正射影と面積(orthogonal projection and area)とは、平面 $\alpha$ の上の図形を平面 $\beta$ へ正射影する(各点から $\beta$ に垂線を下ろす)と面積がどう変わるかという関係である。$\alpha$ と $\beta$ のなす角を $\theta$($0^\circ\le\theta<90^\circ$)とすると、多角形の正射影の面積はもとの面積の $\cos\theta$ 倍になる。長さの倍率は線分の向きで変わる(交線に平行なら $1$、垂直なら $\cos\theta$)が、面積の倍率は形によらない。$\mathrm{OA},\mathrm{OB},\mathrm{OC}$ が互いに垂直な四面体で、面 $\mathrm{ABC}$ の面積の 2 乗が他の 3 面の面積の 2 乗の和であること(de Gua の定理)も正射影で示せる。
前提知識: 空間図形の計量, 空間の平面と法線ベクトル, 三角形の面積の公式, ベクトルの内積(高校数学), 空間ベクトルと1次独立
床の上に長方形の板を置き、床に接した 1 辺を軸にして板を持ち上げる。真上から光を当てると、床には板の影ができる。この影の面積は、板の面積とどう関係するだろうか。
床の上の辺(長さ 4)を軸に角 θ だけ傾けた 4 × 3 の板(青)と、真上から光を当ててできる影(橙)。軸に沿った辺は長さ 4 のまま、軸に垂直な辺は 3 から 3cos θ に縮む
縦 $3$、横 $4$ の長方形の板を、長さ $4$ の辺を床につけたまま、床と $60^\circ$ の角をなすように傾ける(図 1)。
直角をはさむ 2 辺が $4$ と $3$ の直角三角形の板を、長さ $4$ の辺を床につけたまま、床と $45^\circ$ の角をなすように傾ける。長さ $3$ の辺は床についた辺に垂直なので、ex-opa-plate と同じく影では $3\cos45^\circ=\dfrac{3\sqrt2}2$ になり、床についた辺は $4$ のままである。影も直角三角形で、面積は
$$
\frac12\cdot4\cdot\frac{3\sqrt2}2=3\sqrt2
$$
である。板の面積は $\dfrac12\cdot4\cdot3=6$ なので、影の面積は板の面積の $\dfrac{\sqrt2}2=\cos45^\circ$ 倍である。
2 つの例で、影の面積は板の面積の $\cos\theta$ 倍($\theta$ は板と床のなす角)になった。どちらの例でも、板の辺が「軸に平行」か「軸に垂直」だったので計算が簡単だった。この記事では、どんな形の多角形でも同じことが成り立つことを示し、それを使って空間図形の面積や角を求める。この記事で答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 影の面積 $S\cos\theta$ | 交線に垂直な向きだけ $\cos\theta$ 倍に縮む | 1 次変換の行列式 |
| 切り口の面積 $\dfrac{S'}{\cos\theta}$ | 影の面積から元の面積を求める | 面積の拡大率の逆数 |
| 2 つの面のなす角 $\cos\theta=\dfrac{S'}S$ | 面積の比で角を測る | 面積ベクトルの成分 |
| 空間の三平方の定理 | 3 つの座標平面への正射影 | 面積ベクトルの長さ、Cauchy–Binet の公式 |
平面 $\beta$ と点 $\mathrm P$ があるとき、$\mathrm P$ から $\beta$ に下ろした垂線の足 $\mathrm P'$ を、$\mathrm P$ の $\beta$ への 正射影 という($\mathrm P$ が $\beta$ の上にあれば $\mathrm P'=\mathrm P$ とする)。図形 $F$ の各点の正射影をすべて集めた図形 $F'$ を、$F$ の $\beta$ への正射影という。
「真上から光を当てた影」は、床への正射影である。光の向きが床に垂直であることが大切で、斜めの光の影は正射影ではない(ex-opa-oblique-light)。
座標を使うと、正射影は簡単に書ける。$\beta$ を $xy$ 平面とすると、点 $(x,y,z)$ から $xy$ 平面に下ろした垂線の足は $(x,y,0)$ である。つまり、$xy$ 平面への正射影は「$z$ 座標を $0$ にする」ことである。
