Murnaghan–中山の規則

同義語:Murnaghan-中山の規則Murnaghan–Nakayamaの規則Murnaghan–Nakayama rule

概要

Murnaghan–中山の規則(Murnaghan–Nakayama rule)とは、対称群 $S_d$ の既約指標 $\chi^\lambda$ の値を、Young 図形から縁の帯(連結で $2\times2$ の正方形を含まない歪図形)を取り除いて計算する規則である。$\sigma$ が長さ $m$ の巡回置換と残りの置換 $\tau$ の積なら、$\chi^\lambda(\sigma)$ は、$\lambda/\mu$ が大きさ $m$ の縁の帯である $\mu$ についての $(-1)^{\operatorname{ht}(\lambda/\mu)}\chi^\mu(\tau)$ の和に等しい。高さ $\operatorname{ht}$ は帯の行数から $1$ を引いた数である。冪和と Schur 多項式の積の展開と Frobenius の公式から導かれる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Schur多項式, 群の指標, 対称群, Young図形

Murnaghan–中山の規則(Murnaghan–Nakayama rule)とは、対称群 $S_d$ の既約指標 $\chi^\lambda$ の値を、Young 図形から「縁の帯」を取り除いていくことで計算する規則である。$\sigma\in S_d$ が長さ $m$ の巡回置換と残りの $d-m$ 文字の置換 $\tau$ の積なら
$$ \chi^\lambda(\sigma)=\sum_{\mu}(-1)^{\operatorname{ht}(\lambda/\mu)}\chi^\mu(\tau) $$
であり、和は $\lambda$ から大きさ $m$ の縁の帯を取り除いて得られる分割 $\mu$ 全体を、$\operatorname{ht}$ は帯の行数から $1$ を引いた数を表す。
$S_d$ の既約表現は $d$ の分割 $\lambda$ で番号付けられ、指標は Frobenius の公式によって冪和と Schur多項式 の関係として書ける。ただし、その公式から指標の値を読み出すには多項式の係数を取り出す計算が要る。Murnaghan–中山の規則は、この計算を図形の操作に置き換え、巡回置換を 1 つずつ外して $S_{d-m}$ の指標に帰着させる。規則の核心は、冪和 $p_m$ を Schur 多項式に掛けたときの展開 $p_ms_\mu=\sum\pm s_\lambda$(thm-mn-symmetric)であり、この記事ではそれを双交代式の計算で証明し、Frobenius の公式(引用)と組み合わせて規則を導く。

結果内容
lem-mn-strip双交代式の指数に $m$ を足して並べ替えることと、縁の帯を足すことの対応
thm-mn-symmetric$p_ms_\mu=\sum_\lambda(-1)^{\operatorname{ht}(\lambda/\mu)}s_\lambda$
thm-mn-main指標の値についての Murnaghan–中山の規則
cor-mn-iterate縁の帯による盤の符号付きの数え上げ、鉤の形と長い巡回置換

定義

$d\ge0$ の分割 $\lambda=(\lambda_1\ge\lambda_2\ge\cdots)$ を、第 $i$ 行に $\lambda_i$ 個の箱を左詰めで並べた Young図形 と同一視し、$\lambda\vdash d$ と書く。$\ell(\lambda)$ は $0$ でない行の数である。箱を $(i,j)$(第 $i$ 行・第 $j$ 列)で表す。分割 $\mu,\lambda$ について、図形として $\mu\subset\lambda$(すべての $i$ で $\mu_i\le\lambda_i$)のとき、差の集合 $\lambda\setminus\mu$ を歪図形 $\lambda/\mu$ という。2 つの箱は、辺を共有するとき隣り合うという。

縁の帯と高さ

$\mu\subset\lambda$ とする。歪図形 $\lambda/\mu$ が縁の帯(border strip、rim hook、skew hook)であるとは、$\lambda/\mu$ が空でなく、隣り合う箱をたどって連結であり、$2\times2$ の正方形の形に並んだ 4 つの箱を含まないことをいう。縁の帯の箱の個数を大きさといい、帯が占める行の数から $1$ を引いた数を高さ $\operatorname{ht}(\lambda/\mu)$ という。

