Pólyaの壺

同義語:ポリアの壺Pólya's urn

概要

Pólyaの壺(Pólya's urn)とは、赤玉 $a$ 個と白玉 $b$ 個($a,b$ は正の整数)の入った壺から玉を $1$ 個取り出し、色を見て戻し、同じ色の玉を $1$ 個加えることを繰り返す試行である。$n$ 回のうち赤がちょうど $k$ 回出る特定の並びの確率は $\frac{a(a+1)\cdots(a+k-1)\cdot b(b+1)\cdots(b+n-k-1)}{(a+b)(a+b+1)\cdots(a+b+n-1)}$ で、赤と白の並べ方によらない。$j$ 回目に赤が出る確率は $j$ によらず $\frac a{a+b}$ である。$a=b=1$ なら、赤の回数は $0,1,\ldots,n$ のどれも確率 $\frac1{n+1}$ である。反対の色を加えると並びの確率は並べ方により、$a=b=1$ でも同じ色を $2$ 個加えると赤の回数は一様でない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 確率の定義と条件付き確率, 反復試行の確率, 二項定理と組合せの恒等式

高校での出発点:取り出すたびに増える壺

壺に赤玉 $1$ 個と白玉 $1$ 個が入っている。玉を $1$ 個取り出して色を見て、その玉を戻し、さらに同じ色の玉を $1$ 個加える。これを繰り返す。赤を取り出すと赤が増えるので、次も赤が出やすくなる。「一度出た色がどんどん出やすくなる」この壺で、赤を取り出す回数はどんな分布になるだろうか。

3 回取り出す

1 回目は赤 $1$・白 $1$ なので、赤が出る確率は $\dfrac12$ である。赤が出ると赤が $1$ 個増えて赤 $2$・白 $1$ になり、2 回目に赤が出る確率は $\dfrac23$ になる。このように、各回の確率を 確率の定義と条件付き確率 の乗法定理で掛けていくと、8 通りの並びの確率は次のとおりである。

並び各回の確率並びの確率
赤赤赤$\frac12\cdot\frac23\cdot\frac34$$\frac14$
赤赤白$\frac12\cdot\frac23\cdot\frac14$$\frac1{12}$
赤白赤$\frac12\cdot\frac13\cdot\frac24$$\frac1{12}$
白赤赤$\frac12\cdot\frac13\cdot\frac24$$\frac1{12}$
赤白白$\frac12\cdot\frac13\cdot\frac24$$\frac1{12}$
白赤白$\frac12\cdot\frac13\cdot\frac24$$\frac1{12}$
白白赤$\frac12\cdot\frac23\cdot\frac14$$\frac1{12}$
白白白$\frac12\cdot\frac23\cdot\frac34$$\frac14$

赤を取り出す回数ごとにまとめると
$$ P(\text{赤 }3\text{ 回})=\frac14,\quad P(\text{赤 }2\text{ 回})=3\cdot\frac1{12}=\frac14,\quad P(\text{赤 }1\text{ 回})=3\cdot\frac1{12}=\frac14,\quad P(\text{赤 }0\text{ 回})=\frac14 $$
で、$0,1,2,3$ 回のどれも確率 $\dfrac14$ である。

赤 1 個・白 1 個から 3 回取り出す木。枝に各回の確率、右端に並びの確率を書いた。赤が 3 回・0 回の並びは 1/4、ほかの 6 通りはどれも 1/12 赤 1 個・白 1 個から 3 回取り出す木。枝に各回の確率、右端に並びの確率を書いた。赤が 3 回・0 回の並びは 1/4、ほかの 6 通りはどれも 1/12
ex-pu-three には 2 つの驚きがある。1 つは、赤赤白・赤白赤・白赤赤のように赤が 2 回の並びが、並べ方によらず同じ確率 $\dfrac1{12}$ になることである。各回の確率の並びは $\frac12\cdot\frac23\cdot\frac14$ と $\frac12\cdot\frac13\cdot\frac24$ で違うのに、積は等しい。もう 1 つは、赤の回数が $0$ から $3$ まで一様に分布することである。玉を戻すだけで加えない場合は、表の出る確率 $\dfrac12$ の硬貨を 3 回投げるのと同じで、赤の回数の分布は $\dfrac18,\dfrac38,\dfrac38,\dfrac18$ となり(反復試行の確率)、一様ではない。
この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 並びの確率が並べ方によらないのはなぜか。一般の個数でも成り立つか。→ thm-pu-order
  2. 赤の回数が一様に分布するのはいつか。→ cor-pu-uniform
  3. $j$ 回目に赤が出る確率は、$j$ によって変わるか。→ thm-pu-jth
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    各回の確率を掛ける並びの確率同時分布
    並べ方によらず同じ確率並びの確率は赤の回数だけで決まる交換可能性
    赤の回数が一様赤 $1$・白 $1$ から始めるベータ分布、ベータ積分
    何回目でも赤の確率が同じ$j$ 回目の赤の確率周辺分布

