対数螺旋(logarithmic spiral)とは、$a>0$、$b\ne0$ に対して極方程式 $r=ae^{b\theta}$($\theta$ はすべての実数)で表される曲線である。どの点でも動径と接線のなす角 $\psi$ は一定で $\cot\psi=b$ である。逆に、$f$ がすべての実数 $\theta$ で微分可能で $f>0$ のとき、曲線 $r=f(\theta)$ のこの角が一定なら、曲線は対数螺旋か原点を中心とする円に限る。$b>0$ のとき、$\theta\le\theta_0$ の部分は原点のまわりを無限に回りながら原点に近づくが、その長さは有限で $\frac{r_0\sqrt{1+b^2}}b$($r_0=ae^{b\theta_0}$)である。原点を中心に $e^{b\alpha}$ 倍に拡大した図形は、$-\alpha$ だけ回転した図形に等しい。
前提知識: 極座標と極方程式, 微分方程式としての指数関数・三角関数, 複素数の掛け算は回転と拡大, 媒介変数表示と曲線の長さ
極座標と極方程式 の例「螺旋・カージオイド・レムニスケート」の螺旋 $r=\theta$ は、$\theta$ が $2\pi$ 増える(1 周する)ごとに、原点からの距離が同じ 量 $2\pi$ だけ増える。では、1 周ごとに距離が同じ 倍率 で増える螺旋はどんな形になるだろうか。
$\theta$ が $1$ 増えるごとに距離が $e^{0.2}$ 倍になるようにすると、極方程式は $r=e^{0.2\theta}$ である($e^{0.2(\theta+1)}=e^{0.2}\cdot e^{0.2\theta}$)。
$r=e^{0.2\theta}$ の点を並べる(点は $(r\cos\theta,\ r\sin\theta)$)。
| $\theta$ | $-2\pi$ | $-\pi$ | $-\dfrac\pi2$ | $0$ | $\dfrac\pi2$ | $\pi$ | $2\pi$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $r=e^{0.2\theta}$ | $0.2846\ldots$ | $0.5334\ldots$ | $0.7304\ldots$ | $1$ | $1.3691\ldots$ | $1.8744\ldots$ | $3.5135\ldots$ |
| 点 | $(0.2846,0)$ | $(-0.5334,0)$ | $(0,-0.7304)$ | $(1,0)$ | $(0,1.3691)$ | $(-1.8744,0)$ | $(3.5135,0)$ |
r=e^{0.2θ} の −6π≤θ≤2π の部分。黒い点は表の点で、正の x 軸との交点(青の丸)の距離は 0.28、1、3.51 と一定の倍率で増える
この曲線を 対数螺旋 という。この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| $\dfrac{dr}{d\theta}=br$ | 動径と接線の角が一定 | 等角螺旋 |
| $e^{b(\theta+\alpha)}=e^{b\alpha}e^{b\theta}$ | 拡大と回転で自分に重なる | 自己相似 |
| 複素数 $e^{(b+i)\theta}$ | 回転相似で自分に移る | 複素指数関数による直線の像 |
| $\displaystyle\int_{-\infty}^{\theta_0}e^{b\theta}\,d\theta$ | 原点までの長さ | 広義積分 |
$a>0$、$b\ne0$ とする。極方程式
$$
r=ae^{b\theta}\qquad(\theta\text{ はすべての実数})
$$
で表される曲線、つまり点 $\bigl(ae^{b\theta}\cos\theta,\ ae^{b\theta}\sin\theta\bigr)$ 全体の集まりを 対数螺旋(logarithmic spiral、等角螺旋)という。
