一般角と弧度法(general angles and radians)とは、回転の量として $360^\circ$ を超える角や負の角も考える角(一般角)と、角を半径に対する弧の長さの比で測る方法(弧度法。$180^\circ=\pi$ ラジアン)である。$\theta^\circ$ と $\psi^\circ$ の動径が同じであることは $\theta-\psi$ が $360$ の整数倍であることと同値で、どの一般角も $0^\circ$ 以上 $360^\circ$ 未満の角にただ 1 通りに戻せる。弧度法では半径 $r$、中心角 $\theta$ の扇形の弧の長さは $r\theta$、面積は $\frac12r^2\theta$ で、$\sin x$ の導関数は $\cos x$ になる(度数法では定数 $\frac{\pi}{180}$ が付く)。
前提知識: 三角比と鈍角への拡張, 円周率, 整数の割り算と互除法
三角比と鈍角への拡張 では、角 $\theta$ を $0^\circ\le\theta\le180^\circ$ の範囲で考えた。しかし、時計の針や車輪のように「回る」ものを考えると、$180^\circ$ を超える角、$360^\circ$ を超える角、逆向きに回る角が自然に現れる。また、角を「度」で測るのは、1 周を $360$ に分けるという約束によるもので、数学的な理由があるわけではない。高校の数学 II では、次の 2 つを学ぶ。
長針は 60 分で 1 周、つまり $360^\circ$ 回るので、1 分に $6^\circ$ 回る。正午から 1 時 15 分までの 75 分間に、長針は時計回りに
$$
6^\circ\times75=450^\circ
$$
回る。$450^\circ=360^\circ+90^\circ$ なので、長針は 1 周したうえでさらに $90^\circ$ 回り、「15 分」の位置を指す。$450^\circ$ 回った針と $90^\circ$ 回った針は、同じ位置にある。
原点のまわりに、$x$ 軸の正の部分を回す。反時計回りに $30^\circ$ 回しても、反時計回りに $390^\circ$(1 周と $30^\circ$)回しても、時計回りに $330^\circ$ 回しても、半直線は同じ位置で止まる(図1)。時計回りの回転を負の角で表すと、この 3 つは $30^\circ$、$390^\circ$、$-330^\circ$ であり
$$
390^\circ-30^\circ=360^\circ,\qquad -330^\circ-30^\circ=-360^\circ
$$
と、差が $360^\circ$ の整数倍になっている。
反時計回りに 30°、1 周と 30°(390°)、時計回りに 330°(−330°)回した動径。回り方は違うが、止まる位置は同じであることを見る図。
半径 $r$ の円で、長さがちょうど $r$ の弧に対する中心角を $1$ ラジアンという(後の def-gar-radian)。円周の長さは $2\pi r$ なので、1 周 $360^\circ$ は $2\pi$ ラジアンにあたる。よって
$$
1\text{ ラジアン}=\frac{360^\circ}{2\pi}=\frac{180^\circ}{\pi}=57.2957\ldots^\circ
$$
であり、およそ $57.3^\circ$ である。$\pi=3.14159\ldots$ を使って $180\mathbin{÷}3.14159=57.29\ldots$ と計算できる。
3 つの例から、次の問いが出てくる。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| $\theta+360^\circ\times n$ は同じ動径 | 差が $360^\circ$ の整数倍 ⇔ 同じ動径 | thm-gar-same-ray |
| $1000^\circ=280^\circ+360^\circ\times2$ | 割り算の商と余り | lem-gar-reduction |
| 弧長 $r\theta$、面積 $\frac12r^2\theta$ | 中心角に比例する量の比例定数 | thm-gar-sector |
| $(\sin x)'=\cos x$ は弧度法のとき | 度数法では $\frac{\pi}{180}$ が付く | prop-gar-degree-derivative |
| 角の足し算 | $\mathbb{R}/2\pi\mathbb{Z}$ の足し算 | prop-gar-addition-well-defined |
平面上に点 $O$ と、$O$ を端点とする半直線 $OX$ を固定する。$OX$ を 始線 という。$O$ を端点とする半直線 $OP$ が、始線の位置から $O$ のまわりに回転して止まったとき、$OP$ を 動径 という。回転の向きは、反時計回りを 正の向き、時計回りを 負の向き とする。
正の向きに $\alpha^\circ$ 回ったときの回転の量を $\alpha^\circ$、負の向きに $\alpha^\circ$ 回ったときの回転の量を $-\alpha^\circ$ と表す($\alpha\ge0$)。$360^\circ$ を超える回転も許し、こうして任意の実数 $\theta$ について $\theta^\circ$ という回転の量を考える。これを 一般角 という。
以下、座標平面では $O$ を原点、始線を $x$ 軸の正の部分とする。動径が第 1 象限にあるとき、その角を 第 1 象限の角 といい、第 2〜4 象限も同じようにいう(動径が座標軸の上にあるときは、どの象限の角ともいわない)。
