Sobolevの不等式(Sobolev inequalities)とは、弱微分の $L^p$ 評価から関数の高い可積分性やHölder正則性を導く不等式の総称である。劣臨界・臨界・超臨界の場合、領域条件、コンパクト埋め込み、スケーリングによる反例を区別する。
Sobolev不等式は、弱微分の $L^p$ 評価から関数自身のより高い可積分性や連続性を導く不等式である。その帰結を、二つの関数空間の間の連続な包含として述べたものがSobolev埋め込みである。どの空間へ埋め込めるかは、微分階数、次元、積分指数、領域の幾何によって変わる。
本記事では一階の場合を中心に、劣臨界 $p< n$、臨界 $p=n$、超臨界 $p>n$ を区別する。弱微分と $W^{k,p}$ の定義、完備性、滑らかな近似、Poincaré不等式そのものは Sobolev空間の基本事項 に譲る。
$1\leq p< n$ に対して
$$
p^*:=\frac{np}{n-p}
$$
を $p$ のSobolev共役指数という。これは
$$
\frac1{p^*}=\frac1p-\frac1n
$$
を満たす。
$\varphi\in C_c^\infty(\mathbb R^n)$、$1\leq p< n$ とし、$\lambda>0$ に対して
$$
u_\lambda(x):=\lambda^{n/p-1}\varphi(\lambda x)
$$
とおく。このとき
$$
\|\nabla u_\lambda\|_{L^p(\mathbb R^n)}
=\|\nabla\varphi\|_{L^p(\mathbb R^n)},
$$
$$
\|u_\lambda\|_{L^q(\mathbb R^n)}
=\lambda^{n/p-1-n/q}\|\varphi\|_{L^q(\mathbb R^n)}.
$$
特に、$\|u\|_{L^q}\leq C\|\nabla u\|_{L^p}$ がすべてのコンパクト台滑らかな関数について拡大縮小と両立して成り立つためには $q=p^*$ が必要である。
連鎖律から
$$
\nabla u_\lambda(x)=\lambda^{n/p}\nabla\varphi(\lambda x)
$$
である。変数変換 $y=\lambda x$ を使えば
$$
\|\nabla u_\lambda\|_p^p
=\int_{\mathbb R^n}\lambda^n|\nabla\varphi(\lambda x)|^p\,dx
=\int_{\mathbb R^n}|\nabla\varphi(y)|^p\,dy.
$$
同様に
$$
\|u_\lambda\|_q^q
=\lambda^{q(n/p-1)-n}\|\varphi\|_q^q
$$
である。右辺の冪が $0$ となる条件は $n/p-1-n/q=0$、すなわち $q=np/(n-p)=p^*$ である。
全空間上の不等式の右辺には $\|u\|_{L^p}$ が現れない。これは定数関数が $L^p(\mathbb R^n)$ に属さないことと、命題「臨界指数を決めるスケーリング」による斉次性を反映する。有界領域の $W^{1,p}$ 全体では定数関数が入るため、勾配だけによる評価には零境界値、平均値0など定数成分を除く条件が必要である。
$1\leq p< n$ とする。$p\leq q\leq p^*$ なら
$$
W^{1,p}(\mathbb R^n)\hookrightarrow L^q(\mathbb R^n)
$$
は連続である。
$1/q=\theta/p+(1-\theta)/p^*$ となる $0\leq\theta\leq1$ を取る。Hölderの不等式により
$$
\|u\|_{L^q}
\leq\|u\|_{L^p}^{\theta}
\|u\|_{L^{p^*}}^{1-\theta}.