縁の帯は $\lambda$ の右下の縁に沿って並ぶ帯であり、これを取り除いた $\mu$ もまた Young 図形である。たとえば $\lambda=(3,2)$ では、$\mu=(1,1)$ とした $\lambda/\mu=\{(1,2),(1,3),(2,2)\}$ は大きさ $3$、高さ $1$ の縁の帯であるが、$\mu=(2)$ とした $\{(1,3),(2,1),(2,2)\}$ は $(1,3)$ がほかの箱と隣り合わないので縁の帯でない。
$\sigma\in S_d$ を互いに素な巡回置換の積に書いたときの長さの分割を $\sigma$ の巡回型といい、$\rho(\sigma)$ と書く(対称群 の定理「共役類の分類」により、共役類は巡回型で決まる)。指標は類関数なので、$\chi^\lambda(\rho)$ とも書く。分割 $\rho=(\rho_1,\dots,\rho_r)$ に対し、$n$ 変数の冪和 $p_k:=x_1^k+\cdots+x_n^k$ を用いて $p_\rho:=p_{\rho_1}\cdots p_{\rho_r}$ とおく($p_\emptyset:=1$)。
双交代式 $a_\alpha=\det(x_i^{\alpha_j})_{1\le i,j\le n}$、$\delta=(n-1,\dots,1,0)$、Schur 多項式 $s_\lambda=a_{\lambda+\delta}/a_\delta$($\ell(\lambda)\le n$。$\ell(\lambda)>n$ なら $s_\lambda:=0$)は Schur多項式 の定義「交代多項式と双交代式」と定義「Schur多項式」のとおりとする。$\alpha$ の成分を置換 $\pi$ で並べ替えた $\alpha'$ について $a_{\alpha'}=\operatorname{sgn}(\pi)a_\alpha$(列の並べ替え)であり、$\alpha$ に等しい成分があれば $a_\alpha=0$ である(同じ記事の補題「交代多項式の基本性質」)。

Frobenius の公式

$S_d$ の複素既約表現の同値類は $d$ の分割 $\lambda$ と一対一に対応する。$\lambda$ に対応する既約指標を $\chi^\lambda$ と書く。$S_0$ は自明な群で、$\chi^\emptyset=1$ とする。

Frobenius の公式(この記事では証明しない)

$n\ge d$ とする。$d$ の分割 $\rho$ について、$n$ 変数の多項式として
$$ p_\rho=\sum_{\lambda\vdash d}\chi^\lambda(\rho)\,s_\lambda,\qquad\text{すなわち}\qquad a_\delta\,p_\rho=\sum_{\lambda\vdash d}\chi^\lambda(\rho)\,a_{\lambda+\delta} $$
が成り立つ。

既約表現の構成(Young 対称子による)は FH91 Theorem 4.3(p. 46)、この公式は同書の Frobenius Formula 4.10(pp. 48–49。$a_\delta p_\rho$ の単項式 $x^{\lambda+\delta}$ の係数が $\chi^\lambda(\rho)$ であるという形)と、その直後の Schur 多項式による言い換え(p. 49)にあり、証明は同書 §4.3 にある。$\lambda+\delta$ は狭義減少なので、$a_{\lambda+\delta}$ の単項式のうち狭義減少な指数をもつものは $x^{\lambda+\delta}$ だけであり、2 つの形は同じことを述べている。指標の直交関係を使うと、これは Schur多項式 の定理「一般線形群と対称群の既約指標」の 2 の式と同値になる。
$\ell(\lambda)\le n$ の $s_\lambda$ は対称多項式の環の基底をなすので(Schur多項式 の定理「対称多項式の環の基底」)、thm-mn-frobenius の係数 $\chi^\lambda(\rho)$ は左辺から一意に決まる。$n\ge d$ なので $\lambda\vdash d$ はすべて $\ell(\lambda)\le n$ を満たす。

指数の並べ替えと縁の帯

以下 $n\ge1$ を固定し、$\ell(\mu)\le n$ の分割 $\mu$ に $l_i:=\mu_i+n-i$($1\le i\le n$)を対応させる。$l_1>l_2>\cdots>l_n\ge0$ であり、逆に狭義減少な $n$ 個の非負整数はこの形にただ一通りに書ける。

指数に $m$ を足すことと縁の帯

$m\ge1$、$1\le s\le n$ とし、$l_s+m$ がどの $l_j$ とも等しくないとする。$l_t< l_s+m$ となる最小の $t$ をとると $t\le s$ であり、$(l_1,\dots,l_s+m,\dots,l_n)$ を減少順に並べ替えた列は $\lambda+\delta$ の形で、次が成り立つ。

