隣接行列

同義語:adjacency matrix

概要

隣接行列(adjacency matrix)とは、頂点に番号をつけたグラフについて、頂点 $i$ と $j$ が辺で結ばれていれば $(i,j)$ 成分を $1$、そうでなければ $0$ とした正方行列のことである。$A^k$ の $(i,j)$ 成分は長さ $k$ の歩道の個数に等しく、番号のつけ替えは置換行列による相似なので、固有値の全体(スペクトル)はグラフの不変量である。単純グラフの隣接行列は実対称行列なので固有値は実数で、最大固有値は平均次数以上・最大次数以下である。連結性、直径の下界、二部グラフであること(スペクトルが $0$ について対称)などが固有値や行列の冪に現れるが、同じスペクトルをもつ同型でないグラフもある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: グラフ, 固有値, 連結グラフ, 閉路

グラフ の頂点に番号をつけると、「頂点 $i$ と頂点 $j$ が辺で結ばれているか」を $0$ と $1$ の表、つまり正方行列として書ける。これを隣接行列という。隣接行列の積は歩道を数え、頂点の番号のつけ替えは置換行列による相似になるので、固有値の全体(グラフのスペクトル)は番号のつけ方によらないグラフの不変量である。単純グラフの隣接行列は実対称行列なので、固有値はすべて実数であり、最大の固有値は平均次数と最大次数の間にある。さらに、グラフが連結か、二部グラフか、直径がいくつ以下かといった性質が、隣接行列の冪や固有値に現れる。一方で、同じスペクトルをもつ同型でないグラフもあり、スペクトルだけではグラフは決まらない。

定義

この記事の「グラフ」は、グラフ の記事の定義「グラフの定義」の単純無向グラフ $G=(V,E)$ で、特に断らない限り有限とする。$n=\lvert V\rvert$ とし、行列は $n\times n$ の実行列、ベクトルは $\mathbb{R}^n$ の列ベクトルとする。$I$ は単位行列、$J$ はすべての成分が $1$ の行列、$\mathbf{1}$ はすべての成分が $1$ のベクトルである。

隣接行列

頂点に番号をつけたグラフ $G$($V=\{v_1,\dots,v_n\}$)の隣接行列(adjacency matrix)とは、$n\times n$ 行列 $A=A(G)=(a_{ij})$ で
$$ a_{ij}=\begin{cases}1 & (v_iv_j\in E),\\ 0 & (v_iv_j\notin E\ \text{または}\ i=j)\end{cases} $$
となるもののことである。

隣接行列の基本性質

$A$ を $G$ の隣接行列とする。

  1. $A$ は対称行列で、成分は $0$ か $1$、対角成分はすべて $0$ である。
  2. 第 $i$ 行の成分の和は頂点 $v_i$ の次数 $\deg v_i$ であり、全成分の和は $2\lvert E\rvert$ である。
  3. 逆に、成分が $0$ か $1$ で対角成分が $0$ の対称行列 $B$ に対し、$B$ を隣接行列とするグラフで頂点集合が $\{v_1,\dots,v_n\}$ のものがただ 1 つある。

1:$v_iv_j=v_jv_i$ なので $a_{ij}=a_{ji}$ であり、単純グラフにはループがないので $a_{ii}=0$ である。2:第 $i$ 行で $a_{ij}=1$ となる $j$ は、$v_j$ が $v_i$ に隣接する $j$ そのものなので、行の和は隣接頂点の個数 $\deg v_i$ である。$i$ について足すと、次数の総和は $2\lvert E\rvert$ である(次数(グラフ) の記事の定理「次数の総和と辺数」)。3:$E:=\{v_iv_j\mid i\neq j,\ b_{ij}=1\}$ とおくと、$B$ の対称性から条件は $i,j$ の順序によらず、これは $\{v_1,\dots,v_n\}$ 上のグラフで隣接行列は $B$ である。辺の集合は $B$ から決まるので、このようなグラフは 1 つだけである。$\square$

3 により、頂点集合 $\{v_1,\dots,v_n\}$ 上のグラフと、成分が $0$ か $1$ で対角成分が $0$ の $n\times n$ 対称行列は 1 対 1 に対応する。後者は対角より上の $\binom n2$ 個の成分で決まるので $2^{\binom n2}$ 個あり、グラフ の記事の命題「ラベル付きグラフの個数」と一致する。

スペクトルと固有多項式

$G$ の隣接行列 $A$ の固有多項式 $\varphi_G(x):=\det(xI-A)$ を $G$ の固有多項式、$A$ の固有値を重複度(固有多項式の根としての重複度)を込めて並べたものを $G$ のスペクトル(spectrum)という。$A$ の固有値を $G$ の固有値ともいう。