$ae^{b\theta}>0$ なので、どの $\theta$ でも $r>0$ で、$r<0$ の点の扱いを決める必要はない。曲線は原点を通らない。$b>0$ なら、$\theta$ が増えると距離が増え、$\theta\to-\infty$ で距離は $0$ に近づく。$b<0$ ならその逆である。$\theta$ を $\log$ で表すと $\theta=\dfrac1b\log\dfrac ra$ となり、向き $\theta$ は距離 $r$ の対数の 1 次式で決まる。
向き $\varphi$ の半直線と対数螺旋 $r=ae^{b\theta}$ の共有点は、$\theta=\varphi+2n\pi$($n$ は整数)の点で、原点からの距離は
$$
ae^{b(\varphi+2n\pi)}=ae^{b\varphi}\cdot\left(e^{2\pi b}\right)^n
$$
である。$n$ を $1$ 増やすごとに $e^{2\pi b}$ 倍になる等比数列である。たとえば $a=1$、$b=0.2$、$\varphi=\dfrac\pi2$ では、$y$ 軸の正の部分との交点の距離は $\ldots,\ 0.3896\ldots,\ 1.3691\ldots,\ 4.8104\ldots,\ldots$ で、どれも隣との比が $3.5135\ldots$ である。
これと比べて、螺旋 $r=\theta$($\theta\ge0$)では、向き $\varphi$($0\le\varphi<2\pi$)の半直線との交点の距離は $\varphi,\ \varphi+2\pi,\ \varphi+4\pi,\ldots$ の等差数列になる。
以下、向き $\varphi$ の単位ベクトルを $\vec e(\varphi)=(\cos\varphi,\ \sin\varphi)$ と書く。$\vec e(\varphi)$ を $\varphi$ で微分すると $(-\sin\varphi,\ \cos\varphi)=\vec e\!\left(\varphi+\dfrac\pi2\right)$ で、これは $\vec e(\varphi)$ に垂直な単位ベクトルである。
極方程式 $r=f(\theta)$($f$ は微分可能で $f(\theta)>0$)の曲線の点を $P(\theta)=f(\theta)\,\vec e(\theta)$ と書く。原点から $P$ へ向かう向き(動径の向き)$\vec e(\theta)$ と、$\theta$ が増える向きの接線ベクトル $P'(\theta)$ のなす角を $\psi$($0\le\psi\le\pi$)とし、動径と接線のなす角 という。
$r=f(\theta)$($f$ は微分可能で $f(\theta)>0$)の曲線について
$$
P'(\theta)=f'(\theta)\,\vec e(\theta)+f(\theta)\,\vec e\!\left(\theta+\frac\pi2\right),\qquad \lvert P'(\theta)\rvert=\sqrt{f(\theta)^2+f'(\theta)^2}
$$
であり、動径と接線のなす角 $\psi$ は $0<\psi<\pi$ を満たし
$$
\cos\psi=\frac{f'}{\sqrt{f^2+f'^2}},\qquad \sin\psi=\frac{f}{\sqrt{f^2+f'^2}},\qquad \cot\psi=\frac{f'(\theta)}{f(\theta)}
$$
である。
積の微分から $P'(\theta)=f'(\theta)\,\vec e(\theta)+f(\theta)\,\dfrac{d}{d\theta}\vec e(\theta)=f'\,\vec e(\theta)+f\,\vec e\!\left(\theta+\dfrac\pi2\right)$ である。$\vec e(\theta)$ と $\vec e\!\left(\theta+\dfrac\pi2\right)$ は垂直な単位ベクトルなので、三平方の定理から $\lvert P'\rvert=\sqrt{f^2+f'^2}$ で、これは $f>0$ より $0$ でない。内積を使うと
$$
\cos\psi=\frac{\vec e(\theta)\cdot P'(\theta)}{\lvert P'(\theta)\rvert}=\frac{f'}{\sqrt{f^2+f'^2}}
$$
