層化

同義語:sheafification

概要

層化(sheafification)とは、前層の局所的な情報を保ちながら、その情報を一意に貼り合わせられる層を作る操作である。位相空間上では、各点の茎の元を局所的に元の切断で代表できる族として構成する。層化は茎を変えず、貼れなかった局所データを加える一方、局所的に区別できない切断を同一視する。層への射に関する普遍性で特徴付けられる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 位相空間, 前層, 層, 茎

局所的なデータを貼れる形にする

開集合ごとにデータを割り当て、小さい開集合へ制限できるだけでは、重なるところで一致する局所データが全体のデータになるとは限らない。例えば、開集合 $U$ ごとに「$U$ 上で一つの値を取る定数関数」を集めると、離れた二つの開集合に異なる値を置いたとき、その和集合上では一つの定数関数に貼れない。こうした前層から、局所的な情報を保ったまま層を作る操作を層化(sheafification)という。
層化は、単に任意の点ごとの値を許す操作ではない。新しい切断は、各点の近くで元の前層の切断から生じなければならない。また、元の切断が全て区別されたまま残るとは限らない。各点の近くで区別できない切断は、層化後には同じ切断になる。この二つの働きが一つの構成に含まれる(StacksSheafify §6.17)。
本記事は位相空間上の集合値前層から始める。前層と層の公理自体はそれぞれの記事に譲り、ここでは層化を茎から構成し、その普遍性と具体例を証明する。アーベル群値の前層にどう拡張するかも後で扱う。

層化の定義と普遍性

$X$ を位相空間、$\mathcal P$ を $X$ 上の集合値前層とする。開集合 $U$ 上の切断は $\mathcal P(U)$ の元で、$V\subset U$ への制限を $s|_V$ と書く。層の条件は、開被覆 $U=\bigcup_iU_i$ に対し、各 $s_i\in\mathcal P(U_i)$ が全ての重なりで一致すれば、ただ一つの $s\in\mathcal P(U)$ がこれらを制限として持つ、というものである。前層ではこの存在や一意性が欠ける。

前層の層化

前層 $\mathcal P$ の層化とは、層 $\mathcal P^\#$ と前層の射 $\eta:\mathcal P\to\mathcal P^\#$ の組で、任意の層 $\mathcal G$ と前層の射 $\varphi:\mathcal P\to\mathcal G$ に対し、ただ一つの層の射 $\overline\varphi:\mathcal P^\#\to\mathcal G$ が存在して $\varphi=\overline\varphi\circ\eta$ となるものである。言い換えると、自然な全単射
$$ \operatorname{Hom}_{\mathrm{Sh}(X)}(\mathcal P^\#,\mathcal G) \cong \operatorname{Hom}_{\mathrm{PSh}(X)}(\mathcal P,\mathcal G) $$
が成り立つ。$\eta$ を層化の標準写像という。

この条件は「$\mathcal P$ から層へ出る射は、まず $\mathcal P^\#$ を通る」という意味である。全ての層の中から何となく大きいものを選ぶのではなく、$\mathcal P$ の局所情報を保つ普遍的な受け皿を指定している。普遍性により、層化が存在すれば同型を除いて一意である。二つの候補の各々の標準写像に普遍性を使うと相互の射ができ、その合成は一意性によって恒等射になるからである。
既に $\mathcal P$ が層なら $\eta$ は同型である。これは定義からも分かる。$\mathcal P$ 自身を層の標的として普遍性を使うと $\eta$ の逆射が得られ、その合成が恒等射であることは一意性から従う。層化は層に新しい切断を無条件で付け加える操作ではない。

茎の族による具体的な構成

点 $x\in X$ における茎 $\mathcal P_x$ は、$x$ を含む開集合上の切断の芽を集めた集合である。切断 $t\in\mathcal P(V)$ が作る芽を $t_x\in\mathcal P_x$ と書く。二つの切断の芽が $x$ で同じであるとは、共通のさらに小さい $x$ の近傍でそれらの制限が等しいことである。層化は茎の積の中で記述できる。

局所的に代表される芽の族

開集合 $U\subset X$ に対し、各 $x\in U$ に芽 $a_x\in\mathcal P_x$ を指定した族 $(a_x)_{x\in U}$ を考える。この族が局所的に代表されるとは、任意の $x\in U$ について、ある開近傍 $x\in V\subset U$ と切断 $t\in\mathcal P(V)$ があり、全ての $y\in V$ で $a_y=t_y$ となることである。$\mathcal P^\#(U)$ を局所的に代表される族全体とし、$W\subset U$ への制限は添字を $W$ に絞るものとする。