番号のつけ方を変えると隣接行列は変わるが、固有多項式とスペクトルは変わらない(thm-adjacency-matrix-isomorphism)。$G$ の固有値はすべて実数であり(rem-adjacency-matrix-spectral-theorem)、以下では $\lambda_1\ge\lambda_2\ge\dots\ge\lambda_n$ と大きい順に並べる。

小さいグラフの隣接行列

道グラフ $P_3$ の頂点を端から $v_1,v_2,v_3$ と番号づけると、隣接行列と固有多項式は
$$ A=\begin{pmatrix}0&1&0\\1&0&1\\0&1&0\end{pmatrix},\qquad \det(xI-A)=x^3-2x $$
で、スペクトルは $\sqrt2,\ 0,\ -\sqrt2$ である。中央の頂点を $v_1$ にすると隣接行列は $\begin{pmatrix}0&1&1\\1&0&0\\1&0&0\end{pmatrix}$ に変わるが、固有多項式は同じ $x^3-2x$ である(BH11 §1.2、pdf p. 12 の例)。行の和 $1,2,1$ は各頂点の次数である。

多重グラフ・ループ・有向グラフの場合

平行辺を許すグラフ(多重グラフ)では、$a_{ij}$ を $v_i$ と $v_j$ を結ぶ辺の本数とする。ループを許すときは $a_{ii}$ をループの本数とすることが多く(BH11 §1.1、pdf p. 11。高校数学の 隣接行列と道の数 の記事の定義「隣接行列の定め方」も同じ)、この約束で次の thm-adjacency-matrix-walks がそのまま成り立つ。行の和を次数に合わせるためにループを $2$ と数える流儀もあるので、文献ごとに約束を確かめる必要がある。
有向グラフ では、$v_i$ から $v_j$ への有向辺があるとき $a_{ij}=1$ とする。この行列は一般に対称でない。有限集合 $V$ 上の二項関係 $R$ を有向グラフとみたときの隣接行列は、$v_iRv_j$ のとき $1$ を置いた関係の表そのものである。以下では、断らない限り単純無向グラフの隣接行列を扱う。

歩道の数え上げと同型

隣接行列の冪と歩道の数

$k\ge0$ を整数とする。$A^k$ の $(i,j)$ 成分は、$v_i$ から $v_j$ への長さ $k$ の歩道の個数に等しい($A^0=I$)。

$k$ についての帰納法による。$k=0$ では長さ $0$ の歩道は 1 頂点の列だけなので成り立つ。長さ $k+1$ の歩道を最後から 2 番目の頂点 $v_l$ で分けると、その個数は $\sum_l(A^k)_{il}a_{lj}=(A^{k+1})_{ij}$ である。詳しい証明は、ループと平行辺を許す場合も含めて 隣接行列と道の数 の記事の定理「隣接行列の累乗の成分は道筋の数」に、有向グラフについて 有向グラフ の記事の命題「隣接行列の冪と有向歩道の個数」にある。$\square$

$A^k$ の対角成分の和 $\operatorname{tr}A^k$ は、長さ $k$ の閉歩道(始点を区別して数える)の総数である。トレースと固有値 の記事の定理「固有値の冪の和はトレース」により、これは $\lambda_1^k+\dots+\lambda_n^k$ に等しい。$k=1,2,3$ では
$$ \sum_i\lambda_i=\operatorname{tr}A=0,\qquad \sum_i\lambda_i^2=\operatorname{tr}A^2=2\lvert E\rvert,\qquad \sum_i\lambda_i^3=\operatorname{tr}A^3=6t $$
となる($t$ は三角形の個数)。後の 2 つは 隣接行列と道の数 の記事の命題「閉じた道筋の数と辺・三角形の数」で示されている。これらは BH11 Proposition 1.3.1(pdf p. 14)にもある。したがって、スペクトルから辺の本数と三角形の個数が決まる。
置換 $\sigma$($\{1,\dots,n\}$ の全単射)に対し、$(\sigma(i),i)$ 成分が $1$ で他の成分が $0$ の行列を置換行列 $P_\sigma$ という。$P_\sigma$ は第 $i$ 基本ベクトル $e_i$ を $e_{\sigma(i)}$ に写し、$P_\sigma^{\mathsf T}=P_\sigma^{-1}$ である。

同型と置換行列

$G$、$H$ を頂点に番号をつけた $n$ 頂点のグラフ($V(G)=\{v_1,\dots,v_n\}$、$V(H)=\{w_1,\dots,w_n\}$)とし、隣接行列を $A$、$A'$ とする。置換 $\sigma$ について、$v_i\mapsto w_{\sigma(i)}$ が $G$ から $H$ への同型であることと、$A'=P_\sigma AP_\sigma^{\mathsf T}$ であることは同値である。特に、$G\cong H$ ならば $G$ と $H$ の固有多項式とスペクトルは等しく、1 つのグラフの番号のつけ方を変えても固有多項式とスペクトルは変わらない。

