Mittenpunkt(middlespoint)とは、三角形 $ABC$ の傍心 $I_A,I_B,I_C$ と、それぞれの向かいの辺 $BC,CA,AB$ の中点を結ぶ 3 本の直線が共有する点 $M$ である。辺の長さを $a,b,c$、周の長さの半分を $s$ とすると $M=\frac{a(s-a)A+b(s-b)B+c(s-c)C}{a(s-a)+b(s-b)+c(s-c)}$(点とその位置ベクトルを同じ文字で表す)で、$M$ は三角形の内部にある。Gergonne 点 $G_e$ と重心 $G$ について $M=\frac{3G-G_e}2$ が成り立ち、正三角形でなければ 3 点は一直線上に並んで $G_eG:GM=2:1$ となる。$M$ は中点三角形の Gergonne 点であり、3 つの傍心を頂点とする三角形の類似重心でもある。
前提知識: 三角形の内心と傍心, Gergonne点とNagel点, 位置ベクトルと内分点, Cevaの定理(高校数学)
三角形 $ABC$ の傍心 $I_A$(辺 $BC$ の外側の傍接円の中心)と、辺 $BC$ の中点 $M_a$ を結ぶ直線を引く。同じように $I_B$ と辺 $CA$ の中点 $M_b$、$I_C$ と辺 $AB$ の中点 $M_c$ を結ぶ。この 3 本の直線は 1 点で交わるだろうか。点とその位置ベクトルを同じ文字で表して、座標で計算する。
$A(0,3)$、$B(4,0)$、$C(0,0)$($a=BC=4$、$b=CA=3$、$c=AB=5$)をとる。傍心は $I_A(3,-3)$、$I_B(-2,2)$、$I_C(6,6)$ である(三角形の内心と傍心 の例「内心と傍心を公式で求める」)。辺の中点は $M_a(2,0)$、$M_b\left(0,\dfrac32\right)$、$M_c\left(2,\dfrac32\right)$ である。
(1) 直線 $I_AM_a$。$\overrightarrow{I_AM_a}=(-1,3)$ なので、直線の上の点は $(2,0)+t(-1,3)=(2-t,\ 3t)$ と書ける。
(2) 直線 $I_BM_b$。$\overrightarrow{I_BM_b}=\left(2,-\dfrac12\right)$ で、これを 2 倍した $(4,-1)$ を向きにとると、直線の上の点は $\left(0,\dfrac32\right)+u(4,-1)=\left(4u,\ \dfrac32-u\right)$ と書ける。
(3) 交点。$2-t=4u$、$3t=\dfrac32-u$ を連立する。2 つ目から $u=\dfrac32-3t$ で、1 つ目に入れると $2-t=6-12t$、$11t=4$、$t=\dfrac4{11}$ である。交点は
$$
\left(2-\frac4{11},\ \frac{12}{11}\right)=\left(\frac{18}{11},\ \frac{12}{11}\right)
$$
である。
(4) 3 本目。直線 $I_CM_c$ は $\overrightarrow{I_CM_c}=\left(-4,-\dfrac92\right)$ の向きで、$M_c+w\overrightarrow{I_CM_c}$ で $w=\dfrac1{11}$ とすると $\left(2-\dfrac4{11},\ \dfrac32-\dfrac9{22}\right)=\left(\dfrac{18}{11},\dfrac{12}{11}\right)$ になる。3 本目も同じ点を通る。
$A(-5,12)$、$B(0,0)$、$C(4,0)$($a=4$、$b=15$、$c=13$。$B$ の角が鈍角)をとる。傍心は $I_A(3,-2)$、$I_B(16,24)$、$I_C(-12,8)$、辺の中点は $M_a(2,0)$、$M_b\left(-\dfrac12,6\right)$、$M_c\left(-\dfrac52,6\right)$ である。ex-mtp-start と同じ計算で、3 本の直線 $I_AM_a$、$I_BM_b$、$I_CM_c$ はどれも点 $\left(-\dfrac{14}{17},\dfrac{96}{17}\right)$ を通る。