$$
Gagliardo--Nirenberg--Sobolev不等式を用いれば
$$
\|u\|_{L^q}
\leq C^{1-\theta}\|u\|_{L^p}^{\theta}
\|\nabla u\|_{L^p}^{1-\theta}
\leq C'\|u\|_{W^{1,p}}
$$
を得る。最初は滑らかな関数について示し、$W^{1,p}$ の密度により一般の場合へ移せばよい。
$\mathbb R^n$ は有限測度でないので、$L^p\subset L^q$ は $q< p$ に対して一般に成り立たない。したがって上の中間指数の範囲は $p\leq q\leq p^*$ である。有界領域では有限測度性により、より小さい指数への包含も得られる。
以下、$\Omega\subset\mathbb R^n$ は有界Lipschitz領域、すなわち連結な開集合で、境界が各点の近傍でLipschitz関数のグラフとして表されるものとする。この仮定により $W^{1,p}(\Omega)$ から $W^{1,p}(\mathbb R^n)$ への有界な拡張作用素が存在する。
$n\geq2$ とする。このとき次が成り立つ。
$n=1$ では $W^{1,1}$ の元も区間上で絶対連続な代表をもち、有界になるため、上の「$p=n$ では一般に $L^\infty$ へ埋め込まれない」という端点現象は $n\geq2$ に固有である。次元を明記せず臨界反例を一次元へ適用してはいけない。
$\mathbb R^n$ 上の不等式を領域へ移す標準的な方法は有界拡張作用素を使うことである。そのためLipschitz境界は単なる飾りではない。零境界値空間 $W_0^{1,p}(\Omega)$ なら、任意の開集合上で零延長を利用できる版がある。一方、一般の $W^{1,p}(\Omega)$ について領域条件をすべて外すと、後述する非連結領域の反例のように埋め込みが壊れる。
$n\geq2$、$B=B_1(0)$ とし、$0<\varepsilon< e^{-1}$、$L=\log(1/\varepsilon)$ に対して
$$
u_\varepsilon(x)=
\begin{cases}
L^{(n-1)/n},&|x|\leq\varepsilon,\\
L^{-1/n}\log(1/|x|),&\varepsilon<|x|<1
\end{cases}
$$
とおく。この関数は $W^{1,n}(B)$ に属し、$\|u_\varepsilon\|_{W^{1,n}(B)}$ は一様に有界だが、
$$
\|u_\varepsilon\|_{L^\infty(B)}=L^{(n-1)/n}\longrightarrow\infty
$$
である。したがって $W^{1,n}(B)\hookrightarrow L^\infty(B)$ は連続でない。
$\varepsilon<|x|<1$ では
$$
|\nabla u_\varepsilon(x)|=\frac{L^{-1/n}}{|x|},
$$
それ以外では勾配はほとんど至るところ $0$ である。極座標により、$\omega_{n-1}$ を単位球面の面積として
$$
\|\nabla u_\varepsilon\|_{L^n(B)}^n
=\omega_{n-1}L^{-1}\int_\varepsilon^1\frac{dr}{r}
=\omega_{n-1}.
$$
また内球上の $L^n$ 積分は
$$
|B_1|\varepsilon^nL^{n-1}
$$
で一様有界であり、環状部分では変数変換 $s=\log(1/r)$ により
$$
\omega_{n-1}L^{-1}\int_0^L s^n e^{-ns}\,ds
\leq\omega_{n-1}\int_0^\infty s^n e^{-ns}\,ds
$$
と評価できる。ゆえに $W^{1,n}$ ノルムは一様有界である一方、一様ノルムは発散する。
$p=n$ では $L^\infty$ 埋め込みの代わりに、適切に正規化した $W_0^{1,n}$ 関数の指数関数的可積分性を与えるTrudinger--Moser不等式が成り立つ。これは有限なすべての $L^q$ への埋め込みより精密だが、仮定と正規化が異なるため $L^\infty$ 埋め込みと同一視してはいけない。AF03(Chapter 8)
ノルム空間 $X,Y$ について、包含写像 $X\to Y$ が有界線型なら $X\hookrightarrow Y$ を連続埋め込みという。さらに $X$ の任意の有界列が $Y$ で収束する部分列をもつとき、これをコンパクト埋め込みといい $X\hookrightarrow\hookrightarrow Y$ と書く。
