Dirichletの単数定理

同義語:ディリクレの単数定理単数定理基本単数単数規準Dirichlet's unit theoremfundamental unitregulator

概要

Dirichletの単数定理(Dirichlet's unit theorem)とは、代数体 $K$ の整数環 $\mathcal{O}_K$ の単数群が、$K$ に含まれる 1 の冪根の有限巡回群 $\mu_K$ と階数 $r_1+r_2-1$ の自由アーベル群の直積 $\mathcal{O}_K^\times\cong\mu_K\times\mathbb{Z}^{r_1+r_2-1}$ になるという定理である。$(r_1,r_2)$ は実埋め込みの個数と複素埋め込みの組の個数である。単数の各埋め込みでの絶対値の対数をとると、単数群は和が $0$ の超平面の中の格子に写り、その格子が超平面を張ることを Minkowski の凸体定理により示される。実 2 次体では基本単数 1 つで単数が生成され、Pell 方程式の解の無限性が従う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 代数体, 判別式(代数体), イデアル類群, 自由アーベル群, Minkowskiの凸体定理

Pell 方程式 $x^2-2y^2=\pm1$ の整数解 $(x,y)$ は、$\mathbb{Z}[\sqrt2]$ の元 $x+y\sqrt2$ で逆元も $\mathbb{Z}[\sqrt2]$ に属するもの、すなわち $\mathbb{Z}[\sqrt2]$ の単数に対応する。$1+\sqrt2$ は $(1+\sqrt2)(-1+\sqrt2)=1$ から単数であり、その冪 $(1+\sqrt2)^k=3+2\sqrt2,\ 7+5\sqrt2,\dots$ から無限個の解が出てくる。実は単数はすべて $\pm(1+\sqrt2)^k$($k\in\mathbb{Z}$)の形である(ex-dut-real-quadratic)。
一般の代数体 $K$ の整数環 $\mathcal{O}_K$ でも、単数全体は乗法について群をなす。Dirichlet の単数定理 は、この群が「有限個の 1 の冪根」と「$r_1+r_2-1$ 個の独立な無限位数の単数」で生成されること、すなわち
$$ \mathcal{O}_K^\times\cong\mu_K\times\mathbb{Z}^{r_1+r_2-1} $$
であることを主張する。ここで $\mu_K$ は $K$ に含まれる 1 の冪根の群、$(r_1,r_2)$ は $K$ の符号数である。本記事では、単数の対数をとって $\mathcal{O}_K^\times$ を $\mathbb{R}^{r_1+r_2}$ の中の超平面の格子に写し、その格子の階数を Minkowskiの凸体定理 で決めることで、定理を記事内で完全に証明する。

定義と主張

以下、$K$ を次数 $n$ の 代数体、$\mathcal{O}_K$ をその整数環、$d_K$ を判別式(判別式(代数体))、$N=N_{K/\mathbb{Q}}$ を元のノルムとする。$K$ の実埋め込みを $\rho_1,\dots,\rho_{r_1}$、複素埋め込みの各組から 1 つずつ選んだものを $\rho_{r_1+1},\dots,\rho_{r_1+r_2}$ とし、$s:=r_1+r_2$ とおく。重み $e_i$ を、実埋め込みなら $e_i=1$、複素埋め込みなら $e_i=2$ と定める。$\sum_ie_i=r_1+2r_2=n$ であり、組の相手 $\bar\rho_i$ は $\lvert\bar\rho_i(x)\rvert=\lvert\rho_i(x)\rvert$ を満たすので、$x\in K$ について
$$ \lvert N(x)\rvert=\prod_{i=1}^s\lvert\rho_i(x)\rvert^{e_i} $$
である(代数体 の記事の定理「ノルムとトレースは共役の積と和」)。

