Lucasの円(Lucas circles)とは、三角形 $ABC$ で、辺 $BC$ から距離 $s_a=\dfrac{ah_a}{a+h_a}$($a=BC$、$h_a$ は $A$ からの高さ)の平行線が辺 $AB$、$CA$ と交わる 2 点と $A$ を通る円(Lucas の $A$ 円)と、辺 $CA$、$AB$ について同様に作った 2 円である。$\angle B$、$\angle C$ が $90^\circ$ 以下なら 2 点は辺 $BC$ の上の内接正方形の頂点である。$A$ 円は $A$ を中心とする相似比 $\dfrac{h_a}{a+h_a}$ の相似拡大で外接円を移した円で、外接円に $A$ で内接し、半径は $\dfrac{R}{1+2aR/(bc)}$($R$ は外接円の半径)である。3 円は 2 つずつ外接する。鈍角三角形でも同じである。
前提知識: 三角形に内接する正方形, 相似変換と相似の中心, 正弦定理(高校数学), 2円の位置関係と共通接線, ベクトルの内積(高校数学)
三角形に内接する正方形 では、三角形の辺の上に置いた正方形の大きさを求めた。ここでは、その正方形の 2 つの頂点と、向かいの三角形の頂点の 3 点を通る円を描いてみる。3 つの辺それぞれについて描くと、円が 3 つできる。
$A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(0,4)$ とする。$\angle A=90^\circ$ なので、外接円は斜辺 $BC$ を直径とする円で、中心 $O(2,2)$、半径 $R=2\sqrt2$ である。
(1) 斜辺 $BC$ の上の内接正方形は 1 辺 $\dfrac{4\sqrt2}3$ で、辺 $AB$、$CA$ の上の頂点は $S\left(\dfrac43,0\right)$、$T\left(0,\dfrac43\right)$ である(三角形に内接する正方形 の最初の例)。3 点 $A$、$S$、$T$ を通る円を考える。$\angle SAT=90^\circ$ なので、この円は $ST$ を直径とする円で、中心は $ST$ の中点 $O_A\left(\dfrac23,\dfrac23\right)$、半径は
$$
R_A=\frac12ST=\frac12\cdot\frac{4\sqrt2}3=\frac{2\sqrt2}3
$$
である。
(2) 辺 $CA$ の上の内接正方形は、直角の頂点 $A$ に置いた 1 辺 $2$ の正方形 $(0,0)$、$(0,2)$、$(2,2)$、$(2,0)$ である。辺 $AB$ の上の頂点は $(2,0)$、辺 $BC$ の上の頂点は $(2,2)$ である。3 点 $B(4,0)$、$(2,0)$、$(2,2)$ を通る円は、$(2,0)$ での角が $90^\circ$ なので、$B$ と $(2,2)$ を結ぶ線分を直径とする。中心は $O_B(3,1)$、半径は $R_B=\dfrac12\sqrt{2^2+2^2}=\sqrt2$ である。
(3) 同じように、辺 $AB$ の上の内接正方形((2) と同じ正方形)の頂点 $(0,2)$、$(2,2)$ と $C$ を通る円は、中心 $O_C(1,3)$、半径 $R_C=\sqrt2$ である。
3 つの円の中心の距離と半径の和を比べると
$$
O_AO_B=\sqrt{\left(3-\frac23\right)^2+\left(1-\frac23\right)^2}=\sqrt{\frac{49+1}9}=\frac{5\sqrt2}3=\frac{2\sqrt2}3+\sqrt2=R_A+R_B
$$
で、$O_BO_C=\sqrt{2^2+2^2}=2\sqrt2=R_B+R_C$、$O_CO_A=\dfrac{5\sqrt2}3=R_C+R_A$ である。さらに外接円の中心 $O$ からの距離は
$$
OO_A=\sqrt{\left(\frac43\right)^2+\left(\frac43\right)^2}=\frac{4\sqrt2}3=2\sqrt2-\frac{2\sqrt2}3=R-R_A,\qquad OO_B=\sqrt{1^2+1^2}=\sqrt2=R-R_B
