Lech独立性

同義語:Lech independence

概要

Lech独立性(Lech independence)とは、可換環の有限列 $x_1,\ldots,x_r$ について、一次関係式 $\sum_ia_ix_i=0$ の係数 $a_i$ がすべて $I=(x_1,\ldots,x_r)$ に属するという条件である。これは自然な全射 $(A/I)^r\to I/I^2$ が同型であること、つまり列の剰余が余法加群の基底になることと同値で、可逆な生成元の取り替えや局所化で保たれる。任意の可換環上で正則列はLech独立であり、さらに随伴次数環が $A/I$ 上の多項式環になる全次数の強い独立性ももつ。逆は一般に成り立たず、$k[t]/(t^2)$ の $\bar t$ はLech独立だが正則列ではない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: イデアル, 加群, 正則列, 多項式環, 商環

Lech独立性は、環の元の列について、一次の関係式の係数がその列の生成するイデアルに入るという条件である。体上の線型独立と違い、係数が零であることは要求しない。正則列はこの条件を満たすが、逆は一般の環では成立しない。一次だけを見る条件と、全次数の関係を見る条件を区別すると、正則列のどの情報が残り、どの情報が失われるかが分かる。
この記事では可換環を扱い、環準同型は単位元を保つ。環のNoether性や局所性は、明記した命題でだけ仮定する。独立性の定義と正則列からの含意は任意の環で成立する。正則局所環での逆方向は、有限射影次元に関する別の定理を要するので、本記事では証明せず、該当する文献を挙げる。

一次の関係を見る

有限列 $x_1,\ldots,x_r\in A$ に対して $I=(x_1,\ldots,x_r)$ とする。係数を $A/I$ へ移すと、$I$ 自身は零作用される加群ではないため、そのまま線型代数を行えない。一方 $I/I^2$ は $A/I$ 加群になる。$i\in I$ と $z\in I$ の積が $I^2$ に入り、商では零だからである。

Lech独立な列

列 $x_1,\ldots,x_r$ が Lech独立であるとは、任意の $a_1,\ldots,a_r\in A$ について
$$\sum_{i=1}^r a_ix_i=0\quad\Longrightarrow\quad a_i\in I\quad(1\le i\le r)$$
となることである。これは一次の独立性である。空列では関係も係数もないため条件は自明である。

$I=A$ の場合にもこの条件は形式上成り立つが、右側が全係数を許すので情報を与えない。非自明な比較では $I\ne A$ を明記する。例えば一元列 $(1)$ は独立だが、最終商を非零とする規約の正則列ではない。零環でも一次の条件は自明であり、正則列の非零商条件とは別である。

余法加群による判定

任意の可換環 $A$ と有限列 $x_1,\ldots,x_r$ について、Lech独立性は、自然な全射
$$\phi:(A/I)^r\longrightarrow I/I^2,\qquad(\bar a_i)\longmapsto\sum_i a_ix_i\bmod I^2$$
が同型であることと同値である。従って重要なのは余法加群が単に自由であることではなく、指定した元の剰余がその基底であることである。

係数を $I$ の元だけ変えると評価は $I^2$ だけ変わるので、写像は定義できる。$x_i$ は $I$ を生成するため全射である。
列が独立とし、$\sum_i a_ix_i\in I^2$ を仮定する。$I^2$ の任意の元は $\sum_i b_ix_i$、$b_i\in I$ と書ける。実際、二つの $I$ の元の積を展開すればよい。従って $\sum_i(a_i-b_i)x_i=0$ であり、独立性から $a_i-b_i\in I$、ゆえに $a_i\in I$ となる。これは $\phi$ の核が零であることを示す。
逆に $\phi$ が単射なら、零関係 $\sum_i a_ix_i=0$ を $I/I^2$ へ写すと $(\bar a_i)$ は核に属し、各 $\bar a_i=0$ となる。$\square$

この証明では有限生成加群の局所化やNakayamaの補題を使っていない。指定列が有限なので行列や有限和で記述したが、環自身がNoetherである必要はない。自由余法加群を持つイデアルを別の冗長な列で生成すれば、その列は独立でなくなることがある。例えば $A=k[t]$、$I=(t)$ を列 $(t,t)$ で生成すると、係数 $(1,-1)$ の零関係があり、$1\notin I$ である。標数2でも係数 $(1,1)$ が同じ反例となる。