$\overrightarrow{I_AM_a}=(-1,2)$ で、$M_a+\dfrac{48}{17}(-1,2)=\left(2-\dfrac{48}{17},\ \dfrac{96}{17}\right)=\left(-\dfrac{14}{17},\dfrac{96}{17}\right)$ である。$\overrightarrow{I_BM_b}=\left(-\dfrac{33}2,-18\right)$ は $(11,12)$ の実数倍なので、$M_b+u(11,12)$ とおくと、$x$ 座標 $-\dfrac12+11u=-\dfrac{14}{17}$ から $u=-\dfrac1{34}$、$y$ 座標は $6-\dfrac{12}{34}=\dfrac{96}{17}$ で一致する。$\overrightarrow{I_CM_c}=\left(\dfrac{19}2,-2\right)$ の向き $(19,-4)$ で $M_c+w(19,-4)$ とおくと、$y$ 座標 $6-4w=\dfrac{96}{17}$ から $w=\dfrac3{34}$、$x$ 座標は $-\dfrac52+\dfrac{57}{34}=-\dfrac{14}{17}$ で一致する。
直角三角形 ABC(黒)と傍心の三角形(緑の破線)。傍心 IA と辺 BC の中点 Ma を結ぶ直線(赤)、IB と Mb を結ぶ直線(青)、IC と Mc を結ぶ直線(橙)が、三角形の内部の 1 点 M で交わる
鈍角三角形で同じ 3 本の直線を描いた図。3 本はやはり三角形の内部の 1 点 M で交わる
どちらの三角形でも 3 本は 1 点で交わり、その点は三角形の内部にあった(図 1・図 2)。この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 使う道具 |
|---|---|---|
| 傍心と辺の中点を結ぶ 3 本の直線の交点 | Mittenpunkt $M$ | 位置ベクトルの係数 |
| 交点の座標 $\left(\frac{18}{11},\frac{12}{11}\right)$ | 重心座標 $(a(s-a):b(s-b):c(s-c))$ | 接線の長さ $s-a$ など |
| $M$ と重心・Gergonne 点の位置 | $M=\frac{3G-G_e}2$ | 重心を中心とする比 $-\frac12$ の相似拡大 |
以下、三角形 $ABC$ の辺の長さを $a=BC$、$b=CA$、$c=AB$、周の長さの半分を $s=\dfrac{a+b+c}2$ とする。
一直線上にない 3 点 $A,B,C$ について、平面のどの点 $P$ も
$$
P=\frac{\alpha A+\beta B+\gamma C}{\alpha+\beta+\gamma}\qquad(\alpha+\beta+\gamma\ne0)
$$
の形に書ける。$\alpha,\beta,\gamma$ を同じ数倍しても同じ点なので、比 $(\alpha:\beta:\gamma)$ で点が決まる。これを $P$ の 重心座標 といい、$P=(\alpha:\beta:\gamma)$ と書く(Cevaの定理(高校数学) の定義「点の重心座標」を比の形にしたもの)。たとえば重心は $G=(1:1:1)$、内心は $I=(a:b:c)$、傍心は $I_A=(-a:b:c)$ である(三角形の内心と傍心)。$\alpha,\beta,\gamma$ がすべて正なら $P$ は三角形の内部にある。
Cevaの定理(高校数学) の命題「Ceva 線の足の重心座標」により、$P=(\alpha:\beta:\gamma)$ で $\beta,\gamma>0$ なら、直線 $AP$ は辺 $BC$ と点 $\dfrac{\beta B+\gamma C}{\beta+\gamma}$ で交わり、この点は $BC$ を $\gamma:\beta$ に内分する。
内接円が辺 $BC$、$CA$、$AB$ に接する点を $D$、$E$、$F$ とすると、頂点から接点までの長さは
$$
AE=AF=s-a,\qquad BF=BD=s-b,\qquad CD=CE=s-c
$$
である(三角形の内心と傍心 の命題「接点までの長さ」)。この記事では
