Caseyの定理

同義語:ケーシーの定理Casey's theorem

概要

Caseyの定理(Casey's theorem)とは、半径 $R$ の円 $\Gamma$ に内側から接する 4 つの円 $\omega_1,\dots,\omega_4$ の接点 $A_1,\dots,A_4$ が相異なり、$\Gamma$ 上にこの順に並ぶとき、$\omega_i$ と $\omega_j$ の共通外接線の長さを $t_{ij}$ として $t_{12}t_{34}+t_{14}t_{23}=t_{13}t_{24}$ が成り立つという定理である。半径を $0$ にすると Ptolemyの定理になる。$\omega_i$ の半径を $r_i$ とすると $t_{ij}=\frac{A_iA_j}{R}\sqrt{(R-r_i)(R-r_j)}$ で、これを Ptolemyの定理に代入して示す。外側から接する円がまじるときは、内外の円の組に共通内接線を使う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Ptolemyの定理, 2円の位置関係と共通接線, 余弦定理(高校数学)

高校での出発点:Ptolemy の定理の 4 点を 4 つの円に替える

円 $\Gamma$ の上に 4 点 $A_1$、$A_2$、$A_3$、$A_4$ がこの順に並ぶとき、Ptolemyの定理 により
$$ A_1A_2\cdot A_3A_4+A_1A_4\cdot A_2A_3=A_1A_3\cdot A_2A_4 $$
が成り立つ。左辺は向かい合う辺の積の和、右辺は対角線の積である。
この 4 点を、$\Gamma$ に内側から接する 4 つの小さな円に「ふくらませて」みる。2 点を結ぶ線分の長さの代わりに、2 つの円の共通接線の長さを使うと、同じ形の等式が成り立つだろうか。まず、手で計算できる例で確かめる。

半径 $5$ の円に内側から接する 4 つの円

原点 $O$ を中心とする半径 $R=5$ の円 $\Gamma$ と、次の 4 つの円を考える(図 1)。

  • $\omega_1$:中心 $(4,0)$、半径 $1$。$\Gamma$ に点 $A_1(5,0)$ で内側から接する。
  • $\omega_2$:中心 $(0,4)$、半径 $1$。$\Gamma$ に点 $A_2(0,5)$ で接する。
  • $\omega_3$:中心 $(-2,0)$、半径 $3$。$\Gamma$ に点 $A_3(-5,0)$ で接する。
  • $\omega_4$:中心 $(0,-4)$、半径 $1$。$\Gamma$ に点 $A_4(0,-5)$ で接する。
    どの円も、中心と $O$ の距離が $5-(\text{半径})$ なので、$\Gamma$ に内側から接する(2円の位置関係と共通接線)。接点 $A_1,A_2,A_3,A_4$ は $\Gamma$ の上をこの順に反時計回りに並ぶ。
    $\omega_i$ と $\omega_j$ の中心間の距離を $d_{ij}$ とすると、共通外接線の長さは $t_{ij}=\sqrt{d_{ij}^2-(r_i-r_j)^2}$ である(2円の位置関係と共通接線 の「共通接線の長さ」)。6 組を計算する。
    $$ \begin{aligned} t_{12}&=\sqrt{32-0}=4\sqrt2, & t_{34}&=\sqrt{(4+16)-(3-1)^2}=\sqrt{16}=4,\\ t_{14}&=\sqrt{32-0}=4\sqrt2, & t_{23}&=\sqrt{(4+16)-(1-3)^2}=\sqrt{16}=4,\\ t_{13}&=\sqrt{36-(1-3)^2}=\sqrt{32}=4\sqrt2, & t_{24}&=\sqrt{64-0}=8 \end{aligned} $$
    である($d_{12}^2=4^2+4^2=32$、$d_{13}^2=6^2=36$、$d_{24}^2=8^2=64$ など)。Ptolemy の定理と同じ形に組むと
    $$ t_{12}t_{34}+t_{14}t_{23}=4\sqrt2\cdot4+4\sqrt2\cdot4=32\sqrt2,\qquad t_{13}t_{24}=4\sqrt2\cdot8=32\sqrt2 $$
    で、両辺は等しい。

