凸最適化

同義語:convex optimization凸最適化問題convex optimization problem凸計画法convex programming

概要

凸最適化(convex optimization)とは、凸関数 $f_0$ を、凸関数 $f_1,\dots,f_m$ による条件 $f_i(x)\le0$ のもとで最小化する問題(凸最適化問題)と、その理論・解法のことである。凸最適化問題では局所最適解は必ず大域最適解であり、微分できる場合は勾配についての 1 次の条件で最適性を判定できる。条件を乗数 $\lambda_i\ge0$ で目的関数に繰り込んだ Lagrange 双対問題の最適値は主問題の最適値以下であり、条件を真に満たす点がある(Slater 条件)なら両者は一致する。そこから、関数が微分できる場合に最適解であるための必要十分条件として Karush–Kuhn–Tucker 条件が得られ、線形計画法や最小二乗法はその特別な場合である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 凸関数, 凸集合, 線形計画法

関数の最小値を、いくつかの不等式の条件のもとで求める問題を最適化問題という。一般の最適化問題では、ある点の近くで最小になっていても全体で最小とは限らず、候補を調べ尽くすのが難しい。目的の関数と条件を表す関数がどれも凸関数であれば事情は大きく変わり、近くで最小の点は全体で最小になり、最小になる点は勾配についての簡単な条件で判定できる。このような問題を 凸最適化問題 という。区間での下に凸な 2 次関数の最小値(2次関数の最大・最小)、連立 1 次不等式の表す領域での 1 次式の最大・最小(領域を使った最大・最小・線形計画法)、条件付きの最大・最小 のうち関数と条件が凸なもの、最小二乗法 の問題はその例である。
この記事では、凸最適化問題の局所最適解が大域最適解であること(thm-cvxopt-local-global)と、微分できる場合の最適性の条件(thm-cvxopt-optimality)を示したあと、Lagrange 双対問題を導入する。Slater 条件のもとでは主問題と双対問題の最適値が一致し(thm-cvxopt-slater)、そこから最適解の判定法である Karush–Kuhn–Tucker 条件(KKT 条件、thm-cvxopt-kkt)が得られる。

定義

以下、$\mathbb{R}^n$ の内積を $a\cdot x$、長さを $\|x\|$ と書く。関数 $f\colon\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}$ が凸であるとは、任意の $x,y$ と $0\le t\le1$ について $f((1-t)x+ty)\le(1-t)f(x)+tf(y)$ が成り立つことをいう(凸関数 の注意「多変数の凸関数」)。1 次式 $a\cdot x+\beta$ は凸であり、凸関数の $0$ 以上の係数の和も凸である。

凸最適化問題

$f_0,f_1,\dots,f_m\colon\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}$ を凸関数とする。問題
$$ \text{(C)}\qquad\text{最小化 } f_0(x)\quad\text{条件 } f_i(x)\le0\ (i=1,\dots,m) $$
を 凸最適化問題(convex optimization problem)という。$f_0$ を 目的関数、条件を満たす $x$ を 実行可能解、その全体 $X$ を 実行可能集合 といい、$p^*:=\inf_{x\in X}f_0(x)$ を 最適値 という($X=\emptyset$ なら $p^*=+\infty$、$p^*=-\infty$ もありうる)。

  • $x^*\in X$ が $f_0(x^*)=p^*$ を満たすとき、$x^*$ を 最適解(大域最適解)という。
  • $x\in X$ と $R>0$ について、$\|z-x\|\le R$ を満たすすべての $z\in X$ で $f_0(x)\le f_0(z)$ となるとき、$x$ を 局所最適解 という。

凹関数 $f$ の最大化は、凸関数 $-f$ の最小化と同じである。この記事では関数を $\mathbb{R}^n$ 全体で有限の値をとるものに限った。定義域を凸集合に制限した形や、1 次式の等式の制約 $a\cdot x=\beta$ を別に書く形もよく使われる(BV04 §4.2.1、p. 136)。等式の制約は 2 つの不等式 $a\cdot x-\beta\le0$、$-a\cdot x+\beta\le0$ で書けるので (C) に含まれるが、そうすると下の Slater 条件が成り立たなくなることに注意する。