$$
x=s-a,\qquad y=s-b,\qquad z=s-c
$$
とおく。$x,y,z>0$ で、辺の長さは $a=BD+DC=y+z$、$b=z+x$、$c=x+y$、また $s=x+y+z$ である。この書き方を使うと、次の数が頂点によらないことが分かる。
$$
bc-x^2=ca-y^2=ab-z^2=xy+yz+zx
$$
である。この共通の値を $Q$ とおくと、$Q>0$ で
$$
a(s-a)+b(s-b)+c(s-c)=2Q
$$
である。
$b=z+x$、$c=x+y$ を代入すると
$$
bc-x^2=(z+x)(x+y)-x^2=zx+yz+x^2+xy-x^2=xy+yz+zx
$$
である。$ca-y^2=(x+y)(y+z)-y^2$、$ab-z^2=(y+z)(z+x)-z^2$ も同じく展開すると $xy+yz+zx$ になる。$x,y,z>0$ なので $Q>0$ である。また
$$
a(s-a)+b(s-b)+c(s-c)=(y+z)x+(z+x)y+(x+y)z=2(xy+yz+zx)=2Q
$$
である。$\square$
$x=s-a$、$y=s-b$、$z=s-c$、$Q=xy+yz+zx$ とし、
$$
M=\frac{a(s-a)A+b(s-b)B+c(s-c)C}{a(s-a)+b(s-b)+c(s-c)}=\frac{x(y+z)A+y(z+x)B+z(x+y)C}{2Q}
$$
とおく。このとき
$$
M=M_a+\frac{x^2}{Q}\bigl(M_a-I_A\bigr),\qquad M=M_b+\frac{y^2}{Q}\bigl(M_b-I_B\bigr),\qquad M=M_c+\frac{z^2}{Q}\bigl(M_c-I_C\bigr)
$$
が成り立つ。したがって 3 本の直線 $I_AM_a$、$I_BM_b$、$I_CM_c$ はどれも点 $M$ を通る。$M$ は三角形 $ABC$ の内部にあり、直線 $I_AM_a$ の上で $M_a$ は $I_A$ と $M$ の間にあって $I_AM_a:M_aM=Q:x^2$ である。
2 つの式が同じ点を表すことは、lem-mtp-q の $a=y+z$ などと $a(s-a)+b(s-b)+c(s-c)=2Q$ から分かる。
方針:$bc\,M_a-x^2I_A$ を計算すると $Q\,M$ になることを示す。lem-mtp-q の $bc=Q+x^2$ を使うと、これが $M_a$ と $I_A$ を通る直線の式になる。
段 1(傍心と中点)。三角形の内心と傍心 の定理「3 辺の直線から等距離の 4 点」により、$-a+b+c=2(s-a)=2x$ を使って
$$
I_A=\frac{-aA+bB+cC}{2x}
$$
である。また $M_a=\dfrac{B+C}2$ である。
段 2(組み合わせを計算する)。段 1 から
$$
x^2I_A=\frac x2\bigl(-aA+bB+cC\bigr),\qquad bc\,M_a=\frac{bc}2\bigl(B+C\bigr)
$$
なので
$$
bc\,M_a-x^2I_A=\frac12\Bigl(ax\,A+(bc-bx)B+(bc-cx)C\Bigr)=\frac12\Bigl(ax\,A+b\underbrace{(c-x)}_{=y}B+c\underbrace{(b-x)}_{=z}C\Bigr)
$$
である。ここで $c-x=(x+y)-x=y$、$b-x=(z+x)-x=z$ を使った。右辺は $\dfrac12\bigl(a(s-a)A+b(s-b)B+c(s-c)C\bigr)=\dfrac12\cdot2Q\cdot M=Q\,M$ である(lem-mtp-q)。
段 3(直線の式)。lem-mtp-q から $bc=Q+x^2$ なので、段 2 は $(Q+x^2)M_a-x^2I_A=Q\,M$、つまり
$$
Q\,M=Q\,M_a+x^2\bigl(M_a-I_A\bigr)
$$
である。$Q>0$ で割ると $M=M_a+\dfrac{x^2}Q\bigl(M_a-I_A\bigr)$ で、$M$ は直線 $I_AM_a$ の上にある。$B$、$C$ についても、段 1〜3 で $A,a,x$ を $B,b,y$、$C,c,z$ に替えた同じ計算(lem-mtp-q の $ca=Q+y^2$、$ab=Q+z^2$ を使う)で残りの 2 つの式が出る。