半径 5 の円に内側から接する 4 つの円と 6 本の共通外接線。同じ色の 2 本の長さの積を比べる 半径 5 の円に内側から接する 4 つの円と 6 本の共通外接線。同じ色の 2 本の長さの積を比べる

半径を $0$ にすると Ptolemy の定理

4 つの円の半径をすべて $0$ にすると、円は $\Gamma$ の上の点 $A_i$ そのものになる。中心は $A_i$、中心間の距離は $A_iA_j$ で、$t_{ij}=\sqrt{A_iA_j^2-0}=A_iA_j$ である。等式 $t_{12}t_{34}+t_{14}t_{23}=t_{13}t_{24}$ は Ptolemy の定理そのものになる。
たとえば ex-casey-start の接点 $A_1(5,0)$、$A_2(0,5)$、$A_3(-5,0)$、$A_4(0,-5)$ は正方形で、辺は $5\sqrt2$、対角線は $10$ である。$5\sqrt2\cdot5\sqrt2+5\sqrt2\cdot5\sqrt2=50+50=100=10\cdot10$ となる。

2 つの例で、Ptolemy の定理と同じ形の等式が成り立った。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. $\Gamma$ に内側から接する 4 つの円について、いつもこの等式が成り立つか。→ thm-casey-main
  2. なぜ Ptolemy の定理と同じ形になるのか。→ lem-casey-tangent
  3. 円が $\Gamma$ に外側から接するとき、どう直せばよいか。→ ex-casey-cx-outside、rem-casey-signed
    Ptolemy の定理Casey の定理大学の言葉
    $\Gamma$ の上の点 $A_i$$\Gamma$ に接する円 $\omega_i$半径 $0$ の円は点
    2 点の距離 $A_iA_j$共通外接線の長さ $t_{ij}$$t_{ij}^2=d_{ij}^2-(r_i-r_j)^2$
    $A_1A_2\cdot A_3A_4+A_1A_4\cdot A_2A_3=A_1A_3\cdot A_2A_4$$t_{12}t_{34}+t_{14}t_{23}=t_{13}t_{24}$符号つきの半径で 1 つにまとめる

言葉の準備:内側から接する円と共通外接線の長さ

以下、$\Gamma$ は中心 $O$、半径 $R$ の円とする。

内側から接する円と共通外接線の長さ

中心 $O_1$、半径 $r_1$ の円 $\omega_1$ が $r_1< R$ と $OO_1=R-r_1$ を満たすとき、$\omega_1$ は $\Gamma$ に 内側から接する という。このとき $\omega_1$ と $\Gamma$ の共有点はただ 1 つで、それを 接点 という(2円の位置関係と共通接線 の「2 円の位置関係」の、内接の場合)。
2 つの円 $\omega_i$、$\omega_j$(中心 $O_i$、$O_j$、半径 $r_i$、$r_j$)について、中心間の距離 $d_{ij}=O_iO_j$ が $d_{ij}>\lvert r_i-r_j\rvert$ を満たすとき、2 円には共通外接線(2 つの円が接線の同じ側にある共通接線)があり、その上の 2 つの接点を結ぶ線分の長さは
$$ t_{ij}=\sqrt{d_{ij}^2-(r_i-r_j)^2} $$
である。$t_{ij}$ を $\omega_i$ と $\omega_j$ の 共通外接線の長さ という。

共通外接線の長さの式の証明は 2円の位置関係と共通接線 にある。中心 $O_j$ から、$O_i$ と接点を結ぶ半径(を含む直線)に垂線を下ろすと、斜辺 $d_{ij}$、1 辺 $\lvert r_i-r_j\rvert$ の直角三角形ができ、もう 1 辺が接線の長さになる(三平方の定理)。

共通外接線の長さを 2 通りに求める
  1. 中心 $(4,0)$、半径 $1$ の円と、中心 $(0,4)$、半径 $1$ の円。半径が等しいので、共通外接線は中心を結ぶ線分に平行で、長さは中心間の距離 $\sqrt{16+16}=4\sqrt2$ に等しい。式でも $\sqrt{32-0}=4\sqrt2$ である。
  2. 中心 $(4,0)$、半径 $1$ の円と、中心 $(0,2)$、半径 $3$ の円。$d^2=16+4=20$ なので $t=\sqrt{20-(1-3)^2}=\sqrt{16}=4$ である。

