目玉の定理(eyeball theorem)とは、中心 $O_1,O_2$、半径 $r_1,r_2$、中心間の距離 $d$ の 2 つの円で、どちらの中心も他方の円の外にあるとき、$O_1$ から円 2 に引いた 2 本の接線($O_1$ から接点への半直線)が円 1 と交わる 2 点 $A,B$ と、$O_2$ から円 1 に引いた 2 本の接線が円 2 と交わる 2 点 $C,D$ について、弦の長さが $AB=CD=\frac{2r_1r_2}{d}$ と等しいという定理である。2 本の弦はどちらも直線 $O_1O_2$ に垂直で、$A$ と $C$ は直線 $O_1O_2$ の同じ側で同じ距離 $\frac{r_1r_2}{d}$ にあるので、$A\ne C$ なら 4 点は長方形をなす。$A=C$ となるのは $r_1^2+r_2^2=d^2$(2 円が直交する)ときに限る。
前提知識: 2円の位置関係と共通接線, 三角形の相似条件, 三平方の定理(高校数学)
大きさの違う 2 つの円を横に並べる。左の円の中心から右の円へ 2 本の接線を引き、右の円の中心から左の円へも 2 本の接線を引く。左の中心から右の円へ向かう 2 本の接線は、それぞれ左の円の周と 1 点ずつ交わり、その 2 点を結ぶ線分(弦)ができる。右の中心から出た接線も、右の円に弦を作る。円の大きさが違うのに、この 2 本の弦の長さは等しい。この事実は 目玉の定理(eyeball theorem)と呼ばれる(Wei26)。図 1 のように、2 つの円は並んだ 2 つの目のように見える。
まず、数で確かめる。
円 1 を中心 $O_1(0,0)$、半径 $7$、円 2 を中心 $O_2(25,0)$、半径 $15$ とする。
(1) $O_1$ から円 2 への接線。接点を $T_1$ とすると、接線は接点で半径に垂直なので、三角形 $O_1T_1O_2$ は $T_1$ を直角とする直角三角形である。斜辺 $O_1O_2=25$、$O_2T_1=15$ なので、三平方の定理から
$$
O_1T_1=\sqrt{25^2-15^2}=\sqrt{400}=20
$$
である。$T_1$ の座標は $(16,12)$ である。実際、$O_1T_1=\sqrt{16^2+12^2}=20$、$O_2T_1=\sqrt{(16-25)^2+12^2}=\sqrt{81+144}=15$ で、$\overrightarrow{O_1T_1}\cdot\overrightarrow{O_2T_1}=16\cdot(-9)+12\cdot12=0$ だから $O_1T_1\perp O_2T_1$ である。もう 1 つの接点は、$T_1$ を $x$ 軸で折り返した $T_2(16,-12)$ である。
(2) 弦 $AB$。半直線 $O_1T_1$ の上で $O_1$ から距離 $7$ の点が $A$ である。$O_1T_1=20$ なので $A$ は $O_1T_1$ を $7:13$ に分ける点で、
$$
A=\frac{7}{20}(16,12)=\left(\frac{28}5,\frac{21}5\right)
$$
である。同じく $B=\left(\dfrac{28}5,-\dfrac{21}5\right)$ で、$AB=\dfrac{42}5$ である。
(3) $O_2$ から円 1 への接線。上側の接点を $U_1$ とすると、三角形 $O_2U_1O_1$ は $U_1$ を直角とする直角三角形なので
$$
O_2U_1=\sqrt{25^2-7^2}=\sqrt{576}=24
$$
である。接線 $O_2U_1$ が直線 $O_1O_2$ となす角を $\psi$ とすると、$\sin\psi=\dfrac{O_1U_1}{O_1O_2}=\dfrac7{25}$、$\cos\psi=\dfrac{O_2U_1}{O_1O_2}=\dfrac{24}{25}$ である。半直線 $O_2U_1$ は $O_2$ から左上へ向かうので、その向きの長さ $1$ のベクトルは $\left(-\dfrac{24}{25},\dfrac7{25}\right)$ である。
(4) 弦 $CD$。半直線 $O_2U_1$ の上で $O_2$ から距離 $15$ の点が $C$ なので
$$
\overrightarrow{O_2C}=15\left(-\frac{24}{25},\frac7{25}\right)=\left(-\frac{72}5,\frac{21}5\right),\qquad C=\left(25-\frac{72}5,\frac{21}5\right)=\left(\frac{53}5,\frac{21}5\right)
