コホモロジー次元

同義語:cohomological dimension

概要

コホモロジー次元(cohomological dimension)とは、射有限群 $G$ と素数 $p$ について、捩れ加群のコホモロジーの $p$ 部分が消え始める次数の上限 $\operatorname{cd}_p(G)$ のことである。体では絶対 Galois 群について、スキームでは $\ell$ 準素なエタール層について同じ量を考える。副 $p$ 群では $H^{n+1}(G,\mathbb{Z}/p)=0$ で判定でき、標数と異なる $p$ では $\operatorname{cd}_p(k)\le1$ が有限次拡大の Brauer 群の $p$ 部分の消滅と同値である。有限体は $1$、$p$ 進体は $2$、実数体は $\operatorname{cd}_2=\infty$ である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 射有限群, Galoisコホモロジー, エタールコホモロジー, Brauer群
レベル: 大学院

定義

射有限群

$G$ を射有限群とし、離散 $G$ 加群(各元の固定部分群が開であるアーベル群)のコホモロジー $H^q(G, A)$ を考える(Galoisコホモロジー)。アーベル群 $M$ と素数 $p$ について、$M(p)$ で $M$ の $p$ 準素成分($p$ 冪の位数をもつ元全体)を表す。

コホモロジー次元

$p$ を素数とする。射有限群 $G$ の $p$ コホモロジー次元(cohomological dimension)$\operatorname{cd}_p(G)$ とは、次の条件を満たす整数 $n \ge 0$ の最小値である(無ければ $\infty$)。

すべての捩れ離散 $G$ 加群 $A$ と、すべての $q > n$ について、$H^q(G, A)(p) = 0$。
$\operatorname{cd}(G) := \sup_p \operatorname{cd}_p(G)$ を $G$ のコホモロジー次元という。捩れとは限らないすべての離散 $G$ 加群について同じ条件を課したものを狭義 $p$ コホモロジー次元 $\operatorname{scd}_p(G)$ という。

体 $k$ については、分離閉包 $k_s$ をとり、絶対 Galois 群 $G_k = \operatorname{Gal}(k_s/k)$ を使って $\operatorname{cd}_p(k) := \operatorname{cd}_p(G_k)$、$\operatorname{cd}(k) := \operatorname{cd}(G_k)$ と置く。

スキーム

エタールコホモロジー次元

スキーム $X$ と素数 $\ell$ について、$X$ の $\ell$ コホモロジー次元 $\operatorname{cd}_\ell(X)$ とは、「$X$ 上の $\ell$ 準素な捩れエタール層 $F$ と $q > n$ について、つねに $H^q(X_{\mathrm{\acute{e}t}}, F) = 0$」となる整数 $n \ge 0$ の最小値である(無ければ $\infty$)。

体 $k$ について、$\operatorname{Spec} k$ 上のエタール層は離散 $G_k$ 加群と同じものであり(エタールコホモロジー)、$H^q((\operatorname{Spec} k)_{\mathrm{\acute{e}t}}, F) = H^q(G_k, F_{\bar{x}})$ である。後で示すprop-cohomological-dimension-criterion により、群の側の定義は「$p$ 準素な捩れ加群について $q > n$ で消える」と言い換えられるので、$\operatorname{cd}_\ell(\operatorname{Spec} k) = \operatorname{cd}_\ell(k)$ である。

直感

コホモロジー次元は、「コホモロジーが何次まで生き残りうるか」という上限である。位相空間の次元が、その上の層のコホモロジーが消える次数を抑えるのと同じ役割を、Galois 群やエタール位相について果たす。
体の場合、$\operatorname{cd}(k)$ は体の「算術的な複雑さ」を測る。代数閉体は $0$、有限体は $1$、$p$ 進体は $2$ であり、超越次数を $1$ 上げるとおおむね $1$ 増える。多様体のエタールコホモロジーでは、$n$ 次元の多様体の $\ell$ コホモロジー次元は(分離閉体上)$2n$ 以下で、これは複素多様体の実次元 $2n$ に対応する。

射有限群の場合の性質

消滅の判定

射有限群 $G$、素数 $p$、整数 $n \ge 0$ について、次は同値である。

  1. $\operatorname{cd}_p(G) \le n$。
  2. $p$ 準素な捩れ離散 $G$ 加群 $A$ と $q > n$ について、$H^q(G, A) = 0$。
  3. $p$ 倍で消える単純な離散 $G$ 加群 $A$ について、$H^{n+1}(G, A) = 0$。
分解と次元のずらし