  1. $\lambda\supset\mu$、$\ell(\lambda)\le n$ であり、$\lambda/\mu$ は第 $t$ 行から第 $s$ 行を占める大きさ $m$ の縁の帯で、$\operatorname{ht}(\lambda/\mu)=s-t$ である。
  2. 並べ替えの置換の符号は $(-1)^{s-t}$ である。
    逆に、$\lambda\supset\mu$、$\ell(\lambda)\le n$ で $\lambda/\mu$ が大きさ $m$ の縁の帯なら、その最も下の行を $s$ とすると $l_s+m$ はどの $l_j$ とも等しくなく、$\lambda$ は $s$ から上のように得られる。したがって、$l_s+m$ が重ならない $s$ と、そのような $\lambda$ は一対一に対応する。

要点:$l_s+m$ を第 $t$ 位置に入れると、$l_t,\dots,l_{s-1}$ が 1 つずつ下にずれ、そのずれが各行に 1 箱ずつの段差を作る。

詳しい証明を開く

前半。$l_s< l_s+m$ なので $t\le s$ である。並べ替えた列は $l_1,\dots,l_{t-1},\,l_s+m,\,l_t,\dots,l_{s-1},\,l_{s+1},\dots,l_n$ で、$t$ の選び方から狭義減少である。これを $\lambda_i+n-i$ と書くと、$i< t$ と $i> s$ では $\lambda_i=\mu_i$、$t< i\le s$ では $\lambda_i=l_{i-1}-(n-i)=\mu_{i-1}+1$、$\lambda_t=l_s+m-(n-t)=\mu_s+m-(s-t)$ である。狭義減少なので $\lambda$ は分割で、$\ell(\lambda)\le n$ である。$t< i\le s$ では $\lambda_i=\mu_{i-1}+1>\mu_i$、また $l_s+m>l_t$ から $\lambda_t>\mu_t$ なので、$\lambda\supset\mu$ で、$\lambda/\mu$ は第 $t$ 行から第 $s$ 行のすべてに箱をもち、ほかの行には箱をもたない。

$t< i\le s$ について、第 $i$ 行の帯の最も右の箱は第 $\lambda_i=\mu_{i-1}+1$ 列にあり、第 $i-1$ 行の帯の最も左の箱も第 $\mu_{i-1}+1$ 列にある。よって隣り合う行の帯は辺を共有し、$\lambda/\mu$ は連結である。$2\times2$ の正方形が第 $i-1$・$i$ 行の第 $c$・$c+1$ 列にあるとすると、$c>\mu_{i-1}$ かつ $c+1\le\lambda_i=\mu_{i-1}+1$ となり矛盾する。箱の個数は $(\lambda_t-\mu_t)+\sum_{i=t+1}^{s}(\mu_{i-1}+1-\mu_i)=\mu_s+m-(s-t)-\mu_t+(\mu_t-\mu_s)+(s-t)=m$ であり、占める行は $s-t+1$ 個なので高さは $s-t$ である。並べ替えは第 $s$ 位置の成分を第 $t$ 位置へ移し、その間の $s-t$ 個を 1 つずつ後ろへ送る巡回置換なので、符号は $(-1)^{s-t}$ である。

逆。$\lambda/\mu$ が大きさ $m$ の縁の帯で、第 $t$ 行から第 $s$ 行を占めるとする(連結なので占める行は連続し、その各行に箱がある)。$t< i\le s$ とする。$\lambda_i\ge\mu_{i-1}+2$ なら、第 $i-1$・$i$ 行の第 $\mu_{i-1}+1$・$\mu_{i-1}+2$ 列の 4 箱が $\lambda/\mu$ に入り($\mu_i\le\mu_{i-1}$、$\lambda_{i-1}\ge\lambda_i$ による)、$2\times2$ の正方形になる。よって $\lambda_i\le\mu_{i-1}+1$ である。一方、第 $t$ 行から第 $i-1$ 行の部分と第 $i$ 行から第 $s$ 行の部分を結ぶ辺は、第 $i-1$ 行と第 $i$ 行の箱が同じ列 $c$ にあるものだけで、$c>\mu_{i-1}$ かつ $c\le\lambda_i$ なので $\lambda_i\ge\mu_{i-1}+1$ である。よって $\lambda_i=\mu_{i-1}+1$ であり、ほかの行では $\lambda_i=\mu_i$、$\lambda_t$ は大きさが $m$ であることから $\mu_s+m-(s-t)$ と決まる。このとき $\lambda_i+n-i$ は前半の並べ替えた列と一致し、それが狭義減少であることから $l_s+m$ はほかの $l_j$ と異なり、$t$ は $l_t< l_s+m$ となる最小の番号である。$\lambda$ は $\mu$ と最も下の行 $s$ で決まるので、対応は一対一である。$\square$

