Tateの学位論文(Tate's thesis)とは、J. Tate が 1950 年の学位論文で行った、Hecke L 関数を局所体とアデール上の Fourier 解析で扱う方法である。非アルキメデス局所体 $F$ 上の局所定数でコンパクトな台の関数 $f$ と擬指標 $c$ のゼータ積分 $Z(f,c)=\int_{F^\times}f(x)c(x)\,d^\times x$ を考えると、その指数が $0$ と $1$ の間にあれば $Z(f,c)Z(\hat g,\hat c)=Z(\hat f,\hat c)Z(g,c)$ という局所関数等式が成り立ち、$f$ によらない比 $\rho(c)$ から局所 $L$ 因子と $\varepsilon$ 因子が現れる。これらをアデール上の Poisson 和公式で貼り合わせると、Hecke L 関数の解析接続と関数等式が得られる。
前提知識: 局所体, Fourier変換, イデールとイデール類群, Hecke指標とHecke L関数
Tateの学位論文(Tate's thesis)とは、J. Tate が 1950 年の学位論文で行った、数体のゼータ関数・Hecke L 関数を局所体とアデール上の Fourier 解析で扱う方法のことである。局所体ごとに「ゼータ積分」という乗法的な Fourier 変換を考え、その関数等式を各素点で示し、それらをアデール上の Poisson 和公式で貼り合わせると、Hecke L 関数の解析接続と関数等式が得られる。
Hecke はテータ級数の変換公式を数体ごとに組み立てて関数等式を示した。Tate の方法では、関数等式の局所的な部分(Γ 因子、Euler 因子、導手と Gauss 和の因子)が 1 つの局所理論から同じ形で出てくる。この局所理論は、のちに $\operatorname{GL}_n$ の表現の $L$ 因子・$\varepsilon$ 因子の理論の手本になり、局所Langlands対応 の $n=1$ の場合の言葉を与えた。
この記事では、非アルキメデス局所体の上で、ゼータ積分の収束と有理性、局所関数等式(主定理)を証明し、不分岐の場合に局所因子を計算する。大域的な主定理(アデール上の Poisson 和公式による解析接続)は所在を示して述べ、そこから Riemann ゼータ関数の関数等式を導く。
以下、$F$ を非アルキメデス局所体とする。整数環を $\mathcal{O}$、素元を $\varpi$、剰余体の位数を $q$、正規化された付値を $v\colon F^\times\to\mathbb{Z}$、絶対値を $\lvert x\rvert=q^{-v(x)}$ とする。$U^{(0)}:=\mathcal{O}^\times$、$m\ge1$ に対し $U^{(m)}:=1+\varpi^m\mathcal{O}$ とおく。
加法的な測度と指標. $F$ の Haar 測度 $dx$ を $\operatorname{vol}(\mathcal{O})=1$ と正規化する。$a\in F^\times$ に対し $d(ax)=\lvert a\rvert\,dx$ である(Tat67 Lemma 2.2.5, p. 310)。連続な準同型 $\psi\colon F\to\mathbb{C}^{\times}$ で、$\mathcal{O}$ の上で自明かつ $\varpi^{-1}\mathcal{O}$ の上で自明でないものを 1 つ固定する(存在は下の注意)。
$F$ が $\mathbb{Q}_p$ の有限次拡大なら、$\mathbb{Q}_p$ の $p$ 進小数部分 $\lambda$ を使った $x\mapsto e^{2\pi i\lambda(\operatorname{Tr}_{F/\mathbb{Q}_p}x)}$ は自明でない連続指標である(Tat67 Lemma 2.2.2 と Theorem 2.2.1, p. 309)。$F=\mathbb{F}_{q}(\!(t)\!)$ なら、$t^{-1}$ の係数 $\operatorname{res}(x)$ を使った $x\mapsto e^{2\pi i\operatorname{Tr}_{\mathbb{F}_q/\mathbb{F}_p}(\operatorname{res}x)/p}$ が $\mathcal{O}$ の上で自明、$t^{-1}\mathbb{F}_q$ の上で自明でない指標である。自明でない連続指標 $\psi_0$ から条件を満たす $\psi$ を作るには、$\psi_0$ が自明になる $\varpi^{n}\mathcal{O}$ のうち $n$ が最小のもの $\varpi^d\mathcal{O}$ をとり $\psi(x):=\psi_0(\varpi^dx)$ とすればよい(連続性から $n$ が大きければ $\psi_0(\varpi^n\mathcal{O})$ は $\mathbb{C}^\times$ の $1$ の近くにある部分群なので $\{1\}$ になり、$\psi_0$ が自明でないので $n$ は下に有界である)。
