四面体の成立条件(existence of a tetrahedron with given edges)とは、6 つの正の数が四面体の 6 本の辺の長さになるための条件である。面 $ABC$ の 3 辺 $a,b,c$ が三角形の成立条件を満たすとき、残りの 3 本 $AD=p$、$BD=q$、$CD=r$ で四面体ができることは、辺の長さの 2 乗を並べた 3 次の行列式 $\det T$(四面体があれば体積 $V$ について $288V^2$ に等しい)が正であることと同値である。$\det T=0$ なら $D$ は平面 $ABC$ の上にだけあり、$\det T<0$ なら $D$ はない。証明では $D$ の座標を求め、高さの 2 乗 $w$ について $\det T=32S^2w$($S$ は面 $ABC$ の面積)を示す。4 つの面がどれも三角形になるだけでは足りない。
前提知識: 三角形の成立条件, Heronの公式とCayley–Menger行列式, 空間座標と球面の方程式, 四面体の体積と行列式
3 本の棒で三角形が作れるのは、どの棒も残りの 2 本の長さの和より短いときである(三角形の成立条件)。では、6 本の棒で四面体(三角錐)を組むには、どんな条件が要るだろうか。
四面体の 4 つの面はどれも三角形なので、4 つの面のそれぞれで三角形の成立条件が成り立つことは必要である。これで十分かどうかを、座標で確かめてみる。
1 辺 $1$ の正三角形 $ABC$ を平面 $z=0$ に置き、$A(0,0,0)$、$B(1,0,0)$、$C\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2,0\right)$ とする。$AD=BD=CD=t$($t>0$)となる点 $D(x,y,z)$ を探す。3 つの条件を 2 乗して書くと
$$
x^2+y^2+z^2=t^2,\qquad (x-1)^2+y^2+z^2=t^2,\qquad \left(x-\frac12\right)^2+\left(y-\frac{\sqrt3}2\right)^2+z^2=t^2
$$
である。
(1) 2 つ目の式から 1 つ目の式を引くと、$x^2$、$y^2$、$z^2$、$t^2$ が消えて $-2x+1=0$ となる。よって $x=\dfrac12$ である。
(2) 3 つ目の式から 1 つ目の式を引くと、$-x+\dfrac14-\sqrt3\,y+\dfrac34=0$、つまり $x+\sqrt3\,y=1$ となる。$x=\dfrac12$ を入れると $\sqrt3\,y=\dfrac12$ で、$y=\dfrac1{2\sqrt3}=\dfrac{\sqrt3}6$ である。点 $O\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}6,0\right)$ は正三角形の中心で、$OA^2=\dfrac14+\dfrac3{36}=\dfrac13$ である。
(3) 1 つ目の式に $x$、$y$ を戻すと
$$
z^2=t^2-x^2-y^2=t^2-\frac13
$$
である。
$t=1$ なら $z^2=\dfrac23$ で、$z=\pm\sqrt{\dfrac23}$ として $D$ が作れる。これは 1 辺 $1$ の正四面体である。
$t=\dfrac{11}{20}=0.55$ なら
$$
z^2=\frac{121}{400}-\frac13=\frac{363-400}{1200}=-\frac{37}{1200}<0
$$
で、$z^2$ が負になる実数 $z$ はない。つまり $D$ は作れない。ところが、4 つの面の辺の長さは $1,1,1$ と $0.55,0.55,1$ で、$0.55+0.55=1.1>1$ なので、どの面も三角形としては作れる。
ex-etr-start の (1)(2) で、$D$ の真下の点は中心 $O$ に決まった。$D$ が作れるには、斜めの辺の長さ $t$ が $OA=\dfrac1{\sqrt3}\approx0.577$ より長くなければならない。$t=0.55$ はわずかに足りない。4 つの面を 1 枚ずつ見ても、この「足りなさ」は見えない。
t = 1 のとき。半径 t の 3 つの円は中心 O を囲み、D は O の真上の高さ √(2/3) にある
t = 0.55 のとき。3 つの円は 2 つずつ交わるが、中心 O は円の外にあり、D の置き場所がない
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 3 つの球面の式を引き算して $x$、$y$ を求める | 1 次方程式 2 本と $z^2$ の式 | 距離の表から点の配置を作る |