$P=P_\sigma$ とおくと $(P)_{ki}=1\iff k=\sigma(i)$ なので、
$$ (PAP^{\mathsf T})_{kl}=\sum_{i,j}P_{ki}\,a_{ij}\,P_{lj}=a_{\sigma^{-1}(k)\,\sigma^{-1}(l)},\quad\text{すなわち}\quad (PAP^{\mathsf T})_{\sigma(i)\sigma(j)}=a_{ij} $$
である。$v_i\mapsto w_{\sigma(i)}$ が同型であるとは、すべての $i,j$ で「$v_iv_j\in E(G)\iff w_{\sigma(i)}w_{\sigma(j)}\in E(H)$」、すなわち $a_{ij}=a'_{\sigma(i)\sigma(j)}$ となることであり(グラフ の記事の定義「グラフの同型」)、これは上の式により $A'=PAP^{\mathsf T}$ と同値である。$V(G)$ から $V(H)$ への全単射はどれも $v_i\mapsto w_{\sigma(i)}$ の形に書けるので、$G\cong H$ なら $A'=PAP^{-1}$ となる置換行列 $P$ があり、相似な行列の固有多項式は等しい(固有値 の記事の命題「固有多項式の相似不変性」)。最後の主張は、番号のつけ替えが恒等写像による同型であることによる。$\square$

逆は成り立たない。スペクトルが等しくても同型とは限らない(ex-adjacency-matrix-cospectral)。

実対称行列としての性質

実対称行列のスペクトル定理

実対称行列 $M$ に対し、$M$ の固有ベクトルからなる $\mathbb{R}^n$ の正規直交基底 $u_1,\dots,u_n$ がある(実スペクトル定理、Axl24 7.29、pdf p. 259)。$Mu_i=\mu_iu_i$ とすると $\mu_i$ は実数で、$M$ の固有多項式は $\prod_i(x-\mu_i)$ である。したがって $M$ の固有値はすべて実数で、各固有値の重複度は固有空間の次元に等しい。この記事ではこの定理を証明なしに使う。隣接行列は実対称行列なので、$G$ の固有値はすべて実数で、固有ベクトルは実ベクトルにとれる。

Rayleigh 商による最大固有値

実対称行列 $M$ の最大の固有値を $\mu_1$、最小の固有値を $\mu_n$ とする。任意の $x\in\mathbb{R}^n$ について
$$ \mu_n\,x^{\mathsf T}x\ \le\ x^{\mathsf T}Mx\ \le\ \mu_1\,x^{\mathsf T}x $$
であり、右の等号が成り立つことと $Mx=\mu_1x$ であることは同値である。

rem-adjacency-matrix-spectral-theorem の正規直交基底で $x=\sum_ic_iu_i$ と書くと、$x^{\mathsf T}x=\sum_ic_i^2$、$x^{\mathsf T}Mx=\sum_i\mu_ic_i^2$ である。よって $\mu_1x^{\mathsf T}x-x^{\mathsf T}Mx=\sum_i(\mu_1-\mu_i)c_i^2\ge0$ で、等号は $\mu_i<\mu_1$ となる $i$ について $c_i=0$ となること、すなわち $x$ が固有値 $\mu_1$ の固有空間に属することと同値である。左の不等式も同様である。$\square$

$x\neq0$ に対する $x^{\mathsf T}Mx/x^{\mathsf T}x$ を Rayleigh 商という。補題は、$\mu_1$ が Rayleigh 商の最大値であることを示している。

最大固有値と次数

$G$ を頂点が 1 個以上のグラフとし、平均次数を $\overline d$、最大次数を $\Delta$ とする。

  1. $\overline d\le\lambda_1\le\Delta$ である。
  2. すべての固有値 $\lambda$ について $\lvert\lambda\rvert\le\lambda_1$ である。
  3. $G$ が $d$-正則(すべての頂点の次数が $d$)なら $\lambda_1=d$ であり、固有値 $d$ の重複度は $G$ の連結成分の個数に等しい。

1:lem-adjacency-matrix-rayleigh を $x=\mathbf{1}$ に使うと $\lambda_1\ge\mathbf{1}^{\mathsf T}A\mathbf{1}/n=2\lvert E\rvert/n=\overline d$ である。次に、固有値 $\lambda$ の実固有ベクトル $x$ をとり、$\lvert x_i\rvert$ が最大となる $i$ を選ぶ($x_i\neq0$)。
$$ \lvert\lambda\rvert\lvert x_i\rvert=\Bigl\lvert\sum_ja_{ij}x_j\Bigr\rvert\le\sum_ja_{ij}\lvert x_j\rvert\le\deg v_i\cdot\lvert x_i\rvert\le\Delta\lvert x_i\rvert $$
なので $\lvert\lambda\rvert\le\Delta$、特に $\lambda_1\le\Delta$ である。
2:$\lambda$ の実固有ベクトル $x$ と、各成分の絶対値を並べたベクトル $\lvert x\rvert$ について、$a_{ij}\ge0$ と補題から
$$ \lvert\lambda\rvert\,x^{\mathsf T}x=\lvert x^{\mathsf T}Ax\rvert=\Bigl\lvert\sum_{i,j}a_{ij}x_ix_j\Bigr\rvert\le\sum_{i,j}a_{ij}\lvert x_i\rvert\lvert x_j\rvert=\lvert x\rvert^{\mathsf T}A\lvert x\rvert\le\lambda_1\lvert x\rvert^{\mathsf T}\lvert x\rvert=\lambda_1x^{\mathsf T}x $$
である。
3:$A\mathbf{1}=d\mathbf{1}$ なので $d$ は固有値で、1 から $\lambda_1\le\Delta=d$ なので $\lambda_1=d$ である。固有値 $d$ の固有空間は、連結成分ごとに一定の値をとるベクトル全体であり、その次元は連結成分の個数である。rem-adjacency-matrix-spectral-theorem により重複度も同じである。$\square$