単数群と対数写像

$\mathcal{O}_K$ の 単元(逆元が $\mathcal{O}_K$ に属する元)を $K$ の 単数(unit)といい、単数全体の乗法群を $\mathcal{O}_K^\times$ と書く。$K$ に含まれる 1 の冪根(ある $m\ge1$ で $\zeta^m=1$ となる元 $\zeta$)全体を $\mu_K$ と書く。写像
$$ \ell\colon\mathcal{O}_K^\times\to\mathbb{R}^s,\qquad \ell(u):=\bigl(e_1\log\lvert\rho_1(u)\rvert,\dots,e_s\log\lvert\rho_s(u)\rvert\bigr) $$
を 対数写像 という。$\ell(uv)=\ell(u)+\ell(v)$ なので、$\ell$ は乗法群から加法群への準同型である。

$u\in\mathcal{O}_K$ が単数であることと $N(u)=\pm1$ であることは同値である(代数体 の記事の系「単数とノルム」)。したがって単数 $u$ について $\sum_i e_i\log\lvert\rho_i(u)\rvert=\log\lvert N(u)\rvert=0$ であり、$\ell$ の像は超平面
$$ H:=\{x\in\mathbb{R}^s\mid x_1+\cdots+x_s=0\}\qquad(\dim H=s-1=r_1+r_2-1) $$
に含まれる。1 の冪根 $\zeta$ は $x^m-1$ の根なので $\mathcal{O}_K$ に属し、$\zeta\cdot\zeta^{m-1}=1$ から単数である。よって $\mu_K\subset\mathcal{O}_K^\times$ である。

Dirichletの単数定理

$r:=r_1+r_2-1$ とおく。

  1. $\mu_K$ は有限巡回群であり、$\ker\ell=\mu_K$ である。
  2. $\ell(\mathcal{O}_K^\times)$ は $H$ の中の格子、すなわち $H$ の基底をなす $r$ 個のベクトルで生成される階数 $r$ の自由アーベル群である。
  3. 単数 $\varepsilon_1,\dots,\varepsilon_r$ で、すべての単数 $u$ が
    $$ u=\zeta\,\varepsilon_1^{m_1}\cdots\varepsilon_r^{m_r}\qquad(\zeta\in\mu_K,\ m_1,\dots,m_r\in\mathbb{Z}) $$
    とただ 1 通りに書けるものが存在する。すなわち $\mathcal{O}_K^\times\cong\mu_K\times\mathbb{Z}^r$ である。
定理の内容と証明の構成

1 は単数群の有限部分が 1 の冪根に尽きることを、2 と 3 は残りの部分が階数 $r_1+r_2-1$ の自由アーベル群であることを述べている。階数が $n-1$ ではなく $r_1+r_2-1$ になるのは、複素埋め込みが共役の組ごとに 1 つの座標を与えるからである。たとえば虚 2 次体では $r=0$ で単数群は有限、実 2 次体では $r=1$ で単数群は $\pm1$ と基本単数の冪で書ける。証明は次の節で、有界な単数が有限個しかないこと、対数写像の核が $\mu_K$ であること、像が $H$ を張ることの 3 段階に分けて行う。

3 の $\varepsilon_1,\dots,\varepsilon_r$ を 基本単数系(fundamental units)という。$r=1$ のときの $\varepsilon_1$ を 基本単数 という。

単数規準

基本単数系 $\varepsilon_1,\dots,\varepsilon_r$ について、$r\times s$ 行列 $\bigl(e_i\log\lvert\rho_i(\varepsilon_j)\rvert\bigr)_{j,i}$ から 1 つの列を除いた $r$ 次の正方行列の行列式の絶対値を $R_K$ と書き、$K$ の 単数規準(regulator)という。$r=0$ のときは $R_K:=1$ とする。

$R_K$ は除く列にも基本単数系の選び方にもよらない。各行の和は $0$ なので、残した $r$ 列をすべて 1 つの列に足すと、その列は除いた列の $-1$ 倍になり、行列式は列の並べ替えと符号を除いて変わらない。基本単数系の取り替えは $\ell(\mathcal{O}_K^\times)$ の基底の取り替えで、行列式 $\pm1$ の整数行列を掛けることにあたる(自由アーベル群 の記事の命題「行列式による基底の判定」)。$R_K$ は $H$ の中の格子 $\ell(\mathcal{O}_K^\times)$ の大きさを測る量である。