| $z^2=t^2-\dfrac13$ の符号 | $\det T=32S^2z^2$(lem-etr-gram) | Gram 行列式・Cayley–Menger 行列式の符号 |
| 2 枚の三角形を蝶番のように開く | 残りの 1 辺の範囲(prop-etr-hinge) | 1 つの角を動かしたときの配置の族 |
6 つの正の数 $a,b,c,p,q,r$ について、同じ平面の上にない空間の 4 点 $A$、$B$、$C$、$D$ で
$$
BC=a,\quad CA=b,\quad AB=c,\quad AD=p,\quad BD=q,\quad CD=r
$$
となるものがあるとき、この 6 つの数は(この割り当てで)四面体をなす という。
割り当てでは、$a$ と $p$、$b$ と $q$、$c$ と $r$ が向かい合う辺(共有する頂点のない 2 辺)の長さになる。面 $ABC$ の 3 辺は $a,b,c$、面 $ABD$ は $c,p,q$、面 $ACD$ は $b,p,r$、面 $BCD$ は $a,q,r$ である。
Heronの公式とCayley–Menger行列式 の定理「6 本の辺の長さによる四面体の体積の表示」は、四面体 $ABCD$ の体積 $V$ について、この記事の記号で
$$
T=\begin{pmatrix}2c^2&c^2+b^2-a^2&c^2+p^2-q^2\\ c^2+b^2-a^2&2b^2&b^2+p^2-r^2\\ c^2+p^2-q^2&b^2+p^2-r^2&2p^2\end{pmatrix},\qquad \det T=288V^2
$$
が成り立つことを示している(行列式の定義と計算の規則も同じ記事にある)。右の行列 $T$ は、6 つの数さえあれば、四面体があるかどうかに関係なく作れる。四面体があれば $V>0$ なので、次のことが分かる。
6 つの正の数 $a,b,c,p,q,r$ が四面体をなすならば、$\det T>0$ である。
ex-etr-t の (2) で、$\det T=2(3t^2-1)=6\left(t^2-\dfrac13\right)$ は、ex-etr-start で求めた $z^2=t^2-\dfrac13$ のちょうど $6$ 倍である。この「$\det T$ は $z^2$ の定数倍」という関係が、どんな 6 本の長さでも成り立つことを次の節で示す。すると、面 $ABC$ が三角形になるという条件のもとで、prop-etr-necessary の逆も言える。
ex-etr-start と同じく、面 $ABC$ を平面 $z=0$ に置く。$a,b,c$ が三角形の成立条件($a< b+c$、$b< c+a$、$c< a+b$)を満たすとき、
$$
u=\frac{b^2+c^2-a^2}{2c},\qquad v=\sqrt{b^2-u^2}
$$
とおくと $b^2-u^2>0$ で、$A(0,0,0)$、$B(c,0,0)$、$C(u,v,0)$ は $BC=a$、$CA=b$、$AB=c$ の三角形になる。これは 三角形の成立条件 の命題「3 辺から三角形を作る」と同じ計算である(その命題は $B$ を原点に、$C$ を $x$ 軸の上に置いているが、頂点の名前を付け替えれば同じ式になる)。三角形 $ABC$ の面積は $S=\dfrac12cv$ である。
さらに、残りの 3 本 $p,q,r$ から
$$
x=\frac{c^2+p^2-q^2}{2c},\qquad y=\frac{b^2+p^2-r^2-2ux}{2v},\qquad w=p^2-x^2-y^2
$$
と 3 つの数を定める。$w$ は正にも $0$ にも負にもなりうる。ex-etr-start では $u=\dfrac12$、$v=\dfrac{\sqrt3}2$、$x=\dfrac12$、$y=\dfrac{\sqrt3}6$、$w=t^2-\dfrac13$ である。
A を原点、B を x 軸の上、C を xy 平面の上に置く。D の真下の点は (x, y, 0) で、D の高さの 2 乗が w になる
$a,b,c$ が三角形の成立条件を満たし、$p,q,r$ が正の数のとき、上の記号で
$$
\det T=8c^2v^2w=32S^2w
$$
が成り立つ。
要点:$u,x,y$ の定め方から $T$ の成分はどれも $2\times$($c^2$、$cu$、$cx$、$b^2=u^2+v^2$、$ux+vy$、$p^2=x^2+y^2+w$ のどれか)で、$\det T=8\det G$($G$ は下の行列)である。$G$ の列から別の列の定数倍を引くと、右上の 3 つの成分が $0$ になり、$\det G=c^2v^2w$ が残る。行列式の計算規則(どの行・列でも展開できる、ある列に別の列の定数倍を足しても変わらない、1 つの行を $k$ 倍すると $k$ 倍になる)は Heronの公式とCayley–Menger行列式 の注意「行列式について使う事実」のものを使う。