一般角を扱う土台として、次の事実を使う。これは「1 周回ると元の位置に戻る」こと、「1 周より少なく回った位置はすべて違う」こと、「同じ量だけ逆向きに回ると、始線について折り返した位置に着く」ことを述べたもので、この記事では一般角の定義に含まれる約束として証明せずに使う。
どの一般角も、$0^\circ$ 以上 $360^\circ$ 未満の角に「戻せる」。これは、整数の割り算で余りを求めるのと同じ計算である。
どの実数 $\theta$ についても、整数 $n$ と実数 $\alpha$ で
$$
\theta=360n+\alpha,\qquad 0\le\alpha<360
$$
を満たすものが、ただ 1 組存在する。
方針:$n$ として「$\theta\mathbin{÷}360$ を超えない最大の整数」をとると、余り $\alpha$ が $0$ 以上 $360$ 未満になる。一意性は、2 通りの表し方の差を調べて示す。
段 1(存在)。$\frac{\theta}{360}$ 以下の整数のうち最大のものを $n$ とする(ガウス記号 で $n=\bigl[\frac{\theta}{360}\bigr]$ と書く)。$n$ の決め方から
$$
n\le\frac{\theta}{360}< n+1
$$
である。各辺に $360$ を掛けると $360n\le\theta<360n+360$ となり、各辺から $360n$ を引くと $0\le\theta-360n<360$ となる。そこで $\alpha:=\theta-360n$ とおけば、$\theta=360n+\alpha$、$0\le\alpha<360$ である。
段 2(一意性)。$\theta=360n+\alpha=360m+\beta$、$0\le\alpha<360$、$0\le\beta<360$ とする。引き算すると
$$
360(n-m)=\beta-\alpha
$$
である。$0\le\beta<360$ と $-360<-\alpha\le0$ を足すと $-360<\beta-\alpha<360$ なので、$-360<360(n-m)<360$、すなわち $-1< n-m<1$ である。$n-m$ は整数なので $n-m=0$ であり、$n=m$ となる。これを $360(n-m)=\beta-\alpha$ に戻すと $\alpha=\beta$ である。$\square$
lem-gar-reduction の $n=\bigl[\frac{\theta}{360}\bigr]$ と $\alpha=\theta-360n$ を計算する。
実数 $\theta,\psi$ について、次の 2 つは同値である。
方針:lem-gar-reduction で $\theta$、$\psi$ を 1 周の中の角 $\alpha$、$\beta$ に戻し、rem-gar-basic-facts の約束 1・2 で $\alpha$ と $\beta$ を比べる。
段 1(準備)。lem-gar-reduction により $\theta=360n+\alpha$、$\psi=360m+\beta$($n,m$ は整数、$0\le\alpha,\beta<360$)と書ける。rem-gar-basic-facts の 1 により、$\theta^\circ$ の動径は $\alpha^\circ$ の動径と、$\psi^\circ$ の動径は $\beta^\circ$ の動径と同じ位置にある。
段 2(2 ならば 1)。$\theta-\psi=360k$($k$ は整数)とする。$\theta=\psi+360k$ なので、rem-gar-basic-facts の 1 を $k$ 回($k<0$ なら逆向きに $-k$ 回)使うと、$\theta^\circ$ の動径と $\psi^\circ$ の動径は同じ位置にある。
段 3(1 ならば 2)。$\theta^\circ$ と $\psi^\circ$ の動径が同じ位置にあるとする。段 1 から、$\alpha^\circ$ と $\beta^\circ$ の動径も同じ位置にある。もし $\alpha\ne\beta$ なら、rem-gar-basic-facts の 2 により 2 つの動径は違う位置にあるはずなので、矛盾する。よって $\alpha=\beta$ であり
$$
\theta-\psi=(360n+\alpha)-(360m+\beta)=360(n-m)
$$
は $360$ の整数倍である。$\square$
thm-gar-same-ray は、「$360$ で割った余りが等しい」ことと「同じ動径」が同じだと言っている。整数を $n$ で割った余りで分類する 合同式と余りの世界 と同じ形であり、この見方は rem-gar-circle-group で大学の言葉に直す。
角を度で測る代わりに、弧の長さで測る。そのために、円の弧の長さについての次の性質を使う。
次のことは、高校の教科書と同じく、この記事では証明せずに使う(扇形の弧の長さと面積の公式は Abr21 §7.1 にもある)。
半径 $r$ の円で、中心角 $\angle AOB$ に対する弧 $AB$ の長さを $l$ とする。比 $\frac{l}{r}$ を、この角の大きさとする測り方を 弧度法 といい、その単位を ラジアン(rad)という。長さ $r$ の弧に対する中心角が $1$ ラジアンである。
$360^\circ$ に対する弧は円周全体で、長さは $2\pi r$ なので、$360^\circ=2\pi$ ラジアン、すなわち
$$
