Mantelの定理(Mantel's theorem)とは、三角形を含まない $n$ 頂点の単純グラフの辺は $\lfloor n^2/4\rfloor$ 本以下であり、等号が成り立つのは頂点をほぼ半分ずつに分けた完全二部グラフ $K_{\lfloor n/2\rfloor,\lceil n/2\rceil}$ に限るという定理である。最大次数の頂点の近傍が独立集合になることから証明でき、同じ議論から、辺が最大値に近い三角形のないグラフは少数の辺を除くと二部グラフになること(安定性)が従う。辺が多いグラフの三角形の個数の下界や、最短の奇閉路による「最小次数が $2n/5$ より大きい三角形のないグラフは二部グラフ」という定理も得られる。Turánの定理の $K_3$ の場合で、極値グラフ理論の出発点である。
10 人のあいだに「知り合い」の関係をいくつか決めて、互いに知り合いの 3 人組が 1 つもないようにしたい。知り合いの組は最大でいくつまで作れるだろうか。10 人を 5 人ずつの 2 組に分け、組をまたぐ 25 組をすべて知り合いにすると、3 人のうち 2 人は同じ組に入るので、互いに知り合いの 3 人組はできない。実はこれが最大で、26 組の知り合いがあれば、どう選んでも互いに知り合いの 3 人組が現れる。しかも 25 組で 3 人組がないのは、5 人ずつの 2 組に分けた形に限られる。
一般に、$n$ 頂点のグラフが三角形を含まなければ辺は $\lfloor n^2/4\rfloor$ 本以下であり、等号が成り立つのは頂点をほぼ半分ずつに分けた完全二部グラフだけである。これが W. Mantel が 1907 年に示した Mantel の定理 で、ある部分グラフを含まないという条件のもとで辺の本数の最大値を問う極値グラフ理論の出発点である。この記事では、最大次数の頂点に注目する証明で等号の場合まで決め、そこから三角形の個数の下界、辺の本数が最大値に近いグラフが二部グラフに近いこと(安定性)、二部グラフでない三角形のないグラフの辺の本数、最小次数が大きい三角形のないグラフが二部グラフであることを導く。
この記事では、グラフはループも平行辺ももたない有限の無向の単純グラフとする。グラフ $G$ の頂点集合・辺集合を $V(G)$・$E(G)$、辺の本数を $e(G):=\lvert E(G)\rvert$ と書く。頂点 $v$ に隣接する頂点の集合を $N(v)$、その個数(次数(グラフ))を $d(v):=\lvert N(v)\rvert$ と書く。頂点の部分集合 $X,Y$ について、$X$ の中の 2 頂点を結ぶ辺の本数を $e(X)$、$X$ の頂点と $Y$ の頂点を結ぶ辺の本数を $e(X,Y)$ と書く($X\cap Y=\emptyset$ のときに使う)。
三角形を含まないことは、どの辺 $xy$ についても $x$ と $y$ に共通の隣接頂点がないこと、すなわち $N(x)\cap N(y)=\emptyset$ と同じである。また、各頂点の近傍 $N(v)$ が独立集合(グラフ)(どの 2 頂点も隣接しない集合)であることとも同じである。$N(v)$ の 2 頂点 $x,y$ が隣接すれば $v,x,y$ が三角形になるからである。
二部グラフは三角形を含まない。二部グラフの閉路の長さはすべて偶数であり(二部グラフ の定理「閉路の長さによる特徴付け」)、三角形は長さ 3 の閉路だからである。$a+b=n$ のとき、完全二部グラフ $K_{a,b}$ の辺は $ab$ 本である。
$a,b\ge0$ を整数とし、$n=a+b$ とする。このとき $ab\le\lfloor n^2/4\rfloor$ であり、等号が成り立つのは $\lvert a-b\rvert\le1$ のときに限る。特に $\lfloor n/2\rfloor\lceil n/2\rceil=\lfloor n^2/4\rfloor$ である。
$4ab=n^2-(a-b)^2$ であり、$a-b=n-2b$ は $n$ と同じ偶奇をもつ。$n$ が偶数なら $(a-b)^2\ge0$ で、等号は $a=b$ のときに限るので、$ab\le n^2/4=\lfloor n^2/4\rfloor$ である。$n$ が奇数なら $a-b$ は奇数で $(a-b)^2\ge1$、等号は $\lvert a-b\rvert=1$ のときに限るので、$ab\le(n^2-1)/4=\lfloor n^2/4\rfloor$ である。$\square$
