Jacobi場(Jacobi field)とは、Riemann 多様体の測地線 $\gamma$ に沿うベクトル場 $J$ で、Jacobi 方程式 $D_t^2J+R(J,\dot\gamma)\dot\gamma=0$ を満たすものである。測地線だけからなる変分の変分ベクトル場はつねに Jacobi 場であり、逆にコンパクトな区間上の Jacobi 場はすべてそのような変分から生じ、1 点 $p$ で消える Jacobi 場は指数写像の微分 $(d\exp_p)_{tv}(tw)$ で表される。Jacobi 場の空間は $2n$ 次元で、断面曲率が定数 $c$ の空間では $\sin$、$t$、$\sinh$ 型の明示公式をもつ。近くの測地線の離れ方を曲率で記述する道具であり、共役点・指数形式・比較定理・Lorentz 幾何の測地線偏差の基礎になる。
前提知識: 測地線, Riemann曲率テンソル, 曲線の変分論
平面上で、1 点から少しだけ違う向きに出た 2 本の直線は、出発点からの距離に比例して離れていく。球面上では、北極から出た 2 本の経線はいったん離れたのち南極で再び出会う。双曲平面では指数関数的に離れていく。このような「近くの測地線どうしの離れ方」を 1 次の近似で記述するのが Jacobi 場 である。Jacobi 場は測地線に沿う 2 階の線形微分方程式(Jacobi 方程式)の解であり、その方程式の係数に曲率が現れる。こうして曲率が測地線の振る舞いを支配する仕組みが、具体的な微分方程式として見えるようになる。
この記事では、測地線だけからなる変分の変分ベクトル場が Jacobi 方程式を満たすこと、逆にコンパクトな区間上の Jacobi 場はすべてそのような変分から生じること、そして 1 点で消える Jacobi 場が指数写像の微分で書けることを証明する。さらに Jacobi 場の空間の次元、接成分と法成分への分解、定曲率空間での明示公式、指数形式との関係を述べる。Jacobi 場が 2 点で消えるという現象は 共役点 の記事で扱う。
以下、断らない限り $(M,g)$ は $n$ 次元の Riemann 多様体とし、$\nabla$ を Levi-Civita 接続、曲線 $\gamma$ に沿う共変微分を $D_t$ と書く。曲率テンソルは Riemann曲率テンソル の記事の規約
$$
R(X,Y)Z=\nabla_X\nabla_YZ-\nabla_Y\nabla_XZ-\nabla_{[X,Y]}Z,\qquad \mathrm{Rm}(X,Y,Z,W)=g(R(Z,W)Y,X)
$$
に従う。$\gamma$ に沿うベクトル場 $V$ について $V':=D_tV$、$V'':=D_tD_tV$ と略記する。$\dot\gamma$ は $\gamma$ の速度である。
$I\subset\mathbb{R}$ を区間、$\gamma\colon I\to M$ を 測地線 とする。$\gamma$ に沿う滑らかなベクトル場 $J$ が
$$
J''+R(J,\dot\gamma)\dot\gamma=0
$$
を満たすとき、$J$ を $\gamma$ に沿う Jacobi 場(Jacobi field)といい、この方程式を Jacobi 方程式 という。$\gamma$ に沿う Jacobi 場全体を $\mathcal{J}(\gamma)$ と書く。
$\gamma\colon I\to M$ の変分(曲線の変分論 の記事の定義「曲線の変分」。ここでは区間 $I$ はコンパクトとは限らない)$F\colon(-\varepsilon,\varepsilon)\times I\to M$ が、各 $s$ について $\gamma_s(t):=F(s,t)$ を測地線とするとき、$F$ を 測地線による変分(variation through geodesics)という。その変分ベクトル場 $\partial_sF(0,t)$ を、以下 $F$ の変分ベクトル場とよぶ。
