等長写像(isometry)とは、距離空間の間の写像 $f$ で、すべての点 $x,y$ について $d(f(x),f(y))=d(x,y)$ を満たすものである。全射を仮定しない等長埋め込みと、全射な等長同型を区別する。等長写像は単射で像への同相写像であり、球・収束・Cauchy 列・完備性を保つ。完備な空間への等長写像は、定義域の完備化へ一意に延長できる。有限次元 Euclid 空間の間の等長埋め込みはアフィンな写像に限られる。
二つの図形が「同じ形と大きさ」であるという言い方を、距離だけを使って定式化するのが等長写像(isometry)である。距離空間 $X$ から距離空間 $Y$ への写像 $f$ が等長であるとは、$X$ の任意の二点の距離が、その像の二点の距離と正確に等しいことをいう。この条件は角度、座標、線形構造を前提にしない。例えば数直線の平行移動、平面の回転、距離空間の部分空間への包含が等長性の例になる。
用語には一つ注意がある。「等長写像」を距離保存写像一般に使う文献と、全射な距離保存写像だけに使う文献がある。本記事ではまず距離保存という数式を定義し、全射を仮定しない場合を等長埋め込み、全射な場合を等長同型と呼び分ける。「等長写像」だけでは全射性を読み取らない。既存の記事を読むときも、対象が「像の部分空間」なのか「終域全体」なのかを確かめる必要がある。この区別は、完備性やコンパクト性を終域へ移してよいかどうかに直結する。
$(X,d_X)$ と $(Y,d_Y)$ を距離空間とする。ここで距離は、同じ点の間で $0$、異なる点の間で正、対称、三角不等式を満たす関数である。
写像 $f\colon X\to Y$ が距離を保つとは、任意の $x,x'\in X$ について
$$
d_Y(f(x),f(x'))=d_X(x,x')
$$
が成り立つことをいう。このような写像を等長埋め込み(isometric embedding)という。さらに $f(X)=Y$ ならば、$f$ を等長同型(surjective isometry)という。距離空間 $X,Y$ の間に等長同型が存在するとき、両者は等長であるという。
「埋め込み」という語に別途、位相に関する仮定を加える必要はない。後で証明するように距離を保てば自動的に単射かつ像への同相写像になる。「全射」という条件は、その像 $f(X)$ が終域 $Y$ 全体と等しい、という追加条件である。例えば包含 $[0,1]\hookrightarrow\mathbb R$ は等長埋め込みだが、終域を $\mathbb R$ と書いたままでは等長同型ではない。同じ写像を終域 $[0,1]$ への写像と見れば等長同型になる。等長性を述べる際は、写像の終域もデータの一部である。
二つの距離空間が等長であるという関係は同値関係である。恒等写像は距離を保ち、等長同型の逆写像も距離を保ち、二つの等長同型の合成も距離を保つからである。一方、部分空間への等長埋め込みが片方向に存在するだけでは二つの空間が等長とは限らない。点一個の空間は二点の距離空間へ等長埋め込みできるが、逆向きにはできない。
等長埋め込み $f\colon X\to Y$ は単射であり、像 $f(X)$ に部分空間距離を入れると $f\colon X\to f(X)$ は等長同型である。さらに $f$ は $1$-Lipschitz 連続で、その逆写像 $f^{-1}\colon f(X)\to X$ も $1$-Lipschitz 連続である。したがって $f$ は像への同相写像である。
$f(x)=f(x')$ ならば $d_X(x,x')=d_Y(f(x),f(x'))=0$ なので $x=x'$ である。よって $f$ は単射で、像への逆写像が定まる。距離保存式は $d_Y(f(x),f(x'))\le d_X(x,x')$ でもあるから $f$ は $1$-Lipschitz 連続である。$u=f(x),v=f(x')$ と置けば $d_X(f^{-1}(u),f^{-1}(v))=d_Y(u,v)$ なので逆写像も $1$-Lipschitz 連続となる。連続な全単射で逆も連続だから、像への同相写像である。$\square$
この命題から、等長写像は単なる位相的な埋め込みより強いことが分かる。同相写像は「近い点が近い点に移る」という極限の構造を保つが、距離の数値まで保つとは限らない。例えば $\mathbb R$ 上の $x\mapsto 2x$ は同相写像であるが、二点間距離を二倍するので等長でない。逆に等長埋め込みは、像への距離保存性から同相性を得るので、同相性を別に仮定する必要がない。
