三角関数の直交性(orthogonality of trigonometric functions)とは、整数 $m\ne n$ について $\int_{-\pi}^{\pi}e^{imx}\overline{e^{inx}}\,dx=0$ となるように、周波数の違う三角関数の積の積分が $0$ になる性質である。周波数 $\lambda\ne\mu$ の $e^{i\lambda x}$ と $e^{i\mu x}$ が区間 $[a,b]$ で直交するのは $(\lambda-\mu)(b-a)$ が $2\pi$ の整数倍のときに限り、周期 $T$ の系は長さ $T$ のどの区間でも直交する。半周期の区間では正弦どうし・余弦どうしは直交するが正弦と余弦は直交するとは限らず、実数直線の上の平均ではすべての実数の周波数が互いに直交する。Fourier 級数や概周期関数の理論の土台になる。
前提知識: 三角関数, Eulerの公式(指数関数), Riemann積分, 積分で定める内積
整数 $m\ne n$ について $\int_{-\pi}^{\pi}\cos mx\cos nx\,dx=0$ となる、といった一連の等式を 三角関数の直交性 という。高校数学の範囲では、積和の公式で 1 つずつ確かめられる(三角関数の直交性(高校数学) の定理「三角関数の直交関係」)。Fourier 級数の係数が「$e^{-inx}$ を掛けて平均をとる」式で決まるのは、この直交性による(Fourier級数 の命題「三角関数系の直交性」)。
この記事では、直交性を複素指数関数 $e^{i\lambda x}$ の言葉で見直し、次の問いに答える。
区間 $[a,b]$($a< b$)上の連続な複素数値関数 $f,g$ に対して
$$
\langle f,g\rangle_{[a,b]}:=\int_a^bf(x)\overline{g(x)}\,dx
$$
とおき、$\langle f,g\rangle_{[a,b]}=0$ のとき $f$ と $g$ は $[a,b]$ で 直交する という。複素数値の関数の積分は実部と虚部それぞれの積分で定める。実数 $\lambda$ に対して $e_\lambda(x):=e^{i\lambda x}=\cos\lambda x+i\sin\lambda x$ とおく。$\overline{e_\mu(x)}=e^{-i\mu x}$ なので $e_\lambda\overline{e_\mu}=e_{\lambda-\mu}$ である。
実数 $\kappa$ と $a< b$ について
$$
\int_a^be^{i\kappa x}\,dx=\begin{cases}b-a&(\kappa=0)\\[2pt]\dfrac{e^{i\kappa b}-e^{i\kappa a}}{i\kappa}&(\kappa\ne0)\end{cases}
$$
である。とくに $\kappa\ne0$ なら $\Bigl\lvert\int_a^be^{i\kappa x}\,dx\Bigr\rvert\le\dfrac2{\lvert\kappa\rvert}$ である。
$\kappa\ne0$ なら $\frac{d}{dx}\frac{e^{i\kappa x}}{i\kappa}=\frac{d}{dx}\frac{\sin\kappa x-i\cos\kappa x}{\kappa}=\cos\kappa x+i\sin\kappa x=e^{i\kappa x}$ なので、実部と虚部に微分積分学の基本定理を使えばよい。評価は $\lvert e^{i\kappa b}-e^{i\kappa a}\rvert\le2$ による。$\kappa=0$ は明らかである。$\square$
実数 $\lambda,\mu$ と $a< b$ について、$e_\lambda$ と $e_\mu$ が $[a,b]$ で直交するのは、$\lambda\ne\mu$ かつ
$$
(\lambda-\mu)(b-a)\in2\pi\mathbb{Z}
$$
のとき、かつそのときに限る。とくに、$T>0$ と任意の実数 $a$ と整数 $m,n$ について
$$
\frac1T\int_a^{a+T}e^{2\pi imx/T}\,\overline{e^{2\pi inx/T}}\,dx=\begin{cases}1&(m=n)\\0&(m\ne n)\end{cases}
$$
である。
$\kappa:=\lambda-\mu$ とおくと $\langle e_\lambda,e_\mu\rangle_{[a,b]}=\int_a^be^{i\kappa x}\,dx$ である。$\kappa=0$ ならこれは $b-a>0$ で、直交しない。$\kappa\ne0$ なら lem-tro-integral から
$$