$$
G=\begin{pmatrix}c^2&cu&cx\\ cu&u^2+v^2&ux+vy\\ cx&ux+vy&x^2+y^2+w\end{pmatrix}\ \longrightarrow\ \begin{pmatrix}c^2&0&0\\ cu&v^2&0\\ cx&vy&w\end{pmatrix}
$$
段 1($T$ を $2$ で割る)。$u$、$x$、$y$ の定め方から $c^2+b^2-a^2=2cu$、$c^2+p^2-q^2=2cx$、$b^2+p^2-r^2=2(ux+vy)$ である(3 つ目は $y$ の式の分母を払うと $2vy=b^2+p^2-r^2-2ux$ となることから)。よって $T$ の成分はすべて、行列 $\begin{pmatrix}c^2&cu&cx\\ cu&b^2&ux+vy\\ cx&ux+vy&p^2\end{pmatrix}$ の成分の $2$ 倍である。3 つの行をそれぞれ $2$ 倍すると $T$ になるので、$\det T=2^3\det G=8\det G$ である。
段 2($b^2$ と $p^2$ を書き直す)。$v$ の定め方から $b^2=u^2+v^2$、$w$ の定め方から $p^2=x^2+y^2+w$ である。これを入れると、上の要点の左の行列 $G$ になる。
段 3(第 2 列と第 3 列から第 1 列を引く)。第 2 列から第 1 列の $\dfrac uc$ 倍を引き、第 3 列から第 1 列の $\dfrac xc$ 倍を引く。第 2 列は上から
$$cu-\frac uc\cdot c^2=0,\qquad u^2+v^2-\frac uc\cdot cu=v^2,\qquad ux+vy-\frac uc\cdot cx=vy$$
となり、第 3 列は上から
$$cx-\frac xc\cdot c^2=0,\qquad ux+vy-\frac xc\cdot cu=vy,\qquad x^2+y^2+w-\frac xc\cdot cx=y^2+w$$
となる。
段 4(第 3 列から第 2 列を引く)。段 3 の後の第 3 列から、段 3 の後の第 2 列の $\dfrac yv$ 倍を引く。第 3 列は上から $0-0=0$、$vy-\dfrac yv\cdot v^2=0$、$y^2+w-\dfrac yv\cdot vy=w$ となる。段 3・段 4 で行列式は変わらないので
$$\det G=\det\begin{pmatrix}c^2&0&0\\ cu&v^2&0\\ cx&vy&w\end{pmatrix}=c^2\det\begin{pmatrix}v^2&0\\ vy&w\end{pmatrix}=c^2v^2w$$
である(第 1 行で展開した)。
段 5(まとめ)。段 1 から $\det T=8c^2v^2w$ である。$S=\dfrac12cv$ から $c^2v^2=4S^2$ なので、$\det T=32S^2w$ である。$\square$
ex-etr-start では $S^2=\dfrac3{16}$ なので $32S^2=6$ で、lem-etr-gram は $\det T=6\left(t^2-\dfrac13\right)$ となり、ex-etr-t の (2) と一致する。
$a,b,c$ が三角形の成立条件を満たし、$p,q,r$ が正の数であるとする。三角形 $ABC$($BC=a$、$CA=b$、$AB=c$)に対し、$AD=p$、$BD=q$、$CD=r$ となる空間の点 $D$ について、次が成り立つ。
(R1) $\det T>0$ $\iff$ 平面 $ABC$ の上にない $D$ がある。このとき $D$ はちょうど 2 つあり、平面 $ABC$ に関して対称の位置にある。
(R1) $\det T=0$ $\iff$ $D$ は平面 $ABC$ の上にだけある。このとき $D$ はちょうど 1 つである。
(R1) $\det T<0$ $\iff$ $D$ は 1 つもない。
とくに、6 つの数 $a,b,c,p,q,r$ が四面体をなすことと、$\det T>0$ は同値である。
方針:ex-etr-start と同じく、3 つの距離の条件を引き算して、$D$ の $x$ 座標・$y$ 座標と $z$ 座標の 2 乗を求める。$z^2$ は lem-etr-gram の $w$ になるので、その符号を $\det T$ の符号で読む。