詳細

$Ax=dx$ とし、連結成分 $C$ の頂点のうち $x_i$ が最大の $i$ をとると、$dx_i=\sum_{j:\,v_j\sim v_i}x_j\le dx_i$ で、等号から $v_i$ の $d$ 個の隣接頂点 $v_j$ はすべて $x_j=x_i$ を満たす。この議論を隣接頂点に繰り返すと、$C$ は連結なので $x$ は $C$ の上で一定である。逆に、連結成分 $C$ の頂点で $1$、それ以外で $0$ のベクトル $\mathbf{1}_C$ は $A\mathbf{1}_C=d\mathbf{1}_C$ を満たし、相異なる成分の $\mathbf{1}_C$ は線形独立である。

1 と 3 は BH11 Proposition 3.1.2(pdf p. 43。連結で正則でなければ不等号が狭義になることも述べている)と Proposition 1.3.8(pdf p. 17)にある。星グラフ $K_{1,4}$ では $\overline d=\frac85$、$\lambda_1=2$、$\Delta=4$ である(ex-adjacency-matrix-cospectral)。

スペクトルの例

完全グラフと完全二部グラフ
  1. $K_n$($n\ge1$)の隣接行列は $J-I$ である。$J$ は $J\mathbf{1}=n\mathbf{1}$ を満たし、$\mathbf{1}$ に直交する $(n-1)$ 次元の部分空間の上で $0$ になるので、$J$ の固有値は $n$(重複度 $1$)と $0$(重複度 $n-1$)であり、$K_n$ のスペクトルは $n-1$(重複度 $1$)と $-1$(重複度 $n-1$)である。$K_4$ では $\varphi(x)=(x-3)(x+1)^3$ である。
  2. $K_{m,n}$($m,n\ge1$)の頂点を部集合ごとに並べると、隣接行列は $\begin{pmatrix}0&J_{m\times n}\\J_{n\times m}&0\end{pmatrix}$ で、階数は $2$ である。よって固有値 $0$ の固有空間は $m+n-2$ 次元で、残りの 2 つの固有値 $\lambda,\mu$ は $\lambda+\mu=\operatorname{tr}A=0$、$\lambda^2+\mu^2=\operatorname{tr}A^2=2mn$ を満たすので $\pm\sqrt{mn}$ である。$K_{1,4}$ のスペクトルは $2,0,0,0,-2$ である。
閉路グラフ

$n\ge3$ とし、閉路グラフ $C_n$ の頂点を $v_0,\dots,v_{n-1}$($v_j$ と $v_{j\pm1}$ が隣接、添字は $n$ を法とする)とする。$\omega=e^{2\pi i/n}$ と $k=0,\dots,n-1$ に対し、複素ベクトル $x^{(k)}$ を $x^{(k)}_j=\omega^{jk}$ で定めると
$$ (Ax^{(k)})_j=\omega^{(j-1)k}+\omega^{(j+1)k}=(\omega^{-k}+\omega^{k})\,\omega^{jk}=2\cos\frac{2\pi k}{n}\cdot x^{(k)}_j $$
である。$x^{(0)},\dots,x^{(n-1)}$ は $\mathbb{C}^n$ の基底である。

詳細

$k\neq k'$ なら $\sum_j\omega^{jk}\overline{\omega^{jk'}}=\sum_j\omega^{j(k-k')}=0$(1の冪根 の記事の定理「1 の $n$ 乗根の冪の和」)なので、これらは Hermite 内積について互いに直交する $0$ でない $n$ 個のベクトルであり、線形独立である。


したがって $C_n$ のスペクトルは $2\cos\frac{2\pi k}{n}$($k=0,\dots,n-1$)である(BH11 §1.4.3、pdf p. 18–19)。値 $2\cos\frac{2\pi k}{n}$ は、半径 $2$ の円周上の点 $2\omega^k$ の実部であり、$k$ と $n-k$ が同じ値を与える(図 1)。$C_8$ では $2,\ \sqrt2,\ \sqrt2,\ 0,\ 0,\ -\sqrt2,\ -\sqrt2,\ -2$ である。