冪和と Schur 多項式の積

冪和を掛ける規則

$n\ge1$、$m\ge1$ とし、$\mu$ を $\ell(\mu)\le n$ の分割とする。$n$ 変数の多項式として
$$ p_m\,s_\mu=\sum_{\lambda}(-1)^{\operatorname{ht}(\lambda/\mu)}s_\lambda $$
が成り立つ。和は $\lambda\supset\mu$、$\ell(\lambda)\le n$ で $\lambda/\mu$ が大きさ $m$ の縁の帯であるもの全体をわたる。

$\alpha\in\mathbb{N}^n$ について $a_\alpha=\sum_{\pi\in S_n}\operatorname{sgn}(\pi)\,x_{\pi(1)}^{\alpha_1}\cdots x_{\pi(n)}^{\alpha_n}$ である。各項に $p_m=\sum_kx_k^m$ を掛け、$k=\pi(s)$ と書き直すと
$$ p_m\,a_\alpha=\sum_{\pi\in S_n}\operatorname{sgn}(\pi)\sum_{s=1}^{n}x_{\pi(1)}^{\alpha_1}\cdots x_{\pi(s)}^{\alpha_s+m}\cdots x_{\pi(n)}^{\alpha_n}=\sum_{s=1}^{n}a_{\alpha+me_s} $$
である($e_s$ は第 $s$ 成分だけが $1$ のベクトル)。$\alpha=\mu+\delta=(l_1,\dots,l_n)$ とする。$l_s+m$ がほかの $l_j$ と等しい $s$ では $a_{\alpha+me_s}=0$ である。そうでない $s$ では、lem-mn-strip の $\lambda$ について、並べ替えの符号から $a_{\alpha+me_s}=(-1)^{\operatorname{ht}(\lambda/\mu)}a_{\lambda+\delta}$ である。lem-mn-strip の一対一対応により
$$ p_m\,a_{\mu+\delta}=\sum_{\lambda}(-1)^{\operatorname{ht}(\lambda/\mu)}a_{\lambda+\delta} $$
となり、両辺を $a_\delta$ で割ればよい。$\square$

$m=1$ の縁の帯は 1 つの箱で、高さは $0$ である。したがって $p_1s_\mu=\sum s_\lambda$(和は $\mu$ に箱を 1 つ足した Young 図形全体)であり、これは Pieri の公式の最も簡単な場合である。

主定理

Murnaghan–中山の規則

$d\ge m\ge1$ とし、$\lambda\vdash d$ とする。$\sigma\in S_d$ が長さ $m$ の巡回置換 $c$ と、$c$ が動かさない $d-m$ 文字の置換 $\tau$ の積 $\sigma=c\tau$ であるとき、$\tau$ を $S_{d-m}$ の元とみて
$$ \chi^\lambda(\sigma)=\sum_{\mu}(-1)^{\operatorname{ht}(\lambda/\mu)}\chi^\mu(\tau) $$
が成り立つ。和は $\mu\subset\lambda$、$\mu\vdash d-m$ で $\lambda/\mu$ が縁の帯であるもの全体をわたる(そのような $\mu$ がなければ右辺は $0$)。

変数の個数を $n:=d$ とする。$\sigma$ の巡回型は、$\tau$ の巡回型 $\rho'$($d-m$ の分割)に $m$ を加えたものなので、$p_{\rho(\sigma)}=p_m\,p_{\rho'}$ である。thm-mn-frobenius を $S_{d-m}$ に当てはめると($n\ge d-m$)
$$ p_{\rho'}=\sum_{\mu\vdash d-m}\chi^\mu(\tau)\,s_\mu $$
であり、$d-m=0$ のときもこれは $1=\chi^\emptyset s_\emptyset$ として成り立つ。$p_m$ を掛けて thm-mn-symmetric を使うと
$$ p_{\rho(\sigma)}=\sum_{\mu\vdash d-m}\chi^\mu(\tau)\sum_{\lambda}(-1)^{\operatorname{ht}(\lambda/\mu)}s_\lambda=\sum_{\lambda\vdash d}\Bigl(\sum_{\mu}(-1)^{\operatorname{ht}(\lambda/\mu)}\chi^\mu(\tau)\Bigr)s_\lambda $$
である。ここで $\lambda/\mu$ は大きさ $m$ の縁の帯なので $\lambda\vdash d$ であり、$n=d$ なので $\ell(\lambda)\le n$ の条件は自動的に満たされる。一方 thm-mn-frobenius により $p_{\rho(\sigma)}=\sum_{\lambda\vdash d}\chi^\lambda(\sigma)s_\lambda$ である。$s_\lambda$($\lambda\vdash d$)は一次独立なので、係数を比べて主張を得る。$\square$