段 1(条件を式にする)。$A(0,0,0)$、$B(c,0,0)$、$C(u,v,0)$ とし、$D(X,Y,Z)$ とする。$AD=p$、$BD=q$、$CD=r$ は、2 乗した
$$
X^2+Y^2+Z^2=p^2\quad\cdots①,\qquad (X-c)^2+Y^2+Z^2=q^2\quad\cdots②,\qquad (X-u)^2+(Y-v)^2+Z^2=r^2\quad\cdots③
$$
と同値である(長さは $0$ 以上なので、2 乗しても同値)。$D$ は $A$、$B$、$C$ を中心とする 3 つの球面の共有点である(空間座標と球面の方程式)。
段 2($X$ を求める)。② から ① を引くと $-2cX+c^2=q^2-p^2$ で、$X=\dfrac{c^2+p^2-q^2}{2c}=x$ である。逆に ① と $X=x$ から ② が出る(引き算を逆にたどる)。
段 3($Y$ を求める)。③ から ① を引くと $-2uX-2vY+u^2+v^2=r^2-p^2$ である。$u^2+v^2=b^2$ を使って整理すると $2uX+2vY=b^2+p^2-r^2$ である。$X=x$ を入れて $v>0$ で割ると $Y=\dfrac{b^2+p^2-r^2-2ux}{2v}=y$ である。逆に ① と $X=x$、$Y=y$ から ③ が出る。
段 4($Z$ を求める)。① に $X=x$、$Y=y$ を入れると $Z^2=p^2-x^2-y^2=w$ である。段 2〜段 4 から、①②③ は「$X=x$、$Y=y$、$Z^2=w$」と同値である。
段 5(場合分け)。$w>0$ なら $Z=\pm\sqrt w$ で、$D$ は $(x,y,\sqrt w)$ と $(x,y,-\sqrt w)$ の 2 つである。どちらも平面 $z=0$ の上になく、平面 $z=0$ に関して対称である。$w=0$ なら $D=(x,y,0)$ の 1 つだけで、平面の上にある。$w<0$ なら $Z^2=w$ となる実数 $Z$ はなく、$D$ はない。
段 6($w$ の符号を $\det T$ の符号に直す)。三角形 $ABC$ の面積 $S$ は正なので、lem-etr-gram の $\det T=32S^2w$ から、$\det T$ と $w$ は同じ符号をもつ。段 5 の 3 つの場合は、それぞれ $\det T>0$、$\det T=0$、$\det T<0$ の場合である。3 つの場合はどれか 1 つだけが起こるので、段 5 の結論から逆向きの矢印も成り立つ。$\square$
thm-etr-main の条件 (i) の場合、$D$ の高さは $\lvert Z\rvert=\sqrt w$ で、四面体の体積は $V=\dfrac13S\sqrt w$ である。lem-etr-gram から $V^2=\dfrac19S^2w=\dfrac{\det T}{288}$ となり、Heronの公式とCayley–Menger行列式 の定理とも合っている。
$c=AB=2$、$b=CA=3$、$a=BC=\sqrt{13}$、$p=AD=4$、$q=BD=\sqrt{20}$、$r=CD=5$ とする。面 $ABC$ は $2+3>\sqrt{13}\approx3.61$ などを満たす三角形である。
$u=\dfrac{9+4-13}{4}=0$、$v=\sqrt{9-0}=3$ で、$C(0,3,0)$ である。$x=\dfrac{4+16-20}{4}=0$、$y=\dfrac{9+16-25-0}{6}=0$、$w=16-0-0=16$ なので、$D=(0,0,\pm4)$ である。$A$ で 3 本の辺 $AB$、$AC$、$AD$ が互いに直交する四面体ができた。
$T$ は
$$
T=\begin{pmatrix}8&4+9-13&4+16-20\\ 4+9-13&18&9+16-25\\ 4+16-20&9+16-25&32\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}8&0&0\\ 0&18&0\\ 0&0&32\end{pmatrix}
$$
で、$\det T=8\cdot18\cdot32=4608$ である。lem-etr-gram の右辺も $8c^2v^2w=8\cdot4\cdot9\cdot16=4608$ で一致する。$V^2=\dfrac{4608}{288}=16$、$V=4$ で、$\dfrac16\cdot2\cdot3\cdot4=4$ とも一致する。
