Stirling数

同義語:Stirling 数スターリング数Stirling numbersStirling number

概要

Stirling数(Stirling numbers)とは、$n$ 元集合を $k$ 個の空でないブロックに分ける方法の個数である第 2 種 Stirling 数 $S(n,k)$ と、$n$ 文字の置換で巡回がちょうど $k$ 個のものの個数である符号なし第 1 種 Stirling 数 $c(n,k)$(符号をつけた $s(n,k)=(-1)^{n-k}c(n,k)$)の総称である。どちらも簡単な漸化式を満たし、冪 $x^n$ と下降・上昇階乗冪を互いに書き換える係数になるので、2 種類を並べた行列は互いに逆になる。指数型母関数は $(e^x-1)^k/k!$ などの形で表され、分割の総数である Bell 数の漸化式や級数表示も導かれる。$n!$ の近似を与える Stirling の公式とは別の主題である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 同値関係, 置換, 巡回置換, 母関数

Stirling 数(Stirling numbers)は、集合の分割と置換の巡回を数える 2 種類の数で、それぞれ多項式の「ふつうの冪」と「階乗冪」を互いに書き換える係数になっている。$n$ 元集合を $k$ 個の空でないブロックに分ける方法の個数が 第 2 種 Stirling 数 $S(n,k)$、$n$ 文字の置換でちょうど $k$ 個の巡回をもつものの個数が 符号なし第 1 種 Stirling 数 $c(n,k)$ である。$n!$ の近似を与える Stirlingの公式 とは、同じ Stirling の名をもつが別の主題である。
この記事では、2 種類の Stirling 数を定義し、漸化式、冪と階乗冪の変換、2 種類の数を並べた行列が互いに逆であること(直交関係)、指数型母関数と通常母関数を証明する。最後に、集合の分割の総数である Bell 数の漸化式と、無限級数による表示(Dobiński の公式)を導く。

定義

$n\ge0$ について $[n]:=\{1,\dots,n\}$ とする($[0]=\emptyset$)。$X$ の分割とは、$X$ の空でない部分集合(ブロック)の集合であって、どの 2 つも交わらず、和集合が $X$ になるものをいう。分割は $X$ 上の同値関係と一対一に対応する(ブロックが同値類)。ブロックの順序は区別しない。

集合の分割の個数

$n,k\ge0$ について、$[n]$ の分割でブロックがちょうど $k$ 個のものの個数を $S(n,k)$ と書き、第 2 種 Stirling 数(Stirling number of the second kind)という。$[n]$ の分割の総数
$$ B_n:=\sum_{k=0}^{n}S(n,k) $$
を Bell 数(Bell number)という。

空集合の分割は空集合 1 つだけ(ブロック $0$ 個)なので $S(0,0)=1$、$B_0=1$ である。$n\ge1$ なら $S(n,0)=0$ であり、ブロックは空でないので $k>n$ なら $S(n,k)=0$ である。
$[n]$ の置換 $\sigma$ を互いに素な巡回置換の積に分解し(置換 の記事の定理「互いに素な巡回置換の積への分解」)、不動点も長さ $1$ の巡回と数えた巡回の個数を $\operatorname{cyc}(\sigma)$ と書く。巡回は $\sigma$ が生成する部分群の $[n]$ への作用の軌道 $\{i,\sigma(i),\sigma^2(i),\dots\}$ であり、巡回全体は $[n]$ の分割をなす。

置換の巡回の個数

$n,k\ge0$ について、$[n]$ の置換 $\sigma$ で $\operatorname{cyc}(\sigma)=k$ となるものの個数を $c(n,k)$ と書き、符号なし第 1 種 Stirling 数(signless Stirling number of the first kind)という。
$$ s(n,k):=(-1)^{n-k}c(n,k) $$
を(符号つきの)第 1 種 Stirling 数(Stirling number of the first kind)という。

