基数関数

同義語:cardinal function位相的基数関数topological cardinal function

概要

基数関数(cardinal function)とは、位相空間などの数学的対象に基数を割り当て、その大きさや位相の複雑さを測る関数である。weight、network weight、density、Lindelöf number、cellularity、spread、extent、character、tightnessなどを、有限の場合も値を少なくとも可算無限に補正する一つの流儀で定義し、基本的な不等式と適用範囲を示す。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 位相空間, 基数, 開基, 開被覆, 閉包

基本方針

基数関数

基数関数(cardinal function)は、数学的対象に基数を割り当てる関数である。本記事では位相空間 $X$ に割り当てる基数関数だけを扱う。

以下ではすべての値を少なくとも $\aleph_0$ にする。ある条件を満たす生の最小濃度または上限を $q(X)$ とするとき、実際に使う値を $\max\{q(X),\aleph_0\}$ とする。この補正により、有限空間でも各関数の値は有限基数にならない。文献には補正しない流儀もあるため、有限空間について値を比較するときは流儀を確認する必要がある(Juhasz80 Chapter 1)。

基底・近傍・ネットワークを測る関数

weight

$X$ の開基の濃度の最小値を $b(X)$ とし、weightを
$$w(X):=\max\{b(X),\aleph_0\}$$
と定める。$w(X)=\aleph_0$ であることは、$X$ が第2可算空間であることと同値である。

network weight

$X$ のネットワークとは、$X$ の部分集合族 $\mathcal N$ で、任意の $x\in U$($U$ は開集合)に対して $x\in N\subset U$ となる $N\in\mathcal N$ が存在するものをいう。ネットワークの濃度の最小値を $n(X)$ とし、
$$nw(X):=\max\{n(X),\aleph_0\}$$
と定める。ネットワークの元は開集合でなくてもよい。

character

$x\in X$ の開基本近傍系の濃度の最小値を $\chi_0(x,X)$ とし、
$$ \chi(x,X):=\max\{\chi_0(x,X),\aleph_0\},\qquad \chi(X):=\max\left\{\sup_{x\in X}\chi(x,X),\aleph_0\right\} $$
と定める。$\chi(X)=\aleph_0$ であることは、$X$ が第1可算空間であることと同値である。

weight は空間全体の開基を測り、character は点ごとの基本近傍系を測る。network weight は開集合とは限らない局所的な細分族を測る。$\pi$-weight は「任意の空でない開集合が族の元を一つ含む」という $\pi$-base の最小濃度であり、network weight と同じではない。本記事では $\pi$-weight の一般論を扱わない。

点・開集合・被覆を測る関数

補正した濃度

$$\operatorname{card}(X):=\max\{|X|,\aleph_0\}$$
と定める。有限空間では $\operatorname{card}(X)=\aleph_0$ であり、生の台集合の濃度 $|X|$ とは異なる。

開集合の個数

$X$ の開集合系を $\mathcal O(X)$ とし、
$$o(X):=\max\{|\mathcal O(X)|,\aleph_0\}$$
と定める。

density

$X$ の稠密部分集合の濃度の最小値を $d_0(X)$ とし、
$$d(X):=\max\{d_0(X),\aleph_0\}$$
と定める。$d(X)=\aleph_0$ であることは、$X$ が可分空間であることと同値である。

Lindelöf number

任意の開被覆が濃度高々 $\kappa$ の部分被覆を持つような基数 $\kappa$ の最小値を $L_0(X)$ とし、
$$L(X):=\max\{L_0(X),\aleph_0\}$$
と定める。$L(X)=\aleph_0$ であることは、$X$ がLindelöf空間であることと同値である。本記事ではこれを Lindelöf number または Lindelöf数と呼ぶ。

弱被覆数

任意の開被覆 $\mathcal U$ に対し、濃度高々 $\kappa$ の部分族 $\mathcal V\subset\mathcal U$ で
$$X=\overline{\bigcup\mathcal V}$$
となるものが存在するような最小の $\kappa$ を $wc_0(X)$ とし、$wc(X):=\max\{wc_0(X),\aleph_0\}$ と定める。

Lindelöf number は選んだ部分族が空間を覆うことを要求するが、弱被覆数はその合併が稠密であることだけを要求する。したがって両者を同じ被覆不変量として扱わない。

離散性と閉包を測る関数

cellularity

互いに素な非空開集合からなる族 $\mathcal U$ の濃度 $|\mathcal U|$ の上限を $c_0(X)$ とし、$c(X):=\max\{c_0(X),\aleph_0\}$ と定める。互いに素とは、相異なる $U,V\in\mathcal U$ に対して $U\cap V=\emptyset$ となることである。

spread

$X$ の離散部分空間 $D$ の濃度 $|D|$ の上限を $s_0(X)$ とし、$s(X):=\max\{s_0(X),\aleph_0\}$ と定める。

extent

$X$ の閉かつ離散な部分空間 $D$ の濃度 $|D|$ の上限を $e_0(X)$ とし、$e(X):=\max\{e_0(X),\aleph_0\}$ と定める。

tightness

任意の $A\subset X$ と $x\in\overline A$ に対し、$|B|\le\kappa$ かつ $x\in\overline B$ となる $B\subset A$ が存在するような最小の $\kappa$ を $t_0(X)$ とし、$t(X):=\max\{t_0(X),\aleph_0\}$ と定める。

cellularity は互いに素な非空開集合族を測り、spread は任意の離散部分空間を測り、extent は閉離散部分空間だけを測る。density は稠密部分集合の小ささを測るので、これら三つの離散性の指標とも異なる。各不変量の hereditary 版は全ての部分空間での値の上限を取る別の関数であり、ここで定義した値そのものではない。