Jacobi 方程式は $J$ について線形なので、$\mathcal{J}(\gamma)$ は $\gamma$ に沿うベクトル場全体の線形部分空間である。$\dot\gamma$ 自身と $t\dot\gamma$ はつねに Jacobi 場である。実際 $D_t\dot\gamma=0$ なので $(\dot\gamma)''=0$、$(t\dot\gamma)''=0$ であり、$R(\dot\gamma,\dot\gamma)\dot\gamma=0$(曲率は前の 2 引数について反対称)である。これらはそれぞれ変分 $F(s,t)=\gamma(t+s)$、$F(s,t)=\gamma((1+s)t)$ の変分ベクトル場であり、測地線のパラメータを取り替えただけの変分に当たる。
測地線の族 $\gamma_s$ を考え、隣り合う測地線の「ずれ」を $J(t)=\partial_s\gamma_s(t)|_{s=0}$ とする。平坦な空間ではずれは $t$ の 1 次式で増える($J''=0$)。曲率があると、ずれの加速度 $J''$ に $-R(J,\dot\gamma)\dot\gamma$ が加わる。$\dot\gamma$ が単位ベクトルで $J$ が $\dot\gamma$ に直交する単位ベクトルなら、$g(R(J,\dot\gamma)\dot\gamma,J)$ は $J$ と $\dot\gamma$ の張る平面の 断面曲率 $K$ に等しいので、大まかには「$K>0$ なら $J$ は引き戻され、$K<0$ なら押し広げられる」。$J''=-KJ$ という 1 次元の模型では、$K>0$ のとき $J$ は $\sin(\sqrt K\,t)$ のように振動し、$K<0$ のとき $\sinh(\sqrt{-K}\,t)$ のように増える(prop-jacobi-constant-curvature)。
一般相対論では、自由落下する粒子の世界線(時間的測地線)の間の相対加速度を表す式として同じ方程式が現れ、測地線偏差の方程式とよばれる。これが潮汐力の数学的な表現である(節「擬Riemann多様体の場合」)。
$\gamma\colon I\to M$ を測地線、$F$ を $\gamma$ の測地線による変分とする。このとき $F$ の変分ベクトル場 $J(t)=\partial_sF(0,t)$ は Jacobi 場である。
$S:=\partial_sF$、$T:=\partial_tF$ とおき、$D_s$、$D_t$ を $s$ 方向・$t$ 方向の共変微分とする。各 $\gamma_s$ は測地線なので、すべての $(s,t)$ で $D_tT=0$ である。これを $s$ で共変微分すると $D_sD_tT=0$ である。曲線の変分論 の記事の補題「共変微分の交換と曲率」により $D_sD_tT=D_tD_sT+R(S,T)T$ であり、同記事の変分の節で示した等式 $D_sT=D_tS$(接続に捩れがなく $[\partial_s,\partial_t]=0$ であることによる)を使うと
$$
0=D_sD_tT=D_tD_tS+R(S,T)T
$$
を得る。$s=0$ とおくと $S(0,t)=J(t)$、$T(0,t)=\dot\gamma(t)$ なので $J''+R(J,\dot\gamma)\dot\gamma=0$ である。$\blacksquare$
$\gamma\colon I\to M$ を測地線、$a\in I$、$p=\gamma(a)$ とする。任意の $v,w\in T_pM$ に対し、$I$ 全体で定義された Jacobi 場 $J$ で $J(a)=v$、$J'(a)=w$ を満たすものがただ 1 つ存在する。したがって $J\mapsto(J(a),J'(a))$ は線形同型 $\mathcal{J}(\gamma)\cong T_pM\oplus T_pM$ を与え、$\dim\mathcal{J}(\gamma)=2n$ である。
$T_pM$ の基底 $e_1,\dots,e_n$ を $\gamma$ に沿って平行移動し、$\gamma$ に沿う平行な枠 $E_1,\dots,E_n$ を作る(平行移動は $I$ 全体で定義された線形同型である)。$\dot\gamma$ も平行なので、$\dot\gamma=\sum_k y^kE_k$ と書くと係数 $y^k$ は定数である。滑らかな関数 $a^i{}_j(t)$ を $R(E_j,\dot\gamma)\dot\gamma=\sum_ia^i{}_j(t)E_i$ で定めると、$J=\sum_iJ^iE_i$ に対して $J''=\sum_i(J^i)''E_i$ なので、Jacobi 方程式は