Casey の定理の状況を、条件の列挙で書いておく。4 つの円 $\omega_1,\omega_2,\omega_3,\omega_4$(中心 $O_i$、半径 $r_i$)について、次の 2 つを仮定する。
(R1) 各 $\omega_i$ は $\Gamma$ に内側から接し、その接点を $A_i$ とする。
(R2) 4 つの接点 $A_1,A_2,A_3,A_4$ は相異なり、$\Gamma$ の上にこの順に並ぶ($A_1A_2A_3A_4$ が円に内接する凸四角形になる)。
円どうしは交わっていてもよい。

中心と接点は一直線上にある

$\omega_i$ が $\Gamma$ に内側から接し、接点が $A_i$ ならば、$O_i$ は線分 $OA_i$ の上にあり、$OO_i=R-r_i$ である。

三角不等式の等号

$A_i$ は $\Gamma$ の上にあるので $OA_i=R$、$\omega_i$ の上にあるので $O_iA_i=r_i$ である。仮定から $OO_i=R-r_i$ なので
$$ OO_i+O_iA_i=(R-r_i)+r_i=R=OA_i $$
である。3 点 $O$、$O_i$、$A_i$ について、2 辺の和がもう 1 辺に等しいので、三角形はつぶれていて、$O_i$ は線分 $OA_i$ の上にある(三角不等式 $OA_i\le OO_i+O_iA_i$ の等号は、$O_i$ が線分 $OA_i$ の上にあるときに限る)。$\square$

ex-casey-start では、$\omega_3$ の中心 $(-2,0)$ は線分 $OA_3$($(0,0)$ と $(-5,0)$ を結ぶ線分)の上にあり、$OO_3=2=5-3$ である。

補題:接線の長さを、接点を結ぶ弦の長さで書く

Casey の定理の鍵は、2 つの円の共通外接線の長さ $t_{ij}$ が、接点を結ぶ弦の長さ $A_iA_j$ に一定の数を掛けたものになることである。

共通外接線の長さと弦の長さ

$\omega_i$、$\omega_j$ が $\Gamma$ に内側から接し、接点 $A_i$、$A_j$ が異なるとする。このとき $d_{ij}>\lvert r_i-r_j\rvert$ で、共通外接線の長さは
$$ t_{ij}=\frac{A_iA_j}{R}\sqrt{(R-r_i)(R-r_j)} $$
である。

余弦定理を 2 回使う

方針:角 $\theta=\angle A_iOA_j$ を共通にもつ 2 つの三角形 $A_iOA_j$ と $O_iOO_j$ に余弦定理を使い、$\cos\theta$ を通して $d_{ij}$ と $A_iA_j$ を結ぶ。
段 1(記号)。$s_i=R-r_i$、$s_j=R-r_j$ とおく。$r_i< R$、$r_j< R$ なので $s_i>0$、$s_j>0$ である。lem-casey-collinear により、$O_i$ は線分 $OA_i$ の上にあって $OO_i=s_i$、$O_j$ は線分 $OA_j$ の上にあって $OO_j=s_j$ である。$\theta=\angle A_iOA_j$ とおくと、$A_i\ne A_j$ なので $0^\circ<\theta\le180^\circ$ で、$O_i$、$O_j$ はそれぞれ半直線 $OA_i$、$OA_j$ の上にあるので $\angle O_iOO_j=\theta$ でもある(図 2)。
段 2(弦の長さ)。三角形 $A_iOA_j$($OA_i=OA_j=R$)に 余弦定理(高校数学) を使うと
$$ A_iA_j^2=R^2+R^2-2R^2\cos\theta=2R^2(1-\cos\theta) $$
である。
段 3(中心間の距離)。三角形 $O_iOO_j$ に余弦定理を使うと
$$ d_{ij}^2=s_i^2+s_j^2-2s_is_j\cos\theta $$
である($\theta=180^\circ$ で 3 点が一直線上にあるときも、$d_{ij}=s_i+s_j$、$\cos\theta=-1$ で同じ式が成り立つ)。
段 4(接線の長さ)。$r_i-r_j=(R-s_i)-(R-s_j)=s_j-s_i$ なので
$$ d_{ij}^2-(r_i-r_j)^2=s_i^2+s_j^2-2s_is_j\cos\theta-(s_i^2-2s_is_j+s_j^2)=2s_is_j(1-\cos\theta) $$
である。段 2 から $1-\cos\theta=\dfrac{A_iA_j^2}{2R^2}$ なので
$$ d_{ij}^2-(r_i-r_j)^2=2s_is_j\cdot\frac{A_iA_j^2}{2R^2}=\frac{s_is_j\,A_iA_j^2}{R^2} $$
となる。$A_i\ne A_j$ より右辺は正なので $d_{ij}^2>(r_i-r_j)^2$、つまり $d_{ij}>\lvert r_i-r_j\rvert$ で、共通外接線がある(def-casey-setting)。その長さは
$$ t_{ij}=\sqrt{d_{ij}^2-(r_i-r_j)^2}=\frac{A_iA_j}{R}\sqrt{s_is_j}=\frac{A_iA_j}{R}\sqrt{(R-r_i)(R-r_j)} $$
である。$\square$