直感

単数は「ノルムが $\pm1$ の整数」であり、$n$ 個の埋め込みでの絶対値の積が $1$ になる。対数をとると、絶対値の積が $1$ という条件は、対数の和が $0$ という線形条件になる。単数全体の対数は $H$ の中で格子点のように離散的に並び(どの有界な範囲にも有限個しかない)、さらに $H$ のあらゆる方向に広がっている。前者は $\mathcal{O}_K$ が $\mathbb{R}^n$ の格子であることから、後者は「特定の埋め込みでだけ大きく、他のすべてで小さい」単数を凸体定理で作れることから従う。$H$ の次元が $r_1+r_2-1$ なので、単数群の階数もこの数になる。

証明の準備

離散性と 1 の冪根

有界な単数は有限個

実数 $R>0$ について、すべての $i$ で $\lvert\rho_i(u)\rvert\le R$ を満たす単数 $u$ は有限個しかない。したがって、$\mathbb{R}^s$ の有界な集合 $B$ について $\ell^{-1}(B)$ は有限集合であり、とくに $\ker\ell$ は有限群である。

判別式(代数体) の記事の Minkowski 埋め込み $j\colon K\to\mathbb{R}^n$ について、同記事の定理「整数環の格子としての体積」により $j(\mathcal{O}_K)=A\mathbb{Z}^n$($A$ は正則な実行列)である。$\lvert\rho_i(u)\rvert\le R$(すべての $i$)なら $j(u)$ の各成分の絶対値は $R$ 以下なので、$j(u)$ は有界な立方体 $Q=[-R,R]^n$ に入る。$A^{-1}Q$ は有界なので整数点を有限個しか含まず、$j(\mathcal{O}_K)\cap Q$ は有限集合である。$j$ は単射なので、そのような $u$ は有限個である。
$B$ が有界なら、ある $c\ge0$ について $B$ の点の各成分は $c$ 以下であり、$\ell(u)\in B$ なら $\lvert\rho_i(u)\rvert\le e^{c}$(すべての $i$)である。前半により $\ell^{-1}(B)$ は有限である。$\ker\ell=\ell^{-1}(\{0\})$ である。$\square$

対数写像の核

$\ker\ell=\mu_K$ であり、$\mu_K$ は有限巡回群である。

$\zeta\in\mu_K$、$\zeta^m=1$ なら $\lvert\rho_i(\zeta)\rvert^m=1$ から $\lvert\rho_i(\zeta)\rvert=1$ なので $\ell(\zeta)=0$ である。逆に $\ker\ell$ は有限群(lem-dut-bounded)なので、その元 $u$ の位数 $m$ は有限で $u^m=1$、すなわち $u\in\mu_K$ である。よって $\ker\ell=\mu_K$ は有限群である。埋め込み $\rho_1\colon K\to\mathbb{C}$ は単射な準同型なので、$\mu_K$ は $\mathbb{C}^\times$ の有限部分群と同型であり、1の冪根 の記事の命題「複素数の乗法群の有限部分群」により巡回群である。$\square$

凸体定理による単数の構成

$A_K:=(2/\pi)^{r_2}\sqrt{\lvert d_K\rvert}$ とおく。

各埋め込みで小さい元

正の実数 $c_1,\dots,c_s$ が $\prod_{i=1}^sc_i^{e_i}=A_K$ を満たすならば、$0$ でない $\alpha\in\mathcal{O}_K$ で、すべての $i$ について $\lvert\rho_i(\alpha)\rvert\le c_i$ となるものがある。このとき $1\le\lvert N(\alpha)\rvert\le A_K$ である。

