射影変換と複比(projective transformations and cross-ratio)とは、直線上の相異なる 4 点の複比 $\dfrac{(a-c)(b-d)}{(a-d)(b-c)}$($a,b,c,d$ は座標)と、それを変えない変換の関係である。点 $O$ を通る相異なる 4 本の直線を、$O$ を通らない 2 本の直線で切ると、4 つの交点の複比は等しい(透視で複比は変わらない)。透視を座標で書くと 1 次分数関数 $\dfrac{pt+q}{rt+s}$($ps-qr\ne0$)になり、1 次分数関数も複比を変えない。無限遠点を加えた実射影直線では、相異なる 3 点を相異なる 3 点に移す 1 次分数変換がただ 1 つあり、相異なる 4 点の組が移り合うのは複比が等しいときに限る。
前提知識: 位置ベクトルと内分点, 直線の方程式と点と直線の距離, 三角形の面積の公式, 分数型の漸化式と1次分数変換
窓ガラスに景色を写し取ることを考える。目の位置を点 $O$ とし、景色の中の点 $X$ と目を結ぶ直線がガラスと交わる点に $X$ を写す。これを平面の中で考えると、1 本の直線 $\ell$ の上の点を、点 $O$ を通る直線に沿って別の直線 $\ell'$ の上に移すことになる。このような移し方を 透視(中心射影)という。透視では、線分の長さも長さの比も変わってしまう。ところが、4 点を使って作るある量だけは変わらない。まず座標で確かめる。
原点 $O$ を通る 4 本の直線 $y=2x$、$y=x$、$y=\dfrac12x$、$y=\dfrac14x$ を考える。
(1) 直線 $\ell$:$y=2$ との交点は、$y=2$ を代入して $A=(1,2)$、$B=(2,2)$、$C=(4,2)$、$D=(8,2)$ である。$x$ 座標は $1,2,4,8$ で、$AB:BC:CD=1:2:4$ である。
(2) 直線 $\ell'$:$x=2$ との交点は、$x=2$ を代入して $A'=(2,4)$、$B'=(2,2)$、$C'=(2,1)$、$D'=\left(2,\dfrac12\right)$ である。$y$ 座標は $4,2,1,\dfrac12$ で、$A'B':B'C':C'D'=2:1:\dfrac12=4:2:1$ である。
(3) $\ell$ では $B$ は線分 $AC$ を $1:2$ に内分するが、$\ell'$ では $B'$ は線分 $A'C'$ を $2:1$ に内分する。$O$ から見ると同じ 4 本の直線の上の点なのに、長さの比は変わっている。
ex-pcr-start の 2 組の 4 点で、$C$ と $D$ が線分 $AB$ を分ける比を、向きも込めて計算する(線分の内部で分けるなら正、外部なら負。位置ベクトルと内分点)。
(1) $\ell$ の上では $x$ 座標を使う。$C$ は $\overrightarrow{AC}=(3,0)$、$\overrightarrow{CB}=(-2,0)$ なので $\dfrac{AC}{CB}=-\dfrac32$、$D$ は $\overrightarrow{AD}=(7,0)$、$\overrightarrow{DB}=(-6,0)$ なので $\dfrac{AD}{DB}=-\dfrac76$ である。2 つの比の比は
$$
\frac{AC}{CB}\mathbin{÷}\frac{AD}{DB}=\left(-\frac32\right)\mathbin{÷}\left(-\frac76\right)=\frac32\cdot\frac67=\frac97
$$
である。
(2) $\ell'$ の上では $y$ 座標を使う。$\overrightarrow{A'C'}=(0,-3)$、$\overrightarrow{C'B'}=(0,1)$ なので $\dfrac{A'C'}{C'B'}=-3$、$\overrightarrow{A'D'}=\left(0,-\dfrac72\right)$、$\overrightarrow{D'B'}=\left(0,\dfrac32\right)$ なので $\dfrac{A'D'}{D'B'}=-\dfrac73$ である。2 つの比の比は
$$
\frac{A'C'}{C'B'}\mathbin{÷}\frac{A'D'}{D'B'}=(-3)\mathbin{÷}\left(-\frac73\right)=\frac97
$$
で、(1) と同じ値になる。
原点 O を通る 4 本の直線(灰色の破線)を、直線 ℓ:y = 2(青)、ℓ′:x = 2(赤)、ℓ″:y = −1(緑)で切る。どの直線で切っても、4 つの交点の複比は 9/7 になる
ex-pcr-start-invariant の値 $\dfrac97$ を、4 点の 複比 という。この記事では次の問いに答える。
| 高校の計算・定理 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 内分・外分の比 | 2 つの分け方の比の比(複比) | 射影直線の上の不変量 |
| 三角形の面積 $\dfrac12\lvert x_1y_2-x_2y_1\rvert$ | 符号付き面積 $D(\boldsymbol u,\boldsymbol v)$ | 2 次の行列式 |
| 1 次分数関数 $\dfrac{px+q}{rx+s}$ | 透視を座標で書いた式 | 射影変換、$2\times2$ 行列の群の作用 |
| 円周角の定理 | 円周上の4点の複比 | 2 次曲線の上の複比 |
| 平行な 2 直線 | 行き先がない点 | 無限遠点 |
直線の上の点に座標を入れる。直線 $\ell$ の上の点 $P_0$ と、$\ell$ の向きの $\vec 0$ でないベクトル $\boldsymbol u$ を 1 つずつ選ぶと、$\ell$ の上の点 $X$ は、ただ 1 つの実数 $x$ を使って(位置ベクトルで)$X=P_0+x\boldsymbol u$ と書ける(直線の方程式と点と直線の距離)。この $x$ を $X$ の 座標 という。ex-pcr-start の $\ell$ では $P_0=(0,2)$、$\boldsymbol u=(1,0)$ として $x$ 座標が、$\ell'$ では $P_0=(2,0)$、$\boldsymbol u=(0,1)$ として $y$ 座標が、この意味の座標になっている。