2 つの平面のなす角は、空間図形の計量 の二面角と同じように定める。交わる 2 平面 $\alpha$、$\beta$ の交線を $\ell$ とし、$\ell$ の上の点から、$\alpha$ の中で $\ell$ に垂直な直線と、$\beta$ の中で $\ell$ に垂直な直線を引く。この 2 直線のなす角($90^\circ$ 以下の方)を、$\alpha$ と $\beta$ の なす角 という。平行な 2 平面のなす角は $0^\circ$ とする。2 つの平面の傾きをこのように交線に垂直な 2 直線で測ることは、Euclid『原論』第 XI 巻の定義 6 にある(Hea56 Vol. III, p. 260)。
なす角 $\theta$ は、法線ベクトルでも求められる。空間の平面と法線ベクトル の定理「2 平面のなす角」により、法線ベクトル $\vec n_1$、$\vec n_2$ の平面のなす角 $\theta$ は
$$
\cos\theta=\frac{\lvert\vec n_1\cdot\vec n_2\rvert}{\lvert\vec n_1\rvert\lvert\vec n_2\rvert}
$$
を満たす。
面積を調べる前に、線分の長さがどう変わるかを見る。ex-opa-plate で見たように、交線に平行な線分と、交線に垂直な線分とで、変わり方が違う。
平面 $\alpha$ と平面 $\beta$ が直線 $\ell$ で交わり、なす角を $\theta$($0^\circ<\theta<90^\circ$)とする。$\alpha$ の上の線分 $\mathrm{PQ}$ の $\beta$ への正射影を $\mathrm P'\mathrm Q'$ とする。
方針:$\beta$ を $xy$ 平面、$\ell$ を $x$ 軸にとり、$\alpha$ の点を「$\ell$ の向き」と「$\alpha$ の中で $\ell$ に垂直な向き」の 2 つの単位ベクトルで表す。正射影は $z$ 座標を $0$ にするだけなので、2 つの向きの長さがそれぞれどうなるかを計算する。
段 1(座標をとる)。$\ell$ の上に原点をとり、$\beta$ を $xy$ 平面、$\ell$ を $x$ 軸とする。$\vec e_1=(1,0,0)$ とおく。$\alpha$ の中で $x$ 軸に垂直な単位ベクトルを $\vec e_2$ とすると、$\vec e_2$ は $(1,0,0)$ と垂直なので $x$ 成分が $0$ で、$\vec e_2=(0,c,s)$、$c^2+s^2=1$ と書ける。
段 2(なす角で表す)。原点で $\ell$ に垂直な直線は、$\alpha$ の中では方向 $\vec e_2$、$\beta$ の中では方向 $(0,1,0)$ である。なす角の定義から、この 2 直線のなす角が $\theta$ なので、$\lvert c\rvert=\lvert\vec e_2\cdot(0,1,0)\rvert=\cos\theta$ である。必要なら $\vec e_2$ を $-\vec e_2$ に取り替えて $c=\cos\theta$ とする。このとき $s^2=1-\cos^2\theta=\sin^2\theta$ である。
段 3($\alpha$ の点を表す)。$\alpha$ は原点を通り、平行でない 2 つのベクトル $\vec e_1$、$\vec e_2$ を含むので、$\alpha$ の点はただ 1 通りに $u\vec e_1+v\vec e_2=(u,\ v\cos\theta,\ vs)$ と書ける(空間ベクトルと1次独立)。その正射影は $z$ 座標を $0$ にした $(u,\ v\cos\theta,\ 0)$ である。
段 4(1 を示す)。$\mathrm P=u_1\vec e_1+v_1\vec e_2$、$\mathrm Q=u_2\vec e_1+v_2\vec e_2$ とする。$\mathrm{PQ}$ が $\ell$ に平行なら $\overrightarrow{\mathrm{PQ}}=(u_2-u_1)\vec e_1+(v_2-v_1)\vec e_2$ が $\vec e_1$ の定数倍なので、$v_1=v_2$ である。このとき $\overrightarrow{\mathrm{PQ}}=(u_2-u_1,0,0)$、$\overrightarrow{\mathrm P'\mathrm Q'}=(u_2-u_1,0,0)$ で、長さはどちらも $\lvert u_2-u_1\rvert$ である。