Pólya の壺の定義

Pólya の壺

正の整数 $a,b$ を決める。壺に赤玉 $a$ 個と白玉 $b$ 個を入れ、次の操作を $n$ 回繰り返す。

  • 壺の中の玉から $1$ 個を、どの玉も同じ確率で取り出し、色を見る。
  • 取り出した玉を戻し、さらに同じ色の玉を $1$ 個加える。
    これを Pólya の壺 という。$n$ 回の結果を、出た色を順に書いた長さ $n$ の並び(たとえば 赤赤白)で表す。並びの確率は、各回の確率(その時点の壺の中の個数の比)を掛けたものとする。

各回の確率を掛けてよいのは、確率の定義と条件付き確率 の乗法定理 $P(A\cap B)=P(A)P(B\mid A)$ を繰り返し使うことにあたる。「それまでの結果がこうだったとき、次に赤が出る確率」は、それまでの結果で決まる壺の中身だけで決まる。
$m$ 回目を取り出す直前には、それまでに $m-1$ 個の玉が加わっているので、壺の中の玉は全部で $a+b+m-1$ 個である。この数は、それまでに何色が出たかによらない。
以下、$x$ から始めて $1$ ずつ大きくなる $k$ 個の数の積を
$$ x^{\overline k}=x(x+1)(x+2)\cdots(x+k-1)\qquad(k\ge1),\qquad x^{\overline 0}=1 $$
と書く(上昇階乗)。たとえば $2^{\overline3}=2\cdot3\cdot4=24$、$1^{\overline k}=1\cdot2\cdots k=k!$ である。

上昇階乗で書く
  1. ex-pu-three の赤赤赤の確率は $\dfrac{1\cdot2\cdot3}{2\cdot3\cdot4}=\dfrac{1^{\overline3}}{2^{\overline3}}=\dfrac6{24}=\dfrac14$ である。
  2. 赤白赤の確率 $\dfrac12\cdot\dfrac13\cdot\dfrac24$ の分子は、赤の回の $1,2$ と白の回の $1$ で、$1^{\overline2}\cdot1^{\overline1}=2$ である。分母は $2\cdot3\cdot4=2^{\overline3}=24$ で、確率は $\dfrac2{24}=\dfrac1{12}$ である。

主定理 1:並びの確率は並べ方によらない

並びの確率は赤の回数だけで決まる

def-pu-urn の壺で、$n$ 回のうち赤がちょうど $k$ 回(白が $n-k$ 回)出る並びを 1 つ決める。その並びの確率は
$$ \frac{a(a+1)\cdots(a+k-1)\cdot b(b+1)\cdots(b+n-k-1)}{(a+b)(a+b+1)\cdots(a+b+n-1)}=\frac{a^{\overline k}\,b^{\overline{n-k}}}{(a+b)^{\overline n}} $$
である。特に、赤の回数 $k$ が同じ並びは、赤と白の並べ方によらず同じ確率をもつ。

方針:並びの確率は各回の確率の積である。積の分母と分子に出てくる数を、それぞれ並べ方によらない形でまとめる。
段 1(分母)。$m$ 回目($m=1,2,\ldots,n$)を取り出す直前の壺の中の玉は、上で見たとおり $a+b+m-1$ 個である。各回の確率の分母はこの数なので、分母をすべて掛けると
$$ (a+b)(a+b+1)\cdots(a+b+n-1)=(a+b)^{\overline n} $$
で、並べ方によらない。
段 2(赤の回の分子)。並びの中で赤が出る回を前から順に見る。$1$ 番目の赤の回の直前には、それまでに赤は出ていないので、壺の中の赤は $a$ 個である。$2$ 番目の赤の回の直前には、それまでに赤が $1$ 回出て $1$ 個加わっているので $a+1$ 個である。一般に、$t$ 番目の赤の回の直前には、それまでに赤が $t-1$ 回出ているので、赤は $a+t-1$ 個である。途中で白が何回出ても、赤の個数は変わらない。よって赤の回の分子をすべて掛けると
$$ a(a+1)\cdots(a+k-1)=a^{\overline k} $$
で、赤がどの回に出たかによらない。
段 3(白の回の分子)。段 2 と同じく、$t$ 番目の白の回の直前には白は $b+t-1$ 個なので、白の回の分子の積は $b(b+1)\cdots(b+n-k-1)=b^{\overline{n-k}}$ である。
段 4(まとめ)。並びの確率は、段 2・段 3 の分子の積を段 1 の分母で割ったもので、$\dfrac{a^{\overline k}\,b^{\overline{n-k}}}{(a+b)^{\overline n}}$ である。この式は $a,b,n,k$ だけで決まり、並べ方によらない。$\square$