元の切断 $s\in\mathcal P(U)$ は、その芽の族 $(s_x)_{x\in U}$ を与える。これが標準写像 $\eta_U:\mathcal P(U)\to\mathcal P^\#(U)$ である。局所代表を $s$ 自身に取れるので、この族は確かに $\mathcal P^\#(U)$ に入る。$V\subset U$ の各点で $(s|_V)_x=s_x$ だから、$\eta$ は制限と両立する。
局所的に代表されるという条件を省いて $\prod_{x\in U}\mathcal P_x$ の全ての元を許すと、元の前層が持っていた連続性や正則性まで失う。連続関数の層なら、各点で任意の連続関数の芽を一つずつ選んだだけでは連続関数から生じるとは限らない。層化で加えるのは、元の切断を局所的に使って実現できる族だけである(StacksSheafify §6.17)。

芽の族は層をなす

上で定めた $U\mapsto\mathcal P^\#(U)$ は層である。

一致する族を点ごとに貼る

$U=\bigcup_iU_i$ とし、各 $U_i$ に局所的に代表される族 $a^{(i)}=(a_x^{(i)})$ があって、$U_i\cap U_j$ 上で族として一致するとする。$x\in U_i$ なら $a_x=a_x^{(i)}$ と置く。一致条件により $a_x$ は $i$ に依存せず、族 $a=(a_x)_{x\in U}$ は一意に定まる。各 $x$ はある $U_i$ に入り、$a^{(i)}$ は $x$ の近くで $\mathcal P$ の切断 $t$ によって代表される。同じ近傍で $a_y=a_y^{(i)}=t_y$ だから、貼った族 $a$ も局所的に代表される。従って $a\in\mathcal P^\#(U)$ であり、各 $U_i$ への制限は元の族である。$\square$

この証明で貼ったものは、まず芽の族である。元の前層の切断 $s_i$ を直に貼ったのではない。点ごとには代表できるが、代表する切断の選び方は近傍ごとに異なってよい。それらが同じ芽の族を与えることが、層化後の一つの切断を定める。

茎は変わらない

層化の標準写像 $\eta:\mathcal P\to\mathcal P^\#$ は各点 $x$ に茎の写像 $\eta_x:\mathcal P_x\to(\mathcal P^\#)_x$ を誘導する。開集合上の切断の数は変わっても、一点の十分近くで見える情報は同じである。

層化は茎を保つ

任意の $x\in X$ で $\eta_x:\mathcal P_x\to(\mathcal P^\#)_x$ は全単射である。

局所代表と芽の等号

全射性を示す。右辺の芽を、$x$ を含む開集合 $U$ 上の $\mathcal P^\#(U)$ の切断 $a$ で表す。$a$ は局所的に代表されるので、$x$ の近傍 $V\subset U$ と $t\in\mathcal P(V)$ があり、$a|_V=\eta_V(t)$ となる。従って $a$ の $x$ での芽は $t_x$ の像である。
単射性を示す。$s\in\mathcal P(U)$ と $t\in\mathcal P(V)$ の芽が $\eta_x$ によって同じになったとする。層化後の芽が同じという定義から、ある $x$ の近傍 $W\subset U\cap V$ で $\eta_W(s|_W)=\eta_W(t|_W)$ である。これらは芽の族なので、特に $x$ 成分が等しく、$s_x=t_x$ である。よって $\eta_x$ は単射でもある。$\square$

ここから「茎が同じなら開集合上の切断も同じ」とは結論できない。茎の情報を局所的に貼ってどの大域切断を認めるかが層化の役目である。また $\eta_x$ が全単射でも、各 $\eta_U$ が全単射とは限らない。次の例で全射性と単射性の両方の失敗を見る。

