Wirtinger表示(Wirtinger presentation)とは、結び目の図式から補空間の基本群(結び目群)の表示を読み取る方法であり、下をくぐるたびに切れる弧ごとに生成元を、交差ごとに「下の弧が上の弧の生成元による共役で次の弧に移る」という関係式を置く。正則な射影をもつ折れ線の結び目では、補空間は図式から作る 2 次元の複体に変形レトラクトし、その胞体の貼り合わせからこの表示が得られる。帰結として結び目群の可換化は $\mathbb{Z}$ であり、三葉結び目の群が可換でないことや 3 彩色による判定が導かれる。
前提知識: 結び目, 基本群, 群の表示, Van Kampenの定理, CW複体
結び目 $K\subset\mathbb{R}^3$ の補空間の基本群(結び目群)は、結び目を区別する最も基本的な不変量である。Wirtinger 表示 は、結び目を平面に射影した図式から、この群の生成元と関係式を機械的に読み取る方法である。図式の「弧」(下をくぐるたびに切れる線の断片)ごとに生成元を 1 つ、交差ごとに関係式を 1 つ置く。生成元は弧のまわりを 1 周するループで、関係式は、交差で下をくぐる弧が上を通る弧の生成元による共役で次の弧に移ることを表す。
この記事では、図式と Wirtinger 表示を定義し、補空間の基本群が Wirtinger 表示の群と同型であることを証明する。証明では、補空間を図式から作った 2 次元の複体へ変形レトラクトし、その胞体の貼り合わせから表示を読む。帰結として、結び目群の可換化が $\mathbb{Z}$ であること、三葉結び目の群が可換でないことを導く。結び目は、結び目 の記事が触れている折れ線(区分的線形な閉曲線)の流儀でとる。結び目 の記事の滑らかな結び目は、この記事では扱わない。
$\pi\colon\mathbb{R}^3\to\mathbb{R}^2$、$\pi(x,y,z)=(x,y)$ を射影とし、$z$ の大きいほうを「上」と呼ぶ。$\mathbb{R}^2$ には標準の向きを入れる。
$K\subset\mathbb{R}^3$ を向き付けられた折れ線の結び目(有限個の線分からなる単純閉曲線)とする。$\pi|_K$ が次をみたすとき、射影は 正則 であるという。
$K$ を交差の下の点(全部で $m$ 個)で切ったときの各断片を 弧 という。$m\ge1$ なら弧はちょうど $m$ 本の折れ線(両端の下の点を含める)$\alpha_1,\dots,\alpha_m$ で、$m=0$ なら $K$ 自身を 1 本の弧 $\alpha_1$ とみなす。交差 $c$ では、上の線を含む弧を $\alpha_{i(c)}$、下の点で終わる弧を $\alpha_{j(c)}$、下の点から始まる弧を $\alpha_{k(c)}$ とする(これらは一致してもよい)。上の線の向きのベクトル $a_c$ と下の線の向きのベクトル $b_c$ が $\mathbb{R}^2$ の正の基底をなすとき $\varepsilon_c:=1$、負の基底をなすとき $\varepsilon_c:=-1$ とおき、交差の符号 という。
$\varepsilon_c=1$ は、下の線が上の線の右側から左側へくぐることを意味する(上の線の進む向きに立って見た左右)。
図式 $D$ の Wirtinger 表示 とは、群の表示
$$
W(D):=\bigl\langle x_1,\dots,x_n\ \bigm|\ x_{k(c)}=x_{i(c)}^{-\varepsilon_c}\,x_{j(c)}\,x_{i(c)}^{\varepsilon_c}\quad(c\text{ は交差})\bigr\rangle
$$
のことである。ここで $n$ は弧の本数で、生成元 $x_i$ は弧 $\alpha_i$ に対応する。
生成元の幾何的な意味は次の定理で与える。$x_i$ は、上空の基点から降りて弧 $\alpha_i$ の下を右から左へくぐり、上を通って戻るループの類であり、$\alpha_i$ の向きについて右ねじの向きに 1 周するループである。
$K$ を正則な射影をもつ向き付けられた折れ線の結び目、$D$ をその図式とする。$x_i$ を弧 $\alpha_i$ の右ねじのまわりのループの類に送る対応は、群の同型
$$
W(D)\xrightarrow{\ \cong\ }\pi_1(\mathbb{R}^3\setminus K)
$$
を与える。
