Adamsの円

同義語:アダムズの円Adams' circle

概要

Adamsの円(Adams' circle)とは、三角形 $ABC$ の内接円の 3 つの接点を結ぶ接点三角形と Gergonne 点 $G_e$ について、$G_e$ を通り接点三角形の 3 辺に平行な 3 本の直線が三角形の辺と交わる 6 点を通る円である。頂点から接点までの長さを $x=s-a$、$y=s-b$、$z=s-c$($s$ は周の長さの半分)とすると、6 点はどれも辺の上で接点から $t=\frac{xyz}{xy+yz+zx}$ の距離にあり、内接円の半径を $r$ として、内心を中心とする半径 $\sqrt{r^2+t^2}$ の円の上にある。Gergonne 点を重心に替えたり、三角形の辺に平行な直線にしたりすると、6 点は一般には 1 つの円に乗らない(3 辺 $13,14,15$ の三角形で確かめる)。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Conwayの円, Gergonne点とNagel点, 平行線と線分の比, 位置ベクトルと内分点

高校での出発点:Gergonne 点を通る 3 本の平行線

Conwayの円 では、3 本の辺の直線の上で内接円の接点から同じ距離にある 6 点が、内心を中心とする 1 つの円の上に乗ることを見た。この記事では、同じことが三角形の内部の別の作り方からも起こることを調べる。
内接円の 3 つの接点を結ぶと、三角形の中に小さな三角形ができる。接点と向かい合う頂点を結ぶ 3 本は 1 点(Gergonne 点)で交わる。Gergonne 点を通って、小さな三角形の 3 辺に平行な直線を引くと、もとの三角形の辺と 6 点で交わる。この 6 点がどこにあるかを、数を入れて調べる。
以下、三角形 $ABC$ の辺の長さを $a=BC$、$b=CA$、$c=AB$、周の長さの半分を $s$、内心を $I$、内接円の半径を $r$ とし、内接円が辺 $BC$、$CA$、$AB$ に接する点を $T_A$、$T_B$、$T_C$ とする。頂点から接点までの長さを
$$ x=s-a=AT_B=AT_C,\qquad y=s-b=BT_C=BT_A,\qquad z=s-c=CT_A=CT_B $$
とおく(Conwayの円 の補題「頂点から接点までの長さ」)。辺は $a=y+z$、$b=z+x$、$c=x+y$ と書ける。

3 辺 3, 4, 5 の直角三角形で 6 点をとる

$B(0,0)$、$C(4,0)$、$A(0,3)$ とする。$a=4$、$b=5$、$c=3$、$s=6$ で、$x=2$、$y=1$、$z=3$ である。内心は $I(1,1)$、$r=1$ で、接点は $T_A(1,0)$、$T_C(0,1)$、$T_B=\left(\dfrac85,\dfrac95\right)$($C$ から $A$ へ $z=3$ 進んだ点)である。
(1) Gergonne 点。重み $\dfrac1x:\dfrac1y:\dfrac1z=\dfrac12:1:\dfrac13=3:6:2$ で
$$ G_e=\frac{3A+6B+2C}{11}=\left(\frac{8}{11},\ \frac{9}{11}\right) $$
である(Gergonne点とNagel点 の定理「Gergonne 点と Nagel 点の位置ベクトル」)。
(2) $T_CT_A$ に平行な直線。$T_C(0,1)$ から $T_A(1,0)$ への向きは $(1,-1)$ なので、$G_e$ を通る平行線は $x+y=\dfrac{17}{11}$ である。辺 $BC$($y=0$)とは $\left(\dfrac{17}{11},0\right)$、辺 $AB$($x=0$)とは $\left(0,\dfrac{17}{11}\right)$ で交わる。
(3) $T_AT_B$ に平行な直線。$T_A$ から $T_B$ への向きは $\left(\dfrac35,\dfrac95\right)$、つまり $(1,3)$ の向きなので、平行線は $y-\dfrac9{11}=3\left(x-\dfrac8{11}\right)$、$y=3x-\dfrac{15}{11}$ である。辺 $BC$ とは $\left(\dfrac5{11},0\right)$ で交わる。辺 $CA$($3x+4y=12$)とは、$3x+4\left(3x-\dfrac{15}{11}\right)=12$ から $15x=\dfrac{192}{11}$、$x=\dfrac{64}{55}$ で、$\left(\dfrac{64}{55},\dfrac{117}{55}\right)$ で交わる。
(4) $T_BT_C$ に平行な直線。$T_C$ から $T_B$ への向きは $\left(\dfrac85,\dfrac45\right)$、つまり $(2,1)$ の向きなので、平行線は $y=\dfrac x2+\dfrac5{11}$ である。辺 $AB$ とは $\left(0,\dfrac5{11}\right)$、辺 $CA$ とは $3x+4\left(\dfrac x2+\dfrac5{11}\right)=12$ から $x=\dfrac{112}{55}$ で、$\left(\dfrac{112}{55},\dfrac{81}{55}\right)$ で交わる。
(5) 接点からの距離。辺 $BC$ の上の 2 点 $\dfrac5{11}$、$\dfrac{17}{11}$ は、$T_A$($x=1$)の両側に $\dfrac6{11}$ ずつ離れている。辺 $AB$ の上の 2 点 $\dfrac5{11}$、$\dfrac{17}{11}$ も、$T_C$($y=1$)の両側に $\dfrac6{11}$ ずつ離れている。辺 $CA$ の上では、$T_B=\left(\dfrac{88}{55},\dfrac{99}{55}\right)$ から 2 点への差が $\left(\dfrac{24}{55},-\dfrac{18}{55}\right)$ と $\left(-\dfrac{24}{55},\dfrac{18}{55}\right)$ で、長さはどちらも $\dfrac{\sqrt{576+324}}{55}=\dfrac{30}{55}=\dfrac6{11}$ である。
6 点はどれも、接点から同じ距離 $\dfrac6{11}$ のところにある。接点で辺に垂直な半径 $r=1$ と三平方の定理から、6 点はどれも $I$ から距離
$$ \sqrt{1^2+\left(\frac6{11}\right)^2}=\sqrt{\frac{121+36}{121}}=\frac{\sqrt{157}}{11} $$
のところにあり、$I$ を中心とする 1 つの円の上にある。