$\sigma$ の巡回置換のうちどれを $c$ に選んでもよい。選び方によって計算の途中は変わるが、結果は同じである。

繰り返しと特別な場合

$\lambda\vdash d$ とし、$\sigma$ の巡回置換の長さを任意の順に $m_1,\dots,m_r$ と並べる。

  1. $\chi^\lambda(\sigma)=\sum_T(-1)^{\operatorname{ht}(T)}$ である。和は $\emptyset=\lambda^{(0)}\subset\lambda^{(1)}\subset\cdots\subset\lambda^{(r)}=\lambda$ で各 $\lambda^{(k)}/\lambda^{(k-1)}$ が大きさ $m_k$ の縁の帯である列 $T$ 全体をわたり、$\operatorname{ht}(T)$ は高さの和である。
  2. $\lambda$ に鉤の長さが $m$ の箱がなければ、長さ $m$ の巡回置換を含む $\sigma$ について $\chi^\lambda(\sigma)=0$ である。
  3. $\sigma$ が長さ $d$ の巡回置換なら、$\chi^\lambda(\sigma)$ は $\lambda$ が鉤の形 $(d-b,1^b)$ のとき $(-1)^b$、そうでなければ $0$ である。

1。 thm-mn-main を $r$ についての帰納法で繰り返し当てはめ、最後に $\chi^\emptyset=1$ を使う。
2。 $\lambda/\mu$ が第 $t$ 行から第 $s$ 行を占める大きさ $m$ の縁の帯なら、lem-mn-strip の証明の式から $\lambda_t=\mu_s+m-(s-t)$、$t< i\le s$ で $\lambda_i=\mu_{i-1}+1\ge\mu_s+1$、$\lambda_{s+1}=\mu_{s+1}\le\mu_s$ である。よって箱 $u=(t,\mu_s+1)$ は $\lambda$ に入り、その下には第 $t+1$ 行から第 $s$ 行の $s-t$ 個の箱がある。$u$ の鉤の長さ(Young図形 の定義「腕・脚・鉤の長さと角」)は $(\lambda_t-\mu_s-1)+(s-t)+1=m$ である。したがって鉤の長さが $m$ の箱がなければ縁の帯もなく、thm-mn-main の和は空である。
3。 $\tau$ は $S_0$ の元なので、和は $\lambda/\emptyset=\lambda$ 自身が縁の帯である場合の 1 項だけである。$\lambda$ が $2\times2$ の正方形を含まないことは $\lambda_2\le1$ と同じであり、そのとき $\lambda=(d-b,1^b)$ は連結で、高さは $b$ である。$\square$

1 で $m_k$ をすべて $1$ にとると、$\chi^\lambda(1)=\dim$ は箱を 1 つずつ足す列、すなわち形 $\lambda$ の標準盤の個数になる(Young図形 の命題「標準盤の個数の漸化式」と同じ漸化式)。

