Borel部分群(Borel subgroup)とは、代数閉体上の連結な線型代数群 $G$ の連結で可解な閉部分群のうち、包含関係について極大なもののことである。一般線形群 $GL_n$ では、Borel 部分群はちょうど完全旗の固定部分群、すなわち上三角行列の群 $B_n$ の共役であり、これは Borel の固定点定理から導かれる Lie–Kolchin の定理による。一般の $G$ でも、Borel 部分群はすべて互いに共役で、商 $G/B$ は射影多様体(旗多様体)になり、$B$ は自身の正規化群に一致する。Borel 部分群を含む部分群が放物型部分群であり、極大トーラス・Weyl 群・BN 対とともに簡約群の構造論の土台になる。
可逆な $n$ 次行列の群 $GL_n$ の中で、上三角行列の群 $B_n$ は特別な位置にある。$B_n$ は可解で連結であり、可解で連結な部分群は基底を取り替えるとすべて $B_n$ に入る(Lie–Kolchin の定理)。さらに $B_n$ は標準旗の固定部分群なので、商 $GL_n/B_n$ は旗多様体という射影多様体になる。一般の連結な線型代数群 $G$ で $B_n$ の役割を担うのが、連結可解な閉部分群のうち極大なもの、すなわち Borel 部分群である。Borel 部分群はすべて互いに共役であり、$G/B$ は射影多様体で、$B$ は自身の正規化群に一致する。これらは簡約群の構造論(極大トーラス、Weyl 群、ルート系、BN 対)の出発点になる。この記事では、定義を述べ、$GL_n$ の Borel 部分群を完全に決定し、一般の場合の主定理を所在とともに述べる。
以下、$k$ は代数閉体とし、代数群 の記事の言葉で、$k$ 上の滑らかなアフィン代数群(線型代数群)を $k$ 点の群と同一視して扱う。部分群は Zariski 閉なものだけを考え(Zariski位相)、閉部分群と呼ぶ。閉部分群 $H$ が連結であるとは、位相空間として連結なことをいう(代数群 の定理「連結な代数群は既約」により既約と同値)。$H$ が可解であるとは、$k$ 点の群として可解群であることをいう。
MilAG は可解性を、各段の商が可換な部分正規列があることで定義し(Definition 8.11、p. 129)、それが導来列が単位元で終わることと同値であることを示す(Proposition 8.28、p. 133)。$k$ が代数閉体でアフィンな群多様体 $G$ については、導来群の $k$ 点が $k$ 点の群の交換子群に一致し(同 Proposition 8.22、p. 132)、導来群はまた連結な群多様体なので(同 Corollary 8.23、p. 132)導来列の各段でこれを繰り返せるから、二つの定義は一致する。
$G$ を $k$ 上の連結な線型代数群とする。$G$ の連結で可解な閉部分群のうち、包含関係について極大なものを $G$ の Borel 部分群(Borel subgroup)という。
連結可解な閉部分群は、たとえば単位元だけの群 $\{1\}$ があるので空でない。連結な閉部分群は既約であり、既約な閉集合の真の既約閉部分集合は次元が真に小さい(次元は既約閉部分集合の鎖の長さの最大値なので。MilAG A.43、p. 500)。よって連結閉部分群の真の増大列では次元が真に増え、その長さは $\dim G$ で抑えられる。したがって、どの連結可解な閉部分群も、それを含む連結可解な閉部分群を次々にとっていくと有限回で極大なものに達し、ある Borel 部分群に含まれる。とくに Borel 部分群は存在し、次元が最大の連結可解な閉部分群は Borel 部分群である(MilAG Definition 18.10 の直後の注意、p. 315)。
$G$ 自身が連結可解なら、Borel 部分群は $G$ だけである。たとえば代数的トーラス $\mathbb{G}_m^n$ や、上三角行列の群そのものがそうである。
Borel 部分群の理論は、次の固定点定理の上に建つ。
$H$ を $k$ 上の連結で可解な線型代数群とし、空でない完備な代数多様体 $X$(たとえば射影多様体)に代数的に作用しているとする。このとき $X$ には $H$ の固定点がある。
この記事では証明しない。MilAG Corollary 18.4(p. 314)にあり、Borel による元の証明の筋は同 18.8(p. 314)に述べられている。筋は次のとおりである。$\dim H$ についての帰納法による。導来群 $H'=(H,H)$ は連結で次元が小さいので、帰納法の仮定から $H'$ の固定点の集合 $X^{H'}$ は空でない閉集合であり、$H'$ が正規なので $H$ で保たれる。軌道のうち次元が最小のものは閉じているので(同 Corollary 9.10、p. 143)、閉じた軌道 $Hx\subset X^{H'}$ がとれる。固定部分群 $H_x$ は $H'$ を含むので正規で、$Hx\cong H/H_x$ はアフィンかつ完備かつ連結となり、1 点である。