$$
で、$OO_C=\sqrt2=R-R_C$ である。
直角二等辺三角形の 3 つの円(赤・青・緑)は互いに接し、どれも外接円(灰色)に内側から接する。破線は円を作るのに使った正方形
中心の距離が半径の和に等しい 2 円は外側で接し(外接し)、中心の距離が半径の差に等しい 2 円は内側で接する(内接する)(2円の位置関係と共通接線)。ex-luc-start の 3 つの円は、2 つずつ外接し、どれも外接円に内接している。これは直角二等辺三角形だけの偶然ではない。この記事で答える問いは次の 2 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 |
|---|---|
| 内接正方形の 2 頂点と向かいの頂点を通る円 | Lucas の円(def-luc) |
| $A$ を中心とする相似拡大 | 外接円を Lucas の円に移す変換(thm-luc-tangent) |
| 中心の距離と半径の差・和 | 内接・外接の判定(thm-luc-tangent、thm-luc-mutual) |
| 位置ベクトルの内積 | 中心の距離の 2 乗の計算(prf-luc-mutual) |
以下、三角形 $ABC$ の辺の長さを $a=BC$、$b=CA$、$c=AB$、高さを $h_a$、$h_b$、$h_c$、外接円の中心を $O$、半径を $R$ とする。三角形の角に条件は付けない(鈍角三角形でもよい)。
三角形に内接する正方形 で見たように、辺 $BC$ に平行で $BC$ から距離 $y$ の直線($A$ と同じ側)が三角形を切る切り口の長さは $\dfrac{a(h_a-y)}{h_a}$ である。この長さが $y$ に等しくなるのは
$$
y=s_a=\frac{ah_a}{a+h_a}
$$
のときである($y(a+h_a)=ah_a$ を解いた)。
三角形 $ABC$ で、辺 $BC$ から距離 $s_a=\dfrac{ah_a}{a+h_a}$ の切り口の両端を $S_a$(辺 $AB$ の上)、$T_a$(辺 $CA$ の上)とする。3 点 $A$、$S_a$、$T_a$ を通る円を Lucas の $A$ 円 という。辺 $CA$、$AB$ について同じように作った円を Lucas の $B$ 円、Lucas の $C$ 円 といい、3 つをまとめて Lucas の円 という。
$S_a$、$T_a$ は $A$ と異なり、それぞれ直線 $AB$、$AC$ の上にあるので、3 点 $A$、$S_a$、$T_a$ は一直線上にない。よって 3 点を通る円はただ 1 つあり、def-luc の円は確かに決まる。
線分 $S_aT_a$ の長さは切り口の長さ $s_a$ に等しいので、$S_a$、$T_a$ から直線 $BC$ に下ろした垂線の足と $S_a$、$T_a$ の 4 点は、1 辺 $s_a$ の正方形をなす。$\angle B$、$\angle C$ がどちらも $90^\circ$ 以下なら、これは辺 $BC$ の上の内接正方形である(三角形に内接する正方形 の主定理 1)。$\angle B$ か $\angle C$ が鈍角なら、正方形の下の辺は辺 $BC$ からはみ出すが、Lucas の円の定義には $S_a$、$T_a$ しか使わないので、円は同じように決まる。この正方形は、辺 $BC$ の外側に正方形を立て、その 2 頂点と $A$ を結ぶ直線を使って作図することもできる(Wei26)。
$B(0,0)$、$C(14,0)$、$A(5,12)$ では $a=14$、$h_a=12$ で、$s_a=\dfrac{14\cdot12}{26}=\dfrac{84}{13}$ である。$S_a$ は線分 $BA$ を $\dfrac{84}{13}:\left(12-\dfrac{84}{13}\right)=7:6$ に内分する点、$T_a$ は線分 $CA$ を同じ比に内分する点で
$$
S_a\left(\frac{35}{13},\frac{84}{13}\right),\qquad T_a\left(\frac{119}{13},\frac{84}{13}\right)
$$