$[0]$ の置換は空写像 1 つで巡回は $0$ 個なので $c(0,0)=1$ である。$n\ge1$ なら $c(n,0)=0$、$k>n$ なら $c(n,k)=0$ であり、すべての置換を巡回の個数で分けると $\sum_kc(n,k)=n!$ である。$\sigma$ の符号は $(-1)^{n-\operatorname{cyc}(\sigma)}$ に等しい(置換の符号 の記事の命題「符号の公式」の 2)ので、$s(n,k)$ は巡回が $k$ 個の置換の符号の和である。

階乗冪

変数 $x$ と $k\ge0$ について
$$ x^{\underline k}:=x(x-1)\cdots(x-k+1),\qquad x^{\overline k}:=x(x+1)\cdots(x+k-1) $$
(どちらも $k$ 個の因子の積、$x^{\underline 0}=x^{\overline 0}:=1$)を、それぞれ $k$ 次の下降階乗冪、上昇階乗冪という。

$x^{\underline k}$ は正の整数 $x$ について、$k$ 元集合から $x$ 元集合への単射の個数である。記号には流儀があり、数列の和と差分 の記事は下降階乗冪を $x^{(k)}$ と書く。$(x)_k$ を下降・上昇のどちらに使うかも本によって違う。$S(n,k)$ を、$n$ と $k$ を上下に並べて波括弧でくくって書く流儀もある(節「補足」)。どちらの階乗冪も、$x$ を $-x$ に変えると
$$ (-x)^{\underline k}=(-1)^kx^{\overline k},\qquad(-x)^{\overline k}=(-1)^kx^{\underline k} $$
となる(各因子から $-1$ をくくり出す)。

漸化式と表

2 種類の漸化式

$n\ge0$、$k\ge1$ について次が成り立つ。

  1. $S(n+1,k)=k\,S(n,k)+S(n,k-1)$
  2. $c(n+1,k)=n\,c(n,k)+c(n,k-1)$

1:$[n+1]$ の $k$ ブロックの分割を、元 $n+1$ の入り方で分ける。$\{n+1\}$ が単独でブロックをなすものは、それを除けば $[n]$ の $k-1$ ブロックの分割になり、この対応は全単射なので $S(n,k-1)$ 個ある。そうでないものは、$n+1$ を取り除くと $[n]$ の $k$ ブロックの分割が残り、逆に $[n]$ の $k$ ブロックの分割と、$n+1$ を入れるブロックの選び方($k$ 通り)からもとの分割がただ 1 つ戻るので、$k\,S(n,k)$ 個ある。
2:$[n+1]$ の置換 $\sigma$ で巡回が $k$ 個のものを、$n+1$ が不動点かどうかで分ける。不動点なら、$[n]$ に制限すると巡回が $k-1$ 個の置換になり、この対応は全単射なので $c(n,k-1)$ 個ある。そうでないとき、$a:=\sigma^{-1}(n+1)\in[n]$ とし、$\sigma'(a):=\sigma(n+1)$、$i\ne a$ では $\sigma'(i):=\sigma(i)$ と定めると、$\sigma'$ は $n+1$ をその巡回から除いた $[n]$ の置換で、巡回の個数は $k$ のままである。逆に $[n]$ の置換 $\sigma'$ で巡回が $k$ 個のものと $a\in[n]$($n$ 通り)から、$n+1$ を巡回の中で $a$ の直後に挿入する($\sigma(a):=n+1$、$\sigma(n+1):=\sigma'(a)$)と $\sigma$ が戻る。2 つの対応は互いに逆なので、この場合は $n\,c(n,k)$ 個ある。$\square$

漸化式と $S(0,0)=c(0,0)=1$、$S(0,k)=c(0,k)=0$($k\ge1$)、$S(n,0)=c(n,0)=0$($n\ge1$)から、次の表が順に作れる。

Stirling 数の表
$n$$S(n,1),\dots,S(n,n)$$B_n$$c(n,1),\dots,c(n,n)$$n!$
11111
21, 121, 12
31, 3, 152, 3, 16
41, 7, 6, 1156, 11, 6, 124
51, 15, 25, 10, 15224, 50, 35, 10, 1120
61, 31, 90, 65, 15, 1203120, 274, 225, 85, 15, 1720

