Liouville 関数(Liouville function)とは、正の整数 $n$ の素因数を重複を込めて数えた個数 $\Omega(n)$ によって $\lambda(n)=(-1)^{\Omega(n)}$ と定める数論的関数である。$\lambda$ は完全乗法的で、平方因子をもたない数の上では Möbius 関数 $\mu$ と一致し、約数にわたる和は平方数の指示関数になる。$\operatorname{Re}s>1$ で $\sum\lambda(n)n^{-s}=\zeta(2s)/\zeta(s)$ が成り立つ。和 $L(x)=\sum_{n\le x}\lambda(n)$ が $o(x)$ であることは Möbius 関数の和が $o(x)$ であることと同値で、素数定理と同じ深さの主張である。
前提知識: 乗法的関数, Möbius関数, 数論的関数, Riemannゼータ関数
正の整数 $n$ の素因数を重複を込めて数えた個数が偶数なら $1$、奇数なら $-1$ をとる関数を Liouville 関数 といい、$\lambda(n)$ と書く。たとえば $12=2\cdot2\cdot3$ は素因数を 3 個もつので $\lambda(12)=-1$ である。$\lambda$ は完全乗法的、すなわちすべての $m,n$ について $\lambda(mn)=\lambda(m)\lambda(n)$ を満たし、平方因子をもたない数の上では Möbius関数 $\mu$ と一致する。
$\lambda$ の値 $\pm1$ がどれほど打ち消し合うかは、素数の分布と深く結びついている。この記事では、$\lambda$ と $\mu$ を Dirichlet 積で互いに表す式(thm-lv-convolution)、床関数を使った和の公式(thm-lv-floor)、Dirichlet 級数が $\zeta(2s)/\zeta(s)$ になること(thm-lv-dirichlet)を証明し、和 $L(x)=\sum_{n\le x}\lambda(n)$ が $o(x)$ であることと Möbius 関数の和が $o(x)$ であることが同値であること(thm-lv-mean)を示す。
以下、$p$ はつねに素数を表し、$d\mid n$ は $d$ が $n$ の正の約数であることを表す。
正の整数 $n=p_1^{e_1}p_2^{e_2}\cdots p_r^{e_r}$($p_i$ は相異なる素数、$e_i\ge1$)に対し、$\Omega(n):=e_1+e_2+\cdots+e_r$ を、重複を込めた素因数の個数とする($\Omega(1)=0$)。
$$
\lambda(n):=(-1)^{\Omega(n)}
$$
と定め、$\lambda$ を Liouville 関数(Liouville function)という。実数 $x\ge1$ に対し、その和を
$$
L(x):=\sum_{n\le x}\lambda(n)
$$
と書く。
素因数分解 の一意性により $\Omega(n)$ は矛盾なく定まる。重複を数えない素因数の個数 $\omega(n):=r$ とは区別する。この記事では Möbius関数 $\mu$ の和を $M(x):=\sum_{n\le x}\mu(n)$ と書く。
記号 $\lambda(n)$ は、法 $n$ の既約剰余類群の指数(Carmichael関数)にも使われる。両者はまったく別の関数である。
$\lambda(n)$ は「$n$ の素因数の個数の偶奇」を $\pm1$ で記録する。素因数の個数が偶数の数と奇数の数がほぼ同じくらいあるなら、$L(x)$ は $x$ に比べて小さくなるはずである。この「偶奇が半々である」という主張は、見かけは素朴だが、素数定理と同じ深さをもつ(thm-lv-mean と rem-lv-pnt)。一方、$\lambda$ には素因数分解の情報のうち偶奇しか残っていないので、代数的にはきわめて扱いやすい。完全乗法的で、約数にわたる和は「平方数かどうか」を判定する関数になる。
$n=1,\dots,20$ での値は次のとおりである。
| $n$ | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $\lambda(n)$ | $1$ | $-1$ | $-1$ | $1$ | $-1$ | $1$ | $-1$ | $-1$ | $1$ | $1$ | $-1$ | $-1$ | $-1$ | $1$ | $1$ | $1$ | $-1$ | $-1$ | $-1$ | $-1$ |
