位相の強弱(comparison of topologies)とは、同じ集合 $X$ 上の 2 つの位相を開集合の族の包含で比べる関係であり、$\tau_1\subset\tau_2$ のとき $\tau_2$ は $\tau_1$ より細かい(強い)、$\tau_1$ は $\tau_2$ より粗い(弱い)という。この包含は恒等写像 $(X,\tau_2)\to(X,\tau_1)$ の連続性や閉包・近傍・ネットの収束で言い換えられ、$X$ 上の位相全体は離散位相を最大元、密着位相を最小元とする完備束をなす。位相を細かくすると Hausdorff 性が保たれ、粗くするとコンパクト性が保たれるので、コンパクト Hausdorff 位相より真に粗い Hausdorff 位相も真に細かいコンパクトな位相もない。相対位相や商位相は、写像を連続にする最も粗い・最も細かい位相として特徴づけられる。
一つの集合の上には、たくさんの位相を入れることができる。同じ集合 $X$ 上の 2 つの位相は、開集合の族として包含関係で比べられる。開集合が多い位相を 細かい(強い)位相、少ない位相を 粗い(弱い)位相という。位相を細かくすると、点を開集合で分けやすくなる一方、開被覆が増えてコンパクトになりにくくなる。写像の連続性は、定義域の位相を細かくするか、終域の位相を粗くすると成り立ちやすくなる。この記事では、位相の強弱の同値な言い換え、位相全体の順序の構造、強弱によって保たれる性質を証明し、コンパクト Hausdorff 位相がこの順序の中で動かせないこと(thm-cmptop-rigidity)を示す。
集合 $X$ 上の位相 $\tau_1,\tau_2$ が $\tau_1\subset\tau_2$($\tau_1$ の開集合はすべて $\tau_2$ の開集合)を満たすとき、$\tau_2$ は $\tau_1$ より 細かい(finer)または 強い(stronger)といい、$\tau_1$ は $\tau_2$ より 粗い(coarser)または 弱い(weaker)という。$\tau_1\subsetneq\tau_2$ のときは 真に細かい(真に粗い)という。$\tau_1\subset\tau_2$ と $\tau_2\subset\tau_1$ のどちらかが成り立つとき 2 つの位相は 比較可能 であるといい、どちらも成り立たないとき 比較不能 であるという。
この記事では「細かい」は等号を含む($\tau$ は $\tau$ 自身より細かい)。「細かい・粗い」のほかに「強い・弱い」「大きい・小さい」も使われる。この記事では開集合の多い側を「細かい・強い・大きい」と呼ぶ。関数解析の弱位相もこの向きで、ノルムから定まる位相より粗い位相として導入されるものである。ただし「強い・弱い」を逆の向きに使い、開集合の多い側を「弱い」と呼ぶ文献もあるので、文献を読むときはどちらの向きかを定義で確かめる必要がある(Mun00 §12, p. 78)。
集合 $X$ 上のどの位相 $\tau$ も $\{\emptyset,X\}\subset\tau\subset\mathcal{P}(X)$ を満たす($\mathcal{P}(X)$ は $X$ の部分集合全体)。したがって密着位相 $\{\emptyset,X\}$ がいちばん粗く、離散位相 $\mathcal{P}(X)$ がいちばん細かい。
集合 $X$ 上の位相 $\tau_1,\tau_2$ について、次の条件は同値である。$\overline{A}^{(k)}$ は $\tau_k$ に関する $A$ の閉包を表す。
(i) $\tau_1\subset\tau_2$。
(ii) 恒等写像 $\mathrm{id}_X\colon(X,\tau_2)\to(X,\tau_1)$ は連続である。
(iii) $\tau_1$ に関する閉集合は、$\tau_2$ に関しても閉集合である。
(iv) すべての $A\subset X$ について $\overline{A}^{(2)}\subset\overline{A}^{(1)}$。
(v) すべての点 $x\in X$ について、$\tau_1$ に関する $x$ の近傍は $\tau_2$ に関する $x$ の近傍でもある。
(vi) $X$ の任意のネット $(x_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ と点 $x$ について、$\tau_2$ に関して $x_\lambda\to x$ ならば $\tau_1$ に関して $x_\lambda\to x$ である。
(i)⇔(ii):$\mathrm{id}_X$ による $U$ の逆像は $U$ なので、(ii) は「$\tau_1$ の元は $\tau_2$ の元」ということであり、(i) と同じである。