基本的な不等式

基数関数の基本不等式

任意の位相空間 $X$ について
$$ wc(X)\le d(X)\le w(X)\le o(X), $$
$$ wc(X)\le L(X),\qquad e(X)\le s(X),\qquad c(X)\le s(X), $$
$$ t(X)\le\chi(X)\le w(X),\qquad nw(X)\le\min\{\operatorname{card}(X),w(X)\},\qquad wc(X)\le c(X) $$
が成り立つ。

$D$ を稠密集合、$\mathcal U$ を開被覆とする。各 $x\in D$ に対して $x$ を含む $U_x\in\mathcal U$ を選べば、$\bigcup_{x\in D}U_x$ は $D$ を含むので稠密である。よって $wc(X)\le d(X)$ である。
空間を覆う部分族の合併は稠密なので、定義から $wc(X)\le L(X)$ である。
$\mathcal B$ を開基とする。各非空 $B\in\mathcal B$ から一点 $x_B$ を選ぶと、$\{x_B\}$ は任意の非空開集合と交わるので稠密である。したがって $d(X)\le w(X)$ である。また開基は開集合族だから $w(X)\le o(X)$ である。
閉離散部分空間は離散部分空間なので $e(X)\le s(X)$ である。互いに素な非空開集合族の各元から一点ずつ選ぶと、選んだ点全体は離散部分空間になるので $c(X)\le s(X)$ である。
$x\in\overline A$ とし、$x$ の開基本近傍系 $\mathcal B_x$ を取る。各 $B\in\mathcal B_x$ から $a_B\in A\cap B$ を選べば、$x\in\overline{\{a_B:B\in\mathcal B_x\}}$ なので $t(X)\le\chi(X)$ である。空間の開基から $x$ を含む元だけを取れば基本近傍系になるので $\chi(X)\le w(X)$ である。
一点集合全体は濃度 $|X|$ のネットワークだから $nw(X)\le\operatorname{card}(X)$ である。また開基はネットワークでもあるため $nw(X)\le w(X)$ である。すべての不等式で $\aleph_0$ 補正を施しても大小関係は保たれる。
開被覆 $\mathcal U$ に対し、ある $U\in\mathcal U$ に含まれる非空開集合からなる互いに素な族を、包含について極大になるまで取る。その族の濃度は高々 $c(X)$ であり、その合併は稠密である。実際、合併の閉包の補集合に点 $x$ があれば、$x$ の開近傍で合併と交わらないものと、$x$ を含む $U\in\mathcal U$ との共通部分は、$U$ に含まれ族のどの元とも交わらない非空開集合であり、これを族に追加できて極大性に反する。各開集合を含む被覆要素を一つずつ選べば、濃度高々 $c(X)$ で合併が稠密な $\mathcal U$ の部分族を得るので $wc(X)\le c(X)$ である。

この証明では、被覆要素、開基要素内の点、互いに素な開集合内の点、基本近傍内の点を族として同時に選ぶ箇所、および $wc(X)\le c(X)$ の証明で極大な互いに素族を取る箇所に選択公理を使う。

tightnessと閉集合の増大列

$\kappa$ を、共終数について $\operatorname{cf}(\kappa)>t(X)$ を満たす基数とし、$(F_\alpha)_{\alpha<\kappa}$ を増大する閉集合列とする。このとき $\bigcup_{\alpha<\kappa}F_\alpha$ は閉集合である。

$x\in\overline{\bigcup_{\alpha<\kappa}F_\alpha}$ とする。tightness の定義により、濃度高々 $t(X)$ の集合 $A\subset\bigcup_{\alpha<\kappa}F_\alpha$ で $x\in\overline A$ となるものがある。$\operatorname{cf}(\kappa)>t(X)$ なので、$A$ の各点が属する段階の上限はある $\beta<\kappa$ より小さい。ゆえに $A\subset F_\beta$ であり、$F_\beta$ が閉なので $x\in F_\beta$ である。したがって合併は閉である。

例と濃度評価

可算離散空間

$X$ が可算無限離散空間なら、$\operatorname{card}(X)=w(X)=nw(X)=d(X)=L(X)=wc(X)=c(X)=s(X)=e(X)=\chi(X)=t(X)=\aleph_0$ だが、$o(X)=2^{\aleph_0}$ である。したがって weight と開集合の個数は一致するとは限らない。

点の個数の上からの評価

Arhangel'skii の基数不等式は、Hausdorff空間 $X$ に対して
$$ |X|\le 2^{\chi(X)L(X)} $$
を与える(Gotchev23 Theorem 2.2、Juhasz80 Chapter 2)。ここで使うのは本記事で定義した character と Lindelöf number であり、network weight や weak covering number へ無条件に置き換えない。証明は Arhangel’skiiの不等式 の記事が所有する。本記事では式を引用するだけで証明しない。

関連項目

参考文献

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