部分体

同義語:subfield

概要

部分体(subfield)とは、体 $K$ の部分集合 $F$ で、$1$ を含み、差・積および $0$ でない元の逆元について閉じているもののことである。$K$ の演算を制限すると $F$ はそれ自身体になり、このとき $K/F$ を体の拡大という。$\mathbb{Q}\subset\mathbb{R}\subset\mathbb{C}$ や $\mathbb{Q}(\sqrt2)=\{a+b\sqrt2\}$ が例であり、整数環 $\mathbb{Z}\subset\mathbb{Q}$ は部分環だが部分体でない。部分体の共通部分は部分体なので、部分集合が生成する最小の部分体が定まる。すべての部分体の共通部分が素体で、標数に応じて $\mathbb{Q}$ か $\mathbb{F}_p$ と同型である。拡大の中間の部分体を分類するのが Galois 理論である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 体, 部分環, 部分集合

定義

本記事では環は単位元をもつ可換環とし、環準同型は単位元を単位元に送るものとする。体とは $1\neq0$ であって $0$ でない元がすべて逆元をもつ可換環である。環 $R$ の部分集合 $S$ が部分環であるとは、$1_R\in S$ であり、$S$ が差と積について閉じていることをいう(部分環 の記事の定義「部分環」)。

部分体

$K$ を体とする。$K$ の部分集合 $F$ が $K$ の部分体(subfield)であるとは、次の 2 条件を満たすことをいう。

  1. $F$ は $K$ の部分環である。すなわち $1\in F$ であり、$a,b\in F$ ならば $a-b\in F$、$ab\in F$ である。
  2. $a\in F$、$a\neq0$ ならば、$K$ における逆元 $a^{-1}$ も $F$ に属する。
    このとき $K$ を $F$ の拡大体といい、組 $(K,F)$ を $K/F$ と書いて体の拡大という。$F\neq K$ のとき $F$ を真部分体という。

部分体 $F$ は $0=1-1$ と $1$ を含み、$K$ の加法・乗法・加法の逆元・$0$ でない元の逆元について閉じている。したがって $K$ の演算を $F$ に制限すると $F$ はそれ自身体になる(部分環が制限した演算で環になることは 環 の記事で示されており、条件 2 により $0$ でない元が $F$ の中で逆元をもつ)。$F$ の $0$ と $1$ は $K$ の $0$ と $1$ である。
$1\in F$ を要求しているので、$\{0\}$ は部分体でない。これは体の定義が $1\neq0$ を要求することと整合している。
体の間の環準同型 $\iota\colon F\to K$ は常に単射であり(体 の記事の命題「体の準同型は単射である」)、その像 $\iota(F)$ は $K$ の部分体である(像が部分環であることは 環準同型 の記事の命題「核と像の基本性質」により、$\iota(a)^{-1}=\iota(a^{-1})$ だから逆元でも閉じる)。このため、単射 $\iota$ を固定して $F$ を $K$ の部分体とみなすことが多い。
部分体であることは、条件を少しまとめた形でも判定できる。

部分体の判定

$K$ を体、$F\subset K$ を部分集合とする。次の 3 条件は同値である。

  1. $F$ は $K$ の部分体である。
  2. $1\in F$ であり、$a,b\in F$ ならば $a-b\in F$、さらに $a,b\in F$、$b\neq0$ ならば $ab^{-1}\in F$ である。
  3. $F$ は $K$ の加法と乗法について閉じており、その制限した演算で $F$ は体になる。