直線の上の相異なる 4 点 $A,B,C,D$ の座標を $a,b,c,d$ とする。
$$
(A,B;C,D):=\frac{(a-c)(b-d)}{(a-d)(b-c)}
$$
を 4 点の 複比 という。4 点が相異なるので分母は $0$ でない。
分子と分母の因数の並び方は、「$A$ と $C$、$B$ と $D$」の差が分子に、「$A$ と $D$、$B$ と $C$」の差が分母に来ると覚えるとよい。この並べ方は、円周角の定理(高校数学) で複素数の 4 点に定めた複比と同じである。
直線の上の相異なる 4 点 $A,B,C,D$ について、次が成り立つ。
方針:1 は、座標を取り替えると差がすべて同じ数倍になり、約分されることを示す。2 は、符号つきの比を座標の差で書いて、定義の式と比べる。
段 1(取り替えた座標の関係)。別の点 $P_1$ と、$\ell$ の向きの別のベクトル $\boldsymbol u_1$ を選ぶ。$\boldsymbol u_1$ は $\boldsymbol u$ と平行なので $\boldsymbol u_1=k\boldsymbol u$($k\ne0$)と書け、$P_1$ は $\ell$ の上にあるので $P_1=P_0+m\boldsymbol u$ と書ける。$X=P_1+x_1\boldsymbol u_1$ なら $X=P_0+(m+kx_1)\boldsymbol u$ なので、古い座標は $x=m+kx_1$ である。
段 2(1 の証明)。段 1 から、2 点の座標の差は $x-y=k(x_1-y_1)$ となる。定義の式の分子と分母は、どちらも差を 2 つ掛けたものなので、どちらも $k^2$ 倍になり、比は変わらない。
段 3(2 の証明)。$\overrightarrow{AC}=(c-a)\boldsymbol u$、$\overrightarrow{CB}=(b-c)\boldsymbol u$ なので $\dfrac{AC}{CB}=\dfrac{c-a}{b-c}$ である。同じく $\dfrac{AD}{DB}=\dfrac{d-a}{b-d}$ である。よって
$$
\frac{AC}{CB}\mathbin{÷}\frac{AD}{DB}=\frac{c-a}{b-c}\cdot\frac{b-d}{d-a}=\frac{(c-a)(b-d)}{(b-c)(d-a)}
$$
である。分子の $c-a$ を $-(a-c)$ に、分母の $d-a$ を $-(a-d)$ に書き換えると、符号 $-1$ が分子と分母に 1 つずつ出て約分され、$\dfrac{(a-c)(b-d)}{(a-d)(b-c)}=(A,B;C,D)$ となる。$\square$
点 $O$ と、$O$ を通らない 2 本の直線 $\ell$、$\ell'$ をとる。$\ell$ の上の点 $X$ に対し、直線 $OX$ が $\ell'$ と交わるとき、その交点 $X'$ を $X$ に対応させる。この対応 $X\mapsto X'$ を、$O$ を中心とする $\ell$ から $\ell'$ への 透視(中心射影)という。直線 $OX$ が $\ell'$ と平行なときは、$X$ の行き先はない。
ex-pcr-start は、原点を中心とする $\ell$:$y=2$ から $\ell'$:$x=2$ への透視で、$A,B,C,D$ が $A',B',C',D'$ に移る様子であった。証明の道具として、ベクトルの 符号付き面積 を使う。平面ベクトル $\boldsymbol u=(u_1,u_2)$、$\boldsymbol v=(v_1,v_2)$ に対して
$$
D(\boldsymbol u,\boldsymbol v):=u_1v_2-u_2v_1
$$
とおく。$\lvert D(\boldsymbol u,\boldsymbol v)\rvert$ は $\boldsymbol u$、$\boldsymbol v$ の張る平行四辺形の面積であり、三角形の面積の公式 $S=\dfrac12\lvert x_1y_2-x_2y_1\rvert$ の絶対値の中身である(三角形の面積の公式、1次変換と行列式:面積の拡大率)。$D(\boldsymbol u,\boldsymbol v)=0$ は $\boldsymbol u$ と $\boldsymbol v$ が平行(どちらかが $\vec0$ の場合を含む)であることと同値である。成分で展開すると、次の計算規則が確かめられる:$D(\boldsymbol v,\boldsymbol u)=-D(\boldsymbol u,\boldsymbol v)$、$D(\boldsymbol u,\boldsymbol u)=0$、$D(\alpha\boldsymbol u,\gamma\boldsymbol v)=\alpha\gamma D(\boldsymbol u,\boldsymbol v)$、$D(\boldsymbol u+\boldsymbol w,\boldsymbol v)=D(\boldsymbol u,\boldsymbol v)+D(\boldsymbol w,\boldsymbol v)$(右側の変数についても同じ)。
原点 $O$ を通らない直線 $\ell$ の上の点を $X=P_0+x\boldsymbol u$ と座標で表し、$k:=D(P_0,\boldsymbol u)$ とおく。このとき $k\ne0$ であり、$\ell$ の上の 2 点 $X=P_0+x\boldsymbol u$、$Y=P_0+y\boldsymbol u$ について
$$
D(X,Y)=(y-x)\,k
$$
が成り立つ($X$、$Y$ は原点からの位置ベクトルとみる)。
方針:$D$ の計算規則で $D(X,Y)$ を 4 つの項に分け、$0$ になる項を消す。$k\ne0$ は背理法で示す。