$n\ge1$ とし、$G$ を三角形を含まない $n$ 頂点のグラフとする。このとき
$$
e(G)\le\left\lfloor\frac{n^2}{4}\right\rfloor
$$
であり、等号が成り立つのは $G$ が完全二部グラフ $K_{\lfloor n/2\rfloor,\lceil n/2\rceil}$ と同型であるときに限る。したがって $\operatorname{ex}(n,K_3)=\lfloor n^2/4\rfloor$ である。
対偶の形で言えば、$n$ 頂点のグラフの辺が $\lfloor n^2/4\rfloor$ 本より多ければ、そのグラフは三角形を含む。$K_{\lfloor n/2\rfloor,\lceil n/2\rceil}$ は三角形を含まず、lem-mantel-product によりちょうど $\lfloor n^2/4\rfloor$ 本の辺をもつので、上界は達成される。
$G$ の次数が最大の頂点 $v$ を 1 つとり、$\Delta:=d(v)$、$A:=N(v)$、$B:=V(G)\setminus A$ とおく。$\lvert A\rvert=\Delta$、$\lvert B\rvert=n-\Delta$ である。
$G$ は三角形を含まないので、$A=N(v)$ は独立集合であり、$e(A)=0$ である。よって $G$ の辺は、$A$ と $B$ を結ぶ辺か、$B$ の中の辺のどちらかであり、
$$
e(G)=e(A,B)+e(B)
$$
である。一方、$B$ の頂点の次数の和 $\sum_{x\in B}d(x)$ では、$A$ と $B$ を結ぶ辺は 1 回、$B$ の中の辺は両端で 2 回数えられるので、$\sum_{x\in B}d(x)=e(A,B)+2e(B)$ である。2 つの式から
$$
e(G)=\sum_{x\in B}d(x)-e(B)\le\sum_{x\in B}d(x)\le\lvert B\rvert\cdot\Delta=\lvert A\rvert\,\lvert B\rvert\le\left\lfloor\frac{n^2}4\right\rfloor
$$
を得る。2 つ目の不等号は各頂点の次数が最大次数 $\Delta$ 以下であることにより、最後の不等号は lem-mantel-product による。
等号の場合を調べる。$e(G)=\lfloor n^2/4\rfloor$ なら上の不等号はすべて等号である。1 つ目から $e(B)=0$ なので $B$ は独立集合である。$A$ も独立集合なので、$G$ の辺はすべて $A$ と $B$ を結ぶ。2 つ目から $B$ の各頂点の次数は $\Delta=\lvert A\rvert$ なので、$B$ の各頂点は $A$ のすべての頂点と隣接する。よって $G$ は部 $A,B$ をもつ完全二部グラフ $K_{\lvert A\rvert,\lvert B\rvert}$ である。3 つ目と lem-mantel-product の等号条件から $\bigl\lvert\lvert A\rvert-\lvert B\rvert\bigr\rvert\le1$ なので、$G$ は $K_{\lfloor n/2\rfloor,\lceil n/2\rceil}$ と同型である。逆に $K_{\lfloor n/2\rfloor,\lceil n/2\rceil}$ が等号を与えることは上で見た。$\square$
この証明の要点は、三角形を含まないグラフでは近傍が独立集合になるので、辺の端点がすべて「近傍の外」$B$ に少なくとも 1 つあることにある。$e(G)=\sum_{x\in B}d(x)-e(B)$ という等式は、後の安定性(thm-mantel-stability)でもう一度使う。