$\mathbb{R}^n$ の中で、実埋め込みの座標 $y_i$($i\le r_1$)について $\lvert y_i\rvert\le c_i$、複素埋め込み $\rho_{r_1+l}$ の実部と虚部の座標の組 $(y,y')$ について $y^2+y'^2\le c_{r_1+l}^2$ という条件で定まる集合を $S$ とする。$S$ は区間と閉円板の直積なので、原点について対称な凸集合で有界な閉集合であり、
$$ \operatorname{vol}(S)=\prod_{i\le r_1}(2c_i)\prod_{l\le r_2}(\pi c_{r_1+l}^2)=2^{r_1}\pi^{r_2}A_K=2^{r_1+r_2}\sqrt{\lvert d_K\rvert}=2^n\cdot2^{-r_2}\sqrt{\lvert d_K\rvert} $$
である。右辺は $2^n$ と $j(\mathcal{O}_K)$ の基本領域の体積の積である(判別式(代数体) の記事の定理「整数環の格子としての体積」)。イデアル類群 の記事の補題「格子に対する凸体定理」により、$0$ でない $\alpha\in\mathcal{O}_K$ で $j(\alpha)\in S$、すなわち $\lvert\rho_i(\alpha)\rvert\le c_i$(すべての $i$)となるものがある。$\lvert N(\alpha)\rvert=\prod_i\lvert\rho_i(\alpha)\rvert^{e_i}\le\prod_ic_i^{e_i}=A_K$ であり、$N(\alpha)$ は $0$ でない整数なので $1$ 以上である。$\square$

1 つの埋め込みでだけ大きい単数

$s\ge2$ とし、$k\in\{1,\dots,s\}$ を固定する。単数 $u$ で、$i\ne k$ のすべての $i$ について $\lvert\rho_i(u)\rvert<1$ となるものがある。このとき $\lvert\rho_k(u)\rvert>1$ である。

$0$ でない $\alpha_1,\alpha_2,\dots\in\mathcal{O}_K$ を、次の 2 条件を満たすように帰納的に選ぶ:(i) $\lvert N(\alpha_m)\rvert\le A_K$、(ii) $i\ne k$ のすべての $i$ で $\lvert\rho_i(\alpha_{m+1})\rvert<\lvert\rho_i(\alpha_m)\rvert$。$\alpha_1$ は lem-dut-small を $c_i=A_K^{1/n}$(すべての $i$)に使って得る。$\alpha_m$ が選ばれたら、$i\ne k$ について $0< c_i<\lvert\rho_i(\alpha_m)\rvert$ となる $c_i$ をとり($\alpha_m\ne0$ なので $\lvert\rho_i(\alpha_m)\rvert>0$)、$c_k>0$ を $\prod_ic_i^{e_i}=A_K$ となるように定めて、lem-dut-small から $\alpha_{m+1}$ を得る。
単項イデアル $\alpha_m\mathcal{O}_K$ のノルムは $\lvert N(\alpha_m)\rvert\le A_K$ であり(イデアル類群 の記事の命題「単項イデアルのノルム」)、ノルムが $A_K$ 以下のイデアルは有限個しかない(同記事の補題「ノルムが有界なイデアルは有限個」)。よって $m< m'$ で $\alpha_m\mathcal{O}_K=\alpha_{m'}\mathcal{O}_K$ となるものがある。このとき $\alpha_{m'}=\alpha_mx$、$\alpha_m=\alpha_{m'}y$($x,y\in\mathcal{O}_K$)と書け、$xy=1$ なので $u:=\alpha_{m'}/\alpha_m=x$ は単数である。(ii) を繰り返し使うと、$i\ne k$ について
$$ \lvert\rho_i(u)\rvert=\frac{\lvert\rho_i(\alpha_{m'})\rvert}{\lvert\rho_i(\alpha_m)\rvert}<1 $$
である。$\sum_ie_i\log\lvert\rho_i(u)\rvert=0$ で $i\ne k$ の項はすべて負なので、$\log\lvert\rho_k(u)\rvert>0$ である。$\square$

行列の階数

$s\ge2$ とし、実数を成分とする $s$ 次正方行列 $(a_{ki})$ が、$k\ne i$ なら $a_{ki}<0$ で、各行の和が $0$(すべての $k$ で $\sum_ia_{ki}=0$)であるとする。このとき最初の $s-1$ 列は 1 次独立であり、行列の階数は $s-1$ である。