例

小さい対称群
  1. $S_2$:$\chi^{(1,1)}((1\,2))$ は、$(1,1)$ から縦の 2 箱(高さ $1$)を取り除く 1 項で $-1$、$\chi^{(2)}((1\,2))$ は横の 2 箱(高さ $0$)で $1$ である。$(1,1)$ は符号表現、$(2)$ は自明表現である。
  2. $S_4$ の $\lambda=(2,2)$:$(1\,2)(3\,4)$ では、まず長さ $2$ の帯を取り除く。第 2 行の横の 2 箱(高さ $0$、$\mu=(2)$)と第 2 列の縦の 2 箱(高さ $1$、$\mu=(1,1)$)があり、$\chi^{(2,2)}=\chi^{(2)}((1\,2))-\chi^{(1,1)}((1\,2))=1-(-1)=2$ である。$(1\,2\,3)$ では、$\mu=(1)$ で $\lambda/\mu=\{(1,2),(2,1),(2,2)\}$ が高さ $1$ の帯なので $\chi^{(2,2)}=-1$ である。$(1\,2\,3\,4)$ では、$(2,2)$ は鉤の形でないので cor-mn-iterate の 3 により $0$ である。単位元では、標準盤が 2 つなので $2$ である。
  3. $S_5$ の $\lambda=(3,2)$ と $\sigma=(1\,2)(3\,4\,5)$:長さ $3$ の帯を先に取り除く。$\mu=(1,1)$ は高さ $1$ の帯を与え、$\mu=(2)$ は上で見たとおり縁の帯を与えない。よって $\chi^{(3,2)}(\sigma)=-\chi^{(1,1)}((1\,2))=1$ である。長さ $2$ の帯を先に取り除いても、$\mu=(3)$(第 2 行、高さ $0$)と $\mu=(2,1)$($\{(1,3),(2,2)\}$ は連結でない)を調べて($(1,1,1)$ は $(3,2)$ に含まれない)、$\chi^{(3)}((1\,2\,3))=1$ の 1 項だけが残り、同じ値 $1$ を得る。

互換 $(1\,2)$ では、2 の同じ 2 つの帯を取り除いたあと $\tau$ が $S_2$ の単位元になるので、$\chi^{(2,2)}((1\,2))=\chi^{(2)}(1)-\chi^{(1,1)}(1)=1-1=0$ である。こうして $S_4$ の $\chi^{(2,2)}$ の値 $2,0,2,-1,0$(単位元、互換、2 つの互換の積、長さ $3$ と $4$ の巡回置換)が得られる。

反例:規則の条件を外すと崩れること

外す条件反例成り立たなくなること
帯が連結$\lambda=(3,2)$、$\sigma=(1\,2)(3\,4\,5)$ で $\mu=(2)$ の項も足す右辺が $1\pm1$ になり、正しい値 $1$ にならない
$2\times2$ の正方形を含まない$\lambda=(2,2)$、$\sigma=(1\,2\,3\,4)$ で $\mu=\emptyset$ の項を足す右辺が $\pm1$ になり、正しい値 $0$ にならない
符号 $(-1)^{\operatorname{ht}}$$\lambda=(1,1)$、$\sigma=(1\,2)$ で符号を $+1$ にする右辺が $1$ になり、符号表現の値 $-1$ にならない
反例の確かめ

1 行目。 ex-mn-small の 3 により正しい値は $1$ である。$\mu=(2)$ の歪図形 $\{(1,3),(2,1),(2,2)\}$ は連結でなく、$2\times2$ の正方形も含まない。$\chi^{(2)}((1\,2))=1$ なので、この項を足すと高さの取り方によらず $1\pm1\in\{0,2\}$ となる。
2 行目。 $(2,2)$ は連結だが $2\times2$ の正方形そのものである。正しい値は cor-mn-iterate の 3 により $0$ で、この項を足すと $\pm\chi^\emptyset=\pm1$ になる。
3 行目。 $(1,1)/\emptyset$ は高さ $1$ の縁の帯で、符号を落とすと $+1$ になる。符号表現の互換での値は $-1$ である。$\square$

補足

名前と関連する公式
  1. 名は F. D. Murnaghan と中山正(Tadasi Nakayama、1912–1964、環論・表現論)にちなむ。指標の値を図形の操作で計算するこの規則は FH91 Problem 4.45(pp. 59–60)に述べられており、そこでは繰り返しの形(cor-mn-iterate の 1)と、Littlewood–Richardson 規則から導く道筋も挙げられている。
  2. thm-mn-symmetric の両辺は、変数を $1$ つ減らして $x_n=0$ を代入すると $n-1$ 変数の同じ等式になる(Schur多項式 の命題「変数の個数に関する安定性」)。このため、次数を固定すれば $n$ によらない等式として 対称関数 の環でも成り立つ。
  3. 規則は値の計算を $S_{d-m}$ に帰着させるので、指標表を小さい $d$ から順に作るのに向いている。cor-mn-iterate の 3 のように、長い巡回置換での値は図形を一目見るだけで決まる。

関連項目

参考文献

[1]
William Fulton, Joe Harris, Representation Theory: A First Course, Graduate Texts in Mathematics 129, Springer, 1991, §4.1 Theorem 4.3(p. 46)、(4.7)–(4.9) と Frobenius Formula 4.10、Schur 多項式による言い換え(pp. 48–49)、§4.3(Frobenius の公式の証明)、Problem 4.45(pp. 59–60)

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する