決定性公理

同義語:axiom of determinacyAD

概要

決定性公理(axiom of determinacy, $\mathsf{AD}$)とは、二人が自然数を交互に選ぶ無限の完全情報ゲームについて、勝利集合 $A\subseteq\omega^\omega$ をどう選んでも一方のプレイヤーに必勝戦略がある、という公理である。勝利集合が開集合・閉集合なら $\mathsf{ZF}$ で、Borel 集合なら $\mathsf{ZFC}$ で決定性が証明できるが、実数の整列順序からは決定されないゲームが作れるので、$\mathsf{AD}$ は選択公理と両立しない。$\mathsf{AD}$ のもとでは実数の集合がすべて Lebesgue 可測で Baire の性質をもち、無限個の Woodin 基数とその上の可測基数があれば内部モデル $L(\mathbb R)$ で $\mathsf{AD}$ が成り立つ。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 集合論, 選択公理, 順序数, Borel集合

無限ゲームと決定性

決定性公理(axiom of determinacy, $\mathsf{AD}$)は、二人が自然数を交互に選ぶ無限に長いゲームについて、勝ち負けの条件をどう決めても一方に必勝戦略がある、という公理である。相手の手をすべて見てから指す(完全情報の)有限の長さのゲームで引き分けがなければ、先読みを最後の手から遡ることでどちらかに必勝法があると分かる(石取りゲームと必勝法)。無限のゲームでは「最後の手」がないので、この遡りが使えない。決定性公理は、この遡りが無限でもうまくいくと仮定するものである。

以下、$\omega=\{0,1,2,\dots\}$ とし、自然数の無限列全体を $\omega^\omega$、有限列全体を $\omega^{<\omega}$ と書く。有限列 $s$ に対し $N_s:=\{x\in\omega^\omega : x\text{ は } s \text{ で始まる}\}$ とおき、$N_s$ たちを基本開集合とする位相を $\omega^\omega$ に入れる(Baire 空間)。$\omega^\omega$ は連続分数展開によって無理数全体と同相であり、実数の集合を調べるときの標準的な舞台になる。

無限ゲームと戦略

$A\subseteq\omega^\omega$ を固定する。ゲーム $G(A)$ では、プレイヤー I と II が交互に自然数を選ぶ。
$$ \begin{array}{c|ccccc} \mathrm I & x(0) & & x(2) & & \cdots\\ \mathrm{II} & & x(1) & & x(3) & \cdots \end{array} $$
こうしてできる列 $x\in\omega^\omega$ をプレイと呼び、$x\in A$ なら I の勝ち、$x\notin A$ なら II の勝ちとする。$A$ を勝利集合と呼ぶ。各プレイヤーは、それまでに選ばれた数をすべて知ったうえで次の数を選ぶ(完全情報)。

  • I の戦略とは、偶数の長さの有限列(空列を含む)全体から $\omega$ への写像 $\sigma$ である。I が $\sigma$ に従うとは、$x(2k)=\sigma(x(0),\dots,x(2k-1))$ がすべての $k$ で成り立つことをいう。
  • II の戦略とは、奇数の長さの有限列全体から $\omega$ への写像 $\tau$ であり、II が $\tau$ に従うとは $x(2k+1)=\tau(x(0),\dots,x(2k))$ がすべての $k$ で成り立つことをいう。
  • I が $\sigma$ に従い、II の手が $y(0),y(1),\dots$ であるときのプレイを $\sigma*y$ と書く。同様に、I の手が $x'(0),x'(1),\dots$ で II が $\tau$ に従うときのプレイを $x'*\tau$、両者が戦略に従うときのプレイを $\sigma*\tau$ と書く。
  • $\sigma$ が I の必勝戦略とは、すべての $y\in\omega^\omega$ について $\sigma*y\in A$ となることである。$\tau$ が II の必勝戦略とは、すべての $x'\in\omega^\omega$ について $x'*\tau\notin A$ となることである。
決定性と決定性公理

$G(A)$ が決定される(determined)とは、I または II の一方が必勝戦略をもつことである。決定性公理 $\mathsf{AD}$ は「すべての $A\subseteq\omega^\omega$ について $G(A)$ が決定される」という主張である。

決定性公理は選択公理を含まない集合論 $\mathsf{ZF}$ に付け加える公理として考える。後で示すとおり、選択公理とは両立しない(cor-ad-not-ac)。