旗多様体 $\operatorname{Fl}(V)$ は射影多様体であり(旗多様体 の命題「旗多様体は射影多様体である」)、$GL(V)$ は $g\cdot(V_1\subset\cdots\subset V_{n-1}):=(gV_1\subset\cdots\subset gV_{n-1})$ で代数的に作用する($\operatorname{Fl}(V)$ は $GL(V)$ を標準旗の固定部分群で割った商として表される。MilAG Proposition 9.48 とその直後の注意、p. 149)。
$V$ を $k$ 上の $n$ 次元ベクトル空間とし、$H$ を $GL(V)$ の連結で可解な閉部分群とする。このとき $V$ の完全旗 $0=V_0\subset V_1\subset\cdots\subset V_n=V$ で、すべての $V_i$ が $H$ で保たれるものがある。とくに $V$ の基底をうまくとると、$H$ のすべての元が上三角行列で表される。
$H$ は $GL(V)$ の閉部分群なので、$GL(V)$ の $\operatorname{Fl}(V)$ への作用を制限して $\operatorname{Fl}(V)$ に代数的に作用する。$\operatorname{Fl}(V)$ は空でない射影多様体なので、thm-borel-fixed-point により固定点 $V_\bullet=(V_1\subset\cdots\subset V_{n-1})$ がある。固定点であることは、すべての $h\in H$ と $i$ について $hV_i=V_i$ となることである。$v_i\in V_i\setminus V_{i-1}$ を順に選ぶと、$v_1,\dots,v_i$ は $V_i$ の基底になる($\dim V_i=i$ だから)。$hv_j\in V_j=\langle v_1,\dots,v_j\rangle$ なので、この基底に関する $h$ の行列の第 $j$ 列は第 $j+1$ 行以下が $0$ であり、上三角である。$\square$
この証明は MilAG Corollary 18.6(p. 314)のものである。同書 Theorem 17.33(pp. 300–301)は、固定点定理を使わずに、既約表現が 1 次元であることを $\dim H$ の帰納法で示している。
$GL_n=GL_n(k)$ の上三角行列の全体を $B_n$、対角成分がすべて $1$ の上三角行列の全体を $U_n$、対角行列の全体を $T_n$ と書く。$e_1,\dots,e_n$ を標準基底とし、$E_i:=\langle e_1,\dots,e_i\rangle$ とおく。標準旗 $E_\bullet=(E_1\subset\cdots\subset E_{n-1})$ の固定部分群は $B_n$ である(旗多様体 の命題「等質空間としての記述」)。
$B_n$ は $GL_n$ の連結で可解な閉部分群であり、$B_n=T_n\ltimes U_n$ である。
要点:$B_n$ は上三角行列の空間の空でない開集合なので既約であり、$U_n$ は対角線から $m$ 本目の成分を見る準同型でアーベルな段に分かれる。
閉であること:$B_n$ は $GL_n$ の中で、対角より下の成分が $0$ という多項式の条件で定まる。連結であること:上三角行列の空間は $n(n+1)/2$ 次元のアフィン空間 $\mathbb{A}$ で、$B_n$ はその中の開集合 $\{a_{11}a_{22}\cdots a_{nn}\neq0\}$ である。既約な空間の空でない開集合は既約なので、$B_n$ は既約、とくに連結である。