$$
である。同じく $D=\left(\dfrac{53}5,-\dfrac{21}5\right)$ で、$CD=\dfrac{42}5$ である。
弦の長さは $AB=CD=\dfrac{42}5$ で等しい。しかも $A$ と $C$ はどちらも高さ $\dfrac{21}5$ にあり、4 点 $A,B,D,C$ は横 $\dfrac{53}5-\dfrac{28}5=5$、縦 $\dfrac{42}5$ の長方形の頂点になっている。
半径 7 と 15 の 2 つの円。中心 O1 から引いた赤い接線が円 1 に弦 AB を、中心 O2 から引いた青い接線が円 2 に弦 CD を作り、4 点 A、B、D、C は長方形の頂点になる
もう 1 つ、半径の組を変えて確かめる。
円 1 を中心 $O_1(0,0)$、半径 $2$、円 2 を中心 $O_2(5,0)$、半径 $3$ とする。
(1) $O_1$ から円 2 への接線が $x$ 軸となす角を $\varphi$ とする。直角三角形 $O_1T_1O_2$ で $\sin\varphi=\dfrac{O_2T_1}{O_1O_2}=\dfrac35$、$\cos\varphi=\dfrac45$ なので、$A=(2\cos\varphi,\,2\sin\varphi)=\left(\dfrac85,\dfrac65\right)$、$AB=2\cdot\dfrac65=\dfrac{12}5$ である。
(2) $O_2$ から円 1 への接線が $x$ 軸となす角を $\psi$ とする。$\sin\psi=\dfrac25$、$\cos\psi=\dfrac{\sqrt{21}}5$ なので、$C=(5-3\cos\psi,\,3\sin\psi)=\left(5-\dfrac{3\sqrt{21}}5,\,\dfrac65\right)$、$CD=2\cdot\dfrac65=\dfrac{12}5$ である。
$C$ の $x$ 座標には根号が出るが、高さはどちらも $\dfrac65$ で、弦の長さは $AB=CD=\dfrac{12}5$ と等しい。
この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 |
|---|---|
| 接線と半径が垂直、三平方の定理 | 中心から引いた接線の角 $\sin\varphi=\dfrac{r_2}d$ |
| 相似な直角三角形の辺の比 | 弦の半分 $=\dfrac{r_1r_2}d$ |
| 加法定理 | 長方形の横の長さ $d\{1-\sin(\varphi+\psi)\}$ |
| 2 円が直角に交わる条件 | 長方形がつぶれる条件 $r_1^2+r_2^2=d^2$ |
以下、2 つの円を円 1(中心 $O_1$、半径 $r_1$)と円 2(中心 $O_2$、半径 $r_2$)とし、中心間の距離を $d=O_1O_2$ とする。
2 つの円が次の 2 つの条件を満たすとする。
(R1) $d>r_2$($O_1$ は円 2 の外にある)。
(R2) $d>r_1$($O_2$ は円 1 の外にある)。
$O_1$ から円 2 に引いた 2 本の接線の接点を $T_1$、$T_2$ とし、半直線 $O_1T_1$、$O_1T_2$ の上で $O_1$ から距離 $r_1$ の点(つまり半直線と円 1 の交点)を、それぞれ $A$、$B$ とする。同じく、$O_2$ から円 1 に引いた 2 本の接線の接点を $U_1$、$U_2$ とし、半直線 $O_2U_1$、$O_2U_2$ と円 2 の交点を $C$、$D$ とする。ただし $U_1$ は直線 $O_1O_2$ について $T_1$ と同じ側にとる。この 4 点 $A,B,C,D$ を作る配置を 目玉の配置 という。
条件 (i) は、$O_1$ から円 2 に接線が 2 本引けるための条件である(2円の位置関係と共通接線 の補題「1 点から引ける接線の本数」)。条件 (ii) は $O_2$ から円 1 に接線を引くための条件である。2 つの円は離れていても、交わっていても、接していてもよい。ex-eye-start では $d=25>15$、$d=25>7$、ex-eye-second では $d=5>3$、$d=5>2$ で、どちらも条件を満たす。
2 本の接線の形は、次の補題で決まる。
$d>r_2$ とする。$O_1$ から円 2 に引いた 2 本の接線は、直線 $O_1O_2$ に関して互いに対称で、どちらも直線 $O_1O_2$ と角 $\varphi$ をなす。ここで $\varphi$ は