最初の $s-1$ 列が 1 次従属と仮定し、すべては $0$ でない実数 $t_1,\dots,t_{s-1}$ で $\sum_{i< s}t_ia_{ki}=0$(すべての $k$)となるものをとる。$\lvert t_i\rvert$ が最大となる番号を $k< s$ とし、全体を定数倍して $t_k=1$ とすると、すべての $i$ で $t_i\le1$ である。第 $k$ 行について、$i\ne k$ では $a_{ki}<0$ と $t_i\le1$ から $t_ia_{ki}\ge a_{ki}$ なので
$$ 0=\sum_{i< s}t_ia_{ki}\ge\sum_{i< s}a_{ki}=-a_{ks}>0 $$
となり矛盾する。よって最初の $s-1$ 列は 1 次独立で、階数は $s-1$ 以上である。各行の和が $0$ なので列の和は $0$ ベクトルであり、列は 1 次従属だから、階数は $s-1$ である。$\square$

定理の証明

1 は prop-dut-kernel である。$\Lambda:=\ell(\mathcal{O}_K^\times)$ とおくと、$\Lambda$ は $H$ の部分群で、lem-dut-bounded により $H$ のどの有界な集合も $\Lambda$ の点を有限個しか含まない。
$r=0$($s=1$)なら $H=\{0\}$ なので $\Lambda=0$、$\mathcal{O}_K^\times=\ker\ell=\mu_K$ であり、2 と 3 は明らかに成り立つ。以下 $s\ge2$ とする。
段 1($\Lambda$ は $H$ を張る)。各 $k=1,\dots,s$ について lem-dut-construct の単数 $u_k$ をとり、$a_{ki}:=e_i\log\lvert\rho_i(u_k)\rvert$ とおく。$\ell(u_k)=(a_{k1},\dots,a_{ks})$ である。$k\ne i$ なら $a_{ki}<0$ で、$\ell(u_k)\in H$ から各行の和は $0$ である。lem-dut-matrix により $\ell(u_1),\dots,\ell(u_s)$ の張る部分空間は $s-1$ 次元であり、$H$ に含まれて $\dim H=s-1$ なので、$H$ 全体である。
段 2($\Lambda$ は階数 $r$ の自由アーベル群で、$H$ の基底で生成される)。段 1 により、$\Lambda$ の元 $v_1,\dots,v_r$ で $H$ の基底となるものがとれる。$\Lambda_0:=\mathbb{Z}v_1+\cdots+\mathbb{Z}v_r$ とおく。$\lambda\in\Lambda$ を $\lambda=\sum_it_iv_i$($t_i\in\mathbb{R}$)と書き、$\lambda-\sum_i\lfloor t_i\rfloor v_i$ を考えると、これは $\Lambda$ の元で、有界な集合 $F:=\{\sum_it_iv_i\mid0\le t_i<1\}$ に属する。$\Lambda\cap F$ は有限集合なので、剰余群 $\Lambda/\Lambda_0$ は有限である。その位数を $m$ とすると $m\Lambda\subset\Lambda_0$、すなわち $\Lambda\subset\frac1m\Lambda_0$ であり、$\frac1m\Lambda_0$ は $\frac1mv_i$ を基底とする階数 $r$ の自由アーベル群である。自由アーベル群 の記事の命題「有限階数の自由アーベル群の部分群」により $\Lambda$ は階数 $r$ 以下の自由アーベル群であり、階数 $r$ の $\Lambda_0$ を含むので階数はちょうど $r$ である。$\Lambda$ の基底 $w_1,\dots,w_r$ は $H$ を張る $r$ 個のベクトル($\Lambda\supset\Lambda_0$ が $H$ を張る)なので $H$ の基底である。これで 2 が示された。
段 3(直積分解)。$\ell\colon\mathcal{O}_K^\times\to\Lambda$ は全射準同型で、$\Lambda\cong\mathbb{Z}^r$ は自由アーベル群である。自由アーベル群 の記事の命題「自由アーベル群への全射は分裂する」により、$\ell\circ\iota=\mathrm{id}$ となる準同型 $\iota\colon\Lambda\to\mathcal{O}_K^\times$ があり、$\mathcal{O}_K^\times=\ker\ell\times\iota(\Lambda)$(内部直積)である。$\varepsilon_j:=\iota(w_j)$ とおけば、$\ker\ell=\mu_K$ と合わせて、すべての単数は $\zeta\varepsilon_1^{m_1}\cdots\varepsilon_r^{m_r}$ とただ 1 通りに書ける。$\square$