段 1($k\ne0$)。$k=0$ とすると、$\boldsymbol u\ne\vec0$ なので $P_0$ は $\boldsymbol u$ と平行で、$P_0=\lambda\boldsymbol u$ と書ける。すると $\ell$ の上の座標 $-\lambda$ の点は $P_0-\lambda\boldsymbol u=\vec0$、つまり原点になり、$\ell$ が原点を通らないことに反する。よって $k\ne0$ である。
段 2(展開)。計算規則により
$$
D(P_0+x\boldsymbol u,\ P_0+y\boldsymbol u)=D(P_0,P_0)+y\,D(P_0,\boldsymbol u)+x\,D(\boldsymbol u,P_0)+xy\,D(\boldsymbol u,\boldsymbol u)
$$
である。
段 3(整理)。$D(P_0,P_0)=0$、$D(\boldsymbol u,\boldsymbol u)=0$、$D(\boldsymbol u,P_0)=-D(P_0,\boldsymbol u)=-k$ なので、右辺は $yk-xk=(y-x)k$ である。$\square$
ex-pcr-start の $\ell$:$y=2$ で $P_0=(0,2)$、$\boldsymbol u=(1,0)$ とすると $k=D(P_0,\boldsymbol u)=0\cdot0-2\cdot1=-2$ である。$A=(1,2)$、$C=(4,2)$ では $D(A,C)=1\cdot2-2\cdot4=-6$ で、補題の右辺 $(4-1)\cdot(-2)=-6$ と一致する。
点 $O$ を通る相異なる 4 本の直線 $a,b,c,d$ と、$O$ を通らない 2 本の直線 $\ell$、$\ell'$ をとる。$\ell$ が 4 本の直線と点 $A,B,C,D$ で交わり、$\ell'$ が点 $A',B',C',D'$ で交わるとき
$$
(A,B;C,D)=(A',B';C',D')
$$
である。
$A,B,C,D$ は相異なる。実際、たとえば $A=B$ なら、この点は直線 $a$ と $b$ の共有点なので $O$ に等しくなり、$\ell$ が $O$ を通らないことに反する。$A',B',C',D'$ も同じである。
方針:$O$ を原点にとる。lem-pcr-det で座標の差を符号付き面積に置き換えると、複比は「$O$ から見た 4 つの位置ベクトル」だけで書ける。$A'$ は $A$ の実数倍なので、その倍率は約分されて消える。
段 1(複比を符号付き面積で書く)。$\ell$ の上の座標を $X=P_0+x\boldsymbol u$ で定め、$k=D(P_0,\boldsymbol u)$ とする。lem-pcr-det により $c-a=\dfrac{D(A,C)}k$、$d-b=\dfrac{D(B,D)}k$、$d-a=\dfrac{D(A,D)}k$、$c-b=\dfrac{D(B,C)}k$ である。定義の式の分子の 2 つの差をどちらも逆向きに書くと、符号は $(-1)^2=1$ で変わらない。分母の 2 つの差も同じである。よって
$$
(A,B;C,D)=\frac{(c-a)(d-b)}{(d-a)(c-b)}=\frac{D(A,C)\,D(B,D)}{D(A,D)\,D(B,C)}
$$
である(分子と分母の $k^2$ が約分された)。$\ell'$ についても同じく
$$
(A',B';C',D')=\frac{D(A',C')\,D(B',D')}{D(A',D')\,D(B',C')}
$$
である。
段 2($A'$ は $A$ の実数倍)。$A'$ は $O$ と $A$ を通る直線 $a$ の上にあり、$O$ と異なる($\ell'$ は $O$ を通らない)。原点を通る直線の上の点は位置ベクトルの実数倍なので、$A'=\alpha A$($\alpha\ne0$)と書ける(位置ベクトルと内分点)。同じく $B'=\beta B$、$C'=\gamma C$、$D'=\delta D$($\beta,\gamma,\delta\ne0$)である。
段 3(倍率が消える)。計算規則 $D(\alpha\boldsymbol u,\gamma\boldsymbol v)=\alpha\gamma D(\boldsymbol u,\boldsymbol v)$ により
$$
\frac{D(A',C')\,D(B',D')}{D(A',D')\,D(B',C')}=\frac{\alpha\gamma\,\beta\delta\,D(A,C)\,D(B,D)}{\alpha\delta\,\beta\gamma\,D(A,D)\,D(B,C)}=\frac{D(A,C)\,D(B,D)}{D(A,D)\,D(B,C)}
$$
である。分母が $0$ でないのは、たとえば $A$ と $D$ が異なる直線 $a$、$d$ の上にあって $O$ と異なるので、$A$ と $D$ が平行でないからである。段 1 と合わせて $(A,B;C,D)=(A',B';C',D')$ を得る。$\square$
段 3 で、倍率 $\alpha,\beta,\gamma,\delta$ の符号は何も使っていない。したがって、$\ell'$ が $O$ の反対側で直線を切る場合にも定理は成り立つ。
ex-pcr-start の 4 本の直線を、直線 $\ell''$:$y=-1$ で切る(図 1 の緑)。交点はどれも $O$ から見て $A,B,C,D$ と反対側にあるが、複比はやはり $\dfrac97$ である。
ex-pcr-start の 4 本の直線を、直線 $\ell''$:$y=-1$ で切る(図 1 の緑)。$y=-1$ を代入すると、交点は $A''=\left(-\dfrac12,-1\right)$、$B''=(-1,-1)$、$C''=(-2,-1)$、$D''=(-4,-1)$ で、どれも $O$ から見て $A,B,C,D$ と反対側にある($A''=-\dfrac12A$ など、倍率が負)。$x$ 座標で複比を計算すると$$(A'',B'';C'',D'')=\frac{\left(-\frac12+2\right)(-1+4)}{\left(-\frac12+4\right)(-1+2)}=\frac{\frac32\cdot3}{\frac72}=\frac97$$で、やはり同じ値である。