Schwartz–Bruhat 関数と Fourier 変換. 局所定数でコンパクトな台をもつ関数 $f\colon F\to\mathbb{C}$ 全体を $\mathcal{S}(F)$ と書く。$f\in\mathcal{S}(F)$ の Fourier 変換を
$$
\hat f(y):=\int_F f(x)\psi(xy)\,dx
$$
と定める。
乗法的な測度と擬指標. $F^\times$ の Haar 測度を $d^\times x:=dx/\lvert x\rvert$ とする($d(ax)=\lvert a\rvert dx$ により $F^\times$ の積で不変)。$\operatorname{vol}^\times(\varpi^n\mathcal{O}^\times)=q^{n}\cdot q^{-n}(1-q^{-1})=1-q^{-1}$ である。連続な準同型 $c\colon F^\times\to\mathbb{C}^\times$ を擬指標(quasi-character)、$\lvert c\rvert=1$ のものを指標という。$\mathcal{O}^\times$ の上で自明な擬指標を不分岐という。
$c$ を擬指標とする。
要点:$\lvert c\rvert$ はコンパクト群 $\mathcal{O}^\times$ の上で $1$ になり、$\mathbb{C}^\times$ は $1$ の近くに $\{1\}$ 以外の部分群をもたない。
$\mathbb{C}^\times$ の部分群 $H$ が $\{z:\lvert z-1\rvert<1\}$ に含まれれば $H=\{1\}$ である。実際 $z\in H$ なら $z^{k}$($k\in\mathbb{Z}$)がすべてこの円板に入り $\lvert z\rvert^k<2$ だから $\lvert z\rvert=1$ であり、$z=e^{i\theta}\ne1$ なら $k\theta$ を $2\pi$ で割った余りが $[\pi/2,3\pi/2]$ に入る $k\in\mathbb{Z}$ があって $\lvert z^k-1\rvert\ge\sqrt2$ となる。
1:$\lvert c\rvert$ は $F^\times$ から $\mathbb{R}_{>0}$ への連続準同型で、コンパクト群 $\mathcal{O}^\times$ の像は $\mathbb{R}_{>0}$ のコンパクト部分群、すなわち $\{1\}$ である。よって $x=\varpi^{v(x)}u$ に対し $\lvert c(x)\rvert=\lvert c(\varpi)\rvert^{v(x)}$ で、$\sigma:=-\log_q\lvert c(\varpi)\rvert$ とおけばよい。一意性は $\lvert\varpi\rvert\ne1$ による。$\chi:=c\lvert\cdot\rvert^{-\sigma}$ は指標である。
2:$c$ の連続性から、$m$ が大きければ $c(U^{(m)})\subset\{z:\lvert z-1\rvert<1\}$ であり、最初の段落により $c(U^{(m)})=\{1\}$ である。$\square$
$f\in\mathcal{S}(F)$ と指数が正の擬指標 $c$ に対し
$$
Z(f,c):=\int_{F^\times}f(x)\,c(x)\,d^\times x
$$
をゼータ積分(局所ゼータ関数、zeta integral)という。指標 $\chi$ と $\operatorname{Re}s>0$ に対し $Z(f,\chi,s):=Z(f,\chi\lvert\cdot\rvert^s)$ と書く。
これは $f$ の「乗法的な Fourier 変換」であり、$s$ の関数として見ると局所的な $L$ 因子が現れる。$\chi$ に付随する局所 $L$ 因子を
$$
L(s,\chi):=\begin{cases}(1-\chi(\varpi)q^{-s})^{-1}&(\chi\text{ が不分岐}),\\ 1&(\chi\text{ が分岐する})\end{cases}
$$