(i)⇔(iii):閉集合は開集合の補集合なので、補集合をとれば言い換えられる。
(iii)⇒(iv):$\overline{A}^{(1)}$ は $\tau_1$ に関する閉集合なので、(iii) により $\tau_2$ に関しても閉集合で、$A$ を含む。$\overline{A}^{(2)}$ は $A$ を含む $\tau_2$ に関する閉集合のうち最小のものなので、$\overline{A}^{(2)}\subset\overline{A}^{(1)}$ である。
(iv)⇒(iii):$F$ を $\tau_1$ に関する閉集合とすると $F\subset\overline{F}^{(2)}\subset\overline{F}^{(1)}=F$ なので、$F=\overline{F}^{(2)}$ は $\tau_2$ に関して閉集合である。
(i)⇒(v):$N$ を $\tau_1$ に関する $x$ の近傍とすると、$x\in U\subset N$ となる $U\in\tau_1\subset\tau_2$ があるので、$N$ は $\tau_2$ に関する $x$ の近傍である。
(v)⇒(i):$U\in\tau_1$ とすると、$U$ は $\tau_1$ に関して自身の各点の近傍なので、(v) により $\tau_2$ に関しても各点の近傍である。各点の近傍になっている集合は開集合なので、$U\in\tau_2$ である。
(v)⇒(vi):$\tau_2$ に関して $x_\lambda\to x$ とし、$N$ を $\tau_1$ に関する $x$ の近傍とする。(v) により $N$ は $\tau_2$ に関する近傍なので、ある $\lambda_0$ があって $\lambda\ge\lambda_0$ なら $x_\lambda\in N$ である。
(vi)⇒(v):対偶を示す。$\tau_1$ に関する $x$ の近傍 $N$ で、$\tau_2$ に関しては近傍でないものがあるとする。$\tau_2$ に関する $x$ の近傍全体 $\Lambda$ を、$W\le W'\iff W\supset W'$ で有向集合とみなす(2 つの近傍の共通部分は両方より大きい元である)。各 $W\in\Lambda$ は $N$ に含まれないので、$x_W\in W\setminus N$ を選べる。$W_0\in\Lambda$ について、$W\ge W_0$ なら $x_W\in W\subset W_0$ なので、ネット $(x_W)_{W\in\Lambda}$ は $\tau_2$ に関して $x$ に収束する。しかしどの $x_W$ も $N$ に入らないので、$\tau_1$ に関しては $x$ に収束しない。$\square$
(ii) は 連続写像 の記事の例「位相の細かさと恒等写像」でもある。位相が開基で与えられているときは、開基 の記事の命題「開基による位相の比較」により、開基の元どうしを比べて (i) を確かめられる。
(vi) のネットを点列に替えることはできない。$\mathbb{R}$ 上の余可算位相 $\tau_{\mathrm{cc}}$ では、収束する点列はある番号から先が定数である(余可算位相 の記事の命題「収束する点列は最終的に定数」)。これは離散位相で収束する点列と同じであるが、離散位相は $\tau_{\mathrm{cc}}$ より真に細かい($\{0\}$ は $\tau_{\mathrm{cc}}$ で開でない)。収束する点列が同じでも位相は同じとは限らない。点列で見える範囲でいちばん細かい位相については 点列連続性 の記事の定理「点列開集合の位相と点列連続性」で扱う。
集合 $X$ 上の位相全体を $\mathrm{Top}(X)$ とし、包含関係で順序を入れる。
(i) $\{\tau_i\}_{i\in I}$ を $X$ 上の位相の空でない族とすると、共通部分 $\bigcap_{i\in I}\tau_i$ は $X$ 上の位相であり、すべての $\tau_i$ より粗い位相のうちいちばん細かいもの(下限)である。
(ii) $X$ 上の位相の任意の族 $\{\tau_i\}_{i\in I}$ について、すべての $\tau_i$ より細かい位相のうちいちばん粗いもの(上限)$\bigvee_i\tau_i$ が存在する。$\bigvee_i\tau_i$ は和集合 $\bigcup_i\tau_i$ を含む位相全体の共通部分であり、$\bigcup_i\tau_i$ を準開基として生成される位相に等しい。
とくに $\mathrm{Top}(X)$ は、最大元(離散位相)と最小元(密着位相)をもつ完備束である。