1 ⇒ 2:$b\neq0$ なら条件 2 により $b^{-1}\in F$ であり、積で閉じているので $ab^{-1}\in F$ である。
2 ⇒ 1:$0=1-1\in F$ である。$b\in F$、$b\neq0$ なら $b^{-1}=1\cdot b^{-1}\in F$ なので、条件 2 が成り立つ。積について、$a,b\in F$ とする。$b=0$ なら $ab=0\in F$ である。$b\neq0$ なら $b^{-1}\in F$、$b^{-1}\neq0$ なので $ab=a(b^{-1})^{-1}\in F$ である。差で閉じていることは仮定にある。よって $F$ は部分環で、条件 2 も満たすので部分体である。
1 ⇒ 3:定義の直後に述べたとおりである。
3 ⇒ 1:$F$ の零元を $0_F$、単位元を $e$ とする。$0_F+0_F=0_F$ を $K$ で計算して両辺から $0_F$ を引くと $0_F=0$ である。$F$ は体なので $e\neq0_F=0$ であり、$e^2=e$ から $K$ において $e(e-1)=0$、$e\neq0$ なので $e=1$ である。$a\in F$ の $F$ における加法の逆元 $a'$ は $a+a'=0$ を満たすので、$K$ での逆元の一意性により $a'=-a$ である。よって $a,b\in F$ なら $a-b=a+(-b)\in F$ である。同様に、$a\in F$、$a\neq0$ の $F$ における逆元 $b$ は $ab=e=1$ を満たすので $b=a^{-1}$ であり、$a^{-1}\in F$ である。以上より $F$ は部分体である。$\square$

条件 3 で「$K$ の演算を制限したもの」であることは欠かせない(ex-subfield-foreign-operations)。

直感

部分体は、大きな体の中にあって四則演算で閉じている「小さな数の世界」である。$\mathbb{R}$ の中の有理数全体 $\mathbb{Q}$ がその典型で、有理数どうしを足し引き掛け割りしても有理数から出ない。部分環の条件に「$0$ でない元で割ってよい」を加えたものが部分体であり、整数全体 $\mathbb{Z}$ は掛け算までは閉じているが割り算で外に出てしまうので部分体ではない。
体の理論では、1 つの大きな体 $K$ を固定して、その中の部分体を並べて比べることが多い。どの部分体も、$1$ から四則演算だけで作れる最小の部分体(素体)を必ず含む。部分体の全体は共通部分をとる操作で閉じているので、「与えられた元を含む最小の部分体」がいつも存在し、これが元の添加 $F(\alpha)$ の考え方の基礎になる。Galois理論は、ある拡大 $L/K$ の中間の部分体を群で分類する理論である。

例と反例

数の体の包含

$\mathbb{Q}\subset\mathbb{R}\subset\mathbb{C}$ において、$\mathbb{Q}$ は実数体 $\mathbb{R}$ の部分体、$\mathbb{R}$ は複素数体 $\mathbb{C}$ の部分体である。$\mathbb{Q}$ は $\mathbb{R}$ と $\mathbb{C}$ の素体であり(後の prop-subfield-prime-field)、真部分体をもたない。$\mathbb{C}$ の部分体としては、ほかに代数的数の全体 $\overline{\mathbb{Q}}$ や、実数の代数的数の全体 $\overline{\mathbb{Q}}\cap\mathbb{R}$ がある($\overline{\mathbb{Q}}$ が部分体であることは 体の拡大 の記事の系「代数的な元のなす部分体と推移性」、共通部分が部分体であることは後の prop-subfield-intersection による)。

2 の平方根を添加した体

$F=\{a+b\sqrt2\mid a,b\in\mathbb{Q}\}\subset\mathbb{R}$ は $\mathbb{R}$ の部分体である。prop-subfield-criterion の 2 で確かめる。$1\in F$ であり、差 $(a+b\sqrt2)-(c+d\sqrt2)=(a-c)+(b-d)\sqrt2$ は $F$ に属する。$c+d\sqrt2\neq0$ なら、$\sqrt2$ が無理数であることから $c-d\sqrt2\neq0$ でもあり、
$$ \frac{a+b\sqrt2}{c+d\sqrt2}=\frac{(a+b\sqrt2)(c-d\sqrt2)}{c^2-2d^2}=\frac{ac-2bd}{c^2-2d^2}+\frac{bc-ad}{c^2-2d^2}\sqrt2\in F $$
である($c^2-2d^2=(c+d\sqrt2)(c-d\sqrt2)\neq0$)。$F$ は $\mathbb{Q}$ と $\sqrt2$ を含む最小の部分体 $\mathbb{Q}(\sqrt2)$ に等しい($\mathbb{Q}$ と $\sqrt2$ を含む部分体は $a+b\sqrt2$ を必ず含むから)。体 の記事の例「有理数に $\sqrt2$ を添加した体」も参照。