$c=AB=4$、$b=CA=\sqrt{26}$、$a=BC=\sqrt2$、$p=AD=\sqrt{14}$、$q=BD=\sqrt{22}$、$r=CD=\sqrt{26}$ とする。$b^2=26>a^2+c^2=18$ なので、面 $ABC$ は $B$ の角が鈍角の三角形である。$u=\dfrac{26+16-2}{8}=5$、$v=\sqrt{26-25}=1$ で $C(5,1,0)$、$x=\dfrac{16+14-22}{8}=1$、$y=\dfrac{26+14-26-10}{2}=2$、$w=14-1-4=9$ なので、$D=(1,2,\pm3)$ である。$\det T=8c^2v^2w=8\cdot16\cdot1\cdot9=1152$ で、$T$ を直接計算しても $1152$ になる。$V^2=\dfrac{1152}{288}=4$、$V=2$ である。
thm-etr-main は面 $ABC$ を特別扱いしているが、どの面を使ってもよい。
6 つの正の数 $a,b,c,p,q,r$ について、次が成り立つ。
(R1) 4 つの面のどれか 1 つが三角形の成立条件を満たし、かつ $\det T>0$ ならば、6 つの数は四面体をなす。逆に、四面体をなすならば、4 つの面はどれも三角形の成立条件を満たし、$\det T>0$ である。
(R1) $\det T>0$ ならば、4 つの面は「どれも三角形の成立条件を満たす」か「どれも満たさない」かのどちらかである。
(R1) 6 つの数が四面体をなすとき、その四面体は合同を除いてただ 1 つに決まる。
要点:$\det T$ は 4 つの頂点を平等に扱う 5 次の行列式に等しいので、どの面を $ABC$ の位置に置いても値が変わらない。そこで三角形の成立条件を満たす面を $ABC$ として thm-etr-main を使えば (i) と (ii) が出る。(iii) は、面 $ABC$ を座標の決まった位置に置くと $D$ が $(x,y,\pm\sqrt w)$ に限られることから出る。
段 1($\det T$ は面の選び方によらない)。Heronの公式とCayley–Menger行列式 の系「5 次の Cayley–Menger 行列式による体積の表示」の証明は、行と列の引き算と展開だけで $\det T$ が 5 次の行列式に等しいことを示している。この計算は 6 つの数が四面体の辺かどうかを使わないので、どんな正の数でも $\det T$ は 5 次の行列式に等しい。5 次の行列式では、2 つの頂点の名前を入れ替えると、対応する 2 つの行と 2 つの列が入れ替わるだけである。行の入れ替えと列の入れ替えで行列式は $-1$ 倍ずつになり、合わせて $(-1)^2=1$ 倍なので、値は変わらない。よって、頂点の名前を付け替えて別の面を $ABC$ の位置に置いても、$\det T$ の値は変わらない。
段 2(条件 (i))。三角形の成立条件を満たす面の頂点を $A$、$B$、$C$ と名付け直す。段 1 により $\det T>0$ のままなので、thm-etr-main により四面体ができる。逆に四面体があれば、4 つの面は実際の三角形なので三角形の成立条件を満たし、prop-etr-necessary により $\det T>0$ である。
段 3(条件 (ii))。$\det T>0$ で、1 つの面でも三角形の成立条件を満たせば、段 2 により四面体ができ、4 つの面はどれも三角形の成立条件を満たす。そうでなければ、どの面も満たさない。
段 4(条件 (iii))。2 つの四面体 $ABCD$、$A'B'C'D'$ の 6 本の辺の長さが同じとする。空間の合同変換(平行移動・回転・折り返しの組合せ)で、$A$、$B$、$C$ をどちらも $A(0,0,0)$、$B(c,0,0)$、$C(u,v,0)$ に移せる。prf-etr-main の段 4 により、$D$ と $D'$ は $(x,y,\pm\sqrt w)$ のどちらかで、2 つの点は平面 $z=0$ に関する折り返しで移り合う。$\square$
条件 (iii) は、三角形の「3 辺が等しければ合同」の空間版である。条件 (ii) の「どれも満たさない」場合が実際に起こることは、ex-etr-cx-det で見る。
2 枚の三角形の板 $ABC$ と $ABD$ を辺 $AB$ でつなぎ、蝶番のように開いたり閉じたりする。$C$ と $D$ の距離 $CD$ は開き方で変わる。四面体ができるのは、$CD$ がどんな範囲にあるときだろうか。
$a,b,c$ と $c,p,q$ がどちらも三角形の成立条件を満たすとする。平面の上に、辺 $AB$ を共有する 2 つの三角形 $ABC$($BC=a$、$CA=b$)と $ABD$($AD=p$、$BD=q$)を置く。$D$ が直線 $AB$ に関して $C$ と同じ側にあるときの $CD$ を $r_0$、反対側にあるときの $CD$ を $r_1$ とする。このとき $r_0< r_1$ で、正の数 $r$ について次が成り立つ。