prf-pcr-area の段 1 の右辺は、$\ell$ を使わずに、$O$ を通る 4 本の直線だけで決まる。実際、4 本の直線の向きのベクトル $\boldsymbol a,\boldsymbol b,\boldsymbol c,\boldsymbol d$ を 1 つずつ選んで
$$
[\boldsymbol a,\boldsymbol b;\boldsymbol c,\boldsymbol d]:=\frac{D(\boldsymbol a,\boldsymbol c)\,D(\boldsymbol b,\boldsymbol d)}{D(\boldsymbol a,\boldsymbol d)\,D(\boldsymbol b,\boldsymbol c)}
$$
とおくと、段 3 と同じ計算で、ベクトルを $0$ でない実数倍に取り替えても値は変わらない。これを 4 本の直線の複比 という。thm-pcr-perspective は、「4 本の直線の複比は、どの直線で切って測っても同じ」と言い換えられる。
$\boldsymbol u$ から $\boldsymbol v$ へ反時計回りに測った角を $\varphi$ とすると $D(\boldsymbol u,\boldsymbol v)=\lvert\boldsymbol u\rvert\lvert\boldsymbol v\rvert\sin\varphi$ である(1次変換と行列式:面積の拡大率 の命題「符号付き面積の意味」)。長さの積は分子と分母で約分されるので、$\boldsymbol a$ から $\boldsymbol c$ への角を $\varphi_{ac}$ などと書くと$$[\boldsymbol a,\boldsymbol b;\boldsymbol c,\boldsymbol d]=\frac{\sin\varphi_{ac}\,\sin\varphi_{bd}}{\sin\varphi_{ad}\,\sin\varphi_{bc}}$$である。三角形の面積の公式 $\dfrac12OA\cdot OC\sin\angle AOC$ を使って、三角形 $OAC$ と $OBD$ の面積の積を、三角形 $OAD$ と $OBC$ の面積の積で割ると、長さ $OA,OB,OC,OD$ が約分されて、正弦だけのこの形(向きを考えない形)が現れる。
ex-pcr-start の 4 本の直線の向きで、4 本の直線の複比を計算すると $\dfrac97$ になり、ex-pcr-cross-ratio-calc の値と一致する。
ex-pcr-start の 4 本の直線の向きを $\boldsymbol a=(1,2)$、$\boldsymbol b=(1,1)$、$\boldsymbol c=(2,1)$、$\boldsymbol d=(4,1)$ とする。$D(\boldsymbol a,\boldsymbol c)=1-4=-3$、$D(\boldsymbol b,\boldsymbol d)=1-4=-3$、$D(\boldsymbol a,\boldsymbol d)=1-8=-7$、$D(\boldsymbol b,\boldsymbol c)=1-2=-1$ なので$$[\boldsymbol a,\boldsymbol b;\boldsymbol c,\boldsymbol d]=\frac{(-3)(-3)}{(-7)(-1)}=\frac97$$で、ex-pcr-cross-ratio-calc の値と一致する。$\boldsymbol a$ を $-\boldsymbol a=(-1,-2)$ に取り替えると、$D(\boldsymbol a,\boldsymbol c)$ と $D(\boldsymbol a,\boldsymbol d)$ がともに符号を変えるので、値は変わらない。
透視で $\ell$ の点の座標 $t$ が、$\ell'$ の点の座標 $t'$ に移るとする。$t'$ を $t$ の式で表してみる。
ex-pcr-start の、原点を中心とする $\ell$:$y=2$ から $\ell'$:$x=2$ への透視を考える。$\ell$ の点 $(t,2)$($t\ne0$)と原点を結ぶ直線は $y=\dfrac2tx$ で、$x=2$ を代入すると $y=\dfrac4t$ である。$\ell'$ の座標を $y$ 座標にとると
$$
t'=\frac4t
$$
である。$t=1,2,4,8$ を代入すると $t'=4,2,1,\dfrac12$ で、ex-pcr-start の $A',B',C',D'$ に一致する。$t=0$ の点 $(0,2)$ と原点を結ぶ直線は $y$ 軸で、$\ell'$ と平行なので行き先がない。
$t'=\dfrac4t$ を $\dfrac{pt+q}{rt+s}$ の形に書くと $p=0$、$q=4$、$r=1$、$s=0$ で、$ps-qr=0\cdot0-4\cdot1=-4\ne0$ である。
$t'=\dfrac4t$ は、分数型の漸化式と1次分数変換 で扱った 1 次分数関数 $\dfrac{pt+q}{rt+s}$($ps-qr\ne0$)の形をしている(ex-pcr-formula-first の最後の行)。これは偶然ではない。
原点 $O$ を通らない 2 本の直線 $\ell$、$\ell'$ の上に、それぞれ座標 $X=P_0+t\boldsymbol u$、$Y=Q_0+t'\boldsymbol v$ を入れる。
$$
p:=D(Q_0,\boldsymbol u),\quad q:=D(Q_0,P_0),\quad r:=D(\boldsymbol u,\boldsymbol v),\quad s:=D(P_0,\boldsymbol v)
$$
とおく。このとき次が成り立つ。
方針:「$Y$ が直線 $OX$ の上にある」ことを「$Y$ と $X$ が平行」、つまり $D(Y,X)=0$ と書き、$t'$ について解く。3 は、透視が異なる点を異なる点に移すことから背理法で示す。