段 5(2 を示す)。$\mathrm{PQ}$ が $\ell$ に垂直なら $\overrightarrow{\mathrm{PQ}}\cdot\vec e_1=u_2-u_1=0$ なので、$u_1=u_2$ である($\vec e_1\cdot\vec e_2=0$ を使った)。このとき $\overrightarrow{\mathrm{PQ}}=(v_2-v_1)\vec e_2$ で、長さは $\lvert v_2-v_1\rvert$ である。一方 $\overrightarrow{\mathrm P'\mathrm Q'}=\bigl(0,\ (v_2-v_1)\cos\theta,\ 0\bigr)$ で、長さは $\lvert v_2-v_1\rvert\cos\theta$ である($\cos\theta>0$)。よって $\mathrm P'\mathrm Q'=\mathrm{PQ}\cos\theta$ である。$\square$
交線に平行でも垂直でもない線分では、長さの変わり方は $1$ 倍と $\cos\theta$ 倍の間になり、線分の向きによって違う(ex-opa-oblique-segment)。実際、prf-opa-length の座標で $\overrightarrow{\mathrm{PQ}}=a\vec e_1+b\vec e_2$($a\ne0$、$b\ne0$)とすると、$\mathrm{PQ}^2=a^2+b^2$、$\mathrm P'\mathrm Q'^2=a^2+b^2\cos^2\theta$ なので、倍率の 2 乗は
$$
\frac{a^2+b^2\cos^2\theta}{a^2+b^2}
$$
で、$\cos^2\theta$ より大きく $1$ より小さい。長さの倍率は向きによって変わるのに、次の定理のとおり、面積の倍率はどんな図形でも $\cos\theta$ になる。
平面 $\alpha$ と平面 $\beta$ のなす角を $\theta$($0^\circ\le\theta<90^\circ$)とする。$\alpha$ の上の多角形 $F$ の $\beta$ への正射影を $F'$ とすると
$$
(F'\text{ の面積})=(F\text{ の面積})\times\cos\theta
$$
である。
方針:prf-opa-length と同じ座標をとると、$\alpha$ の点 $u\vec e_1+v\vec e_2$ の正射影は $(u,\ v\cos\theta,\ 0)$ である。$\alpha$ の中でも $\beta$ の中でも、三角形の面積を 三角形の面積の公式 の座標の式で計算して比べる。多角形は三角形に分ける。
段 1(平行な場合)。$\theta=0^\circ$ で $\alpha$ と $\beta$ が平行なら、どの点も同じ向き($\beta$ に垂直な向き)に同じ距離だけ動くので、正射影は平行移動である。平行移動で面積は変わらず、$\cos0^\circ=1$ なので主張は成り立つ。$\alpha=\beta$ なら $F'=F$ で、やはり成り立つ。以下 $0^\circ<\theta<90^\circ$ とし、prf-opa-length の段 1〜3 の座標をとる。
段 2($\alpha$ の中の長さと面積)。$\vec e_1$、$\vec e_2$ は長さ $1$ で互いに垂直なので
$$
\lvert a\vec e_1+b\vec e_2\rvert^2=a^2(\vec e_1\cdot\vec e_1)+2ab(\vec e_1\cdot\vec e_2)+b^2(\vec e_2\cdot\vec e_2)=a^2+b^2
$$
である。したがって $\alpha$ の中では、$(u,v)$ をふつうの平面の座標と思って長さを計算してよい。長さがすべて同じなので、3 辺の長さで決まる三角形の面積も同じように計算してよい。特に、$\alpha$ の三角形の 1 つの頂点から他の 2 頂点へのベクトルが $(u_1,v_1)$、$(u_2,v_2)$ と表されるとき、その面積は 三角形の面積の公式 の座標の式で $\dfrac12\lvert u_1v_2-u_2v_1\rvert$ である。
段 3(三角形の正射影)。正射影で、点 $u\vec e_1+v\vec e_2$ は $xy$ 平面の点 $(u,\ v\cos\theta)$ に写る。三角形の 2 辺のベクトル $(u_1,v_1)$、$(u_2,v_2)$ は、$xy$ 平面のベクトル $(u_1,\ v_1\cos\theta)$、$(u_2,\ v_2\cos\theta)$ に写る。3 つの頂点の正射影を頂点とする三角形の面積は
$$
\frac12\lvert u_1\cdot v_2\cos\theta-u_2\cdot v_1\cos\theta\rvert=\cos\theta\cdot\frac12\lvert u_1v_2-u_2v_1\rvert
$$