3 辺 3, 4, 5 の直角三角形で、Gergonne 点 Ge を通り接点を結ぶ三角形の 3 辺に平行な 3 本の直線は、辺と 6 点で交わり、6 点は内心 I を中心とする円の上にある 3 辺 3, 4, 5 の直角三角形で、Gergonne 点 Ge を通り接点を結ぶ三角形の 3 辺に平行な 3 本の直線は、辺と 6 点で交わり、6 点は内心 I を中心とする円の上にある
ex-adm-start の距離 $\dfrac6{11}$ は、$x=2$、$y=1$、$z=3$ から $\dfrac{xyz}{xy+yz+zx}=\dfrac{6}{2+3+6}$ として出てくる。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 6 点は、どんな三角形でも内心を中心とする 1 つの円の上にあるか。→ thm-adm-main
  2. 接点からの距離 $\dfrac6{11}$ はどこから来るのか。→ lem-adm-cut、thm-adm-main
  3. Gergonne 点や「接点を結ぶ三角形に平行」を替えると、どうなるか。→ ex-adm-cx-centroid、ex-adm-cx-sides
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    頂点から接点までの長さ $x,y,z$接点からの距離 $t=\dfrac{xyz}{xy+yz+zx}$$\dfrac1t=\dfrac1x+\dfrac1y+\dfrac1z$
    位置ベクトルの係数平行線が 2 辺を切る長さ $c\beta+b\gamma$斜交座標と直線の切片の式
    三平方の定理内心を中心とする半径 $\sqrt{r^2+t^2}$ の円内接円と同心の円

言葉の準備:接点三角形と Gergonne 点

接点三角形と Adams の 6 点

内接円の接点 $T_A$、$T_B$、$T_C$ を頂点とする三角形 $T_AT_BT_C$ を 接点三角形 という。3 本の線分 $AT_A$、$BT_B$、$CT_C$ が交わる点を Gergonne 点 といい、$G_e$ で表す。
$G_e$ を通り、接点三角形の辺 $T_BT_C$、$T_CT_A$、$T_AT_B$ にそれぞれ平行な直線を $\ell_A$、$\ell_B$、$\ell_C$ とする。$\ell_A$ が三角形 $ABC$ の周と交わる 2 点、$\ell_B$ が周と交わる 2 点、$\ell_C$ が周と交わる 2 点、合わせて 6 点を Adams の 6 点 という。次の thm-adm-main で示すように 6 点は 1 つの円の上にあり、この円を Adams の円 という。