\langle e_\lambda,e_\mu\rangle_{[a,b]}=\frac{e^{i\kappa a}\bigl(e^{i\kappa(b-a)}-1\bigr)}{i\kappa}
$$
であり、$e^{i\kappa a}\ne0$ なので、これが $0$ になるのは $e^{i\kappa(b-a)}=1$、すなわち $\cos\kappa(b-a)=1$ かつ $\sin\kappa(b-a)=0$ のときである。これは $\kappa(b-a)\in2\pi\mathbb{Z}$ と同値である。後半は $\lambda=2\pi m/T$、$\mu=2\pi n/T$、$b-a=T$ とおくと $(\lambda-\mu)(b-a)=2\pi(m-n)$ なので、$m\ne n$ なら前半から $0$、$m=n$ なら被積分関数が $1$ で値は $1$ である。$\square$
直交するかどうかは、区間の 長さ と周波数の 差 だけで決まり、区間の位置 $a$ にはよらない。高校数学の記事が挙げる「区間を半分にすると直交しない」「整数でない周波数では直交しない」という注意は、どちらもこの条件が崩れた場合である。たとえば $e^{ix}$ と $e^{2ix}$ は $[0,\pi]$ では $(\lambda-\mu)(b-a)=-\pi\notin2\pi\mathbb{Z}$ なので直交せず、実際 $\int_0^\pi e^{-ix}\,dx=\frac{e^{-i\pi}-1}{-i}=-2i$ である。
$T>0$、$\omega:=2\pi/T$ とし、$a$ を実数、$m,n$ を $0$ 以上の整数とする。$\int$ を $\int_a^{a+T}\cdots dx$ の略記とすると
$$
\int\cos m\omega x\cos n\omega x=\begin{cases}0&(m\ne n)\\T/2&(m=n\ge1)\\T&(m=n=0)\end{cases},\qquad\int\sin m\omega x\sin n\omega x=\begin{cases}0&(m\ne n\text{ または }m=n=0)\\T/2&(m=n\ge1)\end{cases}
$$
であり、すべての $m,n$ について $\int\cos m\omega x\sin n\omega x=0$ である。
要点:$\cos$、$\sin$ を $e^{\pm i\omega x}$ で書いて積を展開し、周波数 $0$ の項だけが積分に残ることを使う。thm-tro-characterization から、整数 $k$ について $\int e^{ik\omega x}$ は $k=0$ なら $T$、$k\ne0$ なら $0$ である。
$\cos m\omega x\cos n\omega x=\frac14\bigl(e^{i(m+n)\omega x}+e^{i(m-n)\omega x}+e^{i(n-m)\omega x}+e^{-i(m+n)\omega x}\bigr)$ である。$m\ne n$ なら 4 つの周波数 $\pm(m+n)$、$\pm(m-n)$ はどれも $0$ でないので積分は $0$ である($m+n=0$ は $m=n=0$ のときだけ)。$m=n\ge1$ なら周波数 $0$ の項は中の 2 つで、積分は $\frac14\cdot2T=\frac T2$ である。$m=n=0$ なら 4 項とも $1$ で、積分は $T$ である。
$\sin m\omega x\sin n\omega x=-\frac14\bigl(e^{i(m+n)\omega x}-e^{i(m-n)\omega x}-e^{i(n-m)\omega x}+e^{-i(m+n)\omega x}\bigr)$ も同じで、$m=n\ge1$ のとき $-\frac14\cdot(-2T)=\frac T2$ である。
$\cos m\omega x\sin n\omega x=\frac1{4i}\bigl(e^{i(m+n)\omega x}-e^{i(m-n)\omega x}+e^{i(n-m)\omega x}-e^{-i(m+n)\omega x}\bigr)$ では、$m=n$ のとき周波数 $0$ の 2 項が符号違いで打ち消し合い、$m=n=0$ ならさらに残りの 2 項も打ち消し合う。$m\ne n$ なら周波数 $0$ の項がない。どの場合も積分は $0$ である。$\square$
$T=2\pi$、$a=-\pi$ とすると Fourier級数 の命題「三角関数系の直交性」になり、$\{e^{inx}\}_{n\in\mathbb{Z}}$ は内積 $\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f\overline g$ について正規直交系である(Leb26b §11.8.4)。$T=1$ なら $\{e^{2\pi inx}\}_{n\in\mathbb{Z}}$ は $[0,1]$ 上の正規直交系であり、周期 $1$ の関数の Fourier 級数はこの系で書く。