Γ の中心 O、ωᵢ の中心 Oᵢ、接点 Aᵢ は一直線上にある。三角形 AᵢOAⱼ と三角形 OᵢOOⱼ は角 θ を共有し、赤い線分が共通外接線の長さ tᵢⱼ である Γ の中心 O、ωᵢ の中心 Oᵢ、接点 Aᵢ は一直線上にある。三角形 AᵢOAⱼ と三角形 OᵢOOⱼ は角 θ を共有し、赤い線分が共通外接線の長さ tᵢⱼ である

補題を半径 $5$ の例の数で確かめる

$R=5$、$R-r_1=R-r_2=R-r_4=4$、$R-r_3=2$ である。接点は正方形の頂点なので、隣り合う接点の弦は $5\sqrt2$、向かい合う接点の弦は $10$ である。
$$ t_{12}=\frac{5\sqrt2}{5}\sqrt{4\cdot4}=4\sqrt2,\qquad t_{23}=\frac{5\sqrt2}5\sqrt{4\cdot2}=\sqrt2\cdot2\sqrt2=4,\qquad t_{13}=\frac{10}5\sqrt{4\cdot2}=4\sqrt2,\qquad t_{24}=\frac{10}5\sqrt{4\cdot4}=8 $$
で、ex-casey-start で中心間の距離から求めた値と一致する。

補題の式で、$\sqrt{R-r_i}$ は円 $\omega_i$ だけで決まる数である。つまり $t_{ij}$ は、弦 $A_iA_j$ の両端に「円ごとの重み」$\sqrt{\dfrac{R-r_i}R}$ と $\sqrt{\dfrac{R-r_j}R}$ を掛けたものである:
$$ t_{ij}=\underbrace{\sqrt{\frac{R-r_i}R}}_{\omega_i\text{ の重み}}\cdot A_iA_j\cdot\underbrace{\sqrt{\frac{R-r_j}R}}_{\omega_j\text{ の重み}} . $$

主定理:Casey の定理

Casey の定理

円 $\Gamma$(中心 $O$、半径 $R$)と 4 つの円 $\omega_1,\omega_2,\omega_3,\omega_4$ が、上の条件 (i)・(ii) を満たすとする。$\omega_i$ と $\omega_j$ の共通外接線の長さを $t_{ij}$ とすると
$$ t_{12}t_{34}+t_{14}t_{23}=t_{13}t_{24} $$
が成り立つ。