で($\cos\theta>0$)、元の三角形の面積の $\cos\theta$ 倍である。また、対応 $(u,v)\mapsto(u,\ v\cos\theta)$ は $u$、$v$ の 1 次式なので、線分を線分に写し、三角形の周と内部を、写った三角形の周と内部に写す。よって三角形の正射影は、頂点の正射影を頂点とする三角形である。
段 4(多角形)。多角形は、対角線で重なりのない三角形に分けられる(凸な多角形なら 1 つの頂点から対角線を引けばよい。凸でない多角形でも分けられることが知られているが、この記事では証明しない)。対応 $(u,v)\mapsto(u,\ v\cos\theta)$ は、$v$ を $\cos\theta\ne0$ で割れば元に戻るので 1 対 1 である。したがって重なりのない三角形は重なりのない三角形に写り、段 3 から各三角形の面積が $\cos\theta$ 倍になるので、その和である多角形の面積も $\cos\theta$ 倍になる。$\square$
定理は、光の向きと板の形によらない。ex-opa-plate、ex-opa-plate-tri の長方形と直角三角形はもちろん、どんな多角形でも、影の面積は板の面積の $\cos\theta$ 倍である。
平面 $z=y$($xy$ 平面とのなす角 $45^\circ$)の上の三角形で、頂点が $(0,0,0)$、$(2,0,0)$、$(1,2,2)$ のものを考える。
thm-opa-area は、2 通りに使える。元の図形の面積 $S$ と角 $\theta$ が分かれば影の面積 $S'=S\cos\theta$ が分かる。逆に、影の面積 $S'$ と $\theta$ が分かれば、元の面積が $S=\dfrac{S'}{\cos\theta}$ と分かり、$S$ と $S'$ が分かれば角が $\cos\theta=\dfrac{S'}S$ と分かる。
1 辺 1 の立方体を、法線ベクトルが (1, 1, 1) の平面で切った切り口と、その底面への正射影(橙)。左は x + y + z = 1 で 1 辺 √2 の正三角形、右は x + y + z = 3/2 で 6 本の辺の中点を通る 1 辺 √2/2 の正六角形
1 辺 $1$ の立方体 $0\le x,y,z\le1$ を、法線ベクトルが $(1,1,1)$ の平面で切る(図 2)。この平面と底面($xy$ 平面)のなす角 $\theta$ は、ex-opa-angle の (2) と同じく $\cos\theta=\dfrac1{\sqrt3}$ を満たす。
(1) 平面 $x+y+z=1$。切り口は 3 頂点 $(1,0,0)$、$(0,1,0)$、$(0,0,1)$ を結ぶ 1 辺 $\sqrt2$ の正三角形で、面積は $\dfrac{\sqrt3}4\cdot(\sqrt2)^2=\dfrac{\sqrt3}2$ である。底面への正射影は 3 点 $(1,0)$、$(0,1)$、$(0,0)$ の直角二等辺三角形で(ex-opa-projection の (2))、面積は $\dfrac12$ である。thm-opa-area のとおり $\dfrac{\sqrt3}2\cdot\dfrac1{\sqrt3}=\dfrac12$ である。
(2) 平面 $x+y+z=\dfrac32$。この平面は、立方体の 12 本の辺のうち 6 本の中点 $\left(\dfrac12,0,1\right)$、$\left(0,\dfrac12,1\right)$、$\left(0,1,\dfrac12\right)$、$\left(\dfrac12,1,0\right)$、$\left(1,\dfrac12,0\right)$、$\left(1,0,\dfrac12\right)$ を通る(どれも座標の和が $\dfrac32$)。隣り合う 2 点の距離はどれも $\sqrt{\dfrac14+\dfrac14}=\dfrac{\sqrt2}2$ で、立方体の中心 $\left(\dfrac12,\dfrac12,\dfrac12\right)$ から 6 点までの距離もどれも $\sqrt{\dfrac14+\dfrac14+0}=\dfrac{\sqrt2}2$ である。したがって切り口は、中心と隣り合う 2 頂点で 1 辺 $\dfrac{\sqrt2}2$ の正三角形が 6 つできる正六角形で、面積は $6\cdot\dfrac{\sqrt3}4\cdot\left(\dfrac{\sqrt2}2\right)^2=\dfrac{3\sqrt3}4$ である。