半直積:対角成分を取り出す写像 $B_n\to T_n$ は準同型(上三角行列の積の対角成分は対角成分の積)で、核は $U_n$、$T_n\subset B_n$ がその切断を与える。可解であること:$B_n/U_n\cong T_n$ は可換なので、交換子群は $U_n$ に入る。$1\le m\le n$ について $U^{(m)}:=\{u\in U_n\mid 0< j-i< m\text{ なら }u_{ij}=0\}$ とおく($U^{(1)}=U_n$、$U^{(n)}=\{1\}$)。$u,v\in U^{(m)}$ について $(uv)_{i,i+m}=\sum_lu_{il}v_{l,i+m}$ の項は $l=i$ と $l=i+m$ 以外では $0$ なので $(uv)_{i,i+m}=u_{i,i+m}+v_{i,i+m}$ であり、同様に $0< j-i< m$ では $(uv)_{ij}=0$ である。$u\in U^{(m)}$ なら $X:=u-I$ の冪も同じ位置の成分が $0$ で $X^n=0$ なので、$u^{-1}=\sum_{l=0}^{n-1}(-X)^l\in U^{(m)}$ である。よって $U^{(m)}$ は部分群で、$m\le n-1$ について$u\mapsto(u_{i,i+m})_i\in k^{n-m}$ は加法群への準同型、その核は $U^{(m+1)}$ である。核が正規部分群で商が可換なので、$U_n=U^{(1)}\supset U^{(2)}\supset\cdots\supset U^{(n)}=\{1\}$ は各段の商が可換な正規列であり、$U_n$ も $B_n$ も可解である。$\square$
$k^n$ の部分空間 $W$ がすべての $b\in B_n$ について $bW=W$ を満たすなら、ある $i$ で $W=E_i$ である。したがって $B_n$ で保たれる完全旗は標準旗 $E_\bullet$ だけである。
$k$ は代数閉体なので無限体であり、相異なる $t_1,\dots,t_n\in k^\times$ がとれる。$t=\operatorname{diag}(t_1,\dots,t_n)\in B_n$ は固有値が相異なり、固有空間は直線 $ke_j$ である。$W$ は $t$ で保たれるので、$t|_W$ は対角化でき(対角化できる線形写像の不変部分空間への制限は対角化できる)、$W$ は $t$ の固有ベクトルで張られる。よって $W=\langle e_j\mid j\in S\rangle$ となる添字の集合 $S$ がある。
$j\in S$、$i< j$ とする。$I+E_{ij}$($E_{ij}$ は $(i,j)$ 成分だけが $1$ の行列)は $B_n$ に属し、$(I+E_{ij})e_j=e_j+e_i\in W$ なので $e_i\in W$、すなわち $i\in S$ である。よって $S$ は $\{1,\dots,\lvert S\rvert\}$ の形で、$W=E_{\lvert S\rvert}$ である。後半は、完全旗の $i$ 番目の部分空間が $i$ 次元であることから従う。$\square$
$n\ge1$ とする。
1:$B_n$ は prop-borel-bn-connected-solvable により連結可解である。$H\supset B_n$ を連結可解な閉部分群とする。thm-borel-lie-kolchin により $H$ で保たれる完全旗 $V_\bullet$ がある。$B_n\subset H$ なので $V_\bullet$ は $B_n$ でも保たれ、lem-borel-bn-stable-subspaces により $V_\bullet=E_\bullet$ である。よって $H$ は $E_\bullet$ の固定部分群 $B_n$ に含まれ、$H=B_n$ である。したがって $B_n$ は極大である。
2:完全旗 $V_\bullet$ は推移性により $V_\bullet=gE_\bullet$ と書け(旗多様体 の命題「等質空間としての記述」)、その固定部分群は $gB_ng^{-1}$ である。共役は連結性・可解性・包含関係を保つので、1 から $gB_ng^{-1}$ は Borel 部分群である。逆に $B'$ を Borel 部分群とすると、thm-borel-lie-kolchin により $B'$ はある完全旗 $gE_\bullet$ を保つので $B'\subset gB_ng^{-1}$ である。右辺は連結可解なので、$B'$ の極大性から $B'=gB_ng^{-1}$ である。
3:$g\in N_{GL_n}(B_n)$ とする。$b\in B_n$ について $g^{-1}bg\in B_n$ なので $bgE_i=g(g^{-1}bg)E_i=gE_i$ であり、完全旗 $gE_\bullet$ は $B_n$ で保たれる。lem-borel-bn-stable-subspaces により $gE_\bullet=E_\bullet$ で、$g$ は $E_\bullet$ の固定部分群 $B_n$ に属する。逆の包含は明らかである。