周期 $T=4$($\omega=\frac\pi2$)の三角多項式 $p(x)=3+2\cos\frac{3\pi x}2-\sin\frac{5\pi x}2$ について、$[0,4]$ で $\cos\frac{3\pi x}2$ との積を積分すると、cor-tro-real から $3$ と $-\sin\frac{5\pi x}2$ の項は $0$ になり、$2\cos\frac{3\pi x}2$ の項は $2\cdot\frac42=4$ になる。よって $\frac24\int_0^4p(x)\cos\frac{3\pi x}2\,dx=2$ で、係数 $2$ が取り出せる。同様に $\frac14\int_0^4p=3$、$\frac24\int_0^4p(x)\sin\frac{5\pi x}2\,dx=-1$ である。区間を $[1,5]$ や $[-2,2]$ に替えても値は同じである。
周期 $2L$ の関数を半分の区間 $[0,L]$ だけで見ることがある(半区間展開)。このときは、正弦どうし・余弦どうしは直交するが、正弦と余弦は直交するとは限らない。
$L>0$ とし、$m,n$ を $0$ 以上の整数とする。
1・2:$\sin\frac{m\pi x}L\sin\frac{n\pi x}L$ と $\cos\frac{m\pi x}L\cos\frac{n\pi x}L$ は、奇関数どうし・偶関数どうしの積なので偶関数である。連続な偶関数 $h$ について $\int_0^Lh=\frac12\int_{-L}^Lh$ である(対称性を用いた積分 の命題「偶関数・奇関数と、区間を裏返す置換」)。$[-L,L]$ は長さ $2L$ の区間で、$\frac{m\pi x}L=m\omega x$($\omega=\frac{2\pi}{2L}$)なので、cor-tro-real を $T=2L$ で使った値の半分が答えになる。
3:積和の公式 $\sin A\cos B=\frac12\bigl(\sin(A+B)+\sin(A-B)\bigr)$ を使う。整数 $k$ について
$$
\int_0^L\sin\frac{k\pi x}L\,dx=\begin{cases}0&(k=0)\\[2pt]\dfrac{L}{k\pi}\bigl(1-(-1)^k\bigr)&(k\ne0)\end{cases}
$$
である($k\ne0$ なら原始関数 $-\frac L{k\pi}\cos\frac{k\pi x}L$ を使い、$\cos k\pi=(-1)^k$)。$m+n$ と $m-n$ の偶奇は等しい。偶数なら $k=m\pm n$ のどちらの積分も $0$ である。奇数なら $m\pm n\ne0$ で、積分は
$$
\frac12\Bigl(\frac{2L}{(m+n)\pi}+\frac{2L}{(m-n)\pi}\Bigr)=\frac L\pi\cdot\frac{2m}{m^2-n^2}
$$
である。$\square$
たとえば $L=\pi$、$m=1$、$n=2$ なら $\int_0^\pi\sin x\cos2x\,dx=\frac{2\pi}{\pi(1-4)}=-\frac23$ で、$\sin x$ と $\cos2x$ は $[0,\pi]$ で直交しない。正弦の系 $\{\sin\frac{n\pi x}L\}$ は両端で $0$ になる条件(Dirichlet 条件)の下での $-u''=\lambda u$ の解で、余弦の系は両端で導関数が $0$ になる条件(Neumann 条件)の下での解である。同じ境界条件の下で固有値の違う解が直交することは、Sturm–Liouville問題 の定理「Lagrange の恒等式と固有関数の直交性」の特別な場合でもある(Leb26d Theorem 4.1.1)。正弦と余弦は別の境界条件の解なので、この理由が働かない。
$\sin x$ と $\sin\sqrt2\,x$ の周期の比 $\sqrt2$ は無理数なので、thm-tro-characterization から $e^{ix}$ と $e^{i\sqrt2x}$ が直交する有限の区間は長さが $2\pi/(\sqrt2-1)$ の整数倍のものに限られ、その上では $e^{-ix}$ と $e^{i\sqrt2x}$ は直交しない(周波数の差 $\sqrt2+1$ と区間の長さの積が $2\pi$ の整数倍にならない)。長さを決めた区間で全部の周波数を同時に直交させることはできない。そこで区間の長さを無限大にした平均をとる。