生成列の変更と局所化

可逆な生成元変更

$U\in\operatorname{GL}_r(A)$ とし、列ベクトル $y=Ux$ とする。両列は同じイデアルを生成し、$x$ がLech独立であることと $y$ がLech独立であることは同値である。

$y$ の各成分は $x$ の線型結合なので $(y)\subset(x)$、逆行列を使うと逆包含も得る。行ベクトル $a$ に対して $ay=aUx$ だから、$ay=0$ なら独立性によって $aU$ の全成分が $I$ に入る。$a=(aU)U^{-1}$ の成分も $I$ に入る。逆向きは $U^{-1}$ を使う。$\square$

同じ長さの二つの生成列であっても、変換行列が可逆とは限らない。この命題を任意の生成列へ無条件に適用しない。局所環で両方の剰余が $I/I^2$ の基底なら、変換行列は $A/I$ 上で可逆となる。$I$ が極大イデアル内なら、その行列式は極大イデアル外であり $A$ の単元なので、元の行列も可逆である。この最後の持上げは局所環の条件を使う。

局所化での判定

$S\subset A$ を積閉集合とする。Lech独立な列の像は $S^{-1}A$ 上でもLech独立である。また列が $A$ 上独立であることは、全ての素イデアルで局所化した列が独立であることと同値である。

$S^{-1}I/(S^{-1}I)^2\simeq S^{-1}(I/I^2)$ を確認する。イデアル積は有限和で書かれるので、分数の積を共通分母へまとめることで $(S^{-1}I)^2=S^{-1}(I^2)$ となる。商の同型は分数 $z/s$ をその剰余へ送る写像で得られる。零となる条件も、ある $u\in S$ が $uz\in I^2$ とする条件だから一致する。
局所化は完全性を保つ。単射の保存は、像の分数が零ならある分母が元を零にし、元の単射により同じ分母が元の分数を零にすることから従う。核と像の一致も有限分母を払えばよい。従って $\phi$ の同型は局所化後も同型であり、最初の判定を適用できる。
逆に全素点で $\phi$ が単射とする。$\phi$ の核に非零元 $z$ があるなら、その零化イデアルは真であり、それを含む極大イデアル $\mathfrak m$ を選べる。$z/1=0$ なら $s\notin\mathfrak m$ で $sz=0$ となるが、$s\in\operatorname{Ann}(z)\subset\mathfrak m$ に矛盾する。従って局所核も非零となり、仮定に反する。$\square$

各局所化でイデアルが全環になることもあり、その場所の独立性は自明となる。そのため真に検査が必要なのは $I$ を含む素イデアルである。全素点を用いた命題はこの自明な場合も含んでいる。零加群の局所化だけを調べて大域結論を得る最後の論法は、有限生成性を仮定せず成立する。

全次数の独立性

一次の余法加群だけでなく、各冪の商 $I^n/I^{n+1}$ を同時に見ると、より強い条件が得られる。$I$ の随伴次数環とは
$$\operatorname{gr}_I(A)=\bigoplus_{n\ge0}I^n/I^{n+1}$$
であり、次数0成分は $A/I$、積は代表の積から定める。代表を一つ高い冪だけ変えると積も一つ高い冪へ入るので、積は定義できる。

強い多項式独立性

$I\ne A$ とする。この記事では、任意の $n\ge0$ と斉次多項式
$$F(X_1,\ldots,X_r)=\sum_{|\alpha|=n}a_\alpha X^\alpha$$
について、$F(x)\in I^{n+1}$ なら全ての係数 $a_\alpha$ が $I$ に入る条件を、強い独立性と呼ぶ。これは列の全冪における単項式の独立性であり、環上の準正則列の条件でもある。一次のLech独立性と同じ条件と定義しない。

次数環と関係式の判定

強い独立性は、自然な次数環写像
$$\Psi:(A/I)[X_1,\ldots,X_r]\longrightarrow\operatorname{gr}_I(A),\qquad X_i\longmapsto x_i\bmod I^2$$
が同型であることと同値である。また強い独立性の定義では、条件 $F(x)\in I^{n+1}$ を $F(x)=0$ に置き換えても同値である。