180^\circ=\pi\text{ ラジアン},\qquad 1^\circ=\frac{\pi}{180}\text{ ラジアン},\qquad 1\text{ ラジアン}=\frac{180^\circ}{\pi}
$$
である。弧度法では、単位の「ラジアン」を省略して $\frac{\pi}{3}$ のように数だけで書くことが多い。一般角も同じ換算で $\theta^\circ=\frac{\pi\theta}{180}$ と弧度法で表す。
比 $\frac lr$ が円の大きさによらないことは、次の thm-gar-sector の 1 から分かる(中心角が同じなら $l$ は $r$ に比例する)。ここでは、まず換算を練習する。
$x^\circ=\frac{\pi x}{180}$ を使う。
| 度 | $30^\circ$ | $45^\circ$ | $60^\circ$ | $90^\circ$ | $120^\circ$ | $135^\circ$ | $150^\circ$ | $180^\circ$ | $270^\circ$ | $360^\circ$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ラジアン | $\frac{\pi}{6}$ | $\frac{\pi}{4}$ | $\frac{\pi}{3}$ | $\frac{\pi}{2}$ | $\frac{2\pi}{3}$ | $\frac{3\pi}{4}$ | $\frac{5\pi}{6}$ | $\pi$ | $\frac{3\pi}{2}$ | $2\pi$ |
たとえば $135^\circ=\frac{135\pi}{180}=\frac{3\pi}{4}$ である。逆向きは $\theta$ ラジアン $=\bigl(\frac{180\theta}{\pi}\bigr)^\circ$ で、$\frac{5\pi}{12}=\bigl(\frac{180}{\pi}\cdot\frac{5\pi}{12}\bigr)^\circ=75^\circ$、$2$ ラジアン $=\bigl(\frac{360}{\pi}\bigr)^\circ=114.59\ldots^\circ$ である。
弧度法では、thm-gar-same-ray は「$\theta$ と $\psi$ の動径が同じ ⇔ $\theta-\psi$ が $2\pi$ の整数倍」となる($360^\circ=2\pi$ だから)。同じ動径の一般角は $\theta+2n\pi$($n$ は整数)と書ける。
半径 $r$、中心角 $\alpha^\circ$($0<\alpha\le360$)の扇形の弧の長さを $l$、面積を $S$ とする。
図2 の左は $1$ ラジアンの中心角、右は中心角 $\theta$ の扇形で、2 の公式を図に書き込んだものである。
左は弧の長さが半径に等しい中心角(1 ラジアン、約 57.3°)。右は中心角 θ の扇形で、弧の長さ rθ と面積 r²θ/2 を示す。
方針:弧の長さについて示す(面積も同じ議論で示せる)。中心角が $360^\circ$ の $\frac mn$ 倍のときは、合同な扇形を並べて直接求める。一般の中心角は、そのような角で上下からはさむ。
以下、半径 $r$ を固定し、中心角 $\alpha^\circ$ の扇形の弧の長さを $f(\alpha)$、比例するはずの値を $g(\alpha):=2\pi r\cdot\frac{\alpha}{360}$ とおく。
段 1($360^\circ$ の $\frac1n$)。$n$ を正の整数とする。円を中心角 $\bigl(\frac{360}{n}\bigr)^\circ$ の扇形 $n$ 個に分ける。rem-gar-arc-facts の 2 によりこれらは合同で弧の長さはどれも $f\bigl(\frac{360}n\bigr)$ であり、3 によりその和は周の長さ $2\pi r$ である。よって $n\,f\bigl(\frac{360}n\bigr)=2\pi r$、すなわち $f\bigl(\frac{360}n\bigr)=\frac{2\pi r}n$ である。
段 2($360^\circ$ の $\frac mn$)。$1\le m\le n$ とする。中心角 $\bigl(\frac{360m}{n}\bigr)^\circ$ の扇形は、段 1 の扇形 $m$ 個に分けられるので、rem-gar-arc-facts の 3 により $f\bigl(\frac{360m}n\bigr)=m\cdot\frac{2\pi r}n$ である。これは $g\bigl(\frac{360m}n\bigr)=2\pi r\cdot\frac mn$ に等しい。$m=0$ のときも、両辺を $0$ と約束すれば成り立つ。
段 3(一般の中心角をはさむ)。$\alpha=360$ のときは $f(360)=2\pi r=g(360)$ なので、$0<\alpha<360$ とする。正の整数 $n$ を 1 つ決め、$m:=\bigl[\frac{n\alpha}{360}\bigr]$($\frac{n\alpha}{360}$ を超えない最大の整数)とおく。$0<\frac{n\alpha}{360}< n$ なので $0\le m\le n-1$ であり
$$
\frac{360m}{n}\le\alpha<\frac{360(m+1)}{n}
$$
である。rem-gar-arc-facts の 4(中心角が大きいほど弧は短くない)と段 2 により
$$
2\pi r\cdot\frac mn\le f(\alpha)\le2\pi r\cdot\frac{m+1}n
$$