距離を保つと、中心からの距離で定義される集合は像の中で正確に対応する。$B_X(x,r)=\{x'\in X:d_X(x,x')< r\}$ を開球とすると、
$$
f(B_X(x,r))=B_Y(f(x),r)\cap f(X)
$$
である。右辺に $f(X)$ との共通部分が付くことが重要で、全射でない等長埋め込みに対して一般に $f(B_X(x,r))=B_Y(f(x),r)$ とはいえない。閉球についても同じ形の式が成り立つ。この式は、像が部分空間として持つ開集合・閉集合と $X$ のそれらとの対応を直接表している。
等長埋め込み $f\colon X\to Y$ と $X$ の点列 $(x_n)$ に対して、$x_n\to x$ と $f(x_n)\to f(x)$ は同値である。また、$(x_n)$ が Cauchy 列であることと $(f(x_n))$ が Cauchy 列であることは同値である。空でない部分集合 $A\subset X$ について、$A$ と $f(A)$ の直径は等しい。したがって $A$ が有界であることと $f(A)$ が有界であることも同値である。
距離保存式に $x'=x$ を代入すると $d_Y(f(x_n),f(x))=d_X(x_n,x)$ となる。両辺が $0$ に収束する条件は同じなので、収束についての主張が従う。Cauchy 性は、任意の $\varepsilon>0$ に対し十分大きい $m,n$ で二項間距離が $\varepsilon$ より小さい、という条件である。$d_Y(f(x_m),f(x_n))=d_X(x_m,x_n)$ を代入すればこの条件も同値である。直径は二点間距離の上限だから、
$$
\operatorname{diam}f(A)=\sup_{a,a'\in A}d_Y(f(a),f(a'))=\sup_{a,a'\in A}d_X(a,a')=\operatorname{diam}A
$$
を得る。空でない集合について直径が有限であることは有界性と同値であるから、最後の主張も従う。$\square$
注意すべきは、$f(x_n)$ が $Y$ のある点 $y$ に収束したとき、必ず $y=f(x)$ と書けるわけではない点である。例えば有理数 $\mathbb Q$ から実数 $\mathbb R$ への包含は等長埋め込みだが、$\sqrt2$ に収束する有理数列の極限は像 $\mathbb Q$ の外にある。上の命題が言っているのは、指定された $x\in X$ への収束と、その像 $f(x)$ への収束が同値ということである。像の外の極限をどう扱うかは、完備化の問題につながる。
全射な等長同型ならば、開球、閉球、収束、Cauchy 列、有界性などは両空間の間で完全に対応する。コンパクト性も同相写像で保存されるので、等長な二空間の一方がコンパクトなら他方もコンパクトである。全射を外した場合に結論が移るのは、終域 $Y$ 全体ではなく部分空間 $f(X)$ である。この「像と終域の区別」は等長性の議論で繰り返し現れる。
完備な距離空間からの等長埋め込みは、終域の中に閉じた像を作る。この事実は、等長埋め込みによる具体的な表現を探すときにも、ある空間が完備でないことを証明するときにも役立つ。
$X$ が完備で、$f\colon X\to Y$ が等長埋め込みならば、$f(X)$ は $Y$ の閉集合である。逆に $Y$ が完備で $f(X)$ が閉集合ならば、$X$ は完備である。したがって完備な終域 $Y$ の中では、等長埋め込みの像が閉じていることと $X$ の完備性は同値である。
まず $X$ が完備とする。$f(X)$ の点列 $(f(x_n))$ が $Y$ で $y$ に収束すると、これは Cauchy 列である。距離保存により $(x_n)$ も $X$ で Cauchy 列だから、ある $x\in X$ に収束する。連続性から $f(x_n)\to f(x)$ であり、距離空間で極限は一意なので $y=f(x)\in f(X)$ となる。距離空間では点列の極限をすべて含む集合は閉集合である。
