縮閉線

同義語:evolute

概要

縮閉線(evolute)とは、曲線の各点の曲率円の中心(曲率中心)が描く曲線である。速さと曲率 $\kappa$ が $0$ にならない 3 回微分可能な曲線 $P(t)$ では、左向きの単位法ベクトル $\vec N$ を使って $C(t)=P(t)+\frac{1}{\kappa(t)}\vec N(t)$ と表される。曲率半径 $R=\frac1\kappa$ について $C'=R'\vec N$ が成り立ち、$R'\ne0$ の点で縮閉線の接線はもとの曲線の法線と一致する(縮閉線は法線の包絡線)。$R$ が単調な区間では、縮閉線の長さは両端の $R$ の差の絶対値に等しい。放物線 $y=x^2$ の縮閉線は半 3 次放物線、楕円の縮閉線はアステロイドを伸ばした曲線、トラクトリクスの縮閉線は懸垂線で、円の縮閉線は中心 1 点である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 曲率(高校数学), 通過領域と包絡線, 媒介変数表示と曲線の長さ

高校での出発点:放物線の法線を何本も引く

放物線 $y=x^2$ の法線を何本も引いてみる(図 1)。法線は放物線の内側で互いに交わり、交わる点が集まって 1 本の曲線が浮かび上がる。隣り合う 2 本の法線の交点を計算してみる。

隣り合う 2 本の法線の交点

$y=x^2$ の点 $(t,\ t^2)$ での接線の傾きは $2t$ なので、法線は向き $(-2t,\ 1)$ の直線で、その式は
$$ x+2ty=t+2t^3 $$
である(点 $(t,t^2)$ を代入すると両辺とも $t+2t^3$)。
(1) $t=t_1$ と $t=t_2$($t_1\ne t_2$)の法線の交点を求める。2 つの式を引くと $2(t_1-t_2)y=(t_1-t_2)+2(t_1^3-t_2^3)$ で、$t_1-t_2$ で割ると
$$ y=\frac12+t_1^2+t_1t_2+t_2^2 $$
である。これを $t_1$ の式に代入すると $x=t_1+2t_1^3-2t_1y=-2t_1t_2(t_1+t_2)$ となる。
(2) $t_1=1$ とし、$t_2=1.1$ なら交点は $(-4.62,\ 3.81)$、$t_2=1.01$ なら $(-4.0602,\ 3.5301)$ である。$t_2\to1$ とすると、交点は $\bigl(-2\cdot1\cdot1\cdot2,\ \tfrac12+3\bigr)=\left(-4,\ \dfrac72\right)$ に近づく。
この点 $\left(-4,\ \dfrac72\right)$ は、曲率(高校数学) の例「放物線と指数関数の曲率円」で求めた、点 $(1,1)$ での曲率円の中心である。

一般の $t_1=t$ でも、$t_2\to t$ とすると交点は $\bigl(-4t^3,\ 3t^2+\tfrac12\bigr)$ に近づく。これも点 $(t,t^2)$ での曲率中心である(ex-evol-parabola)。つまり、図 1 で浮かび上がる曲線は、曲率中心の描く曲線である。
放物線 y=x² の点(青)での法線(青の直線)と、曲率中心(赤の点)の描く曲線(赤)。どの法線も赤い曲線に接する 放物線 y=x² の点(青)での法線(青の直線)と、曲率中心(赤の点)の描く曲線(赤)。どの法線も赤い曲線に接する
この曲線を 縮閉線 という。この記事では、次の問いに答える。

  1. 縮閉線とは何か。どう計算するか。→ def-evol、ex-evol-parabola
  2. 図 1 のように、法線はいつも縮閉線に接するか。→ thm-evol-normal
  3. 縮閉線の長さは何で測れるか。→ thm-evol-length
  4. 楕円・トラクトリクスなどの縮閉線はどんな曲線か。→ ex-evol-ellipse、ex-evol-tractrix、比較表
    高校の計算この記事の言葉ボックス
    隣り合う法線の交点曲率中心の軌跡def-evol
    曲率円の中心 $P+\dfrac1\kappa\vec N$縮閉線の媒介変数表示def-evol
    包絡線(通過領域と包絡線)法線の族の包絡線thm-evol-normal、cor-evol-envelope
    曲線の長さの公式縮閉線の長さ = 曲率半径の変化thm-evol-length