である。一方、上の不等式の各辺に $\frac{2\pi r}{360}$ を掛けると、$g(\alpha)$ も同じ 2 つの数の間にある。2 つの数が同じ区間(幅 $\frac{2\pi r}n$)に入るので
$$
|f(\alpha)-g(\alpha)|\le\frac{2\pi r}{n}
$$
である。
段 4($n$ を大きくする)。$d:=|f(\alpha)-g(\alpha)|$ とおく。段 3 はどの正の整数 $n$ でも成り立つ。もし $d>0$ なら、$n>\frac{2\pi r}d$ となる整数 $n$ をとると $\frac{2\pi r}n< d$ となり、段 3 の不等式に反する。よって $d=0$、すなわち $f(\alpha)=g(\alpha)$ である。これが 1 の弧の長さの式である。面積についても、段 1〜4 の「周の長さ $2\pi r$」を「円の面積 $\pi r^2$」に替えれば同じ議論が成り立つ。
段 5(2 の公式)。$\theta=\frac{\pi\alpha}{180}$ なので $\frac{\alpha}{360}=\frac{\theta}{2\pi}$ である。1 に代入すると
$$
l=2\pi r\cdot\frac{\theta}{2\pi}=r\theta,\qquad S=\pi r^2\cdot\frac{\theta}{2\pi}=\frac12r^2\theta
$$
であり、$\frac12r^2\theta=\frac12r\cdot r\theta=\frac12lr$ である。$\square$
段 3 のはさみ方を、数で見ておく。
半径 $r=1$、中心角 $100^\circ$ の扇形の弧の長さ $f(100)$ をはさむ。thm-gar-sector によれば $f(100)=2\pi\cdot\frac{100}{360}=1.7453\ldots$ である。
針金 $20$ cm を曲げて扇形の周(2 本の半径と弧)を作る。面積を最大にするには、半径と中心角をどう選べばよいか。
半径を $r$、弧の長さを $l$ とすると $2r+l=20$ なので $l=20-2r$ である。thm-gar-sector の $S=\frac12lr$ により
$$
S=\frac12(20-2r)r=-r^2+10r=-(r-5)^2+25
$$
である。中心角 $\theta=\frac lr$ は $2\pi$ 以下でなければならないので、$20-2r\le2\pi r$、すなわち $r\ge\frac{20}{2+2\pi}=2.41\ldots$ であり、$l>0$ から $r<10$ である。軸 $r=5$ はこの範囲に入るので、2次関数の最大・最小 により最大値は $r=5$ のときの $S=25$ である。このとき $l=10$、中心角は $\theta=\frac{10}5=2$ ラジアン(約 $114.6^\circ$)である。
弧度法の $S=\frac12lr$ を使うと、中心角を経由せずに 2 次関数の問題になる。答えの中心角「$2$ ラジアン」は、度数法では $\bigl(\frac{360}\pi\bigr)^\circ$ というきれいでない数になる。
中心角を度数法の $\alpha^\circ$ のまま書くと、thm-gar-sector の 1 は
$$
l=\frac{\pi}{180}\,r\alpha,\qquad S=\frac{\pi}{360}\,r^2\alpha
$$
で、定数 $\frac{\pi}{180}$ が付く。弧度法は、この比例定数が $1$ になるように角の単位を選んだものと言える。同じ定数が、微分でも現れる(prop-gar-degree-derivative)。
原点 $O$ を中心とする半径 $1$ の円を 単位円 という。実数 $\theta$ について、弧度法で $\theta$ の動径と単位円の交点を $P(\theta)$ とし、その座標を
$$
P(\theta)=(\cos\theta,\sin\theta)
$$
と定める。$\cos\theta\ne0$ のとき $\tan\theta=\dfrac{\sin\theta}{\cos\theta}$ と定める。
$\theta\ge0$ なら、$P(\theta)$ は点 $(1,0)$ から単位円に沿って反時計回りに長さ $\theta$ だけ進んだ点であり($\theta>2\pi$ なら何周かしたうえで)、$\theta<0$ なら時計回りに長さ $|\theta|$ だけ進んだ点である。$0\le\theta\le2\pi$ では、半径 $1$ なので thm-gar-sector の $l=r\theta$ で $l=\theta$ となることによる。$\theta>2\pi$ なら、後の thm-gar-same-point により $2\pi$ の整数倍を引いて 1 周の中に戻して考え、$\theta<0$ なら、rem-gar-basic-facts の 3 により $-\theta>0$ の場合を $x$ 軸について折り返して考える。$0\le\theta\le\pi$ のとき、これは 三角比と鈍角への拡張 の単位円による定義と同じである。
実数 $\theta,\psi$ について、$P(\theta)=P(\psi)$ であることと、$\theta-\psi$ が $2\pi$ の整数倍であることは同値である。特に、すべての実数 $\theta$ と整数 $n$ について
$$
\cos(\theta+2n\pi)=\cos\theta,\qquad\sin(\theta+2n\pi)=\sin\theta
$$
であり、$\cos\theta\ne0$ なら $\tan(\theta+2n\pi)=\tan\theta$ である。