逆に $Y$ が完備で $f(X)$ が閉じているとする。$X$ の任意の Cauchy 列 $(x_n)$ に対し $(f(x_n))$ は $Y$ で Cauchy 列なので、ある $y\in Y$ に収束する。閉性から $y\in f(X)$、ゆえに $y=f(x)$ となる $x\in X$ がある。距離保存式より $d_X(x_n,x)=d_Y(f(x_n),f(x))\to0$ である。したがって $X$ のすべての Cauchy 列が収束し、$X$ は完備である。$\square$
第一の向きには $Y$ の完備性は不要である。例えば完備な一点空間を不完備な $\mathbb Q$ に埋め込んでも、像の一点集合は閉じている。第二の向きには $Y$ の完備性が必要で、$\mathbb Q$ を $Y=\mathbb Q$ 自身に恒等写像で埋め込めば像は閉じているが $\mathbb Q$ は完備でない。また $\mathbb Q\hookrightarrow\mathbb R$ の像は稠密で閉じておらず、これも定理と整合する。
等長同型があれば完備性は互いに移る。例えば $\mathbb Q$ と $\mathbb R$ は通常の距離で等長にはならない。一方、同相であっても完備性を保つとは限らない。$(0,1)$ と $\mathbb R$ は同相だが、通常の距離で前者は不完備、後者は完備である。この差は完備性が距離の数値に依存する性質であることを示している。
等長埋め込みは Cauchy 列を Cauchy 列へ移すので、終域が完備なら、定義域を完備化しても写像を延長できる。完備化そのものの構成は 完備距離空間 を参照し、ここでは延長に必要な計算を示す。
$\iota\colon X\to\widehat X$ を $X$ の完備化に付随する稠密な等長埋め込みとし、$Y$ を完備距離空間とする。任意の等長埋め込み $f\colon X\to Y$ は、$\widehat f\circ\iota=f$ を満たす等長埋め込み $\widehat f\colon\widehat X\to Y$ にただ一通り延長される。さらに $f(X)$ が $Y$ で稠密ならば $\widehat f$ は全射であり、$\widehat X$ と $Y$ は等長である。
$z\in\widehat X$ に対し、稠密性から $\iota(x_n)\to z$ となる $X$ の点列を選ぶ。$(x_n)$ は Cauchy 列なので $(f(x_n))$ も Cauchy 列であり、$Y$ の完備性から収束する。その極限を $\widehat f(z)$ と定める。別の列 $(x'_n)$ が同じ $z$ に近づくなら、$d_Y(f(x_n),f(x'_n))=d_{\widehat X}(\iota(x_n),\iota(x'_n))\to0$ なので極限は同じであり、定義は列の選び方によらない。
$z,z'\in\widehat X$ にそれぞれ近づく列を用いると、距離関数の連続性と $f$ の等長性から $d_Y(\widehat f(z),\widehat f(z'))=d_{\widehat X}(z,z')$ となる。よって $\widehat f$ は等長埋め込みであり、定数列を用いれば $\widehat f(\iota(x))=f(x)$ である。等長埋め込みは連続で、稠密な $\iota(X)$ 上で値が決まれば延長は一意である。最後に $f(X)$ が $Y$ で稠密なら、$\widehat f(\widehat X)$ は完備な空間の像なので前の定理により閉集合である。この閉集合は稠密な $f(X)$ を含むから $Y$ 全体に等しい。$\square$
$Y$ の完備性を外すと延長先がない場合がある。$\mathbb Q$ の完備化 $\mathbb R$ から $\mathbb Q$ へ、恒等写像 $\mathbb Q\to\mathbb Q$ を延長する連続写像は存在しない。例えば $\sqrt2$ に近づく有理数列の像が $\mathbb Q$ の中で極限を持てないためである。これに対し終域を $\mathbb R$ に替えると、延長は恒等写像 $\mathbb R\to\mathbb R$ になる。