補題を代入すると Ptolemy の定理になる

方針:lem-casey-tangent で 6 つの $t_{ij}$ を弦の長さで書き、共通の因数をくくり出す。残る式は、接点がつくる四角形についての Ptolemy の定理である。
段 1(重みで書く)。$k_i=\sqrt{\dfrac{R-r_i}R}$($i=1,2,3,4$)とおく。$r_i< R$ なので $k_i>0$ である。条件 (ii) により接点は相異なるので、lem-casey-tangent をどの 2 つの円にも使えて
$$ t_{ij}=\frac{A_iA_j}R\sqrt{(R-r_i)(R-r_j)}=A_iA_j\sqrt{\frac{R-r_i}R}\sqrt{\frac{R-r_j}R}=k_ik_j\,A_iA_j $$
である。
段 2(積を計算する)。$k=k_1k_2k_3k_4$ とおく。段 1 から
$$ t_{12}t_{34}=k_1k_2A_1A_2\cdot k_3k_4A_3A_4=k\,A_1A_2\cdot A_3A_4 $$
で、同じように $t_{14}t_{23}=k\,A_1A_4\cdot A_2A_3$、$t_{13}t_{24}=k\,A_1A_3\cdot A_2A_4$ である。どの積にも 4 つの重みがちょうど 1 回ずつ現れるので、共通の因数 $k$ がくくり出せる。
段 3(Ptolemy の定理)。条件 (ii) により、$A_1A_2A_3A_4$ は円 $\Gamma$ に内接する四角形で、頂点がこの順に並ぶ。Ptolemyの定理 により
$$ A_1A_2\cdot A_3A_4+A_1A_4\cdot A_2A_3=A_1A_3\cdot A_2A_4 $$
である。両辺に $k$ を掛けて段 2 を使うと
$$ t_{12}t_{34}+t_{14}t_{23}=k\,(A_1A_2\cdot A_3A_4+A_1A_4\cdot A_2A_3)=k\,A_1A_3\cdot A_2A_4=t_{13}t_{24} $$
を得る。$\square$

証明から分かるように、Casey の定理は Ptolemy の定理に、各円の重み $k_i$ を掛けただけのものである。重みが 4 つの積のどれにも同じように入るのは、Ptolemy の定理の 3 つの積が、どれも 4 点を 1 回ずつ使っているからである。

半径も接点の間隔も不ぞろいな 4 つの円

半径 $R=10$ の円 $\Gamma$ に、接点が偏角 $200^\circ$、$290^\circ$、$20^\circ$、$110^\circ$ の点 $A_1,A_2,A_3,A_4$ で、半径 $r_1=2.6$、$r_2=1.6$、$r_3=3.2$、$r_4=2.0$ の 4 つの円を内側から接させる(図 3)。接点は $90^\circ$ ずつ離れているので、隣り合う接点の弦は $10\sqrt2$、向かい合う接点の弦は $20$ である。$R-r_i$ は順に $7.4$、$8.4$、$6.8$、$8.0$ である。lem-casey-tangent から
$$ t_{12}t_{34}=\frac{(10\sqrt2)^2}{100}\sqrt{7.4\cdot8.4\cdot6.8\cdot8.0},\qquad t_{14}t_{23}=\frac{(10\sqrt2)^2}{100}\sqrt{7.4\cdot8.0\cdot8.4\cdot6.8},\qquad t_{13}t_{24}=\frac{20^2}{100}\sqrt{7.4\cdot6.8\cdot8.4\cdot8.0} $$
である。根号の中はどれも同じ数 $7.4\cdot8.4\cdot6.8\cdot8.0=3381.504$ で、係数は左から $2$、$2$、$4$ なので、$t_{12}t_{34}+t_{14}t_{23}=t_{13}t_{24}$ が成り立つ。値は約 $232.60$ である。

中心間の距離から 6 つの長さを直接求めた値を開く

中心は $O_i=(R-r_i)(\cos\varphi_i,\sin\varphi_i)$($\varphi_i$ は接点の偏角)である。中心間の距離と $t_{ij}=\sqrt{d_{ij}^2-(r_i-r_j)^2}$ を小数第 4 位まで求めると、$t_{12}\approx11.1499$、$t_{23}\approx10.6883$、$t_{34}\approx10.4307$、$t_{14}\approx10.8812$、$t_{13}\approx14.1873$、$t_{24}\approx16.3951$ である。$t_{12}t_{34}+t_{14}t_{23}\approx116.30+116.30=232.60$、$t_{13}t_{24}\approx232.60$ で、差は計算の誤差($10^{-13}$ 程度)の範囲で $0$ である。

半径 10 の円に内側から接する 4 つの円。赤の 2 本の積と青の 2 本の積の和が、緑の 2 本の積に等しい 半径 10 の円に内側から接する 4 つの円。赤の 2 本の積と青の 2 本の積の和が、緑の 2 本の積に等しい
図 3 の色は、thm-casey-main の 3 つの積に対応する。赤は $t_{12}$ と $t_{34}$、青は $t_{14}$ と $t_{23}$、緑は $t_{13}$ と $t_{24}$ である。緑の 2 本は、Ptolemy の定理の対角線にあたる。

