E8多様体(E8 manifold)とは、交叉形式が $E_8$ 形式である単連結な閉 4 次元位相多様体のことである。$E_8$ 形式は $E_8$ 型の Cartan 行列を Gram 行列にもつ、偶でユニモジュラ、正定値で符号数 $8$ の形式である。Freedman は、$S^2$ 上の円板束 8 個を $E_8$ 型の木に沿って plumbing した滑らかな多様体に、境界の Poincaré ホモロジー球面を囲む可縮な位相多様体をかぶせてこれを構成し、同相を除いて一意であることを示した。符号数 $8$ が Rokhlin の定理に反するので、E8 多様体は滑らかな構造も PL 構造ももたず、PL 多様体とホモトピー同値にもならない。Kirby–Siebenmann 不変量は $1$ で、Casson により三角形分割もできないが、1 点を除くと滑らかな構造をもつ。
前提知識: 位相多様体, Rokhlinの定理, ホモロジー球面, Kirby–Siebenmann不変量, Poincaré双対
$E_8$ 多様体($E_8$ manifold)は、交叉形式が $E_8$ 形式である単連結な閉 $4$ 次元位相多様体である。Freedman が 1982 年に構成し、同相を除いて一意であることを示した。$E_8$ 形式は偶でユニモジュラ、正定値で符号数 $8$ の形式で、$E_8$ 型のルート系の Cartan 行列を Gram 行列にもつ。
$E_8$ 多様体は、$4$ 次元で位相多様体と滑らかな多様体が食い違うことを示す基本的な例である。
$\mathbb{R}^8$ の標準内積を $x\cdot y$ と書き、$h:=(\tfrac12,\dots,\tfrac12)\in\mathbb{R}^8$ とおく。形式の用語(ユニモジュラ・偶・符号数・定値)は Rokhlinの定理 の定義「ユニモジュラ・偶・符号数」に従う。
$$
\Gamma_8:=\Bigl\{x\in\mathbb{R}^8:\ \text{すべての }x_i\in\mathbb{Z}\text{ か、すべての }x_i\in\mathbb{Z}+\tfrac12\text{ で、}\textstyle\sum_ix_i\in2\mathbb{Z}\Bigr\}
$$
に標準内積を制限した形式 $(\Gamma_8,\cdot)$ を $E_8$ 形式という。
次の $8$ つのベクトルを使う($e_i$ は標準基底)。
$$
b_k:=e_{8-k}-e_{7-k}\ (k=1,\dots,6),\qquad b_7:=h-e_2-e_3-e_4-e_5-e_6-e_7,\qquad b_8:=e_1+e_2.
$$
すなわち $b_1=e_7-e_6$、$b_2=e_6-e_5$、…、$b_6=e_2-e_1$、$b_7=(\tfrac12,-\tfrac12,-\tfrac12,-\tfrac12,-\tfrac12,-\tfrac12,-\tfrac12,\tfrac12)$ である。また $C$ を、$E_8$ 型の木
$$
b_1-b_2-b_3-b_4-b_5-b_6-b_7,\qquad b_8-b_5
$$
($7$ 頂点の道の $b_5$ にもう 1 頂点 $b_8$ をつけた木)の Cartan 行列、すなわち対角成分が $2$、木で隣り合う $b_i$、$b_j$ に対応する成分が $-1$、ほかが $0$ の $8$ 次の対称行列とする:
$$
C=\begin{pmatrix}
2&-1&0&0&0&0&0&0\\
-1&2&-1&0&0&0&0&0\\
0&-1&2&-1&0&0&0&0\\
0&0&-1&2&-1&0&0&0\\
0&0&0&-1&2&-1&0&-1\\
0&0&0&0&-1&2&-1&0\\
0&0&0&0&0&-1&2&0\\
0&0&0&0&-1&0&0&2
\end{pmatrix}.