底面への正射影は、正方形 $0\le x,y\le1$ から 2 つの角 $x+y<\dfrac12$ と $x+y>\dfrac32$ を除いた六角形である。除く 2 つはどちらも直角をはさむ 2 辺が $\dfrac12$ の直角二等辺三角形で、面積は $\dfrac18$ なので、六角形の面積は $1-\dfrac18-\dfrac18=\dfrac34$ である。$\dfrac{3\sqrt3}4\cdot\dfrac1{\sqrt3}=\dfrac34$ で、thm-opa-area と一致する。
(2) の正六角形は、正射影の面積 $\dfrac34$ と $\cos\theta=\dfrac1{\sqrt3}$ だけからでも、$\dfrac34\mathbin{÷}\dfrac1{\sqrt3}=\dfrac{3\sqrt3}4$ と求まる。切り口の形を調べなくても面積が出せるのが、この方法のよいところである。
直角三角形では、斜辺を 2 本の直角をはさむ辺の向きに写すと、2 辺の長さになる。三平方の定理はその 2 つの長さの 2 乗の和が斜辺の 2 乗になることを述べる。同じことを、面積と 3 つの座標平面への正射影で考える。
OA、OB、OC が互いに垂直な四面体。斜面 ABC を 3 つの座標平面に正射影すると、それぞれ三角形 OBC、OCA、OAB になる
四面体 $\mathrm{OABC}$ で、$\mathrm{OA}$、$\mathrm{OB}$、$\mathrm{OC}$ が互いに垂直であるとする。三角形 $\mathrm{ABC}$、$\mathrm{OBC}$、$\mathrm{OCA}$、$\mathrm{OAB}$ の面積を $S$、$S_1$、$S_2$、$S_3$ とすると
$$
S^2=S_1^2+S_2^2+S_3^2
$$
が成り立つ。
方針:$\mathrm O$ を原点、$\mathrm{OA}$、$\mathrm{OB}$、$\mathrm{OC}$ を座標軸にとる。斜面 $\mathrm{ABC}$ を 3 つの座標平面に正射影すると 3 つの直角の面になるので、thm-opa-area で $S_1$、$S_2$、$S_3$ を $S$ と $\cos$ で表し、2 乗して足す(図 3)。
段 1(座標をとる)。$\mathrm{OA}$、$\mathrm{OB}$、$\mathrm{OC}$ は互いに垂直なので、$\mathrm O$ を原点、半直線 $\mathrm{OA}$、$\mathrm{OB}$、$\mathrm{OC}$ をそれぞれ $x$ 軸、$y$ 軸、$z$ 軸の正の部分にとれる。$\mathrm{OA}=p$、$\mathrm{OB}=q$、$\mathrm{OC}=r$ とすると、$\mathrm A(p,0,0)$、$\mathrm B(0,q,0)$、$\mathrm C(0,0,r)$ で、$p,q,r>0$ である。
段 2(法線ベクトル)。$\vec n=(qr,\ rp,\ pq)$ とおく。$\overrightarrow{\mathrm{AB}}=(-p,q,0)$、$\overrightarrow{\mathrm{AC}}=(-p,0,r)$ について
$$
\vec n\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}=-pqr+pqr=0,\qquad \vec n\cdot\overrightarrow{\mathrm{AC}}=-pqr+pqr=0
$$
なので、$\vec n$ は平行でない 2 つのベクトル $\overrightarrow{\mathrm{AB}}$、$\overrightarrow{\mathrm{AC}}$ に垂直で、平面 $\mathrm{ABC}$ の法線ベクトルである(空間図形の計量 の補題「平面の 2 方向に垂直なら平面に垂直」)。
段 3(なす角)。平面 $\mathrm{ABC}$ と $yz$ 平面(法線ベクトル $(1,0,0)$)のなす角を $\theta_1$ とすると、空間の平面と法線ベクトル の定理「2 平面のなす角」により
$$
\cos\theta_1=\frac{\lvert\vec n\cdot(1,0,0)\rvert}{\lvert\vec n\rvert\cdot1}=\frac{qr}{\lvert\vec n\rvert}
$$
である。$qr>0$ なので $\cos\theta_1>0$、つまり $\theta_1<90^\circ$ である。同じく $zx$ 平面、$xy$ 平面とのなす角 $\theta_2$、$\theta_3$ は $\cos\theta_2=\dfrac{rp}{\lvert\vec n\rvert}$、$\cos\theta_3=\dfrac{pq}{\lvert\vec n\rvert}$ を満たす。