である。$\sin\psi\ge0$($0\le\psi\le\pi$)と $\sin^2\psi=1-\cos^2\psi=\dfrac{f^2}{f^2+f'^2}$ から $\sin\psi=\dfrac f{\sqrt{f^2+f'^2}}>0$ で、$0<\psi<\pi$ である。$\cot\psi=\dfrac{\cos\psi}{\sin\psi}=\dfrac{f'}f$ である。$\square$
$\lvert P'\rvert=\sqrt{f^2+f'^2}$ は、媒介変数表示と曲線の長さ の速さ $\sqrt{x'^2+y'^2}$ を極座標で書いたものである(カージオイド の全長の計算でも使った)。
段 1((1))。$f(\theta)=ae^{b\theta}$ なら $f'(\theta)=abe^{b\theta}=bf(\theta)$ なので、lem-logs-psi から $\cot\psi=\dfrac{f'}f=b$ で、$\theta$ によらない。$\cot$ は $0<\psi<\pi$ で 1 対 1 なので、$\psi$ も $\theta$ によらない。
段 2((2))。lem-logs-psi から、すべての $\theta$ で $\dfrac{f'(\theta)}{f(\theta)}=\cot\psi_0=b$、つまり $f'(\theta)=bf(\theta)$ である。微分方程式としての指数関数・三角関数 の定理「$y'=ky$ の解」により、$y'=ky$ を満たす関数は $y=Ce^{kx}$($C$ は定数)の形に限る。よって $f(\theta)=Ce^{b\theta}$ で、$\theta=0$ とおくと $C=f(0)=a$ である。$b\ne0$ なら対数螺旋、$b=0$($\psi_0=\dfrac\pi2$)なら $f(\theta)=a$ で円である。$\square$
図 2 は $b=0.2$ の対数螺旋のいくつかの点で、動径(青の破線)と接線(赤)を描いたもので、どの点でも角は $78.7^\circ$ である。$b$ を $0$ に近づけると $\psi$ は $90^\circ$ に近づき、曲線は円に近づく(ex-logs-cx-circle)。
r=e^{0.2θ} のいくつかの点で、動径(青の破線)と接線(赤)のなす角(黒の弧)はどれも約 78.7°
対数螺旋 $C$:$r=ae^{b\theta}$ と実数 $\alpha$ について、$C$ を原点を中心に $e^{b\alpha}$ 倍に拡大した図形は、$C$ を原点のまわりに $-\alpha$ だけ回転した図形に等しい。特に、$C$ を $e^{2\pi b}$ 倍に拡大すると $C$ 自身に重なる。
$C$ の点 $Q(\theta)=ae^{b\theta}\,\vec e(\theta)$ を $e^{b\alpha}$ 倍すると
$$
e^{b\alpha}Q(\theta)=ae^{b(\theta+\alpha)}\,\vec e(\theta)=ae^{b(\theta+\alpha)}\,\vec e\bigl((\theta+\alpha)-\alpha\bigr)
$$
で、これは $C$ の点 $Q(\theta+\alpha)$(距離 $ae^{b(\theta+\alpha)}$、向き $\theta+\alpha$)を $-\alpha$ だけ回転した点である。$\theta$ がすべての実数を動くと $\theta+\alpha$ もすべての実数を動くので、拡大した図形と回転した図形は等しい。$\alpha=2\pi$ なら $-2\pi$ の回転は何も動かさないので、$e^{2\pi b}$ 倍に拡大した図形は $C$ である。$\square$
円を拡大すると大きな円になり、もとの円には重ならない。対数螺旋は、拡大が回転で打ち消されるので、どの倍率で拡大しても(回転すれば)もとに重なる。ex-logs-ray の等比数列は、$e^{2\pi b}$ 倍の拡大で自分に重なることを、1 本の半直線の上で見たものである。
複素数平面で対数螺旋の点を $z(\theta)=ae^{b\theta}(\cos\theta+i\sin\theta)=ae^{b\theta}e^{i\theta}$ と書く。複素数 $w=e^{b\alpha}e^{i\alpha}$ を掛けると