有限体の部分体

$p^n$ 個の元からなる有限体 $\mathbb{F}_{p^n}$ の部分体は、$n$ の正の約数 $m$ ごとにただ 1 つずつあり、それは $\{a\mid a^{p^m}=a\}$ で、元の個数は $p^m$ である(有限体 の記事の命題「有限体の部分体」)。たとえば $\mathbb{F}_{16}$ の部分体は $\mathbb{F}_2,\mathbb{F}_4,\mathbb{F}_{16}$ の 3 つであり、$8$ 個の元からなる体 $\mathbb{F}_8$ は $\mathbb{F}_{16}$ の部分体として現れない($3\nmid4$)。

自己同型で動かない元の全体

体 $L$ の自己同型のなす部分群 $G$ に対し、$G$ のすべての元で動かない元の全体 $L^G$ は $L$ の部分体である(固定体。Galois拡大 の記事の定義「固定体」)。たとえば複素共役 $z\mapsto\bar z$ で動かない複素数の全体は $\mathbb{R}$ である。また、標数が素数 $p$ の体 $K$ の元の $p$ 乗全体 $K^p=\{a^p\mid a\in K\}$ は、Frobenius 準同型(Frobenius写像)$a\mapsto a^p$ の像として $K$ の部分体である(完全体 の記事の定義の前の段落)。$K^p=K$ となる体が完全体である。

反例:整数環は有理数体の部分体でない

整数環 $\mathbb{Z}$ は $\mathbb{Q}$ の部分環であるが、$2\in\mathbb{Z}$ の $\mathbb{Q}$ における逆元 $1/2$ は $\mathbb{Z}$ に属さないので、部分体でない。同様に、体 $k$ 上の多項式環 $k[t]$ は有理関数体 $k(t)$ の部分環だが部分体でない($t^{-1}\notin k[t]$)。これらの例は「$1$ を含み差と積で閉じる」を満たすが「$0$ でない元の逆元で閉じる」を満たさず、含意「体の部分環は部分体である」を破る。体の部分環はつねに整域である(体に零因子はない)が、体とは限らない。部分環が体になるための十分条件は後の prop-subfield-algebraic-subring で与える。

反例:2 つの部分体の和集合

$F_1=\mathbb{Q}(\sqrt2)$、$F_2=\mathbb{Q}(\sqrt3)$ を $\mathbb{R}$ の部分体とする。和集合 $F_1\cup F_2$ は部分体でない。実際 $\sqrt2,\sqrt3\in F_1\cup F_2$ だが、和 $\sqrt2+\sqrt3$ は $F_1$ にも $F_2$ にも属さない。$\sqrt2+\sqrt3\in F_1$ なら $\sqrt3\in F_1$ となるが、これは 体の拡大 の記事の例「2 つの平方根の添加」で否定されている。$\sqrt2+\sqrt3\in F_2$ なら $\sqrt2=a+b\sqrt3$($a,b\in\mathbb{Q}$)と書け、2 乗して $2=a^2+3b^2+2ab\sqrt3$、$\sqrt3$ が無理数であることから $ab=0$ かつ $a^2+3b^2=2$ となる。$b=0$ なら $a^2=2$、$a=0$ なら $b^2=2/3$ で、どちらも有理数の解をもたない。
この例は「部分体 2 つの和集合」を満たすが「和で閉じる」を満たさず、含意「部分体の和集合は部分体である」を破る。2 つの部分体を含む最小の部分体は和集合ではなく、それが生成する部分体(合成体)$\mathbb{Q}(\sqrt2,\sqrt3)$ である。部分体が包含について全順序に並ぶなら和集合は部分体である(prop-subfield-intersection の 3)。