証明のかなめは、「分母は回ごとに $1$ ずつ増え、赤の分子は赤が出るたびに $1$ ずつ増え、白の分子は白が出るたびに $1$ ずつ増える」ことである。並べ方を変えても、同じ数の組が別の順番で掛けられるだけである。ex-pu-three の $\frac12\cdot\frac23\cdot\frac14$ と $\frac12\cdot\frac13\cdot\frac24$ は、分母 $2,3,4$ と分子 $1,2$(赤)・$1$(白)が同じで、順番だけが違う。

赤の回数の分布

$n$ 回のうち赤を取り出す回数を $K$ とすると、$k=0,1,\ldots,n$ について
$$ P(K=k)=\binom nk\frac{a^{\overline k}\,b^{\overline{n-k}}}{(a+b)^{\overline n}} $$
である。

赤がちょうど $k$ 回の並びは、$n$ 回のうち赤の回を $k$ 回選ぶ選び方の数 $\dbinom nk$ 通りある。thm-pu-order により、どれも同じ確率 $\dfrac{a^{\overline k}\,b^{\overline{n-k}}}{(a+b)^{\overline n}}$ をもつ。異なる並びは同時には起こらないので、確率を足して $\dbinom nk$ 倍になる。$\square$

赤 1 個・白 1 個なら赤の回数は一様

$a=b=1$ のとき、$n$ 回のうち赤を取り出す回数 $K$ は、$0,1,\ldots,n$ のどの値も確率 $\dfrac1{n+1}$ でとる。

$1^{\overline k}=k!$、$1^{\overline{n-k}}=(n-k)!$、$2^{\overline n}=2\cdot3\cdots(n+1)=(n+1)!$ である。cor-pu-count に入れると
$$ P(K=k)=\binom nk\frac{k!\,(n-k)!}{(n+1)!}=\frac{n!}{k!\,(n-k)!}\cdot\frac{k!\,(n-k)!}{(n+1)!}=\frac{n!}{(n+1)!}=\frac1{n+1} $$
である。$k$ によらない。$\square$

Pólya の壺(赤 1 個・白 1 個から、同じ色を 1 個加える)で 10 回取り出したときの赤の回数の分布。11 通りの回数がどれも 1/11 Pólya の壺(赤 1 個・白 1 個から、同じ色を 1 個加える)で 10 回取り出したときの赤の回数の分布。11 通りの回数がどれも 1/11
玉を戻すだけで加えないときの、10 回のうちの赤の回数の分布。二項分布で、5 回の近くに集まる 玉を戻すだけで加えないときの、10 回のうちの赤の回数の分布。二項分布で、5 回の近くに集まる

図 2 と図 3 は、$n=10$ での赤の回数の分布を比べたものである。戻すだけの場合(図 3)は、赤の回数が真ん中の $5$ 回の近くに集まる(反復試行の確率)。Pólya の壺(図 2)では、$0$ 回も $10$ 回も $5$ 回と同じ確率 $\dfrac1{11}$ で起こる。赤が出ると赤が出やすくなるので、「最初の数回で出た色が多数派になり、そのまま増えていく」ことが起こりやすい。

赤 2 個・白 1 個から 4 回

$a=2$、$b=1$、$n=4$ とする。分母は $3^{\overline4}=3\cdot4\cdot5\cdot6=360$ である。cor-pu-count により