証明の中心は段 1 である。lem-dut-construct で、Minkowski の凸体定理を使って「$\rho_k$ 以外の埋め込みではどんどん小さくなる」元の列を作り、ノルムが有界な単項イデアルが有限個しかないことから、列の 2 つの元の比として単数を取り出している。

例

$K$$(r_1,r_2)$階数 $r$$\mu_K$単数群
$\mathbb{Q}$$(1,0)$$0$$\{\pm1\}$$\{\pm1\}$
$\mathbb{Q}(i)$$(0,1)$$0$$\{\pm1,\pm i\}$$\mu_K$
$\mathbb{Q}(\sqrt2)$$(2,0)$$1$$\{\pm1\}$$\pm(1+\sqrt2)^{\mathbb{Z}}$
$\mathbb{Q}(\sqrt5)$$(2,0)$$1$$\{\pm1\}$$\pm\bigl(\frac{1+\sqrt5}2\bigr)^{\mathbb{Z}}$
$\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})$$(1,1)$$1$$\{\pm1\}$$\{\pm1\}\times\mathbb{Z}$
虚 2 次体の単数

$K=\mathbb{Q}(\sqrt d)$($d<0$ は平方因子をもたない整数)では $(r_1,r_2)=(0,1)$、$r=0$ なので、単数は 1 の冪根だけで有限個である。実際に求めると、$\mathbb{Q}(\sqrt{-1})$ では $\pm1,\pm i$ の 4 個、$\mathbb{Q}(\sqrt{-3})$ では 1 の 6 乗根の 6 個、それ以外では $\pm1$ の 2 個である。

計算を開く

単数はノルム $1$ の整数環の元である(虚 2 次体ではノルム $a^2+\lvert d\rvert b^2\ge0$ なので $-1$ にならない)。$d\equiv2,3\pmod4$ なら $\mathcal{O}_K=\mathbb{Z}[\sqrt d]$ で、$x^2+\lvert d\rvert y^2=1$ の整数解は、$d=-1$ なら $(\pm1,0),(0,\pm1)$、$d\le-2$ なら $(\pm1,0)$ だけである。$d\equiv1\pmod4$ なら $\mathcal{O}_K$ の元は $(x+y\sqrt d)/2$($x\equiv y\pmod2$)で、ノルム $1$ は $x^2+\lvert d\rvert y^2=4$ である。$d=-3$ なら $(\pm2,0),(\pm1,\pm1)$ の 6 個、$d\le-7$ なら $y=0$、$x=\pm2$ だけである。

実 2 次体の基本単数

$K=\mathbb{Q}(\sqrt2)$ では $(r_1,r_2)=(2,0)$、$r=1$ で、$K\subset\mathbb{R}$ なので $\mu_K=\{\pm1\}$ である。単数定理により $\mathcal{O}_K^\times=\{\pm1\}\times\langle\eta\rangle$ と書け、$\eta$ を $\eta^{-1}$ に替えて $\eta>1$ としてよい。正の単数の群は $\langle\eta\rangle$ で、$1$ より大きい単数は $\eta^k$($k\ge1$)なので、$\eta$ は $1$ より大きい最小の単数である。
$u=a+b\sqrt2>1$($a,b\in\mathbb{Z}$、$\mathcal{O}_K=\mathbb{Z}[\sqrt2]$)を単数とし、$u'=a-b\sqrt2$ とおく。$uu'=N(u)=\pm1$ なので $\lvert u'\rvert=1/u<1$ であり、$2a=u+u'>0$、$2\sqrt2\,b=u-u'>0$ から $a,b\ge1$、すなわち $u\ge1+\sqrt2$ である。$1+\sqrt2$ は $N(1+\sqrt2)=-1$ の単数なので、$\eta=1+\sqrt2$ であり、単数はすべて $\pm(1+\sqrt2)^k$($k\in\mathbb{Z}$)である。単数規準は $R_K=\log(1+\sqrt2)=0.881\cdots$ である。
同じ議論を $K=\mathbb{Q}(\sqrt5)$、$\mathcal{O}_K=\mathbb{Z}[\varphi]$($\varphi=\frac{1+\sqrt5}2$)に使うと、単数 $u=\frac{a+b\sqrt5}2>1$ について $a=u+u'>0$、$b\sqrt5=u-u'>0$ から $a,b\ge1$、$u\ge\varphi$ である。$\varphi(\varphi-1)=1$ なので $\varphi$ は単数であり、基本単数は $\varphi$、$R_K=\log\varphi=0.481\cdots$ である。