3 本の線分 $AT_A$、$BT_B$、$CT_C$ が 1 点で交わることと、その点の位置ベクトルが
$$ G_e=\frac{\dfrac Ax+\dfrac By+\dfrac Cz}{\dfrac1x+\dfrac1y+\dfrac1z} $$
であることは、Gergonne点とNagel点 の定理「Gergonne 点と Nagel 点の位置ベクトル」で示されている(そこでの $\dfrac1{s-a}$ などが $\dfrac1x$ などである)。$G_e$ は係数がすべて正なので、三角形の内部にある。内部の点を通る直線は、三角形の周とちょうど 2 点で交わる。
thm-adm-main で分かるように、$\ell_A$ は辺 $AB$、$AC$ と、$\ell_B$ は辺 $BC$、$BA$ と、$\ell_C$ は辺 $CA$、$CB$ と交わる。そこで 6 点を、$\ell_A$ と辺 $AB$ の交点を $P_{AB}$、$\ell_A$ と辺 $AC$ の交点を $P_{AC}$ のように、「どの直線か(最初の文字)」と「どの辺か(2 文字)」で名づける。ex-adm-start では
$$ P_{AB}\left(0,\frac5{11}\right),\ P_{AC}\left(\frac{112}{55},\frac{81}{55}\right),\ P_{BC}\left(\frac{17}{11},0\right),\ P_{BA}\left(0,\frac{17}{11}\right),\ P_{CA}\left(\frac{64}{55},\frac{117}{55}\right),\ P_{CB}\left(\frac5{11},0\right) $$
である。
接点三角形の辺 $T_BT_C$ には、見やすい性質がある。$AT_B=AT_C=x$ なので、三角形 $AT_BT_C$ は二等辺三角形で、$T_BT_C$ は角 $A$ の二等分線に垂直である。したがって $T_BT_C$ に平行な直線 $\ell_A$ も角 $A$ の二等分線に垂直で、辺 $AB$、$AC$ を $A$ から同じ長さのところで切る。その長さを求めるのが次の補題である。

補題:平行線が 2 辺を切る長さ

点を位置ベクトルで表し、同じ文字で書く。三角形の内部の点 $X$ は
$$ X=\alpha A+\beta B+\gamma C\qquad(\alpha+\beta+\gamma=1,\ \alpha,\beta,\gamma>0) $$
とただ 1 通りに書ける(位置ベクトルと内分点)。$\alpha=1-\beta-\gamma$ を代入すると $X=A+\beta(B-A)+\gamma(C-A)$ である。

平行線が 2 辺を切る長さ

三角形 $ABC$ の内部の点 $X=A+\beta(B-A)+\gamma(C-A)$ を通り、$T_BT_C$ に平行な直線を $\ell$ とする。$u=c\beta+b\gamma$ とおくと、$\ell$ は半直線 $AB$ の上の $AP=u$ の点 $P$ と、半直線 $AC$ の上の $AQ=u$ の点 $Q$ を通る。

係数の和が 1 になるように書きかえる

段 1(点 $P$、$Q$ を決める)。$u=c\beta+b\gamma>0$ である。半直線 $AB$ の上に $AP=u$ となる点 $P$、半直線 $AC$ の上に $AQ=u$ となる点 $Q$ をとる。$AB=c$、$AC=b$ なので
$$ P-A=\frac uc(B-A),\qquad Q-A=\frac ub(C-A) $$
である。
段 2($X$ は直線 $PQ$ の上)。段 1 の式から $B-A=\dfrac cu(P-A)$、$C-A=\dfrac bu(Q-A)$ なので
$$ X-A=\beta(B-A)+\gamma(C-A)=\frac{c\beta}u(P-A)+\frac{b\gamma}u(Q-A) $$
である。係数の和は $\dfrac{c\beta+b\gamma}u=1$ なので、$\lambda=\dfrac{b\gamma}u$ とおくと $X-A=(1-\lambda)(P-A)+\lambda(Q-A)$、つまり $X=(1-\lambda)P+\lambda Q$ で、$X$ は直線 $PQ$ の上にある($0<\lambda<1$ なので線分 $PQ$ の上)。
段 3($PQ$ は $T_BT_C$ に平行)。$T_C$ は半直線 $AB$ の上の $AT_C=x$ の点、$T_B$ は半直線 $AC$ の上の $AT_B=x$ の点なので、$T_C-A=\dfrac xc(B-A)$、$T_B-A=\dfrac xb(C-A)$ である。段 1 の式と比べると $P-A=\dfrac ux(T_C-A)$、$Q-A=\dfrac ux(T_B-A)$ で、引き算すると $Q-P=\dfrac ux(T_B-T_C)$ である。よって $\overrightarrow{PQ}$ は $\overrightarrow{T_CT_B}$ の正の数倍で、$PQ\parallel T_CT_B$ である($u=x$ のときは $P=T_C$、$Q=T_B$ で、直線 $PQ$ は直線 $T_CT_B$ そのもの)。
段 4(まとめ)。$X$ を通り $T_BT_C$ に平行な直線はただ 1 本なので、それは直線 $PQ$ である。$\square$

点 X を通り接点を結ぶ線分 TC TB に平行な直線は、辺 AB、AC を A から同じ長さの点 P、Q で切る 点 X を通り接点を結ぶ線分 TC TB に平行な直線は、辺 AB、AC を A から同じ長さの点 P、Q で切る