である。$S_aT_a=\dfrac{84}{13}=s_a$ で、高さ $\dfrac{84}{13}$ と等しい。
ex-luc-131415-points で $S_a$ は線分 $BA$ を $7:6$ に内分していた。$A$ から見ると $AS_a:AB=6:13$ で、$T_a$ も $AT_a:AC=6:13$ である。つまり $S_a$、$T_a$ は、$B$、$C$ を $A$ に向かって同じ比で縮めた点である。これを一般に確かめる。
$k_A=\dfrac{h_a}{a+h_a}$ とおくと
$$
\frac{AS_a}{AB}=\frac{AT_a}{AC}=k_A
$$
である。
$S_a$ は直線 $BC$ から距離 $s_a$、$A$ は距離 $h_a$ のところにあり、$B$ は直線 $BC$ の上にある。線分 $AB$ の上の点の直線 $BC$ からの距離は、$A$ からの長さに比例して $h_a$ から $0$ まで変わるので、$AS_a:AB=(h_a-s_a):h_a$ である(平行線と線分の比)。
$$
\frac{h_a-s_a}{h_a}=1-\frac{s_a}{h_a}=1-\frac{a}{a+h_a}=\frac{h_a}{a+h_a}=k_A
$$
である。$T_a$ についても同じである。$\square$
三角形 $ABC$ の Lucas の $A$ 円について、次が成り立つ。
(1) Lucas の $A$ 円は、$A$ を中心とする相似比 $k_A=\dfrac{h_a}{a+h_a}$ の相似拡大で外接円を移した円である。中心 $O_A$ は線分 $AO$ の上の $AO_A=k_AR$ の点、半径は $R_A=k_AR$ である。
(2) Lucas の $A$ 円は、外接円に点 $A$ で内接する。
(3) 半径は
$$
R_A=\frac{R}{1+\dfrac{2aR}{bc}}
$$
である。
Lucas の $B$ 円、$C$ 円についても、文字を入れかえて同じことが成り立つ。
方針:lem-luc-ratio から、$A$ を中心とする相似拡大が $B$、$C$ を $S_a$、$T_a$ に移す。3 点を通る円は 3 点で決まることを使う。
段 1((1) 円が移る)。$A$ を中心とする相似比 $k_A$ の相似拡大を $\varphi$ とする(相似変換と相似の中心)。$\varphi$ は $A$ を動かさず、lem-luc-ratio により $B$ を $S_a$ に、$C$ を $T_a$ に移す。相似拡大は円を円に移し、中心を中心に移し、半径を $k_A$ 倍する。外接円は $A$、$B$、$C$ を通るので、$\varphi$ で移した円は $A$、$S_a$、$T_a$ を通る円、つまり Lucas の $A$ 円である(3 点を通る円はただ 1 つ)。その中心は $O_A=\varphi(O)$ で、線分 $AO$ の上の $AO_A=k_A\cdot AO=k_AR$ の点、半径は $R_A=k_AR$ である。
段 2((2) 内接する)。$0< k_A<1$ なので、$O_A$ は線分 $AO$ の上にあり
$$
OO_A=AO-AO_A=R-k_AR=R-R_A
$$
である。中心の距離が半径の差に等しいので、2 円は内接する(2円の位置関係と共通接線)。$A$ は外接円の上にあり、$AO_A=R_A$ なので Lucas の $A$ 円の上にもある。よって接する点は $A$ である。
段 3((3) 半径の式)。$A$ から直線 $BC$ に下ろした垂線を考えると、直角三角形の辺と角の関係から $h_a=b\sin C$ である($\angle C$ が鈍角のときも、$\sin(180^\circ-C)=\sin C$ から同じ式になる)。正弦定理(高校数学) により $c=2R\sin C$、つまり $\sin C=\dfrac c{2R}$ なので
$$
h_a=\frac{bc}{2R}
$$
である。よって
$$
k_A=\frac{h_a}{a+h_a}=\frac1{1+\dfrac a{h_a}}=\frac1{1+\dfrac{2aR}{bc}},\qquad R_A=k_AR=\frac R{1+\dfrac{2aR}{bc}}