例と反例

thm-casey-main の条件を 1 つずつ外すと、等式が崩れる。3 つとも ex-casey-start の 4 つの円を少し変えて確かめる。

外す条件反例成り立たなくなること
接点がこの順に並ぶ(条件 (ii))同じ 4 つの円に、$\omega_1,\omega_3,\omega_2,\omega_4$ の順で番号を付け直す$t_{12}t_{34}+t_{14}t_{23}=t_{13}t_{24}$
各円が $\Gamma$ に接する(条件 (i))$\omega_3$ を中心 $\left(-\frac32,0\right)$、半径 $3$ に動かす同じ等式
各円が $\Gamma$ に内側から接する(条件 (i))$\omega_3$ を $\Gamma$ の外側から接する円にする共通外接線だけで組んだ等式
反例:接点の並ぶ順を無視して番号を付ける

ex-casey-start の 4 つの円に、$\omega_1$、$\omega_3$、$\omega_2$、$\omega_4$ を新しく 1 番、2 番、3 番、4 番と番号を付け直す。新しい番号で等式の左辺と右辺を作ると、もとの番号では
$$ t_{13}t_{24}+t_{14}t_{32}=4\sqrt2\cdot8+4\sqrt2\cdot4=48\sqrt2,\qquad t_{12}t_{34}=4\sqrt2\cdot4=16\sqrt2 $$
を比べることになり、等しくない。新しい番号の接点は $\Gamma$ の上を $A_1,A_3,A_2,A_4$ の順に回るので、条件 (ii) を満たさない。どの 2 つの積の組が「向かい合う辺」になるかは、接点の並ぶ順で決まる。Ptolemyの定理 で頂点の順を変えると等式が崩れるのと同じである。

反例:$\Gamma$ に接していない円

ex-casey-start の $\omega_3$ を、中心 $\left(-\dfrac32,0\right)$、半径 $3$ の円に替える。$O$ からの距離は $\dfrac32$ で、$R-r_3=2$ と違うので、この円は $\Gamma$ に接しない($\Gamma$ の内部にあって、$\Gamma$ との間にすき間がある)。$\omega_3$ がかかわる長さは
$$ t_{13}=\sqrt{\left(\frac{11}2\right)^2-(1-3)^2}=\sqrt{\frac{121-16}4}=\frac{\sqrt{105}}2,\qquad t_{23}=t_{34}=\sqrt{\frac94+16-4}=\sqrt{\frac{57}4}=\frac{\sqrt{57}}2 $$
で、ほかは ex-casey-start と同じ $t_{12}=t_{14}=4\sqrt2$、$t_{24}=8$ である。
$$ t_{12}t_{34}+t_{14}t_{23}=2\cdot4\sqrt2\cdot\frac{\sqrt{57}}2=4\sqrt{114}\approx42.71,\qquad t_{13}t_{24}=\frac{\sqrt{105}}2\cdot8=4\sqrt{105}\approx40.99 $$
で、等しくない。lem-casey-collinear の $OO_3=R-r_3$ が崩れ、lem-casey-tangent が使えなくなる。

反例と修正:$\Gamma$ に外側から接する円

ex-casey-start の $\omega_3$ を、中心 $(-8,0)$、半径 $3$ の円に替える。$O$ からの距離は $8=R+r_3$ なので、この円は $\Gamma$ に点 $A_3(-5,0)$ で 外側から 接する(図 4)。
共通外接線の長さだけで組むと、$\omega_3$ がかかわる長さは $t_{13}=\sqrt{12^2-(1-3)^2}=\sqrt{140}=2\sqrt{35}$、$t_{23}=t_{34}=\sqrt{80-4}=2\sqrt{19}$ で
$$ t_{12}t_{34}+t_{14}t_{23}=2\cdot4\sqrt2\cdot2\sqrt{19}=16\sqrt{38}\approx98.63,\qquad t_{13}t_{24}=2\sqrt{35}\cdot8=16\sqrt{35}\approx94.66 $$
となり、等しくない。
ところが、$\omega_3$ とほかの円の組だけ、共通外接線の代わりに 共通内接線(2 つの円が接線の反対側にある共通接線)の長さ $\sqrt{d^2-(r_i+r_j)^2}$ を使うと
$$ t_{13}=\sqrt{144-(1+3)^2}=\sqrt{128}=8\sqrt2,\qquad t_{23}=t_{34}=\sqrt{80-16}=8 $$
で
$$ t_{12}t_{34}+t_{14}t_{23}=4\sqrt2\cdot8+4\sqrt2\cdot8=64\sqrt2,\qquad t_{13}t_{24}=8\sqrt2\cdot8=64\sqrt2 $$
となり、等式が成り立つ。$\Gamma$ の内側の円どうしは外接線、内側と外側の円の組は内接線を使えばよい。理由は rem-casey-signed で述べる。

