第1可算公理

同義語:第一可算公理第1可算空間第一可算空間

概要

第1可算公理(First-countable axiom)とは、位相空間論において、空間内の各点が「可算な近傍系」を持つという局所的な性質を指す。具体的には、任意の点に対して、縮小していく可算個の近傍列が存在し、その点の周りの位相構造をその列だけで完全に記述できることを意味する。距離空間は常にこの性質を満たすため、第1可算空間は「距離空間のように点列による収束概念が有効に機能する空間」の一般化として位置づけられる。

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定義

位相空間 $(X, \mathcal{O})$第1可算公理を満たす(あるいは第1可算空間である)とは、各点 $x \in X$ において、可算な基本近傍系(local base)が存在することをいう。

第1可算公理

任意の点 $x \in X$ に対して、可算個の近傍の族 $\mathcal{N}_x = \{U_1, U_2, \dots \}$ が存在し、
$x$ の任意の近傍 $V$ に対して、ある $U_k \in \mathcal{N}_x$ が存在して $U_k \subseteq V$ となる。

この定義は直感的には、「どんなに小さな近傍 $V$ を持ってきても、あらかじめ用意したリスト($\mathcal{N}_x$)の中に、それよりもさらに内側に入り込む近傍 $U_k$ が見つかる」ということを意味する。

直感的理解:距離空間の一般化

第1可算公理は、距離空間が持つ局所的な性質を抽出したものである。

距離空間の場合

距離空間 $(X, d)$ において、点 $x$ を中心とする半径 $1/n$ の開球の族
$$\mathcal{B}_x = \left\{ B(x, 1/n) \mid n \in \mathbb{N} \right\}$$
を考えると、これは $x$ の可算な基本近傍系となる。したがって、すべての距離空間は第1可算空間である

つまり、第1可算空間とは、「距離関数そのものは定義できないかもしれないが、点 $x$ に近づく様子を『$n \to \infty$』という可算のステップで表現できる空間」であると解釈できる。

性質:点列による位相の記述

第1可算空間が解析学的に重要である最大の理由は、位相的性質(閉集合、連続性など)を「点列の収束」という扱いやすい道具だけで完全に特徴付けられる点にある。これを点列原理と呼ぶことがある。

点列による特徴付け

$X$ が第1可算空間であるとき、以下が成り立つ。

  1. 閉包の判定:
    点 $x$ が部分集合 $A$ の閉包 $\overline{A}$ に属するための必要十分条件は、$A$ 内の点列 ${a_n}$ が存在して $x$ に収束することである。
  2. 連続性の判定:
    写像 $f: X \to Y$ が点 $x$ で連続であるための必要十分条件は、点列連続性($x_n \to x \implies f(x_n) \to f(x)$)を満たすことである。

逆に言えば、第1可算でない一般の位相空間では、点列の概念だけでは位相構造を捉えきれず、より一般化されたネット(Moore-Smith列)やフィルターの概念が必要となる。

第2可算公理との関係

名前が似ている第2可算公理とは、明確な包含関係がある。「第2」の方がより厳しい(強い)条件である。

包含関係

$$\text{距離空間} \implies \text{第2可算} \implies \text{第1可算}$$

  • 第2可算 $\implies$ 第1可算:
    全体を覆う可算な開基(第2可算)があれば、そのうち $x$ を含むものだけを集めれば $x$ の可算近傍基(第1可算)になる。
  • 第1可算 $\not\implies$ 第2可算:
    各点で近傍が可算であること(局所的性質)は、空間全体を可算個で覆えること(大域的性質)を保証しない。

具体例と反例

第1可算性は多くの「普通の」空間で成り立つが、無限次元の操作や過度に大きな集合を扱うと破綻する。

第1可算である例
  • 距離空間: 前述の通り。
  • 多様体: $\mathbb{R}^n$ と局所的に同相であるため、$\mathbb{R}^n$ の第1可算性を受け継ぐ。
  • 離散空間: 任意の集合上の離散位相は、$x$ の基本近傍系として $\{ \{x\} \}$ (1個だけ)をとれるため、第1可算である。
    • 注: 非可算集合上の離散空間は、第1可算だが第2可算ではない代表例である。

一方、以下のような空間は第1可算ではない。これらの空間では、「点列 $x_n$$x$ に近づく」という直観が通用しない(近づいているように見えても極限ではない、あるいは極限点なのに近づく点列が存在しない)現象が起こる。

反例(第1可算ではない空間)
  1. 非可算集合上の補有限位相:
    非可算集合 $X$ で、開集合を「補集合が有限または空」と定義する。
    このとき、$x$ への点列収束は「有限個を除いて値が $x$ になる」という自明なケースしか許容されなくなるが、位相的には $x$ の近くに点は密集している。どのような可算な近傍列を用意しても、それらすべてに含まれない点が無数に存在してしまう。
  2. 非可算個の直積空間 $\mathbb{R}^J$:
    $\mathbb{R}$ (通常の位相)の非可算個の直積空間(直積位相)は第1可算ではない。
    • これにより、距離空間の非可算個の直積は距離化不可能であることがわかる。
  3. 商空間:
    第1可算空間の商空間は、必ずしも第1可算にはならない。

関連項目