反例:別の演算で体になる部分集合

$\mathbb{Q}$ の部分集合 $\{0,1\}$ は、演算を $1+1:=0$ と定めれば 2 元体 $\mathbb{F}_2$ と同じ体になる。しかしこの演算は $\mathbb{Q}$ の加法の制限ではなく($\mathbb{Q}$ では $1+1=2\notin\{0,1\}$)、$\{0,1\}$ は $\mathbb{Q}$ の部分体でない。実際、$\mathbb{Q}$ の部分体はすべて $\mathbb{Q}$ 自身であり(prop-subfield-prime-field)、標数 $2$ の体は $\mathbb{Q}$ の部分体として現れない。この例は「部分集合がある演算で体になる」を満たすが「$K$ の演算を制限したもの」を満たさず、prop-subfield-criterion の 3 で演算の制限を外した含意を破る。

性質

共通部分・生成される部分体・和集合

部分体の族の共通部分と和集合

$K$ を体とする。

  1. $K$ の部分体からなる空でない族 $(F_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ の共通部分 $\bigcap_\lambda F_\lambda$ は $K$ の部分体である。
  2. 部分集合 $S\subset K$ に対し、$S$ を含む $K$ の部分体すべての共通部分を $\langle S\rangle$ と書くと、$\langle S\rangle$ は $S$ を含む最小の部分体であり、$S$ が生成する部分環(部分環 の記事の定義「部分集合が生成する部分環」)を $R$ とすると
    $$ \langle S\rangle=\{ab^{-1}\mid a,b\in R,\ b\neq0\} $$
    である。
  3. 部分体の族 $(F_\lambda)$ が包含について全順序である(任意の $\lambda,\mu$ について $F_\lambda\subset F_\mu$ または $F_\mu\subset F_\lambda$)ならば、和集合 $\bigcup_\lambda F_\lambda$ は $K$ の部分体である。

1:prop-subfield-criterion の 2 を確かめる。$1$ は各 $F_\lambda$ に属するので共通部分に属する。$a,b$ が共通部分に属し $b\neq0$ なら、各 $\lambda$ について $a-b\in F_\lambda$、$ab^{-1}\in F_\lambda$ なので、これらは共通部分に属する。
2:$K$ 自身が $S$ を含む部分体なので族は空でなく、1 により $\langle S\rangle$ は部分体である。$S$ を含む任意の部分体は共通部分をとる族の一員なので $\langle S\rangle$ を含み、$\langle S\rangle$ は最小である。部分体は部分環なので、$K$ の部分体が $S$ を含むことと $R$ を含むことは同値である($R$ は $S$ を含む最小の部分環)。よって $\langle S\rangle$ は $R$ を含む最小の部分体であり、商体 の記事の系「整域を含む最小の体」の 1 により、それは $\{ab^{-1}\mid a,b\in R,\ b\neq0\}$ に等しい。
3:族が空でないとしてよい(空の族の和集合は $\emptyset$ で $1$ を含まないので、この主張は空でない族についてのものである)。$1$ はどの $F_\lambda$ にも属する。$a\in F_\lambda$、$b\in F_\mu$ とすると、全順序性から $F_\lambda,F_\mu$ の大きい方 $F_\nu$ が $a,b$ をともに含み、$a-b$ と($b\neq0$ なら)$ab^{-1}$ は $F_\nu$ に、したがって和集合に属する。$\square$

部分体 $F\subset K$ と部分集合 $S\subset K$ に対して $\langle F\cup S\rangle$ を $F(S)$ と書き、$F$ に $S$ を添加した体という(体の拡大 の記事の定義「元の添加と単純拡大」)。2 つの部分体 $F_1,F_2$ に対して $\langle F_1\cup F_2\rangle$ を $F_1F_2$ と書き、合成体という。ex-subfield-union のとおり、合成体は一般に和集合より真に大きい。