両者が同時に勝つことはない

どの $A\subseteq\omega^\omega$ についても、I と II の両方が $G(A)$ の必勝戦略をもつことはない。

$\sigma$ を I の必勝戦略、$\tau$ を II の必勝戦略とすると、両者が従うプレイ $z=\sigma*\tau$ は一つに決まる。$z$ は II の手の列に対して I が $\sigma$ に従ったプレイだから $\sigma$ が必勝であることにより $z\in A$ であり、同時に I の手の列に対して II が $\tau$ に従ったプレイでもあるから $\tau$ が必勝であることにより $z\notin A$ である。これは矛盾である。$\square$

例

最初の数手で勝敗が決まるゲーム

$A=\{x : x(0)+x(1)\text{ が偶数}\}$ とする。I が $x(0)$ を選んだあと、II は $x(1)=x(0)+1$ を選べば和が奇数になり勝つ。したがって $\tau(x(0))=x(0)+1$(以後の手は何でもよい)が II の必勝戦略である。一方 $A=\{x : x(0)\text{ が偶数}\}$ なら、I は初手に $0$ を選べば勝つ。勝敗が有限個の手で決まるゲームは、実質的に有限ゲームである。

開集合と、それに見えて II が勝つゲーム

$A=\{x : \text{ある } n \text{ で } x(n)=0\}$ は開集合 $\bigcup_{s}N_s$($s$ は $0$ を含む有限列)であり、I は初手に $0$ を選べば勝つ。これに対し、$B=\{x : \text{ある奇数 } n \text{ で } x(n)=0\}$ も開集合で、しかも $\omega^\omega$ の中で稠密である(どの $N_s$ も、$s$ の後ろに奇数番目が $0$ になるよう数を足せば $B$ と交わる)。それでも II は自分の番に常に $1$ を選べば $x\notin B$ となって勝つ。勝利集合が「大きい」ことは I の勝ちを意味しない。

補集合が可算なら I が勝つ

$\omega^\omega\setminus A=\{c_0,c_1,c_2,\dots\}$ が可算集合で、その数え上げが与えられているとする。I は第 $k$ 回目の手番(位置 $2k$)で $x(2k)=c_k(2k)+1$ を選ぶ。するとすべての $k$ で $x(2k)\neq c_k(2k)$ だから $x\neq c_k$ であり、$x\in A$ となる。これは対角線論法を一手ずつ実行する戦略である。

開ゲームと閉ゲームは決定される

勝利集合が開集合なら、I が勝つときは有限回の手で勝ちが確定する。この「有限回で確定する」ことを順序数で測ると、選択公理を使わずに必勝戦略が作れる。

Gale–Stewart の定理

$A\subseteq\omega^\omega$ が開集合または閉集合なら、$G(A)$ は決定される。この定理は $\mathsf{ZF}$ で証明できる。

定理と、選択公理を使う別証明は Mos09 定理 6A.2(p. 219)にある。ここでは順序数による階数を使って、選択公理なしで証明する。

まず $A$ が開集合の場合を示す。局面(それまでの手の有限列)$p\in\omega^{<\omega}$ の集合 $W_\alpha$ を順序数 $\alpha$ についての超限再帰で次のように定める。

  • $p\in W_0$ $:\iff$ $N_p\subseteq A$(この局面から先はどう打っても I の勝ち)。
  • $\alpha>0$ のとき、$W_{<\alpha}:=\bigcup_{\beta<\alpha}W_\beta$ とおき、$p\in W_\alpha$ $:\iff$ $p\in W_{<\alpha}$、または「$p$ の長さが偶数(I の番)で、ある $n$ について $p^\frown n\in W_{<\alpha}$」、または「$p$ の長さが奇数(II の番)で、すべての $n$ について $p^\frown n\in W_{<\alpha}$」。

$W:=\{p : \text{ある }\alpha\text{ で } p\in W_\alpha\}$ とし、$p\in W$ に対して $p\in W_\alpha$ となる最小の $\alpha$ を $\operatorname{rk}(p)$ と書く。$W$ は次の二つの閉包性をもつ。(i) 長さが偶数の $p$ について、ある $n$ で $p^\frown n\in W$ なら $p\in W$($p\in W_{\operatorname{rk}(p^\frown n)+1}$ となる)。(ii) 長さが奇数の $p$ について、すべての $n$ で $p^\frown n\in W$ なら $p\in W$(置換公理により $\alpha:=\sup_n(\operatorname{rk}(p^\frown n)+1)$ が存在し、$p\in W_\alpha$ となる)。