段 1(1)。$D(X,\boldsymbol v)=D(P_0+t\boldsymbol u,\boldsymbol v)=D(P_0,\boldsymbol v)+t\,D(\boldsymbol u,\boldsymbol v)=rt+s$ である。これが $0$ であることは、$X$ と $\boldsymbol v$ が平行、つまり直線 $OX$ が $\ell'$ と平行であることと同じである。$r=s=0$ とすると、$\boldsymbol u$ と $\boldsymbol v$ が平行、$P_0$ と $\boldsymbol v$ が平行なので、$P_0$ と $\boldsymbol u$ が平行になり、lem-pcr-det の $D(P_0,\boldsymbol u)\ne0$ に反する。よって $rt+s$ は $t$ の $0$ でない 1 次以下の式で、$0$ になる $t$ は高々 1 つである。
段 2(2)。$X\ne O$ なので、$Y$ が直線 $OX$ の上にあることは $D(Y,X)=0$ と同値である。計算規則で展開すると
$$
D(Q_0+t'\boldsymbol v,\ P_0+t\boldsymbol u)=D(Q_0,P_0)+t\,D(Q_0,\boldsymbol u)+t'D(\boldsymbol v,P_0)+tt'D(\boldsymbol v,\boldsymbol u)=q+pt-t'(s+rt)
$$
である($D(\boldsymbol v,P_0)=-s$、$D(\boldsymbol v,\boldsymbol u)=-r$)。よって $D(Y,X)=0$ は $t'(rt+s)=pt+q$ と同値で、$rt+s\ne0$ なら $t'=\dfrac{pt+q}{rt+s}$ である。
段 3(3)。$ps-qr=0$ と仮定する。後の prf-pcr-fractional-thm の段 1 で示す差の公式(その証明はこの命題を使わない)により、$rt_1+s\ne0$、$rt_2+s\ne0$ となる $t_1\ne t_2$ について、像の座標は等しくなる。段 1 からそのような $t_1,t_2$ はとれる。ところが、$\ell$ の異なる 2 点 $X_1,X_2$ を通る直線 $OX_1$、$OX_2$ は異なり($O$ は $\ell$ の上にないので、$\ell$ と 2 点で交わる直線は $\ell$ 自身だけである)、像は異なる 2 本の直線の上の $O$ でない点なので異なる。これは矛盾であり、$ps-qr\ne0$ である。$\square$
(1) ex-pcr-formula-first では $P_0=(0,2)$、$\boldsymbol u=(1,0)$、$Q_0=(2,0)$、$\boldsymbol v=(0,1)$ で、$p=D(Q_0,\boldsymbol u)=2\cdot0-0\cdot1=0$、$q=D(Q_0,P_0)=2\cdot2-0\cdot0=4$、$r=D(\boldsymbol u,\boldsymbol v)=1\cdot1-0\cdot0=1$、$s=D(P_0,\boldsymbol v)=0\cdot1-2\cdot0=0$ である。$t'=\dfrac4t$ が再び得られる。
1 次分数関数そのものが複比を変えないことを示す。
$f(x)=\dfrac{px+q}{rx+s}$($ps-qr\ne0$)とし、相異なる 4 つの実数 $a,b,c,d$ で $f$ が定まる(分母が $0$ でない)とする。このとき $f(a),f(b),f(c),f(d)$ は相異なり
$$
\frac{(f(a)-f(c))(f(b)-f(d))}{(f(a)-f(d))(f(b)-f(c))}=\frac{(a-c)(b-d)}{(a-d)(b-c)}
$$
である。
方針:2 つの値の差 $f(x)-f(y)$ が $(x-y)$ に「$x$ だけの式」と「$y$ だけの式」を掛けた形になることを示し、複比に代入して約分する。
段 1(差の公式)。$rx+s\ne0$、$ry+s\ne0$ のとき、通分して分子を展開すると
$$
f(x)-f(y)=\frac{(px+q)(ry+s)-(py+q)(rx+s)}{(rx+s)(ry+s)}=\frac{(ps-qr)(x-y)}{(rx+s)(ry+s)}
$$
である。実際、分子は $prxy+psx+qry+qs-(prxy+psy+qrx+qs)=ps(x-y)-qr(x-y)$ である。同じ公式は 分数型の漸化式と1次分数変換 の補題「1 次分数関数の値の差」にもある。$ps-qr\ne0$ なので、$x\ne y$ なら $f(x)\ne f(y)$ であり、4 つの値は相異なる。
段 2(代入)。$m_x:=rx+s$ と書くと、段 1 により $f(a)-f(c)=\dfrac{(ps-qr)(a-c)}{m_am_c}$ などである。複比の分子は $\dfrac{(ps-qr)^2(a-c)(b-d)}{m_am_cm_bm_d}$、分母は $\dfrac{(ps-qr)^2(a-d)(b-c)}{m_am_dm_bm_c}$ である。
段 3(約分)。分子と分母で $(ps-qr)^2$ と $m_am_bm_cm_d$ が共通なので、比は $\dfrac{(a-c)(b-d)}{(a-d)(b-c)}$ である。$\square$
(2) $g(x)=\dfrac{x+2}{x+1}$($ps-qr=1-2=-1$)で、$0,1,2,3$ の像は $2,\dfrac32,\dfrac43,\dfrac54$ である。もとの複比は $\dfrac{(0-2)(1-3)}{(0-3)(1-2)}=\dfrac43$、像の複比は$$\frac{\left(2-\frac43\right)\left(\frac32-\frac54\right)}{\left(2-\frac54\right)\left(\frac32-\frac43\right)}=\frac{\frac23\cdot\frac14}{\frac34\cdot\frac16}=\frac{\frac16}{\frac18}=\frac43$$で、等しい。
prop-pcr-fractional と thm-pcr-fractional を合わせると、thm-pcr-perspective のもう 1 つの証明が得られる。