段 4(正射影)。$yz$ 平面への正射影は $x$ 座標を $0$ にするので、$\mathrm A$ は $\mathrm O$ に写り、$\mathrm B$、$\mathrm C$ は動かない。三角形 $\mathrm{ABC}$ の正射影は三角形 $\mathrm{OBC}$ である。thm-opa-area により $S_1=S\cos\theta_1$ である。同じく $zx$ 平面への正射影は三角形 $\mathrm{OCA}$、$xy$ 平面への正射影は三角形 $\mathrm{OAB}$ で、$S_2=S\cos\theta_2$、$S_3=S\cos\theta_3$ である。
段 5(2 乗して足す)。$\lvert\vec n\rvert^2=q^2r^2+r^2p^2+p^2q^2$ なので
$$
S_1^2+S_2^2+S_3^2=S^2\cdot\frac{q^2r^2+r^2p^2+p^2q^2}{\lvert\vec n\rvert^2}=S^2
$$
である。$\square$
この等式を de Gua の定理(空間の三平方の定理)という(de Guaの定理)。空間図形の計量 の命題「直角をもつ四面体の面積と高さ」では、三垂線の定理で三角形 $\mathrm{ABC}$ の高さを求めて $S=\dfrac12\sqrt{p^2q^2+q^2r^2+r^2p^2}$ を示した。ここでは高さを求めずに、正射影だけで同じ式に達した。段 4 から $S=\dfrac{S_1}{\cos\theta_1}=\dfrac{qr}2\cdot\dfrac{\lvert\vec n\rvert}{qr}=\dfrac{\lvert\vec n\rvert}2$ とも読め、これは同じ式である。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 線分が交線に 平行か垂直 であること | 長さの倍率が $1$ か $\cos\theta$ になる(lem-opa-length) | ex-opa-oblique-segment |
| 光が平面に 垂直(正射影)であること | 面積が $\cos\theta$ 倍になる(thm-opa-area) | ex-opa-oblique-light |
| $\theta$ が交線に 垂直な 2 直線で測った角であること | 面積が $\cos\theta$ 倍になる(thm-opa-area) | ex-opa-wrong-angle |
平面 $z=y$($xy$ 平面とのなす角 $45^\circ$)の上の線分 $(0,0,0)$–$(1,1,1)$ は、長さ $\sqrt3$ である。$xy$ 平面への正射影は $(0,0,0)$–$(1,1,0)$ で、長さ $\sqrt2$ である。倍率は $\dfrac{\sqrt2}{\sqrt3}=\dfrac{\sqrt6}3$(約 $0.816$)で、$1$ でも $\cos45^\circ=\dfrac{\sqrt2}2$(約 $0.707$)でもない。この線分は交線 $x$ 軸に平行でも垂直でもない(方向 $(1,1,1)$ と $(1,0,0)$ の内積は $1$ で、$0$ でも、長さの積 $\sqrt3$ に等しくもない)ので、lem-opa-length の仮定を満たさない。長さの倍率は線分の向きで変わるが、それでも ex-opa-area-check のように、面積の倍率は $\cos\theta$ になる。
平面 $z=y$ の上の長方形で、頂点が $(0,0,0)$、$(1,0,0)$、$(1,1,1)$、$(0,1,1)$ のものを考える。辺の長さは $1$ と $\sqrt2$ で、面積は $\sqrt2$ である。
ex-opa-cube-section の (1) の正三角形(平面 $x+y+z=1$、面積 $\dfrac{\sqrt3}2$)で、辺 $(1,0,0)$–$(0,0,1)$ と床のなす角を $\theta$ としてしまうと、この辺の方向 $(-1,0,1)$ とその正射影の方向 $(-1,0,0)$ から $\cos\theta=\dfrac{1}{\sqrt2\cdot1}=\dfrac{\sqrt2}2$($45^\circ$)になり、$\dfrac{\sqrt3}2\cdot\dfrac{\sqrt2}2=\dfrac{\sqrt6}4$(約 $0.612$)が出る。正しい影の面積は $\dfrac12$ で、合わない。平面 $x+y+z=1$ と床の交線は直線 $x+y=1,\ z=0$(方向 $(1,-1,0)$)で、辺の方向 $(-1,0,1)$ との内積は $-1\ne0$ なので、この辺は交線に垂直でない。2 平面のなす角は交線に垂直な 2 直線で測るもので、正しくは $\cos\theta=\dfrac1{\sqrt3}$ である(ex-opa-angle の (2))。