場合 1:空列 $\emptyset$ が $W$ に属する。 I の戦略 $\sigma$ を次のように定める。I の番の局面 $p$ が $W$ に属し $\operatorname{rk}(p)>0$ なら、$\operatorname{rk}(p^\frown n)<\operatorname{rk}(p)$ となる最小の $n$ を選ぶ。そのような $n$ は存在する。実際 $\alpha=\operatorname{rk}(p)$ とすると $p\in W_\alpha\setminus W_{<\alpha}$ であり、$W_\alpha$ の定義で残るのは「ある $n$ で $p^\frown n\in W_{<\alpha}$」だけである。それ以外の局面では $0$ を選ぶ。

II の番の局面 $p\in W$ で $\alpha=\operatorname{rk}(p)>0$ なら、同じ理由ですべての $n$ について $p^\frown n\in W_{<\alpha}$ である。したがって I が $\sigma$ に従う限り、局面が $W$ に属し階数が正である間は、どちらが指しても階数は真に減る。順序数の真に減少する列は有限で終わるから、あるプレイの先頭部分 $x\restriction k$ で $\operatorname{rk}(x\restriction k)=0$、すなわち $N_{x\restriction k}\subseteq A$ となる。よって $x\in A$ であり、$\sigma$ は I の必勝戦略である。

場合 2:$\emptyset\notin W$。 II の戦略 $\tau$ を次のように定める。II の番の局面 $p\notin W$ では、$p^\frown n\notin W$ となる最小の $n$ を選ぶ。閉包性 (ii) の対偶により、そのような $n$ は存在する。それ以外の局面では $0$ を選ぶ。

I の番の局面 $p\notin W$ では、閉包性 (i) の対偶により、I がどの $n$ を選んでも $p^\frown n\notin W$ である。したがって II が $\tau$ に従う限り、プレイ $x$ のすべての先頭部分 $x\restriction k$ は $W$ に属さず、特に $N_{x\restriction k}\not\subseteq A$ である。もし $x\in A$ なら、$A$ が開集合であることから、ある $k$ で $N_{x\restriction k}\subseteq A$ となるはずである。よって $x\notin A$ であり、$\tau$ は II の必勝戦略である。

$A$ が閉集合の場合は、II の勝利集合 $\omega^\omega\setminus A$ が開集合である。上の議論で I と II の役割(偶数と奇数)を入れ替え、$W_0:=\{p : N_p\cap A=\emptyset\}$ から始めれば、同じ二つの場合分けで、II が必勝戦略をもつか I が必勝戦略をもつかのどちらかになる。

どちらの戦略も「条件を満たす最小の $n$」で定義したので、選択公理は使っていない。$\square$

この証明は、有限ゲームでの「最後から遡る」解析を、順序数で番号を付けた段階 $W_\alpha$ に置き換えたものである。階数 $\operatorname{rk}(p)$ は「局面 $p$ から I が勝ちを確定させるまでに要する段階」を測っている。

選択公理とは両立しない

選択公理のもとでは、すべての戦略を並べて一つずつ打ち負かすことで、決定されない勝利集合を作れる。必要なのは $\omega^\omega$ の整列順序だけである。

決定されないゲームの存在

($\mathsf{ZF}$)$\omega^\omega$ が整列可能なら、$G(A)$ が決定されない $A\subseteq\omega^\omega$ が存在する。特に選択公理のもとでは、決定されないゲームが存在する。

$\omega^\omega$ の整列順序を一つ固定し、$\mathfrak c:=\lvert\omega^\omega\rvert$ に等しい濃度をもつ最小の順序数を $\kappa$ とする。$\alpha<\kappa$ なら $\lvert\alpha\rvert<\mathfrak c$ である。

戦略の数。 偶数の長さの有限列全体は可算無限集合なので、自然数と具体的に一対一に対応させられる。したがって I の戦略全体 $S_{\mathrm I}$ は $\omega^\omega$ と一対一に対応し、整列順序を移して $S_{\mathrm I}=\{\sigma_\alpha : \alpha<\kappa\}$ と並べられる。II の戦略も同様に $\{\tau_\alpha : \alpha<\kappa\}$ と並べる。

一つの戦略に従うプレイの数。 $y\mapsto\sigma*y$ は単射である。$y$ の各項は $\sigma*y$ の奇数番目にそのまま現れるからである。同様に $x'\mapsto x'*\tau$ も単射である。したがって $\{\sigma*y : y\in\omega^\omega\}$ と $\{x'*\tau : x'\in\omega^\omega\}$ はどちらも濃度 $\mathfrak c$ をもつ。