縮閉線の定義

曲率(高校数学) と同じく、曲線 $P(t)=\bigl(x(t),y(t)\bigr)$($t\in I$、$I$ は区間)を $t$ が増える向きにたどり、速さを $v=\sqrt{x'^2+y'^2}$、単位接ベクトルを $\vec T=\dfrac1v(x',\ y')$、単位法ベクトル($\vec T$ を反時計回りに $90^\circ$ 回したもの)を $\vec N=\dfrac1v(-y',\ x')$、符号つきの曲率を
$$ \kappa=\frac{x'y''-x''y'}{v^3} $$
とする。

縮閉線

区間 $I$ で $x(t)$、$y(t)$ が 3 回微分可能で、3 階導関数が連続であるとする。さらに、すべての $t\in I$ で速さ $v(t)\ne0$、曲率 $\kappa(t)\ne0$ とする。$R(t)=\dfrac1{\kappa(t)}$(符号つきの曲率半径)とおき、
$$ C(t)=P(t)+R(t)\,\vec N(t)\qquad(t\in I) $$
の描く曲線を、曲線 $P$ の 縮閉線 という。成分で書くと、$D=x'y''-x''y'$ として
$$ C(t)=\left(x-\frac{y'\bigl(x'^2+y'^2\bigr)}{D},\ \ y+\frac{x'\bigl(x'^2+y'^2\bigr)}{D}\right) $$
である。

成分の式は、$R\vec N=\dfrac{v^3}{D}\cdot\dfrac1v(-y',\ x')=\dfrac{v^2}{D}(-y',\ x')$ から出る。曲率(高校数学) の命題「曲率中心の位置」により、$C(t)$ は点 $P(t)$ での曲率円の中心で、$\lvert R(t)\rvert$ はその半径である。縮閉線は「曲率中心の描く曲線」である。$R$ の符号は $\kappa$ と同じなので、$\kappa>0$(左へ曲がる)なら $C$ は $P$ の左側に、$\kappa<0$ なら右側にあり、どちらでも曲線のへこんだ側にある。
3 回微分可能を仮定したのは、$R=\dfrac{v^3}{D}$ の導関数(2 階導関数の導関数を含む)を後で使うためである。

放物線の縮閉線

$P(t)=(t,\ t^2)$ では $x'=1$、$y'=2t$、$x''=0$、$y''=2$ なので、$D=2$、$x'^2+y'^2=1+4t^2$ である。よって
$$ C(t)=\left(t-\frac{2t(1+4t^2)}{2},\ \ t^2+\frac{1+4t^2}{2}\right)=\left(-4t^3,\ \ 3t^2+\frac12\right) $$
である。$X=-4t^3$、$Y=3t^2+\dfrac12$ から $t$ を消す。$X^2=16t^6$、$\left(Y-\dfrac12\right)^3=27t^6$ なので
$$ 27X^2=16\left(Y-\frac12\right)^3 $$
である。$\lvert X\rvert$ が $Y-\dfrac12$ の $\dfrac32$ 乗に比例する形の曲線で、半 3 次放物線 という。$t=0$ で $C=\left(0,\dfrac12\right)$(頂点の曲率中心)、$t=\pm1$ で $\left(\mp4,\ \dfrac72\right)$ である。曲率半径は $R(t)=\dfrac{(1+4t^2)^{3/2}}{2}$ で、$R(0)=\dfrac12$、$R(1)=\dfrac{5\sqrt5}2$ である。

円の縮閉線は 1 点

半径 $r$ の円 $P(t)=(r\cos t,\ r\sin t)$ では $\kappa=\dfrac1r$、$\vec N=(-\cos t,\ -\sin t)$(中心を向く)なので、
$$ C(t)=(r\cos t,\ r\sin t)+r(-\cos t,\ -\sin t)=(0,\ 0) $$
である。縮閉線は円の中心 1 点に縮む。曲率が一定なので、どの点の曲率円も同じ円(もとの円)である。