係数を $I$ だけ変えると次数 $n$ の評価差は $I^{n+1}$ へ入るので写像は定義できる。$I^n$ は $x^\alpha$、$|\alpha|=n$ で生成されるため各次数で全射である。次数 $n$ の核が零であることは、定義の係数条件そのものだから、全次数の単射性と強い独立性が同値となる。
零関係の係数条件は明らかに強い独立性から従う。逆に零関係の条件を仮定し、$F(x)\in I^{n+1}$ とする。次数 $n+1$ の斉次 $G$ で $G(x)=F(x)$ と書ける。各単項式から変数を一つ取り出せば $G=\sum_iX_iG_i$、各 $G_i$ は次数 $n$ となる。すると
$$F^*=F-\sum_i x_iG_i$$
は次数 $n$ の多項式で $F^*(x)=0$ となる。仮定によってその係数は $I$ に入る。$F-F^*$ の係数も各 $x_i$ の倍の和なので $I$ に入り、$F$ の係数も $I$ に入る。$n=0$ でも $G_i$ は定数で同じ計算が成立する。空列の場合は次数0の恒等写像だけがあり、正の次数は双方零である。$\square$

強い独立性から一次の独立性は次数1を取れば従う。次数 $n$ の商は、単項式 $x^\alpha$ の剰余を基底とする自由 $A/I$ 加群となる。$r\ge1$ なら単項式の個数は $\binom{n+r-1}{r-1}$ である。これは合計 $n$ の非負整数組を、$n$ 個の点の間に $r-1$ 個の仕切りを入れて数える計算である。$r=0$ はこの式の負の添字に入れず、次数0で階数1、正の次数で階数0と扱う。

正則列から強い独立性を証明する

列が正則とは、各 $x_i$ が $A/(x_1,\ldots,x_{i-1})$ 上で非零因子であり、最終商 $A/I$ が非零であることをいう。この条件は順番に関する条件である。一方、独立性の定義は変数の順列で変わらない。この差は任意の環で正則列を並べ替えてよいという意味ではない。

一次関係の係数

正則列 $x_1,\ldots,x_r$ はLech独立である。

長さで帰納する。一元の場合 $a_1x_1=0$ は非零因子性から $a_1=0$ を与える。一般に $\sum_i a_ix_i=0$ を先頭 $r-1$ 元のイデアルで割ると、最後の元の非零因子性から $a_r=\sum_{i< r}x_ib_i$ と書ける。従って
$$\sum_{i< r}x_i(a_i+x_rb_i)=0.$$
帰納法により $a_i+x_rb_i$ は先頭の元の生成するイデアルに入るので、$a_i$ は $I$ に入る。$a_r$ も既にその先頭イデアルに入っている。空列は自明である。$\square$

全次数の証明には、非零因子性がイデアルの冪へ保たれることを先に示す。

冪とcolon

$J=(z_1,\ldots,z_s)$ が強く独立な列で生成され、$(J:a)=J$ とする。このとき $(J^n:a)=J^n$ が全 $n\ge1$ で成立する。ここで $(J^n:a)=\{b\in A\mid ab\in J^n\}$ である。

$n=1$ は仮定である。$ab\in J^n$、$n>1$ とすると帰納法で $b\in J^{n-1}$。次数 $n-1$ の斉次多項式 $H$ で $b=H(z)$ と書く。$aH(z)\in J^n$ だから強い独立性により $a$ と各係数 $h_\alpha$ の積が $J$ に入る。$(J:a)=J$ から各 $h_\alpha\in J$、ゆえに $b\in J^n$ となる。逆包含はイデアル性から明らかである。空生成列では $J=0$ となり、仮定そのものが $a$ の非零因子性なので同じ結論が成立する。$\square$