たとえば $S(4,2)=7$ の分割は、$\{1\}\{2,3,4\}$ の型が $4$ 個、$\{1,2\}\{3,4\}$ の型が $3$ 個である。$c(4,2)=11$ の置換は、巡回の長さが $3,1$ のもの $8$ 個と、$2,2$ のもの $3$ 個である。$c(4,2)>S(4,2)$ となるのは、長さ $3$ の巡回の台 $\{a,b,c\}$ には巡回が $2$ つ($(a\,b\,c)$ と $(a\,c\,b)$)あるからである。

漸化式から、$n\ge1$ について $S(n,1)=1$、$S(n,n)=1$、$S(n,2)=2^{n-1}-1$($n\ge2$)、$S(n,n-1)=\binom n2$、$c(n,1)=(n-1)!$、$c(n,n-1)=\binom n2$ が帰納法で確かめられる。$S(n,2)$ は、$[n]$ を 2 つの空でない部分集合 $T$ と補集合に分ける方法の個数で、$T$ の選び方 $2^n-2$ 通りを $T$ と補集合の入れ替えで割った値としても得られる。

冪と階乗冪の変換

Stirling 数の最も基本的な性質は、冪 $x^n$ と階乗冪のあいだの書き換えの係数になることである。以下の等式は $\mathbb{Z}$ 係数の多項式としての等式である。

冪と階乗冪の変換

すべての $n\ge0$ について次が成り立つ。

  1. $x^{\overline n}=\displaystyle\sum_{k=0}^{n}c(n,k)\,x^k$
  2. $x^{\underline n}=\displaystyle\sum_{k=0}^{n}s(n,k)\,x^k$
  3. $x^n=\displaystyle\sum_{k=0}^{n}S(n,k)\,x^{\underline k}$
  4. $x^n=\displaystyle\sum_{k=0}^{n}(-1)^{n-k}S(n,k)\,x^{\overline k}$

1:$n$ についての帰納法による。$n=0$ では両辺とも $1$ である。$x^{\overline n}=\sum_kc(n,k)x^k$ を仮定すると
$$ x^{\overline{n+1}}=x^{\overline n}(x+n)=\sum_kc(n,k)x^{k+1}+\sum_kn\,c(n,k)x^k=\sum_{k}\bigl(c(n,k-1)+n\,c(n,k)\bigr)x^k $$
であり、prop-sn-recurrence の 2 により係数は $c(n+1,k)$ である($k=0$ の係数は $n\,c(n,0)$ で、$n=0$ でも $n\ge1$ でも $0=c(n+1,0)$ に等しい)。
2:1 で $x$ を $-x$ に変え、階乗冪の符号の入れ替え(def-sn-factorial-powers の後の等式)を使うと $(-1)^nx^{\underline n}=\sum_kc(n,k)(-1)^kx^k$ である。両辺に $(-1)^n$ を掛ければよい。
3:正の整数 $x$ について、$[n]$ から $[x]$ への写像 $f$ を、ファイバーの空でないもの $\{f^{-1}(y)\mid y\in f([n])\}$ が作る $[n]$ の分割で分類する。ブロックが $k$ 個の分割を 1 つ固定すると、それを与える $f$ は、$k$ 個のブロックに相異なる値を割り当てる方法、すなわち $k$ 元集合から $[x]$ への単射と一対一に対応し、$x^{\underline k}$ 個ある。写像は全部で $x^n$ 個なので、すべての正の整数 $x$ で $x^n=\sum_kS(n,k)x^{\underline k}$ が成り立つ。両辺の差は無限に多くの根をもつ多項式なので $0$ であり、多項式として等しい。
4:3 で $x$ を $-x$ に変え、階乗冪の符号の入れ替え(def-sn-factorial-powers の後の等式)を使うと $(-1)^nx^n=\sum_kS(n,k)(-1)^kx^{\overline k}$ である。両辺に $(-1)^n$ を掛ければよい。$\square$