補題を 3, 4, 5 の三角形で確かめる

ex-adm-start の三角形($b=5$、$c=3$)で、$G_e=\dfrac{3A+6B+2C}{11}$ の係数は $\beta=\dfrac6{11}$、$\gamma=\dfrac2{11}$ である。lem-adm-cut の長さは
$$ u=c\beta+b\gamma=3\cdot\frac6{11}+5\cdot\frac2{11}=\frac{28}{11} $$
である。実際、ex-adm-start (4) の $P_{AB}\left(0,\dfrac5{11}\right)$ は $A(0,3)$ から $3-\dfrac5{11}=\dfrac{28}{11}$ のところにあり、$P_{AC}\left(\dfrac{112}{55},\dfrac{81}{55}\right)$ も $A$ からの距離が $\dfrac{\sqrt{112^2+84^2}}{55}=\dfrac{140}{55}=\dfrac{28}{11}$ である。$AT_C=x=2$ なので、$P_{AB}$ は $T_C$ から $B$ の側へ $\dfrac{28}{11}-2=\dfrac6{11}$ 進んだ点である。

主定理:6 点は内心を中心とする円の上にある

Adams の円

三角形 $ABC$ で、$x=s-a$、$y=s-b$、$z=s-c$ とし、
$$ t=\frac1{\dfrac1x+\dfrac1y+\dfrac1z}=\frac{xyz}{xy+yz+zx} $$
とおく。このとき次が成り立つ。
(1) Adams の 6 点は 3 辺の上にあり、各辺の上の 2 点は、その辺の接点の両側に、接点から距離 $t$ のところにある。
(2) Adams の 6 点は、内心 $I$ を中心とする半径 $\sqrt{r^2+t^2}$ の円の上にある。

補題で長さを求めて三平方の定理を使う

方針:lem-adm-cut を $X=G_e$ に使い、$\ell_A$ が 2 辺を切る長さが $x+t$ になることを示す。頂点ごとの長さ $x$、$y$、$z$ の違いが消えて、$t$ が頂点によらないことが鍵である。
段 1($G_e$ の係数)。$W=\dfrac1x+\dfrac1y+\dfrac1z$ とおくと $t=\dfrac1W$ である。$G_e=\dfrac1W\left(\dfrac Ax+\dfrac By+\dfrac Cz\right)$ なので、$G_e=A+\beta(B-A)+\gamma(C-A)$ と書いたときの係数は
$$ \beta=\frac1{yW},\qquad \gamma=\frac1{zW} $$
である。
段 2($\ell_A$ が切る長さ)。lem-adm-cut により、$\ell_A$ は半直線 $AB$、$AC$ を $A$ から長さ $u_A=c\beta+b\gamma$ のところで切る。$c=x+y$、$b=x+z$ を使うと
$$ c\beta+b\gamma=\frac1W\left(\frac{x+y}y+\frac{x+z}z\right)=\frac1W\left(\frac xy+\frac xz+2\right) $$
である。一方 $xW=1+\dfrac xy+\dfrac xz$ なので、$\dfrac xy+\dfrac xz+2=xW+1$ である。よって
$$ u_A=\frac{xW+1}W=x+\frac1W=x+t $$
である。
段 3(辺の上にある)。$W>\dfrac1y$ なので $t=\dfrac1W< y$、同じく $t< z$ である。よって $u_A=x+t< x+y=c$、$u_A< x+z=b$ で、$\ell_A$ が切る 2 点は辺 $AB$、$AC$(線分)の上にある。内部の点 $G_e$ を通る直線は周とちょうど 2 点で交わるので、この 2 点が $P_{AB}$、$P_{AC}$ である。$AT_C=AT_B=x$ なので、$P_{AB}$ は接点 $T_C$ から $B$ の側へ $t$、$P_{AC}$ は接点 $T_B$ から $C$ の側へ $t$ のところにある。
段 4(ほかの頂点)。頂点の名前を $A\to B\to C\to A$($x\to y\to z\to x$)と回して段 1〜3 を使うと、$\ell_B$ は辺 $BC$、$BA$ を $B$ から $y+t$ のところで切り、$P_{BC}$ は $T_A$ から $C$ の側へ $t$、$P_{BA}$ は $T_C$ から $A$ の側へ $t$ のところにある。$\ell_C$ は辺 $CA$、$CB$ を $C$ から $z+t$ のところで切り、$P_{CA}$ は $T_B$ から $A$ の側へ $t$、$P_{CB}$ は $T_A$ から $B$ の側へ $t$ のところにある。$t$ は $x,y,z$ について対称な式なので、名前を回しても同じ $t$ である。
以上で、辺 $AB$ の上の $P_{AB}$、$P_{BA}$ は $T_C$ の両側に、辺 $BC$ の上の $P_{BC}$、$P_{CB}$ は $T_A$ の両側に、辺 $CA$ の上の $P_{CA}$、$P_{AC}$ は $T_B$ の両側に、どれも接点から $t$ のところにある。これが (1) である。
段 5(三平方の定理)。たとえば $P_{AB}$ は直線 $AB$ の上にあり、半径 $IT_C$ は直線 $AB$ に垂直で長さ $r$ である。三角形 $IT_CP_{AB}$ は $T_C$ での角が直角なので
$$ IP_{AB}^2=IT_C^2+T_CP_{AB}^2=r^2+t^2 $$
である。ほかの 5 点も同じく、その点を含む辺の接点を使って $I$ からの距離の 2 乗が $r^2+t^2$ になる。これが (2) である。$\square$