| $L(n)$ | $1$ | $0$ | $-1$ | $0$ | $-1$ | $0$ | $-1$ | $-2$ | $-1$ | $0$ | $-1$ | $-2$ | $-3$ | $-2$ | $-1$ | $0$ | $-1$ | $-2$ | $-3$ | $-4$ |
| $\mu(n)$ | $1$ | $-1$ | $-1$ | $0$ | $-1$ | $1$ | $-1$ | $0$ | $0$ | $1$ | $-1$ | $0$ | $-1$ | $1$ | $1$ | $0$ | $-1$ | $0$ | $-1$ | $0$ |
$\mu(n)\ne0$ となる $n$(平方因子をもたない $n$)では $\lambda(n)=\mu(n)$ である。$\mu(n)=0$ となる $n$ でも $\lambda(n)$ は $\pm1$ で、たとえば $\lambda(4)=\lambda(9)=\lambda(16)=1$、$\lambda(8)=\lambda(12)=-1$ である。$L(n)$ は $n=2$ から $20$ まで $0$ 以下にとどまっている。
数値計算で次の値が得られる。
| $x$ | $10$ | $50$ | $100$ | $1000$ |
|---|---|---|---|---|
| $L(x)$ | $0$ | $-6$ | $-2$ | $-14$ |
| $M(x)$ | $-1$ | $-3$ | $1$ | $2$ |
どちらも $x$ に比べてずっと小さい。$L(x)$ は $x\ge2$ の範囲で長いあいだ $0$ 以下にとどまるが、いつまでもそうであるわけではない(rem-lv-polya)。
1:$m,n$ の素因数分解を掛け合わせると $mn$ の素因数分解になり、同じ素数の指数は足し合わされるので $\Omega(mn)=\Omega(m)+\Omega(n)$ である。よって $\lambda(mn)=(-1)^{\Omega(m)+\Omega(n)}=\lambda(m)\lambda(n)$ である。素数 $p$ では $\Omega(p)=1$ なので $\lambda(p)=-1$ である。完全乗法的関数 $f$($f(1)=1$)は素因数分解 $n=p_1^{e_1}\cdots p_r^{e_r}$ により $f(n)=f(p_1)^{e_1}\cdots f(p_r)^{e_r}$ と素数での値で決まるので、すべての素数で $-1$ をとるものは $(-1)^{e_1+\cdots+e_r}=\lambda(n)$ に限る。
2:$n=\prod_ip_i^{e_i}$ とし、$e_i=2c_i+\varepsilon_i$($\varepsilon_i\in\{0,1\}$)と書く。$a:=\prod_ip_i^{c_i}$、$b:=\prod_ip_i^{\varepsilon_i}$ とおくと $n=a^2b$ で、$b$ は平方因子をもたない。逆に $n=a^2b$($b$ は平方因子をもたない)なら、各素数 $p_i$ について $b$ の中の $p_i$ の指数は $0$ か $1$ で、$e_i$ との差が偶数でなければならないから $e_i$ を $2$ で割った余り $\varepsilon_i$ に等しい。よって $b$ が決まり、$a^2=n/b$ から $a$ も決まる。1 により $\lambda(n)=\lambda(a)^2\lambda(b)=\lambda(b)$ である。$b$ は相異なる $k$ 個の素数の積なので $\lambda(b)=(-1)^k=\mu(b)$ である(Möbius関数 の記事の定義「Möbius関数の定義」)。$\square$
約数にわたる和については、乗法的関数 の記事で、命題「約数にわたる和と乗法性」を $f=\lambda$ に当てはめて
$$
\sum_{d\mid n}\lambda(d)=\begin{cases}1&(n\text{ が平方数}),\\0&(\text{それ以外})\end{cases}
$$