$$
(J^i)''(t)+\sum_ja^i{}_j(t)J^j(t)=0\qquad(i=1,\dots,n)
$$
という係数が滑らかな 2 階線形常微分方程式系になる。線形常微分方程式 の解は区間全体で存在し、初期値 $J^i(a)$、$(J^i)'(a)$ により一意に決まる。これが主張である。$\blacksquare$
次の定理は thm-jacobi-equation の逆であり、Jacobi 場が実際に「近くの測地線の動き」を表していることを保証する。
$\gamma\colon I\to M$ を測地線とし、$I$ はコンパクトであるか $M$ が測地的に完備であるとする。$0\in I$ とし、$p=\gamma(0)$、$v=\dot\gamma(0)$ とおく。
$\exp$ を 測地線 の記事の節「指数写像と完備性」の指数写像とし、$\mathcal{E}\subset TM$ をその定義域とする。$\mathcal{E}$ は $TM$ の開集合で、$\exp$ は滑らかである(Lee18 Proposition 5.19、p. 128)。
(1) $J$ を Jacobi 場とする。$\sigma(s):=\exp_p(sJ(0))$ とし($|s|$ が小さければ定義される)、$P_s\colon T_pM\to T_{\sigma(s)}M$ を $\sigma$ に沿う平行移動とする。$\sigma$ に沿うベクトル場
$$
V(s):=P_s\bigl(v+sJ'(0)\bigr)
$$
を考えると、$V(0)=v$ であり、$P_s$ が平行移動であることから $D_sV(0)=J'(0)$ である。$F(s,t):=\exp_{\sigma(s)}(tV(s))$ とおく。$I$ がコンパクトなら、$\mathcal{E}$ は $TM$ の開集合で、コンパクト集合 $\{tv\mid t\in I\}$ を含む。写像 $(s,t)\mapsto tV(s)$ は連続なので、これによる $\mathcal{E}$ の逆像は $\{0\}\times I$ を含む開集合であり、$I$ のコンパクト性(チューブ補題)により、十分小さい $\delta>0$ をとれば $|s|<\delta$、$t\in I$ で $tV(s)\in\mathcal{E}$ となり $F$ が定義される。$M$ が完備なら $\mathcal{E}=TM$ である。
各 $s$ について $t\mapsto F(s,t)$ は初速度 $V(s)$ の測地線なので、$F$ は測地線による変分であり、$F(0,t)=\exp_p(tv)=\gamma(t)$ である。thm-jacobi-equation によりその変分ベクトル場 $W$ は Jacobi 場である。$F(s,0)=\sigma(s)$ なので $W(0)=\sigma'(0)=J(0)$ である。また $\partial_tF(s,0)=V(s)$ と $D_t\partial_sF=D_s\partial_tF$ から
$$
W'(0)=D_t\partial_sF(0,0)=D_s\partial_tF(0,0)=D_sV(0)=J'(0)
$$
である。prop-jacobi-existence の一意性により $W=J$ である。
(2) $J(0)=0$ のときは (1) で $\sigma(s)\equiv p$ ととれ、平行移動は恒等写像なので $V(s)=v+sw$、$F(s,t)=\exp_p(t(v+sw))$ となる。合成関数の微分により
$$
J(t)=\left.\frac{\partial}{\partial s}\right|_{s=0}\exp_p(tv+stw)=(d\exp_p)_{tv}(tw)
$$
である。$I$ がコンパクトでなくても、各 $t\in I$ は $0$ と $t$ を含むコンパクトな部分区間に入るので、その上で上の議論を当てればよい。$\blacksquare$
完備性またはコンパクト性の仮定は (1) に必要である。表「条件を外したときの反例」の 2 行目で、非完備な多様体の $\mathbb{R}$ 全体で定義された測地線に沿う Jacobi 場が、どの測地線による変分からも生じない例を示す。