証明は 3 段からなる。まず $K$ を、図式 $D$ だけから作る標準の位置の結び目 $K_D$ へ、補空間ごと同相に移す(lem-wirt-standard)。次に $\mathbb{R}^3\setminus K_D$ を、図式から作る 2 次元の複体 $X$ へ変形レトラクトする(prop-wirt-complex)。最後に $X$ の胞体の貼り合わせから基本群の表示を読む。最後の段が表示の形を決める部分で、前の 2 段は補空間の形を整える幾何である。
この構成は Hat02 §1.2 Exercise 22(p. 55)が描く机と帯と四角形の複体と同じ型だが、ここでは複体を机の 下 に吊るす。こうすると下の線で切れる弧が帯に対応し、通常の向きの図式から直接 Wirtinger 表示が出る(同演習は上に置き、図式を下から見た弧で表示を述べている)。同演習は補空間が複体に変形レトラクトすることを認めて表示を導く問題で、変形レトラクトの構成は書かれていない。
図式 $D$ から標準の位置の結び目 $K_D$ を次のように作る。$r>0$ を小さくとり、$h(t):=r-|t|$($|t|\le r$)とおき、$0<\delta< r$ を固定する。
thm-wirt-main の $K$ と、その図式 $D$ から作った $K_D$ について、各 $p\in\mathbb{R}^2$ で増加する同相写像 $\varphi_p\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ を並べた同相写像 $\Phi(p,z)=(p,\varphi_p(z))$ で $\Phi(K)=K_D$ となるものがある。とくに $\pi_1(\mathbb{R}^3\setminus K)\cong\pi_1(\mathbb{R}^3\setminus K_D)$ である。
要点:$D$ の各点の上で、$K$ の高さ(交差では上下 2 つ)を $K_D$ の高さへ順序を保って送る増加同相が局所的に連続に選べ、それらの凸結合も同じ性質をもつので、1 の分割で貼り合わせられる。
$p\in D$ の上の $K$ と $K_D$ の点の高さの集合を $F(p)$、$G(p)$ とする(交差では 2 点、それ以外では 1 点)。$\mathbb{R}$ の増加同相で $F(p)$ を $G(p)$ へ順序どおりに送るものの全体を $C(p)$ とし、$p\notin D$ なら $C(p)$ は増加同相の全体とする。$C(p)$ は凸である(増加同相の凸結合は連続な狭義増加関数で $\pm\infty$ で $\pm\infty$ に発散するので増加同相であり、$F(p)$ の各点は同じ値に送られる)。
各点 $p_0$ の開近傍 $U$ と、$p\in U$ について $\psi_p\in C(p)$ となる連続な族 $(p,z)\mapsto\psi_p(z)$ を作る。(i) $p_0\notin D$:$D$ と交わらない $U$ で $\psi_p=\mathrm{id}$。(ii) $p_0\in D$ が交差でない:$U$ を小さな円板として $D\cap U$ を 1 本の折れ線にし、そこへの連続なレトラクション $\rho\colon U\to D\cap U$ をとる。$K$、$K_D$ の高さの関数 $f,g$ について $\psi_p(z):=z+g(\rho(p))-f(\rho(p))$。(iii) $p_0$ が交差:$D\cap U$ は 2 本の線分 $\ell_o$(上の線)、$\ell_u$ で、それぞれの上の高さ $f_o,f_u$、$g_o,g_u$ を各線分へのレトラクションで $U$ 全体に延ばす。交差点で $f_u< f_o$、$g_u< g_o$ なので、$U$ を小さくとれば定数 $m,m'$ で $U$ の上で $f_u< m< f_o$、$g_u< m'< g_o$ となる。$\psi_p$ を、3 点 $(f_u(p),g_u(p))$、$(m,m')$、$(f_o(p),g_o(p))$ を結び、その外では傾き $1$ の折れ線の増加同相とする。
これらの $U$ による $\mathbb{R}^2$ の開被覆に従属する 1 の分割 $(\lambda_\alpha)$ をとり、$\varphi_p:=\sum_\alpha\lambda_\alpha(p)\psi^\alpha_p$ とおく。凸性により $\varphi_p\in C(p)$ であり、$\Phi(p,z):=(p,\varphi_p(z))$ は連続な全単射で、$\Phi(K)=K_D$ である。連続な単射 $\mathbb{R}^3\to\mathbb{R}^3$ は開写像なので(領域不変性)、$\Phi$ は同相写像である。補空間どうしの同相から基本群の同型が出る(結び目 の命題「結び目群は不変量」)。$\square$