が示されている(素数冪 $p^e$ では $\sum_{j=0}^e(-1)^j$ が $e$ の偶奇に応じて $1$ か $0$ になる)。また同記事の命題「完全乗法的関数の逆元」により、$\lambda$ の Dirichlet 逆元は $\mu\lambda=\mu^2$ である。以下、$n$ が平方数なら $1$、そうでなければ $0$ をとる関数を $q$ と書く。上の等式は $\lambda*\mathbf 1=q$ と書ける。ここで $*$ は Dirichlet 積(数論的関数 の記事の定義「数論的関数と Dirichlet 積」)、$\mathbf 1$ は値がつねに $1$ の関数、$\varepsilon$ は $\varepsilon(1)=1$、$n\ge2$ で $\varepsilon(n)=0$ となる単位元である。
数論的関数 $g$ を、$n=m^2$($m$ は正の整数)のとき $g(n):=\mu(m)$、$n$ が平方数でないとき $g(n):=0$ と定める。このとき
$$
\lambda=\mu*q,\qquad q*g=\varepsilon,\qquad\mu=\lambda*g
$$
が成り立つ。値で書けば、すべての正の整数 $n$ について
$$
\lambda(n)=\sum_{m^2\mid n}\mu\!\left(\frac n{m^2}\right),\qquad\mu(n)=\sum_{m^2\mid n}\mu(m)\,\lambda\!\left(\frac n{m^2}\right)
$$
である(和は $m^2$ が $n$ を割る正の整数 $m$ にわたる)。
1 つ目:$\lambda*\mathbf 1=q$ の両辺に $\mu$ を Dirichlet 積で掛けると、$\mathbf 1*\mu=\varepsilon$(Möbius関数 の記事の定理「約数にわたる和」)と、Dirichlet 積が可換かつ結合的であること(同記事の命題「Dirichlet積の基本性質」)から $\lambda=\lambda*\varepsilon=\lambda*\mathbf 1*\mu=q*\mu$ である。
2 つ目:$q$ も $g$ も平方数の上でしか $0$ でないので、$(q*g)(n)=\sum_{ab=n}q(a)g(b)$ に寄与するのは $a=u^2$、$b=v^2$ と書ける組だけで、そのとき $n=(uv)^2$ である。したがって $n$ が平方数でなければ $(q*g)(n)=0$ である。$n=k^2$ なら、$u^2v^2=k^2$ は $uv=k$ と同値なので
$$
(q*g)(k^2)=\sum_{uv=k}q(u^2)\,\mu(v)=\sum_{v\mid k}\mu(v)
$$
であり、これは Möbius関数 の記事の定理「約数にわたる和」により $k=1$ のとき $1$、$k\ge2$ のとき $0$ である。よって $q*g=\varepsilon$ である。
3 つ目:1 つ目と 2 つ目から $\lambda*g=\mu*q*g=\mu*\varepsilon=\mu$ である。
値の式は、$(\mu*q)(n)=\sum_{ab=n}\mu(a)q(b)$ で $q(b)\ne0$ となる $b=m^2$ だけを残したもの、$(\lambda*g)(n)$ で $g(b)\ne0$ となる $b=m^2$ だけを残したものである。$\square$
たとえば $n=12$ では $m^2\mid12$ となる $m$ は $1,2$ で、$\mu(12)+\mu(3)=0+(-1)=-1=\lambda(12)$ である。また $\mu(1)\lambda(12)+\mu(2)\lambda(3)=-1+(-1)(-1)=0=\mu(12)$ である。Dirichlet 級数の言葉では、$q$ は $\zeta(2s)$ に、$g$ は $1/\zeta(2s)$ に対応する(thm-lv-dirichlet)。
すべての実数 $x\ge1$ について
$$
\sum_{n\le x}\lambda(n)\left\lfloor\frac xn\right\rfloor=\lfloor\sqrt x\rfloor
$$
が成り立つ。
$x$ 以下の正の整数 $k$ について $\sum_{n\mid k}\lambda(n)=q(k)$ を足し合わせると
$$
\sum_{k\le x}\sum_{n\mid k}\lambda(n)=\sum_{k\le x}q(k)
$$