何が増え、何が同一視されるか

定数前層から局所定数関数へ

集合 $A$ を固定し、空でない開集合 $U$ に $\mathcal P(U)=A$、空集合には一点集合を割り当てる。空でない開集合の間の制限は恒等写像とする。$\mathcal P$ の切断は、定義域がどれほど離れた部分に分かれていても、一つの値 $a\in A$ しか持てない。一方、各点の茎は $A$ であり、局所的に代表される芽の族は $A$ への局所定数関数に他ならない。従って $\mathcal P^\#(U)$ は $U\to A$ の局所定数関数全体である。これは 定数層 の構成である(StacksSheafify Example 6.17.4)。
例えば $A=\{0,1\}$、$U=(-2,-1)\cup(1,2)\subset\mathbb R$ とする。左の区間で $0$、右の区間で $1$ とする関数は $\mathcal P^\#(U)$ の切断だが $\mathcal P(U)$ の元からは来ない。ここで $\eta_U$ は全射ではない。$U$ が連結なら局所定数関数は一定だから、この例の $\eta_U$ は全単射となる。一般の非連結空間で「各連結成分ごとに自由に値を選べる」と言うには注意がいる。成分が開でない場合、成分ごとの任意の値の割り当ては局所定数とは限らない。

上の例では局所的に存在する値の組み合わせが新たな切断になった。次の例では、各点の近くでは問題ないが、開集合全体では課し過ぎだった条件が層化で外れる。

有界連続関数の前層

$X=\mathbb R$ とし、$\mathcal B(U)$ を $U$ 上の有界な連続実数値関数全体とする。これは制限で閉じた前層だが層ではない。例えば $U=\mathbb R$ を $U_n=(-n,n)$($n\ge1$)で覆い、各 $U_n$ に $f_n(x)=x$ を置く。$f_n$ は各 $U_n$ で有界かつ連続で、重なりで一致する。しかし全てを貼った $f(x)=x$ は $\mathbb R$ 上で有界でないので $\mathcal B(\mathbb R)$ に属さない。
各連続関数は一点の近くで有界である。実際、$f$ が $x$ で連続なら、十分小さい近傍で $|f(y)-f(x)|<1$ となる。このため各点の連続関数の芽は $\mathcal B$ の芽で代表でき、逆向きは明らかである。局所的に代表される芽の族はちょうど連続関数の芽の族だから、$\mathcal B^\#$ は連続関数の層 $\mathcal C_X$ に同型である。層化後には $x\mapsto x$ のような大域的に非有界な連続関数も切断になる。

層化は元の切断を増やすだけではない。前層の切断が局所的に同じなら、層化後には区別されない。少し人工的だが、その現象だけを取り出した例を見よう。

標準写像が単射でない前層

$X=\{0,1\}$ に離散位相を入れる。$\mathcal Q(X)=\{a,b\}$ とし、各真の開集合 $V\subsetneq X$ には $\mathcal Q(V)=\{*\}$ を割り当てる。真の開集合への制限は唯一の写像とし、同じ開集合への制限は恒等写像とする。これは前層であるが、$a$ と $b$ は $\{0\}$ 上でも $\{1\}$ 上でも同じ $*$ に制限される。従ってどちらの点でも芽が等しく、$\eta_X(a)=\eta_X(b)$ となる。実際 $\mathcal Q^\#$ は各開集合に一点だけを与える層である。この前層には、局所的には判別できない余分な大域データがあった。

三つの例を並べると、層化の標準写像の挙動が分かる。定数前層では貼れなかった局所データが加わる。有界連続関数の前層では「全域で有界」という局所性を持たない制約が消える。最後の前層では局所的に同じ二つの切断が同一視される。どの場合も、点の茎は標準写像によって変わらない。

なぜ普遍性を満たすか

芽の族から作った $\mathcal P^\#$ は層であり、標準写像 $\eta$ がある。これが最初に述べた普遍性を満たすことを確かめる。重要なのは、層 $\mathcal G$ では「各点の近くで等しい」二つの切断は等しく、重なりで等しい局所切断は貼れる、という二段階である。

芽による層化は普遍的である

任意の層 $\mathcal G$ と前層の射 $\varphi:\mathcal P\to\mathcal G$ に対し、$\varphi=\overline\varphi\circ\eta$ を満たす層の射 $\overline\varphi:\mathcal P^\#\to\mathcal G$ が一意に存在する。