方針:透視を座標の式で書くと 1 次分数関数になるので、thm-pcr-fractional が使える。
段 1(式に直す)。$O$ を原点とし、$\ell$、$\ell'$ に座標を入れる。prop-pcr-fractional により、透視は座標 $t$ を $t'=f(t)=\dfrac{pt+q}{rt+s}$($ps-qr\ne0$)に移す。
段 2(定まること)。$A,B,C,D$ の座標を $a,b,c,d$ とする。$A$ は透視で $A'$ に移る(直線 $OA$ は $\ell'$ と $A'$ で交わる)ので、prop-pcr-fractional の 1 により $ra+s\ne0$ で、$A'$ の座標は $f(a)$ である。$B,C,D$ も同じである。
段 3(結論)。thm-pcr-fractional により $(A',B';C',D')=\dfrac{(f(a)-f(c))(f(b)-f(d))}{(f(a)-f(d))(f(b)-f(c))}=\dfrac{(a-c)(b-d)}{(a-d)(b-c)}=(A,B;C,D)$ である。$\square$
円周上の相異なる 4 点 $A,B,C,D$ を、それらと異なる円周上の点 $P$ から見た 4 本の直線 $PA,PB,PC,PD$ の複比(rem-pcr-lines)は、$P$ によらず、4 点を複素数とみたときの複比に等しい。これは円周角の定理の言い換えで、楕円でも成り立つことを含めて 円周上の4点の複比 で扱う。
ex-pcr-formula-first の $t'=\dfrac4t$ では、$t=0$ の点に行き先がなかった。逆に、$\ell'$ の座標 $t'=0$ の点 $(2,0)$ は、原点と結ぶ直線が $x$ 軸で $\ell$ と平行なので、どの点からも移ってこない。この欠けを埋めるため、直線に「無限の遠くの点」$\infty$ を 1 つ付け加える。
鍵は、$\ell$ の点 $X$ を、原点 $O$ と $X$ を結ぶ直線と同一視することである。$O$ を通る直線は $\vec0$ でないベクトル $\boldsymbol x$ で表され、$\boldsymbol x$ と $\lambda\boldsymbol x$($\lambda\ne0$)は同じ直線を表す。$O$ を通る直線のうち $\ell$ と平行なもの 1 本だけが $\ell$ と交わらない。この 1 本を $\ell$ の「無限遠点」とみなせば、$\ell$ の点と $O$ を通る直線がちょうど 1 対 1 に対応する。
$\vec0$ でない数の組 $(u,v)$ を、$0$ でない数倍 $(\lambda u,\lambda v)$ と同じものとみなしたものの全体を 実射影直線 という。$v\ne0$ の組 $(u,v)$ を実数 $\dfrac uv$ と、$v=0$ の組 $(u,0)$ を記号 $\infty$ と同一視する。実射影直線は、実数全体に $\infty$ を 1 つ加えたもの $\mathbb{R}\cup\{\infty\}$ である。
行列式 $ps-qr$ が $0$ でない行列 $M=\begin{pmatrix}p&q\\ r&s\end{pmatrix}$ に対し、組 $(u,v)$ を $(pu+qv,\ ru+sv)$ に移す対応を、実射影直線の 1 次分数変換(射影変換)$f_M$ という。
$ps-qr\ne0$ なので、$(u,v)\ne(0,0)$ なら像も $(0,0)$ でない(像が $(0,0)$ なら、連立 1 次方程式 $pu+qv=0$、$ru+sv=0$ から $u=v=0$ となる)。$(x,1)$ の像は $(px+q,\ rx+s)$ なので、$rx+s\ne0$ なら $f_M(x)=\dfrac{px+q}{rx+s}$ で、1 次分数関数そのものである。$rx+s=0$ となる $x$ は $f_M(x)=\infty$ に移り、$\infty=(1,0)$ は $(p,r)$、つまり $r\ne0$ なら $\dfrac pr$ に、$r=0$ なら $\infty$ に移る。
(2) $f(t)=\dfrac{6t}{t+2}$($M=\begin{pmatrix}6&0\\ 1&2\end{pmatrix}$)では、$-2\mapsto\infty$、$\infty\mapsto6$ である。$\ell'''$:$x+y=6$ の座標 $6$ の点は $(6,0)$ で、原点と結ぶ直線は $x$ 軸、つまり $\ell$:$y=2$ と平行な直線である。
複比も、組 $\hat a=(a_1,a_2)$ などを使って
$$
(A,B;C,D)=\frac{D(\hat a,\hat c)\,D(\hat b,\hat d)}{D(\hat a,\hat d)\,D(\hat b,\hat c)}
$$
と定める(各組の数倍は約分される)。2 つの組 $\hat x$、$\hat y$ が実射影直線の同じ点を表すことは、$\hat y$ が $\hat x$ の数倍であること、つまり $D(\hat x,\hat y)=0$ と同値である。よって 4 点が相異なれば分母は $0$ でない。実数 $a$ には $\hat a=(a,1)$ をとると $D(\hat a,\hat c)=a-c$ なので、def-pcr-cross-ratio と一致する。$\infty=(1,0)$ を含むときは、たとえば $D((a,1),(1,0))=-1$ なので $(a,b;c,\infty)=\dfrac{(a-c)(-1)}{(-1)(b-c)}=\dfrac{a-c}{b-c}$ である。これは prf-pcr-area の段 1 の式と同じ形であり、射影直線の上の複比は、原点を通る 4 本の直線の複比そのものである。
この形では、thm-pcr-fractional は 1 行で示せる。
1次変換と行列式:面積の拡大率 の定理「行列式は符号付き面積の拡大率」により、$D(M\hat x,M\hat y)=(ps-qr)\,D(\hat x,\hat y)$ である。複比の分子と分母はどちらも $(ps-qr)^2$ 倍になり、比は変わらない。$\infty$ を含む 4 点についても同じである。