  • $k=0$:$\dbinom40\cdot2^{\overline0}\cdot1^{\overline4}=1\cdot1\cdot24=24$ で、$\dfrac{24}{360}=\dfrac1{15}$
  • $k=1$:$\dbinom41\cdot2^{\overline1}\cdot1^{\overline3}=4\cdot2\cdot6=48$ で、$\dfrac{48}{360}=\dfrac2{15}$
  • $k=2$:$\dbinom42\cdot2^{\overline2}\cdot1^{\overline2}=6\cdot6\cdot2=72$ で、$\dfrac{72}{360}=\dfrac15$
  • $k=3$:$\dbinom43\cdot2^{\overline3}\cdot1^{\overline1}=4\cdot24\cdot1=96$ で、$\dfrac{96}{360}=\dfrac4{15}$
  • $k=4$:$\dbinom44\cdot2^{\overline4}\cdot1^{\overline0}=1\cdot120\cdot1=120$ で、$\dfrac{120}{360}=\dfrac13$
    である。合計は $\dfrac{1+2+3+4+5}{15}=1$ である。はじめに赤が多いので、赤の回数が多いほど確率が大きく、一様ではない。

主定理 2:何回目でも赤の確率は同じ

赤が出ると次に赤が出る確率は上がる。ex-pu-three では、1 回目が赤のとき 2 回目も赤の確率は $\dfrac23$ で、はじめの $\dfrac12$ より大きい。それなら、2 回目や 3 回目に赤が出る確率は $\dfrac12$ より大きくなるだろうか。

2 回目に赤が出る確率

$a=b=1$ とする。2 回目に赤が出るのは、赤赤か白赤のときである。
$$ P(\text{2 回目が赤})=\frac12\cdot\frac23+\frac12\cdot\frac13=\frac13+\frac16=\frac12 $$
で、1 回目と同じ $\dfrac12$ である。1 回目が赤なら 2 回目の赤は出やすくなる($\frac23$)が、1 回目が白なら出にくくなり($\frac13$)、平均すると変わらない。3 回目に赤が出る確率も、ex-pu-three の表で 3 回目が赤の並び(赤赤赤・赤白赤・白赤赤・白白赤)を足すと $\dfrac14+\dfrac1{12}+\dfrac1{12}+\dfrac1{12}=\dfrac12$ である。

$j$ 回目に赤が出る確率

def-pu-urn の壺で、どの $j=1,2,3,\ldots$ についても、$j$ 回目に赤が出る確率は
$$ \frac a{a+b} $$
で、$j$ によらない。

方針:1 回目と $j$ 回目を入れかえても並びの確率が変わらないこと(thm-pu-order)を使い、「$j$ 回目が赤」の確率を「1 回目が赤」の確率に移す。
段 1(並びの集まりで書く)。$j$ 回目までの結果は、長さ $j$ の並びで表せる。$j$ 回目が赤である並びの確率を全部足したものが、$j$ 回目に赤が出る確率である。同じく、1 回目が赤である長さ $j$ の並びの確率を全部足したものが、1 回目に赤が出る確率 $\dfrac a{a+b}$ である($j$ 回まで続けても、1 回目の確率は変わらない。2 回目以降の各回について、行き先の確率の和は $1$ だからである)。
段 2(入れかえ)。長さ $j$ の並び $s$ に対し、1 回目と $j$ 回目の色を入れかえた並びを $s'$ とする。$s'$ でもう一度入れかえるともとの $s$ にもどるので、この入れかえは「$j$ 回目が赤の並び」と「1 回目が赤の並び」を 1 つずつ対応させる。入れかえても赤の回数は変わらないので、thm-pu-order により $s$ と $s'$ の確率は等しい。
段 3(結論)。段 2 により、「$j$ 回目が赤の並び」の確率の和は「1 回目が赤の並び」の確率の和に等しい。段 1 により、後者は $\dfrac a{a+b}$ である。$\square$

ex-pu-two-one の $a=2$、$b=1$、$n=4$ でも、1 回目から 4 回目のどの回も赤の確率は $\dfrac23$ である。
戻さずに取り出すくじでも、同じことが起こる。母集団と標本 の補題「1 回ごとの取り出しの分布」は、$10$ 本のうち $3$ 本が当たりのくじを戻さずに引くとき、何番目に引いても当たりの確率は $\dfrac3{10}$ であることを示している。戻さないくじでは、当たりが出ると次は当たりが出にくくなり、Pólya の壺では赤が出ると次は赤が出やすくなる。向きは逆だが、どちらも並びの確率が並べ方によらないので、何回目でも確率は同じになる。