局所代表の像を貼る

$a\in\mathcal P^\#(U)$ を取る。局所代表の定義により、$U$ を開集合 $U_i$ で覆い、各 $U_i$ で $a|_{U_i}=\eta_{U_i}(t_i)$ となる $t_i\in\mathcal P(U_i)$ を選べる。$\varphi(t_i)\in\mathcal G(U_i)$ を貼りたい。重なり $U_i\cap U_j$ の各点 $x$ では $(t_i)_x=(t_j)_x$ である。従って $x$ の十分小さい近傍で $t_i$ と $t_j$ は等しく、その像 $\varphi(t_i)$ と $\varphi(t_j)$ もそこで等しい。$\mathcal G$ の局所性により両者は重なり全体で等しく、貼り合わせ公理により一つの $g\in\mathcal G(U)$ を定める。これを $\overline\varphi_U(a)$ とする。
別の局所代表を選んでも、同じ議論で得られる切断は各点の近くで一致するので、$\mathcal G$ の局所性により同じ $g$ となる。構成は制限と両立し、$a=\eta_U(s)$ の場合は $\overline\varphi_U(a)=\varphi_U(s)$ である。従って求める層の射が存在する。一意性は、任意の $a$ が各 $U_i$ 上で $\eta(t_i)$ の形になることから従う。条件を満たす二つの射は各 $U_i$ で同じ値を持ち、$\mathcal G$ の局所性により $U$ 上でも一致する。$\square$

普遍性を使うと、前層の射 $f:\mathcal P\to\mathcal R$ から層の射 $f^\#:\mathcal P^\#\to\mathcal R^\#$ が自然に得られる。$f$ の各点の芽への作用を局所代表に適用しても同じ射になる。この意味で層化は前層の圏から層の圏への関手であり、層を前層とみなす包含関手の左随伴である(StacksSheafify Lemma 6.17.3)。

代数的な前層と完全性

前層の値がアーベル群なら、各茎にも和と逆元が入る。局所的に代表される芽の族を点ごとに加えると、二つの局所代表の共通の近傍でその和が代表になる。従って $\mathcal P^\#(U)$ は茎の積の部分群となり、制限写像も準同型である。こうしてアーベル群の前層の層化はアーベル群の層になる。環や加群についても、適切な演算を局所代表に施すことで対応する構造を保てる(StacksAb §6.18、StacksAlgebraic §6.19)。
アーベル群の前層の短完全列を層化すると、アーベル群の層の短完全列になる。理由を点ごとに見る。各点の茎は近傍上のアーベル群の有向極限であり、有向極限は完全列を保つ。層化後の茎は元の茎と同じなので、層化後の列は各点の茎で完全である。層の射の核・像の一致は茎で判定できるから、層としても完全となる。これは、開集合 $U$ ごとの切断を取った列が必ず短完全になるという意味ではない。層の射が全射であるとは、標的の切断が局所的に原像を持つことであり、全ての $U$ で大域的な原像を持つことではない(StacksExact §6.16、StacksSiteAb §18.3)。
例えば複体からコホモロジー層を作るとき、開集合ごとにコホモロジーを取った前層をそのまま層とみなしてはいけない。この前層を層化して得たものがコホモロジー層である。点の茎では同じコホモロジー情報を持つが、任意の開集合で「コホモロジー層の切断」と「切断の複体のコホモロジー」が同じとは限らない。層化は局所的に成立する代数的関係を、層の言葉で正しく扱うために現れる。

標準写像の単射性の判定

前層 $\mathcal P$ について、全ての開集合 $U$ で $\eta_U:\mathcal P(U)\to\mathcal P^\#(U)$ が単射であることと、$\mathcal P$ が局所性を満たすことは同値である。ここで局所性とは、同じ $U$ 上の二つの切断が開被覆の各部分で等しければ、元から等しいという性質である。この性質を持つ前層を分離的という。

同じ芽を持つ切断を比べる

$\mathcal P$ が分離的で、$\eta_U(s)=\eta_U(t)$ とする。全ての $x\in U$ で $s_x=t_x$ だから、各 $x$ の近傍 $V_x$ で $s|_{V_x}=t|_{V_x}$ となる。$V_x$ は $U$ を覆うので、分離性から $s=t$。逆に全ての $\eta_U$ が単射で、$s,t\in\mathcal P(U)$ が開被覆上で一致するとする。各点で芽が等しいから $\eta_U(s)=\eta_U(t)$ となり、単射性から $s=t$ である。$\square$

定数前層と有界連続関数の前層は分離的なので、そこでは層化は既存の切断を潰さず、足りない貼り合わせを補う。二点空間の前層 $\mathcal Q$ は分離的でないため、層化で $a$ と $b$ が同一視された。この判定は層化の標準写像を単なる「包含」と呼んでよい場合を教える(StacksSheafify Lemma 6.17.5)。