半径2の円周上に8点 2ω^k を並べ、実軸へ垂直に下ろした足がC8の固有値 2cos(2πk/8) になることを示す図。赤い点が固有値で、下の数が重複度。 半径2の円周上に8点 2ω^k を並べ、実軸へ垂直に下ろした足がC8の固有値 2cos(2πk/8) になることを示す図。赤い点が固有値で、下の数が重複度。

Petersen グラフの隣接行列

Petersen グラフ(閉路 の記事の例「Petersen グラフ」)は $3$-正則で、隣接する 2 頂点は共通の隣接頂点をもたず、隣接しない相異なる 2 頂点は共通の隣接頂点をちょうど 1 つもつ。thm-adjacency-matrix-walks により $(A^2)_{uw}$ は $u,w$ の共通の隣接頂点の個数($u=w$ なら次数)なので
$$ A^2=3I+0\cdot A+1\cdot(J-I-A),\qquad\text{すなわち}\qquad A^2+A-2I=J $$
である。$\mathbf{1}$ に直交するベクトルの上では $J=0$ なので、固有値は $\mathbf{1}$ の固有値 $3$ のほかは $\lambda^2+\lambda-2=0$ の根 $1$ か $-2$ で、$\operatorname{tr}A=0$ から重複度が決まる。スペクトルは $3,\ 1^{(5)},\ (-2)^{(4)}$(右肩は重複度)であり、BH11 §1.4.5(pdf p. 20)の値と一致する。

重複度の計算を開く

$A\mathbf{1}=3\mathbf{1}$ であり、$\mathbf{1}$ に直交するベクトルの空間 $W$ は $A$ で $W$ に写る($A$ は対称なので $\mathbf{1}^{\mathsf T}Ax=(A\mathbf{1})^{\mathsf T}x=3\,\mathbf{1}^{\mathsf T}x$)。$A$ を $W$ に制限したものも対称なので、$W$ は固有ベクトルからなる基底をもち、その固有値は $1$ か $-2$ である。重複度を $a$、$b$ とすると $a+b=9$、$\operatorname{tr}A=3+a-2b=0$ から $a=5$、$b=4$ である。

同じ書物の §1.4.6(pdf p. 20)には、超立方体 $Q_n$ のスペクトルが $n-2i$(重複度 $\binom ni$、$i=0,\dots,n$)であることも述べられている。

連結性・直径と固有値

連結性と行列の冪

頂点が $n\ge1$ 個のグラフ $G$ について、次は同値である。

  1. $G$ は連結である。
  2. $(I+A)^{n-1}$ のすべての成分が正である。
  3. 任意の $i,j$ に対し、$(A^k)_{ij}>0$ となる $k\ge0$ がある。

$I$ と $A$ は交換するので、二項定理により $(I+A)^{n-1}=\sum_{k=0}^{n-1}\binom{n-1}{k}A^k$ である。成分はすべて $0$ 以上なので、$(i,j)$ 成分が正であることは、ある $0\le k\le n-1$ で $(A^k)_{ij}>0$、すなわち thm-adjacency-matrix-walks により長さ $n-1$ 以下の歩道が $v_i$ から $v_j$ へあることと同値である。1 ⇒ 2:$v_i$ と $v_j$ を結ぶ道は頂点が相異なるので長さ $n-1$ 以下の歩道である。2 ⇒ 3 は明らかである。3 ⇒ 1:$v_i$ から $v_j$ への歩道があれば道がある(距離(グラフ) の記事の補題「歩道からの道の取り出し」)ので、$G$ は連結である。$\square$

成分が $0$ 以上の正方行列 $T$ が、任意の $i,j$ について $(T^k)_{ij}>0$ となる $k$ をもつとき、$T$ は既約であるという(BH11 §2.2、pdf p. 32 は $T$ から作る有向グラフが強連結であることと同値であると述べている)。定理の 3 は、隣接行列が既約であることと $G$ が連結であることが同値であることを示している。$n\ge2$ の連結グラフでは $(A^2)_{ii}=\deg v_i>0$ なので、3 の $k$ を $1$ 以上に限っても同じである。

直径と相異なる固有値の個数

連結グラフ $G$ の直径を $D$ とすると、$G$ は相異なる固有値を $D+1$ 個以上もつ。

要点:相異なる固有値が $t$ 個なら $A^t$(したがって $A^D$)は $I,A,\dots,A^{t-1}$ の 1 次結合である。距離 $D$ の 2 頂点について $A^D$ の成分は正だが、$A^k$($k< D$)の成分は $0$ なので、$t\ge D+1$ である。