主定理 1:縮閉線は法線に接する

単位ベクトルの微分

$\vec T$ と $\vec N$ が $t$ とともにどう変わるかを先に調べる。

単位接ベクトルと単位法ベクトルの微分

def-evol の曲線について、次が成り立つ。
$$ \vec T\,'=\kappa v\,\vec N,\qquad \vec N\,'=-\kappa v\,\vec T $$

段 1($\vec T\,'$)。$v^2=x'^2+y'^2$ を微分して $2vv'=2(x'x''+y'y'')$、つまり $v'=\dfrac{x'x''+y'y''}{v}$ である。$\vec T$ の $x$ 成分 $\dfrac{x'}{v}$ を商の微分で微分すると
$$ \left(\frac{x'}{v}\right)'=\frac{x''v-x'v'}{v^2}=\frac{x''v^2-x'(x'x''+y'y'')}{v^3}=\frac{x''y'^2-x'y'y''}{v^3}=\frac{-y'\,D}{v^3} $$
である($x''v^2=x''x'^2+x''y'^2$ の $x''x'^2$ が打ち消される)。同じように $y$ 成分は
$$ \left(\frac{y'}{v}\right)'=\frac{y''v^2-y'(x'x''+y'y'')}{v^3}=\frac{y''x'^2-x'x''y'}{v^3}=\frac{x'\,D}{v^3} $$
である。$\kappa v=\dfrac{D}{v^2}$ なので、$\vec T\,'=\dfrac{D}{v^3}(-y',\ x')=\dfrac{D}{v^2}\cdot\dfrac1v(-y',\ x')=\kappa v\,\vec N$ である。
段 2($\vec N\,'$)。$\vec T=(T_1,\ T_2)$ と書くと $\vec N=(-T_2,\ T_1)$ なので、$\vec N\,'=(-T_2',\ T_1')$ である。段 1 から $(T_1',\ T_2')=\kappa v\,(-T_2,\ T_1)$ なので
$$ \vec N\,'=\kappa v\,(-T_1,\ -T_2)=-\kappa v\,\vec T $$
である。$\square$

lem-evol-frenet は、曲線に沿って進むと、$\vec T$ と $\vec N$ が組になって回ることを表す。反時計回りの円 $(r\cos t,\ r\sin t)$ では $\vec T=(-\sin t,\ \cos t)$、$\vec T\,'=(-\cos t,\ -\sin t)=\vec N$ で、$\kappa v=\dfrac1r\cdot r=1$ と合う。

主定理 1

縮閉線の接線は法線

def-evol の曲線と縮閉線 $C$ について、すべての $t\in I$ で
$$ C'(t)=R'(t)\,\vec N(t) $$
が成り立つ。したがって、$R'(t)\ne0$ の点では $C'(t)\ne\vec0$ で、縮閉線の点 $C(t)$ での接線は、もとの曲線の点 $P(t)$ での法線と一致する。

段 1(微分する)。$C=P+R\vec N$ を積の微分で微分すると
$$ C'=P'+R'\vec N+R\,\vec N\,' $$
である。$P'=v\vec T$ で、lem-evol-frenet から $\vec N\,'=-\kappa v\,\vec T$ なので
$$ C'=v\vec T+R'\vec N-R\kappa v\,\vec T=v\vec T+R'\vec N-v\vec T=R'\vec N $$
となる($R\kappa=1$ を使った)。
段 2(接線と法線)。$R'(t)\ne0$ なら $C'(t)=R'(t)\vec N(t)\ne\vec0$ なので、縮閉線は $C(t)$ で接線をもち、その向きは $\vec N(t)$ の向きである。一方、$P(t)$ での法線は、$P(t)$ を通り向き $\vec N(t)$ の直線である。$C(t)=P(t)+R(t)\vec N(t)$ はこの法線の上にある。点 $C(t)$ を通り向き $\vec N(t)$ の直線は 1 本しかないので、2 本の直線は一致する。$\square$

段 1 で、$P'$ の $v\vec T$ と $R\vec N\,'$ の $-v\vec T$ がちょうど打ち消し合うのが要点である。曲率中心 $C$ は、法線の方向にしか動かない。