最も基本的な例は部分空間への包含である。$A\subset Y$ に $Y$ から制限した距離を入れれば、$A\hookrightarrow Y$ は必ず等長埋め込みになる。ただし全射なのは $A=Y$ のときだけである。逆に $A$ に別の距離を入れたら、同じ集合の包含であっても等長性は一般に失われる。写像の式だけでなく、定義域と終域の距離の指定が不可欠である。
実数直線で $f(x)=x+a$ と $g(x)=-x+a$ は任意の定数 $a$ について全射な等長同型である。実際、どちらも二点の差の絶対値を保つ。$x\mapsto 2x$ は全射で連続な逆写像もあるが、$|2x-2y|=2|x-y|$ なので等長ではない。$x\mapsto x^3$ も同相写像ではあるが、$0$ と $2$ の距離 $2$ を像では $8$ に変える。等長性は「連続で可逆」より厳密な条件である。
平面では回転、平行移動、直線に関する鏡映とその合成が距離を保つ。例えば $R_\theta$ を回転行列、$b\in\mathbb R^2$ とすると $x\mapsto R_\theta x+b$ は $|R_\theta(x-y)|=|x-y|$ により等長同型である。鏡映では向きが反転するが距離は変わらない。したがって等長性それ自体は向きの保存を要求しない。
実数直線への写像 $t\mapsto(\cos t,\sin t)$ を、円周を平面の弦距離で測ったものへの写像と考えると、局所的に曲線の速さが $1$ であっても等長埋め込みではない。例えば $0$ と $\pi$ の定義域での距離は $\pi$ だが、像の弦距離は $2$ である。この例は、曲線の長さに関する局所条件と、任意の二点の距離を保つ大域条件とを区別するために有用である。
一つの集合に別の距離を入れた例として、$[0,1]$ 上の通常の距離 $d(x,y)=|x-y|$ と $d'(x,y)=\min\{1,2|x-y|\}$ を考える。恒等写像は両者の間で同相だが、$0$ と $1/4$ の距離は前者で $1/4$、後者で $1/2$ であり等長ではない。距離が同じ位相を与えることと、距離を一点も変えずに保つことは別である。
ノルム空間では $d(x,y)=\|x-y\|$ と置いて距離を定める。この距離について写像 $F\colon V\to W$ が等長埋め込みである条件は、任意の $x,y$ について $\|F(x)-F(y)\|=\|x-y\|$ である。$F$ が線形ならば $F(0)=0$ なので、条件は $\|F(x)\|=\|x\|$ と同値になる。この場合は線形等長写像と呼ぶ。一般の等長写像には線形性は要求されない。前述の平行移動 $x\mapsto x+b$ は $b\ne0$ なら線形でない。
実ノルム空間の間の全射な等長写像については、Maz32 の Mazur–Ulam の定理がある。それによれば $F\colon V\to W$ が全射で距離を保つならば、$F(x)-F(0)$ は実線形である。すなわち $F$ はアフィン写像である。ここで全射は本質的であり、任意のノルム空間への等長埋め込みまで同じ結論をそのまま拡張してはならない。また複素ノルム空間に適用するときには、まず実ノルム空間として実アフィンという結論を得るのであって、複素線形性を自動的に得るわけではない。
有限次元 Euclid 空間では、全射を仮定しない等長埋め込みもアフィンな形に限られる。この特別な場合は内積を距離から取り出すだけで完全に証明できる。
$f\colon\mathbb R^n\to\mathbb R^m$ が通常の Euclid 距離を保つならば、$n\le m$ であり、直交する単位ベクトル $u_1,\ldots,u_n\in\mathbb R^m$ と $b\in\mathbb R^m$ を用いて
$$
f(x_1,\ldots,x_n)=b+\sum_{i=1}^n x_i u_i
$$
と書ける。特に $n=m$ ならば $f$ は全射な等長同型である。
$b=f(0)$、$g(x)=f(x)-b$ と置くと $g(0)=0$ で、$g$ も距離を保つ。よって $\|g(x)\|=\|x\|$ である。実内積の偏極恒等式
$$
2\langle g(x),g(y)\rangle=\|g(x)\|^2+\|g(y)\|^2-\|g(x)-g(y)\|^2
$$
