共通部分

同義語:intersection

概要

共通部分(intersection)とは、集合族のすべてに同時に属する元を集めて得られる集合であり、二集合 $A,B$ について $A\cap B$ と書く。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 集合, 部分集合

概要

共通部分(intersection)とは、集合族のすべてに同時に属する元を集めて得られる集合であり、二集合 $A,B$ について $A\cap B$ と書く。
共通部分は、複数の集合すべてに属する元を集める操作である。論理積に対応し、包含関係に関する最大下界を与える。

定義

共通部分

集合 $A,B$ の共通部分(intersection)とは、$A$ と $B$ の両方に属する元全体の集合
$$ A\cap B:=\{x\mid x\in A\text{ かつ }x\in B\} $$
である。集合族 $(A_i)_{i\in I}$ に対しては
$$ \bigcap_{i\in I}A_i:=\{x\mid \text{すべての }i\in I\text{ について }x\in A_i\} $$
と定める。空の集合族の共通部分を扱うときは、全体集合をあらかじめ固定する必要がある。

例と反例

有限集合と区間の共通部分

$A=\{1,2\}$、$B=\{2,3\}$ なら $A\cap B=\{2\}$ である。また実数の区間について
$$ [0,2]\cap[1,3]=[1,2],\qquad [0,1]\cap[2,3]=\emptyset $$
である。共通部分が空集合になる二集合は交わらないという。

減少する開区間の共通部分

実数直線で $A_n=(-1/n,1/n)$ とおくと
$$ \bigcap_{n\geq1}A_n=\{0\} $$
である。実際、$0$ はすべての $A_n$ に属する。一方、$x\neq0$ なら $n>1/|x|$ となる $n$ を選べば $x\notin A_n$ である。各 $A_n$ は開集合だが、共通部分 $\{0\}$ は開集合ではない。この例は、開集合が無限共通部分について閉じるという誤った主張を破る。

性質と証明

包含と演算の言い換え

次の三つは同値である。

  1. $A\subseteq B$。
  2. $A\cap B=A$。
  3. $A\cup B=B$。

(1 ⇒ 2)$A\cap B\subseteq A$ は定義から明らかである。$x\in A$ とすると、$A\subseteq B$ より $x\in B$ でもあるので $x\in A\cap B$ である。よって $A\subseteq A\cap B$ であり、$A\cap B=A$ を得る。
(2 ⇒ 1)$x\in A$ とすると $x\in A\cap B$ なので $x\in B$ である。よって $A\subseteq B$ である。
(1 ⇒ 3)$B\subseteq A\cup B$ は定義から明らかである。$x\in A\cup B$ とすると、$x\in A$ の場合は $A\subseteq B$ より $x\in B$、$x\in B$ の場合はそのまま $x\in B$ である。よって $A\cup B\subseteq B$ であり、$A\cup B=B$ を得る。
(3 ⇒ 1)$x\in A$ とすると $x\in A\cup B=B$ である。よって $A\subseteq B$ である。$\square$

共通部分と合併の分配律

$$ A\cap(B\cup C)=(A\cap B)\cup(A\cap C),\qquad A\cup(B\cap C)=(A\cup B)\cap(A\cup C). $$

前半を示す。$x\in A\cap(B\cup C)$ とすると、$x\in A$ かつ「$x\in B$ または $x\in C$」である。$x\in B$ の場合は $x\in A\cap B$、$x\in C$ の場合は $x\in A\cap C$ であり、いずれにせよ $x\in(A\cap B)\cup(A\cap C)$ である。逆に $x\in(A\cap B)\cup(A\cap C)$ とすると、$x\in A\cap B$ または $x\in A\cap C$ である。どちらの場合も $x\in A$ であり、かつ $x\in B$ または $x\in C$ であるから、$x\in A\cap(B\cup C)$ である。
後半を示す。$x\in A\cup(B\cap C)$ とする。$x\in A$ ならば $x\in A\cup B$ かつ $x\in A\cup C$ である。$x\in B\cap C$ ならば $x\in B$ かつ $x\in C$ なので、やはり $x\in A\cup B$ かつ $x\in A\cup C$ である。よって $x\in(A\cup B)\cap(A\cup C)$ である。逆に $x\in(A\cup B)\cap(A\cup C)$ とする。$x\in A$ ならば $x\in A\cup(B\cap C)$ である。$x\notin A$ ならば、$x\in A\cup B$ より $x\in B$、$x\in A\cup C$ より $x\in C$ であるから $x\in B\cap C$ であり、やはり $x\in A\cup(B\cap C)$ である。$\square$