(i):$\tau:=\bigcap_i\tau_i$ とおく。$\emptyset,X$ はすべての $\tau_i$ に属するので $\tau$ に属する。$U,V\in\tau$ なら各 $i$ で $U,V\in\tau_i$ なので $U\cap V\in\tau_i$ となり、$U\cap V\in\tau$ である。$U_\lambda\in\tau$($\lambda\in\Lambda$)なら各 $i$ で $\bigcup_\lambda U_\lambda\in\tau_i$ なので $\bigcup_\lambda U_\lambda\in\tau$ である。よって $\tau$ は位相であり、各 $\tau_i$ に含まれる。$\sigma$ がすべての $\tau_i$ に含まれる位相なら $\sigma\subset\bigcap_i\tau_i=\tau$ である。
(ii):$\bigcup_i\tau_i$ を含む位相の全体は、離散位相を含むので空でない。その共通部分を $\tau^\ast$ とすると、(i) により $\tau^\ast$ は位相であり、$\bigcup_i\tau_i\subset\tau^\ast$ なので各 $\tau_i$ より細かい。各 $\tau_i$ より細かい位相 $\sigma$ は $\bigcup_i\tau_i$ を含むので、共通部分をとる族の一員であり、$\tau^\ast\subset\sigma$ である。よって $\tau^\ast$ が上限である。$\bigcup_i\tau_i$ を準開基とする位相は、$\bigcup_i\tau_i$ を含む最小の位相である(開基 の記事の命題「任意の族は準開基として位相を生成する」)ので、$\tau^\ast$ に等しい。
最大元と最小元は定義の直後に見た。空な族の上限は最小元、下限は最大元とすればよいので、任意の族が上限と下限をもつ。$\square$
上限は和集合そのものではない。和集合は一般に位相にならないからである(ex-cmptop-finite)。
(i) 集合 $X$ から位相空間 $(Y,\sigma)$ への写像 $f$ について、$f^\ast\sigma:=\{f^{-1}(V)\mid V\in\sigma\}$ は $X$ 上の位相であり、$X$ 上の位相 $\tau$ について
$$
f\colon(X,\tau)\to(Y,\sigma)\text{ が連続}\iff f^\ast\sigma\subset\tau
$$
である。とくに $f^\ast\sigma$ は $f$ を連続にする $X$ 上の位相のうちいちばん粗いものである。
(ii) 位相空間 $(X,\tau)$ から集合 $Y$ への写像 $g$ について、$g_\ast\tau:=\{V\subset Y\mid g^{-1}(V)\in\tau\}$ は $Y$ 上の位相であり、$Y$ 上の位相 $\sigma$ について
$$
g\colon(X,\tau)\to(Y,\sigma)\text{ が連続}\iff \sigma\subset g_\ast\tau
$$
である。とくに $g_\ast\tau$ は $g$ を連続にする $Y$ 上の位相のうちいちばん細かいものである。
(iii) 写像 $f\colon(X,\tau)\to(Y,\sigma)$ が連続なら、$X$ 上の $\tau$ より細かい位相 $\tau'$ と、$Y$ 上の $\sigma$ より粗い位相 $\sigma'$ について、$f\colon(X,\tau')\to(Y,\sigma')$ も連続である。
(i):逆像は和集合と共通部分を保ち、$f^{-1}(\emptyset)=\emptyset$、$f^{-1}(Y)=X$ なので、$f^\ast\sigma$ は空集合と $X$ を含み、有限個の共通部分と任意の和集合で閉じている。$f$ が連続であることは「すべての $V\in\sigma$ で $f^{-1}(V)\in\tau$」、すなわち $f^\ast\sigma\subset\tau$ のことである。$\tau=f^\ast\sigma$ とすれば $f$ は連続であり、$f$ を連続にする位相はすべて $f^\ast\sigma$ を含む。
(ii):同じく逆像が和集合と共通部分を保つことから、$g_\ast\tau$ は位相である。$g$ が連続であることは「すべての $V\in\sigma$ で $g^{-1}(V)\in\tau$」、すなわち $\sigma\subset g_\ast\tau$ のことである。
(iii):$V\in\sigma'$ なら $V\in\sigma$ なので $f^{-1}(V)\in\tau\subset\tau'$ である。$\square$
(i) の位相は 始位相、(ii) の位相は 終位相 のいちばん簡単な場合である。部分空間の位相(相対位相)は包含写像に、直積位相は射影の族に、商位相は商写像に、それぞれこの意味で対応する。たとえば相対位相は「包含写像を連続にするいちばん粗い位相」であり、商位相は「商写像を連続にするいちばん細かい位相」である。