$$
である。$\square$
A を中心とする相似拡大で、外接円(灰色)が Lucas の A 円(赤)に移る。B、C、O はそれぞれ S、T、OA に移る
接する点 $A$ で共通の接線をもつことは、角からも確かめられる。外接円の $A$ での接線を $\ell$ とすると、接弦定理 により、$\ell$ と弦 $AB$ のなす角は $\angle ACB$ に等しい。一方 $S_aT_a\parallel BC$ なので $\angle AT_aS_a=\angle ACB$ で、$\ell$ と弦 $AS_a$(弦 $AB$ と同じ直線の上にある)のなす角は $\angle AT_aS_a$ に等しい。$\ell$ は円 $AS_aT_a$ についても接弦定理と同じ角の関係を満たすので、接弦定理の逆により、$\ell$ はこの円の $A$ での接線でもある。
(3) の式は、逆数をとると見通しがよくなる。
$$
\frac1{R_A}=\frac1R\left(1+\frac{2aR}{bc}\right)=\frac1R+\frac{2a}{bc}=\frac1R+\frac{2a^2}{abc}
$$
である。半径の逆数(曲率)で見ると、Lucas の円は外接円より $\dfrac{2a^2}{abc}$ だけ曲がり方が強い。向かいの辺 $a$ が長いほど円は小さくなる。
$B(0,0)$、$C(14,0)$、$A(5,12)$ では、外接円の中心は $O\left(7,\dfrac{33}8\right)$、半径は $R=\dfrac{65}8$ である。$abc=14\cdot15\cdot13=2730$、$\dfrac1R=\dfrac8{65}$ である。
(1) $A$ 円:$\dfrac1{R_A}=\dfrac8{65}+\dfrac{2\cdot196}{2730}=\dfrac8{65}+\dfrac{28}{195}=\dfrac{24+28}{195}=\dfrac{52}{195}=\dfrac4{15}$ で、$R_A=\dfrac{15}4=3.75$ である。相似比で見ると $k_A=\dfrac{12}{14+12}=\dfrac6{13}$、$R_A=\dfrac6{13}\cdot\dfrac{65}8=\dfrac{15}4$ で一致する。中心は
$$
O_A=A+k_A(O-A)=\left(5+\frac6{13}\cdot2,\ 12-\frac6{13}\cdot\frac{63}8\right)=\left(\frac{77}{13},\frac{435}{52}\right)
$$
である。
(2) $B$ 円:$R_B=\dfrac{455}{131}=3.4732\ldots$、(3) $C$ 円:$R_C=\dfrac{1365}{337}=4.0504\ldots$ である。
(2) $\dfrac1{R_B}=\dfrac8{65}+\dfrac{2\cdot225}{2730}=\dfrac8{65}+\dfrac{15}{91}=\dfrac{56+75}{455}=\dfrac{131}{455}$。相似比は $k_B=\dfrac{h_b}{b+h_b}=\dfrac{56/5}{15+56/5}=\dfrac{56}{131}$、中心 $O_B=B+k_B(O-B)=\left(\dfrac{392}{131},\dfrac{231}{131}\right)$。
(3) $\dfrac1{R_C}=\dfrac8{65}+\dfrac{2\cdot169}{2730}=\dfrac8{65}+\dfrac{13}{105}=\dfrac{168+169}{1365}=\dfrac{337}{1365}$。相似比は $k_C=\dfrac{h_c}{c+h_c}=\dfrac{168/13}{13+168/13}=\dfrac{168}{337}$、中心 $O_C=C+k_C(O-C)=\left(\dfrac{3542}{337},\dfrac{693}{337}\right)$。
三角形 $ABC$ の 3 つの Lucas の円は、2 つずつ外接する。つまり