段 4(位置)。$M$ の係数 $x(y+z)$、$y(z+x)$、$z(x+y)$ はすべて正なので、$M$ は三角形の内部にある。段 3 の式で $\dfrac{x^2}Q>0$ なので、$M$ は $M_a$ から $\overrightarrow{I_AM_a}$ と同じ向きに進んだ点で、$M_a$ は $I_A$ と $M$ の間にあり、$M_aM=\dfrac{x^2}Q\,I_AM_a$ である。$\square$
thm-mtp-main の点 $M$、つまり傍心と向かいの辺の中点を結ぶ 3 本の直線 $I_AM_a$、$I_BM_b$、$I_CM_c$ が共有する点を、三角形 $ABC$ の Mittenpunkt という。英語では middlespoint ともいう(Wei26a)。重心座標では
$$
M=\bigl(a(s-a):b(s-b):c(s-c)\bigr)
$$
である。
正三角形では $a=b=c$、$x=y=z$ なので係数がすべて等しく、$M$ は重心 $G$ と一致する。
内接円の接点 $D,E,F$ と向かいの頂点を結ぶ 3 本の線分 $AD$、$BE$、$CF$ が交わる点が Gergonne 点 $G_e$ である。Gergonne点とNagel点 の定理「Gergonne 点と Nagel 点の位置ベクトル」により
$$
G_e=\left(\frac1{s-a}:\frac1{s-b}:\frac1{s-c}\right)=\left(\frac1x:\frac1y:\frac1z\right)=(yz:zx:xy)
$$
である(最後は 3 つの成分に $xyz$ を掛けた)。同じ記事の Nagel 線の定理では、重心 $G$ を中心とする比 $-\frac12$ の相似拡大が Nagel 点を内心に移した。同じ相似拡大は Gergonne 点を Mittenpunkt に移す。
三角形 $ABC$ の Gergonne 点を $G_e$、重心を $G$、Mittenpunkt を $M$ とすると
$$
M=\frac{3G-G_e}2,\qquad\text{つまり}\qquad \overrightarrow{GM}=-\frac12\,\overrightarrow{GG_e}
$$
である。したがって、正三角形でなければ 3 点 $G_e$、$G$、$M$ は一直線上にあり、$G$ は線分 $G_eM$ を $2:1$ に内分する($G_eG:GM=2:1$)。
方針:$3G=A+B+C$ から $G_e$ を引き、係数が $M$ の係数の 2 倍になることを見る。
段 1($G_e$ の式)。$G_e=\dfrac{yz\,A+zx\,B+xy\,C}{Q}$($Q=xy+yz+zx$)である。
段 2(引き算)。$3G=A+B+C=\dfrac{Q\,A+Q\,B+Q\,C}{Q}$ なので
$$
3G-G_e=\frac{(Q-yz)A+(Q-zx)B+(Q-xy)C}{Q}=\frac{x(y+z)A+y(z+x)B+z(x+y)C}{Q}
$$
である($Q-yz=xy+zx=x(y+z)$ など)。thm-mtp-main の式から右辺は $\dfrac{2Q\,M}{Q}=2M$ なので、$M=\dfrac{3G-G_e}2$ である。
段 3(一直線と比)。$M-G=\dfrac{3G-G_e}2-G=\dfrac{G-G_e}2=-\dfrac12(G_e-G)$ なので $\overrightarrow{GM}=-\dfrac12\overrightarrow{GG_e}$ である。$G_e\ne G$ なら、$M$ は直線 $G_eG$ の上で $G$ について $G_e$ と反対側にあり、$GM=\dfrac12G_eG$ である。$G_e=G$ となるのは $yz=zx=xy$、つまり $x=y=z$($a=b=c$)のとき、すなわち正三角形のときに限る。$\square$