集合 $X$ 上の位相 $\tau_1\subset\tau_2$ について、次が成り立つ。
(i) $(X,\tau_1)$ が T1空間 または Hausdorff空間 なら、$(X,\tau_2)$ もそうである。
(ii) $(X,\tau_2)$ がコンパクト、連結(連結空間)、可分(可分空間)なら、$(X,\tau_1)$ もそうである。
(i):$T_1$ 性は「異なる 2 点 $x,y$ について、$x$ を含み $y$ を含まない開集合がある」こと、Hausdorff 性は「異なる 2 点を交わらない開集合で分けられる」ことである。$\tau_1$ でこれらの開集合がとれれば、それらは $\tau_2$ の開集合でもある。
(ii):コンパクト性:$\tau_1$ の開集合による $X$ の被覆は $\tau_2$ の開集合による被覆でもあるので、有限部分被覆をもつ。連結性:$X=U\cup V$ を $\tau_1$ の交わらない空でない開集合による分解とすると、これは $\tau_2$ での分解でもあるので、$\tau_2$ で連結なら $\tau_1$ でも連結である。可分性:$D$ が $\tau_2$ で稠密な可算集合なら、prop-cmptop-equivalent の (iv) により $X=\overline{D}^{(2)}\subset\overline{D}^{(1)}$ なので、$D$ は $\tau_1$ でも稠密である。$\square$
正則性と正規性は、どちらの向きにも保たれない。
| 性質 | 細かくしたとき | 粗くしたとき |
|---|---|---|
| $T_1$、Hausdorff | 保たれる | 保たれない(離散位相 → 密着位相) |
| コンパクト、連結、可分 | 保たれない($[0,1]$ の通常の位相 → 離散位相) | 保たれる |
| 正則、正規 | 保たれない($\mathbb{R}$ の通常の位相 → $\mathbb{R}_K$) | 保たれない($\mathbb{R}$ の通常の位相 → 補有限位相) |
表の最後の行を確かめる。$K:=\{1/n\mid n\ge1\}$ とし、開区間と、開区間から $K$ を除いた集合を開基とする $\mathbb{R}$ 上の位相を $\mathbb{R}_K$ と書く(K位相)。開区間はすべて $\mathbb{R}_K$ の開集合なので、$\mathbb{R}_K$ は通常の位相より細かい。$\mathbb{R}_K$ では閉集合 $K$ と点 $0$ を交わらない開集合で分けられず、正則でない(正則空間 の例「反例:Hausdorff だが正則でない空間」)。$\mathbb{R}_K$ は $T_1$ なので、正規でもない(一点集合が閉なので、正規なら正則である)。一方、無限集合 $\mathbb{R}$ 上の余有限位相(補有限位相)では空でない開集合どうしが必ず交わるので、点 $0$ と閉集合 $\{1\}$、あるいは閉集合 $\{0\}$ と $\{1\}$ を交わらない開集合で分けられない。通常の位相は距離から定まるので正則かつ正規である。
集合 $X$ 上の位相 $\tau_1\subset\tau_2$ について、$(X,\tau_2)$ がコンパクトで $(X,\tau_1)$ が Hausdorff ならば、$\tau_1=\tau_2$ である。
prop-cmptop-equivalent の (iii) の逆向き、すなわち $\tau_2$ に関する閉集合が $\tau_1$ に関しても閉集合であることを示せばよい。$F$ を $\tau_2$ に関する閉集合とする。
段 1:$F$ は $(X,\tau_2)$ でコンパクトである。コンパクト空間の閉部分集合はコンパクトだからである(コンパクト空間 の記事の命題「保存と閉性」)。
段 2:$F$ は $(X,\tau_1)$ でコンパクトである。$F$ を $\tau_1$ の開集合で覆うと、それらは $\tau_2$ の開集合でもあるので、段 1 により有限個で覆える。
段 3:$F$ は $(X,\tau_1)$ で閉集合である。Hausdorff 空間のコンパクト部分集合は閉集合だからである(Hausdorff空間 の命題「コンパクト部分集合の閉性」)。
よって $\tau_2$ の閉集合はすべて $\tau_1$ の閉集合であり、$\tau_2\subset\tau_1$ となる。仮定 $\tau_1\subset\tau_2$ と合わせて $\tau_1=\tau_2$ である。$\square$
(i) コンパクト Hausdorff 空間 $(X,\tau)$ について、$\tau$ より真に粗い位相は Hausdorff でなく、$\tau$ より真に細かい位相はコンパクトでない。