$$
w\,z(\theta)=ae^{b(\theta+\alpha)}e^{i(\theta+\alpha)}=z(\theta+\alpha)
$$
である。複素数の掛け算は回転と拡大 のとおり、$w$ を掛けることは、原点のまわりの角 $\alpha$ の回転と $e^{b\alpha}$ 倍の拡大を合わせた回転相似である。対数螺旋は、この回転相似で自分自身に移る(点は曲線に沿って $\alpha$ だけ進む)。
たとえば $a=1$、$b=0.2$、$\alpha=\dfrac\pi2$ では $w=e^{0.1\pi}i=1.3691\ldots\times i$ で、$z(0)=1$ は $w\cdot1=1.3691\ldots i=z\!\left(\dfrac\pi2\right)$ に移る(ex-logs-start の表の点 $(0,1.3691)$)。
逆に、回転相似をくり返して得られる点は、対数螺旋の上に並ぶ。
相似変換と相似の中心 の例「渦を巻いて近づく」では、$c=1+i$ を中心とする角 $45^\circ$、比 $\dfrac1{\sqrt2}$ の回転相似 $f(z)=c+\dfrac{1+i}2(z-c)$ を $z_0=5+i$ からくり返した。$\dfrac{1+i}2=\dfrac1{\sqrt2}e^{i\pi/4}$ なので
$$
z_n-c=\left(\frac{1+i}2\right)^n(z_0-c)=4\left(\frac1{\sqrt2}\right)^ne^{in\pi/4}
$$
である。$b=-\dfrac{2\log2}\pi$ とおくと、$\theta=\dfrac{n\pi}4$ で $e^{b\theta}=e^{-\frac n2\log2}=\left(\dfrac1{\sqrt2}\right)^n$ なので、$z_n-c=4e^{b\theta}e^{i\theta}$ である。つまり点 $z_n$ は、$c$ を中心とする対数螺旋 $r=4e^{b\theta}$($b=-0.4412\ldots$)の上にある(図 4)。この螺旋の動径と接線のなす角は $\cot\psi=b$ から $\psi=113.8\ldots^\circ$ である。
r=e^{0.2θ}(灰色)を e^{0.1π} 倍に拡大した図形(赤)と、時計回りに π/2 回転した図形(青の破線)が重なる
回転相似をくり返した点 z0、z1、z2、… は、c を中心とする対数螺旋(赤)の上に並ぶ
$b>0$ とする。ex-logs-start (2) で見たように、$\theta\to-\infty$ の側の曲線は原点のまわりを無限に回る。それでも、その部分の長さは有限である。
$\theta_0$ を決め、$T<\theta_0$ として、$T\le\theta\le\theta_0$ の部分の長さを $\ell(T)$ とする。$T$ を小さくすると $\ell(T)$ は増える。$T\to-\infty$ のときの $\ell(T)$ の極限を、$\theta\le\theta_0$ の部分の長さ という(Gauss積分(高校数学) で扱った広義積分と同じ考え方)。
$b>0$ とし、対数螺旋 $r=ae^{b\theta}$ の点 $\theta=\theta_0$ での原点からの距離を $r_0=ae^{b\theta_0}$ とする。$\theta\le\theta_0$ の部分(原点のまわりを無限に回りながら原点に近づく部分)の長さは有限で
$$
\frac{r_0\sqrt{1+b^2}}b=\frac{r_0}{\cos\psi}
$$
に等しい。ここで $\psi$ は動径と接線のなす角($\cot\psi=b$)である。
段 1(速さ)。$f(\theta)=ae^{b\theta}$、$f'(\theta)=bf(\theta)$ なので、lem-logs-psi から速さは
$$
\sqrt{f^2+f'^2}=\sqrt{1+b^2}\,f(\theta)=a\sqrt{1+b^2}\,e^{b\theta}
$$
である。
段 2(有限の部分の長さ)。媒介変数表示 $\bigl(f(\theta)\cos\theta,\ f(\theta)\sin\theta\bigr)$ は微分可能で導関数が連続なので、媒介変数表示と曲線の長さ の定理「曲線の長さの公式」により