$\Omega$ を有界Lipschitz領域とする。
$1\leq p< n$ とし、$0\neq\varphi\in C_c^\infty(B_1(0))$ を取る。$B_1(0)$ 上で
$$
u_j(x)=j^{n/p-1}\varphi(jx)
$$
とおく。すると $(u_j)$ は $W^{1,p}(B_1)$ で有界で、$\|u_j\|_{L^{p^*}}=\|\varphi\|_{L^{p^*}}$ だが、$L^{p^*}$ で収束する部分列をもたない。したがって臨界埋め込み
$$
W^{1,p}(B_1)\hookrightarrow L^{p^*}(B_1)
$$
は連続ではあるがコンパクトではない。
スケーリング公式により $\|\nabla u_j\|_p$ と $\|u_j\|_{p^*}$ は $j$ に依存せず、
$$
\|u_j\|_p=j^{-1}\|\varphi\|_p\longrightarrow0
$$
なので $(u_j)$ は $W^{1,p}$ で有界である。また $x\neq0$ を固定すると、十分大きい $j$ で $jx\notin\operatorname{supp}\varphi$ となるため $u_j(x)=0$ である。従って $u_j\to0$ はほとんど至るところ成り立つ。もしある部分列が $L^{p^*}$ で強収束すれば、さらに部分列を取ってほとんど至るところ収束できるので、その極限は $0$ でなければならない。しかし各 $u_j$ の $L^{p^*}$ ノルムは同じ正の値であり、$0$ へ強収束できない。矛盾である。
$n\geq2$ とする。有界な箱の中に、互いに素な開球 $B_j=B(x_j,r_j)$ を $r_j\downarrow0$ となるように取り、
$$
\Omega:=\bigcup_{j=1}^\infty B_j
$$
とする。$u_j=|B_j|^{-1/p}\mathbf1_{B_j}$ とおけば、$u_j$ は各連結成分上で定数なので弱勾配は $0$ であり、
$$
\|u_j\|_{W^{1,p}(\Omega)}=1.
$$
一方、$q>p$ なら
$$
\|u_j\|_{L^q(\Omega)}
=|B_j|^{1/q-1/p}\longrightarrow\infty.
$$
したがって、この $\Omega$ では $W^{1,p}(\Omega)\hookrightarrow L^q(\Omega)$ は成り立たない。特に $p< n$ で $p< q\leq p^*$ としても失敗し得る。
$\psi\in C_c^\infty(\Omega)$ とする。台は $\Omega$ のコンパクト部分集合なので、有限個の球とのみ交わる。各座標 $i$ について
$$
\int_\Omega u_j\partial_i\psi\,dx
=|B_j|^{-1/p}\int_{B_j}\partial_i\psi\,dx.
$$
$\psi$ の $B_j$ への制限は境界近くで $0$ であるから、Fubiniの定理または部分積分により右辺は $0$ である。従って $\partial_i u_j=0$ が弱微分の意味で成り立つ。$L^p$ ノルムと $L^q$ ノルムは指示関数の積分から表示どおり計算でき、$1/q-1/p<0$ と $|B_j|\to0$ から発散が従う。
この反例では、互いに近づく小さな連結成分の上で関数値を独立に選べる。連結性だけで常に十分という意味ではないが、有界Lipschitz領域の拡張性や一様な局所幾何はこの現象を排除する。定理を使う際は「有界」だけでなく「Lipschitz領域」「拡張領域」「零境界値」のいずれを仮定しているかを確認する必要がある。
$\Omega$ を有界Lipschitz領域、$k\in\mathbb Z_{>0}$、$1< p<\infty$ とする。大まかには正則性の余裕
$$
s:=k-\frac np
$$
によって像空間が決まる。
$k=1$ では $s<0$、$s=0$、$s>0$ がそれぞれ $p< n$、$p=n$、$p>n$ に対応する。高階版を「$kp$ と $n$ の大小」だけで暗記すると、どの階の導関数がどのHölder指数をもつか、端点で何が起こるかを取り違えやすい。
定義、別証明および発展事項については EG15(Chapter 4)、AF03(Chapters 4--8)を参照した。
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