予備。$A$ が $p$ 準素なら $H^q(G, A)$ も $p$ 準素である。実際 $A = \bigcup_m A[p^m]$ であり、コホモロジーは離散加群の帰納極限と交換し、$H^q(G, A[p^m])$ は $p^m$ で消える。捩れ加群 $A$ は $A = \bigoplus_\ell A(\ell)$ と分解し、$H^q(G, A(\ell))$ は $\ell$ 準素だから、$H^q(G, A)(p) = H^q(G, A(p))$ である。これで 1 と 2 は同値である。2 から 3 は明らか。
3 から 2。(a) $p$ 準素な有限離散加群 $A$ を考える。$A$ は組成列をもち、その単純な商 $S$ は有限な $p$ 準素群なので $pS \ne S$、したがって $pS = 0$ である。3 と長完全列から、$H^{n+1}(G, A) = 0$ を得る。(b) $p$ 準素な捩れ離散加群は、有限な部分加群の和である(元 $a$ の固定部分群は開なので $G$ 軌道は有限であり、軌道で生成される部分群は有限生成な捩れアーベル群、すなわち有限群になる)。コホモロジーは帰納極限と交換するので、$H^{n+1}(G, A) = 0$ である。(c) $q > n + 1$ の場合は $q$ についての帰納法による。$A$ を余誘導加群 $M_G(A)$($G$ から $A$ への連続写像の加群)に埋め込むと、$M_G(A)$ は $p$ 準素で、正の次数のコホモロジーが消える(Shapiro の補題)。商 $B = M_G(A)/A$ も $p$ 準素であり、長完全列から $H^q(G, A) \cong H^{q-1}(G, B) = 0$ となる。

副p群の判定

$G$ を副 $p$ 群とする。

  1. $p$ 倍で消える単純な離散 $G$ 加群は、自明な作用をもつ $\mathbb{Z}/p$ だけである。
  2. $\ell \ne p$ なら $\operatorname{cd}_\ell(G) = 0$ である。よって $\operatorname{cd}(G) = \operatorname{cd}_p(G)$ である。
  3. $\operatorname{cd}(G) \le n$ であることと $H^{n+1}(G, \mathbb{Z}/p) = 0$ であることは同値である。
固定点の数え上げ

1. 単純加群 $S$ は $0$ でない元で生成されるので有限であり、$\mathbb{F}_p$ 上の有限次元ベクトル空間である。$G$ は有限な $p$ 群 $P$ を通して作用する。$P$ の軌道の大きさは $p$ の冪なので、$S$ の固定点の個数は $|S| \equiv 0 \pmod p$ と合同であり、$0$ が固定点だから、$0$ でない固定点 $v$ がある。$\mathbb{F}_p v$ は部分加群なので、単純性から $S = \mathbb{F}_p v \cong \mathbb{Z}/p$(自明な作用)である。
2. $G$ の有限な商 $P$ と $\ell$ 準素な $P$ 加群 $A$ について、$H^q(P, A)$($q \ge 1$)は $|P|$ で消えかつ $\ell$ 準素なので $0$ である。$H^q(G, A)$ はこれらの帰納極限だから $0$ である。
3. 1 とprop-cohomological-dimension-criterion による。

部分群

$H$ を $G$ の閉部分群とすると、$\operatorname{cd}_p(H) \le \operatorname{cd}_p(G)$ である。

Shapiroの補題

$p$ 準素な離散 $H$ 加群 $A$ に対し、$M_G^H(A)$ を $G$ から $A$ への連続写像 $\varphi$ で $\varphi(hg) = h\varphi(g)$($h \in H$)を満たすもの全体とし、$G$ を右移動で作用させる。これは離散 $G$ 加群で、各元は有限個の値しかとらないので $p$ 準素である。閉部分群についての Shapiro の補題により $H^q(H, A) \cong H^q(G, M_G^H(A))$ である(Ser97 第 I 章 §2)。よって $q > \operatorname{cd}_p(G)$ なら $H^q(H, A) = 0$ であり、prop-cohomological-dimension-criterion から不等式が従う。

次の事実は本記事では証明しない(Ser97 第 I 章 §3)。

  • $G_p$ を $G$ の $p$ Sylow 部分群とすると、$\operatorname{cd}_p(G) = \operatorname{cd}_p(G_p) = \operatorname{cd}(G_p)$ である。
  • $H$ が開部分群で $\operatorname{cd}_p(G) < \infty$ なら、$\operatorname{cd}_p(H) = \operatorname{cd}_p(G)$ である(Serre の定理)。
  • 副 $p$ 群 $G$ について、$\operatorname{cd}(G) \le 1$ であることと $G$ が自由副 $p$ 群であることは同値である。
位数有限の元