3 次の場合

表の $n=3$ の行から $x^3=x^{\underline 3}+3x^{\underline 2}+x^{\underline 1}$ であり、実際 $x(x-1)(x-2)+3x(x-1)+x=x^3$ である。逆向きには $x^{\underline 3}=x^3-3x^2+2x$、$x^{\overline 3}=x^3+3x^2+2x$ である。数列の和と差分 の記事は、3 の展開と下降階乗冪の和の公式を組み合わせて、冪の和 $\sum_{j=0}^{N-1}j^m$ を求めている(定理「べきの下降階乗冪展開」と定理「べき和の公式」)。

2 の両辺に $x=1$ を代入すると、$n\ge2$ では $1^{\underline n}=0$ なので $\sum_ks(n,k)=0$ である。$s(n,k)$ は巡回が $k$ 個の置換の符号の和なので、これは $n\ge2$ のとき符号が $+1$ の置換と $-1$ の置換が同じ個数あることを述べている。
2 と 3 を合わせると、2 種類の Stirling 数を並べた行列が互いに逆であることが分かる。$\delta_{nm}$ は $n=m$ なら $1$、そうでなければ $0$ を表す。

直交関係

すべての $n,m\ge0$ について
$$ \sum_{k}S(n,k)\,s(k,m)=\delta_{nm},\qquad\sum_{k}s(n,k)\,S(k,m)=\delta_{nm} $$
である(和は $m\le k\le n$ の範囲の有限和)。

thm-sn-conversion の 3 の右辺の $x^{\underline k}$ に 2 を代入すると
$$ x^n=\sum_kS(n,k)\sum_ms(k,m)x^m=\sum_m\Bigl(\sum_kS(n,k)s(k,m)\Bigr)x^m $$
である。$1,x,x^2,\dots$ は多項式の空間の基底なので、係数を比べて前半を得る。$x^{\underline m}$ は最高次の係数が $1$ の $m$ 次の多項式なので、$1,x^{\underline1},x^{\underline2},\dots$ も基底である。2 の右辺の $x^k$ に 3 を代入して $x^{\underline n}=\sum_m\bigl(\sum_ks(n,k)S(k,m)\bigr)x^{\underline m}$ を得るので、同じく係数を比べて後半を得る。$\square$

Stirling 数による反転

$R$ を可換環とし、$(a_n)_{n\ge0}$、$(b_n)_{n\ge0}$ を $R$ の元の列とする。次の 2 条件は同値である。

  1. すべての $n\ge0$ について $b_n=\sum_{k=0}^nS(n,k)\,a_k$
  2. すべての $n\ge0$ について $a_n=\sum_{k=0}^ns(n,k)\,b_k$

1 を仮定すると、cor-sn-orthogonality の後半により
$$ \sum_ks(n,k)b_k=\sum_ks(n,k)\sum_jS(k,j)a_j=\sum_j\Bigl(\sum_ks(n,k)S(k,j)\Bigr)a_j=a_n $$
である。逆も前半を使って同様に示せる。$\square$

たとえばすべての $k$ で $a_k:=1$ とすると、1 の右辺は $\sum_kS(n,k)=B_n$ なので、2 から $\sum_{k=0}^ns(n,k)B_k=1$($n\ge0$)が従う。$n=3$ では $2\cdot1-3\cdot2+1\cdot5=1$ である。

生成関数

この節では $\mathbb{Q}$ 係数の形式的冪級数を使う(収束は問わない)。$(a_n)$ の指数型母関数 $\sum_na_nx^n/n!$ は 母関数 の記事の定義「通常母関数と指数型母関数」のものである。定数項が $0$ の級数 $A$ について $A^k$ は $x^k$ より低い次数の項をもたないので、$\exp(A):=\sum_{k\ge0}A^k/k!$ は係数ごとに有限和として定まる。$e^x:=\sum_nx^n/n!$ とする。
集合を $k$ 個のブロックに分け、各ブロックに何かの構造を載せる方法の個数は、次の補題で数えられる。