実行可能集合と最適解の集合

(C) の実行可能集合 $X$ は凸集合であり、最適解の全体も凸集合である。$f_0$ が狭義凸関数($x\ne y$、$0< t< 1$ で不等式が $<$)なら、最適解は高々 1 つである。

$x,y\in X$、$0\le t\le1$ なら $f_i((1-t)x+ty)\le(1-t)f_i(x)+tf_i(y)\le0$ なので $(1-t)x+ty\in X$ である。最適解 $x,y$ について $f_0((1-t)x+ty)\le(1-t)p^*+tp^*=p^*$ であり、$X$ の点なので値は $p^*$ 以上、よって $p^*$ に等しい。$f_0$ が狭義凸で最適解 $x\ne y$ があれば、$f_0(\frac12x+\frac12y)< p^*$ となって $p^*$ の定義に反する。$\square$

例

線形計画問題

$f_0(x)=-c\cdot x$、$f_i(x)=a_i\cdot x-b_i$ とすると、(C) は線形計画問題「最大化 $c\cdot x$、条件 $Ax\le b$」になる。1 次式は凸なので、線形計画問題は凸最適化問題である。

最小二乗問題

$A\in\mathbb{R}^{k\times n}$、$b\in\mathbb{R}^k$ について、条件のない問題「最小化 $f_0(x)=\|Ax-b\|^2$」を考える。$\|\cdot\|^2$ は凸関数で(凸関数 の注意「多変数の凸関数」のノルムの凸性と、$t\mapsto t^2$ が $t\ge0$ で増加かつ凸であることによる)、1 次式との合成も凸である。$\nabla f_0(x)=2A^{\mathsf T}(Ax-b)$ なので、thm-cvxopt-optimality により $x$ が最適解であることは正規方程式 $A^{\mathsf T}Ax=A^{\mathsf T}b$ と同値である(最小二乗法)。

点から多角形への最短距離

点 $(3,2)$ に最も近い、領域 $x_1+x_2\le3$、$x_1\ge0$、$x_2\ge0$ の点を求める。これは
$$ \text{最小化 }(x_1-3)^2+(x_2-2)^2\quad\text{条件 } x_1+x_2-3\le0,\ -x_1\le0,\ -x_2\le0 $$
という凸最適化問題である。答えは $(2,1)$ で最小値は $2$ である(ex-cvxopt-kkt で確かめる)。$(3,2)$ は領域の外にあり、最も近い点は直線 $x_1+x_2=3$ への垂線の足である。

局所最適解は大域最適解

局所最適解は大域最適解

凸最適化問題 (C) の局所最適解は最適解である。

$x$ を半径 $R$ の局所最適解とし、$f_0(y)< f_0(x)$ となる $y\in X$ があったとする。$\|y-x\|>R$ である(そうでなければ $f_0(x)\le f_0(y)$)。$\theta:=R/\|y-x\|\in(0,1)$、$z:=(1-\theta)x+\theta y$ とおくと $\|z-x\|=R$ で、$X$ は凸なので(prop-cvxopt-sets)$z\in X$ である。$f_0$ の凸性から
$$ f_0(z)\le(1-\theta)f_0(x)+\theta f_0(y)< f_0(x) $$
となり、$x$ が局所最適解であることに反する。$\square$

1 変数で条件のない場合は 凸関数 の命題「凸関数の局所的な最小は全体の最小」と同じ議論である。凸性を外すとこの定理は成り立たない(記事の終わりの反例の表の 1・2 行目)。

微分できる場合の最適性条件

凸関数は接平面より上にある

$f\colon\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}$ を凸関数とし、$f$ は点 $x$ で微分可能とする。このとき任意の $y$ について
$$ f(y)\ge f(x)+\nabla f(x)\cdot(y-x) $$
である。