$$
O_AO_B=R_A+R_B,\qquad O_BO_C=R_B+R_C,\qquad O_CO_A=R_C+R_A
$$
である。
方針:$O$ を原点とする位置ベクトルで中心 $O_A$、$O_B$ を表し、$O_AO_B^2$ と $(R_A+R_B)^2$ をそれぞれ計算して比べる。$O_CO_A$、$O_BO_C$ は頂点の名前を入れかえれば同じである。
段 1(中心の位置ベクトル)。$O$ を原点とし、$A$、$B$ の位置ベクトルを $\vec a$、$\vec b$ とする。$\lvert\vec a\rvert=\lvert\vec b\rvert=R$ である。thm-luc-tangent (1) により $O_A$ は $A$ から $O$ に向かって $k_A$ の割合だけ進んだ点なので
$$
\overrightarrow{OO_A}=\vec a+k_A(\vec 0-\vec a)=(1-k_A)\vec a
$$
である。$u=1-k_A$、$v=1-k_B$ とおくと、$\overrightarrow{OO_A}=u\vec a$、$\overrightarrow{OO_B}=v\vec b$ である。$k_A=\dfrac{h_a}{a+h_a}$ なので $u=\dfrac a{a+h_a}$、同じく $v=\dfrac b{b+h_b}$ である。
段 2(内積 $\vec a\cdot\vec b$)。$\lvert\vec a-\vec b\rvert=AB=c$ なので
$$
c^2=\lvert\vec a-\vec b\rvert^2=\lvert\vec a\rvert^2-2\vec a\cdot\vec b+\lvert\vec b\rvert^2=2R^2-2\vec a\cdot\vec b
$$
で、$\vec a\cdot\vec b=R^2-\dfrac{c^2}2$ である(ベクトルの内積(高校数学))。
段 3(中心の距離の 2 乗)。段 1・2 から
$$
O_AO_B^2=\lvert u\vec a-v\vec b\rvert^2=u^2R^2-2uv\left(R^2-\frac{c^2}2\right)+v^2R^2=R^2(u-v)^2+uvc^2
$$
である。
段 4(半径の和の 2 乗)。$R_A=k_AR=(1-u)R$、$R_B=(1-v)R$ なので
$$
(R_A+R_B)^2=R^2(2-u-v)^2
$$
である。段 3 との差をとり、2 乗の差を因数分解すると
$$
(R_A+R_B)^2-R^2(u-v)^2=R^2\bigl\{(2-u-v)-(u-v)\bigr\}\bigl\{(2-u-v)+(u-v)\bigr\}=R^2(2-2u)(2-2v)=4R^2k_Ak_B
$$
である。したがって、$O_AO_B^2=(R_A+R_B)^2$ は
$$
uvc^2=4R^2k_Ak_B
$$
と同じことである。
段 5(等式を確かめる)。$u=\dfrac a{a+h_a}$、$v=\dfrac b{b+h_b}$、$k_A=\dfrac{h_a}{a+h_a}$、$k_B=\dfrac{h_b}{b+h_b}$ を代入し、両辺に $(a+h_a)(b+h_b)$ を掛けると、段 4 の等式は
$$
abc^2=4R^2h_ah_b
$$
になる。prf-luc-tangent の段 3 により $h_a=\dfrac{bc}{2R}$、同じく $h_b=\dfrac{ca}{2R}$ なので
$$
4R^2h_ah_b=4R^2\cdot\frac{bc}{2R}\cdot\frac{ca}{2R}=abc^2
$$
で、等式は成り立つ。よって $O_AO_B^2=(R_A+R_B)^2$、長さは正なので $O_AO_B=R_A+R_B$ で、2 円は外接する(2円の位置関係と共通接線)。$\square$
段 4 の因数分解で $k_Ak_B$ が現れ、段 5 で正方形の縦と横が等しいことが効いている。正方形を別の形の長方形に替えると、段 5 の等式が崩れる(ex-luc-cx-rect)。
13, 14, 15 の三角形の 3 つの Lucas の円。2 つずつ外接し、どれも外接円に内接する