(R1) 6 つの数 $a,b,c,p,q,r$ が四面体をなす $\iff$ $r_0< r< r_1$
(R1) $\det T=2c^2\left(r^2-r_0^{\,2}\right)\left(r_1^{\,2}-r^2\right)$
方針:thm-etr-main の座標で、$D$ は直線 $AB$($x$ 軸)を軸とする円の上を動く。回す角を $\theta$ とすると、$CD^2$ は $\cos\theta$ の 1 次式になる。
段 1($D$ の動く円)。$A(0,0,0)$、$B(c,0,0)$、$C(u,v,0)$($v>0$)とする。$AD=p$、$BD=q$ となる点 $D(X,Y,Z)$ は、prf-etr-main の段 2 により $X=x$ を満たし、① から $Y^2+Z^2=p^2-x^2$ を満たす。$c,p,q$ は三角形の成立条件を満たすので、三角形 $ABC$ で $u$ から $v$ を作ったのと同じ計算(辺 $b,a$ を $p,q$ に替える)により $p^2-x^2>0$ である。$s=\sqrt{p^2-x^2}$ とおく($s$ は三角形 $ABD$ の、辺 $AB$ を底辺とする高さ)。よって $D$ は、点 $(x,0,0)$ を中心とし $x$ 軸に垂直な平面の上の、半径 $s$ の円の上にあり、
$$
D=(x,\ s\cos\theta,\ s\sin\theta)\qquad(0\le\theta<2\pi)
$$
と書ける。$\theta$ は、2 枚の板のなす角(二面角。空間図形の計量)である。
段 2($CD^2$ を計算する)。
$$
CD^2=(x-u)^2+(s\cos\theta-v)^2+s^2\sin^2\theta=(x-u)^2+v^2+s^2-2vs\cos\theta
$$
である($\cos^2\theta+\sin^2\theta=1$ を使った)。$K=(x-u)^2+v^2+s^2$ とおくと $CD^2=K-2vs\cos\theta$ である。
段 3(両端)。$\theta=0$ は $D$ が平面 $z=0$ の上で $C$ と同じ側($y>0$)にある場合で、$r_0^{\,2}=K-2vs$ である。$\theta=\pi$ は反対側の場合で、$r_1^{\,2}=K+2vs$ である。$v>0$、$s>0$ なので $r_0^{\,2}< r_1^{\,2}$、よって $r_0< r_1$ である。
段 4(条件 (i))。$D$ が平面 $z=0$ の上にないことは $\sin\theta\ne0$、つまり $\theta\ne0,\pi$ と同値で、これは $-1<\cos\theta<1$ と同値である。段 2 の式で $\cos\theta$ が $-1<\cos\theta<1$ を動くと、$CD^2$ は $K-2vs$ と $K+2vs$ の間の値をすべてとり、両端の値はとらない。よって、平面の上にない $D$ で $CD=r$ となるものがあることは、$r_0^{\,2}< r^2< r_1^{\,2}$、つまり $r_0< r< r_1$ と同値である。
段 5(条件 (ii))。lem-etr-gram の $w$ は、$CD=r$ となる $\theta$ があるときは $Z^2=s^2\sin^2\theta$ に等しい。一般の $r$ でも、段 2 で $\cos\theta$ の代わりに $k=\dfrac{K-r^2}{2vs}$ とおくと、$w=s^2(1-k^2)$ が式の計算として成り立つ。これを変形すると
$$
w=\frac{(2vs)^2-(K-r^2)^2}{4v^2}=\frac{\bigl(r^2-(K-2vs)\bigr)\bigl((K+2vs)-r^2\bigr)}{4v^2}=\frac{\left(r^2-r_0^{\,2}\right)\left(r_1^{\,2}-r^2\right)}{4v^2}
$$
である(2 乗の差を因数分解した)。lem-etr-gram から $\det T=8c^2v^2w=2c^2\left(r^2-r_0^{\,2}\right)\left(r_1^{\,2}-r^2\right)$ である。$\square$
lem-etr-gram の $y$ の式に、$b^2=u^2+v^2$、$p^2=x^2+s^2$、$r^2=K-2vsk$ を入れる。$b^2+p^2-r^2-2ux=u^2+v^2+x^2+s^2-(x-u)^2-v^2-s^2+2vsk-2ux=2vsk$ なので $y=\dfrac{2vsk}{2v}=sk$ である。よって $w=p^2-x^2-y^2=s^2-s^2k^2=s^2(1-k^2)$ である。$r$ が $r_0< r< r_1$ の範囲にないときも、この計算はそのまま成り立つ。