(ii) 同じ集合上の 2 つのコンパクト Hausdorff 位相は、等しいか比較不能である。
(iii) コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全単射は同相写像である。
(i):$\tau'\subsetneq\tau$ が Hausdorff なら、thm-cmptop-rigidity を $(\tau_1,\tau_2)=(\tau',\tau)$ に使って $\tau'=\tau$ となり矛盾する。$\tau\subsetneq\tau'$ がコンパクトなら、$(\tau_1,\tau_2)=(\tau,\tau')$ に使って矛盾する。
(ii):比較可能なら、粗い方は Hausdorff、細かい方はコンパクトなので、thm-cmptop-rigidity により等しい。
(iii):$h\colon(X,\tau)\to(Y,\sigma)$ を連続な全単射とし、$Y$ 上の位相 $h_\ast\tau=\{V\mid h^{-1}(V)\in\tau\}$ を考える。$h$ は全単射なので $h\colon(X,\tau)\to(Y,h_\ast\tau)$ は同相写像であり、$(Y,h_\ast\tau)$ はコンパクトである。$h$ の連続性から prop-cmptop-induced の (ii) により $\sigma\subset h_\ast\tau$ であり、$\sigma$ は Hausdorff なので、thm-cmptop-rigidity により $\sigma=h_\ast\tau$ である。よって $h\colon(X,\tau)\to(Y,\sigma)$ は同相写像である。$\square$
(iii) は 閉写像 の記事の定理「コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続写像は閉写像」からも従う。thm-cmptop-rigidity は、コンパクト性(開集合が少ないほど成り立ちやすい)と Hausdorff 性(開集合が多いほど成り立ちやすい)が、ちょうど釣り合う位置で両立していることを表している。たとえば閉区間 $[0,1]$ の通常の位相より粗い Hausdorff 位相も、それより細かいコンパクトな位相も、通常の位相のほかにない。
$\mathbb{R}$ 上の次の位相を比べる:密着位相 $\tau_{\mathrm{ind}}$、余有限位相 $\tau_{\mathrm{cf}}$、余可算位相 $\tau_{\mathrm{cc}}$、通常の位相 $\tau_{\mathrm{std}}$、Sorgenfrey直線 の位相 $\tau_{\mathrm{S}}$(半開区間 $[a,b)$ を開基とする)、$\mathbb{R}_K$ の位相 $\tau_K$、離散位相 $\tau_{\mathrm{dis}}$。成り立つ包含は
$$
\tau_{\mathrm{ind}}\subsetneq\tau_{\mathrm{cf}}\subsetneq\tau_{\mathrm{std}}\subsetneq\tau_{\mathrm{S}}\subsetneq\tau_{\mathrm{dis}},\qquad
\tau_{\mathrm{std}}\subsetneq\tau_K\subsetneq\tau_{\mathrm{dis}},\qquad
\tau_{\mathrm{cf}}\subsetneq\tau_{\mathrm{cc}}\subsetneq\tau_{\mathrm{dis}}
$$
であり、$\tau_{\mathrm{cc}}$ と $\tau_{\mathrm{std}}$、$\tau_{\mathrm{S}}$ と $\tau_K$ はそれぞれ比較不能である。
$X=\{a,b,c\}$ 上の位相 $\tau_1=\{\emptyset,\{a\},X\}$ と $\tau_2=\{\emptyset,\{b\},X\}$ は比較不能である($\{a\}\in\tau_1\setminus\tau_2$、$\{b\}\in\tau_2\setminus\tau_1$)。和集合 $\tau_1\cup\tau_2=\{\emptyset,\{a\},\{b\},X\}$ は $\{a\}\cup\{b\}=\{a,b\}$ を含まないので位相でない。上限 $\tau_1\vee\tau_2$ は $\{\emptyset,\{a\},\{b\},\{a,b\},X\}$、下限 $\tau_1\cap\tau_2$ は密着位相 $\{\emptyset,X\}$ である。
$C:=C([0,1])$ を $[0,1]$ 上の実数値連続関数全体とする。$\tau_{\mathrm{u}}$ を一様ノルム $\|g\|:=\max_{t\in[0,1]}|g(t)|$ から定まる位相、$\tau_{\mathrm{p}}$ を