3 次体の単数
  1. $\theta^3=\theta+1$ の実根 $\theta=1.3247\cdots$ で生成される 3 次体 $K$($d_K=-23$、判別式(代数体) の記事の例「判別式 $-23$ の 3 次体」)では $(r_1,r_2)=(1,1)$、$r=1$ である。$\theta(\theta^2-1)=1$ なので $\theta$ は単数であり、$\lvert\theta\rvert\ne1$ なので 1 の冪根でない。$K$ の元を実埋め込みで $\mathbb{R}$ に移すと 1 の冪根は $\pm1$ に移るので $\mu_K=\{\pm1\}$ であり、$\mathcal{O}_K^\times\cong\{\pm1\}\times\mathbb{Z}$ で、$\theta$ は無限位数の単数である。
  2. $K=\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})$ も $(r_1,r_2)=(1,1)$ で、$(\sqrt[3]{2}-1)(\sqrt[3]{4}+\sqrt[3]{2}+1)=2-1=1$ から $\sqrt[3]{2}-1=0.2599\cdots$ は無限位数の単数である(代数体 の記事の例「3 次体 $\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})$」)。

Pell 方程式への応用

Pell方程式の解の無限性

$d$ を平方数でない正の整数とする。$x^2-dy^2=1$ を満たす整数の組 $(x,y)$ は無限個ある。

$d=f^2d_0$($d_0>1$ は平方因子をもたない)と書き、$K=\mathbb{Q}(\sqrt{d_0})=\mathbb{Q}(\sqrt d)$、$R:=\mathbb{Z}[\sqrt d]=\{x+y\sqrt d\mid x,y\in\mathbb{Z}\}$ とする。$\mathcal{O}_K$ は $\mathbb{Z}[\sqrt{d_0}]$ または $\mathbb{Z}[\frac{1+\sqrt{d_0}}2]$ なので(代数的整数 の記事の命題「2 次体の整数環の決定」)、$m:=2f$ について $m\mathcal{O}_K\subset R$ である($f\sqrt{d_0}=\sqrt d$、$2f\cdot\frac{1+\sqrt{d_0}}2=f+\sqrt d$)。
$K$ は実 2 次体なので $r=1$ で、無限位数の単数 $\varepsilon$ がある(thm-dut-main)。有限群 $(\mathcal{O}_K/m\mathcal{O}_K)^\times$ への準同型 $\mathcal{O}_K^\times\to(\mathcal{O}_K/m\mathcal{O}_K)^\times$ の核を $U_1$ とすると、$U_1$ は有限指数 $k$ をもち、$\varepsilon^k\in U_1$ である。$U_1$ の元 $u$ は $u\in1+m\mathcal{O}_K\subset R$ を満たし、$N(u^2)=N(u)^2=1$ である。よって $\varepsilon^{2kj}$($j\ge1$)は $R$ に属するノルム $1$ の元で、互いに異なる。$\varepsilon^{2kj}=x_j+y_j\sqrt d$ と書けば、$N(x_j+y_j\sqrt d)=x_j^2-dy_j^2=1$ であり、$\sqrt d$ が無理数なので $(x_j,y_j)$ も互いに異なる。$\square$