上界だけなら、ほかにも証明がある。部分グラフ の定理「三角形を含まないグラフの辺数の上界」は、辺 $xy$ について $d(x)+d(y)\le n$ であることを全部の辺について足し、Cauchy–Schwarzの不等式で次数の 2 乗の和を下から評価する証明を与えている。次は頂点数に関する帰納法による証明である。
要点:辺 $xy$ の両端 $x,y$ は共通の隣接頂点をもたないので、$x$ または $y$ に接続する辺は $xy$ を含めて高々 $n-1$ 本であり、$\lfloor(n-2)^2/4\rfloor+n-1=\lfloor n^2/4\rfloor$ から帰納法が進む。
$n$ に関する強い帰納法で $e(G)\le\lfloor n^2/4\rfloor$ を示す。$n\le2$ なら $e(G)\le\binom n2\le\lfloor n^2/4\rfloor$ である($n=1$ で $0$、$n=2$ で $1$)。$n\ge3$ とし、$G$ が辺をもたなければ明らかなので、辺 $xy$ をとる。三角形を含まないので $N(x)\cap N(y)=\emptyset$ であり、$N(x)\setminus\{y\}$ と $N(y)\setminus\{x\}$ は $V(G)\setminus\{x,y\}$ の交わらない部分集合だから、$(d(x)-1)+(d(y)-1)\le n-2$ である。$x$ または $y$ に接続する辺は、辺 $xy$ と、$x$ または $y$ を残りの頂点と結ぶ $(d(x)-1)+(d(y)-1)$ 本なので、高々 $n-1$ 本である。$x,y$ を取り除いたグラフ $G-\{x,y\}$ は三角形を含まない $n-2$ 頂点のグラフなので、帰納法の仮定により辺は $\lfloor(n-2)^2/4\rfloor$ 本以下である。よって
$$e(G)\le\left\lfloor\frac{(n-2)^2}4\right\rfloor+n-1=\left\lfloor\frac{n^2}4-n+1\right\rfloor+n-1=\left\lfloor\frac{n^2}4\right\rfloor$$
である(整数 $n-1$ を床関数の中に入れてよい)。$\square$
Mantel の定理は、辺が $\lfloor n^2/4\rfloor$ 本を超えると三角形が少なくとも 1 つできることを述べる。辺がさらに多ければ、三角形はたくさんできる。
$G$ を $n$ 頂点、$m$ 本の辺をもつグラフ($n\ge1$)とし、三角形の個数を $T(G)$ とする。このとき
$$
T(G)\ge\frac{4m}{3n}\left(m-\frac{n^2}4\right)
$$
である。
辺 $xy$ を含む三角形は、$x$ と $y$ の共通の隣接頂点 $z$ と 1 対 1 に対応する。$N(x)$ と $N(y)$ はどちらも $n$ 個の頂点の部分集合なので
$$
\lvert N(x)\cap N(y)\rvert=\lvert N(x)\rvert+\lvert N(y)\rvert-\lvert N(x)\cup N(y)\rvert\ge d(x)+d(y)-n
$$
である。三角形は 3 本の辺を含むので、すべての辺について足すと各三角形がちょうど 3 回数えられ、
$$
3T(G)=\sum_{xy\in E(G)}\lvert N(x)\cap N(y)\rvert\ge\sum_{xy\in E(G)}\bigl(d(x)+d(y)\bigr)-nm
$$
となる。右辺の和では頂点 $x$ の項 $d(x)$ が $x$ に接続する辺の本数、すなわち $d(x)$ 回現れるので、和は $\sum_xd(x)^2$ に等しい。握手補題(次数(グラフ) の記事)により $\sum_xd(x)=2m$ なので、Cauchy–Schwarzの不等式により $\sum_xd(x)^2\ge(2m)^2/n$ である。よって
$$
3T(G)\ge\frac{4m^2}n-nm=\frac{4m}{n}\left(m-\frac{n^2}4\right)
$$
である。$\square$