Γ に外側から接する円 ω₃ を含む 4 つの円。ω₃ とほかの円の組は破線の共通内接線を使うと、Casey の等式が成り立つ Γ に外側から接する円 ω₃ を含む 4 つの円。ω₃ とほかの円の組は破線の共通内接線を使うと、Casey の等式が成り立つ

大学数学で見る:符号つきの半径

ex-casey-cx-outside の「外接線と内接線の使い分け」は、半径に符号を付けると 1 つの式にまとまる。

符号つきの半径で内側と外側をまとめる

$\Gamma$ に内側から接する円の半径を正の数 $r$、外側から接する円の半径を負の数 $-r$ で表す($r>0$)。この符号つきの半径 $\rho$ を使うと、どちらの場合も
$$ OO_i=R-\rho_i $$
と書ける(外側なら $R-(-r)=R+r$)。2 つの円の組に対して $\sqrt{d_{ij}^2-(\rho_i-\rho_j)^2}$ を考えると、同じ符号なら $\lvert\rho_i-\rho_j\rvert=\lvert r_i-r_j\rvert$ で共通外接線の長さ、反対の符号なら $\lvert\rho_i-\rho_j\rvert=r_i+r_j$ で共通内接線の長さになる。
外側から接する円でも、$O$、$A_i$、$O_i$ は一直線上にあり($A_i$ が $O$ と $O_i$ の間にくる)、$O_i$ は半直線 $OA_i$ の上で $O$ から $R-\rho_i$ の距離にある。したがって prf-casey-tangent の段 1〜段 4 の計算は、$r_i$ を $\rho_i$ に置き換えてそのまま通り、
$$ \sqrt{d_{ij}^2-(\rho_i-\rho_j)^2}=\frac{A_iA_j}R\sqrt{(R-\rho_i)(R-\rho_j)} $$
となる($R-\rho_i>0$ はどちらの場合も成り立つ)。prf-casey-main もそのまま通るので、内側と外側の円がまじっていても、この長さで Casey の等式が成り立つ。半径 $0$ の円($\Gamma$ の上の点)もこの枠組みに入り、そのとき等式は Ptolemyの定理 になる(ex-casey-point)。

逆向きの主張(この記事では証明しない)を開く

逆に、4 つの円について、共通接線の長さをうまく選んで $t_{12}t_{34}\pm t_{13}t_{24}\pm t_{14}t_{23}=0$ の形の等式が成り立てば、4 つの円すべてに接する 5 つ目の円(または直線)がある。どの組に外接線と内接線を使うかは、5 つ目の円への接し方(内側か外側か)で決まる。この逆向きの主張と接し方の場合分けは Wei26 にある。この記事では証明しない。

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  • 隣どうしが互いに外側から接する円の輪では、lem-casey-tangent の $t_{ij}$ がもう 1 通りに計算でき(接する 2 円の共通外接線の長さは $2\sqrt{r_ir_j}$)、接点を結ぶ弦の長さが半径だけで書ける。これを使うのが 7円定理 である。
  • 互いに接する円の半径の関係には、Descartesの円定理 もある。接する円の配置は、円に関する反転 で直線や同心円に移すと見通しがよくなる。2 つの円の間に接する円を並べる Steinerの円鎖 や、半円の中に接する円を入れる アルベロス も、接する円の配置を扱う。
  • 4 つの頂点を点のままにして、四角形の対角線の比を辺で表すのが Ptolemyの第2定理 である。

関連項目

参考文献

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