4:前半は 旗多様体 の命題「等質空間としての記述」である。後半:2 により $V_\bullet\mapsto(V_\bullet\text{ の固定部分群})$ は $\operatorname{Fl}_n$ から Borel 部分群の集合への全射である。$gE_\bullet$ と $g'E_\bullet$ の固定部分群が等しいとすると $gB_ng^{-1}=g'B_ng'^{-1}$ なので $g^{-1}g'\in N_{GL_n}(B_n)=B_n$(3)となり、$g'E_\bullet=gE_\bullet$ である。よって単射でもある。$\square$
$GL_n$ の Borel 部分群が完全旗の固定部分群であることは MilAG Example 18.11(p. 315)にある。同じ例は、非退化な対称双線形形式の直交群 $SO$ の Borel 部分群が、形式が $0$ になる部分空間からなる極大な旗の固定部分群であることも述べている(この記事では証明しない)。
$SL_n$ の Borel 部分群は $B_n\cap SL_n$ の共役である。$B_n\cap SL_n=(T_n\cap SL_n)\ltimes U_n$ で、$T_n\cap SL_n\cong\mathbb{G}_m^{n-1}$(最後の対角成分を残りの積の逆元で決める)は連結である。$B_n\cap SL_n$ は多様体として $(T_n\cap SL_n)\times U_n\cong\mathbb{G}_m^{n-1}\times\mathbb{A}^{n(n-1)/2}$ と同型なので既約、とくに連結であり、可解であることは prop-borel-bn-connected-solvable と同じ理由による。lem-borel-bn-stable-subspaces の証明は、$k$ が無限体なので相異なる対角成分をもつ行列式 $1$ の対角行列がとれること、$I+E_{ij}$ の行列式が $1$ であることだけを使うので、$B_n\cap SL_n$ についても成り立つ。また $g\in GL_n$ を $g\operatorname{diag}((\det g)^{-1},1,\dots,1)$ に取り替えても $gE_\bullet$ は変わらないので、$SL_n$ も完全旗の全体に推移的に作用する。よって thm-borel-gln の証明がそのまま通る。
$n=2$ では、$SL_2$ は射影直線 $\mathbb{P}^1$ に 1 次分数変換で推移的に作用し、点 $[1:0]$ の固定部分群は上三角行列 $\begin{pmatrix}a&b\\0&a^{-1}\end{pmatrix}$ の群 $B$ である。したがって $SL_2/B\cong\mathbb{P}^1$ であり、$SL_2$ の Borel 部分群は $\mathbb{P}^1$ の点、すなわち $k^2$ の直線と 1 対 1 に対応する。
$GL_n$ で示したことは、一般の連結な線型代数群でも成り立つ。
$G$ を $k$ 上の連結な線型代数群、$B$ をその Borel 部分群とする。
1 は MilAG Theorem 18.12 (a)(p. 315)、3 は同 Theorem 18.53(pp. 326–327)、4 は同 Definition 18.19・Theorem 18.21(p. 317)である。1・3・4 はこの記事では証明しない。$GL_n$ の場合の 1 は $GL_n/B_n\cong\operatorname{Fl}_n$(thm-borel-gln の 4)と 旗多様体 の命題「旗多様体は射影多様体である」から従う。2 は 1 と thm-borel-fixed-point から次のように導ける(同 Theorem 18.12 (b) の証明)。
$B'$ を別の Borel 部分群とする。$B'$ は $G/B$ に左からの積 $(b',gB)\mapsto b'gB$ で代数的に作用し、1 により $G/B$ は完備なので、thm-borel-fixed-point により固定点 $gB$ がある。すべての $b'\in B'$ で $b'gB=gB$ なので $g^{-1}b'g\in B$、すなわち $B'\subset gBg^{-1}$ である。$gBg^{-1}$ は連結可解なので、$B'$ の極大性から $B'=gBg^{-1}$ である。$\square$
$GL_n$ の Borel 部分群 $B_n$ と単項行列の群 $N$ は Tits 系をなし(Bruhat分解 の命題「$(B,N)$ は Tits 系をなす」)、$GL_n=\bigsqcup_{w\in S_n}B_nwB_n$ と Bruhat 胞体に分かれる(Bruhat分解 の定理「一般線形群の Bruhat 分解」)。抽象的な群の BN 対の公理(Tits系、BN対)では、Borel 部分群の役割をもつ部分群を $B$ と書く。これを使うと、$B_n$ を含む部分群が決まる。