$$
\sin\varphi=\frac{r_2}d,\qquad \cos\varphi=\frac{\sqrt{d^2-r_2^2}}d,\qquad 0^\circ<\varphi<90^\circ
$$
を満たす角である。接点までの長さは $O_1T_1=O_1T_2=\sqrt{d^2-r_2^2}$ である。
段 1(直角三角形)。接線は接点で半径に垂直なので、三角形 $O_1T_1O_2$ は $T_1$ を直角とする直角三角形である。斜辺は $O_1O_2=d$、1 辺は $O_2T_1=r_2$ なので、三平方の定理から $O_1T_1=\sqrt{d^2-r_2^2}$ である。$O_1$ での角 $\angle T_1O_1O_2$ を $\varphi$ とすると、直角三角形の辺の比から $\sin\varphi=\dfrac{O_2T_1}{O_1O_2}=\dfrac{r_2}d$、$\cos\varphi=\dfrac{O_1T_1}{O_1O_2}=\dfrac{\sqrt{d^2-r_2^2}}d$ である。$T_2$ についても同じで、$\angle T_2O_1O_2=\varphi$、$O_1T_2=\sqrt{d^2-r_2^2}$ である。
段 2(対称)。直線 $O_1O_2$ に関する折り返しは円 2 と点 $O_1$ を動かさないので、接点 $T_1$ を別の接点に移す。接線は 2 本だけなので、その接点は $T_2$ である。$\square$
直線 $O_1O_2$ に関する折り返しは、$O_1$ と $O_2$ を動かさず、長さを変えないので、円 2 を円 2 に移し、$O_1$ を通る接線を $O_1$ を通る接線に移す。$T_1$ は直線 $O_1O_2$ の上にない($\sin\varphi>0$)ので、折り返した点 $T_1'$ は $T_1$ と異なる接点である。接線は 2 本だけなので $T_1'=T_2$ である。よって 2 本の接線は直線 $O_1O_2$ に関して対称で、直線 $O_1O_2$ の両側に 1 本ずつある。
ex-eye-start では $\sin\varphi=\dfrac{15}{25}=\dfrac35$、$O_1T_1=20$ で、ex-eye-second では $\sin\varphi=\dfrac35$、$O_1T_1=\sqrt{25-9}=4$ である。2 つの例は、$\dfrac{r_2}d$ が同じなので $\varphi$ も同じである。
補題を $O_2$ と円 1 に使うと、$O_2$ から円 1 に引いた 2 本の接線も直線 $O_1O_2$ に関して対称で、直線 $O_1O_2$ と角 $\psi$ をなす。ここで
$$
\sin\psi=\frac{r_1}d,\qquad \cos\psi=\frac{\sqrt{d^2-r_1^2}}d,\qquad 0^\circ<\psi<90^\circ
$$
である。記号が 2 つの円で入れかわることに注意する:$\sin\varphi$ には円 2 の半径が、$\sin\psi$ には円 1 の半径が入る。
目玉の配置(def-eye-setting)で、次が成り立つ。
(1) 2 本の弦の長さは等しく、
$$
AB=CD=\frac{2r_1r_2}d
$$
である。
(2) 弦 $AB$ と弦 $CD$ はどちらも直線 $O_1O_2$ に垂直で、直線 $O_1O_2$ によって二等分される。点 $A$ と点 $C$ は直線 $O_1O_2$ の同じ側で、直線 $O_1O_2$ から同じ距離 $\dfrac{r_1r_2}d$ にある。したがって、$A\ne C$ ならば、4 点 $A,B,D,C$ はこの順に長方形の頂点である。
証明の中心は、直角三角形の相似 1 つである。$A$ から直線 $O_1O_2$ に垂線を下ろすと、$O_1$ で同じ角 $\varphi$ をもつ直角三角形が 2 つできる(図 2)。
段 1($A$ の高さ)。$A$ から直線 $O_1O_2$ に下ろした垂線の足を $H$ とする。$A$ は半直線 $O_1T_1$ の上にあり、$\angle AO_1H=\angle T_1O_1O_2=\varphi$ は鋭角なので、$H$ は半直線 $O_1O_2$ の上にある。三角形 $O_1HA$ と三角形 $O_1T_1O_2$ で、