共通部分と合併の順序による特徴づけ

$U$ を集合、$A,B$ を $U$ の部分集合とし、$U$ の部分集合の全体 $\mathcal{P}(U)$ を包含関係 $\subseteq$ で順序づけて考える。このとき次が成り立つ。

  1. $A\cap B\subseteq A$ かつ $A\cap B\subseteq B$ であり、さらに $D\subseteq A$ かつ $D\subseteq B$ を満たす任意の $D\subseteq U$ について $D\subseteq A\cap B$ が成り立つ。すなわち $A\cap B$ は $\mathcal{P}(U)$ における $\{A,B\}$ の下限である。
  2. $A\subseteq A\cup B$ かつ $B\subseteq A\cup B$ であり、さらに $A\subseteq D$ かつ $B\subseteq D$ を満たす任意の $D\subseteq U$ について $A\cup B\subseteq D$ が成り立つ。すなわち $A\cup B$ は $\mathcal{P}(U)$ における $\{A,B\}$ の上限である。
    さらに、1 の二つの条件をともに満たす $U$ の部分集合は $A\cap B$ に限り、2 の二つの条件をともに満たす $U$ の部分集合は $A\cup B$ に限る。上界・上限・下界・下限の語は順序集合の記事による。

def-intersection-operations により、$x\in A\cap B$ は「$x\in A$ かつ $x\in B$」と同値、$x\in A\cup B$ は「$x\in A$ または $x\in B$」と同値である。

  1. $x\in A\cap B$ ならば $x\in A$ なので $A\cap B\subseteq A$ であり、同様に $A\cap B\subseteq B$ である。$D\subseteq A$ かつ $D\subseteq B$ とする。$x\in D$ とすると $x\in A$ かつ $x\in B$ なので $x\in A\cap B$ である。よって $D\subseteq A\cap B$ である。
  2. $x\in A$ ならば「$x\in A$ または $x\in B$」が成り立つので $A\subseteq A\cup B$ であり、同様に $B\subseteq A\cup B$ である。$A\subseteq D$ かつ $B\subseteq D$ とする。$x\in A\cup B$ とすると、$x\in A$ の場合も $x\in B$ の場合も $x\in D$ である。よって $A\cup B\subseteq D$ である。
    一意性を示す。$C\subseteq U$ が 1 の二つの条件をともに満たすとする。$A\cap B$ は $A$ にも $B$ にも含まれるので、$C$ についての後半の条件を $D=A\cap B$ として使うと $A\cap B\subseteq C$ を得る。逆に $C$ は $A$ にも $B$ にも含まれるので、$A\cap B$ について 1 の後半をすでに示したことを $D=C$ として使うと $C\subseteq A\cap B$ を得る。反対称律(集合)により $C=A\cap B$ である。2 についても、包含の向きをすべて逆にすれば同じ論法で $C=A\cup B$ を得る。$\square$

基本法則と任意共通部分

共通部分は交換律、結合律、冪等律を満たす。
$$ A\cap B=B\cap A, \qquad (A\cap B)\cap C=A\cap(B\cap C), \qquad A\cap A=A. $$
全体集合 $U$ の部分集合だけを考えるとき、$U$ は単位元であり $A\cap U=A$ である。空族の共通部分を $U$ とする規約は、この単位元の役割を任意共通部分へ延長したものである。全体集合を固定しない素朴集合論では「すべての集合からなる集合」は存在しないため、空族の共通部分を無条件には定義しない。

任意共通部分の最大下界性

$I\neq\emptyset$ とし、$(A_i)_{i\in I}$ を集合族とする。このとき $\bigcap_{i\in I}A_i$ は包含順序における族の最大下界である。すなわち
$$ \bigcap_{j\in I}A_j\subseteq A_i\quad(i\in I) $$
であり、すべての $i\in I$ について $D\subseteq A_i$ なら
$$ D\subseteq\bigcap_{i\in I}A_i $$
である。

任意共通部分の最大下界性の証明

$x\in\bigcap_{j\in I}A_j$ なら、定義によりすべての $j\in I$ について $x\in A_j$ なので、特に固定した $i$ について $x\in A_i$ である。
次に、すべての $i$ について $D\subseteq A_i$ とする。$x\in D$ なら、すべての $i$ について $x\in A_i$ である。従って $x\in\bigcap_iA_i$ であり、求める包含を得る。