正の整数で $n=n_1+\dots+n_r$ と分け、$d_t:=n_1+\dots+n_t$ とする。部分旗 $E_{d_1}\subset\cdots\subset E_{d_{r-1}}$ の固定部分群を $Q_{(n_1,\dots,n_r)}$ と書く。これは対角に $n_1,\dots,n_r$ 次の正方ブロックを並べたブロック上三角行列の群である($r=n$ なら $B_n$、$r=1$ なら $GL_n$)。$GL_n$ の部分群で $B_n$ を含むものは、ちょうどこれらの $Q_{(n_1,\dots,n_r)}$ である。閉であることは仮定しない。
要点:$B_n$ を含む部分群は Tits 系の標準的放物型部分群 $P_I$ に限り、Bruhat 分解で $P_I$ を置換行列の言葉に直す。
$Q:=Q_{(n_1,\dots,n_r)}$ とし、$d_0:=0$、$d_r:=n$ とおき、$d_{t-1}< j\le d_t$ のとき $\beta(j):=t$ とする。$g$ が $E_{d_t}$ を保つことは、$j\le d_t< i$ を満たす $(i,j)$ 成分がすべて $0$ であることと同値である。よって $g\in Q$ であるのは、$\beta(i)>\beta(j)$ なら $g_{ij}=0$ となるとき、すなわち $g$ がブロック上三角であるときに限る。$B_n$ は各 $E_i$ を保つので、$Q$ は $B_n$ を含む部分群である。
逆に $P\supset B_n$ を部分群とする。Bruhat分解 の命題「$(B,N)$ は Tits 系をなす」により、隣接互換 $s_i=(i\ i+1)$ の集合を $S$ として $(GL_n,B_n,N,S)$ は Tits 系で、その Weyl 群は $S_n$ である。Tits系、BN対 の定理「標準的放物型部分群の分類」により、ある $I\subseteq S$ について $P=P_I=\bigcup_{w\in W_I}B_nP_wB_n$ となる。ここで $W_I$ は $I$ で生成される部分群、$P_w$ は $P_we_j=e_{w(j)}$ で定まる置換行列である。$S\setminus I=\{s_{d_1},\dots,s_{d_{r-1}}\}$($d_1<\dots< d_{r-1}$)と書き、$d_0:=0$、$d_r:=n$、$n_t:=d_t-d_{t-1}$、$Q:=Q_{(n_1,\dots,n_r)}$ とおいて、$P_I=Q$ を示す。$s_i\in I$ であるのは、$i$ と $i+1$ が同じブロック $\{d_{t-1}+1,\dots,d_t\}$ に入るときである。
$P_w$ の $0$ でない成分は $(w(j),j)$ にあるので、$P_w\in Q$ であるのは、すべての $j$ で $\beta(w(j))\le\beta(j)$ となるときに限る。このとき $w$ は各 $\{1,\dots,d_t\}$ をそれ自身の中へ写し、有限集合の単射なので上へ写す。よって $w$ は各ブロックを保つ。逆にブロックを保つ置換はこの条件を満たす。ブロックを保つ置換の群は各ブロックの対称群の積であり、各ブロックの対称群はそのブロックの中の隣接互換、すなわち $I$ の元で生成される(対称群 の定理「互換による生成」)。$I$ の元はブロックを保つので、ブロックを保つ置換の群は $W_I$ に等しい。よって $P_w\in Q$ と $w\in W_I$ は同値である。
$w\in W_I$ なら $P_w\in Q$ で $B_n\subset Q$ なので、$P_I\subset Q$ である。逆に $g\in Q$ とすると、Bruhat分解 の定理「一般線形群の Bruhat 分解」により $g\in B_nP_wB_n$ となる $w$ があり、$P_w\in B_ngB_n\subset Q$ なので $w\in W_I$、すなわち $g\in P_I$ である。したがって $P=P_I=Q$ である。$\square$
$Q_{(n_1,\dots,n_r)}$ は $B_n$ を含む閉部分群なので、thm-borel-main の 4 により放物型部分群である(部分旗の固定部分群が放物型部分群であることは MilAG Example 18.20、p. 317 にもある)。thm-borel-gln の 2 により $GL_n$ の Borel 部分群は $B_n$ の共役なので、$GL_n$ の放物型部分群はちょうど $Q_{(n_1,\dots,n_r)}$ たちの共役である。