A から直線 O1O2 に下ろした垂線の足を H とすると、赤い直角三角形 O1HA と青い直角三角形 O1T1O2 は O1 での角を共有して相似になる。数は中心間の距離 25、半径 7 と 15 の場合
証明で使ったのは、「接線は接点で半径に垂直」「相似な三角形の辺の比」「折り返しで長さが変わらない」の 3 つだけである。弦の半分 $AH=\dfrac{r_1r_2}d$ は $r_1$ と $r_2$ を入れかえても変わらない式なので、円 1 で計算しても円 2 で計算しても同じ値になる。これが「弦の長さが等しい」ことの理由である。
(3)・(4) は、座標で $A,B,C,D$ を求めて弦の長さを計算しても同じ値になる(検算は下に畳む)。
(3) $\sin\varphi=\dfrac25$、$\cos\varphi=\dfrac{\sqrt{21}}5$ から $A=\left(\dfrac{\sqrt{21}}5,\dfrac25\right)$、$\sin\psi=\dfrac15$、$\cos\psi=\dfrac{2\sqrt6}5$ から $C=\left(5-\dfrac{4\sqrt6}5,\dfrac25\right)$ で、高さはどちらも $\dfrac25$ である。
(4) $\sin\varphi=\dfrac17$、$\cos\varphi=\dfrac{4\sqrt3}7$ から $A=\left(\dfrac{12\sqrt3}7,\dfrac37\right)$、$\sin\psi=\dfrac37$、$\cos\psi=\dfrac{2\sqrt{10}}7$ から $C=\left(7-\dfrac{2\sqrt{10}}7,\dfrac37\right)$ で、高さはどちらも $\dfrac37$ である。
thm-eye-main (2) には「$A\ne C$ ならば」という但し書きがあった。長方形の横の長さ $AC$ を式で求め、いつ $0$ になるかを調べる。$x$ 軸を直線 $O_1O_2$ にとり、$O_1(0,0)$、$O_2(d,0)$ とする。prf-eye-main の段 1 から $A$ の $x$ 座標は $O_1H=r_1\cos\varphi$、段 3 と同じ計算で $C$ の $x$ 座標は $d-r_2\cos\psi$ である。
目玉の配置で、$A$ から $C$ へ向かう $x$ 座標の差は
$$
(d-r_2\cos\psi)-r_1\cos\varphi=d\bigl\{1-\sin(\varphi+\psi)\bigr\}
$$
で、いつも $0$ 以上である。これが $0$ になる($A=C$ かつ $B=D$ になる)のは、
$$
r_1^2+r_2^2=d^2
$$
のとき、そしてそのときに限る。このとき $A$ と $B$ は 2 つの円の交点である。
段 1(書き直し)。$\sin\varphi=\dfrac{r_2}d$、$\sin\psi=\dfrac{r_1}d$ なので、$r_2=d\sin\varphi$、$r_1=d\sin\psi$ である。これを代入すると
$$
r_1\cos\varphi+r_2\cos\psi=d\sin\psi\cos\varphi+d\sin\varphi\cos\psi=d\sin(\varphi+\psi)
$$
である(最後は正弦の加法定理 $\sin(\alpha+\beta)=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta$ を $\alpha=\varphi$、$\beta=\psi$ で使った)。よって $x$ 座標の差は $d-d\sin(\varphi+\psi)=d\{1-\sin(\varphi+\psi)\}$ である。
段 2($0$ 以上)。正弦の値は $1$ 以下なので $1-\sin(\varphi+\psi)\ge0$ で、$d>0$ だから差は $0$ 以上である。
段 3($0$ になるとき)。$\varphi$ と $\psi$ はどちらも $0^\circ$ と $90^\circ$ の間にあるので、$0^\circ<\varphi+\psi<180^\circ$ である。この範囲で $\sin(\varphi+\psi)=1$ となるのは $\varphi+\psi=90^\circ$ のときだけである。$\varphi+\psi=90^\circ$ なら $\cos\varphi=\sin(90^\circ-\varphi)=\sin\psi$ なので
$$
1=\sin^2\varphi+\cos^2\varphi=\sin^2\varphi+\sin^2\psi=\frac{r_2^2}{d^2}+\frac{r_1^2}{d^2}