条件 (ii) の右辺は $r^2$ の 2 次式で、$r^2$ が $r_0^{\,2}$ と $r_1^{\,2}$ の間にあるときだけ正になる。条件 (i) と thm-etr-main が同じことを言っているのが、式でも見える。
1 辺 $2$ の正三角形 $ABC$ と $ABD$ を辺 $AB$ でつなぐ($a=b=c=p=q=2$)。$u=x=1$、$v=s=\sqrt3$ である。閉じたとき($\theta=0$)は $D=C$ で $r_0=0$、平らに開いたとき($\theta=\pi$)は菱形になり $r_1=2\sqrt3$ である。prop-etr-hinge により、四面体ができるのは $0< r<2\sqrt3$ のときで、
$$
\det T=2\cdot4\cdot(r^2-0)(12-r^2)=8r^2(12-r^2)
$$
である。$K=0+3+3=6$、$2vs=6$ なので $\cos\theta=\dfrac{6-r^2}6$ である。
(1) $r=2$:正四面体である。$\det T=8\cdot4\cdot8=256$、$V^2=\dfrac{256}{288}=\dfrac89$ で、1 辺 $2$ の正四面体の体積 $\dfrac{2^3}{6\sqrt2}=\dfrac{2\sqrt2}3$ の 2 乗と一致する。$\cos\theta=\dfrac13$ は正四面体の二面角の余弦である。
(2) $r=\sqrt6$:$\cos\theta=0$ で、2 枚の板は直角に開いている。$\det T=8\cdot6\cdot6=288$、$V=1$ で、これが最大である($V^2=\dfrac{r^2(12-r^2)}{36}$ は $r^2=6$ で最大)。
(3) $r=2\sqrt2$:$\cos\theta=-\dfrac13$ で、$\det T=8\cdot8\cdot4=256$ は (1) と同じ値である。$\theta$ と $\pi-\theta$ で、$D$ の高さ $\sqrt3\,\lvert\sin\theta\rvert$ が同じになるからである。
1 辺 2 の正三角形 ABC と ABD を辺 AB でつなぎ、D を AB のまわりに回す。θ は 2 枚の板のなす角
r を 0 から 2√3 まで動かしたときの det T = 8r²(12 − r²) のグラフ。両端で 0 になり、その間で正
図 5 のグラフは $0< r<2\sqrt3$ で正、両端で $0$ である。$r>2\sqrt3$ では負になり、四面体はできない。$r>2\sqrt3$ でも 4 つの面のうち $ACD$、$BCD$ は $r<2+2=4$ なら三角形として作れるので、たとえば $r=3.6$ は「どの面も三角形なのに四面体ができない」例である。
thm-etr-main と cor-etr-six の条件を 1 つずつ外すと、何が崩れるかを並べる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 面 $ABC$ が三角形の成立条件を満たす | 6 本が $1,1,3,3,1,5$(ex-etr-cx-det) | $\det T>0$ なら四面体ができる |
| $\det T>0$(4 つの面の条件だけにする) | ex-etr-start の $t=0.55$ | 4 つの面がどれも三角形なら四面体ができる |
| $\det T>0$ を $\det T\ge0$ に弱める | ex-etr-hinge の $r=2\sqrt3$(ex-etr-cx-flat) | 4 点が同じ平面の上にない |
$AB=1$、$AC=1$、$AD=3$、$BC=3$、$BD=1$、$CD=5$ とする($a=3$、$b=1$、$c=1$、$p=3$、$q=1$、$r=5$)。
$$
T=\begin{pmatrix}2&1+1-9&1+9-1\\ 1+1-9&2&1+9-25\\ 1+9-1&1+9-25&18\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}2&-7&9\\ -7&2&-15\\ 9&-15&18\end{pmatrix}
$$
で、第 1 行で展開すると
$$
\det T=2(36-225)+7(-126+135)+9(105-18)=-378+63+783=468>0
$$