$$
1. $D_8:=\{x\in\mathbb{Z}^8:\sum_ix_i\in2\mathbb{Z}\}$ は $\mathbb{Z}^8$ の部分群である。$x\in(\mathbb{Z}+\frac12)^8$ なら $x-h\in\mathbb{Z}^8$ で $\sum_i(x_i-h_i)=\sum_ix_i-4$ なので、$\Gamma_8=D_8\cup(h+D_8)$ である。$2h=(1,\dots,1)\in D_8$(成分の和 $8$)なので、$(h+d)+(h+d')=2h+d+d'\in D_8$、$-(h+d)=h+(-2h-d)\in h+D_8$ となり、$\Gamma_8$ は部分群である。
$d,d'\in D_8$ について、$d\cdot d'\in\mathbb{Z}$、$(h+d)\cdot d'=\frac12\sum_id'_i+d\cdot d'\in\mathbb{Z}$($\sum_id'_i$ は偶数)、$(h+d)\cdot(h+d')=2+\frac12\sum_id_i+\frac12\sum_id'_i+d\cdot d'\in\mathbb{Z}$ である($h\cdot h=8\cdot\frac14=2$)。よって内積は整数値である。さらに $d\cdot d=\sum_id_i^2\equiv\sum_id_i\equiv0$、$(h+d)\cdot(h+d)=2+\sum_id_i+d\cdot d\equiv0\pmod2$ なので偶である。
2. $b_1,\dots,b_6,b_8$ は整数成分で成分の和が $0$ または $2$ なので $D_8$ に入り、$b_7$ は半整数成分で和が $-2$ なので $h+D_8$ に入る。内積を直接計算すると、$b_i\cdot b_i=2$、木で隣り合う組は $-1$、ほかの組は $0$ で、Gram 行列は $C$ である(たとえば $b_5\cdot b_8=(e_3-e_2)\cdot(e_1+e_2)=-1$、$b_6\cdot b_7=(e_2-e_1)\cdot b_7=-\frac12-\frac12=-1$、$b_7\cdot b_8=\frac12-\frac12=0$)。
$\det C=1$ を示す。一般に、対称行列 $M$ の第 1 行が $(2,-1,0,\dots,0)$ なら、第 1 行で展開し、さらに第 $(1,2)$ 余因子の小行列を第 1 列で展開して
$$
\det M=2\det M_{\hat1}-\det M_{\hat1\hat2}
$$
を得る($M_{\hat1}$ は第 1 行・列を、$M_{\hat1\hat2}$ は第 1・2 行・列を除いたもの)。$C$ から $b_1,\dots,b_{8-k}$ に対応する行と列を除いた行列を $T_k$($k$ 次)とすると、$b_{9-k}$ は残りの木の端の頂点なので、この式から $\det T_k=2\det T_{k-1}-\det T_{k-2}$($k=5,\dots,8$)である。$T_4$ は道 $b_8-b_5-b_6-b_7$ の Cartan 行列で、$T_3$ は $b_6-b_7$ の道と孤立した $b_8$ の Cartan 行列の直和である。$m$ 頂点の道の Cartan 行列の行列式は、同じ漸化式と $1$ 頂点で $2$、$2$ 頂点で $3$ から $m+1$ なので、$\det T_4=5$、$\det T_3=3\cdot2=6$ である。よって
$$
\det T_5=2\cdot5-6=4,\quad\det T_6=2\cdot4-5=3,\quad\det T_7=2\cdot3-4=2,\quad\det C=\det T_8=2\cdot2-3=1
$$
である。
$\det C\ne0$ なので $b_1,\dots,b_8$ は $\mathbb{R}^8$ の基底である。$x\in\Gamma_8$ を $x=\sum_ic_ib_i$($c_i\in\mathbb{R}$)と書くと、$x\cdot b_j=\sum_ic_iC_{ij}$ なので、$c=C^{-1}(x\cdot b_1,\dots,x\cdot b_8)^{\mathsf T}$ である。1 により $x\cdot b_j\in\mathbb{Z}$ で、$\det C=1$ なので $C^{-1}$(余因子行列)は整数行列であり、$c_i\in\mathbb{Z}$ となる。よって $b_1,\dots,b_8$ は $\Gamma_8$ の $\mathbb{Z}$ 基底で、Gram 行列 $C$ の行列式は $1$、$E_8$ 形式はユニモジュラである。
3. 標準内積の制限なので $x\ne0$ なら $x\cdot x>0$ で、正定値である。階数は $8$ なので符号数は $8$ である。