である。右辺は $x$ 以下の平方数 $1,4,9,\dots$ の個数で、$m^2\le x$ となる正の整数 $m$ は $m\le\sqrt x$ を満たすものだから、ちょうど $\lfloor\sqrt x\rfloor$ 個ある。左辺で和の順序を入れ替えると、$n\le x$ を固定したとき $n\mid k\le x$ となる $k$ は $n,2n,\dots$ のうち $x$ 以下のもので $\lfloor x/n\rfloor$ 個あるので、左辺は $\sum_{n\le x}\lambda(n)\lfloor x/n\rfloor$ に等しい。$\square$
$x=10$ では、左辺は $10-5-3+2-2+1-1-1+1+1=3$ で、$\lfloor\sqrt{10}\rfloor=3$ と一致する。同じ数え方で、Möbius 関数については $\sum_{n\le x}\mu(n)\lfloor x/n\rfloor=1$ となる(Möbius関数 の記事の系「床関数を使った和」)。
複素数 $s$ について $n^{-s}:=e^{-s\log n}$ とし、$\operatorname{Re}s>1$ での Riemannゼータ関数 $\zeta(s)=\sum_{n\ge1}n^{-s}$ を考える。
$\operatorname{Re}s>1$ のとき、級数 $\sum_{n\ge1}\lambda(n)n^{-s}$ は絶対収束し、
$$
\sum_{n=1}^\infty\frac{\lambda(n)}{n^s}=\frac{\zeta(2s)}{\zeta(s)}
$$
が成り立つ。
$\sigma:=\operatorname{Re}s>1$ とする。$\lvert\lambda(n)n^{-s}\rvert=n^{-\sigma}$ で $\sum n^{-\sigma}$ は収束するから、$\sum\lambda(n)n^{-s}$ は絶対収束する。$q$ の級数は $\sum_nq(n)n^{-s}=\sum_{m\ge1}(m^2)^{-s}=\sum_mm^{-2s}=\zeta(2s)$ で、$\operatorname{Re}(2s)=2\sigma>1$ なのでこれも絶対収束する($(m^2)^{-s}=e^{-2s\log m}=m^{-2s}$ である)。数論的関数 の記事の定理「絶対収束する Dirichlet 級数の積」を係数 $\mathbf 1$ と $\lambda$ の級数に使うと、$\lambda*\mathbf 1=q$ から
$$
\zeta(s)\sum_{n=1}^\infty\frac{\lambda(n)}{n^s}=\sum_{n=1}^\infty\frac{q(n)}{n^s}=\zeta(2s)
$$
である。Riemannゼータ関数 の記事の定理「Euler 積」により $\operatorname{Re}s>1$ で $\zeta(s)\ne0$ なので、両辺を $\zeta(s)$ で割ればよい。$\square$
この等式は HW60 Theorem 300(§17.8、p. 255)に実数 $s>1$ の形で述べられている。Riemannゼータ関数 の記事の定理「$1/\zeta(s)$ の級数表示」$\sum\mu(n)n^{-s}=1/\zeta(s)$ と並べると、$\lambda$ と $\mu$ の級数は因子 $\zeta(2s)$ だけ違う。これは thm-lv-convolution の $\lambda=\mu*q$ の級数版である。$\lambda$ は完全乗法的なので、Euler 積の形では各素数の因子が $\sum_{k\ge0}(-1)^kp^{-ks}=(1+p^{-s})^{-1}$ になり、$(1+p^{-s})^{-1}=(1-p^{-s})/(1-p^{-2s})$ が $\zeta(2s)/\zeta(s)$ の因子に一致する。
$\lvert\lambda(n)\rvert=1$ なので、自明に $\lvert L(x)\rvert\le x$ である。$\lambda$ の値の打ち消し合いを表す主張「$L(x)/x\to0$」は、Möbius 関数についての同じ主張と同値になる。鍵は thm-lv-convolution を和の形に直すことである。
関数 $A\colon[1,\infty)\to\mathbb{R}$ が、すべての $y\ge1$ で $\lvert A(y)\rvert\le y$ を満たし、$y\to\infty$ で $A(y)/y\to0$ とする。数列 $(c_m)_{m\ge1}$ が $\lvert c_m\rvert\le1$ を満たすとする。このとき、$x\to\infty$ で