放物線で確かめる

ex-evol-parabola の $C(t)=\left(-4t^3,\ 3t^2+\dfrac12\right)$ では $C'(t)=(-12t^2,\ 6t)$ である。
(1) $t=1$ では $C'(1)=(-12,\ 6)$、放物線の点 $(1,1)$ での法線の向きは $(-2,\ 1)$ で、$C'(1)=6(-2,\ 1)$ は法線と平行である。$R(t)=\dfrac{(1+4t^2)^{3/2}}2$ を合成関数の微分で微分すると $R'(t)=\dfrac32(1+4t^2)^{1/2}\cdot\dfrac{8t}{2}=6t\sqrt{1+4t^2}$ で、$R'(1)=6\sqrt5$、$\vec N(1)=\dfrac1{\sqrt5}(-2,\ 1)$ なので、$R'(1)\vec N(1)=(-12,\ 6)$ と一致する。
(2) $t=0$ では $R'(0)=0$、$C'(0)=(0,\ 0)$ である。縮閉線は頂点の曲率中心 $\left(0,\dfrac12\right)$ で尖っている(図 1)。

法線の包絡線

通過領域と包絡線 では、関数のグラフ $y=\varphi(x)$ が直線の族のすべての直線に接し、グラフのどの点もどれかの直線の接点になっているとき、グラフを族の包絡線と呼んだ。媒介変数表示の曲線にも、同じ考え方を当てはめる(アステロイド の定義「直線の族の包絡線(媒介変数表示の曲線)」と同じ内容である)。

媒介変数表示の曲線が直線の族の包絡線であること

直線の族 $\ell_t$($t\in I$)と曲線 $C(t)$($t\in I$)について、すべての $t\in I$ で $C'(t)\ne\vec0$ であり、$C(t)$ が $\ell_t$ の上にあって、$\ell_t$ が $C(t)$ での $C$ の接線($C(t)$ を通り向き $C'(t)$ の直線)であるとき、$C$ を族 $\ell_t$ の 包絡線 という。

縮閉線は法線の包絡線

def-evol の曲線で、さらにすべての $t\in I$ で $R'(t)\ne0$ とする。$\ell_t$ を点 $P(t)$ での法線とすると、縮閉線 $C$ は法線の族 $\ell_t$ の包絡線である。

thm-evol-normal により、どの $t$ でも $C'(t)\ne\vec0$ で、$C(t)$ での $C$ の接線は $\ell_t$ である。これは def-evol-envelope の条件そのものである。$\square$

図 1 の赤い曲線が、青い法線のどれにも接して見えるのはこのためである。ex-evol-start で、隣り合う 2 本の法線の交点が曲率中心に近づいたのも、法線が縮閉線に接しているからである。

主定理 2:縮閉線の長さは曲率半径の変化

thm-evol-normal から、縮閉線の速さは $\lvert C'\rvert=\lvert R'\rvert\,\lvert\vec N\rvert=\lvert R'\rvert$ である。これを積分すると、縮閉線の長さが曲率半径だけで決まる。

縮閉線の長さ

def-evol の曲線で、$t_1< t_2$、$[t_1,t_2]\subset I$ とし、$R$ が $[t_1,t_2]$ で単調であるとする。このとき、縮閉線の $C(t_1)$ から $C(t_2)$ までの部分の長さは
$$ \bigl\lvert R(t_2)-R(t_1)\bigr\rvert $$
である。

$C$ の成分は $x$、$y$ の 2 階導関数までを含む式で、仮定から $C'$ は連続である。媒介変数表示と曲線の長さ の定理「曲線の長さの公式」と thm-evol-normal により、長さは
$$ L=\int_{t_1}^{t_2}\lvert C'(t)\rvert\,dt=\int_{t_1}^{t_2}\lvert R'(t)\rvert\,dt $$
である。$R$ が単調増加なら $[t_1,t_2]$ で $R'\ge0$ なので $L=\displaystyle\int_{t_1}^{t_2}R'(t)\,dt=R(t_2)-R(t_1)$、単調減少なら $R'\le0$ なので $L=-\displaystyle\int_{t_1}^{t_2}R'(t)\,dt=R(t_1)-R(t_2)$ である。どちらも $\bigl\lvert R(t_2)-R(t_1)\bigr\rvert$ に等しい。$\square$