素体と標数

体 $K$ のすべての部分体の共通部分を $K$ の素体という。prop-subfield-intersection の 1 によりこれは $K$ の最小の部分体である(標数 の記事の定義「素部分環と素体」)。

部分体と素体

$K$ を体、$P$ をその素体とする。

  1. $K$ の部分体 $F$ の標数は $K$ の標数に等しい。
  2. $P$ は $K$ のすべての部分体に含まれ、$\operatorname{char}K=0$ なら $P\cong\mathbb{Q}$、$\operatorname{char}K=p>0$ なら $P\cong\mathbb{F}_p$ である。
  3. $P$ は真部分体をもたない。特に $\mathbb{Q}$ と $\mathbb{F}_p$ の部分体は自分自身だけである。
  4. $K$ の任意の自己同型 $\sigma$ は $P$ の各元を動かさない。

1:$F$ の単位元は $K$ の単位元 $1$ であり(prop-subfield-criterion の証明)、整数 $n$ に対する $n\cdot1$ は $F$ で計算しても $K$ で計算しても同じ元である。標数は $n\cdot1=0$ となる正の整数 $n$ の最小値(なければ $0$)なので、$F$ と $K$ で一致する。
2:前半は $P$ の定義による。後半は 標数 の記事の定理「素体の構造」である。その定理により、$\operatorname{char}K=p>0$ なら $P=\{k\cdot1\mid k\in\mathbb{Z}\}$、$\operatorname{char}K=0$ なら $P=\{(a\cdot1)(b\cdot1)^{-1}\mid a,b\in\mathbb{Z},\ b\neq0\}$ である。
3:$F'$ を $P$ の部分体とすると、$F'$ は $P$ の演算、すなわち $K$ の演算について prop-subfield-criterion の 2 を満たすので $K$ の部分体であり、2 により $P\subset F'$、よって $F'=P$ である。$\mathbb{Q}$ の素体は $\{(a\cdot1)(b\cdot1)^{-1}\}=\{a/b\}=\mathbb{Q}$ 自身であり、$\mathbb{F}_p$ の素体は $\{k\cdot1\}=\mathbb{F}_p$ 自身なので、これらは真部分体をもたない。
4:$\sigma(1)=1$ であり、$\sigma$ は加法を保つので、正の整数 $k$ について $\sigma(k\cdot1)=\sigma(1+\dots+1)=k\cdot1$、また $\sigma(-(k\cdot1))=-(k\cdot1)$、$\sigma(0)=0$ である。$b\cdot1\neq0$ なら $\sigma\bigl((a\cdot1)(b\cdot1)^{-1}\bigr)=\sigma(a\cdot1)\sigma(b\cdot1)^{-1}=(a\cdot1)(b\cdot1)^{-1}$ である。2 の後半の記述により、$P$ の元はすべてこの形なので、$\sigma$ は $P$ の各元を動かさない。$\square$

1 から、標数の異なる体の一方が他方の部分体になることはない。また 4 から、自己同型は素体の上の体の自己同型であり、体の自己同型を調べることは素体の拡大の自己同型を調べることになる。

有理数体と実数体の自己同型

$\mathbb{Q}$ の自己同型は恒等写像だけである($\mathbb{Q}$ は自身の素体なので、prop-subfield-prime-field の 4 による)。$\mathbb{R}$ の自己同型が恒等写像だけであることは、$\mathbb{Q}$ の固定(同じく 4 による)に、平方による順序の保存と $\mathbb{Q}$ の稠密性を合わせて示される(環準同型 の記事の命題「実数体と複素数体の自己同型」の 1)。
これに対し $\mathbb{C}$ は、$\mathbb{R}$ の元を動かさない恒等でない自己同型(複素共役)をもつ。素体の上の自己同型が恒等写像だけであるかどうかは体によって異なる。