$m>n^2/4$ なら右辺は正なので $T(G)\ge1$ となり、Mantel の定理の上界がもう一度得られる。$m\ge(\frac14+\varepsilon)n^2$ なら $T(G)\ge\frac43\varepsilon\bigl(\frac14+\varepsilon\bigr)n^3$ であり、三角形の個数は $n^3$ の定数倍に達する。辺の密度が閾値を超えると、禁止した部分グラフが 1 つではなく大量に現れるこの現象は、極値グラフ理論で超飽和(supersaturation)とよばれる。
辺がちょうど $\lfloor n^2/4\rfloor+1$ 本のとき、thm-mantel-many-triangles の下界は、$n$ が偶数ならおよそ $n/3$、奇数ならおよそ $n/4$ である。実際には三角形は $\lfloor n/2\rfloor$ 個以上あることが知られている(Zha23 演習 1.1.8 に主張がある。この記事では証明しない)。この値は最良である。$K_{\lfloor n/2\rfloor,\lceil n/2\rceil}$ の大きいほうの部 $B$ の 2 頂点 $u,w$ を結ぶ辺を 1 本加えると、三角形は $uw$ を含むものだけで、その 3 つ目の頂点は $u,w$ の共通の隣接頂点、すなわち小さいほうの部の $\lfloor n/2\rfloor$ 個の頂点である($n\ge3$ とする)。
辺の本数が最大値に近い三角形のないグラフは、最大のグラフ $K_{\lfloor n/2\rfloor,\lceil n/2\rceil}$ に形も近い。
$k\ge0$ を整数とし、$G$ を三角形を含まない $n$ 頂点のグラフで $e(G)\ge\lfloor n^2/4\rfloor-k$ を満たすものとする。このとき、$G$ から高々 $k$ 本の辺を取り除いて二部グラフにできる。
prf-mantel-main と同じく、最大次数の頂点 $v$ をとり $A:=N(v)$、$B:=V(G)\setminus A$ とおく。そこで示した等式と不等式により
$$
\left\lfloor\frac{n^2}4\right\rfloor-k\le e(G)=\sum_{x\in B}d(x)-e(B)\le\lvert A\rvert\,\lvert B\rvert-e(B)\le\left\lfloor\frac{n^2}4\right\rfloor-e(B)
$$
なので、$e(B)\le k$ である。$B$ の中の $e(B)$ 本の辺を取り除くと、$A$ も $B$ も独立集合になるので、残りのグラフは部 $A,B$ をもつ二部グラフである。$\square$
二部グラフでない三角形のないグラフについて、辺の本数と最小次数の上界を求める。どちらも、最も短い奇数の長さの閉路の周りの隣接の仕方による。
$G$ を三角形を含まず二部グラフでないグラフとし、$C$ を $G$ の奇数の長さの閉路のうち最も短いものとする。$C$ の長さを $2k+1$ とすると $k\ge2$ であり、次が成り立つ。
二部グラフでないグラフは奇数の長さの閉路をもつ(二部グラフ の定理「閉路の長さによる特徴付け」)ので $C$ は存在する。三角形を含まないので長さは $3$ でなく、$2k+1\ge5$ である。$C$ の頂点を巡る順に $c_0,c_1,\dots,c_{2k}$ とする。
$n\ge5$ とし、$G$ を三角形を含まず二部グラフでない $n$ 頂点のグラフとする。このとき
$$
e(G)\le\left\lfloor\frac{(n-1)^2}4\right\rfloor+1
$$
であり、この上界は達成される。
lem-mantel-odd-cycle の $C$(長さ $2k+1$、$k\ge2$)をとり、$C$ の外の頂点の個数を $r:=n-2k-1\ge0$ とする。$G$ の辺を、$C$ の頂点どうしを結ぶもの、$C$ と外を結ぶもの、外どうしを結ぶものに分ける。補題の 1 により前者は $2k+1$ 本、補題の 2 により 2 番目は $2r$ 本以下である。外の頂点で誘導される部分グラフは三角形を含まない $r$ 頂点のグラフなので、thm-mantel-main により辺は $r^2/4$ 本以下である。よって
$$
e(G)\le\frac{r^2}4+2r+2k+1
$$
である。$n-1=r+2k$ を使うと
$$