$G$ が位数 $p$ の元をもてば、$\operatorname{cd}_p(G) = \infty$ である。とくに、$\operatorname{cd}(G) < \infty$ なら $G$ は $1$ 以外の位数有限の元をもたない。

巡回群のコホモロジー

位数 $p$ の元が生成する部分群 $C \cong \mathbb{Z}/p$ は有限なので閉である。巡回群 $C$ と自明な加群 $\mathbb{Z}/p$ について、$k \ge 1$ で $H^{2k}(C, \mathbb{Z}/p) \cong (\mathbb{Z}/p)^C/N(\mathbb{Z}/p)$ であり(巡回群のコホモロジーの周期性。群コホモロジー)、ノルム $N$ は $p$ 倍すなわち $0$ だから、これは $\mathbb{Z}/p \ne 0$ である。よって $\operatorname{cd}_p(C) = \infty$ であり、prop-cohomological-dimension-subgroup により $\operatorname{cd}_p(G) = \infty$ である。

体の場合

標数と等しい素数

標数pでのp次元

$k$ の標数が $p > 0$ なら、$\operatorname{cd}_p(k) \le 1$ である。

Artin–Schreier列

$G_p$ を $G_k$ の $p$ Sylow 部分群、$K$ をその固定体とする。$\operatorname{cd}_p(k) = \operatorname{cd}(G_K)$ であり(前節の引用した事実)、$G_K = G_p$ は副 $p$ 群だから、prop-cohomological-dimension-pro-p により $H^2(K, \mathbb{Z}/p) = 0$ を示せばよい。$k_s = K_s$ 上で、写像 $\wp(x) = x^p - x$ は加法群の準同型で、核は $\mathbb{F}_p$ である。$a \in k_s$ について多項式 $X^p - X - a$ は分離的(微分が $-1$)なので、根は $k_s$ にあり、$\wp$ は全射である。よって $G_K$ 加群の完全列
$$ 0 \to \mathbb{Z}/p \to k_s \xrightarrow{\ \wp\ } k_s \to 0 $$
を得る(Artin–Schreier理論)。正規底定理により、加法群 $k_s$ は $G_K$ 加群として $H^q(G_K, k_s) = 0$($q \ge 1$)を満たす(Ser79 第 X 章 §1)。長完全列から $H^2(K, \mathbb{Z}/p) = 0$ である。

標数と異なる素数と Brauer 群

Brauer群による判定

$p$ を $k$ の標数と異なる素数とする。次は同値である。

  1. $\operatorname{cd}_p(k) \le 1$。
  2. $k$ のすべての有限次分離拡大 $k'$ について、$\operatorname{Br}(k')(p) = 0$。
Kummer列とHilbertの定理90

体 $L$ の標数が $p$ と異なるとき、Kummer 列 $1 \to \mu_p \to L_s^{\times} \xrightarrow{p} L_s^{\times} \to 1$ は $G_L$ 加群の完全列であり、Hilbertの定理90 $H^1(L, L_s^{\times}) = 0$ から
$$ H^2(L, \mu_p) \cong \operatorname{Br}(L)[p] $$
を得る(Kummer完全列)。
1 から 2。$k'$ について $G_{k'}$ は $G_k$ の開部分群なので、prop-cohomological-dimension-subgroup により $\operatorname{cd}_p(k') \le 1$ である。$\mu_p$ は $p$ 準素だから $H^2(k', \mu_p) = 0$、よって $\operatorname{Br}(k')[p] = 0$ である。$p$ 準素群 $\operatorname{Br}(k')(p)$ は $p$ 倍で消える元を $0$ しかもたないので $0$ である。
2 から 1。$K$ を $G_k$ の $p$ Sylow 部分群の固定体とする。$[K(\mu_p) : K]$ は $p - 1$ の約数であり、$G_K$ は副 $p$ 群なので $p$ の冪でもある。よって $\mu_p \subset K$ で、$G_K$ 加群として $\mu_p \cong \mathbb{Z}/p$ である。$K$ は $k$ の有限次分離部分拡大 $k'$ の和であり、コホモロジーはこの極限と交換するので(Ser97 第 I 章 §2)、
$$ H^2(K, \mathbb{Z}/p) \cong \operatorname{Br}(K)[p] = \varinjlim_{k'} \operatorname{Br}(k')[p] = 0 $$
である。prop-cohomological-dimension-pro-p により $\operatorname{cd}(G_K) \le 1$ であり、Sylow 部分群についての事実から $\operatorname{cd}_p(k) \le 1$ である。

すべての有限次分離拡大の Brauer 群が $0$ である体を次元 $1$ 以下の体という。二つの定理を合わせると、次元 $1$ 以下の体では $\operatorname{cd}(k) \le 1$ である。