極大トーラスは連結可解なので、ある Borel 部分群に含まれる。Borel 部分群がすべて共役であることと、連結可解な群の中で極大トーラスが共役であることから、極大トーラスもすべて共役である(MilAG Theorem 18.14 と Definition 18.16 の直後の注意、p. 316。この記事では証明しない)。$GL_n$ では極大トーラスは $T_n$ の共役である。
$k=\mathbb{C}$ のとき、$GL_n(\mathbb{C})/B_n\cong\operatorname{Fl}_n$ にはユニタリ群 $U(n)$ も推移的に作用し、$\operatorname{Fl}_n\cong U(n)/T$($T$ は対角ユニタリ行列のトーラス)はコンパクトである(旗多様体 の注意「一般の旗多様体と実形」)。$G/B$ 上の直線束の大域切断として既約表現を作るのが Borel–Weil の定理である(旗多様体 の定理「Borel–Weil の定理」)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 係数体が代数閉体 | $\mathbb{R}$ 上の回転行列の群 $SO(2)\subset GL_2(\mathbb{R})$ | Lie–Kolchin の定理:共通の固有ベクトルがなく、$\mathbb{R}$ 上で三角化できない |
| 部分群が連結 | 代数閉体 $k$ 上の単項行列の群 $N\subset GL_2(k)$ | Lie–Kolchin の定理:可解なのに三角化できず、どの Borel 部分群にも含まれない |
| 作用する群が可解 | $GL_2$ の $\mathbb{P}^1$ への 1 次分数変換による作用 | 固定点定理:固定点がない |
| 作用される多様体が完備 | $\mathbb{G}_m$ の $\mathbb{G}_m=\mathbb{P}^1\setminus\{0,\infty\}$ への積による作用 | 固定点定理:固定点がない |
1 行目:$SO(2)$ は可換なので可解であり、代数群として $\mathbb{R}$ 上の 1 次元トーラス($x^2+y^2=1$)で連結である。$\theta\notin\pi\mathbb{Z}$ の回転は実の固有値をもたないので、$\mathbb{R}^2$ の直線で $SO(2)$ 全体に保たれるものはない。$\mathbb{C}$ 上では固有ベクトル $(1,\mp i)$ で対角化される。
2 行目:$N$ は対角行列の群 $T_2$ と $s=\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}$ で生成され、$T_2$ は可換で $N/T_2$ は位数 $2$ なので $N$ は可解である。$N=T_2\sqcup sT_2$ は二つの連結成分をもつ。$a\in k\setminus\{0,1\}$ について $t=\operatorname{diag}(a,1)$ の固有直線は $ke_1$ と $ke_2$ だけで、$s$ はこの二つを入れ替えるので、$N$ 全体で保たれる直線はない。Borel 部分群は thm-borel-gln により三角化できるので、$N$ はどの Borel 部分群にも含まれない。可解な部分群のうち極大なものと、連結可解な部分群のうち極大なもの(Borel 部分群)は別物である。
3 行目:$GL_2$ は 4 次元のアフィン空間の空でない開集合 $\{\det\neq0\}$ なので既約、とくに連結である。しかし可解でない。実際、可解なら thm-borel-lie-kolchin により $k^2$ のある直線を保つはずだが、$GL_2$ は $k^2\setminus\{0\}$ に推移的に作用するので、どの直線も保たない。同じ理由で $GL_2$ は $\mathbb{P}^1$ に推移的に作用し、固定点はない。
4 行目:$\mathbb{G}_m$ は連結可解で、自分自身に積で自由に作用するので固定点がない。$\mathbb{G}_m$ は無限個の点をもつアフィン多様体なので完備でない(完備なアフィン代数的スキームは有限なものに限る。MilAG A.114 (g)、p. 511)。$\mathbb{P}^1$ に延ばした作用では $0$ と $\infty$ が固定点になる。
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