段 5 は Conwayの円 の主定理の証明と同じ計算である。Conway の円は接点から距離 $s$ の 6 点、Adams の円は接点から距離 $t$ の 6 点で、どちらも「接点から同じ距離なら、三平方の定理で内心から同じ距離」という型で示される。違いは距離の出どころで、Adams の円では lem-adm-cut と Gergonne 点の係数の計算が $x$、$y$、$z$ の違いを打ち消している。
ex-adm-start では $x=2$、$y=1$、$z=3$ で、$W=\dfrac12+1+\dfrac13=\dfrac{11}6$、$t=\dfrac6{11}$ である。$t< y=1$ で、thm-adm-main の段 3 のとおり 6 点は辺の上にある。

3 辺 13, 14, 15 の三角形

$B(0,0)$、$C(14,0)$、$A(5,12)$ とする。$a=14$、$b=15$、$c=13$、$s=21$ で、$x=7$、$y=6$、$z=8$、$I(6,4)$、$r=4$、$T_A(6,0)$ である。
$$ t=\frac{7\cdot6\cdot8}{7\cdot6+6\cdot8+8\cdot7}=\frac{336}{42+48+56}=\frac{336}{146}=\frac{168}{73} $$
である。辺 $BC$ の上の 2 点は $T_A$ の両側に $\dfrac{168}{73}$ 離れた $P_{CB}\left(\dfrac{270}{73},0\right)$、$P_{BC}\left(\dfrac{606}{73},0\right)$ である($6=\dfrac{438}{73}$)。

座標で確かめる計算を開く

$G_e=\dfrac{\frac A7+\frac B6+\frac C8}{\frac17+\frac16+\frac18}=\dfrac{24A+28B+21C}{73}=\left(\dfrac{414}{73},\dfrac{288}{73}\right)$ である。$T_CT_A$ に平行な直線 $\ell_B$ が $x$ 軸と交わる点を求める。$T_C$ は $A$ から $B$ へ $x=7$ 進んだ点で $T_C=A+\dfrac7{13}(B-A)=\left(\dfrac{30}{13},\dfrac{72}{13}\right)$、$T_A=(6,0)$ なので、$T_C$ から $T_A$ への向きは $\left(\dfrac{48}{13},-\dfrac{72}{13}\right)$、つまり $(2,-3)$ の向きである。$G_e$ を通りこの向きの直線が $y=0$ になるのは、$y$ 座標が $\dfrac{288}{73}$ から $0$ まで減るときで、そのとき $x$ 座標は $\dfrac23\cdot\dfrac{288}{73}=\dfrac{192}{73}$ 増える。よって交点は $\dfrac{414+192}{73}=\dfrac{606}{73}$ である。


Adams の円の半径の 2 乗は
$$ r^2+t^2=16+\frac{28224}{5329}=\frac{85264+28224}{5329}=\frac{113488}{5329}\approx21.30 $$
で、半径は約 $4.615$ である。内接円の半径 $4$ より少し大きい。

鈍角三角形

3 辺が $a=7$、$b=5$、$c=3$ の三角形($A=120^\circ$、Conwayの円 の例と同じ三角形)では、$s=\dfrac{15}2$、$x=\dfrac12$、$y=\dfrac52$、$z=\dfrac92$、$r=\dfrac{\sqrt3}2$ である。
$$ W=2+\frac25+\frac29=\frac{90+18+10}{45}=\frac{118}{45},\qquad t=\frac{45}{118} $$
で、$t< x=\dfrac12$ なので 6 点は辺の上にある。半径の 2 乗は $\dfrac34+\left(\dfrac{45}{118}\right)^2=\dfrac{3117}{3481}\approx0.895$ である。