ブロックごとに構造を載せる数え方

各有限集合 $T$ に有限集合 $\mathcal F(T)$ が対応し、その元の個数 $f_{\lvert T\rvert}$ は $T$ の元の個数だけで決まり、$f_0=0$ であるとする。$\hat F(x):=\sum_{m\ge1}f_mx^m/m!$ とおく。$[n]$ の $k$ ブロックの分割 $\pi$ と、各ブロック $T\in\pi$ ごとの元 $\alpha_T\in\mathcal F(T)$ の組 $(\pi,(\alpha_T)_T)$ の個数を $h_{n,k}$ とすると
$$ \sum_{n\ge0}h_{n,k}\frac{x^n}{n!}=\frac{\hat F(x)^k}{k!} $$
である。

ブロックに番号を付けた組 $(T_1,\dots,T_k)$($T_i$ は空でなく互いに交わらず、和集合が $[n]$)と $\alpha_i\in\mathcal F(T_i)$ の組を数える。大きさ $\lvert T_i\rvert=n_i$($n_1+\dots+n_k=n$、$n_i\ge1$)を決めると、$(T_1,\dots,T_k)$ の選び方は多項係数 $\frac{n!}{n_1!\cdots n_k!}$ 通りで、$\alpha_i$ の選び方は $f_{n_1}\cdots f_{n_k}$ 通りである。よって個数は
$$ \sum_{n_1+\dots+n_k=n}\frac{n!}{n_1!\cdots n_k!}f_{n_1}\cdots f_{n_k}=n!\,[x^n]\hat F(x)^k $$
である($f_0=0$ なので $n_i=0$ の項は消える)。ブロックは空でなく互いに交わらないので相異なり、番号の付け方を忘れると、1 つの組 $(\pi,(\alpha_T)_T)$ にちょうど $k!$ 個の番号付きの組が対応する。よって $h_{n,k}=n![x^n]\hat F^k/k!$ である。$\square$

Stirling 数の指数型母関数

$L(x):=\sum_{m\ge1}x^m/m$ とおく。$k\ge0$ について次が成り立つ。

  1. $\displaystyle\sum_{n\ge0}S(n,k)\frac{x^n}{n!}=\frac{(e^x-1)^k}{k!}$
  2. $\displaystyle\sum_{n\ge0}c(n,k)\frac{x^n}{n!}=\frac{L(x)^k}{k!}$
  3. $\displaystyle\sum_{n\ge0}B_n\frac{x^n}{n!}=\exp(e^x-1)$

1:lem-sn-blocks で、空でない $T$ について $\mathcal F(T)$ を 1 元集合とする。$f_m=1$($m\ge1$)で $\hat F=e^x-1$、$h_{n,k}=S(n,k)$ である。
2:$\mathcal F(T)$ を、$T$ の置換で $T$ 全体が 1 つの巡回になるもの全体とする。$\lvert T\rvert=m\ge1$ のとき、巡回 $(t_1\,t_2\,\cdots\,t_m)$ は $t_1$ を $T$ の最小元にとると、残りの並べ方 $(m-1)!$ 通りと一対一に対応するので、$f_m=(m-1)!$ で $\hat F=\sum_m(m-1)!x^m/m!=L(x)$ である。$[n]$ の置換は、巡回の台が作る分割と、各ブロックの上の 1 つの巡回の組と一対一に対応する(置換 の記事の定理「互いに素な巡回置換の積への分解」の一意性)。巡回が $k$ 個の置換は、ブロック $k$ 個の分割に対応するので、$h_{n,k}=c(n,k)$ である。
3:$B_n=\sum_kS(n,k)$ で、$k>n$ では $S(n,k)=0$ なので、1 を $k\ge0$ について足し合わせればよい。$\square$

$L(x)$ は解析的には $-\log(1-x)$ である。1 から $S(n,k)$ の明示式が出る。

第 2 種の明示式

$n,k\ge0$ について
$$ S(n,k)=\frac1{k!}\sum_{j=0}^{k}(-1)^{k-j}\binom kj j^n $$
である($0^0:=1$)。とくに右辺は $k>n$ では $0$ になる。