4. 1 により $x\cdot x$ は偶数なので $1$ にならない。$x\cdot x=2$ となる $x$ は、$D_8$ では $\pm e_i\pm e_j$($i< j$)の $4\binom82=112$ 個、$h+D_8$ では成分がすべて $\pm\frac12$ で成分の和 $4-m$($m$ は負の成分の個数)が偶数、すなわち $m$ が偶数のもの $2^7=128$ 個で、合わせて $240$ 個である。$8\langle1\rangle$ には $x\cdot x=1$ となる元(基底)があるので、$E_8$ 形式と同型でない。$\square$
文献によっては非対角成分を $+1$ にした行列を $E_8$ の行列とする(FNOP25 p. 60、Kir89 Ch. II §3、p. 24)。木は 2 色に塗り分けられるので、片方の色の基底ベクトルの符号を反転すれば非対角成分の符号がそろって反転し、同型な形式になる。$E_8$ 形式は、階数 $8$ の偶でユニモジュラな正定値形式として同型を除いてただ 1 つである(Kir89 Ch. II §3 の表、p. 26)。名前は、$C$ が例外型の Lie 環 $E_8$ の Cartan 行列であることによる(FNOP25 p. 60、Kir89 p. 24。ルート系)。
向き付けられた閉 $4$ 次元位相多様体 $M$ の交叉形式 $Q_M$ と符号数 $\sigma(M)$ は Rokhlinの定理 の記事の意味とする。単連結な閉多様体では $H^2(M)$ はねじれをもたず、$Q_M$ は $H^2(M)$ の上のユニモジュラな形式である。
単連結な閉 $4$ 次元位相多様体 $V$ で、ある向きについて交叉形式 $Q_V$ が $E_8$ 形式と同型であるものを $E_8$ 多様体という。
$E_8$ 多様体は存在し、同相を除いて一意である。
この定理は同相類についての主張である。$E_8$ 形式は偶形式で符号数が $8$ であり、符号数が $16$ で割り切れないので、Rokhlin の定理により $E_8$ 多様体は滑らかな構造をもたない(thm-e8-nonsmooth)。したがって、位相多様体の分類と滑らかな多様体の分類とは、$4$ 次元では大きく異なる。
これは Freedman(1982)の単連結な閉 $4$ 次元多様体の分類の特別な場合で、FNOP25 Theorem 12.2(p. 93。$E_8$ 形式は偶なので Kirby–Siebenmann 不変量は $\sigma/8=1$ に決まり、形式だけで同相類が決まる)、Rud01 Theorem 7.2(p. 42)、Kir89 Ch. III Theorem 2.1(p. 31)による。この記事では証明しない。
構成を述べる。$S^2$ の接円板束(Euler 数 $2$ の $D^2$ 束)$8$ 個を、$E_8$ 型の木に沿って plumbing した滑らかなコンパクト $4$ 次元多様体を $\Pi$ とする。$\Pi$ は単連結で、$H_2(\Pi)\cong\mathbb{Z}^8$ は $8$ 本の零切断の球面で生成され、交叉形式は $E_8$ 形式であり、境界 $\partial\Pi$ はホモロジー $3$ 球面(向きを除いて Poincaré ホモロジー球面)である(Kos93 Ch. VI §12、p. 122、Kir89 Ch. II §3、pp. 23–24、KSch79 pp. 114–116、Rud01 Comment 7.3、p. 42)。
任意のホモロジー $3$ 球面は、コンパクトで可縮な位相的 $4$ 次元多様体の境界になる。
位相的という条件が本質的である。Poincaré ホモロジー球面は、滑らかなコンパクトで可縮な $4$ 次元多様体の境界にならない(Rokhlinの定理 の命題「Poincaré ホモロジー球面は滑らかなホモロジー球体を囲まない」)が、位相的には囲む。この違いが、下の $E_8$ 多様体の構成の鍵になる。
これは Freedman の定理で、FNOP25 p. 74(Freedman の論文の Theorem 1.4 を引く)、Kir89 Ch. III §2(p. 31)による。この記事では証明しない。
$C$ を $\partial C\cong\partial\Pi$ となるコンパクトで可縮な位相的 $4$ 次元多様体とし(thm-e8-contractible)、境界の同相写像で貼った空間を $V:=\Pi\cup_\partial C$ とする。$V$ は単連結な閉 $4$ 次元位相多様体で、交叉形式は $E_8$ 形式である。すなわち $V$ は $E_8$ 多様体である。