$0< t\le1$ について、凸性から $f(x+t(y-x))\le(1-t)f(x)+tf(y)$、すなわち
$$ \frac{f(x+t(y-x))-f(x)}{t}\le f(y)-f(x) $$
である。$f$ は $x$ で微分可能なので、$t\to+0$ のとき左辺は方向微分 $\nabla f(x)\cdot(y-x)$ に収束する。$\square$

最適性条件

$f_0\colon\mathbb{R}^n\to\mathbb{R}$ を微分可能な凸関数、$X\subset\mathbb{R}^n$ を凸集合、$x\in X$ とする。$x$ が $X$ 上の $f_0$ の最小値を与えるためには、
$$ \nabla f_0(x)\cdot(y-x)\ge0\qquad(\text{すべての }y\in X) $$
が必要十分である。とくに $X=\mathbb{R}^n$ なら、条件は $\nabla f_0(x)=0$ である。

十分性:lem-cvxopt-first-order により $f_0(y)\ge f_0(x)+\nabla f_0(x)\cdot(y-x)\ge f_0(x)$ である。
必要性:ある $y\in X$ で $\nabla f_0(x)\cdot(y-x)<0$ とする。$\varphi(t):=f_0(x+t(y-x))$ は $\varphi'(0)=\nabla f_0(x)\cdot(y-x)<0$ を満たすので、十分小さい $t\in(0,1]$ で $\varphi(t)< \varphi(0)$ である。$X$ は凸なので $x+t(y-x)\in X$ であり、$x$ が最小値を与えることに反する。
$X=\mathbb{R}^n$ のとき:$\nabla f_0(x)=0$ なら条件は成り立つ。逆に条件が成り立てば、$y=x-\nabla f_0(x)$ として $-\|\nabla f_0(x)\|^2\ge0$、すなわち $\nabla f_0(x)=0$ である。$\square$

条件は、$x$ から $X$ のどの点へ向かって動いても、1 次の近似では $f_0$ が減らない、ということである。$\nabla f_0(x)\ne0$ なら、超平面 $\{y\mid\nabla f_0(x)\cdot(y-x)=0\}$ は $X$ を片側 $\{\nabla f_0(x)\cdot(y-x)\ge0\}$ に含み、$x$ で $X$ を支える(BV04 §4.2.3、p. 139)。$f_0(y)=\|y-x_0\|^2$ の場合は、閉凸集合 $X$ の $x_0$ に最も近い点 $x$ が $(x_0-x)\cdot(y-x)\le0$($y\in X$)で特徴づけられることになり、凸包 の定理「点と閉凸集合の分離」の証明の段 2 の不等式と同じである。

Lagrange 双対問題

条件のある問題を、条件を罰金として目的関数に繰り込んだ条件のない問題で下から見積もるのが Lagrange 双対の考え方である。

Lagrange 関数と双対問題

(C) に対し、$\lambda=(\lambda_1,\dots,\lambda_m)\ge0$ について
$$ L(x,\lambda):=f_0(x)+\sum_{i=1}^m\lambda_if_i(x),\qquad g(\lambda):=\inf_{x\in\mathbb{R}^n}L(x,\lambda)\in\mathbb{R}\cup\{-\infty\} $$
とおく。$L$ を Lagrange 関数、$\lambda_i$ を Lagrange 乗数、$g$ を 双対関数 という。問題
$$ \text{最大化 } g(\lambda)\quad\text{条件 }\lambda\ge0 $$
を (C) の Lagrange 双対問題 といい、その最適値 $d^*:=\sup_{\lambda\ge0}g(\lambda)$ を 双対最適値 という。$g(\lambda^*)=d^*$ となる $\lambda^*\ge0$ を 双対最適解 という。