実射影直線の相異なる 3 点 $a,b,c$ と、相異なる 3 点 $a',b',c'$ を与える。$f(a)=a'$、$f(b)=b'$、$f(c)=c'$ となる 1 次分数変換 $f$ がただ 1 つある。さらに、この $f$ は、どの点 $x$ についても
$$
(a',b';c',f(x))=(a,b;c,x)
$$
を満たす($x$ が $a,b,c$ のどれかのときは、両辺に同じ点が 2 回現れるので、この式は考えない)。
方針:まず $a,b,c$ を $\infty,0,1$ に移す変換 $g$ を、複比 $g(x)=(a,b;c,x)$ として作る。$a',b',c'$ についても同じ $g'$ を作り、$f=g'^{-1}\circ g$ とおく。3 つの変換の関係は次の図式のとおりである。
$$
\xymatrix{
\mathbb{R}\cup\{\infty\} \ar[rr]^{f} \ar[dr]_{g} & & \mathbb{R}\cup\{\infty\} \ar[dl]^{g'} \\
& \mathbb{R}\cup\{\infty\} &
}
$$
図式が可換とは $g'\circ f=g$ ということである。一意性は、$\infty,0,1$ を動かさない変換が恒等変換しかないことから示す。点を組 $(u,v)$ で表して計算するので、$a,b,c$、$a',b',c'$ に $\infty$ が含まれる場合も同じ証明で扱える。
段 1($g$ を作る)。$a,b,c$ を表す組を $\hat a=(a_1,a_2)$、$\hat b=(b_1,b_2)$、$\hat c$ とする。組 $\hat x=(u,v)$ に対して、複比 $(a,b;c,x)$ の分子と分母を並べた組$$g(\hat x):=\bigl(D(\hat a,\hat c)\,D(\hat b,\hat x),\ D(\hat a,\hat x)\,D(\hat b,\hat c)\bigr)$$を考える。$D(\hat b,\hat x)=b_1v-b_2u$、$D(\hat a,\hat x)=a_1v-a_2u$ なので、$g$ は行列$$M_g=\begin{pmatrix}-b_2\,D(\hat a,\hat c)&b_1\,D(\hat a,\hat c)\\ -a_2\,D(\hat b,\hat c)&a_1\,D(\hat b,\hat c)\end{pmatrix}$$で組を移す対応である。その行列式は$$-a_1b_2\,D(\hat a,\hat c)\,D(\hat b,\hat c)+a_2b_1\,D(\hat a,\hat c)\,D(\hat b,\hat c)=D(\hat a,\hat c)\,D(\hat b,\hat c)\,D(\hat b,\hat a)$$である($D(\hat b,\hat a)=b_1a_2-b_2a_1$)。$a,b,c$ が相異なるので、3 つの因数はどれも $0$ でない(ex-pcr-infinity の後の、組の形の複比を定める段落)。よって $g$ は 1 次分数変換である。組 $\hat a,\hat b,\hat c$ をそれぞれ数倍に取り替えても $M_g$ 全体が数倍になるだけなので、$g$ は点 $a,b,c$ だけで決まる。
$\hat x$ に $\hat a,\hat b,\hat c$ を代入すると、$D(\hat x,\hat x)=0$ により$$g(\hat a)=\bigl(D(\hat a,\hat c)\,D(\hat b,\hat a),\ 0\bigr),\quad g(\hat b)=\bigl(0,\ D(\hat a,\hat b)\,D(\hat b,\hat c)\bigr),\quad g(\hat c)=\bigl(D(\hat a,\hat c)\,D(\hat b,\hat c),\ D(\hat a,\hat c)\,D(\hat b,\hat c)\bigr)$$である。$0$ でない成分に注意すると、$g(a)=\infty$、$g(b)=0$、$g(c)=1$ である。$x$ が $a,b,c$ と異なれば、$g(x)$ は複比 $(a,b;c,x)$ そのものである。
$a,b,c,x$ が実数なら、$\hat a=(a,1)$ などをとって $D(\hat a,\hat x)=a-x$ などとなり、$g(x)=\dfrac{(a-c)(b-x)}{(a-x)(b-c)}=\dfrac{(x-b)(c-a)}{(x-a)(c-b)}$ である。$\infty$ を含む例として、$a,b,c$ が $\infty,0,1$ そのもののときは、$\hat a=(1,0)$、$\hat b=(0,1)$、$\hat c=(1,1)$ から $D(\hat a,\hat c)=1$、$D(\hat b,\hat c)=-1$、$D(\hat b,\hat x)=-u$、$D(\hat a,\hat x)=v$ で、$g(\hat x)=(-u,-v)$、つまり $g$ は恒等変換である。
段 2(存在)。$a',b',c'$ についても同じように $g'$ を作る。行列の逆行列を使うと $g'$ の逆の対応 $g'^{-1}$ も 1 次分数変換であり、1 次分数変換の合成は行列の積に対応する(分数型の漸化式と1次分数変換 の命題「合成は行列の積」。組 $(u,v)$ に行列を順に掛けると考えれば、$\infty$ を含めて成り立つ)。$f:=g'^{-1}\circ g$ は 1 次分数変換で、$f(a)=g'^{-1}(\infty)=a'$、$f(b)=g'^{-1}(0)=b'$、$f(c)=g'^{-1}(1)=c'$ である。
段 3($\infty,0,1$ を動かさない変換)。$h$ を 1 次分数変換で $h(\infty)=\infty$、$h(0)=0$、$h(1)=1$ とし、行列を $\begin{pmatrix}p&q\\ r&s\end{pmatrix}$ とする。$\infty=(1,0)$ の像 $(p,r)$ が $\infty$ なので $r=0$ である。$0=(0,1)$ の像 $(q,s)$ が $0$ なので $q=0$ である。$1=(1,1)$ の像 $(p+q,\ r+s)=(p,s)$ が $1$ なので $p=s$ である。よって行列は $p$ 倍の単位行列で、$h$ はすべての組を $p$ 倍するだけ、つまり恒等変換である。