方針:単位円上の点と、原点から出る半直線(動径)は 1 対 1 に対応する。そこで点の一致を動径の一致に言い換え、thm-gar-same-ray を使う。
段 1(点と動径)。原点から出る半直線は単位円とちょうど 1 点で交わり、逆に単位円上の点 $Q$ に対して、原点から $Q$ を通る半直線がただ 1 つある。したがって、$P(\theta)=P(\psi)$ であることと、$\theta$ の動径と $\psi$ の動径が同じ位置にあることは同値である。
段 2(単位の換算)。弧度法の $\theta$ は度数法の $\bigl(\frac{180\theta}{\pi}\bigr)^\circ$ である。thm-gar-same-ray により、動径が同じであることは $\frac{180\theta}{\pi}-\frac{180\psi}{\pi}=\frac{180}{\pi}(\theta-\psi)$ が $360$ の整数倍であることと同値である。両辺に $\frac{\pi}{180}$ を掛けると、これは $\theta-\psi$ が $2\pi$ の整数倍であることと同値である。
段 3(三角関数の式)。$(\theta+2n\pi)-\theta=2n\pi$ なので、段 1・2 から $P(\theta+2n\pi)=P(\theta)$ である。座標を比べて $\cos$、$\sin$ の式を得る。$\tan$ の式は、その比をとれば得られる。$\square$
三角関数のグラフと周期 は、この定理を出発点として、$\sin$、$\cos$ の基本周期が $2\pi$ であることを示している。図3 は、実数 $\theta$ を単位円上の点 $P(\theta)$ に送る対応を描いたもので、数直線を単位円に巻きつけたと見ることができる。
左の数直線上の実数 θ を、右の単位円上の点 P(θ) に対応させる。赤の点のように 2π の整数倍だけ違う実数は同じ点に移り、青の点のように差が 2π の整数倍でなければ違う点に移ることを見る図。
thm-gar-same-point で $2\pi$ の整数倍を引き、$0\le\theta<2\pi$ の角に戻してから値を読む。
三角方程式や逆三角関数では、「角がこの範囲なら余弦は正」という向きの事実と、「$x$ 座標が正の点なら角をこの範囲にとれる」という逆向きの事実の両方を使う。2 つは同じ事実を両側から見たものなので、1 つの命題として証明しておく。
方針:$0\le t\le\pi$ のとき $P(t)$ は 三角比と鈍角への拡張 の単位円の上半分の点なので(def-gar-trig)、そこで分かっている符号を使う。負の角は rem-gar-basic-facts の 3 の折り返しで上半分に戻し、$2\pi$ の整数倍の違いは thm-gar-same-point で取り除く。4 は、角を $-\frac\pi2$ から始まる 1 周の範囲に戻し、2 を使って左半分の角を除いて示す。
段 1(上半分)。$0\le t\le\pi$ とする。$P(t)$ は、三角比と鈍角への拡張 で角 $\bigl(\frac{180t}{\pi}\bigr)^\circ$ に対応させた、単位円の上半分($y\ge0$)の点である。上半分の点と $0^\circ$ 以上 $180^\circ$ 以下の角は 1 対 1 に対応し、$y=0$ となる上半分の点は $(1,0)$ と $(-1,0)$ だけで、それぞれ $t=0$ と $t=\pi$ に対応する。よって $0< t<\pi$ なら $\sin t>0$ であり、1 が示された。また、同じ記事で見たとおり、$0\le t<\frac\pi2$ なら $\cos t>0$($t=0$ では $P(0)=(1,0)$ から $\cos0=1$、$0< t<\frac\pi2$ の鋭角では直角三角形の辺の比)、$\cos\frac\pi2=0$、$\frac\pi2< t\le\pi$ なら $\cos t<0$($\cos(180^\circ-\theta)=-\cos\theta$ による)である。
段 2(負の角)。rem-gar-basic-facts の 3 により、$-t$ の動径は $t$ の動径を $x$ 軸について折り返したものなので、単位円との交点も折り返しの関係にある。点 $(X,Y)$ を $x$ 軸について折り返すと $(X,-Y)$ なので
$$
\cos(-t)=\cos t,\qquad\sin(-t)=-\sin t
$$
である。$-\frac\pi2< t<0$ なら $0<-t<\frac\pi2$ なので、段 1 から $\cos t=\cos(-t)>0$ である。段 1 の $0\le t<\frac\pi2$ と合わせて、$-\frac\pi2< t<\frac\pi2$ なら $\cos t>0$ である。また $\cos\bigl(-\frac\pi2\bigr)=\cos\frac\pi2=0$ である。
段 3($\pi< t\le\frac{3\pi}2$)。$s:=2\pi-t$ とおくと $\frac\pi2\le s<\pi$ である。thm-gar-same-point と段 2 により
$$
\cos t=\cos(t-2\pi)=\cos(-s)=\cos s
$$
である。$t<\frac{3\pi}2$ なら $s>\frac\pi2$ なので、段 1 から $\cos t<0$ である。$t=\frac{3\pi}2$ なら $s=\frac\pi2$ で、$\cos\frac{3\pi}2=0$ である。段 1 の $\frac\pi2< t\le\pi$ と合わせて、$\frac\pi2< t<\frac{3\pi}2$ なら $\cos t<0$ であり、2 が示された。