既知の値(引用)

次の事実は本記事では証明しない(Ser97 第 II 章 §3–§4)。

体 $k$$\operatorname{cd}(k)$ など
分離閉体$0$
有限体$1$($G_k \cong \hat{\mathbb{Z}}$、$\operatorname{scd}_p = 2$)
代数閉体上の $1$ 変数関数体$\le 1$(Tsenの定理により次元 $1$ 以下)
$p$ 進体($\mathbb{Q}_p$ の有限次拡大)$2$
総虚な代数体$2$
実素点をもつ代数体$\operatorname{cd}_\ell = 2$($\ell$ 奇素数)、$\operatorname{cd}_2 = \infty$

さらに、$K/k$ が超越次数 $n$ の拡大なら $\operatorname{cd}_p(K) \le \operatorname{cd}_p(k) + n$ であり、$K$ が $k$ 上有限生成、$\operatorname{cd}_p(k) < \infty$、$p$ が標数と異なれば等号が成り立つ(同書第 II 章 §4)。

エタールコホモロジーの場合

主な上界(引用)

次の定理は本記事では証明しない(SGA4 第 X 講・第 XIV 講。Mil80 第 VI 章)。$k$ を体、$p \ge 0$ をその標数、$X$ を $k$ 上有限型で次元 $n$ のスキーム、$\ell \ne p$ を素数とする。

エタールコホモロジー次元の上界
  1. $k$ が分離閉なら $\operatorname{cd}_\ell(X) \le 2n$ である。
  2. $k$ が分離閉で $X$ がアフィンなら $\operatorname{cd}_\ell(X) \le n$ である(Artin の消滅定理)。
  3. 一般の $k$ について $\operatorname{cd}_\ell(X) \le 2n + \operatorname{cd}_\ell(k)$ である。

3 は、Hochschild–Serre スペクトル系列 $H^a(k, H^b(X_{k_s}, F)) \Rightarrow H^{a+b}(X, F)$ と 1 を組み合わせた形をしている。

標数 $p$ の $p$ 捩れ

アフィンスキームのp次元

$X$ を標数 $p > 0$ のアフィンスキームとすると、$q \ge 2$ で $H^q(X_{\mathrm{\acute{e}t}}, \mathbb{Z}/p) = 0$ である。

エタール層のArtin–Schreier列

$X$ のエタール位相で、$\mathbb{G}_a$($U \mapsto \Gamma(U, \mathcal{O}_U)$)について $0 \to \mathbb{Z}/p \to \mathbb{G}_a \xrightarrow{\wp} \mathbb{G}_a \to 0$($\wp(x) = x^p - x$)は完全である。全射性は、$U$ 上の $a$ について $U' = \operatorname{Spec}_U \mathcal{O}_U[T]/(T^p - T - a)$ が $U$ のエタール被覆(微分が $-1$ で可逆な有限自由射)であり、その上で $a = \wp(T)$ となることによる。準連接層のエタールコホモロジーは Zariski コホモロジーと一致するので(Mil80 第 III 章 §3)、アフィンな $X$ では $H^q(X_{\mathrm{\acute{e}t}}, \mathbb{G}_a) = H^q(X, \mathcal{O}_X) = 0$($q \ge 1$)である。長完全列から主張が従う。

一般の $p$ 捩れ層についても、標数 $p$ のアフィンスキームでは $p$ コホモロジー次元が $1$ 以下であることが知られている(SGA4 第 X 講。本記事では証明しない)。$p$ 捩れ係数の次数の上界は、$\ell \ne p$ の場合の「$2n$」とは異なる振る舞いをする。

例と反例

射有限整数環

$\hat{\mathbb{Z}} = \varprojlim_n \mathbb{Z}/n$ では $\operatorname{cd}(\hat{\mathbb{Z}}) = 1$ である(Ser79 第 XIII 章 §1)。その $p$ Sylow 部分群 $\mathbb{Z}_p$ は自由副 $p$ 群(階数 $1$)であり、$\operatorname{cd}(\mathbb{Z}_p) = 1$ である。有限体の絶対 Galois 群は $\hat{\mathbb{Z}}$ なので、有限体のコホモロジー次元は $1$ である。$\mathbb{Z}_p^n$ のコホモロジー次元は $n$ である(引用。Ser97 第 I 章 §4)。