$$
\frac1x\sum_{m\le\sqrt x}c_m\,A\!\left(\frac x{m^2}\right)\to0
$$
である。
$\varepsilon>0$ とする。$\sum_m1/m^2$ は収束するので(値を $Z$ とおく)、$\sum_{m>K}1/m^2<\varepsilon$ となる正の整数 $K$ がとれる。$A(y)/y\to0$ なので、$y\ge Y$ なら $\lvert A(y)\rvert\le\varepsilon y$ となる $Y\ge1$ がとれる。$x\ge K^2Y$ とする。$m\le\sqrt x$ なら $x/m^2\ge1$ なので和の各項は定義されている。
$m\le K$ の項では $x/m^2\ge x/K^2\ge Y$ なので $\lvert c_mA(x/m^2)\rvert\le\varepsilon x/m^2$ であり、これらの和は $\varepsilon xZ$ 以下である。$m>K$ の項では $\lvert c_mA(x/m^2)\rvert\le x/m^2$ なので、これらの和は $x\sum_{m>K}1/m^2<\varepsilon x$ 以下である。よって $x\ge K^2Y$ なら
$$
\frac1x\left\lvert\sum_{m\le\sqrt x}c_mA\!\left(\frac x{m^2}\right)\right\rvert\le(Z+1)\,\varepsilon
$$
である。$\varepsilon$ は任意なので結論を得る。$\square$
すべての実数 $x\ge1$ について
$$
L(x)=\sum_{m\le\sqrt x}M\!\left(\frac x{m^2}\right),\qquad M(x)=\sum_{m\le\sqrt x}\mu(m)\,L\!\left(\frac x{m^2}\right)
$$
が成り立つ。とくに、$L(x)/x\to0$ と $M(x)/x\to0$($x\to\infty$)は同値である。
段 1(和の公式). thm-lv-convolution の値の式を $n\le x$ で足すと
$$
L(x)=\sum_{n\le x}\sum_{m^2\mid n}\mu\!\left(\frac n{m^2}\right)
$$
である。$n=m^2k$ と書くと、$n\le x$ は $k\le x/m^2$ と同値で、$m$ は $m^2\le x$ すなわち $m\le\sqrt x$ を動く。$(m,k)$ と $(n,m)$($m^2\mid n$)は 1 対 1 に対応するので、和の順序を入れ替えて
$$
L(x)=\sum_{m\le\sqrt x}\sum_{k\le x/m^2}\mu(k)=\sum_{m\le\sqrt x}M\!\left(\frac x{m^2}\right)
$$
を得る。$\mu(n)=\sum_{m^2\mid n}\mu(m)\lambda(n/m^2)$ を同じように足すと、2 つ目の式を得る。
段 2(同値性). $\lvert\mu(n)\rvert\le1$、$\lvert\lambda(n)\rvert=1$ なので、$y\ge1$ で $\lvert M(y)\rvert\le y$、$\lvert L(y)\rvert\le y$ である。$M(y)/y\to0$ なら、lem-lv-square-average を $A=M$、$c_m=1$ に使って、1 つ目の式から $L(x)/x\to0$ を得る。逆に $L(y)/y\to0$ なら、$A=L$、$c_m=\mu(m)$ に使って、2 つ目の式から $M(x)/x\to0$ を得る。$\square$
たとえば $x=10$ では $M(10)+M(10/4)+M(10/9)=-1+0+1=0=L(10)$ である。$M(x)/x\to0$ から $L(x)/x\to0$ を導く向きは、Dia82 §10(p. 582)で $\mu=\lambda*g$ を使う議論と対になっている。