\left(\frac{(n-1)^2}4+1\right)-\left(\frac{r^2}4+2r+2k+1\right)=rk+k^2-2r-2k=(r+k)(k-2)\ge0
$$
なので $e(G)\le(n-1)^2/4+1$ であり、$e(G)$ は整数だから主張の上界が従う。
達成されること:長さ 5 の閉路の頂点 $1,2,3,4,5$ を、それぞれ大きさ $1,1,1,x,y$($x=\lfloor(n-3)/2\rfloor$、$y=\lceil(n-3)/2\rceil$)の独立集合 $P_1,\dots,P_5$ に置き換え、$P_i$ と $P_{i+1}$(添字は 5 を法とする)の頂点をすべて結んだグラフを $G_n$ とする。隣接する 2 頂点は隣り合う異なる $P_i$ に属するので、三角形があれば閉路の上で互いに隣り合う 3 つの $P_i$ があることになり、長さ 5 の閉路にそのような 3 頂点はないので、$G_n$ は三角形を含まない。$P_1,\dots,P_5$ から 1 頂点ずつ選ぶと長さ 5 の閉路があるので二部グラフでない。辺は $1+1+x+xy+y=xy+(n-3)+2$ 本で、lem-mantel-product により $xy=\lfloor(n-3)^2/4\rfloor$ なので、$\lfloor(n-3)^2/4\rfloor+(n-3)+1=\lfloor(n-1)^2/4\rfloor$ と合わせて $e(G_n)=\lfloor(n-1)^2/4\rfloor+1$ である。$\square$
$\lfloor n^2/4\rfloor$ と比べると、二部グラフでないことの代償はおよそ $n/2$ 本である。したがって、三角形を含まず辺が $\lfloor(n-1)^2/4\rfloor+1$ 本より多い $n$ 頂点のグラフは二部グラフである。
$G$ を三角形を含まない $n$ 頂点のグラフとし、すべての頂点の次数が $2n/5$ より大きいとする。このとき $G$ は二部グラフである。仮定の「$2n/5$ より大きい」を「$2n/5$ 以上」に弱めると成り立たない。
$G$ が二部グラフでないとして、lem-mantel-odd-cycle の $C$(長さ $2k+1\ge5$)をとる。$C$ の頂点の次数の和 $\sum_{c\in C}d(c)$ は、各頂点 $u$ について「$u$ に隣接する $C$ の頂点の個数」を足したものに等しい。補題により、この個数は $C$ の頂点では $2$、$C$ の外の頂点では高々 $2$ なので
$$
\sum_{c\in C}d(c)\le2n
$$
である。一方、仮定から左辺は $(2k+1)\cdot\frac{2n}5$ より大きく、$2k+1\ge5$ なので $2n$ 以上である。これは矛盾である。
後半:$t\ge1$ とし、長さ 5 の閉路の各頂点を大きさ $t$ の独立集合に置き換えた(prf-mantel-nonbipartite で $x=y=1$ の代わりにすべての大きさを $t$ にした)グラフを考える。頂点は $n=5t$ 個で、三角形を含まず、二部グラフでない(長さ 5 の閉路を含む)。各頂点は隣り合う 2 つの集合の $2t=2n/5$ 個の頂点と隣接する。$\square$
$\operatorname{ex}(n,K_3)=\lfloor n^2/4\rfloor$ は $n=1,2,\dots,8$ で $0,1,2,4,6,9,12,16$ である。極値グラフは $K_{0,1},K_{1,1},K_{1,2},K_{2,2},K_{2,3},K_{3,3},K_{3,4},K_{4,4}$ である。$K_{2,2}$ は長さ 4 の閉路、$K_{1,2}$ は長さ 2 の道である。
$n=6$ で辺が $10$ 本なら、thm-mantel-many-triangles により三角形は $\frac{40}{18}\cdot1>2$ 個より多く、整数なので $3$ 個以上ある。$K_{3,3}$ の同じ部の 2 頂点を結ぶとちょうど $3$ 個の三角形ができるので、この場合は下界が最良である。