実数 $\lambda,\mu$ と $T>0$ と実数 $a$ について
$$
\left\lvert\frac1T\int_a^{a+T}e^{i\lambda x}\,\overline{e^{i\mu x}}\,dx-\delta_{\lambda\mu}\right\rvert\le\begin{cases}0&(\lambda=\mu)\\[2pt]\dfrac2{\lvert\lambda-\mu\rvert T}&(\lambda\ne\mu)\end{cases}
$$
である。ここで $\delta_{\lambda\mu}$ は $\lambda=\mu$ なら $1$、そうでなければ $0$ である。とくに $T\to\infty$ で、左辺の平均は $a$ について一様に $\delta_{\lambda\mu}$ に収束する。
$\lambda=\mu$ なら被積分関数は $1$ で、平均はちょうど $1$ である。$\lambda\ne\mu$ なら、lem-tro-integral を $\kappa=\lambda-\mu$ で使うと積分の絶対値は $\frac2{\lvert\kappa\rvert}$ 以下なので、$T$ で割って主張を得る。右辺は $a$ によらないので、収束は $a$ について一様である。$\square$
有限の区間での直交性(thm-tro-characterization)では、直交する周波数の組が区間の長さで決まる格子 $\frac{2\pi}{b-a}\mathbb{Z}$ の中に限られた。平均をとると、その制限がなくなり、$\{e^{i\lambda x}\}_{\lambda\in\mathbb{R}}$ という数えられないほど多くの関数がすべて互いに直交する。
$\lambda_1,\dots,\lambda_N$ を相異なる実数、$c_1,\dots,c_N$ を複素数とし、$p(x):=\sum_{k=1}^Nc_ke^{i\lambda_kx}$ とおく。$a$ について一様に次が成り立つ。
1:$p(x)e^{-i\lambda x}=\sum_jc_je^{i\lambda_jx}\overline{e^{i\lambda x}}$ なので、積分の線形性と thm-tro-mean から極限は $\sum_jc_j\delta_{\lambda_j\lambda}$ であり、これは主張の値である。2:$\lvert p\rvert^2=p\overline p=\sum_{j,k}c_j\overline{c_k}\,e^{i\lambda_jx}\overline{e^{i\lambda_kx}}$ で、thm-tro-mean から $j\ne k$ の項の平均は $0$ に、$j=k$ の項の平均は $\lvert c_k\rvert^2$ になる。3:2 の左辺が $0$ になる。$\square$
$p(x)=\sin x+\sin\sqrt2\,x=\frac1{2i}\bigl(e^{ix}-e^{-ix}+e^{i\sqrt2x}-e^{-i\sqrt2x}\bigr)$ は 4 つの周波数 $\pm1$、$\pm\sqrt2$ をもち、係数の絶対値はどれも $\frac12$ である。cor-tro-generalized の 2 から $\frac1T\int_0^T\lvert p\rvert^2\to4\cdot\frac14=1$ であり、1 から $\frac1T\int_0^Tp(x)e^{-i\sqrt2x}\,dx\to\frac1{2i}$ である。$p$ は周期関数でない(周期関数の和と基本周期)が、平均を通せば周期関数の Fourier 係数と同じように係数が取り出せる。このような関数を一様に近似できる関数のクラスが 概周期関数 である。
積分の代わりに、1 周期を $N$ 等分した点での値の平均をとっても直交性が成り立つ。
$N\ge1$ と整数 $m,n$ について、$x_k:=\frac{2\pi k}N$($k=0,1,\dots,N-1$)とおくと
$$
\frac1N\sum_{k=0}^{N-1}e^{imx_k}\,\overline{e^{inx_k}}=\begin{cases}1&(m-n\text{ が }N\text{ で割り切れる})\\0&(\text{それ以外})\end{cases}
$$
である。したがって、$\lvert n\rvert\le N-1$ の範囲の三角多項式 $p(x)=\sum_{\lvert n\rvert\le N-1}c_ne^{inx}$ について
$$
\frac1N\sum_{k=0}^{N-1}p(x_k)=c_0=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}p(x)\,dx
$$