$M(x)/x\to0$ は 素数定理 $\pi(x)\sim x/\log x$ と同値であることが知られている(Dia82 §4、p. 564 の (4.4)。ここでの「同値」は、一方から他方が初等的な議論で導かれるという意味である)。thm-lv-mean と合わせると、$L(x)/x\to0$、すなわち「素因数の個数が偶数の数と奇数の数が漸近的に半々である」ことも、素数定理と同値になる。この記事ではこれらの同値性を証明しない。$M(x)/x\to0$ の証明が易しくないことは Möbius関数 の記事の注意「ゼータ関数と和の大きさ」にもある。
ex-lv-values と ex-lv-sums のように、$L(x)$ は $x\ge2$ の小さい範囲では $0$ 以下の値をとり続ける。すべての $x\ge2$ で $L(x)\le0$ となるという主張は Pólya の予想と呼ばれる(Mos11 p. 87 の問題 77)が、これは成り立たない。実際、$\lambda(n)$ を $n\le906150257$ まで計算すると、$2\le x<906150257$ では $L(x)\le0$ であり、
$$
L(906150257)=1
$$
となる。すなわち $n=906150257$ が、$n\ge2$ で $L(n)>0$ となる最小の $n$ である。この値は有限の計算で確かめられる。$N=906150257$ とし、$N$ 以下の整数を区間に分けて、各区間で $\sqrt N$ 以下の各素数 $p$ と各冪 $p^k\le N$ について $p^k$ の倍数の位置で符号を反転する。こうすると $n$ では $\sqrt N$ 以下の素因数が重複を込めた個数だけ数えられる。最後に、それまでに見つかった素因数の積が $n$ に満たない $n$($\sqrt N$ より大きい素因数をちょうど 1 つもつ $n$)で符号をもう 1 回反転すれば、$\lambda(n)$ がすべて求まり、累積和をとれば $L(x)$ が得られる。thm-lv-mean の式 $L(x)=\sum_{m\le\sqrt x}M(x/m^2)$ を使って、Möbius 関数の和 $M$ から計算し直すこともできる。小さい範囲の数値だけから一般の主張を推し量ることの危うさを示す例である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 重複を込めて数える $\Omega$(重複を数えない $\omega$ に替える) | $(-1)^{\omega(n)}$、$m=n=2$ | 完全乗法性 $f(mn)=f(m)f(n)$ |
| prop-lv-basic の 2 の「$n$ が平方因子をもたない」 | $n=4$ | $\lambda(n)=\mu(n)$ |
| rem-lv-polya の範囲 $2\le x<906150257$ | $x=906150257$ | $L(x)\le0$ |
| thm-lv-dirichlet の $\operatorname{Re}s>1$ | $s=1$ | $\sum\lambda(n)n^{-s}$ が絶対収束する |
1 行目:$f(n):=(-1)^{\omega(n)}$ は、互いに素な $m,n$ では $\omega(mn)=\omega(m)+\omega(n)$ なので乗法的だが、$f(4)=(-1)^1=-1\ne f(2)f(2)=1$ なので完全乗法的ではない。$\lambda$ の完全乗法性には、重複を込めて数えることが要る。2 行目:$\lambda(4)=1$ だが $\mu(4)=0$ である。3 行目:rem-lv-polya の計算による。4 行目:$\sum\lvert\lambda(n)\rvert/n=\sum1/n$ は発散する。
$\lambda$ は Liouville の $\lambda$ 関数とも呼ばれる。定義は Cri24 Definition 23.3.4(p. 410)にある。$\lambda$ の Dirichlet 逆元が $\mu^2$(平方因子をもたない数の指示関数)であることと、$\sum_{d\mid n}\lambda(d)$ が平方数の指示関数であることは、どちらも完全乗法性から素数冪での計算に帰着する(乗法的関数 の記事)。$\lambda$ と $\mu$ は平方因子をもたない数の上で一致するが、$\mu$ が平方因子をもつ数で $0$ になるのに対し、$\lambda$ はつねに $\pm1$ である。この違いが thm-lv-convolution の因子 $q$(平方数の指示関数)に現れている。
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