部分環が部分体になる条件

代数的な元からなる部分環

$L$ を体、$F$ を $L$ の部分体、$R$ を $F\subset R\subset L$ を満たす $L$ の部分環とする。$R$ のすべての元が $F$ 上代数的(代数的元。$F$ 係数の $0$ でない多項式の根)ならば、$R$ は $L$ の部分体である。

$a\in R$、$a\neq0$ とし、$a^{-1}\in R$ を示せばよい。$a$ は代数的なので、$h(a)=0$ となる $0$ でない $h\in F[x]$ がある。$h=x^kh_1$($k\ge0$、$h_1(0)\neq0$)と書くと、$a^kh_1(a)=0$ であり、$L$ は整域で $a\neq0$ なので $h_1(a)=0$ である。$h_1=c_0+c_1x+\dots+c_mx^m$($c_i\in F$、$c_0\neq0$)とすると $h_1(a)=0$ かつ $c_0\neq0$ なので $h_1$ は定数でなく $m\ge1$ であり、
$$ a\,(c_1+c_2a+\dots+c_ma^{m-1})=-c_0 $$
である。両辺に $-c_0^{-1}\in F$ を掛けて
$$ a^{-1}=-c_0^{-1}(c_1+c_2a+\dots+c_ma^{m-1}) $$
を得る。右辺は $F\subset R$ の元と $a\in R$ の和と積で書けているので $R$ に属する。よって $R$ は $0$ でない元の逆元で閉じ、部分体である。$\square$

特に、$\alpha\in L$ が $F$ 上代数的なら、$h(\alpha)=0$ となる $0$ でない $h\in F[x]$ で割った余りを考えれば、$F[\alpha]=\{f(\alpha)\mid f\in F[x]\}$ は $F$ 上 $1,\alpha,\dots,\alpha^{\deg h-1}$ で張られる有限次元の $F$ 上のベクトル空間であり、その任意の元 $\beta$ について $1,\beta,\beta^2,\dots$ は線形従属だから $\beta$ は $F$ 上代数的である。よって $F[\alpha]$ の元はすべて $F$ 上代数的であり、この命題により $F[\alpha]$ は部分体、したがって $F[\alpha]=F(\alpha)$ である。
仮定 $F\subset R$ は外せない。$\mathbb{Z}[\sqrt2]=\{a+b\sqrt2\mid a,b\in\mathbb{Z}\}$ は $\mathbb{R}$ の部分環で、その元はすべて $\mathbb{Q}$ 上代数的であるが、$\mathbb{Q}$ を含まず、$1/2\notin\mathbb{Z}[\sqrt2]$ なので部分体でない。また代数的という仮定も外せない。体 $F$ 上の不定元 $t$ について $F\subset F[t]\subset F(t)$ であるが、$t$ は $F$ 上超越的で、$F[t]$ は部分体でない(ex-subfield-integers)。

Galois 理論での役割

中間体と Galois 対応

体の拡大 $L/K$ に対し、$K$ を含む $L$ の部分体を $L/K$ の中間体という。有限次 Galois拡大 $L/K$ では、中間体 $M$ に $L$ の $M$ 上の自己同型のなす部分群 $\mathrm{Gal}(L/M)$ を対応させることで、中間体全体と Galois 群 $\mathrm{Gal}(L/K)$ の部分群全体とが包含の向きを逆にして一対一に対応する(Galois拡大 の記事の定理「Galois対応」、DF04 §14.2)。たとえば ex-subfield-finite-field の $\mathbb{F}_{p^n}$ の部分体の分類は、$\mathbb{F}_{p^n}/\mathbb{F}_p$ の Galois 群が位数 $n$ の巡回群であり、その部分群が $n$ の約数と一対一に対応することの反映である。中間体の個数が有限であることは、拡大が単純拡大であることと関係する(分離拡大 の記事の原始元定理)。

関連項目

参考文献

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