詳しい証明を開く

相異なる固有値を $\theta_1,\dots,\theta_t$ とする。rem-adjacency-matrix-spectral-theorem の固有ベクトルからなる基底の各元 $u$ は、$u$ の固有値に対応する因子で $0$ に写るので、$(A-\theta_1I)\cdots(A-\theta_tI)=0$ である(因子は互いに交換する)。展開すると $A^t$ は $I,A,\dots,A^{t-1}$ の 1 次結合であり、両辺に $A$ を掛けることを繰り返すと、$k\ge t$ のすべての $A^k$ も $I,A,\dots,A^{t-1}$ の 1 次結合になる。

$t\le D$ と仮定する。距離が $D$ の 2 頂点 $v_i,v_j$ をとると、長さ $k< D$ の歩道が $v_i$ から $v_j$ へあれば長さ $k$ 以下の道があって距離が $D$ より小さくなるので、$(A^k)_{ij}=0$($0\le k< D$)であり、最短の道があるので $(A^D)_{ij}>0$ である。一方 $A^D$ は $I,\dots,A^{t-1}$($t-1< D$)の 1 次結合なので $(A^D)_{ij}=0$ となり、矛盾する。よって $t\ge D+1$ である。$\square$

この定理は BH11 Proposition 1.3.3(pdf p. 15)にある。$K_n$ は直径 $1$ で相異なる固有値が $2$ 個、Petersen グラフは直径 $2$ で $3$ 個、$P_4$ は直径 $3$ で固有値 $\pm\frac{1\pm\sqrt5}{2}$ の $4$ 個であり、どれも等号が成り立つ。

二部グラフと最大固有値

二部グラフのスペクトルは対称

二部グラフ $G$ について、$\lambda$ が固有値なら $-\lambda$ も固有値であり、重複度は等しい。

部集合 $X,Y$ の頂点を順に並べると(番号のつけ替えはスペクトルを変えない)、$X$ の中・$Y$ の中に辺はないので $A=\begin{pmatrix}0&B\\B^{\mathsf T}&0\end{pmatrix}$ の形になる。対角行列 $S:=\begin{pmatrix}I&0\\0&-I\end{pmatrix}$ について $SAS^{-1}=-A$ なので、$A$ と $-A$ は相似で、$\varphi_G(x)=\det(xI-A)=\det(xI+A)=(-1)^n\varphi_G(-x)$ である。よって $\lambda$ と $-\lambda$ は固有多項式の根として同じ重複度をもつ。$\square$

逆を示すために、連結グラフの最大固有値の性質を調べる。成分が $0$ 以上の既約な行列についての Perron–Frobenius の定理(BH11 Theorem 2.2.1、pdf p. 32)の、対称行列の場合にあたる。

連結グラフの最大固有値

$G$ を連結グラフとする。$\lambda_1$ の重複度は $1$ であり、$\lambda_1$ の固有ベクトルとして、すべての成分が正のものがとれる。さらに、$\lambda_1$ の固有ベクトルはどれも $0$ の成分をもたない。

$x$ を $\lambda_1$ の実固有ベクトルとし、$y:=\lvert x\rvert$ とおく。lem-adjacency-matrix-rayleigh と $a_{ij}\ge0$ により
$$ \lambda_1\,y^{\mathsf T}y=\lambda_1\,x^{\mathsf T}x=x^{\mathsf T}Ax\le y^{\mathsf T}Ay\le\lambda_1\,y^{\mathsf T}y $$
なので等号が成り立ち、補題の等号条件から $Ay=\lambda_1y$ である。ある $i$ で $y_i=0$ とすると、$0=\lambda_1y_i=\sum_{j:\,v_j\sim v_i}y_j$ で $y_j\ge0$ なので、$v_i$ の隣接頂点 $v_j$ でも $y_j=0$ である。これを繰り返すと、$G$ は連結なので $y=0$ となり、$x\neq0$ に反する。よって $\lambda_1$ の固有ベクトル $x$ はどれも $0$ の成分をもたず、$\lvert x\rvert$ はすべての成分が正の固有ベクトルである。
固有空間の次元が $2$ 以上なら、第 1 成分が $0$ の $0$ でない固有ベクトルが作れて前段に反する。よって固有空間は 1 次元であり、rem-adjacency-matrix-spectral-theorem により重複度も $1$ である。$\square$

詳細

1 次独立な固有ベクトル $x,x'$ をとり $z:=x'_1x-x_1x'$ とおくと、$x_1,x'_1\neq0$ と 1 次独立性から $z\neq0$ であり、$z$ は $\lambda_1$ の固有ベクトルで $z_1=0$ である。

スペクトルによる二部グラフの判定
  1. 連結グラフ $G$ が二部グラフであることと、$-\lambda_1$ が $G$ の固有値であることは同値である。
  2. 任意のグラフ $G$ が二部グラフであることと、$G$ のスペクトルが $0$ について対称である(各 $\lambda$ と $-\lambda$ の重複度が等しい)ことは同値である。