ex-luc-start の直角二等辺三角形、ex-luc-131415-radii の 13, 14, 15 の三角形、鈍角三角形 $B(0,0)$、$C(8,0)$、$A(-2,3)$($\angle B\fallingdotseq123.7^\circ$、ex-luc-obtuse)について、半径と中心の距離を並べる。
| 三角形 | $R_A$ | $R_B$ | $R_C$ | $O_AO_B$ | $O_BO_C$ | $O_CO_A$ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 直角二等辺(脚 4) | $0.9428$ | $1.4142$ | $1.4142$ | $2.3570$ | $2.8284$ | $2.3570$ |
| 13, 14, 15 | $3.7500$ | $3.4733$ | $4.0504$ | $7.2233$ | $7.5237$ | $7.8004$ |
| 鈍角 $B(0,0)$、$C(8,0)$、$A(-2,3)$ | $1.7110$ | $1.1321$ | $4.0695$ | $2.8432$ | $5.2016$ | $5.7806$ |
どの行でも、中心の距離は 2 つの半径の和に等しい(例えば 13, 14, 15 の行で $3.7500+3.4733=7.2233$)。
鈍角三角形では、辺 $BC$ の上と辺 $AB$ の上の正方形が三角形からはみ出すが(三角形に内接する正方形 の鈍角の場合)、thm-luc-tangent と thm-luc-mutual の証明は角の大きさを使っていないので、そのまま成り立つ。
$B(0,0)$、$C(8,0)$、$A(-2,3)$ では $a=8$、$b=\sqrt{109}$、$c=\sqrt{13}$、面積 $12$ で、外接円は中心 $O\left(4,\dfrac{29}6\right)$、半径 $R=\dfrac{\sqrt{1417}}6$ である。相似比は
$$
k_A=\frac{3}{8+3}=\frac3{11},\qquad k_B=\frac{h_b}{b+h_b}=\frac{24}{109+24}=\frac{24}{133},\qquad k_C=\frac{h_c}{c+h_c}=\frac{24}{13+24}=\frac{24}{37}
$$
である($h_b=\dfrac{24}{\sqrt{109}}$、$h_c=\dfrac{24}{\sqrt{13}}$ で、分母と分子に $\sqrt{109}$、$\sqrt{13}$ を掛けた)。例えば $A$ 円の中心は $O_A=A+\dfrac3{11}(O-A)=\left(-\dfrac4{11},\dfrac72\right)$、半径は $R_A=\dfrac3{11}R=\dfrac{\sqrt{1417}}{22}$ である。
辺 $BC$ の上の正方形の 1 辺は $\dfrac{24}{11}$ で、左下の頂点は $\left(-\dfrac{16}{11},0\right)$ にあり、辺 $BC$ からはみ出す。それでも $S_a$、$T_a$ は辺 $AB$、$CA$ の上にあり、lem-luc-ratio はそのまま成り立つ。
鈍角三角形の Lucas の円。破線の正方形のうち 2 つは三角形からはみ出すが、3 つの円は 2 つずつ外接し、外接円に内接する
thm-luc-tangent と thm-luc-mutual で、どこが効いているかを確かめるために、作り方を少し変えてみる。
| 変える条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 正方形(縦と横が等しい) | 縦が横の 2 倍の長方形で作った 3 つの円 | 3 つの円が 2 つずつ外接する |
| 円が頂点 $A$ を通る | 内接正方形の 4 頂点を通る円 | 外接円に接する |