用語を使うときの確認点

層化の式 $\mathcal P^\#(U)$ を読むときには、まずどの前層を層化したかを確認する。同じ茎を持つ前層でも、元の切断の集合と制限写像は異なり得る。次に、欲しい対象が一点の芽なのか、開集合上の切断なのか、全空間上の大域切断なのかを分ける。芽の一致は層化で保証されるが、大域切断の一致を意味しない。最後に、標準写像 $\eta_U$ が単射・全射であるとは自動的に言えない。元の前層が局所性を満たす場合には単射で、貼り合わせまで満たす層なら全単射となる。
ここで使った茎の族による構成は、位相空間上の通常の層に対するものである。代数幾何のエタール景など一般のサイトでも層化は定義でき、同じ普遍性を持つ。ただし、その場の被覆は普通の開集合の被覆とは限らず、位相空間の各点の茎をそのまま並べる上の構成を無条件で使うわけではない。一般のサイトでは被覆に関する整合族を用いた構成を使う(StacksSites §7.10)。どの被覆で「局所的」と呼ぶかが変われば、層化で許される切断も変わる。

条件を外したときの反例

層化の構成・普遍性・標準写像の性質について、条件を外すと崩れる例を表にする。

外す条件反例成り立たなくなること
前層が分離的二点離散空間の前層 $\mathcal Q$標準写像 $\eta_U$ が単射
前層が貼り合わせ公理を満たす$\mathbb R$ 上の定数前層(値 $\{0,1\}$)と $U=(-2,-1)\cup(1,2)$標準写像 $\eta_U$ が全射
芽の族が局所的に代表される$\mathbb R$ 上で、値 $\{0,1\}$ の任意の関数の層 $U\mapsto\{0,1\}^U$作った層の茎が元の前層の茎と同じ
普遍性の標的 $\mathcal G$ が層定数前層 $\mathcal P$ と恒等射 $\mathcal P\to\mathcal P$前層の射が $\mathcal P^\#$ を通って分解する
茎での全射(切断ごとではない)$\mathbb C\setminus\{0\}$ 上の $\exp:\mathcal O\to\mathcal O^\times$層の全射は大域切断の全射を与える

最初の二行は本文の例で確かめた。残る三行を確かめる。

表の反例の確かめ

局所的に代表されない族。 定数前層 $\mathcal P$(値 $A=\{0,1\}$)の茎は各点で $A$ である。各点に $A$ の元を勝手に選んだ族全体 $U\mapsto A^U$ は、点ごとの値の貼り合わせとして層になる。しかしその $0$ での茎は「$0$ の近くで一致する関数を同一視した」任意の関数 $U\to A$ の芽の集合で、例えば $x\mapsto$($x$ が有理数なら $1$、そうでなければ $0$)と定数関数 $0$ はどの近傍でも一致しない。従って茎は二元より多く、$\mathcal P_0=A$ と一致しない。局所的に代表される族(局所定数関数)に限ると、茎は $A$ に戻る。
標的が層でない場合。 $U=U_1\sqcup U_2$($U_1=(-2,-1)$、$U_2=(1,2)$)とし、層の射でなく前層の射 $\psi:\mathcal P^\#\to\mathcal P$ で $\psi\circ\eta=\operatorname{id}$ となるものがあったとする。$U_1$ で $0$、$U_2$ で $1$ の局所定数関数 $f\in\mathcal P^\#(U)$ に対し、$c=\psi_U(f)\in A$ とおく。制限と両立するので $c=c|_{U_1}=\psi_{U_1}(f|_{U_1})=\psi_{U_1}(\eta(0))=0$ で、同様に $U_2$ に制限して $c=1$ となり矛盾する。従って恒等射 $\mathcal P\to\mathcal P$ は $\mathcal P^\#$ を通らない。定義で標的を層に限った理由がここにある。
茎での全射。 $X=\mathbb C\setminus\{0\}$ 上で正則関数の加法群の層 $\mathcal O$ から、零にならない正則関数の乗法群の層 $\mathcal O^\times$ へ、$g\mapsto e^g$ を考える。各点の近くの円板では対数の枝が取れるので、茎では全射である。しかし大域切断 $z\in\mathcal O^\times(X)$ は $e^g$ の形でない。$e^{g(z)}=z$ なら微分して $g'(z)e^{g(z)}=1$、すなわち $g'(z)=1/z$ である。単位円 $\lvert z\rvert=1$ に沿って積分すると、左辺は導関数の閉曲線上の積分で $0$、右辺は $2\pi i$ となり矛盾する。層化後の列が完全でも、開集合ごとの切断の列は完全とは限らない。

関連項目

参考文献

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