$g$ は $\lambda$ の 1 次式 $L(x,\lambda)$ の下限なので凹関数であり、双対問題はつねに凸最適化問題(凹関数の最大化)である。

弱双対性

任意の $\lambda\ge0$ と実行可能解 $x$ について $g(\lambda)\le f_0(x)$ である。したがって $d^*\le p^*$ である。

$x\in X$ なら $\lambda_if_i(x)\le0$ なので $g(\lambda)\le L(x,\lambda)\le f_0(x)$ である。$\lambda$ について上限、$x$ について下限をとればよい。$\square$

この不等式は $f_i$ の凸性を使っていない。$p^*-d^*$ を 双対ギャップ という。

線形計画問題の Lagrange 双対

「最大化 $c\cdot x$、条件 $Ax\le b$、$x\ge0$」を「最小化 $-c\cdot x$、条件 $Ax-b\le0$、$-x\le0$」と書き、乗数を $y\ge0$、$z\ge0$ とすると
$$ L=-c\cdot x+y\cdot(Ax-b)-z\cdot x=(A^{\mathsf T}y-c-z)\cdot x-b\cdot y $$
である。$x$ の 1 次式の下限は、係数が $0$ なら $-b\cdot y$、そうでなければ $-\infty$ である。よって双対問題は「最大化 $-b\cdot y$、条件 $A^{\mathsf T}y-c=z\ge0$、$y\ge0$」、すなわち「最小化 $b\cdot y$、条件 $A^{\mathsf T}y\ge c$、$y\ge0$」で、線形計画法 の定義「双対問題」の双対問題に一致する(BV04 §5.2.1、pp. 224–225 に同様の計算がある)。

2 次関数の最小化の双対

「最小化 $x_1^2+x_2^2$、条件 $2-x_1-x_2\le0$」では $L=x_1^2+x_2^2+\lambda(2-x_1-x_2)$ で、$x_1=x_2=\lambda/2$ で最小になるので
$$ g(\lambda)=2\lambda-\frac{\lambda^2}{2} $$
である。$g$ は $\lambda=2$ で最大値 $2$ をとる。主問題の最適解は $(1,1)$ で $p^*=2$ なので(ex-cvxopt-kkt)、$d^*=p^*$ である。

Slater 条件と強双対性

双対ギャップは一般には $0$ にならない(反例の表の 3・5 行目)。凸最適化問題では、条件を真に満たす点があればギャップは $0$ になる。

Slater 条件

すべての $i=1,\dots,m$ について $f_i(\tilde x)<0$ となる点 $\tilde x$ が存在するとき、(C) は Slater 条件 を満たすという。

強双対性(Slater の定理)

凸最適化問題 (C) が Slater 条件を満たし、最適値 $p^*$ が有限であるとする。このとき $g(\lambda^*)=p^*$ となる $\lambda^*\ge0$ が存在する。とくに $d^*=p^*$ であり、双対最適解が存在する。