鈍角三角形 ABC で、Gergonne 点 Ge(青)、重心 G、Mittenpunkt M が紫の直線に並ぶ図。青の円は内接円、緑の破線は中点三角形、緑の円は中点三角形の内接円で、M は中点三角形の Gergonne 点になっている
相似拡大 $\psi=\varphi_{G,-1/2}$($X$ を $G-\frac12(X-G)=\frac{3G-X}2$ に移す変換)は三角形 $ABC$ を中点三角形 $M_aM_bM_c$ に移す(Euler線)。相似拡大は円を円に移し、接することを保つので、$ABC$ の内接円を中点三角形の内接円に、接点を接点に移す。したがって Gergonne 点 $G_e$ は中点三角形の Gergonne 点に移り、thm-mtp-gergonne から次が分かる:Mittenpunkt は中点三角形の Gergonne 点である(図 3 の緑)。Gergonne点とNagel点 の注意「Spieker 中心と中点三角形」で、内心が中点三角形の Nagel 点であることを同じ理由で示している。
点を重心座標の係数で並べると、どの点がどの点に移るかが見える。$\psi$ は重心座標の係数(和を $1$ にそろえたもの)$(\alpha,\beta,\gamma)$ を $\left(\frac{1-\alpha}2,\frac{1-\beta}2,\frac{1-\gamma}2\right)$ に移す。
| 点 | 重心座標 | $x,y,z$ で書くと | $\psi$ で移る先 |
|---|---|---|---|
| 重心 $G$ | $(1:1:1)$ | $(1:1:1)$ | $G$ |
| 内心 $I$ | $(a:b:c)$ | $(y+z:z+x:x+y)$ | Spieker 中心 $S_p$ |
| Nagel 点 $N_a$ | $(s-a:s-b:s-c)$ | $(x:y:z)$ | 内心 $I$ |
| Gergonne 点 $G_e$ | $\left(\frac1{s-a}:\frac1{s-b}:\frac1{s-c}\right)$ | $(yz:zx:xy)$ | Mittenpunkt $M$ |
| Mittenpunkt $M$ | $(a(s-a):b(s-b):c(s-c))$ | $(x(y+z):y(z+x):z(x+y))$ | 中点三角形の Mittenpunkt |
| 傍心 $I_A$ | $(-a:b:c)$ | $(-(y+z):z+x:x+y)$ | — |
内心が Spieker 中心に移ることは Spieker中心 の定理、Nagel 点が内心に移ることは Gergonne点とNagel点 の Nagel 線の定理である。
thm-mtp-main では「傍心」と「向かいの辺の中点」の組み合わせが効いている。以下、ex-mtp-start の三角形 $A(0,3)$、$B(4,0)$、$C(0,0)$ で、$M\left(\dfrac{18}{11},\dfrac{12}{11}\right)$ と比べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 傍心を使う | 傍心の代わりに内心 $I$ を中点と結ぶ | 3 本は $I$ を通り、交点は $M$ にならない(ex-mtp-cx-incenter) |
| 傍心と向かいの辺の中点を組にする | $I_A$ と $M_b$、$I_B$ と $M_c$、$I_C$ と $M_a$ を結ぶ | 3 本が 1 点を通らない(ex-mtp-cx-shift) |
| thm-mtp-gergonne で Gergonne 点を使う | Gergonne 点の代わりに Nagel 点を $\psi$ で移す | 移った先は内心で、$M$ ではない(ex-mtp-cx-nagel) |
| 正三角形でない | 正三角形 | $G_e=G=M$ となり、直線が決まらない(ex-mtp-equilateral) |
内心 $I(1,1)$ と中点 $M_a$、$M_b$、$M_c$ を結ぶ 3 本の直線は、どれも $I$ を通るので、$I$ で交わる。しかし $I(1,1)$ は $M\left(\dfrac{18}{11},\dfrac{12}{11}\right)$ と違う点である。傍心を内心に替えても「1 点を通る」ことは残るが、それは 3 本がはじめから $I$ を通るからで、交点は Mittenpunkt にならない。