超限再帰。 $\alpha<\kappa$ について順に、プレイ $a_\alpha,b_\alpha$ を次のように選ぶ。

  • $a_\alpha$:$\{\sigma_\alpha*y : y\in\omega^\omega\}\setminus\{b_\beta : \beta<\alpha\}$ の中で、固定した整列順序について最小の元。
  • $b_\alpha$:$\{x'*\tau_\alpha : x'\in\omega^\omega\}\setminus\{a_\beta : \beta\leq\alpha\}$ の中で最小の元。

取り除く集合の濃度は $\lvert\alpha\rvert+1$ 以下で、これは $\mathfrak c$ より小さい。よって残りは空でなく、選択は毎回可能である。

$A:=\{b_\alpha : \alpha<\kappa\}$ とおく。

  • どの $\alpha$ についても $a_\alpha\notin A$ である。$\beta<\alpha$ なら $a_\alpha\neq b_\beta$ は $a_\alpha$ の選び方による。$\beta\geq\alpha$ なら $b_\beta$ は $a_\alpha$ を除いて選んだ。したがって $\sigma_\alpha$ に従うプレイ $a_\alpha$ で I は負けており、$\sigma_\alpha$ は必勝戦略でない。
  • どの $\alpha$ についても $b_\alpha\in A$ であり、$b_\alpha$ は II が $\tau_\alpha$ に従うプレイである。したがって $\tau_\alpha$ は II の必勝戦略でない。

すべての戦略がどこかの $\sigma_\alpha$ または $\tau_\alpha$ として現れるので、$G(A)$ は決定されない。$\square$

決定性公理と選択公理

$\mathsf{ZF}+\mathsf{AD}$ のもとでは $\omega^\omega$(したがって実数全体 $\mathbb R$)は整列可能でない。特に $\mathsf{AD}$ と選択公理は同時には成り立たない。

$\omega^\omega$ が整列可能なら thm-ad-nondetermined により決定されないゲームが存在し、$\mathsf{AD}$ に反する。選択公理のもとではすべての集合が整列可能である(整列可能定理)。$\mathbb R$ と $\omega^\omega$ の間には選択公理なしで全単射が作れるので、$\mathbb R$ についても同じ結論が成り立つ。$\square$

上の証明の $A$ は超限再帰で一点ずつ決めたもので、具体的な式で書かれた集合ではない(同じ構成は Mos09 演習 6A.6(p. 222)にある)。

決定性公理から従うこと

$\mathsf{AD}$ は選択公理を否定するが、弱い形の選択は $\mathsf{AD}$ 自身から従う。

実数の集合の可算族からの選択

($\mathsf{ZF}+\mathsf{AD}$)$A_0,A_1,A_2,\dots$ を空でない $\omega^\omega$ の部分集合の列とする。このとき、すべての $n$ で $f(n)\in A_n$ となる写像 $f\colon\omega\to\omega^\omega$ が存在する。

次の証明は Mos09 補題 7D.1(p. 324)の証明を、記号を合わせて書いたものである。

次のゲームを考える。I は初手 $x(0)=n$ で添字を指定し、以後の I の手は勝敗に関係しない。II の手の列を $y=(x(1),x(3),x(5),\dots)$ とし、$y\in A_{x(0)}$ なら II の勝ちとする。すなわち I の勝利集合は
$$ B:=\{x\in\omega^\omega : (x(1),x(3),x(5),\dots)\notin A_{x(0)}\} $$
である。

I は必勝戦略をもたない。実際、I の戦略 $\sigma$ が与えられたら $n:=\sigma(\emptyset)$ とおく。$A_n$ は空でないから、その元 $y$ を一つとれる(一つの集合から一つ選ぶだけなので選択公理は要らない)。II が I の手を無視して $y$ の項を順に指せば、II の手の列は $y\in A_n$ となり II が勝つ。

$\mathsf{AD}$ により、II が必勝戦略 $\tau$ をもつ。I が $n,0,0,0,\dots$ と指し II が $\tau$ に従うプレイの II の手の列を $f(n)$ とする。$\tau$ は必勝だから $f(n)\in A_n$ である。$f$ は $\tau$ から具体的に定まっているので、選択公理を使わずに存在する。$\square$