$\lvert R(t)\rvert$ は線分 $P(t)C(t)$ の長さである。thm-evol-length は糸を使って次のように読める。$R>0$ で $R$ が $[t_1,t_2]$ で増加する場合を考える。長さ $R(t_2)$ の糸の一端を $C(t_2)$ に留め、縮閉線に沿って $C(t)$ まで巻きつけ、残りを $C(t)$ から法線に沿ってまっすぐ張る。巻いた部分の長さは thm-evol-length により $R(t_2)-R(t)$ なので、張った部分の長さは $R(t)$ で、糸の端はちょうど $P(t)$ に来る($C(t)$ での縮閉線の接線は法線なので、糸は $C(t)$ で折れずに縮閉線から離れる)。$t$ を動かすと、ぴんと張った糸の端がもとの曲線を描く。もとの曲線は、縮閉線から糸をほどいたときの糸の端の軌跡である(この見方は 円の伸開線 で扱う)。

放物線の縮閉線の長さ

ex-evol-parabola の縮閉線の、$t=0$ から $t=1$ までの長さを 2 通りに計算する。$R(t)=\dfrac{(1+4t^2)^{3/2}}2$ は $t\ge0$ で増加する。
(1) thm-evol-length により、長さは $R(1)-R(0)=\dfrac{5\sqrt5}2-\dfrac12=5.0901\ldots$ である。
(2) 直接積分する。$C'(t)=(-12t^2,\ 6t)$ なので、$t\ge0$ で $\lvert C'(t)\rvert=\sqrt{144t^4+36t^2}=6t\sqrt{4t^2+1}$ である。$u=4t^2+1$ と置換すると $du=8t\,dt$ で
$$ \int_0^16t\sqrt{4t^2+1}\,dt=\int_1^5\frac34\sqrt u\,du=\frac34\cdot\frac23\Bigl[u^{3/2}\Bigr]_1^5=\frac12\bigl(5\sqrt5-1\bigr) $$
となり、(1) と一致する。図 2 の赤い太線がこの弧で、2 本の線分 $P(0)C(0)$、$P(1)C(1)$ の長さの差 $\dfrac{5\sqrt5}2-\dfrac12$ に等しい。

放物線(黒)の点 P(0), P(1) と曲率中心 C(0), C(1)。縮閉線の C(0) から C(1) までの弧(赤の太線)の長さは、線分 P(1)C(1) と P(0)C(0) の長さの差に等しい 放物線(黒)の点 P(0), P(1) と曲率中心 C(0), C(1)。縮閉線の C(0) から C(1) までの弧(赤の太線)の長さは、線分 P(1)C(1) と P(0)C(0) の長さの差に等しい

いろいろな曲線の縮閉線

楕円の縮閉線

$a>b>0$ とし、楕円 $P(t)=(a\cos t,\ b\sin t)$ を考える。$x'=-a\sin t$、$y'=b\cos t$、$x''=-a\cos t$、$y''=-b\sin t$ なので $D=ab$、$x'^2+y'^2=a^2\sin^2t+b^2\cos^2t$ である。def-evol の式に入れると
$$ X=a\cos t-\frac{b\cos t\,\bigl(a^2\sin^2t+b^2\cos^2t\bigr)}{ab}=\frac{\cos t\,\bigl(a^2-a^2\sin^2t-b^2\cos^2t\bigr)}{a}=\frac{a^2-b^2}{a}\cos^3t $$
である($a^2-a^2\sin^2t=a^2\cos^2t$ なので、括弧の中は $(a^2-b^2)\cos^2t$)。同じように
$$ Y=b\sin t-\frac{a\sin t\,\bigl(a^2\sin^2t+b^2\cos^2t\bigr)}{ab}=-\frac{a^2-b^2}{b}\sin^3t $$
である。$c=a^2-b^2$ とおくと $aX=c\cos^3t$、$bY=-c\sin^3t$ なので、$(aX)^{2/3}=c^{2/3}\cos^2t$、$(bY)^{2/3}=c^{2/3}\sin^2t$ となり
$$ (aX)^{\frac23}+(bY)^{\frac23}=\bigl(a^2-b^2\bigr)^{\frac23} $$
を満たす。これは アステロイド $x^{\frac23}+y^{\frac23}=1$ を、横に $\dfrac{a^2-b^2}{a}$ 倍、縦に $\dfrac{a^2-b^2}b$ 倍に伸ばした曲線である。$a=3$、$b=2$ なら $C(t)=\left(\dfrac53\cos^3t,\ -\dfrac52\sin^3t\right)$ で、4 つの尖った点は $\left(\pm\dfrac53,\ 0\right)$、$\left(0,\ \pm\dfrac52\right)$ である(図 3)。$\left(\dfrac53,0\right)$ は 曲率(高校数学) の例「楕円の曲率円」で求めた、長軸の端 $(3,0)$ の曲率中心である。