戻して加えない戻さないPólya の壺
取り出した後の壺変わらない取り出した色が $1$ 個減る取り出した色が $1$ 個増える
1 回目が赤のとき 2 回目も赤の確率$\frac a{a+b}$$\frac{a-1}{a+b-1}$$\frac{a+1}{a+b+1}$
$j$ 回目が赤の確率$\frac a{a+b}$$\frac a{a+b}$$\frac a{a+b}$
並びの確率が並べ方によらないはいはいはい
各回が独立はいいいえいいえ
赤の回数の分布二項分布超幾何分布$\binom nk\frac{a^{\overline k}b^{\overline{n-k}}}{(a+b)^{\overline n}}$

「戻さない」列の $j$ 回目の値は $j\le a+b$ のとき、2 回目の値は $a+b\ge2$ のときに意味をもつ。

次に赤が出る確率

$a=b=1$ で $n$ 回取り出し、赤が $k$ 回出たとする。そのとき壺には赤 $1+k$ 個、白 $1+n-k$ 個、合わせて $n+2$ 個が入っている。次の $n+1$ 回目に赤が出る確率は
$$ \frac{k+1}{n+2} $$
である。たとえば $10$ 回のうち赤が $10$ 回なら、次に赤が出る確率は $\dfrac{11}{12}$ である。$10$ 回のうち赤が $3$ 回なら $\dfrac4{12}=\dfrac13$ である。出た回数の割合 $\dfrac kn$ に近いが、少しだけ $\dfrac12$ の側に寄る。

赤 1 個・白 1 個から 500 回取り出した 20 回の試行で、壺の中の赤の割合の推移。どの試行も割合がある値に落ち着いていくが、その値は試行ごとにまちまちである 赤 1 個・白 1 個から 500 回取り出した 20 回の試行で、壺の中の赤の割合の推移。どの試行も割合がある値に落ち着いていくが、その値は試行ごとにまちまちである
図 4 は、$a=b=1$ で $500$ 回取り出す試行を計算機で $20$ 回まねて、壺の中の赤の割合の推移を描いたものである。どの試行でも、はじめは大きく揺れ、回数が増えると割合の動きは小さくなり、ある値に落ち着いていくように見える。落ち着く先は試行ごとに違い、この 20 回では $0.02$ 付近から $0.93$ 付近まで散らばった。これは cor-pu-uniform と合っている。$n$ 回のうちの赤の回数が $0$ から $n$ まで一様なので、赤の割合も $0$ から $1$ までまんべんなく散らばる。割合が本当にある値に近づくこと(収束すること)は、この記事では証明しない。

反例:玉の加え方を変えると

外す条件反例成り立たなくなること
取り出した色と同じ色を加える反対の色を $1$ 個加える(赤 $1$・白 $1$ から)並びの確率が並べ方によらない
加える玉は $1$ 個同じ色を $2$ 個加える(赤 $1$・白 $1$ から)赤の回数が一様
赤 $1$ 個・白 $1$ 個から始める赤 $2$ 個・白 $1$ 個から始める赤の回数が一様

3 行目は ex-pu-two-one で見た。1・2 行目を確かめる。

反例:反対の色を加える

赤 $1$・白 $1$ から始め、取り出した玉を戻して、反対の色の玉を $1$ 個加える。

  • 赤赤白:赤($\frac12$)で白が増えて赤 $1$・白 $2$、赤($\frac13$)で赤 $1$・白 $3$、白($\frac34$)。確率は $\dfrac12\cdot\dfrac13\cdot\dfrac34=\dfrac18$ である。
  • 赤白赤:赤($\frac12$)で赤 $1$・白 $2$、白($\frac23$)で赤が増えて赤 $2$・白 $2$、赤($\frac24$)。確率は $\dfrac12\cdot\dfrac23\cdot\dfrac24=\dfrac16$ である。
    赤の回数はどちらも $2$ 回なのに、確率が違う。thm-pu-order の証明の段 2 では「赤の個数は赤が出たときだけ増える」ことを使ったが、反対の色を加えると赤の個数は白が出たときに増えるので、分子に出てくる数が並べ方で変わる。
反例:同じ色を 2 個加える