$e^{jx}:=\sum_n j^nx^n/n!$ とおくと、指数型母関数の積の規則(母関数 の記事の命題「指数型母関数の積」)と二項定理 $\sum_i\binom ni j^il^{n-i}=(j+l)^n$ により $e^{jx}e^{lx}=e^{(j+l)x}$ であり、$(e^x)^j=e^{jx}$ である。二項定理で $(e^x-1)^k=\sum_j\binom kj(-1)^{k-j}e^{jx}$ と展開し、$x^n/n!$ の係数を比べると thm-sn-egf の 1 から主張を得る。$k>n$ のときは左辺が $0$ である。$\square$

$k!\,S(n,k)$ は $[n]$ から $[k]$ への全射の個数であり、この式は 数え上げ組合せ論 の記事の命題「全射の個数と明示式」で包除原理から導かれた式と同じものである。第 1 種で $n$ を固定して $k$ を動かす母関数は thm-sn-conversion の 1 の $\sum_kc(n,k)x^k=x^{\overline n}$ である。第 2 種で $k$ を固定して $n$ を動かす通常母関数は次の形になる。

第 2 種の通常母関数

$k\ge0$ について
$$ \sum_{n\ge0}S(n,k)\,x^n=\frac{x^k}{(1-x)(1-2x)\cdots(1-kx)} $$
である($k=0$ では右辺は $1$)。

左辺を $G_k(x)$ とおくと $G_0=1$ である。$k\ge1$ では $S(0,k)=0$ なので、prop-sn-recurrence の 1 の両辺に $x^{n+1}$ を掛けて $n\ge0$ で足すと $G_k=kx\,G_k+x\,G_{k-1}$、すなわち $(1-kx)G_k=xG_{k-1}$ である。$1-kx$ は形式的冪級数として可逆なので $G_k=\frac{x}{1-kx}G_{k-1}$ であり、$k$ についての帰納法で主張を得る。$\square$

Bell 数

Bell の三角形、Touchard の合同式、大きさの評価など Bell 数そのものの性質は Bell数 の記事で扱い、ここでは Stirling 数から従う漸化式と Dobiński の公式を示す。

Bell 数の漸化式

$n\ge0$ について $B_{n+1}=\sum_{i=0}^{n}\binom ni B_i$ である。

$[n+1]$ の分割を、$n+1$ を含むブロック $T$ で分ける。$[n]\setminus T$ の元の個数を $i$ とすると、その $i$ 個の選び方は $\binom ni$ 通り(二項係数)で、残りの分割は $[n]\setminus T$ の分割で $B_i$ 通りある。逆にこの 2 つを決めれば分割がただ 1 つ定まる。$i$ について足せばよい。$\square$

Dobiński の公式

$n\ge0$ について
$$ B_n=\frac1e\sum_{j=0}^{\infty}\frac{j^n}{j!} $$
である(右辺の級数は収束する)。

要点:cor-sn-explicit を $k\ge0$ について足し、$j$ と $k-j$ の二重級数として並べ替える。

詳しい証明を開く

cor-sn-explicit により $k>n$ では $S(n,k)=0$ なので $$ B_n=\sum_{k=0}^{\infty}S(n,k)=\sum_{k=0}^{\infty}\ \sum_{j+l=k}\frac{j^n}{j!}\cdot\frac{(-1)^l}{l!} $$ である($\frac1{k!}\binom kj=\frac1{j!\,l!}$、$l=k-j$)。右辺は 2 つの級数 $\sum_jj^n/j!$ と $\sum_l(-1)^l/l!$ の Cauchy 積である。前者は比 $\frac{(j+1)^n/(j+1)!}{j^n/j!}=\frac{(1+1/j)^n}{j+1}\to0$ なので絶対収束し、後者は $e^{-1}$ に絶対収束する。絶対収束する 2 つの級数の Cauchy 積は、それぞれの和の積に収束するので、$B_n=e^{-1}\sum_jj^n/j!$ である。$\square$