が成り立つ。
$\zeta:=e^{2\pi i(m-n)/N}$ とおくと、左辺は $\frac1N\sum_{k=0}^{N-1}\zeta^k$ である。$N$ が $m-n$ を割り切るなら $\zeta=1$ で値は $1$ である。そうでなければ $\zeta\ne1$、$\zeta^N=e^{2\pi i(m-n)}=1$ なので、等比数列の和の公式から $\sum_{k=0}^{N-1}\zeta^k=\frac{\zeta^N-1}{\zeta-1}=0$ である。後半では、$\frac1N\sum_kp(x_k)=\sum_nc_n\cdot\frac1N\sum_ke^{inx_k}$ で、$\lvert n\rvert\le N-1$ のうち $N$ で割り切れるのは $n=0$ だけなので値は $c_0$ になる。$\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}p=c_0$ は thm-tro-characterization による。$\square$
$\cos^2x=\frac12+\frac14(e^{2ix}+e^{-2ix})$ について、$N=3$ なら点 $0,\frac{2\pi}3,\frac{4\pi}3$ での平均は $\frac13\bigl(1+\frac14+\frac14\bigr)=\frac12$ で、積分の平均 $\frac12$ と一致する。$N=2$ では点 $0,\pi$ での平均が $\frac12(1+1)=1$ になり一致しない。周波数 $\pm2$ が $N=2$ で割り切れ、周波数 $0$ と区別できなくなるからである。有限個の値に対するこの直交性から 離散Fourier変換と反転公式 が作られる。
3 種類の直交性(1 周期での積分、実数直線の上の平均、等間隔の点での和)は、同じ理由で成り立つ。どれも「平行移動しても値の変わらない平均」$A$ で、$e_\kappa(x+t)=e^{i\kappa t}e_\kappa(x)$ となる関数 $e_\kappa$ にそれを使うと、$A(e_\kappa)=A\bigl(e_\kappa(\cdot+t)\bigr)=e^{i\kappa t}A(e_\kappa)$ となる。$e^{i\kappa t}\ne1$ となるずらし幅 $t$ が許されるなら $A(e_\kappa)=0$ である。1 周期の積分ではずらし幅は任意の実数、等間隔の点での和ではずらし幅は $\frac{2\pi}N$ の整数倍に限られる。後者で $e^{i\kappa t}=1$ がすべての許されるずらし幅で成り立つのが「$N$ が周波数を割り切る」場合である。有限アーベル群の上の同じ議論が 巡回群の指標と直交関係 の定理「指標の直交関係」の証明である。
直交性だけでは、関数を三角関数で表しきれるかどうかは分からない。たとえば $\{e^{2inx}\}_{n\in\mathbb{Z}}$ も $[-\pi,\pi]$ で直交するが、$e^{ix}$ はそのすべてと直交する(thm-tro-characterization、周波数の差は奇数)ので、$e^{ix}$ はこの系では表せない。系 $\{e^{inx}\}_{n\in\mathbb{Z}}$ についてはこのようなことは起こらず、Fourier 係数がすべて $0$ の連続な周期関数は $0$ に限る(無限次元のピタゴラスの定理 の系「Fourier 係数による一意性」、Parsevalの等式。この記事では証明しない)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 区間の長さと周波数の差の積が $2\pi$ の整数倍 | $[0,\pi]$ 上の $e^{ix}$ と $e^{2ix}$ | 直交(内積は $-2i$) |
| 半周期の区間で同じ種類(正弦どうし・余弦どうし) | $[0,\pi]$ 上の $\sin x$ と $\cos2x$ | 直交(積分は $-\frac23$) |
| 点の個数 $N$ が周波数の差を割り切らない | $N=2$ と $\cos^2x$ | 等間隔の点での平均が積分の平均に等しいこと |
| 系が足りている(周波数が $\mathbb{Z}$ 全体) | $\{e^{2inx}\}_{n\in\mathbb{Z}}$ と $e^{ix}$ | 係数が $0$ なら関数が $0$ であること |
各行の計算は、1 行目が thm-tro-characterization のあとの段落、2 行目が thm-tro-half のあとの段落、3 行目が prop-tro-discrete のあとの段落、4 行目が直前の節にある。
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