$I_A(3,-3)$ と $M_b\left(0,\dfrac32\right)$、$I_B(-2,2)$ と $M_c\left(2,\dfrac32\right)$、$I_C(6,6)$ と $M_a(2,0)$ を結ぶ 3 本の直線をとる。直線の上の点はそれぞれ
$$
(3-2t,\ -3+3t),\qquad (-2+8u,\ 2-u),\qquad (2+2w,\ 3w)
$$
と書ける(向きは $\overrightarrow{I_AM_b}=\left(-3,\dfrac92\right)$、$\overrightarrow{I_BM_c}=\left(4,-\dfrac12\right)$、$\overrightarrow{I_CM_a}=(-4,-6)$ の実数倍)。1 本目と 2 本目の交点は、$3-2t=-2+8u$、$-3+3t=2-u$ を解いて $t=\dfrac{35}{22}$、交点 $\left(-\dfrac2{11},\dfrac{39}{22}\right)$ である。この点を 3 本目の式に入れると、$x$ 座標から $w=-\dfrac{12}{11}$、$y$ 座標は $3w=-\dfrac{36}{11}\ne\dfrac{39}{22}$ なので、3 本目はこの点を通らない。2 本ずつの交点は 3 つの別々の点になる(図 4)。
2 本目と 3 本目:$-2+8u=2+2w$、$2-u=3w$ から $u=2-3w$、$-2+16-24w=2+2w$、$w=\dfrac6{13}$ で、交点は $\left(\dfrac{38}{13},\dfrac{18}{13}\right)$ である。1 本目と 3 本目:$3-2t=2+2w$、$-3+3t=3w$ から $w=t-1$、$3-2t=2t$、$t=\dfrac34$ で、交点は $\left(\dfrac32,-\dfrac34\right)$ である。
直角三角形で、傍心と「隣の辺」の中点を結んだ 3 本の直線(赤・青・橙)。2 本ずつの交点(紫の×)は 3 つの別々の点になり、3 本は 1 点を通らない
Nagel 点は $N_a=(x:y:z)=(2:3:1)$ で、$N_a=\dfrac{2(0,3)+3(4,0)+1(0,0)}6=(2,1)$ である。$\psi(N_a)=\dfrac{3G-N_a}2=\dfrac{(4,3)-(2,1)}2=(1,1)$ で、これは内心 $I$ であって $M$ ではない。thm-mtp-gergonne の「Gergonne 点」を別の中心に替えると、移った先も別の点になる。
正三角形では $x=y=z$ なので $G_e=(yz:zx:xy)=(1:1:1)=G$、$M=(1:1:1)=G$ である。3 点が重なるので、thm-mtp-gergonne の「一直線」は決まらない。thm-mtp-main はそのまま成り立ち、3 本の直線は重心を通る(傍心と中点を結ぶ直線は中線である)。
3 つの傍心を頂点とする三角形を 傍心三角形 という(Bevan点)。Bevan点 で見たように、$A,B,C$ は傍心三角形の垂線の足で、辺 $BC$ は傍心三角形の辺 $I_BI_C$ に向かい合う「垂線の足を結んだ辺」である。このことから、直線 $I_AM_a$ は傍心三角形の中で特別な意味をもつ。
直線 $I_AM_a$、$I_BM_b$、$I_CM_c$ は、傍心三角形 $I_AI_BI_C$ の 3 本の類似中線(中線を角の二等分線で折り返した直線、類似重心)である。したがって Mittenpunkt $M$ は傍心三角形の類似重心である。
要点:$B$、$C$ は線分 $I_BI_C$ を直径とする円の上にあるので、方べきの定理から $I_AB\cdot I_AI_C=I_AC\cdot I_AI_B$ となる。$I_A$ での角の二等分線に関する折り返しと、$I_A$ を中心とする比 $k=\dfrac{I_AB}{I_AI_B}$ の相似拡大を続けた変換は $I_B,I_C$ を $B,C$ に移すので、辺 $I_BI_C$ の中点を $M_a$ に移し、中線を直線 $I_AM_a$ に移す。