境界をもつ位相多様体の境界にはカラー近傍がある(FNOP25 Theorem 2.16、p. 13)ので、2 つのコンパクト多様体を境界の同相写像で貼った $V$ は境界のないコンパクトな $4$ 次元位相多様体である。
単連結。 $V$ を、$\Pi$、$C$ にそれぞれ相手側のカラーを足した開集合 $A$、$B$ の和に書くと、$A\simeq\Pi$、$B\simeq C$ で、$A\cap B\simeq\partial\Pi$ は弧状連結である。Van Kampenの定理 により $\pi_1(A)*\pi_1(B)\to\pi_1(V)$ は全射で(Hat02 Theorem 1.20、p. 43)、$\pi_1(\Pi)=1$、$\pi_1(C)=1$ なので $\pi_1(V)=1$ である。
交叉形式。 $C$ は可縮なので $H^1(C)=H^2(C)=0$ である。これは Rokhlinの定理 の命題「Poincaré ホモロジー球面は滑らかなホモロジー球体を囲まない」の証明の段 1 の仮定(貼る相手のホモロジーが 1 点と同じ)そのもので、その段 1 の議論は滑らかさを使わない。よって制限 $H^2(V)\to H^2(\Pi)$ は $Q_V$ から $Q_\Pi$ への同型を与え、$Q_V$ は $E_8$ 形式と同型である。$\square$
thm-e8-freedman の一意性により、どの $E_8$ 多様体もこの $V$ と同相である。以下 $V$ で $E_8$ 多様体を表す。$V$ は単連結で交叉形式が偶なので spin である(FNOP25 Remark 8.9、pp. 64–65)。
1. PL の閉 $4$ 次元多様体 $N$ とホモトピー同値写像 $f\colon N\to V$ があったとする。$f$ は基本群とホモロジー・コホモロジーの同型を引き起こす(ホモトピー同値 の命題「基本群・ホモロジーへの帰結」)ので、$N$ は連結で単連結である。単連結な多様体は向き付け可能で(Hat02 Proposition 3.25、p. 234)、$f_*\colon H_4(N)\cong\mathbb{Z}\to H_4(V)\cong\mathbb{Z}$ は同型なので、$f_*[N]=[V]$ となるように $N$ の向きを選べる。$a,b\in H^2(V)$ について、カップ積の自然性から
$$
Q_N(f^*a,f^*b)=\langle f^*(a\smile b),[N]\rangle=\langle a\smile b,f_*[N]\rangle=Q_V(a,b)
$$
であり、$f^*\colon H^2(V)\to H^2(N)$ は同型なので、$Q_N$ は $Q_V\cong E_8$ と同型である。とくに $Q_N$ は偶で、$\sigma(N)=8$ である(prop-e8-form の 3)。
$N$ は単連結で $Q_N$ は偶なので、$w_2(N)=0$ である(FNOP25 Remark 8.9、pp. 64–65、Kir89 Ch. II Lemma 4.1、p. 27)。また向き付け可能なので $w_1(N)=0$ である。PL の閉 $4$ 次元多様体で $w_1=w_2=0$ なら符号数は $16$ の倍数である(Rokhlinの定理。PL の場合は Rud01 Theorem 7.1、p. 42)。$\sigma(N)=8$ はこれに反する。
滑らかな閉多様体は PL 構造をもつ(Whitehead三角形分割)ので、滑らかな場合も PL の場合に含まれる。
2. $V$ が PL 構造(または滑らかな構造)をもてば、その構造を入れた $V$ と恒等写像が 1 の $N$、$f$ を与えるので矛盾する。$\square$
2 は FNOP25 Theorem 8.10(p. 65)、Rud01 Corollary 7.4(p. 42)の形である。1 はそれより強く、ホモトピー型のレベルですでに滑らかな多様体から外れていることを示す。$4$ 次元の閉多様体では、交叉形式が同型な単連結閉多様体どうしはホモトピー同値なので(FNOP25 Theorem 12.1、p. 93)、1 は「$E_8$ 形式は単連結で PL(または滑らか)な閉 $4$ 次元多様体の交叉形式にならない」と同じことである(Rokhlinの定理 の系「偶な交叉形式をもつ滑らかな閉多様体」)。
$\kappa(V)=1$ である。
次の 3 つの事実を使う(いずれも FNOP25。この記事では証明しない)。