$\mathbb{R}^{m+1}$ の部分集合
$$ \mathcal{C}:=\{(u,t)\in\mathbb{R}^m\times\mathbb{R}\mid\text{ある }x\text{ で }f_i(x)< u_i\ (i=1,\dots,m),\ f_0(x)< t\} $$
を考える。
段 1($\mathcal{C}$ は空でない開凸集合)。$(u,t)\in\mathcal{C}$ を与える $x$ は、$(u,t)$ の近くの点にも同じく使えるので $\mathcal{C}$ は開集合である。$(u,t),(u',t')$ を $x,x'$ が与えるとき、$0\le s\le1$ について $x_s:=(1-s)x+sx'$ は凸性により $f_i(x_s)\le(1-s)f_i(x)+sf_i(x')<(1-s)u_i+su_i'$($f_0$ も同様)を満たすので、$\mathcal{C}$ は凸である。
段 2(分離)。$(0,p^*)\notin\mathcal{C}$ である。実際、$f_i(x)<0$(すべての $i$)かつ $f_0(x)< p^*$ となる $x$ は、実行可能で $f_0(x)< p^*$ となり、$p^*$ の定義に反する。Hahn–Banachの定理 の補題「点と開凸集合の分離」を $\mathbb{R}^{m+1}$ に用いると、$(0,0)$ でない $(\lambda,\mu)\in\mathbb{R}^m\times\mathbb{R}$ で
$$ \lambda\cdot u+\mu t>\mu p^*\qquad((u,t)\in\mathcal{C}) $$
となるものがある($\mathbb{R}^{m+1}$ の線形汎関数は内積で表せる。補題の不等式の向きは $(\lambda,\mu)$ の符号を変えて合わせた)。
段 3($\lambda\ge0$、$\mu\ge0$)。$(u,t)\in\mathcal{C}$ なら、$u$ のある成分や $t$ を大きくしても $\mathcal{C}$ に属する。$\lambda_i<0$ なら $u_i\to+\infty$ で左辺が $-\infty$ に近づき、不等式に反する。$\mu<0$ でも同様である。
段 4($\mu>0$)。$\mu=0$ とすると $\lambda\ne0$、$\lambda\ge0$ で、$\lambda\cdot u>0$($(u,t)\in\mathcal{C}$)である。Slater 条件の点 $\tilde x$ について $u:=\frac12(f_1(\tilde x),\dots,f_m(\tilde x))$ とすると、$f_i(\tilde x)< u_i<0$ なので、十分大きい $t$ で $(u,t)\in\mathcal{C}$ である。ところが $u$ の成分はすべて負なので $\lambda\cdot u<0$ となり、矛盾する。
段 5(結論)。$\mu>0$ で割り、$\lambda^*:=\lambda/\mu\ge0$ とおくと $\lambda^*\cdot u+t>p^*$($(u,t)\in\mathcal{C}$)である。任意の $x$ と $\varepsilon>0$ について $(f_1(x)+\varepsilon,\dots,f_m(x)+\varepsilon,f_0(x)+\varepsilon)\in\mathcal{C}$ なので
$$ L(x,\lambda^*)+\varepsilon\Bigl(1+\sum_i\lambda_i^*\Bigr)>p^* $$
であり、$\varepsilon\to0$ として $L(x,\lambda^*)\ge p^*$ を得る。$x$ について下限をとって $g(\lambda^*)\ge p^*$ であり、prop-cvxopt-weak と合わせて $g(\lambda^*)=d^*=p^*$ である。$\square$

$p^*=-\infty$ なら弱双対性により $d^*=-\infty=p^*$ である。1 次式の等式の制約を別に書く形の強双対性と、不等式のうち 1 次式のものには Slater 条件の不等号を等号つきに弱めてよいという精密化は、BV04 §5.2.3(pp. 226–227)にある。前者の証明は同書 §5.3.2(pp. 234–236)にある。この記事ではこれらは証明しない。

KKT 条件

Karush–Kuhn–Tucker の定理

(C) の $f_0,\dots,f_m$ は微分可能な凸関数であるとする。実行可能解 $x^*$ と $\lambda^*\ge0$ についての次の 2 条件を KKT 条件 という。

  • (相補性)すべての $i$ について $\lambda_i^*f_i(x^*)=0$。
  • (停留性)$\displaystyle\nabla f_0(x^*)+\sum_{i=1}^m\lambda_i^*\nabla f_i(x^*)=0$。
  1. KKT 条件を満たす $x^*$、$\lambda^*$ があれば、$x^*$ は (C) の最適解、$\lambda^*$ は双対最適解であり、$p^*=d^*$ である。
  2. (C) が Slater 条件を満たすとき、$x^*$ が最適解ならば、$x^*$ とともに KKT 条件を満たす $\lambda^*\ge0$ が存在する。