辺 $BC$ の上の 2 点の座標を開く

$B(0,0)$、$C(7,0)$ とおくと $T_A=\left(\dfrac52,0\right)$($BT_A=y$)、$I=\left(\dfrac52,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ で、辺 $BC$ の上の 2 点は $\dfrac52\pm\dfrac{45}{118}$、つまり $\left(\dfrac{125}{59},0\right)$ と $\left(\dfrac{170}{59},0\right)$ である。

3 辺 13, 14, 15 の三角形の Adams の円(橙)は、内接円(緑)より少し大きい同心円である 3 辺 13, 14, 15 の三角形の Adams の円(橙)は、内接円(緑)より少し大きい同心円である
角 A が 120 度の鈍角三角形でも、Gergonne 点を通る 3 本の平行線が辺と交わる 6 点は、内心を中心とする円の上にある 角 A が 120 度の鈍角三角形でも、Gergonne 点を通る 3 本の平行線が辺と交わる 6 点は、内心を中心とする円の上にある

比べる:Conway の円と Adams の円

2 つの円はどちらも内心を中心とし、6 点が「接点から同じ距離」にあることで説明される。

Conway の円Adams の円
6 点の作り方各頂点から、向かい合う辺の長さだけ 2 辺を延ばすGergonne 点を通り接点三角形の辺に平行な 3 本の直線
6 点のある場所辺の延長の上辺(線分)の上
接点からの距離$s=x+y+z$$t=\dfrac{xyz}{xy+yz+zx}$
中心内心 $I$内心 $I$
半径$\sqrt{r^2+s^2}$$\sqrt{r^2+t^2}$
3 辺 $14,15,13$ の値$\sqrt{457}\approx21.38$$\dfrac{\sqrt{113488}}{73}\approx4.615$

$s$ は $x,y,z$ の和、$t$ は $\dfrac1t=\dfrac1x+\dfrac1y+\dfrac1z$ で決まる「逆数の和の逆数」である。$t$ は $x,y,z$ のどれよりも小さいので、Adams の 6 点は接点のすぐ近くにあり、Adams の円は内接円より少しだけ大きい。

例と反例

def-adm の作り方の 2 つの部分、「Gergonne 点を通る」と「接点三角形の辺に平行」を、それぞれ替えてみる。3 辺 $14,15,13$ の三角形 $B(0,0)$、$C(14,0)$、$A(5,12)$(ex-adm-1314)を使う。

外す条件反例成り立たなくなること
Gergonne 点を通る重心 $G$ を通り、接点三角形の辺に平行な 3 本6 点が 1 つの円の上にある
接点三角形の辺に平行Gergonne 点を通り、三角形 $ABC$ の辺に平行な 3 本6 点が 1 つの円の上にある

6 点が 1 つの円の上にないことは、方べきの定理で確かめる。頂点 $B$ を通る 2 本の直線 $BC$、$BA$ の上に 2 点ずつあり、4 点が 1 つの円の上にあるなら、方べきの定理(高校数学) により「$B$ から直線 $BC$ の上の 2 点までの距離の積」と「$B$ から直線 $BA$ の上の 2 点までの距離の積」は等しい(どちらも $B$ のその円に関する方べき)。積が違えば、4 点は、したがって 6 点も、1 つの円の上にない。
Adams の 6 点では、辺 $BC$ の上の 2 点は $B$ から $y-t$ と $y+t$、辺 $BA$ の上の 2 点も $B$ から $y-t$ と $y+t$ の距離にあり、積はどちらも $y^2-t^2$ で等しい。

反例:Gergonne 点を重心に替える

重心 $G=\dfrac{A+B+C}3$ を通り、接点三角形の辺に平行な 3 本の直線をとる。$G=A+\dfrac13(B-A)+\dfrac13(C-A)$ なので、lem-adm-cut により $T_BT_C$ に平行な直線は辺 $AB$、$AC$ を $A$ から $u_A=\dfrac{c+b}3=\dfrac{28}3$ のところで切る。頂点の名前を回すと、$T_CT_A$ に平行な直線は辺 $BC$、$BA$ を $B$ から $u_B=\dfrac{a+c}3=9$ のところで、$T_AT_B$ に平行な直線は辺 $CA$、$CB$ を $C$ から $u_C=\dfrac{b+a}3=\dfrac{29}3$ のところで切る。

  • 直線 $BC$ の上の 2 点:$B$ から $9$ の点と、$C$ から $\dfrac{29}3$、つまり $B$ から $14-\dfrac{29}3=\dfrac{13}3$ の点。距離の積は $9\cdot\dfrac{13}3=39$ である。
  • 直線 $BA$ の上の 2 点:$B$ から $9$ の点と、$A$ から $\dfrac{28}3$、つまり $B$ から $13-\dfrac{28}3=\dfrac{11}3$ の点。距離の積は $9\cdot\dfrac{11}3=33$ である。
    $39\ne33$ なので、6 点は 1 つの円の上にない。接点からの距離で見ると、$\dfrac{28}3-7=\dfrac73$、$9-6=3$、$\dfrac{29}3-8=\dfrac53$ と頂点ごとに違い、6 点は $I$ を中心とする 3 つの同心円に 2 点ずつ分かれる。
反例:三角形の辺に平行な直線にする