と定める(不分岐なら $\chi(\varpi)$ は素元の選び方によらない)。
$\chi$ を指標、$f\in\mathcal{S}(F)$ とする。
$f\in\mathcal{S}(F)$ なので、整数 $a,b$($b\ge-a$)があって、$f$ の台は $\varpi^{-a}\mathcal{O}$ に含まれ、$f$ は $\varpi^{b}\mathcal{O}$ の剰余類の上で一定である。とくに $f$ は $\varpi^b\mathcal{O}$ の上で $f(0)$ に等しい。$F^\times=\bigsqcup_{n\in\mathbb{Z}}\varpi^n\mathcal{O}^\times$ と分け、
$$
a_n:=\int_{\varpi^n\mathcal{O}^\times}f(x)\chi(x)\,d^\times x
$$
とおくと、$\varpi^n\mathcal{O}^\times$ の上で $\lvert x\rvert^s=q^{-ns}$ だから
$$
Z(f,\chi,s)=\sum_{n\ge-a}a_n\,q^{-ns}
$$
である。$\lvert a_n\rvert\le(1-q^{-1})\sup\lvert f\rvert$ なので、$\operatorname{Re}s=\sigma>0$ なら右辺は公比 $q^{-\sigma}$ の等比級数で押さえられて絶対収束し、広義一様収束だから正則である(1)。
$n\ge b$ なら $f=f(0)$ が $\varpi^n\mathcal{O}^\times$ の上で成り立つので、$x=\varpi^nu$ と置き換えて
$$
a_n=f(0)\chi(\varpi)^n\int_{\mathcal{O}^\times}\chi(u)\,d^\times u
$$
となる。コンパクト群 $\mathcal{O}^\times$ の上の指標の積分は、$\chi$ が $\mathcal{O}^\times$ の上で自明なら $1-q^{-1}$、そうでなければ $0$ である(自明でないなら $\chi(u_0)\ne1$ の $u_0$ で置き換えると積分が $\chi(u_0)$ 倍になる)。よって分岐する $\chi$ では和は有限で、$Z$ は $q^{\pm s}$ の多項式である。不分岐の $\chi$ では、$X:=\chi(\varpi)q^{-s}$ として
$$
Z(f,\chi,s)=\sum_{n=-a}^{b-1}a_nq^{-ns}+f(0)(1-q^{-1})\frac{X^{b}}{1-X}
$$
であり、$L(s,\chi)^{-1}=1-X$ を掛けると $q^{\pm s}$ の多項式になる(2)。
3:2 により $Z(f,\chi,s)$ は $L(s,\chi)\mathbb{C}[q^{-s},q^s]$ に入り、$f\mapsto Z(f,\chi,s)$ は線型なので、像は部分空間である。$m\in\mathbb{Z}$ に対し $f_m:=\chi^{-1}\mathbf 1_{\varpi^m\mathcal{O}^\times}$ は $\mathcal{S}(F)$ に入り($\varpi^m\mathcal{O}^\times$ は開かつコンパクトで、$\chi^{-1}$ は prop-tth-exponent の 2 によりその上で局所定数)、$Z(f_m,\chi,s)=(1-q^{-1})q^{-ms}$ である。分岐する $\chi$ ではこれで全体が出る。不分岐の $\chi$ では $\mathbf 1_{\varpi^m\mathcal{O}}$ について上の計算($a=-m$、$b=m$)から $Z(\mathbf 1_{\varpi^m\mathcal{O}},\chi,s)=(1-q^{-1})X^mL(s,\chi)$ となり、$L(s,\chi)$ に $q^{\pm s}$ の単項式を掛けたものがすべて出る。$m=0$ が最後の式である。$\square$
$L(s,\chi)$ は「ゼータ積分の分母」として特徴づけられる:分岐する指標では極は現れず、不分岐の指標では $\chi(\varpi)q^{-s}=1$ の点にだけ極が現れる。この $L$ 因子をすべての有限素点で掛けたものが Hecke L 関数の Euler 積である。