$$
\ell(T)=\int_T^{\theta_0}a\sqrt{1+b^2}\,e^{b\theta}\,d\theta=a\sqrt{1+b^2}\Bigl[\frac{e^{b\theta}}b\Bigr]_T^{\theta_0}=\frac{\sqrt{1+b^2}}b\left(ae^{b\theta_0}-ae^{bT}\right)
$$
である。
段 3(極限)。$b>0$ なので $T\to-\infty$ のとき $e^{bT}\to0$ で、$\ell(T)\to\dfrac{\sqrt{1+b^2}}b\,ae^{b\theta_0}=\dfrac{r_0\sqrt{1+b^2}}b$ である。
段 4($\psi$ で書く)。$\cot\psi=b>0$ なので $0<\psi<\dfrac\pi2$ で、$1+\cot^2\psi=\dfrac1{\sin^2\psi}$ から $\sqrt{1+b^2}=\dfrac1{\sin\psi}$ である。よって $\dfrac{\sqrt{1+b^2}}b=\dfrac1{\sin\psi}\cdot\dfrac{\sin\psi}{\cos\psi}=\dfrac1{\cos\psi}$ である。$\square$
| 周の数 $n$ | $1$ | $2$ | $5$ | $10$ |
|---|---|---|---|---|
| $\ell(-2n\pi)$ | $3.6477\ldots$ | $4.6859\ldots$ | $5.0894\ldots$ | $5.0990\ldots$ |
長さ $\dfrac{r_0}{\cos\psi}$ は、図形では次のように見える。点 $P$($\theta=\theta_0$ の点)での接線を、原点に近づく向きに延ばし、原点を通って $OP$ に垂直な直線と交わる点を $Q$ とする。三角形 $OPQ$ は $O$ が直角で、$\angle OPQ$ は動径と接線のなす角 $\psi$ に等しい(向きを 2 つとも反対にした角だから)。よって $PQ=\dfrac{OP}{\cos\psi}=\dfrac{r_0}{\cos\psi}$ で、接線の線分 $PQ$ の長さが、$P$ から原点までの螺旋の長さに等しい(図 5)。$b=0.2$、$P=(1,0)$ では $Q=(0,-5)$、$PQ=\sqrt{1+25}=\sqrt{26}$ である。
b=0.2 の対数螺旋の P=(1,0) から原点までの部分(赤)の長さは、P での接線を延ばして y 軸と交わる点 Q までの線分 PQ(青)の長さ √26 に等しい
2 つの螺旋を比べる。
| 螺旋 $r=\theta$ | 対数螺旋 $r=ae^{b\theta}$($b>0$) | |
|---|---|---|
| 1 周で距離は | $2\pi$ だけ増える | $e^{2\pi b}$ 倍になる |
| 同じ半直線との交点の距離 | 等差数列 | 等比数列 |
| 原点 | $\theta=0$ で通る | 通らず、まわりを無限に回る |
| 動径と接線のなす角 | $\cot\psi=\dfrac1\theta$(変わる) | $\cot\psi=b$(一定) |
| 原点から $\theta=\theta_0$ までの長さ | 有限(有限回しか回らない) | 有限(無限に回る) |
| 拡大すると | 自分に重ならない | 回転すれば自分に重なる |
螺旋 $r=\theta$ の $\cot\psi$ は、lem-logs-psi で $f(\theta)=\theta$、$f'=1$ として $\dfrac1\theta$ である。$r=\theta$ の螺旋は Archimedesの螺旋 で詳しく扱う。
主定理の条件を外すと何が崩れるかを並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $b\ne0$ | $b=0$:円 $r=a$ | 原点に近づく部分がある(thm-logs-length の式は $b$ で割る) |
| 距離が $\theta$ の指数関数 | $r=\dfrac1\theta$($\theta\ge1$) | 無限に回って原点に近づく部分の長さが有限 |