に等長性を代入すると $\langle g(x),g(y)\rangle=\langle x,y\rangle$ を得る。標準基底を $e_i$、$u_i=g(e_i)$ と置けば $\langle u_i,u_j\rangle=\delta_{ij}$ なので、$u_i$ は正規直交族である。したがって $n\le m$。
$v=\sum_i x_i u_i$ と置くと、$\|v\|^2=\sum_i x_i^2=\|x\|^2=\|g(x)\|^2$ であり、$\langle g(x),v\rangle=\sum_i x_i\langle g(x),g(e_i)\rangle=\sum_i x_i^2$ である。ゆえに $\|g(x)-v\|^2=0$、すなわち $g(x)=v$。これが表示式を与える。$n=m$ なら正規直交族 $u_1,\ldots,u_n$ は $\mathbb R^m$ の基底だから、表示式は任意の $y\in\mathbb R^m$ を値として取り、全射となる。$n=0$ の場合も、空和を $0$ と読むと同じ結論である。$\square$
この定理には、一般の距離空間に存在しない内積構造が使われている。距離だけから Euclid 空間の内積を復元できるため、像の点を $n$ 個の座標の線形結合として決定できる。一般のノルム空間で「全射なしでもアフィン」と早合点しないためにも、仮定を分けて読むことが重要である。
等長性は距離に関する命題を移す道具である。全射な等長同型なら、開球の包含関係、点列の収束、Cauchy 性、完備性、有界性、直径、コンパクト性などが対応する。全射でない場合も、同じ主張を $Y$ 全体ではなく $f(X)$ という部分空間について述べれば対応する。ただし終域 $Y$ に固有の性質、例えば $Y$ が連結であることやコンパクトであることを、等長埋め込みだけから $X$ に移すことはできない。連結な $\mathbb R$ には二点からなる離散部分空間が等長埋め込みされ、コンパクトな $[0,1]$ には不完備な $(0,1)$ が等長埋め込みされる。
二点間距離だけから求める量なら、原理的には等長写像の下で変わらない。例えば集合の直径はその典型である。しかし埋め込み先の周囲の空間との距離は別である。$A\subset X$ から外側の点 $y\in Y\setminus f(X)$ までの距離は、$X$ 内のデータからは決まらない。例えば同じ二点距離を持つ集合を平面に置いても、その集合から平面上の第三点までの距離は配置により変わる。等長埋め込みが保つのは定義域の点同士の距離である。
Riemann 多様体では「等長写像」が計量テンソルを保つ微分同相写像を指すこともある。そのとき曲線の長さが保たれ、連結な多様体の内在的距離も保たれる。逆に局所的な長さを保つ写像と、全体の任意の二点の距離を保つ写像を混同してはいけない。例えば円周への被覆写像は局所的には長さを保っても、大きく離れた二点が同じ点に写るので距離空間としての等長埋め込みではない。この記事で「等長埋め込み」と書くときは、特に断らない限り定義節の大域的な距離保存を意味する。
等長性を確かめる最短の方法は、任意の二点 $x,x'$ を取って像の距離を計算し、元の距離と等しいことを示すことである。ノルム空間の線形写像なら零点からの距離だけを調べれば十分だが、非線形写像にはそれだけでは足りない。例えば $F(0)=0$ かつ $\|F(x)\|=\|x\|$ がすべての $x$ で成り立っても、二点間距離が保たれるとは限らない。実数直線で $F(x)=|x|$ とすれば零点からの距離は保つが、$-1$ と $1$ はともに $1$ に写り、距離 $2$ が $0$ になる。
次に全射性を別途調べる。距離保存式だけで単射性は得られるが、全射性は式から出ない。写像が全射なら逆写像も距離を保ち、二空間の距離的性質を対称に比較できる。全射でないときは、何を終域としているか、像にどの距離を入れるかを明記する。$X$ と $f(X)$ は等長だが、$X$ と $Y$ が等長であるとは限らない。
最後に、比較したい性質が距離だけに依存するかを確かめる。位相的性質の多くは等長同型で保たれるが、向き、線形構造、測度、周囲の空間への置き方まで自動的に保たれるわけではない。例えば平面の鏡映は等長同型でありながら向きを反転する。等長写像は「何も変えない写像」ではなく、指定された距離を変えない写像である。
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