段 4(一意性)。$f_1,f_2$ がどちらも $a,b,c$ を $a',b',c'$ に移すとする。$h:=g'\circ f_1\circ f_2^{-1}\circ g'^{-1}$ は 1 次分数変換で、$\infty$ の行き先を順に追うと $\infty\overset{g'^{-1}}{\mapsto}a'\overset{f_2^{-1}}{\mapsto}a\overset{f_1}{\mapsto}a'\overset{g'}{\mapsto}\infty$ となる。同じく $0\mapsto0$、$1\mapsto1$ である。段 3 により $h$ は恒等変換で、$f_1\circ f_2^{-1}$ も恒等変換、つまり $f_1=f_2$ である。
段 5(複比の式)。$f$ は 1 次分数変換なので、thm-pcr-fractional($\infty$ を含む形)により、4 点 $a,b,c,x$ の複比と、像 $a',b',c',f(x)$ の複比は等しい。$\square$
定理の式を $f(x)$ について解けば、$f$ が具体的に求まる。また、$y\mapsto(a',b';c',y)$ は prf-pcr-three-points の方針で $a',b',c'$ から作った変換 $g'$ そのもので、逆の変換 $g'^{-1}$ をもつ。よって異なる $y$ は異なる値に移り、$y$ は複比の値からただ 1 つに決まる($\infty$ を含めて同じである)。したがって、相異なる 4 点の組 $(a,b,c,d)$ を 1 次分数変換で相異なる 4 点の組 $(a',b',c',d')$ に移せるのは、2 つの組の複比が等しいときであり、そのときに限る。複比は、射影変換で 4 点の組を移したときに残る、ただ 1 つの情報である。
$1,2,4$ を $4,2,1$ に移す 1 次分数変換を、thm-pcr-three-points の式 $(4,2;1,y)=(1,2;4,x)$ から求めると $y=\dfrac4x$ になる。これは ex-pcr-formula-first の透視の式に一致し、$8$ は $\dfrac12$ に移る。
$1,2,4$ を $4,2,1$ に移す 1 次分数変換を求める。thm-pcr-three-points の式 $(4,2;1,y)=(1,2;4,x)$ の両辺は$$(4,2;1,y)=\frac{(4-1)(2-y)}{(4-y)(2-1)}=\frac{3(2-y)}{4-y},\qquad (1,2;4,x)=\frac{(1-4)(2-x)}{(1-x)(2-4)}=\frac{3(2-x)}{2(1-x)}$$である。等しいとおいて分母を払うと $2(2-y)(1-x)=(2-x)(4-y)$、展開すると $4-4x-2y+2xy=8-4x-2y+xy$ で、$xy=4$、つまり $y=\dfrac4x$ である。これは ex-pcr-formula-first の透視の式に一致し、$8$ は $\dfrac12$ に移る。$A,B,C$ の行き先を決めると、$D$ の行き先は複比で決まってしまう。
ここから先は大学で学ぶ内容の紹介である。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 4 本の直線が 1 点 $O$ を通る | 2 本の直線で切った 4 点の複比が等しい | ex-pcr-not-concurrent |
| 変換が 1 次分数関数である | 複比が保たれる | ex-pcr-square |
| $ps-qr\ne0$ | 異なる点が異なる点に移る(複比が定まる) | ex-pcr-degenerate |
ex-pcr-start の $D'=\left(2,\dfrac12\right)$ を $D_1'=\left(2,\dfrac34\right)$ に替える。$D=(8,2)$ と $D_1'$ を結ぶ直線は傾き $\dfrac{2-\frac34}{8-2}=\dfrac5{24}$ で、$x=0$ のとき $y=\dfrac34-2\cdot\dfrac5{24}=\dfrac13\ne0$ なので原点を通らない。4 本の直線 $AA'$、$BB'$、$CC'$、$DD_1'$ は 1 点で交わらない。$\ell'$ の上の複比は、$y$ 座標 $4,2,1,\dfrac34$ から
$$
(A',B';C',D_1')=\frac{(4-1)\left(2-\frac34\right)}{\left(4-\frac34\right)(2-1)}=\frac{3\cdot\frac54}{\frac{13}4}=\frac{15}{13}
$$
で、$\ell$ の上の複比 $\dfrac97$ と異なる。
$f(x)=x^2$ で $1,2,3,4$ を $1,4,9,16$ に移す。もとの複比は $\dfrac{(1-3)(2-4)}{(1-4)(2-3)}=\dfrac43$、像の複比は $\dfrac{(1-9)(4-16)}{(1-16)(4-9)}=\dfrac{96}{75}=\dfrac{32}{25}$ で、異なる。$x^2$ は 1 次分数関数でなく、差 $f(x)-f(y)=(x+y)(x-y)$ の「$x$ だけの式と $y$ だけの式の積」への分かれ方(prf-pcr-fractional-thm の段 1)が成り立たない。
$f(x)=\dfrac{2x+4}{x+2}$ は $ps-qr=2\cdot2-4\cdot1=0$ である。$x\ne-2$ なら $f(x)=\dfrac{2(x+2)}{x+2}=2$ で、どの点も同じ点 $2$ に移る(分数型の漸化式と1次分数変換 の例)。4 点の像はすべて一致し、複比は定まらない。
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