擬指標 $c$ に対し $\hat c(x):=\lvert x\rvert\,c(x)^{-1}$ とおく。$c=\chi\lvert\cdot\rvert^{s}$ なら $\hat c=\chi^{-1}\lvert\cdot\rvert^{1-s}$ であり、$c$ の指数 $\sigma$ に対し $\hat c$ の指数は $1-\sigma$ である。したがって $0<\sigma<1$ なら $Z(f,c)$ と $Z(g,\hat c)$ はどちらも thm-tth-rationality の 1 により絶対収束する。
$f\in\mathcal{S}(F)$ の台が $\varpi^{-a}\mathcal{O}$ に含まれ、$f$ が $\varpi^{b}\mathcal{O}$ の剰余類の上で一定なら、$\hat f$ の台は $\varpi^{-b}\mathcal{O}$ に含まれ、$\hat f$ は $\varpi^{a}\mathcal{O}$ の剰余類の上で一定である。とくに $\hat f\in\mathcal{S}(F)$ である。また $\hat{\mathbf 1}_{\mathcal{O}}=\mathbf 1_{\mathcal{O}}$ である。
要点:平行移動の不変性と $\psi$ の導手から、台と局所定数性が入れ替わる。
$z\in\varpi^a\mathcal{O}$ なら、$f$ の台の $x$ について $xz\in\mathcal{O}$、$\psi(xz)=1$ なので $\hat f(y+z)=\hat f(y)$ である。次に $v(y)<-b$ とする。$t\in\varpi^b\mathcal{O}$ について $f(x+t)=f(x)$ だから、積分変数を $x+t$ に置き換えて $\hat f(y)=\psi(ty)\hat f(y)$ となる。$t$ が $\varpi^b\mathcal{O}$ を動くと $ty$ は $\varpi^{b+v(y)}\mathcal{O}\supseteq\varpi^{-1}\mathcal{O}$ を動くので、$\psi(ty)\ne1$ となる $t$ があり、$\hat f(y)=0$ である。最後に $\hat{\mathbf 1}_{\mathcal{O}}(y)=\int_{\mathcal{O}}\psi(xy)\,dx$ は、$x\mapsto\psi(xy)$ がコンパクト群 $\mathcal{O}$ の上で自明なら($y\in\mathcal{O}$ のとき)$\operatorname{vol}(\mathcal{O})=1$、自明でなければ $0$ である。$y\notin\mathcal{O}$ なら $y\mathcal{O}\supseteq\varpi^{-1}\mathcal{O}$ なので自明でない。$\square$
次が局所理論の主定理である。
$c$ を指数 $\sigma$ が $0<\sigma<1$ の擬指標とする。任意の $f,g\in\mathcal{S}(F)$ について
$$
Z(f,c)\,Z(\hat g,\hat c)=Z(\hat f,\hat c)\,Z(g,c)
$$
が成り立つ。
左辺は 2 つの絶対収束積分の積なので、$F^\times\times F^\times$ 上の絶対収束する 2 重積分
$$
\iint f(x)\,\hat g(y)\,c(xy^{-1})\,\lvert y\rvert\,d^\times x\,d^\times y
$$
に等しい($\hat c(y)=\lvert y\rvert c(y)^{-1}$)。変数変換 $(x,y)\mapsto(x,xy)$ は $F^\times\times F^\times$ の測度を保つ同相写像なので、積分は
$$
\iint f(x)\,\hat g(xy)\,c(y^{-1})\,\lvert xy\rvert\,d^\times x\,d^\times y
$$
に等しく、これも絶対収束する。Fubini の定理により、これは
$$
\int_{F^\times}c(y^{-1})\lvert y\rvert\left(\int_{F^\times}f(x)\hat g(xy)\lvert x\rvert\,d^\times x\right)d^\times y
$$
に等しい。$\lvert x\rvert d^\times x=dx$ で、$\{0\}$ は測度 $0$ なので、内側の積分は
$$
I(f,g;y):=\int_F f(x)\,\hat g(xy)\,dx=\int_F\int_F f(x)g(t)\psi(xyt)\,dt\,dx=\int_F g(t)\,\hat f(yt)\,dt
$$
である。ここで $f,g$ は有界でコンパクトな台をもつので、2 重積分は絶対収束し、積分の順序を入れ替えてよい。最右辺は $I(g,f;y)$ であり、$I$ は $f$ と $g$ について対称である。