楕円 (3cos t, 2sin t)(黒)と縮閉線(赤)。青い線分は楕円の点から曲率中心まで。緑の破線は長軸の端と短軸の端の曲率円で、縮閉線はその中心で尖る 楕円 (3cos t, 2sin t)(黒)と縮閉線(赤)。青い線分は楕円の点から曲率中心まで。緑の破線は長軸の端と短軸の端の曲率円で、縮閉線はその中心で尖る
楕円の縮閉線が尖る 4 点は、楕円の長軸・短軸の端($t=0,\ \dfrac\pi2,\ \pi,\ \dfrac{3\pi}2$)に対応する。曲率(高校数学) の例「楕円の曲率の最大と最小」のとおり、曲率はそこで最大・最小になり、$R'=0$ である。thm-evol-normal により $C'=R'\vec N=\vec0$ となり、縮閉線はそこで接線の向きを決められず尖る。

楕円の縮閉線 1 周の長さ

$a=3$、$b=2$ の楕円で、$R(t)=\dfrac{\bigl(9\sin^2t+4\cos^2t\bigr)^{3/2}}{6}$ は $0\le t\le\dfrac\pi2$ で増加する($9\sin^2t+4\cos^2t=4+5\sin^2t$ が増加する)。$R(0)=\dfrac{8}{6}=\dfrac43$、$R\left(\dfrac\pi2\right)=\dfrac{27}{6}=\dfrac92$ なので、thm-evol-length により縮閉線の $t=0$ から $\dfrac\pi2$ までの長さは $\dfrac92-\dfrac43=\dfrac{19}6$ である。対称性から、縮閉線 1 周の長さは $4\cdot\dfrac{19}6=\dfrac{38}3=12.66\ldots$ である。一般の楕円では $4\left(\dfrac{a^2}b-\dfrac{b^2}a\right)$ になる。楕円そのものの周の長さは簡単な式にならないが、縮閉線の周の長さは曲率半径の差で求まる。

トラクトリクスの縮閉線は懸垂線

トラクトリクス の長さ $1$ の場合を、トラクトリクス の命題「懸垂線の伸開線はトラクトリクス」の媒介変数表示 $P(t)=\left(t-\tanh t,\ \dfrac1{\cosh t}\right)$($t>0$)で表す。計算すると、$v=\tanh t$、$\kappa=\dfrac1{\sinh t}$、$\vec N=\left(\dfrac1{\cosh t},\ \tanh t\right)$ で、縮閉線は
$$ C(t)=P(t)+\sinh t\,\vec N(t)=\left(t-\tanh t+\tanh t,\ \ \frac1{\cosh t}+\frac{\sinh^2t}{\cosh t}\right)=\bigl(t,\ \cosh t\bigr) $$
である($1+\sinh^2t=\cosh^2t$)。つまり、トラクトリクスの縮閉線は懸垂線 $y=\cosh x$ の $x>0$ の部分である(図 4)。トラクトリクス の命題では懸垂線に巻いた糸をほどくとトラクトリクスになることを示した。この例はその逆向きの関係である。