spin な閉多様体では $\kappa=\sigma/8\bmod2$ である(Kirby–Siebenmann不変量 の定理「符号数との関係」)ので、$\sigma(V)=8$ からも $\kappa(V)=1$ が従う。上の証明は、この 1 は可縮な部分 $C$ に集中していて、その原因は境界の Rokhlin 不変量である、ということを示している。$\kappa(V)\ne0$ から、Kirby–Siebenmann不変量 の記事の命題「$E_8$ 多様体と Euclid 空間・トーラスの積」により、$V\times\mathbb{R}^k$ と $V\times T^k$($k\ge1$)も PL 構造をもたない。
$E_8$ 多様体は三角形分割できない(単体複体の多面体と同相にならない)。
この定理は、$E_8$ 多様体が滑らかな構造をもたないだけでなく、三角形分割という、より弱い構造ももたないことを述べる。4 次元の位相多様体では、三角形分割できることと PL 構造をもつことが結び付く(下の説明)ので、位相多様体と PL 多様体の差がここに現れる。
これは Casson の定理で、Rud01 Examples 21.6(p. 85)、Man16 §2.2(p. 3。Casson 不変量を使う)による。この記事では証明しない。Rud01 Examples 21.6 は、$4$ 次元の位相多様体が三角形分割できれば PL 構造をもつことを述べ、その特別な場合として $V$ が三角形分割できないことを導いている。$V$ は 三角形分割可能な多様体 の段と位相多様体の段の差を示す $4$ 次元の例である。
一方、コンパクトでない連結な $4$ 次元位相多様体は滑らかな構造をもつ(Freedman–Quinn。FNOP25 Theorem 9.1、p. 67)。とくに $V$ から 1 点を除いた $V\setminus\{x\}$ は滑らかな構造をもつ。thm-e8-nonsmooth の障害は、閉多様体の $4$ 次元のホモロジー(基本類)を使うので、1 点を除くと消える。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| コンパクト | $V\setminus\{x\}$ | 交叉形式が $E_8$ の単連結 $4$ 次元多様体は滑らかな構造をもたない |
| 境界がないこと | plumbing $\Pi$ | 交叉形式が $E_8$ の単連結 $4$ 次元多様体は滑らかな構造をもたない |
| 符号数が $16$ で割って $8$ 余ること | $V\#V$ | Rokhlin の定理で妨げられなければ滑らかな構造がある |
| 次元 $4$ | $V\times S^1$ | 三角形分割できれば PL 構造をもつ |
| 交叉形式が偶 | $\mathbb{C}P^2$ と、それとホモトピー同値で $\kappa=1$ の閉多様体 | 交叉形式が同型な単連結閉多様体は同相 |
1 行目:$V\setminus\{x\}$ は単連結で($4$ 次元多様体から 1 点を除いても基本群は変わらない)、$H_2(V\setminus\{x\})\cong H_2(V)$ の上の交叉形式は $E_8$ 形式のままである。コンパクトでない連結な $4$ 次元多様体なので滑らかな構造をもつ(FNOP25 Theorem 9.1、p. 67)。thm-e8-nonsmooth の証明は閉多様体の基本類と Rokhlin の定理を使っており、コンパクト性を外すと成り立たない。
2 行目:$\Pi$ は滑らかで単連結、交叉形式は $E_8$ 形式だが、境界がある。Rokhlin の定理は閉多様体についての定理なので、$\sigma(\Pi)=8$ と矛盾しない。
3 行目:$V\#V$ の符号数は $16$ で、thm-e8-nonsmooth の証明で使った「$\sigma\equiv8\pmod{16}$」が成り立たない。それでも滑らかな構造はない(Donaldson)。Rokhlin の定理は滑らかさの必要条件にすぎない。
4 行目:$4$ 次元では三角形分割できる位相多様体は PL 構造をもつ(Rud01 Examples 21.6、p. 85)が、$5$ 次元では $V\times S^1$ が三角形分割できるのに PL 構造をもたない。
5 行目:$\mathbb{C}P^2$ とホモトピー同値で Kirby–Siebenmann 不変量が $1$ の閉 $4$ 次元多様体がある(FNOP25 Lemma 9.6、p. 74)。交叉形式はどちらも $\langle1\rangle$ だが、$\kappa$ が違うので同相でない。thm-e8-freedman の一意性で交叉形式だけから同相類が決まったのは、$E_8$ 形式が偶で $\kappa$ が $\sigma/8$ に決まるからである(FNOP25 Theorem 12.2、p. 93)。奇な形式ではそれぞれちょうど 2 つの同相類がある。
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