以上の計算は $f$ と $g$ を入れ替えても同じように成り立つ($Z(g,c)$ と $Z(\hat f,\hat c)$ も絶対収束する)。よって
$$
Z(f,c)Z(\hat g,\hat c)=\int_{F^\times}c(y^{-1})\lvert y\rvert\,I(f,g;y)\,d^\times y=\int_{F^\times}c(y^{-1})\lvert y\rvert\,I(g,f;y)\,d^\times y=Z(g,c)Z(\hat f,\hat c)
$$
である。$\square$
関数等式の要点は、$f$ と $g$ の入った 2 重積分を「加法的な変数」と「乗法的な変数」に分けると、加法的な部分 $I(f,g;y)$ が Fourier 変換の性質だけで対称になることである。$f$ によらない比を取り出すと、次の形になる。
$\chi$ を指標とする。$0<\operatorname{Re}s<1$ で定義された関数 $\rho(\chi,s)$ がただ 1 つあって、すべての $f\in\mathcal{S}(F)$ について
$$
Z(f,\chi,s)=\rho(\chi,s)\,Z(\hat f,\chi^{-1},1-s)
$$
が成り立つ。$\rho(\chi,s)$ は $L(s,\chi)\,\mathbb{C}[q^{-s},q^s]$ に属し、この等式は両辺の有理型接続として全平面で成り立つ。
$k\ge\max(1,a(\chi))$ をとり、$g(x):=\psi(-x)\mathbf 1_{\varpi^{-k}\mathcal{O}}(x)$ とおく。$\hat g(y)=\int_{\varpi^{-k}\mathcal{O}}\psi(x(y-1))\,dx$ は、lem-tth-fourier の証明と同じ理由で、$y-1\in\varpi^k\mathcal{O}$ なら $\operatorname{vol}(\varpi^{-k}\mathcal{O})=q^{k}$、そうでなければ $0$ である。つまり $\hat g=q^k\mathbf 1_{U^{(k)}}$ である。$U^{(k)}$ の上で $\chi^{-1}\lvert\cdot\rvert^{1-s}=1$ なので、
$$
Z(\hat g,\chi^{-1},1-s)=q^k\operatorname{vol}^\times(U^{(k)})
$$
は $s$ によらない正の数である。そこで $\rho(\chi,s):=Z(g,\chi,s)/Z(\hat g,\chi^{-1},1-s)$ と定めると、thm-tth-local-fe から $Z(f,\chi,s)Z(\hat g,\chi^{-1},1-s)=Z(\hat f,\chi^{-1},1-s)Z(g,\chi,s)$ なので、求める等式が従う。一意性は $f=g$ を代入すれば分かる。thm-tth-rationality の 2 により $Z(g,\chi,s)\in L(s,\chi)\mathbb{C}[q^{-s},q^s]$ である。等式の両辺は $q^{-s}$ の有理関数なので、帯状領域での一致から全平面での一致が従う。$\square$
$\rho$ の具体形は次の例で不分岐の場合に計算する。分岐する指標 $\chi$(導手の指数 $a(\chi)=n\ge1$)では、$\rho(\chi,s)$ は $q^{n(s-1/2)}$ に絶対値 $1$ の数(Gauss 和で表される「根数」)を掛けた形になる(Tat67 §2.5, p. 322。この記事では証明しない)。$\rho$ の逆数を $L(1-s,\chi^{-1})/L(s,\chi)$ で割ったもの $\varepsilon(s,\chi,\psi)$、すなわち
$$
\frac{Z(\hat f,\chi^{-1},1-s)}{L(1-s,\chi^{-1})}=\varepsilon(s,\chi,\psi)\,\frac{Z(f,\chi,s)}{L(s,\chi)}
$$
で定まる $q^{-s}$ の関数を、$\chi$ の $\varepsilon$ 因子という。$\operatorname{GL}_n$ の生成的な表現(超尖点表現を含む)の $L$ 因子・$\varepsilon$ 因子も、Whittaker 模型の上のゼータ積分が生成する分数イデアルの生成元と、この形の関数等式で定められ、$n=1$ では Tate の因子に一致する(Wed00 (2.5.1), pp. 30–31 と (2.5.3), p. 33)。