トラクトリクスの $v$、$\kappa$、$\vec N$ の計算を開く

$(\tanh t)'=\dfrac1{\cosh^2t}$、$\left(\dfrac1{\cosh t}\right)'=-\dfrac{\sinh t}{\cosh^2t}$ なので $x'=1-\dfrac1{\cosh^2t}=\tanh^2t$、$y'=-\dfrac{\tanh t}{\cosh t}$ である。$v=\sqrt{\tanh^4t+\dfrac{\tanh^2t}{\cosh^2t}}=\tanh t\sqrt{\tanh^2t+\dfrac1{\cosh^2t}}=\tanh t$($t>0$)。さらに $x''=\dfrac{2\tanh t}{\cosh^2t}$、$y''=\dfrac{\tanh^2t}{\cosh t}-\dfrac{1}{\cosh^3t}$ で

$$D=x'y''-x''y'=\frac{\tanh^2t}{\cosh t}\left(\tanh^2t-\frac1{\cosh^2t}\right)+\frac{2\tanh^2t}{\cosh^3t}=\frac{\tanh^2t}{\cosh t}\left(\tanh^2t+\frac1{\cosh^2t}\right)=\frac{\tanh^2t}{\cosh t}$$

なので $\kappa=\dfrac{D}{v^3}=\dfrac{1}{\cosh t\tanh t}=\dfrac1{\sinh t}$、$\vec N=\dfrac1v(-y',\ x')=\left(\dfrac1{\cosh t},\ \tanh t\right)$ である。

長さ 1 のトラクトリクス(黒)と、その縮閉線である懸垂線 y=cosh x(赤)。青い線分はトラクトリクスの点から曲率中心まで 長さ 1 のトラクトリクス(黒)と、その縮閉線である懸垂線 y=cosh x(赤)。青い線分はトラクトリクスの点から曲率中心まで
縮閉線を並べる。

曲線縮閉線確かめた場所
円中心 1 点ex-evol-circle
放物線 $y=x^2$半 3 次放物線 $27X^2=16\left(Y-\frac12\right)^3$ex-evol-parabola
楕円アステロイドを縦横に伸ばした曲線ex-evol-ellipse
サイクロイド合同なサイクロイドサイクロイド の注意「曲率半径と縮閉線」
トラクトリクス懸垂線ex-evol-tractrix

サイクロイド $\bigl(a(t-\sin t),\ a(1-\cos t)\bigr)$ では、サイクロイド の注意「曲率半径と縮閉線」で計算したとおり、曲率中心は $\bigl(a(t+\sin t),\ -a(1-\cos t)\bigr)$ で、もとのサイクロイドを平行移動した曲線を描く。def-evol の式で計算しても同じ結果になる。Wei26 は、ほかにも多くの曲線とその縮閉線の組を表にしている。

例と反例

thm-evol-normal と thm-evol-length の仮定を外すと何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
$R'(t)\ne0$楕円の長軸の端縮閉線がその点で接線をもつ
$R'(t)\ne0$円($R'$ がいつも $0$)縮閉線が曲線になる
$\kappa\ne0$$y=x^3$ の原点(変曲点)縮閉線が原点の近くで定まる
$R$ が単調楕円の $-\frac\pi4\le t\le\frac\pi4$長さが $\lvert R(t_2)-R(t_1)\rvert$
反例:曲率が極値をとる点で尖る

楕円 $(3\cos t,\ 2\sin t)$ の $t=0$ では $R'(0)=0$ で、$C(t)=\left(\dfrac53\cos^3t,\ -\dfrac52\sin^3t\right)$ の導関数は $C'(t)=\left(-5\cos^2t\sin t,\ -\dfrac{15}2\sin^2t\cos t\right)$、$C'(0)=(0,\ 0)$ である。$t$ が小さいとき $C(t)-C(0)$ はおよそ $\left(-\dfrac52t^2,\ -\dfrac52t^3\right)$ で、$t>0$ と $t<0$ で縦の向きが逆になりながら、どちらも左へ伸びる。こうして $\left(\dfrac53,0\right)$ で尖る(図 3)。円では $R'$ がいつも $0$ で、ex-evol-circle のとおり縮閉線は 1 点に縮む。