段 4(3)。$Q=(a,b)$ とする。$b\ge0$ なら $Q$ は上半分の点なので、段 1 の 1 対 1 の対応により $Q=P(t)$ となる $t$($0\le t\le\pi$)がある。$b<0$ なら、折り返した点 $(a,-b)$ が上半分の点なので $(a,-b)=P(s)$ となる $s$($0\le s\le\pi$)があり、段 2 により $P(-s)=(\cos s,-\sin s)=(a,b)=Q$ である。
段 5(4 の存在)。$a\ge0$ とし、段 4 で $Q=P(t_0)$ となる $t_0$ をとる。lem-gar-reduction(弧度法では $360$ を $2\pi$ に替える)を $t_0+\frac\pi2$ に使うと、$t_0+\frac\pi2=2n\pi+r$、$0\le r<2\pi$ となる整数 $n$ と実数 $r$ がある。$t:=r-\frac\pi2$ とおくと $-\frac\pi2\le t<\frac{3\pi}2$ で、$t-t_0=-2n\pi$ なので thm-gar-same-point により $P(t)=P(t_0)=Q$ である。もし $\frac\pi2< t<\frac{3\pi}2$ なら、2 により $a=\cos t<0$ となり $a\ge0$ に反する。よって $-\frac\pi2\le t\le\frac\pi2$ である。さらに $a>0$ なら、$t=\pm\frac\pi2$ では $a=\cos t=0$ となって反するので、$-\frac\pi2< t<\frac\pi2$ である。
段 6(4 の一意性)。$-\frac\pi2\le t,t'\le\frac\pi2$ で $P(t)=P(t')=Q$ とする。thm-gar-same-point により $t-t'$ は $2\pi$ の整数倍であり、$|t-t'|\le\pi<2\pi$ なので $t-t'=0$ である。$\square$
2 の「$\frac\pi2< t<\frac{3\pi}2$ なら $\cos t<0$」と 4 の「右半分の点なら角を $-\frac\pi2< t<\frac\pi2$ にとれる」は、同じ事実を両側から見たものである。1 周の範囲 $-\frac\pi2\le t<\frac{3\pi}2$ のうち、左半分に当たる角を 2 で除くと、右半分の点の角は残りの範囲に入るしかない。三角方程式と三角不等式 と 逆三角関数(高校数学) は、この命題を使う。
正午から $t$ 分後の針の位置を、12 時の方向から時計回りに測った角(弧度法)で表す。長針は 60 分で $2\pi$、短針は 12 時間 $=720$ 分で $2\pi$ 回るので、それぞれ
$$
\frac{2\pi t}{60}=\frac{\pi t}{30},\qquad\frac{2\pi t}{720}=\frac{\pi t}{360}
$$
である。
点が半径 $r$ の円の上を、1 秒あたり $\omega$ ラジアン($\omega>0$)の割合で反時計回りに回るとする。$\omega$ を 角速度 という。時刻 $0$ に点 $(r,0)$ にあったとすると、時刻 $t$ の位置は $(r\cos\omega t,\ r\sin\omega t)$ である。時刻 $0$ から $t$ までに回った角は $\omega t$ なので、thm-gar-sector により、通った弧の長さは $r\omega t$ であり、速さは $r\omega$ である。
数学 III では、$x$ を弧度法で測ると $(\sin x)'=\cos x$、$(\cos x)'=-\sin x$ となることを学ぶ。この証明は sin x/xの極限 で、単位円の扇形の面積 $\frac x2$(thm-gar-sector の $r=1$ の場合)を使って行う。角を度で測ると、この簡単な形が崩れる。
$x$ 度の正弦を $\sin(x^\circ)$ と書き、$c=\dfrac{\pi}{180}$ とおく。$x$ の関数 $\sin(x^\circ)$、$\cos(x^\circ)$ の導関数は
$$
\bigl(\sin(x^\circ)\bigr)'=c\cos(x^\circ),\qquad\bigl(\cos(x^\circ)\bigr)'=-c\sin(x^\circ)
$$
である。
方針:度数法の角を弧度法に直すと、中身が $cx$ という 1 次式になる。そこで、弧度法での導関数と連鎖律を組み合わせる。
段 1(弧度法に直す)。def-gar-radian により $x^\circ=cx$ ラジアンなので、$\sin(x^\circ)=\sin cx$、$\cos(x^\circ)=\cos cx$ である。
段 2(連鎖律)。$u=cx$ とおくと $\frac{du}{dx}=c$ である。弧度法での導関数 $(\sin u)'=\cos u$(sin x/xの極限 で証明)と、合成関数の微分 $\frac{d}{dx}\sin u=\cos u\cdot\frac{du}{dx}$(連鎖律(高校数学))により
$$
\frac{d}{dx}\sin cx=c\cos cx=c\cos(x^\circ)
$$
である。
段 3(余弦)。同じように $(\cos u)'=-\sin u$ から $\frac{d}{dx}\cos cx=-c\sin cx=-c\sin(x^\circ)$ である。$\square$
sin x/xの極限 では、同じ結果を連鎖律を使わずに、極限の計算で直接示している(度数法での極限と導関数の命題)。