$\chi$ を不分岐な指標、$X=\chi(\varpi)q^{-s}$ とする。$f=\mathbf 1_{\mathcal{O}}$ をとると、lem-tth-fourier により $\hat f=\mathbf 1_{\mathcal{O}}$ であり、thm-tth-rationality の 3 を $\chi$ と $\chi^{-1}$ に使うと
$$
Z(\mathbf 1_{\mathcal{O}},\chi,s)=\frac{1-q^{-1}}{1-\chi(\varpi)q^{-s}},\qquad
Z(\mathbf 1_{\mathcal{O}},\chi^{-1},1-s)=\frac{1-q^{-1}}{1-\chi(\varpi)^{-1}q^{s-1}}
$$
である。よって
$$
\rho(\chi,s)=\frac{1-\chi(\varpi)^{-1}q^{s-1}}{1-\chi(\varpi)q^{-s}}=\frac{L(s,\chi)}{L(1-s,\chi^{-1})}
$$
となり、$\varepsilon$ 因子は $1$ である。$F=\mathbb{Q}_p$、$\chi=1$ の場合は Riemann ゼータ関数の Euler 因子 $(1-p^{-s})^{-1}$ と、関数等式の $s\leftrightarrow1-s$ の入れ替えの局所版である(Tat67 §2.5, p. 320 と p. 322 の式は、$\psi$ の取り方による因子 $(N\mathfrak{d})^{s-1/2}$ を除いてこれと一致する)。
$F=\mathbb{R}$、$\psi(x)=e^{2\pi ix}$、$dx$ を Lebesgue 測度、$d^\times x=dx/\lvert x\rvert$ とする。Gauss 関数 $f(x)=e^{-\pi x^2}$ は $\hat f=f$ を満たし、$x=\sqrt{u/\pi}$ と置換すると
$$
Z(f,\lvert\cdot\rvert^s)=2\int_0^\infty e^{-\pi x^2}x^{s-1}\,dx=\pi^{-s/2}\,\Gamma(s/2)\qquad(\operatorname{Re}s>0)
$$
である。thm-tth-local-fe の証明は、$\mathcal{S}(F)$ を急減少関数の空間に替えると $\mathbb{R}$ と $\mathbb{C}$ でもそのまま通る(Tat67 Lemma 2.4.2, p. 314 はアルキメデス的な場合も含む)。このとき $\rho(\lvert\cdot\rvert^s)=\pi^{-s/2}\Gamma(s/2)\big/\pi^{-(1-s)/2}\Gamma((1-s)/2)$ である(同 p. 317)。こうして Riemann ゼータ関数の完備化に現れる Γ 因子 $\pi^{-s/2}\Gamma(s/2)$ が、実数体の「局所 $L$ 因子」として現れる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $f$ の台がコンパクト | $f=\mathbf 1_F$(局所定数) | $Z(f,\lvert\cdot\rvert^s)$ がある $s$ で収束すること |
| 指数が正 | $f=\mathbf 1_{\mathcal{O}}$、$c=1$ | $Z(f,c)$ の収束 |
| $\psi$ が $\mathcal{O}$ の上で自明で $\varpi^{-1}\mathcal{O}$ の上で自明でない | $\psi'(x):=\psi(\varpi^{-1}x)$ | 不分岐の $\chi$ で $\varepsilon$ 因子が $1$ であること |
各行は表の条件だけを外している。
1 行目:$\mathbf 1_F$ は定数なので局所定数である。$\varpi^n\mathcal{O}^\times$ の上の積分は $(1-q^{-1})q^{-ns}$ なので、$\sum_{n\in\mathbb{Z}}q^{-n\sigma}$ が収束する必要があるが、$n\to+\infty$ では $\sigma>0$、$n\to-\infty$ では $\sigma<0$ が要り、どの $\sigma$ でも発散する。
2 行目:$c=1$ の指数は $0$ で、$Z(\mathbf 1_{\mathcal{O}},1)=\sum_{n\ge0}(1-q^{-1})$ は発散する。