ex-luc-start の直角二等辺三角形 $A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(0,4)$ で、正方形の代わりに「縦の長さが横の長さの $2$ 倍の長方形」を使う。辺 $BC$ に横の辺を置いた長方形の、辺 $AB$、$CA$ の上の頂点を $S'$、$T'$ とし、$A$、$S'$、$T'$ を通る円を作る。$B$、$C$ についても同じように作る。
横の長さを $w$ とすると、上の辺は $BC$ から距離 $2w$ のところにあり、切り口の長さ $\dfrac{a(h_a-2w)}{h_a}$ が $w$ に等しいので $w=\dfrac{ah_a}{h_a+2a}$ である。$A$ から見た比は $\dfrac{h_a-2w}{h_a}=\dfrac{h_a}{h_a+2a}$ になる。
(1) $A$ の円:$a=4\sqrt2$、$h_a=2\sqrt2$ で比は $\dfrac{2\sqrt2}{2\sqrt2+8\sqrt2}=\dfrac15$、中心 $\left(\dfrac25,\dfrac25\right)$、半径 $\dfrac{2\sqrt2}5$ である。
(2) $B$ の円:辺 $CA$ の長さ $4$、高さ $4$ で比は $\dfrac4{4+8}=\dfrac13$、中心 $B+\dfrac13(O-B)=\left(\dfrac{10}3,\dfrac23\right)$、半径 $\dfrac{2\sqrt2}3$ である。
2 つの中心の距離は
$$
\sqrt{\left(\frac{10}3-\frac25\right)^2+\left(\frac23-\frac25\right)^2}=\sqrt{\left(\frac{44}{15}\right)^2+\left(\frac4{15}\right)^2}=\frac{\sqrt{1952}}{15}=2.945\ldots
$$
で、半径の和 $\dfrac{2\sqrt2}5+\dfrac{2\sqrt2}3=\dfrac{16\sqrt2}{15}=1.508\ldots$ より大きい。2 円は離れていて、接しない。一方、どの円も $A$ などを中心とする相似拡大で外接円を移した円なので、外接円には接したままである(prf-luc-tangent の段 1・2 は、比が $0$ と $1$ の間なら同じように使える)。
一般に、縦が横の $r$ 倍の長方形を使うと、prf-luc-mutual の段 5 の等式は $r^2abc^2=4R^2h_ah_b=abc^2$ に変わり、$r=1$ のときしか成り立たない。3 つの円が接するのは、正方形を使ったときだけである。
比は $k_A=\dfrac{h_a}{h_a+ra}$、$u=1-k_A=\dfrac{ra}{h_a+ra}$、同じく $k_B=\dfrac{h_b}{h_b+rb}$、$v=\dfrac{rb}{h_b+rb}$ である。prf-luc-mutual の段 1〜4 は $k_A$、$k_B$ の値を使わないのでそのまま成り立ち、外接する条件は $uvc^2=4R^2k_Ak_B$ である。両辺に $(h_a+ra)(h_b+rb)$ を掛けると $r^2abc^2=4R^2h_ah_b$ になる。右辺は段 5 の計算で $abc^2$ なので、条件は $r^2=1$、つまり $r=1$ である。また $R_A-R_B=(v-u)R$ なので、段 3 から $O_AO_B^2-(R_A-R_B)^2=uvc^2>0$ で、2 円が内接することもない。
縦が横の 2 倍の長方形で作った 3 つの円は、外接円には接するが、互いには接しない
斜辺の上の内接正方形の 4 頂点を通る円(橙)は、外接円(灰色)に接しない。赤は Lucas の A 円
ex-luc-start の直角二等辺三角形で、斜辺 $BC$ の上の内接正方形の 4 頂点は $S\left(\dfrac43,0\right)$、$T\left(0,\dfrac43\right)$、$\left(\dfrac83,\dfrac43\right)$、$\left(\dfrac43,\dfrac83\right)$ である。この 4 点を通る円は、正方形の中心 $\left(\dfrac43,\dfrac43\right)$ を中心とする半径 $\dfrac43$ の円である。外接円の中心 $O(2,2)$ までの距離は