$G_e=\dfrac{24A+28B+21C}{73}$ を通り、三角形 $ABC$ の辺に平行な 3 本の直線をとる。頂点 $B$ を通る 2 本の直線の上の 2 点までの距離の積を計算すると、直線 $BC$ では $\dfrac{185220}{5329}$、直線 $BA$ では $\dfrac{182520}{5329}$ になる。

距離の積の計算を開く

点 $\alpha A+\beta B+\gamma C$ を $BC$ に平行に動かしても($C-B$ の何倍かを足しても)$A$ の係数 $\alpha$ は変わらないので、$G_e$ を通り $BC$ に平行な直線は、辺 $AB$ と $A$ の係数が $\dfrac{24}{73}$ の点 $\dfrac{24}{73}A+\dfrac{49}{73}B$ で交わる。同じように考えると、次のようになる。

  • 直線 $BC$ の上の 2 点:$CA$ に平行な直線($B$ の係数 $\dfrac{28}{73}$ を保つ)との交点は $\dfrac{28}{73}B+\dfrac{45}{73}C$ で $B$ から $\dfrac{45}{73}\cdot14=\dfrac{630}{73}$、$AB$ に平行な直線($C$ の係数 $\dfrac{21}{73}$ を保つ)との交点は $\dfrac{52}{73}B+\dfrac{21}{73}C$ で $B$ から $\dfrac{21}{73}\cdot14=\dfrac{294}{73}$ である。積は $\dfrac{630\cdot294}{73^2}=\dfrac{185220}{5329}$ である。
  • 直線 $BA$ の上の 2 点:$BC$ に平行な直線との交点は $B$ から $\dfrac{24}{73}\cdot13=\dfrac{312}{73}$、$CA$ に平行な直線との交点 $\dfrac{45}{73}A+\dfrac{28}{73}B$ は $B$ から $\dfrac{45}{73}\cdot13=\dfrac{585}{73}$ である。積は $\dfrac{312\cdot585}{73^2}=\dfrac{182520}{5329}$ である。

$185220\ne182520$ なので、6 点は 1 つの円の上にない。

重心 G を通り接点三角形の辺に平行な 3 本の直線では、6 点は 1 つの円の上に乗らない 重心 G を通り接点三角形の辺に平行な 3 本の直線では、6 点は 1 つの円の上に乗らない
Gergonne 点を通り三角形の辺に平行な 3 本の直線でも、6 点は 1 つの円の上に乗らない Gergonne 点を通り三角形の辺に平行な 3 本の直線でも、6 点は 1 つの円の上に乗らない

2 つ目の反例で、点を Gergonne 点から 類似重心(位置ベクトルが $\dfrac{a^2A+b^2B+c^2C}{a^2+b^2+c^2}$ の点)に替えると、6 点は 1 つの円の上に乗る。これが Lemoineの円 である。「どの点を通り、何に平行な直線を引くか」の組み合わせで、6 点の円が生まれたり崩れたりする。

大学数学で見る:半径の式と逆数の和

逆数の和で決まる長さ

$t$ は $\dfrac1t=\dfrac1x+\dfrac1y+\dfrac1z$ で決まる。これは、抵抗 $x$、$y$、$z$ を並列につないだときの合成抵抗と同じ式である。3 つの数の調和平均は $\dfrac3{\frac1x+\frac1y+\frac1z}=3t$ なので、$t$ は $x,y,z$ の調和平均の $\dfrac13$ でもある。thm-adm-main の証明の段 3 で使った $t< y$ は、「逆数の和は、どの 1 つの逆数よりも大きい」ことから出ている。

MathWorld の頁の半径の式

Wei26 には、Adams の円の半径が $p=ab+bc+ca$ を使った式
$$ R_A=\frac{r\sqrt{p^2-abcs-ps^2}}{p-s^2} $$
で載っている。これは thm-adm-main の $\sqrt{r^2+t^2}$ と同じ値である。

2 つの半径の式が一致すること

$q=xy+yz+zx$ とおくと $t=\dfrac{xyz}q$ で、次が成り立つ。
$$ p-s^2=q,\qquad p^2-abcs-ps^2=q^2+s\,xyz $$
したがって $R_A^2=\dfrac{r^2(q^2+s\,xyz)}{q^2}=r^2+t^2$ である。3 辺 $14,15,13$ では $p=587$、$s^2=441$、$p-s^2=146=q$、$p^2-abcs-ps^2=344569-57330-258867=28372=146^2+21\cdot336$ である。