反例:実数体では有限にならない

$G_{\mathbb{R}} = \operatorname{Gal}(\mathbb{C}/\mathbb{R}) \cong \mathbb{Z}/2$ は位数 $2$ の元をもつので、cor-cohomological-dimension-torsion により $\operatorname{cd}_2(\mathbb{R}) = \infty$ である。実際 $H^{2k}(\mathbb{R}, \mathbb{Z}/2) = \mathbb{Z}/2$($k \ge 1$)であり、たとえば $H^2(\mathbb{R}, \mu_2) = \operatorname{Br}(\mathbb{R})[2] = \mathbb{Z}/2$ は Hamilton の四元数環の類である。一方 $\ell$ が奇素数なら $\operatorname{cd}_\ell(\mathbb{R}) = 0$ である。
「体のコホモロジー次元は有限である」という主張は、捩れのない絶対 Galois 群という条件を外すと破れる。Artin–Schreier の定理により、絶対 Galois 群が有限で $1$ でない体は実閉体に限り、その群は $\mathbb{Z}/2$ である(引用)。同じ理由で、実素点をもつ代数体では $\operatorname{cd}_2 = \infty$ となる。

乗法群と射影直線

$k$ を分離閉体、$\ell$ をその標数と異なる素数とする。

  • $X = \mathbb{G}_{m,k} = \operatorname{Spec} k[t, t^{-1}]$ では $\operatorname{cd}_\ell(X) = 1$ である。上界は Artin の消滅定理による。$H^1(X, \mu_\ell) \ne 0$ は、Kummer 列から $\Gamma(X, \mathcal{O}_X)^{\times}/\ell \hookrightarrow H^1(X, \mu_\ell)$ であり、単数群 $k^{\times} t^{\mathbb{Z}}$ で $k^{\times}$ は $\ell$ 可除だから $\Gamma(X, \mathcal{O}_X)^{\times}/\ell \cong \mathbb{Z}/\ell$ となることによる。
  • $X = \mathbb{P}^1_k$ では $\operatorname{cd}_\ell(X) = 2$ である。上界はthm-cohomological-dimension-etale-bounds の 1 による。Kummer 列から $\operatorname{Pic}(\mathbb{P}^1_k)/\ell \cong \mathbb{Z}/\ell \hookrightarrow H^2(\mathbb{P}^1_k, \mu_\ell)$ であり、$H^2 \ne 0$ である。
反例:アフィンでないと次元で抑えられない

上の例の $\mathbb{P}^1_k$ は $1$ 次元だが $\operatorname{cd}_\ell(\mathbb{P}^1_k) = 2 > 1$ である。Artin の消滅定理の「アフィン」という仮定を外すと、上界 $\operatorname{cd}_\ell(X) \le \dim X$ は成り立たない。同様に、$n$ 次元の既約な射影多様体では $H^{2n}(X, \mu_\ell^{\otimes n}) \cong \mathbb{Z}/\ell$ となり(引用。Poincaré 双対性)、上界 $2n$ が達成される。

狭義Hensel局所環とその分数体

狭義 Hensel 局所環 $A$ のスペクトルでは、大域切断関手がエタール層について完全なので、$\operatorname{cd}_\ell(\operatorname{Spec} A) = 0$ である(狭義Hensel局所環)。一方、$A$ が次元 $1$ の狭義 Hensel な離散付値環で $\ell$ が剰余標数と異なるとき、その分数体 $K$ は $\operatorname{cd}_\ell(K) \le 1$ を満たす(引用)。この事実は Brauer群の純性 の次元 $1$ の場合に使われる。

補足

  • Brauer 群との関係。thm-cohomological-dimension-brauer の通り、$\operatorname{cd}_p(k) \le 1$ は Brauer 群の消滅と同値である。Grothendieck は「Le groupe de Brauer III」で、剰余体の次元についての仮定から、1 次元のスキームや曲線の Brauer 群の消滅を導いている。
  • 位相空間との比較。$\mathbb{C}$ 上の $n$ 次元多様体の複素位相での局所定数層のコホモロジーは、実次元が $2n$ なので $2n$ を超えると消える。滑らかなアフィン多様体は $n$ 次元以下の CW 複体とホモトピー同値なので(Andreotti–Frankel の定理。特異な場合は Hamm らによる。引用)、$n$ を超えると消える。thm-cohomological-dimension-etale-bounds の 1 と 2 はその類似である。
  • 局所コホモロジーとの関係。$\operatorname{cd}$ の上界は、局所コホモロジー の長完全列と組み合わせて、閉部分集合の補集合のコホモロジーを評価するのに使われる。

関連項目

参考文献

[4]
Michael Artin, Alexander Grothendieck, Jean-Louis Verdier, Théorie des topos et cohomologie étale des schémas (SGA 4), Tome 3 (Lecture Notes in Mathematics 305), Springer, 1973, 第X講・第XIV講

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