$T$ を、すべての帯を内部に含む平面 $z=0$ の中の閉じた正方形(机)とする。帯と平行四辺形の上の関数 $H$ を、帯の点 $(s,v)$($Q_c$ の外)で $H=h(v)$、$Q_c$ の点 $(x,y)$ で $H=h(x)+h(y)$、それ以外で $H=0$ と定める。$Q_c$ の辺で両方の式は一致し、帯の縁 $v=\pm r$ で $H=0$ なので、$H$ は連続である。
$X$ は $\mathbb{R}^3\setminus K_D$ の強変形レトラクトである。
$\mathbb{R}^3\setminus K_D$ を、上の領域 $E:=\{z\ge0\}$、下の領域 $B:=\{z\le-H(p)\}$、空洞 $C:=\{(p,z)\mid p\in N,\ -H(p)\le z\le0\}\setminus K_D$ に分ける。ここで $N$ はすべての帯と平行四辺形の和集合で、$T$ の内部に含まれる閉集合である。$p\notin N$ なら $H(p)=0$ なので、$-H(p)\le z\le0$ の点は $E$ に入る。どれも $\mathbb{R}^3\setminus K_D$ の閉集合で、$C$ はさらに有限個の閉じた片に分かれる。各片の上で $X$ を止めたまま $X$ へ押しつぶすホモトピーを書き、片の共通部分で一致することを確かめれば、貼り合わせの補題により全体のホモトピーが得られる。
上の領域.$c\colon\mathbb{R}^2\to T$ を凸集合 $T$ への最近点写像とし、$p_t:=(1-t)p+t\,c(p)$ とおく。$H_t(p,z):=(p_t,(1-t)z)$ とする。$p\in T$ なら $p_t=p$ で、点は真下の $T$ へ降りる。$p\notin T$ なら $t< 1$ で $p_t\notin T$ である。$E$ は $K_D$ と交わらず、終わりの像は $T$ に入り、$T$ は止まっている。
下の領域.$p\in T$ なら $H_t(p,z):=(p,(1-t)z-tH(p))$、$p\notin T$ なら $H_t(p,z):=(p_t,(1-t)z)$ とする。前者は $z\le-H(p)$ を保ち、後者は $t< 1$ で $H(p_t)=0$(帯は $T$ の内部にある)なので $z\le0=-H(p_t)$ を保つ。終わりの像は「いちばん下の屋根」$\{(p,-H(p))\}$ に入り、これは $p$ が帯の外なら $T$、帯の中なら $R_i$、$Q_c$ の中なら $S_c$ の点である。この面は止まっている。
空洞.空洞は、垂直な三角形 $\Delta:=\{(u,w)\mid|u|\le r,\ 0\le w\le h(u)\}$(深さ $w$、$z=-w$)の族に分かれる。帯の点 $(s,\cdot)$ の上では $u=v$ の三角形で、芯の点は $(0,\delta)$ である。$Q_c$ の上では 2 層あり、上の層は $x$ ごとの $u=y$ の三角形(芯は上の線の点)、下の層は $y$ ごとの $u=x$、深さ $w=h(y)+w'$($0\le w'\le h(x)$)の三角形(芯は下くぐりの点)である。三角形の内部の点 $q_0=(0,\delta)$ について、$q\ne q_0$ に対し $q_0+\mu(q)(q-q_0)\in\partial\Delta$ となる $\mu(q)\ge1$ がただ 1 つあり、$\mu$ は $\Delta\setminus\{q_0\}$ の上で連続である($\Delta-q_0$ の Minkowski 汎関数の逆数)。$J_t(q):=q_0+\bigl((1-t)+t\mu(q)\bigr)(q-q_0)$ は $\Delta\setminus\{q_0\}$ の中を動き、$\partial\Delta$ を止め、終わりの像は $\partial\Delta$ に入る。$J_t$ は $u\mapsto-u$ と可換なので、座標の符号の取り方によらない。各片の上でこれを三角形ごとに施す。