$$
W(f;t_1,\dots,t_k;\varepsilon):=\{g\in C\mid |g(t_i)-f(t_i)|<\varepsilon\ (i=1,\dots,k)\}
$$
($f\in C$、$t_1,\dots,t_k\in[0,1]$、$\varepsilon>0$)を開基とする位相(各点収束の位相。積空間 $\mathbb{R}^{[0,1]}$ の部分空間の位相)とする。このとき $\tau_{\mathrm{p}}\subsetneq\tau_{\mathrm{u}}$ である。
包含:$g\in W(f;t_1,\dots,t_k;\varepsilon)$ とし、$\delta:=\varepsilon-\max_i|g(t_i)-f(t_i)|>0$ とおく。$\|h-g\|<\delta$ なら $|h(t_i)-f(t_i)|\le|h(t_i)-g(t_i)|+|g(t_i)-f(t_i)|<\varepsilon$ なので、$g$ を中心とする半径 $\delta$ の開球は $W$ に含まれる。よって $\tau_{\mathrm{p}}$ の開基の元は $\tau_{\mathrm{u}}$ で開であり、$\tau_{\mathrm{p}}\subset\tau_{\mathrm{u}}$ である。
真の包含:$0$ を中心とする半径 $1$ の開球 $B:=\{g\mid\|g\|<1\}$ は $\tau_{\mathrm{p}}$ で開でない。$0\in W(0;t_1,\dots,t_k;\varepsilon)$ となる開基の元をどれだけとっても、$t_1,\dots,t_k$ と異なる点 $s$ で値 $2$ をとり、各 $t_i$ で値 $0$ をとる連続関数($s$ のまわりの折れ線)$g$ は、その元に属するが $B$ に属さないからである。各点収束の位相は一様収束の位相より真に粗い。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 粗い方が Hausdorff | $[0,1]$ 上の余有限位相 $\subsetneq$ 通常の位相(どちらもコンパクト) | $\tau_1\subset\tau_2$ なら $\tau_1=\tau_2$(thm-cmptop-rigidity) |
| 細かい方がコンパクト | $[0,1]$ 上の通常の位相 $\subsetneq$ 離散位相(どちらも Hausdorff) | $\tau_1\subset\tau_2$ なら $\tau_1=\tau_2$(thm-cmptop-rigidity) |
| prop-cmptop-monotone の (i) の性質が $T_1$・Hausdorff であること(正則に替える) | $\mathbb{R}$ の通常の位相 $\subsetneq\tau_K$ | 正則な位相より細かい位相は正則 |
| 収束をネットで調べる(点列だけにする) | $\mathbb{R}$ 上の余可算位相 $\subsetneq$ 離散位相 | 収束する点列が同じなら位相は同じ |
1 行目の余有限位相 $\tau_{\mathrm{cf}}$ は $[0,1]$ 上でコンパクトである。開被覆の 1 つの空でない元 $U$ は有限個の点しか除かず、残りの点を 1 つずつ覆う元を有限個加えれば被覆になるからである。また $\tau_{\mathrm{cf}}$ は $T_1$ だが Hausdorff でない(空でない開集合どうしが交わる)。2 行目の離散位相は、無限個の一点集合からなる開被覆が有限部分被覆をもたないので、コンパクトでない。
細かい・粗い・比較可能の定義は Mun00 §12(p. 77)、Eng89 §1.1(p. 16)にあり、「強い・弱い」の向きが文献によって逆になることの注意は Mun00 §12(p. 78)にある。位相の族の上限と下限の存在は Mun00 §13 Exercise 4(p. 83)、Eng89 Exercise 1.1.D(p. 20)、Sorgenfrey 直線と $\mathbb{R}_K$ の比較は Mun00 Lemma 13.4(p. 82)と §13 Exercise 7(p. 83)にある。恒等写像の連続性による言い換えは Eng89 Example 1.4.3(p. 29)、2 つのコンパクト Hausdorff 位相が等しいか比較不能であることは Mun00 §26 Exercise 1(p. 170)、強弱と分離公理の関係は Mun00 §31 Exercise 4(p. 199)で扱われている。
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