$$
となり、$r_1^2+r_2^2=d^2$ である。逆に $r_1^2+r_2^2=d^2$ なら $\sin^2\psi=1-\sin^2\varphi=\cos^2\varphi$ で、$\sin\psi>0$、$\cos\varphi>0$ だから $\sin\psi=\cos\varphi=\sin(90^\circ-\varphi)$ である。$\psi$ と $90^\circ-\varphi$ はどちらも $0^\circ$ と $90^\circ$ の間にあり、この範囲で正弦は増えるので $\psi=90^\circ-\varphi$ である。
段 4(交点)。差が $0$ なら $A$ と $C$ は $x$ 座標も高さも等しいので $A=C$ である。$A$ は円 1 の上、$C$ は円 2 の上にあるので、この点は 2 つの円の共有点である。$B=D$ も同じである。$\square$
$r_1^2+r_2^2=d^2$ は、三角形 $O_1AO_2$ が $A$ を直角とする直角三角形になる条件である(三平方の定理の逆)。このとき $O_1A$ は円 2 の接線で、$O_2A$ は円 1 の接線になっている。このように、交点で互いの半径が垂直になる 2 つの円を、直交する 2 円という。
交わる 2 つの円(中心間の距離 10、半径 6 と 5)では、長方形 ABDC は細長くなる
直交する 2 つの円(中心間の距離 5、半径 3 と 4)では、A と C、B と D が重なり、2 本の弦は 2 円の交点を結ぶ同じ線分になる
prop-eye-width から、$A$ はいつも $C$ の左($O_1$ の側)か同じ位置にあり、2 本の弦の左右が入れかわることはない。つまり、2 つの円がどれほど大きく重なっていても、「目玉」の長方形は裏返らない。
直交する場合は、方べきの言葉でも言いかえられる。$r_1^2+r_2^2=d^2$ は $d^2-r_2^2=r_1^2$ と同じで、左辺は $O_1$ から円 2 に引いた接線の長さの 2 乗、つまり円 2 に関する $O_1$ の方べきである(方べきの定理(高校数学) の命題「直交する円と方べき」)。
thm-eye-main の仮定を変えると何が崩れるかを並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 接線を引く点が円 1 の中心 | $(d,r_1,r_2)=(5,1,2)$ で、$O_1$ の代わりに点 $P\left(\frac12,0\right)$ から引く | 2 本の弦の長さが等しい |
| $O_1$ が円 2 の外にある(条件 (i)) | $(d,r_1,r_2)=\left(\frac32,1,2\right)$ | 弦 $AB$ が作れる |
| 比べる長さが弦 | $(d,r_1,r_2)=(5,1,2)$ で、中心から接点までの長さを比べる | 2 つの長さが等しい |
$(d,r_1,r_2)=(5,1,2)$ で、円 1 の中心 $O_1(0,0)$ の代わりに、円 1 の内部の点 $P\left(\dfrac12,0\right)$ から円 2 に 2 本の接線を引く。$P$ と $O_2$ の距離は $\dfrac92>2$ なので、接線は 2 本引ける。接線が $x$ 軸となす角を $\varphi'$ とすると、lem-eye-tangent と同じ直角三角形から $\sin\varphi'=\dfrac2{9/2}=\dfrac49$、$\cos\varphi'=\dfrac{\sqrt{65}}9$ である。
$P$ は円 1 の内部にあるので、$P$ から接点へ向かう半直線は円 1 とちょうど 1 点で交わる。その点を $A'$ とし、$A'=\left(\dfrac12+t\cos\varphi',\,t\sin\varphi'\right)$($t>0$)とおく。$A'$ が円 1 の上にある条件は
$$
\left(\frac12+\frac{\sqrt{65}}9t\right)^2+\left(\frac49t\right)^2=1,\qquad\text{展開して}\qquad t^2+\frac{\sqrt{65}}9t-\frac34=0
$$
である($\dfrac{65+16}{81}=1$ を使った)。正の解は
$$
t=\frac12\left(-\frac{\sqrt{65}}9+\sqrt{\frac{65}{81}+3}\right)=\frac{2\sqrt{77}-\sqrt{65}}{18}