確率の言葉では、平均 $1$ の Poisson分布 に従う確率変数 $Y$($P(Y=j)=e^{-1}/j!$)について $B_n=E[Y^n]$ である。thm-sn-conversion の 3 を $x=Y$ に当てて期待値をとると、$E[Y^{\underline k}]=\sum_{j\ge k}\frac{e^{-1}}{(j-k)!}=1$ からも同じ式が出る。

Bell 数の小さい値

漸化式から $B_0,B_1,\dots,B_{10}=1,1,2,5,15,52,203,877,4140,21147,115975$ である(Sta11 §1.9, p. 82 の表)。最初の 4 項 $1,1,2,5$ は Catalan数 と一致するが、$B_4=15$ は $C_4=14$ と異なる(Catalan数 の記事の例「反例:最初の数項の一致から数列は決まらない」)。5 元集合の 52 通りの分割を図にしたものは、『源氏物語』のある版で、最初と最後を除く各帖の見出しの印として使われている(Sta11 第 1 章の注, p. 108)。

反例

外す条件反例成り立たなくなること
ブロックの順序を区別しない$[3]$ を、ブロックに 1 番目・2 番目の順序を付けて 2 つに分ける個数が $S(3,2)=3$ に等しい(実際は $2!\,S(3,2)=6$)
ブロックの元を区別する$4$ を 2 つの正の整数の和に分ける($3+1$、$2+2$)個数が $S(4,2)=7$ に等しい(実際は $2$。分割数 の数え方)
直交関係で符号つきの $s(k,m)$ を使う$n=2$、$m=1$ で符号なしの $c$ を使う$\sum_kS(2,k)c(k,1)=1+1=2$ が $\delta_{21}=0$ に等しい
thm-sn-conversion の 3 で下降階乗冪を使う$n=2$ で上昇階乗冪に替える$x^2=\sum_kS(2,k)x^{\overline k}$(右辺は $x^{\overline1}+x^{\overline2}=x^2+2x$)

2 行目は、元を区別しない整数の分割(分割数)と、元を区別する集合の分割の違いである。3 行目で、符号を付けない $c(n,k)$ を並べた行列は $S(n,k)$ の行列の逆行列にならない。4 行目の正しい形は thm-sn-conversion の 4 の、符号 $(-1)^{n-k}$ の付いた式である。

補足

  • 名前と記号:$s(n,k)$ を第 1 種、$c(n,k)$ を符号なし第 1 種、$S(n,k)$ を第 2 種と呼ぶ呼び方と記号は Sta11 §1.3(p. 32)・§1.9(p. 81)による。$S(n,k)$ を波括弧で書く記号は Karamata にならって Knuth が勧めたものである(FS09 §II.3, p. 109)。級数による Bell 数の表示は Dobiński(1877)による(FS09 §II.3, p. 110)。
  • 組合せ論の中の位置:$S(n,k)$ と $B_n$ は、$n$ 個の区別できる玉を区別できない箱に入れる数え方に当たり、数え上げ組合せ論 の記事の定義「第2種Stirling数とBell数」と同じものである。$c(n,k)$ は、Pólyaの数え上げ定理 の記事の例「対称群と重複組合せ」でも、$\sum_\sigma m^{\operatorname{cyc}(\sigma)}=m^{\overline n}$ の係数として現れる。
  • 差分との関係:下降階乗冪は差分作用素 $\Delta f(x)=f(x+1)-f(x)$ について $\Delta x^{\underline k}=kx^{\underline{k-1}}$ を満たすので、thm-sn-conversion の 3 は冪の和の計算に使える(数列の和と差分)。
  • 文献:漸化式は Sta11 Lemma 1.3.6(p. 32)と式 (1.93)(p. 82)、冪と階乗冪の変換は Proposition 1.3.7(式 (1.28)、p. 33)と式 (1.94d)・(1.96)(pp. 82–83)、直交関係と反転は Proposition 1.9.1(p. 84)、明示式・母関数・Bell 数の漸化式は式 (1.94a)–(1.94f)(p. 82)にある。指数型母関数による扱いは FS09 §II.3(pp. 109–110)にもある。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する