正則列の全次数独立性

任意の可換環上の正則列は強く独立である。

長さ $r$ で帰納する。$r=1$ の斉次零関係は $c x_1^n=0$ であり、非零因子を反復して消去すると $c=0$。次数0の条件も定数そのものから自明である。$r=0$ は空列の場合である。
一般に $J=(x_1,\ldots,x_{r-1})$ とする。先頭列は正則だから長さの帰納法で強く独立である。最後の元が $A/J$ 上非零因子という条件は $(J:x_r)=J$ なので、補題から $(J^n:x_r)=J^n$ を得る。
全 $r$ 変数における次数 $n$ の係数条件を次数についても帰納する。次数0では $F(x)\in I$ は係数自身が $I$ に入ることなので成立する。次数 $n>0$ の斉次零関係を
$$F=G(X_1,\ldots,X_{r-1})+X_rH(X_1,\ldots,X_r)$$
と分ける。$G$ の次数は $n$、$H$ は $n-1$。$G(x)=-x_rH(x)$ は $J^n$ に入るのでcolon等式から $H(x)\in J^n\subset I^n$。次数の帰納法から $H$ の係数は $I$ に入る。
さらに $H(x)\in J^n$ より、先頭変数だけの次数 $n$ 多項式 $h$ で $H(x)=h(x_1,\ldots,x_{r-1})$ と書ける。先頭変数の多項式 $G+x_rh$ は零関係である。先頭列の強い独立性からその係数は $J$ に入る。従って $G$ の係数は $J+x_rA=I$ に入る。$G$ と $H$ の全係数が $I$ に入ったので $F$ も同じである。零関係条件と冪に属する条件の同値を用いれば、次数 $n$ の条件全体が成立する。二つの帰納は、先頭の短い列と同じ長さの低次数だけを使っている。$\square$

この証明にNoether性や完備性はない。冪の商を調べるために、イデアル進位相の分離性を仮定する必要もなかった。ただし逆に冪の商から元そのものの消滅を得ようとすると、全ての冪に入る元を零とするための条件が問題になる。

一次の独立性だけでは正則にならない

二重数環

体 $k$ に対し $A=k[t]/(t^2)$、$x=\bar t$、$I=(x)$ とする。$A$ の元は一意に $a+bx$ と書ける。$(a+bx)x=ax$ だから $\operatorname{Ann}_A(x)=(x)=I$。従って一元列 $(x)$ はLech独立である。しかし $x\ne0$、$x^2=0$ なので非零因子ではなく、正則列ではない。
$I^2=0$、$I/I^2=I\simeq k=A/I$ で、一次の余法加群は自由階数1である。他方、次数2の写像は $kX^2\to I^2/I^3=0$。$X^2$ の係数1は $I$ に入らず、強い独立性が失敗する。この例はNoether局所環であり、Noether性と局所性だけを加えても一次独立から正則性は得られない。

もっと一般に $A=k[t]/(t^m)$、$m\ge2$ とすれば $(\bar t)$ は一次独立である。零化イデアルは $(\bar t^{m-1})\subset(\bar t)$ だからである。次数 $n< m$ の冪商は階数1だが、次数 $m$ では零となり、全次数独立が破れる。有限個の低い次数の検査だけでは、任意の次数まで正しいとはいえないこともこの計算で分かる。

強く独立でも非正則となる非分離例

体 $k$、$R=k[t]$、$M=k[t,t^{-1}]/k[t]$ とし、平方零拡大 $A=R\ltimes M$ を作る。加法は成分ごと、積は
$$(a,m)(b,n)=(ab,an+bm)$$
であり、単位元は $(1,0)$。$x=(t,0)$、$I=xA$ と置く。
$tM=M$ である。実際、Laurent多項式の剰余 $m$ に対して $t^{-1}m$ の剰余を選べば、その $t$ 倍は $m$ となる。従って各 $n\ge1$ で
$$I^n=t^nR\oplus M.$$
$I$ は主イデアルなので $I^n=x^nA$ であり、この式は直接その積からも確認できる。$A/I\simeq R/tR\simeq k$、$I^n/I^{n+1}\simeq t^nR/t^{n+1}R\simeq k$ となる。$x^n$ はその基底であり、積は単項式の積に対応する。従って $\operatorname{gr}_I(A)\simeq k[X]$、すなわち $(x)$ は強く独立である。
しかし $m_0=t^{-1}+R\ne0$ に対して $tm_0=1+R=0$。従って非零元 $(0,m_0)$ は $x$ で殺され、$(x)$ は正則でない。また
$$\bigcap_{n\ge1}I^n=0\oplus M\ne0.$$
冪の商はこの共通部分を検出できないのである。$A$ がNoetherでないことも計算できる。$M_n$ を $t^{-1},\ldots,t^{-n}$ の剰余が生成する $R$ 部分加群とすると、$0\oplus M_n$ は $A$ のイデアルであり、$M_n\subsetneq M_{n+1}$。負の最低次数を比較すれば $t^{-(n+1)}$ は $M_n$ に入らない。よってイデアルの無限昇鎖がある。

この例は $A/I$ を非零とするproper条件まで満たしている。強い独立性を正則性と同一視しない理由は、単に単位イデアルの端点にあるのではない。イデアルの全冪に埋もれた部分の存在が、本質的な違いを作る。