である。ところが 4 つの面の辺は、$ABC$ が $1,1,3$、$ABD$ が $1,3,1$、$ACD$ が $1,3,5$、$BCD$ が $3,1,5$ で、$1+1<3$、$1+3<5$ などにより、どの面も三角形の成立条件を満たさない。4 つの面が作れないので、四面体はない。
満たさない条件:面 $ABC$ が三角形になること。lem-etr-gram は $v=\sqrt{b^2-u^2}$ を使うが、ここでは $u=\dfrac{1+1-9}{2}=-\dfrac72$、$b^2-u^2=1-\dfrac{49}4<0$ で、$v$ が作れない。崩れる主張:$\det T>0$ なら四面体ができること。これは cor-etr-six の条件 (ii) の「どれも満たさない」場合である。
ex-etr-hinge で $r=2\sqrt3$ とすると、$\det T=8\cdot12\cdot0=0$ である。thm-etr-main の条件 (ii) により $D$ は平面 $ABC$ の上にだけあり、$D$ は直線 $AB$ に関して $C$ と反対側にある。$ACBD$ は 1 辺 $2$ の菱形で、対角線 $CD$ の長さが $2\sqrt3$ である。4 点が同じ平面の上にあるので、四面体にはならない。
満たさない条件:$\det T>0$。崩れる主張:4 点が同じ平面の上にないこと。4 つの面はどれも辺 $2,2,2$ または $2,2,2\sqrt3$ で、$2\sqrt3<4$ なので三角形の成立条件は満たしている。長方形の 4 頂点で $\det T=0$ となる例は、Heronの公式とCayley–Menger行列式 の反例「4 点が同じ平面の上にある」にある。
Heronの公式とCayley–Menger行列式 の反例「どの面も三角形なのに四面体ができない」は、辺 $2,2,3$ の三角形 4 枚で $\det T=-324<0$ となる例である。ex-etr-start の $t=0.55$ と同じく、thm-etr-main の条件 (iii) の場合にあたる。
thm-etr-main は、「4 つの点の間の 6 つの距離の表が与えられたとき、その表を実現する点の配置が空間にあるか」という問いに答えている。点どうしの距離だけを使って図形を調べる分野を 距離幾何 という。Heronの公式とCayley–Menger行列式 の注意「距離の表から点の配置へ」は、この問いの三角形の場合と、面の条件だけでは足りないことを述べている。
prf-etr-gram の行列 $G$ は、ベクトル $\overrightarrow{AB}$、$\overrightarrow{AC}$、$\overrightarrow{AD}$ の内積を並べた行列(Gram 行列)である。$D$ があるとき、$\overrightarrow{AB}=(c,0,0)$、$\overrightarrow{AC}=(u,v,0)$、$\overrightarrow{AD}=(x,y,Z)$ で、$G$ の $(2,3)$ 成分 $ux+vy$ は $\overrightarrow{AC}\cdot\overrightarrow{AD}$ そのものである。段 3・段 4 の列の引き算は、$\overrightarrow{AD}$ から平面 $ABC$ の中の部分を取り除いて、平面に垂直な部分 $(0,0,Z)$ だけを残す操作にあたる(Heronの公式とCayley–Menger行列式 の補題「3 次の Gram 行列式と高さ」の証明と同じ考え方)。この記事の要点は、$D$ がないときにも $G$ と $w$ が式として定まり、$\det G=c^2v^2w$ が式の等式として成り立つことである。
1 つ下の次元では、三角形の成立条件 の命題「3 辺から三角形を作る」が同じ形をしている。2 点 $B$、$C$ を $x$ 軸に置き、3 つ目の点の $y$ 座標の 2 乗を計算すると、$(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)$ の符号で三角形ができるかが決まった。これは 2 次の Gram 行列式(面積の 2 乗の $4$ 倍)の符号である。
同じ段取りを繰り返すと、$n$ 次元の空間に $n+1$ 個の点を置く問題でも、1 つ前の $n$ 個の点が $n-1$ 次元の単体をなすとき、最後の点の「高さの 2 乗」は、$n$ 次の Gram 行列式を $n-1$ 次の Gram 行列式で割ったものになる。この一般の形は、この記事では証明しない。Cayley–Menger 行列式で四面体の体積の 2 乗を表す式は Wei26 にも載っている。
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