$$
である($\dfrac{65}{81}+3=\dfrac{308}{81}$、$\sqrt{308}=2\sqrt{77}$)。もう 1 本の接線でも同じで、弦の長さは
$$
A'B'=2t\sin\varphi'=\frac{8t}9=\frac{4(2\sqrt{77}-\sqrt{65})}{81}\fallingdotseq0.469
$$
である。一方、$O_2$ から引いた接線が作る弦は ex-eye-formula (3) のとおり $CD=0.8$ で、2 本の弦の長さは等しくない(図 5)。
prf-eye-main の段 1 では、接線を引く点から円 1 までの距離がいつも $r_1$ であることを使った。$P$ から円 1 の周までの距離は向きによって変わるので、この段が使えない。
中心 O1 でない点 P から引いた緑の接線が円 1 に作る弦 A′B′ は、中心 O2 から引いた青い接線が円 2 に作る弦 CD より短い
$(d,r_1,r_2)=\left(\dfrac32,1,2\right)$ では、$O_1$ と $O_2$ の距離 $\dfrac32$ が円 2 の半径 $2$ より小さいので、$O_1$ は円 2 の内部にある。内部の点を通る直線は、中心からの距離が半径より小さく円 2 と 2 点で交わるので、$O_1$ から円 2 への接線は 1 本も引けない(2円の位置関係と共通接線 の補題「1 点から引ける接線の本数」)。弦 $AB$ は作れない。一方 $d=\dfrac32>r_1=1$ なので、$O_2$ から円 1 への接線は引けて、$\sin\psi=\dfrac23$ から $CD=2\cdot2\cdot\dfrac23=\dfrac83$ である。式 $\dfrac{2r_1r_2}d=\dfrac83$ は $CD$ の長さとしては正しいが、比べる相手の $AB$ がない。
$(d,r_1,r_2)=(5,1,2)$ で、$O_1$ から円 2 の接点までの長さは $O_1T_1=\sqrt{25-4}=\sqrt{21}\fallingdotseq4.58$、$O_2$ から円 1 の接点までの長さは $O_2U_1=\sqrt{25-1}=2\sqrt6\fallingdotseq4.90$ で、等しくない。一般に $O_1T_1^2-O_2U_1^2=(d^2-r_2^2)-(d^2-r_1^2)=r_1^2-r_2^2$ なので、2 つの長さが等しいのは $r_1=r_2$ のときだけである。等しくなるのは、接線を円で切り取った弦の方である。
thm-eye-main (1) の値は、
$$
\frac{AB}2=r_1\sin\varphi,\qquad \sin\varphi=\frac{r_2}d
$$
と書ける。$2\varphi$ は、$O_1$ から円 2 を見たときに円 2 が占める角の大きさ(視角、見かけの大きさ)である。遠くの大きな円も近くの小さな円も、視角が同じなら同じように見える。$r_1\sin\varphi$ は、その見かけの大きさを「円 1 の上の長さ」に直したものである。目玉の定理は
$$
r_1\cdot\frac{r_2}d=r_2\cdot\frac{r_1}d
$$
という、掛け算の順序を入れかえただけの等式を、「円 1 から見た円 2 の見かけの大きさを円 1 で測った長さ」と「円 2 から見た円 1 の見かけの大きさを円 2 で測った長さ」が等しい、と読みかえたものである。
図 1 を直線 $O_1O_2$ のまわりに 1 回転させると、2 つの球と、それぞれの中心から他方の球に接する円錐ができる。それぞれの円錐が、自分の頂点を中心とする球を切る切り口は、半径の等しい 2 つの円で、直線 $O_1O_2$ を軸とする同じ円柱の側面の上にある。
円錐が球 1 を切る切り口は、弦 $AB$ が回ってできる円で、半径は $AH=\dfrac{r_1r_2}d$ である。同じく円錐が球 2 を切る切り口の円の半径も $CK=\dfrac{r_1r_2}d$ である。2 つの切り口の円は、半径が等しく、どちらも直線 $O_1O_2$ に垂直な平面の上にあるので、直線 $O_1O_2$ を軸とする同じ円柱の側面の上にある。平面での証明(prf-eye-main)は、直線 $O_1O_2$ を含むどの平面で切っても同じように成り立つので、この事実は平面の定理からそのまま出る。
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