$\gamma\colon I\to M$ を定値でない測地線、$J$ を $\gamma$ に沿う Jacobi 場とする。
とくに、2 点で消える Jacobi 場は法 Jacobi 場である。接 Jacobi 場 $(\alpha+\beta t)\dot\gamma$ は 0 でなければ高々 1 点でしか消えないので、共役点 を調べるときは法 Jacobi 場だけを見ればよい。
$c\in\mathbb{R}$ に対し、$u''+cu=0$、$u(0)=0$、$u'(0)=1$ の解を $s_c$ と書く。すなわち
$$
s_c(t)=\begin{cases}\dfrac{\sin(\sqrt c\,t)}{\sqrt c}&(c>0)\\ t&(c=0)\\ \dfrac{\sinh(\sqrt{-c}\,t)}{\sqrt{-c}}&(c<0)\end{cases}
$$
である。
$(M,g)$ を断面曲率が定数 $c$ の Riemann 多様体(断面曲率 の記事の定義「定曲率空間」)、$\gamma$ を単位速さの測地線で $0$ を定義域に含むものとする。$\gamma$ に沿う法 Jacobi 場で $J(0)=0$ となるものは
$$
J(t)=s_c(t)\,E(t)
$$
($E$ は $\gamma$ に沿う平行な法ベクトル場)の形のものに限り、このとき $E=J'(0)$ を平行移動したものである。とくに $|J(t)|=|s_c(t)|\,|J'(0)|$ である。
断面曲率 の記事の系「定曲率の特徴づけ」により $R(X,Y)Z=c\bigl(g(Y,Z)X-g(X,Z)Y\bigr)$ なので、法ベクトル場 $J$ について
$$
R(J,\dot\gamma)\dot\gamma=c\bigl(g(\dot\gamma,\dot\gamma)J-g(J,\dot\gamma)\dot\gamma\bigr)=cJ
$$
である。法ベクトルの平行な正規直交枠 $E_2,\dots,E_n$ をとり $J=\sum_iu_iE_i$ と書くと、Jacobi 方程式は $u_i''+cu_i=0$ になり、$u_i(0)=0$ の解は $u_i=u_i'(0)\,s_c$ である。よって $J=s_c\sum_iu_i'(0)E_i$ であり、$\sum_iu_i'(0)E_i$ は $J'(0)$ を平行移動した平行な法ベクトル場である。逆に $s_cE$ は同じ計算で Jacobi 方程式を満たす。$\blacksquare$
単位球面 $S^n$($c=1$)では、1 点 $p$ で消える法 Jacobi 場は $\sin t\cdot E(t)$ であり、$t=\pi$ すなわち対蹠点で再び消える。これは、$p$ から出る大円がすべて対蹠点で出会うことの 1 次の表れである。実際、$p$ を北極とすると、経線の族 $\gamma_s$ の変分ベクトル場がこの形になる。Euclid 空間($c=0$)では $J=tE$ で、$J$ は $t>0$ で消えない。断面曲率 $-1$ の 双曲空間 では $J=\sinh t\cdot E$ で、$|J|$ は指数関数的に増える。どの場合も $J(0)=0$、$|J'(0)|=1$ の法 Jacobi 場の長さは $|s_c(t)|$ に等しい。
$\gamma\colon[a,b]\to M$ を測地線とする。$\gamma$ に沿う滑らかなベクトル場 $V,W$ に対し
$$
I(V,W):=\int_a^b\Bigl(g(V',W')-g\bigl(R(V,\dot\gamma)\dot\gamma,W\bigr)\Bigr)dt
$$
とおく。$g(R(V,\dot\gamma)\dot\gamma,W)=\mathrm{Rm}(W,\dot\gamma,V,\dot\gamma)$ は曲率テンソルの対の入れ替えについての対称性(同命題の 4)により $V,W$ について対称なので、$I$ は対称双線形形式である。$I(V,V)$ は 曲線の変分論 の記事の定理「エネルギーの第2変分」の 指数形式 にほかならない。
$J$ を $\gamma\colon[a,b]\to M$ に沿う Jacobi 場、$V$ を $\gamma$ に沿う滑らかなベクトル場とすると
$$