3 行目:$\psi'$ は $\varpi\mathcal{O}$ の上で自明で $\mathcal{O}$ の上で自明でない。lem-tth-fourier の証明と同じ計算で、$\psi'$ に関する Fourier 変換は $\mathbf 1_{\mathcal{O}}$ を $\mathbf 1_{\varpi\mathcal{O}}$ に写す。$\chi$ が不分岐なら $Z(\mathbf 1_{\varpi\mathcal{O}},\chi^{-1},1-s)=(1-q^{-1})\chi(\varpi)^{-1}q^{s-1}L(1-s,\chi^{-1})$ なので、$\psi'$ に対する比は $\chi(\varpi)q^{1-s}L(s,\chi)/L(1-s,\chi^{-1})$ となり、$\varepsilon$ 因子は $\chi(\varpi)^{-1}q^{s-1}$ になる。
3 行目は、$\varepsilon$ 因子が加法指標 $\psi$ の取り方によることを示す。大域的には、各素点の $\psi_v$ の積が $K$ の上で自明になるように選ぶため、有限個の素点で導手が $\mathcal{O}_v$ からずれ、その積が判別式の冪として関数等式に現れる。
$K$ を数体、$\mathbb{A}_K$ をアデール環、$J_K=\mathbb{A}_K^\times$ をイデール群とする(アデール、イデールとイデール類群)。各素点 $v$ の局所体 $K_v$ に上の局所理論を当て、その積で大域的な対象を作る。Tate は次の 3 段で大域理論を組み立てた。この節の主張はこの記事では証明しない。
$K=\mathbb{Q}$ とし、大域理論の測度の正規化は Tat67 のもの($p$ 進体では $d^\times x=\frac{p}{p-1}\frac{dx}{\lvert x\rvert}$、p. 313)に従う。$f_\infty(x)=e^{-\pi x^2}$、$f_p=\mathbf 1_{\mathbb{Z}_p}$、$f=\prod_vf_v$、$c=\lvert\cdot\rvert^s$ とする。加法指標は Tat67(p. 309)のとおり $\psi_\infty(x)=e^{-2\pi ix}$、$\psi_p(x)=e^{2\pi i\lambda(x)}$ とする(積は $\mathbb{Q}$ 上で自明)。Gauss 関数は偶関数なので符号によらず $\hat f_\infty=f_\infty$ で、各 $f_v$ は $\hat f_v=f_v$ を満たすので $\hat f=f$ である(ex-tth-real、lem-tth-fourier。$\psi_p$ は $\mathbb{Z}_p$ の上で自明で $p^{-1}\mathbb{Z}_p$ の上で自明でないので、$\operatorname{vol}(\mathbb{Z}_p)=1$ の測度で上の局所理論が当てはまる)。ex-tth-unramified の計算をこの正規化に直すと $\zeta_p(\mathbf 1_{\mathbb{Z}_p},\lvert\cdot\rvert^s)=(1-p^{-s})^{-1}$ だから、$\operatorname{Re}s>1$ で
$$
\zeta(f,\lvert\cdot\rvert^{s})=\pi^{-s/2}\Gamma(s/2)\prod_p\frac{1}{1-p^{-s}}=\pi^{-s/2}\Gamma(s/2)\,\zeta(s)=:\Lambda(s)
$$
である。主定理の関数等式で $\hat f=f$、$\hat c=\lvert\cdot\rvert^{1-s}$ とすると、$\Lambda(s)$ は全平面に有理型に延び、
$$
\Lambda(s)=\Lambda(1-s)
$$
を満たす。$\mathbb{Q}$ では $r_1=1$、$r_2=0$、$h=R=1$、$d=1$、$w=2$ なので $\kappa=1$ であり、極は $s=0,1$ の 1 位の極だけで、$s=1$ での留数は $\hat f(0)=1$ である。$\Gamma(1/2)=\sqrt\pi$ と合わせると、$\zeta(s)$ の $s=1$ での留数が $1$ であることも出る。この例の結論は主定理(この記事では証明しない)に依存している。
一般の数体と Hecke 指標でも同じ計算により、完備化した Hecke L 関数の解析接続と関数等式が得られ、関数等式の定数は各素点の $\rho$ 因子(Gauss 和)の積として現れる(Tat67 §4.5, pp. 341–346)。
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