1:$L(\cdot,\lambda^*)=f_0+\sum_i\lambda_i^*f_i$ は凸関数の $0$ 以上の係数の和なので凸で、微分可能であり、停留性によりその勾配は $x^*$ で $0$ である。thm-cvxopt-optimality($X=\mathbb{R}^n$)により $x^*$ は $L(\cdot,\lambda^*)$ の最小値を与えるので、相補性と合わせて
$$ g(\lambda^*)=L(x^*,\lambda^*)=f_0(x^*) $$
である。prop-cvxopt-weak により $f_0(x^*)=g(\lambda^*)\le d^*\le p^*\le f_0(x^*)$ なので、すべて等しい。
2:$p^*=f_0(x^*)$ は有限なので、thm-cvxopt-slater により $g(\lambda^*)=p^*$ となる $\lambda^*\ge0$ がある。$x^*$ は実行可能なので $\lambda_i^*f_i(x^*)\le0$ であり、
$$ f_0(x^*)=g(\lambda^*)\le L(x^*,\lambda^*)=f_0(x^*)+\sum_i\lambda_i^*f_i(x^*)\le f_0(x^*) $$
である。よって $\sum_i\lambda_i^*f_i(x^*)=0$ で、各項は $0$ 以下なのですべて $0$ であり、相補性が成り立つ。また $L(x^*,\lambda^*)=g(\lambda^*)=\inf_xL(x,\lambda^*)$ なので、$x^*$ は微分可能な関数 $L(\cdot,\lambda^*)$ の $\mathbb{R}^n$ 上の最小値を与え、thm-cvxopt-optimality によりその勾配は $0$ である。これが停留性である。$\square$

相補性は、$f_i(x^*)<0$ となる「効いていない」条件では $\lambda_i^*=0$ であることを意味する。条件がすべて等式で凸性のない場合の対応する結果が Lagrangeの未定乗数法 であり、KKT 条件は不等式の条件に対する一般化で、乗数の符号 $\lambda^*\ge0$ と相補性が加わる。線形計画問題では、KKT 条件は 線形計画法 の定理「相補性条件」と同じものになる。KKT 条件の一般の形(凸性を仮定しない必要条件など)は BV04 §5.5.3(pp. 243–244)にある。

KKT 条件で解く
  1. ex-cvxopt-qp-dual の問題では、$x^*=(1,1)$、$\lambda^*=2$ とすると、$f_1(x^*)=2-1-1=0$ で相補性が成り立ち、$\nabla f_0+\lambda^*\nabla f_1=(2,2)+2(-1,-1)=0$ である。よって $(1,1)$ が最適解で $p^*=2$ である。
  2. ex-cvxopt-projection の問題では、$x^*=(2,1)$ で効いている条件は $x_1+x_2-3\le0$ だけなので、他の 2 つの乗数は $0$ とする。$\nabla f_0(x^*)=(2(2-3),2(1-2))=(-2,-2)$ なので、$\lambda_1^*=2$ とすれば $(-2,-2)+2(1,1)=0$ である。$\lambda^*=(2,0,0)\ge0$ なので KKT 条件が成り立ち、$(2,1)$ が最適解で最小値は $1+1=2$ である。Slater 条件(たとえば $(\frac12,\frac12)$)も成り立つので、thm-cvxopt-kkt の 2 により、最適解ではどこでも KKT 条件が成り立つ。$f_0$ は狭義凸なので最適解はこれだけである(prop-cvxopt-sets)。

共役関数による双対関数の表示

条件が 1 次式のとき、双対関数は目的関数の Fenchel共役 $f_0^*(y)=\sup_x\bigl(y\cdot x-f_0(x)\bigr)$ で書ける。「最小化 $f_0(x)$、条件 $Ax\le b$」では
$$ g(\lambda)=\inf_x\bigl(f_0(x)+\lambda\cdot(Ax-b)\bigr)=-b\cdot\lambda-\sup_x\bigl((-A^{\mathsf T}\lambda)\cdot x-f_0(x)\bigr)=-b\cdot\lambda-f_0^*(-A^{\mathsf T}\lambda) $$
である(BV04 §5.1.6、p. 221)。共役関数が計算できる目的関数(Fenchel共役 の節「計算例」)なら、双対問題を具体的に書き下せる。