正則局所環での逆を読む際の条件

Noether正則局所環 $(A,\mathfrak m)$ で $x_i\in\mathfrak m$ がLech独立なら、指定した列自身が正則列となるというLechの定理がある。これは任意の環での逆ではない。背後には、properイデアル $I$ が有限射影次元を持ち、$I/I^2$ が自由なら $I$ は正則列で生成される、というVasconcelosの判定がある。正則局所環では有限加群の射影次元が有限となるため、その判定を適用できる。
この逆方向は一次の関係式を高次の冪の関係へただ書き換えるだけでは証明できない。有限射影次元から非零因子を選び、商へ有限射影次元と余法加群の自由性を引き継ぐ帰納が必要である。MatCRT §19 の定理19.9とその系がこの判定を扱う。本記事で証明するのは、定義の余法判定、次数環判定、正則列からの全次数独立、および反例の計算である。正則局所環での逆方向は、この有限射影次元の定理による。
関係する仮定を並べると、proper条件は正則列の非零最終商に必要であり、局所条件は有限生成元のNakayama判定や行列式の単元持上げに使われる。Noether条件は有限射影次元の局所的な帰納や加群の分離性を確保する場面に現れる。一次の定義自体にはどれも必要ない。異なる定理で使う仮定を、定義の一部として加えたり逆に省いたりしない。

計算の手順

列の独立性を調べるには、まず指定した生成列とそのイデアルを固定する。次に零関係の係数を調べるか、$I/I^2$ への自然写像の核を計算する。余法加群が自由と分かった場合も、列の剰余が基底を与えているかまで確認する。列に重複があれば、その冗長性は一次関係で既に検出される。
全次数の構造が必要なら $I^n/I^{n+1}$ の単項式基底を検査する。次数1だけから次数2以降へ進むことはできない。正則列であることが既に分かっていれば、colonの補題と二重帰納によって全次数の多項式同型が得られる。逆に次数環だけが多項式型と分かっている場合には、非零元が全冪に入っていないか、各逐次商でも分離性があるかを別に検討する。
正則列、一次のLech独立、全次数の強い独立は、生成元の情報を異なる精度で記録している。一次独立は余法加群の指定基底を表し、強い独立は随伴次数環の指定多項式基底を表す。元そのものの非零因子性は商の外側にも関わるため、次数の情報だけで一般に回収できるわけではない。

一元列では分離性が正則性を回復する

強い独立性と全冪の交叉

$A$ を任意の可換環、$x\in A$、$I=(x)\ne A$ とする。一元列 $(x)$ が強く独立なら
$$\operatorname{Ann}_A(x)\subseteq\bigcap_{n\ge1}I^n.$$
特に $\bigcap_{n\ge1}I^n=0$ なら $(x)$ は正則列である。Noether性、局所性、完備性は不要である。

$cx=0$ とする。次数1の強い独立性から $c\in I$ なので $c=xc_1$ と書ける。帰納的に $c=x^r c_r$ と書けたとすると、$cx=0$ より $c_r x^{r+1}=0\in I^{r+2}$ である。次数 $r+1$ の強い独立性を係数 $c_r$ に適用すれば $c_r\in I$。従って $c_r=xc_{r+1}$ と書け、$c\in I^{r+1}$ を得る。全 $r$ について繰り返せば包含が従う。これらの表示の一意性は必要ない。
全冪の交叉が零なら $cx=0$ は $c=0$ を意味する。よって $x$ は非零因子であり、$I\ne A$ によって最終商 $A/I$ も非零だから、一元列 $(x)$ は正則である。$\square$

上の平方零拡大の反例では $\bigcap_{n\ge1}I^n=0\oplus M$ であり、$\operatorname{Ann}_A(x)=0\oplus k(t^{-1}+R)$ は確かにその中に入る。実際、$tf=0$ は整域 $k[t]$ で $f=0$ を意味し、Laurent剰余の $t$ 倍が多項式になるのは $t^{-1}$ の $k$ 倍の剰余だけである。強い独立性が検出しない零因子の所在が、全冪の共通部分として具体的に見えている。
この命題は一元列についての結論である。多元列へ適用するには、逐次商における独立性と全冪の交叉をそれぞれ確認する必要があり、元のイデアルの分離性だけから多元列の逆を結論しない。

関連項目

参考文献

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