接線の長さで示す計算を開く

Conwayの円 の「大学数学で見る」の計算と同じく、$a=y+z$、$b=z+x$、$c=x+y$、$s=x+y+z$ とする。

(1) $p=ab+bc+ca=s^2+q$(同記事で示した)。よって $p-s^2=q$ である。

(2) $abc=(y+z)(z+x)(x+y)=sq-xyz$(同じく展開して示した)。

(3) $p^2-abcs-ps^2=p(p-s^2)-abcs=(s^2+q)q-s(sq-xyz)=s^2q+q^2-s^2q+s\,xyz=q^2+s\,xyz$ である。

(4) Conwayの円 の命題「Conway の円の半径」の証明のとおり $r^2=\dfrac{xyz}s$ である。よって

$$R_A^2=r^2\cdot\frac{q^2+s\,xyz}{q^2}=r^2+\frac{xyz}s\cdot\frac{s\,xyz}{q^2}=r^2+\left(\frac{xyz}q\right)^2=r^2+t^2$$

である。

Adams の円はある三角形の Lemoine の円

Wei26 は、6 点のうちの 2 点ずつを結ぶ 3 本の直線で囲まれる三角形について、Gergonne 点がその三角形の類似重心であり、Adams の円がその三角形の Lemoineの円 であることを述べている(この記事では証明しない)。

どの 3 本の直線か、数値での確認を開く

6 点を結ぶ直線 $P_{BA}P_{CA}$、$P_{CB}P_{AB}$、$P_{AC}P_{BC}$ は、それぞれ接点三角形の辺 $T_BT_C$、$T_CT_A$、$T_AT_B$ に平行になる(3 辺 $14,15,13$ の三角形で数値的に確かめた)。この 3 本で囲まれる三角形について、Wei26 は、Gergonne 点がその三角形の類似重心であり、Adams の円がその三角形の Lemoineの円 であることを述べている(この記事では証明しない。3 辺 $14,15,13$ の三角形では数値的に確かめた)。ex-adm-cx-sides の後で見た「類似重心を通る平行線の 6 点の円」が、別の三角形を通して Adams の円と結びついている。

演習

正三角形の Adams の円

1 辺の長さが $1$ の正三角形で、Adams の 6 点の位置と Adams の円の半径を求めよ。

解答を開く

$x=y=z=\dfrac12$ なので $t=\dfrac1{2+2+2}=\dfrac16$ である。各辺の接点は辺の中点なので、6 点は中点から $\dfrac16$ ずつ離れた点、つまり頂点から $\dfrac12\pm\dfrac16$、$\dfrac13$ と $\dfrac23$ のところにある。6 点は各辺を 3 等分する点である。内接円の半径は $r=\dfrac{\sqrt3}6$ なので、半径は $\sqrt{\dfrac1{12}+\dfrac1{36}}=\sqrt{\dfrac4{36}}=\dfrac13$ である。正三角形では Gergonne 点は重心と一致し、接点三角形の辺はもとの三角形の辺に平行なので、ex-adm-cx-centroid と ex-adm-cx-sides のどちらの作り方でも同じ 6 点になる。

二等辺三角形の Adams の円

3 辺が $a=6$、$b=c=5$ の二等辺三角形で、接点から Adams の 6 点までの距離 $t$ と、Adams の円の半径を求めよ。

解答を開く

$s=8$ で $x=2$、$y=z=3$ である。$t=\dfrac{2\cdot3\cdot3}{6+9+6}=\dfrac{18}{21}=\dfrac67$ である。面積は底辺 $6$、高さ $4$ で $12$ なので $r=\dfrac{12}8=\dfrac32$ で、半径は $\sqrt{\dfrac94+\dfrac{36}{49}}=\sqrt{\dfrac{441+144}{196}}=\dfrac{\sqrt{585}}{14}=\dfrac{3\sqrt{65}}{14}$ である。

さらに先へ

  • 6 点の作り方、中心が内心であること、半径の式は Wei26 にある。
  • 接点から同じ距離の点が内心を中心とする円に乗る、という同じ型の証明で、各頂点から向かい合う辺の長さだけ延ばした 6 点を扱うのが Conwayの円 である。
  • Gergonne 点の等長共役点(辺の中点に関して Ceva 線の足を折り返してできる点)は Nagel 点である(Gergonne点とNagel点)。Nagel 点・内心・重心の並びから、次の記事 Spieker中心 に進む。
  • 類似重心を通り辺に平行な 3 本の直線の 6 点の円は Lemoineの円 である。

関連項目

参考文献

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