反例:変曲点では曲率中心が遠ざかる

$P(t)=(t,\ t^3)$ では $D=6t$、$x'^2+y'^2=1+9t^4$ で、$t\ne0$ のとき
$$ C(t)=\left(\frac{t(1-9t^4)}2,\ \ \frac{1+15t^4}{6t}\right) $$
である。$t=0.5$、$0.2$、$0.1$、$0.05$ で $Y$ 座標は $0.645\ldots$、$0.853\ldots$、$1.669\ldots$、$3.333\ldots$ で、$t\to+0$ のとき $Y\to\infty$、$t\to-0$ のとき $Y\to-\infty$ である。原点($\kappa=0$)では曲率中心がなく、縮閉線は 2 つの枝に分かれて無限に遠ざかる(図 5)。

$y=x^3$ の縮閉線の計算を開く

$x'=1$、$y'=3t^2$、$x''=0$、$y''=6t$ なので $D=6t$、$x'^2+y'^2=1+9t^4$ である。$X=t-\dfrac{3t^2(1+9t^4)}{6t}=t-\dfrac{t(1+9t^4)}2=\dfrac{t(1-9t^4)}2$、$Y=t^3+\dfrac{1+9t^4}{6t}=\dfrac{6t^4+1+9t^4}{6t}=\dfrac{1+15t^4}{6t}$ である。

y=x³(黒)の曲率中心の軌跡(赤)。変曲点の原点に近づくと、曲率中心(赤の点)は上下に遠ざかる y=x³(黒)の曲率中心の軌跡(赤)。変曲点の原点に近づくと、曲率中心(赤の点)は上下に遠ざかる

反例:曲率半径が単調でない区間

楕円 $(3\cos t,\ 2\sin t)$ の $-\dfrac\pi4\le t\le\dfrac\pi4$ では、$R(t)=\dfrac{(4+5\sin^2t)^{3/2}}6$ は $t=0$ で最小になり、単調でない。両端では $R\left(\pm\dfrac\pi4\right)=\dfrac{(13/2)^{3/2}}{6}=\dfrac{13\sqrt{26}}{24}=2.761\ldots$ で等しく、$\bigl\lvert R\left(\frac\pi4\right)-R\left(-\frac\pi4\right)\bigr\rvert=0$ である。ところが縮閉線の弧は尖点 $\left(\dfrac53,0\right)$ をはさんで 2 本あり、thm-evol-length を $[-\frac\pi4,0]$ と $[0,\frac\pi4]$ に分けて使うと、長さは $2\left(\dfrac{13\sqrt{26}}{24}-\dfrac43\right)=2.857\ldots$ である(数値積分でも $2.8572\ldots$)。

大学数学で見る:媒介変数によらないこと

縮閉線は曲線の形だけで決まり、媒介変数の取り方によらない(Wei26)。曲率(高校数学) の系「媒介変数の取りかえ」により、向きを保つ取りかえでは $\kappa$ は変わらず、速度ベクトルの向きも変わらないので $\vec N$ も変わらない。向きを逆にすると $\kappa$ の符号も $\vec N$ の向きも逆になるので、$\dfrac1\kappa\vec N$ は変わらない。したがって $C=P+\dfrac1\kappa\vec N$ はどちらでも同じ点である。
thm-evol-normal により、縮閉線の速さ $\lvert C'\rvert=\lvert R'\rvert$ が $0$ になるのは $R'=0$ の点に限られる。とくに $R'$ の符号がそこで変わる点、つまり曲率が極大・極小になる点では、縮閉線は進む向きを反転して尖る。曲率が極値をとる点は曲線の 頂点 と呼ばれ、楕円の 4 つの頂点(長軸・短軸の端)はその例である。曲線の頂点の個数や、縮閉線の尖点の並び方は、大学の 微分幾何学 で曲線の大域的な性質として調べられる。

さらに先へ

  • 縮閉線から糸をほどくと、もとの曲線が得られた。逆に、与えられた曲線から糸をほどいて得られる曲線を伸開線という。円の伸開線は 円の伸開線 で扱い、その縮閉線がもとの円であることを示す。
  • 楕円の縮閉線は アステロイド を伸ばした曲線だった。アステロイドは、壁に立てかけたはしご(長さが一定の線分)の族の包絡線としても現れる(アステロイド)。

関連項目

参考文献

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