」の後の段落)。

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
prop-dvf-basic の 1 の「$m,n$ が互いに素」$m=n=2$$\sigma(mn)=\sigma(m)\sigma(n)$、$d(mn)=d(m)d(n)$
thm-dvf-small-power の正の冪 $n^\varepsilon$(対数の冪に替える)$n=(2\cdot3\cdots p_r)^m$、$m\to\infty$$d(n)/(\log n)^A$ が有界
thm-dvf-dirichlet の「平均をとる」素数 $p$ と $n=(2\cdot3\cdots p_r)^m$個々の値で $d(n)/\log n\to1$
thm-dvf-small-power の $\varepsilon>0$($\varepsilon=0$ にする)$n=2^m$、$m\to\infty$$d(n)\le Cn^0=C$(有界)
反例の確認

1 行目:$\sigma(4)=7\ne\sigma(2)^2=9$、$d(4)=3\ne d(2)^2=4$ である。$\sigma_k$ は乗法的だが完全乗法的ではない(乗法的関数 の記事の例「代表的な乗法的関数」)。2 行目:thm-dvf-not-log-power。3 行目:素数 $p$ では $d(p)/\log p=2/\log p\to0$ で、2 行目の列では $d(n)/\log n\to\infty$ なので、個々の値の比は $1$ に近づかない。4 行目:$d(2^m)=m+1$ は有界でない。

補足

約数の和の大きさと完全数

$\sigma(n)=2n$ となる $n$ を完全数、$\sigma(n)>2n$ を過剰数、$\sigma(n)<2n$ を不足数という。prop-dvf-sigma-size の 2 により、$\sigma(n)/n$ はいくらでも大きくなるので、過剰数は無限にある(たとえば $m\ge7$ で $\log(m+1)>2$ なので $m!$ は過剰数)。偶数の完全数は $2^{k-1}(2^k-1)$($2^k-1$ は素数)の形に限られる(完全数とMersenne素数)。

呼び名についての注意

「約数関数」は $\sigma_k$ の総称として使うほか、$d(n)$ だけを指すこともある。$d(n)$ は $\tau(n)$、$\sigma_0(n)$ とも書かれる。$\sigma(n)$ は約数和関数・約数総和関数と呼ばれる。高校数学の範囲の公式と例は 約数の個数と約数の総和 にある。

関連項目

参考文献

[1]
G. H. Hardy and E. M. Wright, An Introduction to the Theory of Numbers, Oxford, Clarendon Press, 1960, §16.7, Theorems 273–275, p. 239($d$ と $\sigma_k$ の公式)、§18.1, Theorems 313–317, pp. 260–262($d(n)$ の大きさ)、§18.2, Theorem 320, pp. 264–265(Dirichlet の公式)と p. 265、§18.3, Theorems 323–324, p. 266($\sigma(n)$ の大きさと平均)、第 18 章の注, p. 272

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