この定理は 可算選択公理 の、実数の集合に制限した形である。$\mathsf{AD}$ のもとでの実数の集合のふるまいは、選択公理のもとでのそれと大きく異なる。次の三つは、それぞれ補助的なゲーム(I が有限列をまとめて指すゲーム、開集合を縮めていく Banach–Mazur ゲーム、測度の小さい開集合で覆うゲーム)の決定性から導かれる。この記事では証明しない(Mos09 6A 節の演習 6A.10–6A.18(pp. 224–229)、および定理 7D.2(p. 325))。

  • 非可算な $A\subseteq\omega^\omega$ は空でない完全集合を含む(完全集合性)。
  • すべての $A\subseteq\omega^\omega$ は Baireの性質 をもつ。
  • すべての実数の集合は Lebesgue 可測である。

選択公理のもとでは、Vitali 集合のような Lebesgue測度 で測れない集合があり、上の三つはすべて成り立たない。

$\mathsf{ZFC}$$\mathsf{ZF}+\mathsf{AD}$
$\mathbb R$ の整列順序あるない
決定されないゲームあるない
開・閉・Borel 集合のゲームの決定性成り立つ成り立つ
実数の集合の可算族からの選択成り立つ成り立つ
可測でない実数の集合あるない

ZFC のもとでの決定性と大きな基数

選択公理を仮定したままでも、勝利集合を定義の単純な集合に制限すれば決定性が成り立つ。

Borel 決定性(Martin)

($\mathsf{ZFC}$)$A\subseteq\omega^\omega$ が Borel集合 なら $G(A)$ は決定される。

この記事では証明しない(Mos09 定理 6F.1、p. 273)。証明は、Borel 集合のゲームを、より大きな集合の上の閉ゲームに「ほどいて」thm-ad-gale-stewart に帰着させるものである。

一方、Borel 集合の次に単純な解析集合(Borel 集合の連続像、$\boldsymbol\Sigma^1_1$ 集合)のゲームの決定性は、$\mathsf{ZFC}$ が無矛盾である限り $\mathsf{ZFC}$ では証明できない(Mos09 演習 6A.12 の末尾、p. 225)。射影階層 に属する集合すべてのゲームが決定されるという主張を射影決定性(projective determinacy, $\mathsf{PD}$)という。これらは次のように 巨大基数 から従う。この記事では証明しない。

  • $n$ 個の Woodin基数 とその上の 可測基数 があれば、$\boldsymbol\Pi^1_{n+1}$ 集合のゲームは決定される(Nee07 系 5.31、p. 50)。したがって無限個の Woodin 基数があれば $\mathsf{PD}$ が成り立つ。
  • 無限個の Woodin 基数とそれらより上の可測基数があれば、実数全体を含む最小の内部モデル $L(\mathbb R)$ で $\mathsf{AD}$ が成り立つ(Nee07 定理 8.24、p. 78)。

後者の $V$ と $L(\mathbb R)$ は別のモデルである。$V$ では選択公理が成り立ち、$L(\mathbb R)$ に属する実数の集合だけを勝利集合とするゲームがすべて決定される。これは cor-ad-not-ac と矛盾しない。$V$ で作った決定されない集合 $A$(thm-ad-nondetermined)は $L(\mathbb R)$ に属さないからである。

仮定を外すと成り立たなくなること

外す条件反例成り立たなくなること
完全情報(相手の手を見てから選ぶ)二人が同時に $0$ か $1$ を出し、一致すれば I の勝ち有限ゲームでどちらかに必勝戦略がある(冒頭の遡り)
勝利集合が開または閉(thm-ad-gale-stewart)整列順序から作った $A$(thm-ad-nondetermined)ゲームが決定される
補集合が可算(ex-ad-cocountable)稠密な開集合 $B=\{x : \text{ある奇数 } n \text{ で } x(n)=0\}$I が勝つ

1 行目の同時手番のゲームでは、I がどちらを出す規則を決めても、II がそれと違う数を出せば I は負け、II の規則に対しては I が同じ数を出せば II は負ける。どちらの規則も相手の手を見られないので、必勝の規則はない。このゲームは相手の手を見られないので $G(A)$ の形には書けない($G(A)$ の戦略はそれまでの手の関数なので、完全情報は定義に組み込まれている)。この例は有限ゲームであり、冒頭の遡りの議論には完全情報が本質的であることを示す。2 行目は thm-ad-nondetermined の証明、3 行目は ex-ad-open で確かめた。

関連項目

参考文献

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