Pell方程式 の記事では、この事実(定理「自明でない解の存在」)を Dirichlet の近似定理から直接証明し、解がすべて基本解の冪であることも示している。単数定理は、それを任意の代数体に一般化したものと見ることができる。

反例

外す条件反例成り立たなくなること
整数環の単数に限ること$\mathbb{Q}^\times$($K=\mathbb{Q}$ の $0$ でない元全体)有限生成であること
整数環であること$\mathbb{Z}[\frac12]^\times=\{\pm2^k\mid k\in\mathbb{Z}\}$階数が $r_1+r_2-1\ (=0)$ であること
元が整数環に属すること$\mathbb{Q}(i)$ の $\frac{3+4i}5$「ノルムが $\pm1$ なら単数」
有限次の代数体であること代数的整数全体の環 $\overline{\mathbb{Z}}$単数群が有限生成であること
反例の確認

各行の反例は、表の条件以外の設定を保ったまま結論が破れることを示す。

各行の確認を開く

1 行目:素因数分解の一意性により、$\mathbb{Q}^\times$ は $\pm1$ と素数全体を基底とする自由アーベル群の直積 $\{\pm1\}\times\bigoplus_p\mathbb{Z}$ と同型で、素数は無限個あるので有限生成でない(有限生成なら、有限個の生成元に現れる素数以外の素数が生成できない)。$\mathbb{Q}$ の整数環の単数群は $\{\pm1\}$ で、$r_1+r_2-1=0$ と合っている。

2 行目:$\mathbb{Z}[\frac12]=\{a/2^k\mid a\in\mathbb{Z},k\ge0\}$ の単数は、$\pm2^k$ に限る($a/2^k$ の逆元 $2^k/a$ がこの環に属するのは $a=\pm2^j$ のとき)。これは $\{\pm1\}\times\mathbb{Z}$ と同型で階数 $1$ であり、$\mathbb{Q}$ の $r_1+r_2-1=0$ と異なる。分母に素数の集合 $S$ を許した環の単数群の階数は $r_1+r_2-1+\lvert S\rvert$ になる(Ste12 §12.1 の Theorem 12.1.1 の証明、pp. 128–129)。

3 行目:$N(\frac{3+4i}5)=\frac{9+16}{25}=1$ だが、$\frac{3+4i}5$ の最小多項式は $x^2-\frac65x+1$ で整数係数でないので、代数的整数でなく単数でない(代数的整数 の記事の命題「最小多項式による判定」)。

4 行目:$\overline{\mathbb{Z}}$ はすべての 1 の冪根を含み、それらは単数である。1 の冪根は無限個あるので、単数群の捩れ部分群は無限群である。有限生成アーベル群の捩れ部分群は有限なので(自由アーベル群 の記事の系「有限生成アーベル群の捩れ部分の分離」)、$\overline{\mathbb{Z}}^\times$ は有限生成でない。

補足

単数定理の文献

単数定理は Dirichlet による(Ste12 Remark 8.1.3、p. 88)。Ste12 Theorem 8.1.2(pp. 87–93)は、対数写像の像が超平面の中で離散的であることと、超平面を張ることを示して定理を証明している。本記事の段 1 の構成(1 つの埋め込みでだけ大きい単数と、非対角成分が負の行列)は同書の証明とは異なる。同書は単数の判定(Proposition 8.1.4、p. 88)と対数写像の像が超平面に入ること(Lemma 8.1.6、p. 89)も示している。

単数群と類群

イデアル類群 の記事の完全列 $1\to\mathcal{O}_K^\times\to K^\times\to\mathcal{I}_K\to\operatorname{Cl}_K\to1$ の両端にあたる 2 つの群について、類群は有限(類数の有限性)、単数群は有限生成(単数定理)であり、どちらも Minkowski の凸体定理で証明される。単数規準 $R_K$ と類数 $h_K$ は、代数体の算術を測る基本的な不変量である。

関連項目

参考文献

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