prf-opa-area では、$\alpha$ の座標 $(u,v)$ の点を $\beta$ の座標 $(u,\ v\cos\theta)$ の点に写した。これは行列
$$
\begin{pmatrix}1&0\\ 0&\cos\theta\end{pmatrix}
$$
で表される 1 次変換で、行列式は $\cos\theta$ である。1次変換と行列式:面積の拡大率 の定理「行列式は符号付き面積の拡大率」により、1 次変換で面積は行列式の絶対値倍になる。thm-opa-area は、この一般的な事実の特別な場合である。
同じ記事の注意「一般の図形への拡張(証明しない)」(そこでも証明はせず文献から引用している。この記事でも証明しない)により、円のように多角形でない図形でも倍率は同じである。たとえば $\alpha$ の上で、交線上の点を中心とする半径 $r$ の円 $u^2+v^2=r^2$ の正射影は、$x=u$、$y=v\cos\theta$ から
$$
\frac{x^2}{r^2}+\frac{y^2}{(r\cos\theta)^2}=1
$$
の楕円で、その面積 $\pi\cdot r\cdot r\cos\theta=\pi r^2\cos\theta$ は円の面積の $\cos\theta$ 倍である(楕円の面積 $\pi ab$ は 2次曲線の媒介変数表示 にある)。$r=2$、$\theta=60^\circ$ なら、半径 $2$ の円(面積 $4\pi$)の影は半径が $2$ と $1$ の楕円で、面積は $2\pi$ である。
平面の多角形の面積を $S$、平面の単位法線ベクトルを $\vec e=(e_1,e_2,e_3)$ とするとき、ベクトル $S\vec e$ を 面積ベクトル という。$e_1,e_2,e_3$ がどれも $0$ でないとき、prf-opa-degua の段 3・段 4 と同じ計算で、$yz$ 平面、$zx$ 平面、$xy$ 平面への正射影の面積は $S\lvert e_1\rvert$、$S\lvert e_2\rvert$、$S\lvert e_3\rvert$ である。つまり、面積ベクトルの成分の絶対値は、3 つの座標平面への影の面積である。三角形 $\mathrm{ABC}$ では、単位法線ベクトル $\vec e$ を外積 $\overrightarrow{\mathrm{AB}}\times\overrightarrow{\mathrm{AC}}$ と同じ向きにとれば、面積ベクトルは外積 $\dfrac12\overrightarrow{\mathrm{AB}}\times\overrightarrow{\mathrm{AC}}$ に等しい($\vec e$ を逆向きにとれば符号だけが変わる。外積の長さは 2 辺の張る平行四辺形の面積で、向きは法線の向きである。空間の平面と法線ベクトル)。prf-opa-degua の三角形では $\dfrac12\overrightarrow{\mathrm{AB}}\times\overrightarrow{\mathrm{AC}}=\dfrac12(qr,\ rp,\ pq)$ で、成分がちょうど $S_1$、$S_2$、$S_3$ になっている。de Gua の定理は「面積ベクトルの長さの 2 乗は成分の 2 乗の和」と読める。
大学では、面積ベクトルは曲面を流れる量(流束)を面積分で計算するときの基本になる。また、$n$ 次元の空間の中で、1 つの $k$ 次元の平面に含まれる図形(たとえば $k$ 本のベクトルが張る平行体)の体積の 2 乗は、$k$ 個の座標軸が張る部分空間への正射影の体積の 2 乗の和に等しい。これは行列式についての Cauchy–Binet の公式から出る(この記事では証明しない)。図形が平らであるという仮定は外せない。たとえば半径 $1$ の半球面 $x^2+y^2+z^2=1$、$z\ge0$ は面積が $2\pi$ で 2 乗は $4\pi^2$ だが、3 つの座標平面への正射影は半径 $1$ の円板と 2 つの半円板で、面積の 2 乗の和は $\pi^2+\left(\dfrac\pi2\right)^2+\left(\dfrac\pi2\right)^2=\dfrac{3\pi^2}2$ にしかならない。直線への正射影を一般の部分空間への正射影に広げ、行列で表す話は 正射影と射影行列 で扱う。
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