段 1(円)。Bevan点 で見たように $B$ は $I_B$ から直線 $I_CI_A$ に下ろした垂線の足、$C$ は $I_C$ から直線 $I_AI_B$ に下ろした垂線の足なので、$\angle I_BBI_C=\angle I_BCI_C=90^\circ$ である。直径に対する円周角が直角であることの逆により、$B$ と $C$ は線分 $I_BI_C$ を直径とする円の上にある。
段 2(比)。$B$ は線分 $I_AI_C$ の上、$C$ は線分 $I_AI_B$ の上にある。直線 $I_AI_C$ と円の 2 つの交点 $B$、$I_C$ はどちらも $I_A$ から見て同じ向きにあるので、$I_A$ はこの円の外にある。方べきの定理(高校数学) により $I_AB\cdot I_AI_C=I_AC\cdot I_AI_B$ なので、$k=\dfrac{I_AB}{I_AI_B}=\dfrac{I_AC}{I_AI_C}$ とおける。
段 3(変換)。$I_A$ での角 $\angle I_BI_AI_C$ の二等分線に関する折り返しを $\rho$、$I_A$ を中心とする比 $k$ の相似拡大を $\varphi$ とし、$\sigma=\varphi\circ\rho$ とする。$\rho$ は半直線 $I_AI_B$ を半直線 $I_AI_C$ に移すので、$\sigma(I_B)$ は半直線 $I_AI_C$ の上で $I_A$ から距離 $k\cdot I_AI_B=I_AB$ の点、つまり $B$ である。同じく $\sigma(I_C)=C$ である。
段 4(中線の行き先)。$\rho$ も $\varphi$ も線分の中点を中点に移すので、辺 $I_BI_C$ の中点 $K_a$ は $\sigma$ で線分 $BC$ の中点 $M_a$ に移る。$\varphi$ は $I_A$ を通る直線を動かさないので、直線 $I_AM_a=\sigma(\text{直線 }I_AK_a)=\rho(\text{直線 }I_AK_a)$ である。つまり直線 $I_AM_a$ は、傍心三角形の中線 $I_AK_a$ を $I_A$ での角の二等分線で折り返した直線、すなわち類似中線である。$I_B$、$I_C$ についても同じである。3 本の類似中線が共有する点が類似重心なので、thm-mtp-main の点 $M$ は傍心三角形の類似重心である。$\square$
類似重心 の命題「類似中線の足と類似重心の重心座標」により、三角形の類似重心は辺の長さの 2 乗を重みにした点である。ex-mtp-start の傍心三角形では、$I_A$ の向かいの辺 $I_BI_C$ の長さの 2 乗が $8^2+4^2=80$、$I_B$ の向かいの辺 $I_CI_A$ が $3^2+9^2=90$、$I_C$ の向かいの辺 $I_AI_B$ が $5^2+5^2=50$ なので、類似重心は
$$
\frac{80(3,-3)+90(-2,2)+50(6,6)}{220}=\frac{(360,240)}{220}=\left(\frac{18}{11},\frac{12}{11}\right)
$$
で、$M$ と一致する。
MathWorld の頁 Wei26a には、Mittenpunkt が傍心三角形の類似重心であること(prop-mtp-symmedian)、Kimberling の番号が $X_9$ であること、$G_eG:GM=2:1$(thm-mtp-gergonne)のほか、$M$ が Spieker 中心 $S_p$ と垂心 $H$ を結ぶ直線の上にあること、内心 $I$ と類似重心 $K$ を結ぶ直線の上にあることが載っている。この 2 つはこの記事では証明しない。ex-mtp-start の三角形では、$H=C(0,0)$、$S_p=\left(\dfrac32,1\right)$、$M=\left(\dfrac{18}{11},\dfrac{12}{11}\right)$ で、$S_p$ と $M$ はどちらも直線 $y=\dfrac23x$ の上にあり、$H$ とあわせて一直線に並んでいる。
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