1:二部グラフなら prop-adjacency-matrix-bipartite-symmetric により $-\lambda_1$ は固有値である。逆に $Ax=-\lambda_1x$($x$ は実ベクトル、$x\neq0$)とし、$y:=\lvert x\rvert$ とおく。$x^{\mathsf T}Ax=-\lambda_1x^{\mathsf T}x$ と $a_{ij}\ge0$、lem-adjacency-matrix-rayleigh から
$$ \lambda_1\,y^{\mathsf T}y=\lambda_1\,x^{\mathsf T}x=-x^{\mathsf T}Ax=-\sum_{i,j}a_{ij}x_ix_j\le\sum_{i,j}a_{ij}\lvert x_i\rvert\lvert x_j\rvert=y^{\mathsf T}Ay\le\lambda_1\,y^{\mathsf T}y $$
であり、等号が成り立つ。右の等号から $Ay=\lambda_1y$ なので、thm-adjacency-matrix-perron により $y$ の成分はすべて正、すなわち $x$ の成分はどれも $0$ でない。中央の等号から $\sum_{i,j}a_{ij}(\lvert x_i\rvert\lvert x_j\rvert+x_ix_j)=0$ で、各項は $0$ 以上なので、辺 $v_iv_j$ ごとに $x_ix_j=-\lvert x_i\rvert\lvert x_j\rvert<0$ である。よって $X:=\{v_i\mid x_i>0\}$、$Y:=\{v_i\mid x_i<0\}$ は頂点集合の分割で、どの辺も $X$ と $Y$ を結ぶので、$G$ は二部グラフである。
2:二部グラフなら prop-adjacency-matrix-bipartite-symmetric により対称である。逆は連結成分の個数についての帰納法で示す。要点:最大固有値 $\theta$ と $-\theta$ をともにもつ連結成分が 1 つあり、1 によりそれは二部グラフである。その成分を除いた残りのスペクトルもまた対称になる。

詳しい証明を開く

頂点を連結成分ごとに並べると $A$ は各成分の隣接行列を対角に並べた形になるので、$G$ のスペクトルは各連結成分のスペクトルを合わせたもの(重複度は足す)である(BH11 Proposition 1.3.6、pdf p. 17)。頂点がなければ主張は明らかである。$\theta:=\lambda_1(G)$ とおくと、$\theta$ は各成分の最大固有値の最大値である。スペクトルが対称なので $-\theta$ も固有値で、ある成分 $C$ の固有値である。thm-adjacency-matrix-degree-bounds の 2 を $C$ に使うと $\theta=\lvert-\theta\rvert\le\lambda_1(C)\le\theta$ なので $\lambda_1(C)=\theta$ であり、$-\lambda_1(C)$ は $C$ の固有値である。1 により $C$ は二部グラフで、そのスペクトルは対称である。$G$ から $C$ を除いたグラフ $G'$ のスペクトルは、$G$ のスペクトルから $C$ のスペクトルを(重複度を込めて)除いたもので、対称なもの同士の差なので対称である。$G'$ の連結成分は $G$ より 1 個少ないので、帰納法の仮定により $G'$ は二部グラフである。$C$ と $G'$ の二部分割を合わせれば $G$ の二部分割になる。$\square$

この定理は BH11 Proposition 3.4.1(pdf p. 48)にある。同書は一般の Perron–Frobenius の定理から導いている。連結でないと 1 は成り立たない(ex-adjacency-matrix-counterexamples)。

反例

外す・変える条件反例成り立たなくなること
同型を同スペクトルに弱める$K_{1,4}$ と $C_4$・孤立点の非交和同じスペクトルなら同型
無向(行列の対称性)有向 3 閉路固有値は実数
ループがない1 頂点のループと辺 1 本のグラフ$\operatorname{tr}A^3=6t$
thm-adjacency-matrix-perron の連結性$K_2$ を 2 つ並べたもの$\lambda_1$ の重複度は $1$
thm-adjacency-matrix-bipartite の 1 の連結性$K_3$ と $K_{1,4}$ の非交和$-\lambda_1$ が固有値なら二部グラフ
同じスペクトルをもつ同型でないグラフ

星グラフ $K_{1,4}$ のスペクトルは $2,0,0,0,-2$ である(ex-adjacency-matrix-complete)。$C_4$ に孤立点を加えたグラフのスペクトルは、$C_4$ の $2,0,0,-2$(ex-adjacency-matrix-cycle)と孤立点の $0$ を合わせた $2,0,0,0,-2$ で、固有多項式はどちらも $x^3(x^2-4)$ である。しかし前者は連結で後者は連結でないので、同型でない(図 2)。満たす性質:スペクトルが等しい。満たさない性質:同型である。この例は、正則でないグラフでは連結かどうかがスペクトルから決まらないことも示している(BH11 §1.3.7、pdf p. 17)。スペクトルから決まる辺の本数($4$ 本)と三角形の個数($0$ 個)はどちらも等しい。