$n=5$ では、二部グラフでない三角形のないグラフの辺は thm-mantel-nonbipartite により $\lfloor16/4\rfloor+1=5$ 本以下で、長さ 5 の閉路 $C_5$ がちょうど 5 本である。
次の表の各行は、定理の仮定を 1 つだけ外したときに結論が成り立たなくなる例である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 三角形を含まない | $n\ge3$ の完全グラフ $K_n$ | 辺の本数 $\binom n2$ は $\lfloor n^2/4\rfloor$ より多い |
| 平行辺をもたない | 2 頂点を $N$ 本の平行辺で結んだ多重グラフ | 三角形はないが辺は $N$ 本で、いくらでも多い |
| 辺が $\lfloor n^2/4\rfloor$ 本より多い | $K_{\lfloor n/2\rfloor,\lceil n/2\rceil}$(ちょうど $\lfloor n^2/4\rfloor$ 本) | 三角形を含む |
| 等号の特徴づけの「辺の本数が最大」(「辺を加えられない」に替える) | 長さ 5 の閉路 $C_5$(辺を 1 本も加えられないが 5 本) | 完全二部グラフである |
| thm-mantel-min-degree の最小次数が $2n/5$ より大きい | 長さ 5 の閉路の各頂点を $t$ 点に置き換えたグラフ(最小次数 $2n/5$) | 二部グラフである |
1 行目:$\binom n2-\lfloor n^2/4\rfloor\ge\frac{n(n-1)}2-\frac{n^2}4=\frac{n(n-2)}4>0$($n\ge3$)。2 行目:三角形には相異なる 3 頂点が要るので、2 頂点のグラフには三角形がない。この記事の議論は「隣接する 2 頂点の間の辺は 1 本」を使っている。3 行目:lem-mantel-product と、二部グラフが三角形を含まないこと。4 行目:$C_5$ に辺を加えると三角形ができることと、5 本が $\lfloor25/4\rfloor=6$ 本より少ないことは Turánの定理 の例「反例:辺を加えられないが最大ではないグラフ」で確かめた。辺を加えられない(極大な)グラフと辺の本数が最大のグラフは異なる。5 行目:prf-mantel-min-degree の後半。
三角形の代わりに $r+1$ 頂点の完全グラフ $K_{r+1}$ を禁止すると、辺の本数の最大値は頂点をほぼ均等に $r$ 組に分けた完全 $r$ 部グラフの辺の本数になる。これが Turánの定理 であり、Mantel の定理は $r=2$ の場合である。一般のグラフ $H$ を禁止したときの最大値 $\operatorname{ex}(n,H)$ を調べるのが極値グラフ理論である。三角形は長さ 3 の閉路でもあり、長さ $2k+1$ の閉路 $C_{2k+1}$ を禁止しても、$n$ が十分大きければ最大値は $\lfloor n^2/4\rfloor$ で、極値グラフは $K_{\lfloor n/2\rfloor,\lceil n/2\rceil}$ である(Zha23 定理 1.6.1。この記事では証明しない)。これに対し、偶数の長さの閉路を禁止すると辺の本数は $n^2$ よりずっと小さく抑えられる。
三角形を含まないグラフの辺の本数の最大値は、W. Mantel が 1907 年に決定した(Zha23 §1.1、p. 12)。この結果は極値グラフ理論の出発点とみなされている。P. Turán は 1941 年に $K_{r+1}$ を禁止する場合に一般化した(同書 定理 1.2.4、p. 15)。この記事の最大次数の頂点に注目する証明と、部分グラフ の記事の Cauchy–Schwarz の不等式による証明は、Zha23 定理 1.1.1 の 2 つの証明(pp. 12–13)と同じ筋であり、等号の場合の議論は同書の注意 1.1.2(p. 13)にある。三角形の個数・安定性・二部グラフでない場合・最小次数の定理は同書の演習 1.1.4–1.1.7(p. 14)として出されているものを、この記事で証明した。
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