度数法では、微分するたびに $c=\frac{\pi}{180}$ が 1 つずつ付き、2 回微分すると $\bigl(\sin(x^\circ)\bigr)''=-c^2\sin(x^\circ)$ となる。弧度法なら $(\sin x)''=-\sin x$ で、$\sin$ と $\cos$ は微分方程式 $y''=-y$ の解になる(微分方程式としての指数関数・三角関数)。扇形の公式に定数が付かないこと(rem-gar-degree-constant)と、導関数に定数が付かないことは、同じ理由から来ている。
lem-gar-reduction と thm-gar-same-point の条件や、弧度法という仮定を外すと、主張が崩れる。
| 外した仮定・条件 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 余りの範囲 $0\le\alpha<360$ の「$<$」 | 1 周の中への戻し方がただ 1 つ | ex-gar-boundary |
| 点の 2 つの座標がともに等しい($\sin$ だけが等しい) | 差が $2\pi$ の整数倍 | ex-gar-sine-only |
| 中心角を弧度法で測る | $S=\frac12r^2\theta$ | ex-gar-degree-plugged |
| 同じ動径の角に同じ操作をしても同じ動径になる(半分にする操作) | 角の計算が代表のとり方によらない | ex-gar-halving |
lem-gar-reduction の条件を $0\le\alpha\le360$ に広げると、$\theta=720$ は
$$
720=360\times2+0=360\times1+360
$$
と 2 通りに書け、一意性が崩れる。一意性の証明(段 2)で使った「$-360<\beta-\alpha<360$」が、$\alpha=0$、$\beta=360$ のとき成り立たないからである。
満たす性質:存在はそのまま成り立つ。満たさない性質:$\alpha<360$。破る主張:表し方がただ 1 つであること。
$\sin\frac\pi6=\sin\frac{5\pi}6=\frac12$ であるが、$\frac{5\pi}6-\frac\pi6=\frac{2\pi}3$ は $2\pi$ の整数倍ではない。$P\bigl(\frac\pi6\bigr)=\bigl(\frac{\sqrt3}2,\frac12\bigr)$ と $P\bigl(\frac{5\pi}6\bigr)=\bigl(-\frac{\sqrt3}2,\frac12\bigr)$ は、$y$ 座標は等しいが $x$ 座標が違う。
満たす性質:$y$ 座標(正弦)が等しい。満たさない性質:$x$ 座標(余弦)も等しいこと。破る主張:thm-gar-same-point の「差が $2\pi$ の整数倍」。$\sin\theta=\sin\psi$ となる $\theta,\psi$ の関係をすべて求めることは、三角方程式と三角不等式 で扱う。
半径 $3$、中心角 $120^\circ$ の扇形の面積は $3\pi=9.42\ldots$ である(ex-gar-sector)。$\theta=120$ を度のまま $S=\frac12r^2\theta$ に入れると $\frac12\cdot9\cdot120=540$ となり、$\frac{180}{\pi}=57.29\ldots$ 倍も大きい。
満たす性質:半径と中心角の値は正しい。満たさない性質:中心角が弧度法で測られていること。破る主張:thm-gar-sector の 2。度数法で使える式は rem-gar-degree-constant の、定数 $\frac{\pi}{360}$ の付いた式である。
$0$ と $2\pi$ は同じ動径を表す(差が $2\pi$)。しかし半分にすると $0$ と $\pi$ になり、これらは反対向きの動径である(差 $\pi$ は $2\pi$ の整数倍でない)。したがって「動径 $\theta$ を半分にした動径」は、$\theta$ の値のとり方によって変わり、動径だけからは決まらない。
一方、2 倍にする操作は動径で決まる。$\theta$ と $\theta+2n\pi$ を 2 倍すると $2\theta$ と $2\theta+4n\pi$ で、差 $4n\pi=2\pi\times2n$ は $2\pi$ の整数倍だからである。
満たす性質:$0$ と $2\pi$ は同じ動径。満たさない性質:「半分にする」操作が $2\pi$ の整数倍の違いを保つこと。破る主張:「同じ動径の角に同じ計算をすれば、同じ動径になる」。このため $\sin\frac x2$ は、$x$ を $2\pi$ ずらすと符号が反転し($\sin\frac{x+2\pi}2=-\sin\frac x2$)、$\sin\frac x2\ne0$ なら値が変わる($\frac x2$ の動径は $x$ の動径だけでは決まらない)。$\frac x2$ を含む三角方程式を $0\le x<2\pi$ で解くときは、$u=\frac x2$ の範囲が $0\le u<\pi$ に縮むことに注意が要り、解は減ることがある。たとえば $0\le x<2\pi$ で $\cos x=\frac12$ の解は $\frac\pi3,\frac{5\pi}3$ の 2 個だが、$\cos\frac x2=\frac12$ の解は $u=\frac\pi3$ から $x=\frac{2\pi}3$ の 1 個だけである(三角方程式と三角不等式)。