一致の確認.三角形の縁は $T$($w=0$)と屋根($w=h(u)$)であり、どちらも $X$ の点で止まっている。$Q_c$ の辺 $x=\pm r$ では上の層の三角形が $R_{i(c)}$ の帯の三角形と同じ集合で、下の層は退化する。辺 $y=\pm r$ では上の層が退化し、下の層の三角形は $R_{j(c)}$、$R_{k(c)}$ の端の三角形と同じ集合である。$Q_c$ の中の 2 層は共通の縁 $w=h(y)$(屋根 $R_{i(c)}$)でだけ接する。$E\cap B=\{z=0,\ H(p)=0\}$ では 2 つの式がどちらも $(p_t,0)$ を与え、$E\cap C=\{(p,0)\mid p\in N\}$ は $T$ の点、$B\cap C=\{(p,-H(p))\mid p\in N\}$ はいちばん下の屋根の点なので、どちらも $X$ の点で、どの式でも止まっている。以上で、$X$ を止めたまま恒等写像から $X$ への写像に至るホモトピーが、$\mathbb{R}^3\setminus K_D$ の全体で連続に定まる。$\square$
lem-wirt-standard と prop-wirt-complex により、$\pi_1(\mathbb{R}^3\setminus K)\cong\pi_1(\mathbb{R}^3\setminus K_D)\cong\pi_1(X)$ である(基点は $T$ にとる)。$X$ は有限個の多角形を辺で貼り合わせた多面体で、$T$ は可縮な部分複体なので、CW 対 $(X,T)$ はホモトピー拡張性をもち(Hat02 Proposition 0.16、p. 15)、商写像 $X\to X/T$ はホモトピー同値である(同 Proposition 0.17、p. 15)。
$X/T$ の胞体分割を次のようにとる。各弧 $\alpha_i$ の帯の屋根 $R_i$ を、帯の両端と、$R_i$ が通り抜ける各 $Q_c$ の辺 $x=\pm r$ での 横断弧 $\tau=\{(s_0,v,-h(v))\mid|v|\le r\}$ で切る($m=0$ なら 1 か所で切る)。横断弧の両端は $T$ にあるので、$X/T$ では 1 点 $*$ を通るループになる。
長方形:$R_i$ の隣り合う横断弧 $\tau,\tau'$ の間の長方形の境界は、$\tau$、$T$ の中の長い縁、$\tau'^{-1}$、$T$ の中の長い縁であり、関係 $\tau=\tau'$ を与える。よって $\alpha_i$ の横断弧はすべて同じ元 $x_i$ を表す。$m=0$ なら長方形の両端が同じ横断弧で、関係は自明である。
四角形:$Q_c$ の座標で境界を $(-r,-r)\to(r,-r)\to(r,r)\to(-r,r)\to(-r,-r)$ の順にたどる。辺 $y=-r$ は $\alpha_j$ の端の横断弧($v=-\varepsilon_cx$)、辺 $x=r$ は $\alpha_i$ の横断弧($v=\varepsilon_cy$)、辺 $y=r$ は $\alpha_k$ の始めの横断弧、辺 $x=-r$ は再び $\alpha_i$ の横断弧である。$v$ の増減を読むと、境界の語は
$$
\varepsilon_c=1:\ x_j^{-1}x_ix_kx_i^{-1},\qquad\varepsilon_c=-1:\ x_jx_i^{-1}x_k^{-1}x_i
$$
であり、どちらも関係 $x_k=x_i^{-\varepsilon_c}x_jx_i^{\varepsilon_c}$ と同値である。
重複した生成元を消去すると(群の表示 の定理「Tietzeの定理」)、$\pi_1(X/T)$ の表示は $W(D)$ になる。$x_i$ を表すループは、机から降りて屋根 $R_i$ の横断弧に沿って芯 $\alpha_i$ の下を $v=-r$(右)から $v=r$(左)へくぐり、机を通って戻るループで、$\alpha_i$ の右ねじのまわりのループである。$\Phi$ は各縦線の上で上下の順序を保つので、$K$ の側でも同じ記述になる。$\square$
thm-wirt-main の状況で、生成元 $x_1,\dots,x_n$ はすべて互いに共役であり、結び目群の可換化は $\mathbb{Z}$ である。同型は各 $x_i$ を $1$ へ送る。