I(J,V)=g(J'(b),V(b))-g(J'(a),V(a))
$$
が成り立つ。とくに $J(a)=J(b)=0$ なら $I(J,J)=0$ であり、$V(a)=V(b)=0$ なるすべての $V$ について $I(J,V)=0$ である。
$\dfrac{d}{dt}g(J',V)=g(J'',V)+g(J',V')$ を $[a,b]$ で積分し、Jacobi 方程式 $J''=-R(J,\dot\gamma)\dot\gamma$ を代入すれば $I(J,V)=\bigl[g(J',V)\bigr]_a^b$ を得る。$\blacksquare$
つまり、両端で消える Jacobi 場は、両端を固定した変分のうちエネルギーの 2 階微分が消える方向を与える。この方向が測地線の最短性を壊しうることは 共役点 の記事の定理で示す。
$J_1,J_2$ を同じ測地線に沿う Jacobi 場とすると、$g(J_1',J_2)-g(J_1,J_2')$ は定数である。
微分すると $g(J_1'',J_2)-g(J_1,J_2'')=-\mathrm{Rm}(J_2,\dot\gamma,J_1,\dot\gamma)+\mathrm{Rm}(J_1,\dot\gamma,J_2,\dot\gamma)$ であり、対の入れ替えについての対称性により $0$ である。$\blacksquare$
擬リーマン多様体(とくに 時空 のような Lorentz 多様体)でも、Levi-Civita 接続と曲率テンソルは同じ式で定義され、Jacobi 場は同じ方程式で定義される。thm-jacobi-equation、prop-jacobi-existence、thm-jacobi-from-variation の証明は計量の正定値性を使っておらず、そのまま成り立つ(Lee18 Theorem 10.1、Proposition 10.2・10.4・10.10、pp. 284–290 は Riemann・擬 Riemann の両方で述べている)。prop-jacobi-tangential-normal の (1) も同じである。(2)・(3) は $g(\dot\gamma,\dot\gamma)\neq0$、すなわち $\gamma$ が光的でないことを使う。光的測地線では $\dot\gamma$ 自身が $\dot\gamma$ に直交するので、接と法への分解は一意でない(表の 4 行目)。
Lorentz 多様体の時間的測地線 $\gamma$($g(\dot\gamma,\dot\gamma)=-1$)に沿う法 Jacobi 場 $J$ は、自由落下する近くの粒子との相対位置を 1 次で表し、$J''=-R(J,\dot\gamma)\dot\gamma$ はその相対加速度を与える。右辺の線形写像 $J\mapsto R(J,\dot\gamma)\dot\gamma$ が潮汐力を表す作用素であり、時間的測地線に対する Generic条件(Lorentz幾何) は、この作用素が測地線上のどこかで 0 でないことを要請する条件である(光的測地線では、$\dot\gamma$ に直交するベクトルに制限した形で要請する)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 変分の各曲線が測地線であること | $\mathbb{R}^2$ の $F(s,t)=(t,st^2)$ | 変分ベクトル場が Jacobi 場であること |
| 区間のコンパクト性または $M$ の完備性 | $M=\{(x,y)\mid \lvert y\rvert< e^{-x^2}\}\subset\mathbb{R}^2$、$\gamma(t)=(t,0)$($t\in\mathbb{R}$)、$J=\partial_y$ | Jacobi 場が測地線による変分から生じること |
| 断面曲率が定数であること | 積多様体 $S^2\times\mathbb{R}$ の測地線 $\gamma(t)=(c(t),0)$($c$ は単位速さの大円) | $J(0)=0$ の法 Jacobi 場が $s_c(t)E(t)$ の形であること |
| $\gamma$ が光的でないこと | 2 次元 Minkowski 時空の光的測地線 $\gamma(t)=(t,t)$ | 接 Jacobi 場と法 Jacobi 場への一意な分解 |