thm-gar-same-point は、実数どうしの関係「差が $2\pi$ の整数倍」を使っている。これを記号で
$$
\theta\equiv\psi\pmod{2\pi}\quad:\iff\quad\theta-\psi\text{ は }2\pi\text{ の整数倍}
$$
と書く。整数の合同式 $a\equiv b\pmod n$(合同式と余りの世界)の、$n$ を $2\pi$ に、整数を実数に替えたものである。
すべての実数 $\theta,\psi,\chi$ について、次が成り立つ。
方針:定義に戻り、差を整数と $2\pi$ の積で書く。
段 1。$\theta-\theta=0=2\pi\times0$ で、$0$ は整数である。
段 2。$\theta-\psi=2\pi k$($k$ は整数)なら $\psi-\theta=2\pi\times(-k)$ で、$-k$ も整数である。
段 3。$\theta-\psi=2\pi k$、$\psi-\chi=2\pi l$($k,l$ は整数)なら、足して $\theta-\chi=2\pi(k+l)$ で、$k+l$ も整数である。$\square$
1〜3 を満たす関係を 同値関係(同値関係)という。同値関係があると、互いに関係のあるもの同士を 1 つのグループにまとめられる。実数 $\theta$ と $2\pi$ を法として合同な実数全体 $\{\theta+2n\pi : n\text{ は整数}\}$ を $\theta$ の 同値類 といい、同値類全体の集まりを $\mathbb{R}/2\pi\mathbb{Z}$ と書く。thm-gar-same-point は、同値類と単位円上の点が 1 対 1 に対応すること、つまり 一般角の同値類こそが「動径」であり、単位円上の点である ことを言っている。
$\theta\equiv\theta'$、$\psi\equiv\psi'\pmod{2\pi}$ ならば、$\theta+\psi\equiv\theta'+\psi'\pmod{2\pi}$ である。また、整数 $m$ について $m\theta\equiv m\theta'\pmod{2\pi}$ である。
方針:差を 2 つの差の和に分ける。
段 1(和)。$\theta-\theta'=2\pi k$、$\psi-\psi'=2\pi l$($k,l$ は整数)とする。
$$
(\theta+\psi)-(\theta'+\psi')=(\theta-\theta')+(\psi-\psi')=2\pi(k+l)
$$
で、$k+l$ は整数である。
段 2(整数倍)。$m\theta-m\theta'=m(\theta-\theta')=2\pi\times mk$ で、$mk$ は整数である。$\square$
prop-gar-addition-well-defined により、$\mathbb{R}/2\pi\mathbb{Z}$ には足し算が入る。大学ではこれを、足し算の 群 $\mathbb{R}$ を部分群 $2\pi\mathbb{Z}$ で割った 商群 という。
写像 $\theta\mapsto P(\theta)$ は、$\mathbb{R}/2\pi\mathbb{Z}$ から単位円への 1 対 1 の対応(thm-gar-same-point)である。単位円の点を複素数 $\cos\theta+i\sin\theta$ と見ると、角の足し算は複素数の掛け算
$$
(\cos\theta+i\sin\theta)(\cos\psi+i\sin\psi)=\cos(\theta+\psi)+i\sin(\theta+\psi)
$$
に対応する(複素数の掛け算は回転と拡大)。この等式は加法定理そのもので、単位円は掛け算について群になる。これを 円周群(円周群)という。「角」とは、円周群の元のことだと言える。
整数の合同式で $\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ を考えるのと同じ操作を、$\mathbb{R}$ と $2\pi$ で行ったのが $\mathbb{R}/2\pi\mathbb{Z}$ である。合同式と余りの世界 で「足し算・掛け算は余りだけで決まる」ことを確かめたのと同じように、角では「足し算・整数倍は同値類だけで決まるが、$\frac12$ 倍は決まらない」(ex-gar-halving)。
def-gar-trig の $P(\theta)$ は、単位円を「$(1,0)$ から測った弧の長さ $\theta$」で目盛ったものである。曲線の点を、決まった点からの弧の長さで表すことを 弧長パラメータ という。弧長パラメータでは点の動く速さが $1$ になる。実際、$P(\theta)=(\cos\theta,\sin\theta)$ を $\theta$ で微分すると $(-\sin\theta,\cos\theta)$ で、その長さは $\sqrt{\sin^2\theta+\cos^2\theta}=1$ である。度数法の $(\cos(x^\circ),\sin(x^\circ))$ では、prop-gar-degree-derivative により速さが $c=\frac{\pi}{180}$ になる。曲線の長さと速さの関係は 媒介変数表示と曲線の長さ で扱う。
極座標で点を $(r,\theta)$ と表すとき(極座標と極方程式)も、偏角 $\theta$ は $2\pi$ の整数倍の違いを除いてしか決まらない。これも、偏角が本当は $\mathbb{R}/2\pi\mathbb{Z}$ の元であることの現れである。
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