関係式により $x_{k(c)}$ は $x_{j(c)}$ と共役である。$K$ を向きに沿って 1 周すると、各交差の下の点で弧 $\alpha_{j(c)}$ から $\alpha_{k(c)}$ へ移り、すべての弧を通る($K$ は連結)。よって生成元はすべて共役で、可換化ではすべて等しい。各関係式は両辺の指数の和が $1$ なので、すべての $x_i$ を $1\in\mathbb{Z}$ へ送る全射準同型 $W(D)\to\mathbb{Z}$ がある。可換化は 1 つの元 $x_1$ で生成され、$\mathbb{Z}$ へ全射するので、$\mathbb{Z}$ と同型である。$\square$
可換化が $\mathbb{Z}$ であることはどの結び目でも同じなので(結び目 の箇条「可換化は役に立たない」)、結び目を区別するには群の可換でない部分を見る必要がある。
色を対称群 $S_3$ の 3 つの互換に対応させ、$x_i$ を弧 $\alpha_i$ の色の互換に送る。互換 $\sigma$ による互換 $\tau$ の共役 $\sigma\tau\sigma^{-1}$ は、$\sigma=\tau$ なら $\tau$、$\sigma\ne\tau$ なら第 3 の互換である($\sigma^{-1}=\sigma$)。塗り方の条件はちょうど各関係式が成り立つことなので、準同型 $W(D)\to S_3$ が定まる(群の表示 の命題「表示からの準同型」)。2 つの異なる互換は $S_3$ を生成するので像は $S_3$ で、可換でない。自明な結び目の群は $\mathbb{Z}$ なので(結び目 の定理「自明な結び目の結び目群」)、結び目 の命題「結び目群は不変量」(その証明は結び目の滑らかさを使わない)により、$K$ を $K_0$ に移す同相写像はない。$\square$
三葉結び目の図式は 3 本の弧に異なる色を塗れば条件をみたす。
証明は成分の個数を使っていないので、正則な射影をもつ折れ線の絡み目でも、補空間の基本群は同じ形の表示(下の点をもたない成分は 1 本の弧とする)をもつ。ただし cor-wirt-abelian は連結性を使っており、成分が $\mu$ 個なら可換化は $\mathbb{Z}^\mu$ になる(各成分の弧の生成元が可換化で 1 つにまとまる)。また $\pi_1(S^3\setminus K)\cong\pi_1(\mathbb{R}^3\setminus K)$ なので(結び目 の補題「無限遠点を加えても基本群は変わらない」。その証明が使うのは、結び目がコンパクトであることと補空間が弧状連結であることだけで、折れ線の結び目・絡み目では、補空間が $\mathbb{R}^3\setminus K_D$ と同相で、それが弧状連結な複体 $X$ に変形レトラクトすること(lem-wirt-standard、prop-wirt-complex)から補空間の弧状連結性が従う)、$S^3$ の中の結び目群も同じ表示をもつ。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 成分が 1 つ(cor-wirt-abelian) | Hopf 絡み目の 2 交差の図式 | 群は $\langle a,b\mid ab=ba\rangle\cong\mathbb{Z}^2$ で、可換化は $\mathbb{Z}$ でない |
| 交差の上下の情報(thm-wirt-main) | 同じ図式の一方の交差の上下を入れ替えた図式 | 射影の像は同じでも群は自由群 $\langle a,b\mid\ \rangle$ になり、$\mathbb{Z}^2$ と異なる |
1 行目:2 つの成分はそれぞれ 1 回ずつ相手の下をくぐるので、弧は各成分に 1 本ずつ $a,b$ である。交差で下の線の弧は入る弧と出る弧が同じなので、関係式は $b=a^{\mp1}ba^{\pm1}$、$a=b^{\mp1}ab^{\pm1}$ で、どちらも $ab=ba$ である。2 行目:入れ替えると一方の成分 $A$ が 2 回とも上を通り、$A$ は 1 本の弧 $a$、他方は 2 本の弧 $b_1,b_2$ になる。2 つの交差の符号は逆になり(絡み数が $0$ になる)、関係式は $b_2=a^{-\varepsilon}b_1a^{\varepsilon}$ と $b_1=a^{\varepsilon}b_2a^{-\varepsilon}$ で、後者は前者から従う。よって群は $\langle a,b_1\mid\ \rangle$ で、可換でないので $\mathbb{Z}^2$ と同型でない。上下の情報を落とした射影の像だけからは群が決まらない。
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