赤 $1$・白 $1$ から始め、取り出した玉を戻して、同じ色の玉を $2$ 個加える。$2$ 回取り出すと
$$ P(\text{赤赤})=\frac12\cdot\frac34=\frac38,\qquad P(\text{赤白})=\frac12\cdot\frac14=\frac18,\qquad P(\text{白赤})=\frac18,\qquad P(\text{白白})=\frac38 $$
である。赤の回数が $0,1,2$ 回の確率は $\dfrac38,\dfrac14,\dfrac38$ で、一様ではない。赤が出ると赤がより大きく増えるので、同じ色が続く並びが起こりやすくなる。
ただし、並びの確率が並べ方によらないことは保たれる。$3$ 回なら赤赤白・赤白赤・白赤赤は、どれも
$$ \frac12\cdot\frac34\cdot\frac16=\frac12\cdot\frac14\cdot\frac36=\frac12\cdot\frac14\cdot\frac36=\frac1{16} $$
である(分母は $2,4,6$、赤の分子は $1,3$、白の分子は $1$ で、順番だけが違う)。thm-pu-order の証明は、加える個数が $2$ 個でも、「$1$ ずつ」を「$2$ ずつ」に読みかえればそのまま通る。崩れるのは cor-pu-uniform の計算で、$1^{\overline k}=k!$ にあたる積が $1\cdot3\cdots(2k-1)$ に変わるからである。

大学数学で見る:ベータ積分と交換可能性

赤 $1$・白 $1$ の Pólya の壺の赤の回数の分布は、次の 2 段階の試行と同じである。まず $0$ と $1$ の間の数 $t$ を、どの値も同じくらいの確からしさで選ぶ($[0,1]$ 上の一様分布)。次に、表の出る確率が $t$ の硬貨を $n$ 回投げる。表が $k$ 回出る確率は、$t$ について平均をとった
$$ \int_0^1\binom nkt^k(1-t)^{n-k}\,dt=\frac1{n+1} $$
で、cor-pu-uniform の値と一致する。この積分の値は 1/6公式とベータ積分 の命題「面積は二項係数の逆数」である。

一般の $a,b$ での式と、交換可能性を開く

$a,b$ が正の整数のときも同じことが成り立つ。1/6公式とベータ積分 の定理「ベータ積分の公式」$\displaystyle\int_0^1t^m(1-t)^n\,dt=\frac{m!\,n!}{(m+n+1)!}$ を使うと

$$\frac{\displaystyle\int_0^1t^{a+k-1}(1-t)^{b+n-k-1}\,dt}{\displaystyle\int_0^1t^{a-1}(1-t)^{b-1}\,dt}=\frac{(a+k-1)!\,(b+n-k-1)!}{(a+b+n-1)!}\cdot\frac{(a+b-1)!}{(a-1)!\,(b-1)!}=\frac{a^{\overline k}\,b^{\overline{n-k}}}{(a+b)^{\overline n}}$$

である($\frac{(a+k-1)!}{(a-1)!}=a^{\overline k}$ などを使った)。これに $\dbinom nk$ を掛けると cor-pu-count の式になる。つまり Pólya の壺は、「$t$ を重み $t^{a-1}(1-t)^{b-1}$ に比例する確からしさで選び(ベータ分布)、表の出る確率 $t$ の硬貨を投げる」試行と、赤の回数の分布が同じである。

並びの確率が並べ方によらない確率変数の列を、大学の確率論では 交換可能 という。母集団と標本 の戻さないくじの列も交換可能である。上の計算は、交換可能な Pólya の壺の列が「確率 $t$ をまず選んでから独立な試行を続ける」列と、赤の回数の分布で一致することを示している。GS06 は §4.1 の Exercise 20(p.152)でこの壺を感染のモデルとして紹介し、§4.2 の Exercise 11(p.174)で、偏りが $[0,1]$ の一様分布に従う硬貨と比べて、$a=b=1$ の壺の赤の割合が $0$ や $1$ に偏らず $[0,1]$ の一様分布に近づく理由を説明させている。割合の収束は、この記事では証明しない。

さらに先へ

  • 加える玉の個数を $c$ 個にすると、並びの確率は $\dfrac{a(a+c)\cdots(a+(k-1)c)\cdot b(b+c)\cdots(b+(n-k-1)c)}{(a+b)(a+b+c)\cdots(a+b+(n-1)c)}$ になり、やはり並べ方によらない。$c=-1$ とすると戻さないくじになる(母集団と標本)。
  • ex-pu-succession の $\dfrac{k+1}{n+2}$ は、表の出る確率 $t$ が $[0,1]$ の一様分布に従う硬貨を $n$ 回投げて表が $k$ 回出たとき、次に表が出る確率としても現れる(GS06 §4.2 Exercise 11)。
  • 赤の回数の期待値は、thm-pu-jth と 期待値の線形性と数え上げ の線形性から、$n\cdot\dfrac a{a+b}$ である。各回は独立でないが、線形性は独立性を使わない。

関連項目

参考文献

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