左は星グラフK1,4、右は4頂点の閉路と孤立点。どちらもスペクトルは 2, 0, 0, 0, −2 だが、左は連結、右は連結でないので同型でない。 左は星グラフK1,4、右は4頂点の閉路と孤立点。どちらもスペクトルは 2, 0, 0, 0, −2 だが、左は連結、右は連結でないので同型でない。

表の残りの反例の確認
  1. 有向 3 閉路(有向辺 $(v_1,v_2),(v_2,v_3),(v_3,v_1)$)の隣接行列は $\begin{pmatrix}0&1&0\\0&0&1\\1&0&0\end{pmatrix}$ で、固有多項式は $x^3-1$、固有値は $1$ と $\frac{-1\pm\sqrt3\,i}{2}$ である(BH11 §1.2、pdf p. 12–13)。満たさない性質:対称行列である。
  2. $K_3$ と $K_{1,4}$ の非交和のスペクトルは $K_3$ の $2,-1,-1$ と $K_{1,4}$ の $2,0,0,0,-2$ を合わせたもので、$\lambda_1=2$ と $-2$ をもつ。しかし三角形(奇閉路)を含むので二部グラフでない。満たさない性質:連結である。
    ほかの反例を開く
    • 頂点 $v_1$ にループ 1 本、$v_1v_2$ に辺 1 本のグラフの隣接行列(ループを $1$ と数える)は $\begin{pmatrix}1&1\\1&0\end{pmatrix}$ で、$\operatorname{tr}A^3=4$ は $6$ の倍数でない。三角形は $0$ 個である(隣接行列と道の数 の記事の例「反例:ループがあると三角形の数と合わない」)。
    • $K_2$ を 2 つ並べたグラフは $1$-正則で連結成分が 2 個なので、thm-adjacency-matrix-degree-bounds の 3 により $\lambda_1=1$ の重複度は $2$ である。固有ベクトル $(1,1,0,0)$ は $0$ の成分をもつ。
    • 上の $K_3$ と $K_{1,4}$ の非交和で、$-\lambda_1$ を与えるのは $K_{1,4}$ の成分だけで、$\lambda_1$ を与える成分は $K_3$ と $K_{1,4}$ の 2 つある。thm-adjacency-matrix-bipartite の 2 の証明では、$-\lambda_1$ を与える成分を選んでいる。

他の行列との関係

Laplace 行列とランダムウォークの推移行列

頂点の次数を対角に並べた行列を $D$ とする。

  • Laplace 行列 $L:=D-A$ の第 $i$ 行と第 $i$ 列を除いた行列式は全域木の個数である(連結グラフについては 全域木 の記事の定理「行列木定理」。非連結なら両辺とも $0$ である。一般のグラフについて、この値が $L$ の固有値 $0=\mu_1\le\mu_2\le\dots\le\mu_n$ から $\frac1n\mu_2\cdots\mu_n$ と求まることは BH11 Proposition 1.3.4、pdf p. 15)。$d$-正則なら $L=dI-A$ なので、$L$ の固有値は $d-\lambda_i$ である。
  • 孤立点のないグラフの上で、隣の頂点へ等しい確率で移るランダムウォークの推移行列は $P=D^{-1}A$ である(Markov連鎖 の記事の例「グラフの上のランダムウォーク」)。$d$-正則なら $P=\frac1dA$ で、$P$ の固有値は $\lambda_i/d$ である。
    Laplace 行列と推移行列の性質を開く

    $L$ は行の和が $0$ の対称行列で、任意の $x$ について $x^{\mathsf T}Lx=\sum_{v_iv_j\in E}(x_i-x_j)^2\ge0$ である(BH11 §1.1、pdf p. 11)。固有値 $0$ の重複度は連結成分の個数に等しい(同 Proposition 1.3.7、pdf p. 17)。

    $P=D^{-1/2}\bigl(D^{-1/2}AD^{-1/2}\bigr)D^{1/2}$ は対称行列 $D^{-1/2}AD^{-1/2}$ と相似なので、固有値はすべて実数である。thm-adjacency-matrix-bipartite により、連結な $d$-正則グラフで $P$ が固有値 $-1$ をもつのは二部グラフのときに限る。これは Markov連鎖 の記事の例で、二部グラフの上のランダムウォークの周期が $2$ になることに対応する。高校の確率漸化式とのつながりは 確率漸化式と定常分布 で扱われている。

行列定義対称か固有値から分かること
隣接行列 $A$隣接すれば $1$対称歩道・辺・三角形の数、直径の下界、二部性
Laplace 行列 $L$$D-A$対称連結成分の個数、全域木の個数
推移行列 $P$$D^{-1}A$一般に対称でない(固有値は実数)ランダムウォークの収束の様子
有向グラフの隣接行列有向辺があれば $1$一般に対称でない有向歩道の数

関連項目

参考文献

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