反例の表

外す条件反例成り立たなくなること
目的関数の凸性(thm-cvxopt-local-global)最小化 $x^3-3x$、条件 $x-3\le0$、$-x-3\le0$局所最適解 $x=1$(値 $-2$)が最適解でない($x=-3$ で値 $-18$)
条件の関数の凸性(thm-cvxopt-local-global)最小化 $(x-\frac12)^2$、条件 $(x^2-1)(x^2-9)\le0$局所最適解 $x=-1$(値 $\frac94$)が最適解でない($x=1$ で値 $\frac14$)
Slater 条件(thm-cvxopt-slater)$x\in\mathbb{R}^2$ で最小化 $e^{-x_2}$、条件 $\|x\|-x_1\le0$$d^*=p^*$($p^*=1$、$d^*=0$)
Slater 条件(thm-cvxopt-kkt の 2)最小化 $x$、条件 $x^2\le0$最適解 $x^*=0$ で KKT 条件を満たす乗数がある
目的関数の凸性(thm-cvxopt-slater)最小化 $-x^2$、条件 $x-1\le0$、$-x-1\le0$$d^*=p^*$($p^*=-1$、$d^*=-\infty$)
表の反例の確かめ

1 行目:$f_0'(x)=3x^2-3$、$f_0''(1)=6>0$ なので $x=1$ は局所最適解だが、$f_0''(x)=6x<0$($x<0$)なので $f_0$ は凸でない。2 行目:実行可能集合は $[-3,-1]\cup[1,3]$ で、$x=-1$ の近く(距離 $2$ 未満)の実行可能解は $[-3,-1]$ の点であり、そこで $(x-\frac12)^2\ge\frac94$ である。$f_1(x)=x^4-10x^2+9$ は $f_1''(0)=-20<0$ なので凸でない。3 行目:$f_1(x)=\|x\|-x_1$ は凸関数(ノルムと 1 次式の和)で、つねに $f_1\ge0$ なので Slater 条件は成り立たない。実行可能集合は $\{x_2=0,\ x_1\ge0\}$ なので $p^*=1$ である。一方 $\lambda\ge0$ と $s\in\mathbb{R}$ について $x=(R,s)$ とすると $\|x\|-x_1=s^2/(\sqrt{R^2+s^2}+R)\to0$($R\to\infty$)なので、$g(\lambda)\le e^{-s}$ がすべての $s$ で成り立ち、$g(\lambda)\le0$ である。$L\ge0$ より $g(\lambda)=0$、$d^*=0$ である。4 行目:$x^2<0$ となる $x$ はない。実行可能解は $0$ だけで $p^*=0$。停留性は $1+\lambda\cdot2x^*=1\ne0$ となり、どの $\lambda$ でも成り立たない。双対関数は $g(\lambda)=-\frac1{4\lambda}$($\lambda>0$)なので $d^*=0=p^*$ だが、双対最適解は存在しない。5 行目:$x=0$ で Slater 条件が成り立ち、実行可能集合 $[-1,1]$ で $p^*=-1$ だが、どの $\lambda\ge0$ でも $L(x,\lambda)$ は $x\to\infty$ で $-\infty$ に近づくので $g\equiv-\infty$ である。

関連項目

参考文献

[1]
Stephen Boyd, Lieven Vandenberghe, Convex Optimization, 1st ed., Cambridge University Press, 2004, §4.2.1(凸最適化問題の標準形、p. 136)、§4.2.3(微分できる場合の最適性条件、p. 139)、§5.1.6(双対関数と共役関数、p. 221)、§5.2.1(線形計画問題の Lagrange 双対、pp. 224–225)、§5.2.3(Slater 条件と強双対性、pp. 226–227)、§5.3.2(等式の制約を含む形の強双対性の証明、pp. 234–236)、§5.5.3(KKT 条件、pp. 243–244)

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