任意共通部分に対する分配律

集合 $A$ と集合族 $(B_i)_{i\in I}$ に対し
$$ A\cup\bigcap_{i\in I}B_i =\bigcap_{i\in I}(A\cup B_i) $$
が成り立つ。ただし $I=\emptyset$ の場合は、すべての集合を共通の全体集合 $U$ の部分集合とし、空共通部分を $U$ とする。

任意共通部分に対する分配律の証明

$I=\emptyset$ のとき、すべての集合を含む全体集合を $U$ とすれば
$$ A\cup\bigcap_{i\in\emptyset}B_i =A\cup U =U =\bigcap_{i\in\emptyset}(A\cup B_i) $$
である。以下では $I\neq\emptyset$ とする。
$x$ が左辺に属することは、$x\in A$ であるか、すべての $i$ について $x\in B_i$ であることと同値である。前者ならすべての $i$ について $x\in A\cup B_i$ である。前者でなく右側の条件が成り立つ場合も、すべての $i$ について $x\in A\cup B_i$ である。
逆に $x$ が右辺に属し、$x\notin A$ とする。すべての $i$ について $x\in A\cup B_i$ であり $x\notin A$ なので、すべての $i$ について $x\in B_i$ である。従って $x$ は左辺に属する。

写像との関係

逆像は任意共通部分を常に保存する。像については一方向の包含だけが常に成り立ち、等号には単射性が関係する。

逆像と共通部分

写像 $f\colon X\to Y$ と部分集合族 $(B_i)_{i\in I}$ に対して
$$ f^{-1}\left(\bigcap_{i\in I}B_i\right) =\bigcap_{i\in I}f^{-1}(B_i) $$
が成り立つ。空族の場合は全体集合をそれぞれ $Y,X$ とする。

逆像と共通部分の証明

任意の $x\in X$ について
$$ \begin{aligned} x\in f^{-1}\left(\bigcap_iB_i\right) &\Longleftrightarrow f(x)\in B_i\text{ がすべての }i\text{ について成り立つ}\\ &\Longleftrightarrow x\in f^{-1}(B_i)\text{ がすべての }i\text{ について成り立つ}\\ &\Longleftrightarrow x\in\bigcap_i f^{-1}(B_i) \end{aligned} $$
である。

像と共通部分

任意の $A,B\subseteq X$ に対して
$$ f(A\cap B)\subseteq f(A)\cap f(B) $$
である。$f$ が単射なら等号が成り立つ。

像と共通部分の証明

$y\in f(A\cap B)$ なら、ある $x\in A\cap B$ が存在して $y=f(x)$ である。この $x$ は $A$ と $B$ の両方に属するので、$y\in f(A)\cap f(B)$ である。
$f$ が単射で $y\in f(A)\cap f(B)$ とする。ある $a\in A$ と $b\in B$ が存在して $f(a)=y=f(b)$ である。単射性から $a=b$ なので、この元は $A\cap B$ に属し、$y\in f(A\cap B)$ である。

定値写像 $f\colon\{1,2\}\to\{0\}$ と $A=\{1\}$、$B=\{2\}$ では、$f(A\cap B)=\emptyset$ だが $f(A)\cap f(B)=\{0\}$ である。従って単射性を外すと等号は一般に壊れる。

位相と解析における共通部分

位相空間では開集合の有限共通部分と閉集合の任意共通部分が再び同じ種類の集合になる。閉集合の任意共通部分に関する性質は、補集合とDe Morganの法則によって、開集合の任意和に関する性質と双対である。
解析では条件を同時に課す集合を共通部分で表す。たとえば方程式 $F_i(x)=0$ をすべて満たす点の集合は、各零点集合の共通部分である。確率論で事象 $A_i$ がすべて起こる事象も $\bigcap_iA_i$ で表す。有限個ずつなら共通部分が空でないという条件と、族全体の共通部分が空でないという結論は一般には同値でなく、コンパクト性などの追加仮定が必要である。
定義、集合演算、写像との両立については Hara20(第1章 §1.3、第3章 §3.1)、Matsusaka68(第1章 §§2--4, pp. 12--41)を参照した。

関連項目

参考文献

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