$$
\sqrt{\left(2-\frac43\right)^2+\left(2-\frac43\right)^2}=\frac{2\sqrt2}3=0.942\ldots
$$
で、半径の差 $2\sqrt2-\dfrac43=1.495\ldots$ より小さい。この円は外接円の内側にあって、外接円に接しない(2円の位置関係と共通接線)。頂点 $A$ を通らない円は、$A$ を中心とする相似拡大で外接円を移した円ではないので、thm-luc-tangent の議論は使えず、実際に接しない。
3 つの Lucas の円は 2 つずつ外接し、外接円はその 3 つすべてに内側から接している。互いに接する 4 つの円の半径の間には、Descartesの円定理 という関係がある。半径の逆数(曲率)を $\kappa_1,\kappa_2,\kappa_3,\kappa_4$ とし、ほかの 3 つを内側に含む円の曲率には負の符号を付けると
$$
(\kappa_1+\kappa_2+\kappa_3+\kappa_4)^2=2(\kappa_1^2+\kappa_2^2+\kappa_3^2+\kappa_4^2)
$$
が成り立つ。
thm-luc-tangent の後の式から、Lucas の円の曲率は $\kappa_A=\dfrac1R+ta^2$、$\kappa_B=\dfrac1R+tb^2$、$\kappa_C=\dfrac1R+tc^2$($t=\dfrac2{abc}$)で、外接円の曲率は $-\dfrac1R$ である。これらが Descartes の関係を満たすことは、Heron の公式 $16S^2=2(a^2b^2+b^2c^2+c^2a^2)-(a^4+b^4+c^4)$ と、面積と外接円の半径の関係 $S=\dfrac{abc}{4R}$ に帰着する。
$\kappa=\dfrac1R$、$p=a^2+b^2+c^2$、$q=a^4+b^4+c^4$ とおく。左辺は $\bigl(3\kappa+tp-\kappa\bigr)^2=(2\kappa+tp)^2=4\kappa^2+4\kappa tp+t^2p^2$ である。右辺は $2\bigl(3\kappa^2+2\kappa tp+t^2q+\kappa^2\bigr)=8\kappa^2+4\kappa tp+2t^2q$ である。差は $t^2(p^2-2q)-4\kappa^2$ で、$p^2-2q=2(a^2b^2+b^2c^2+c^2a^2)-(a^4+b^4+c^4)=16S^2$(Heron の公式)なので、差は $\dfrac{4}{a^2b^2c^2}\cdot16S^2-\dfrac4{R^2}$ である。$S=\dfrac{abc}{4R}$ を代入すると $\dfrac{64}{a^2b^2c^2}\cdot\dfrac{a^2b^2c^2}{16R^2}-\dfrac4{R^2}=0$ となる。
13, 14, 15 の三角形では $\kappa_A=\dfrac4{15}$、$\kappa_B=\dfrac{131}{455}$、$\kappa_C=\dfrac{337}{1365}$、外接円 $-\dfrac8{65}$ で、両辺が等しいことを数値でも確かめられる。
Descartes の円定理によると、互いに接する 3 つの円に接する円は 2 つあり、その曲率は $\kappa_1+\kappa_2+\kappa_3\pm2\sqrt{\kappa_1\kappa_2+\kappa_2\kappa_3+\kappa_3\kappa_1}$ である。3 つの Lucas の円では、負の符号の方が外接円(曲率 $-\dfrac1R$)にあたる。正の符号の方は、3 つの円のすき間にはまる小さな円で、Wei26 では Lucas の内接円(Lucas inner circle)とよばれている。13, 14, 15 の三角形では、この円の半径は約 $0.579$ である。与えられた 3 つの円に接する円を求める問題は、一般には Apolloniusの問題 とよばれる。
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