| 曲線が $r=f(\theta)$($f>0$)の形 | 原点から出る半直線 | 角が一定なら対数螺旋か円(thm-logs-angle (2)) |
$b=0$ とすると $r=a$ で、原点を中心とする円である。$f'=0$ なので lem-logs-psi から $\cos\psi=0$、$\psi=90^\circ$ で一定である。thm-logs-angle (2) の「円」の場合にあたる。円は原点に近づかないので、thm-logs-length のような「原点に近づく部分」はない(式 $\dfrac{r_0\sqrt{1+b^2}}b$ も $b=0$ では意味をもたない)。拡大すると大きさの違う円になり、回転しても重ならない。
$r=\dfrac1\theta$($\theta\ge1$)は、$\theta\to\infty$ のとき $r\to0$ で、原点のまわりを無限に回りながら原点に近づく(図 7)。しかし、$\theta=1$ から $\theta=N$ までの長さは、lem-logs-psi の速さ $\sqrt{\dfrac1{\theta^2}+\dfrac1{\theta^4}}\ge\dfrac1\theta$ から
$$
\int_1^N\sqrt{\frac1{\theta^2}+\frac1{\theta^4}}\,d\theta\ge\int_1^N\frac{d\theta}\theta=\log N
$$
で、$N\to\infty$ のとき限りなく大きくなる。数値では $N=10,100,1000$ で $2.52\ldots$、$4.83\ldots$、$7.13\ldots$ である。原点に近づく部分の長さは有限ではない。
$\cot\psi=\dfrac{f'}f=\dfrac{-1/\theta^2}{1/\theta}=-\dfrac1\theta$ なので、動径と接線のなす角は一定でなく、$\theta\to\infty$ で $90^\circ$ に近づく。原点の近くで円に近い回り方になるので、回る回数に比べて原点への近づき方が遅い。
向き $\theta_1$ の半直線 $\{s\,\vec e(\theta_1)\mid s>0\}$ では、接線は半直線そのもので、動径と接線のなす角はどの点でも $0$ である。角は一定だが、対数螺旋でも円でもない。thm-logs-angle (2) は、曲線が $r=f(\theta)$($f>0$)の形で、$\theta$ を動かすと向きが変わっていく曲線についての主張である。実際、lem-logs-psi から $r=f(\theta)$ の形の曲線では $\sin\psi>0$ なので、角が $0$ になることはない。
b=0 では円になり、動径(青の破線)と接線(黒)はどの点でも直交する
r=1/θ(θ≥1)も原点のまわりを無限に回るが、原点までの長さは有限でない
ex-logs-complex の式 $z(\theta)=ae^{(b+i)\theta}$ は、複素数 $u=(b+i)\theta$($\theta$ は実数)の指数関数 $e^u$ に $a$ を掛けたものと読める。$u$ は複素数平面で原点を通る直線(向き $(b,1)$)の上を動く。つまり、原点を通る直線を複素数の指数関数 $u\mapsto e^u=e^{\operatorname{Re}u}\bigl(\cos(\operatorname{Im}u)+i\sin(\operatorname{Im}u)\bigr)$ で移すと、対数螺旋になる。同じ写像で、横の直線($\operatorname{Im}u$ が一定)は原点から出る半直線に、縦の直線($\operatorname{Re}u$ が一定)は原点を中心とする円に移る。
直線 $(b+i)\theta$ は横の直線と、$\cot$ が $b$ の角で交わる。その像の対数螺旋は、横の直線の像である半直線(動径)と、同じく $\cot\psi=b$ の角で交わる(thm-logs-angle)。複素数の指数関数は交わる角を保つ写像(等角写像)であることが大学の複素関数論で示され、この一致はその例である(この記事では証明しない)。
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