1 行目:$\gamma_s(t)=(t,st^2)$ は $s\neq0$ で直線でなく、変分ベクトル場は $V(t)=(0,t^2)$ である。$\mathbb{R}^2$ では $R=0$ なので Jacobi 場は $t$ の 1 次式に限るが、$V''=(0,2)\neq0$ である。
2 行目:$M$ は $\mathbb{R}^2$ の開集合で平坦なので、$\gamma$ は $\mathbb{R}$ 全体で定義された測地線であり、定ベクトル場 $J=\partial_y$ は $J''=0$ を満たす Jacobi 場である。$F$ が測地線による変分で変分ベクトル場が $J$ だったとすると、各 $\gamma_s$ は $M$ 内の直線 $\gamma_s(t)=P_s+tQ_s$($t\in\mathbb{R}$)であり、$Q_s=\partial_tF(s,0)$ は $s$ について連続で $Q_0=(1,0)$ である。$s$ が小さいと $Q_s$ の $x$ 成分は $0$ でなく、$\gamma_s$ の $x$ 成分は傾きが $0$ でない $t$ の 1 次式なので、$t\to\pm\infty$ で $\lvert x\rvert\to\infty$、$e^{-x^2}\to0$ となる。$\gamma_s$ の $y$ 成分は $t$ の 1 次以下の式で、$\lvert y\rvert< e^{-x^2}$ により $t\to\pm\infty$ で $0$ に近づくので、恒等的に $0$ である。すると $\partial_sF(0,t)$ の $y$ 成分も $0$ となり、$J=\partial_y$ に反する。
3 行目:Riemann曲率テンソル の記事の命題「積多様体の曲率」により、$\mathbb{R}$ 方向を含む曲率は $0$ である。$c$ に沿う $S^2$ の単位法ベクトル場を $N$ とすると、$E_1=(N,0)$、$E_2=(0,\partial_r)$ は平行な法枠であり、$J=u_1E_1+u_2E_2$ の Jacobi 方程式は $u_1''+u_1=0$、$u_2''=0$ になる。$J(t)=\sin t\,E_1+t\,E_2$ は $J(0)=0$ の法 Jacobi 場だが、平行な枠に関する方向 $(\sin t,t)$ が $t$ によって変わるので、どの $c'$ と平行な $E$ についても $s_{c'}(t)E(t)$ の形にならない。
4 行目:$\dot\gamma=(1,1)$ は $g(\dot\gamma,\dot\gamma)=-1+1=0$ を満たし、$J=\dot\gamma$ は接 Jacobi 場であると同時に $\dot\gamma$ に直交する。
Jacobi 方程式の導出、存在と一意性、測地線による変分としての実現、指数写像の微分による表示、接と法の分解、定曲率空間の公式は Lee18 Chapter 10 の Theorem 10.1(p. 284)、Proposition 10.2・Corollary 10.3(p. 285)、Proposition 10.4(pp. 285–286)、Proposition 10.7・Corollary 10.8(p. 288)、Lemma 10.9・Proposition 10.10(pp. 289–290)、Proposition 10.12(pp. 291–292)にある。Wronski 形式の保存は同 Lemma 10.27(p. 304)、指数形式との関係は同 Proposition 10.24(p. 302)にある。Lee18 の $R(X,Y)Z$ の規約はこの記事と同じである($(0,4)$ 型の $\mathrm{Rm}$ は引数の順序が違い、Riemann曲率テンソル の記事の注意「符号と添字の流儀」のとおり符号が逆になる)。Mil63 §14(p. 77)は Jacobi 場を Jacobi 方程式の解として定義し、Lemma 14.3・14.4(pp. 80–81)で測地線による変分との関係を示す。曲率の符号の規約はこの記事と逆である。
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