Eulerの直方体

同義語:オイラーの直方体Euler brick

概要

Eulerの直方体(Euler brick)とは、3 辺の長さ $a,b,c$ と 3 つの面の対角線 $\sqrt{a^2+b^2}$、$\sqrt{a^2+c^2}$、$\sqrt{b^2+c^2}$ がすべて整数である直方体である。正の整数 $u,v,w$ が $u^2+v^2=w^2$ を満たすとき、$a=u\lvert4v^2-w^2\rvert$、$b=v\lvert4u^2-w^2\rvert$、$c=4uvw$ は Euler の直方体の 3 辺になり、$(3,4,5)$ から $(117,44,240)$ が得られる。また、Euler の直方体では 3 辺のうち少なくとも 2 辺が $3$ の倍数、少なくとも 2 辺が $4$ の倍数である。面の対角線に加えて空間の対角線まで整数になる直方体(完全直方体)は見つかっていない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ピタゴラス数と円の有理点, 空間図形の計量, 合同式の計算規則, Heron三角形

高校での出発点:直方体の対角線

縦・横・高さが $a,b,c$ の直方体には、3 種類の面の対角線と、空間の対角線がある。三平方の定理から、面の対角線の長さは
$$ \sqrt{a^2+b^2},\qquad \sqrt{a^2+c^2},\qquad \sqrt{b^2+c^2} $$
で、空間の対角線の長さは $\sqrt{a^2+b^2+c^2}$ である(空間図形の計量)。3 辺が整数でも、対角線はふつう整数にならない。

3 辺が $3,4,12$ の直方体

面の対角線の 2 乗は
$$ 3^2+4^2=25=5^2,\qquad 3^2+12^2=153,\qquad 4^2+12^2=160 $$
で、整数になるのは $5$ だけである。$153=9\cdot17$、$160=16\cdot10$ は平方数でない。空間の対角線の 2 乗は $9+16+144=169=13^2$ で、空間の対角線は $13$ になる。

ex-ebr-start では、面の対角線 3 本のうち 2 本が整数でなかった。3 本とも整数にできるだろうか。

3 辺が $44,117,240$ の直方体

面の対角線の 2 乗を計算すると
$$ 44^2+117^2=1936+13689=15625=125^2, $$
$$ 44^2+240^2=1936+57600=59536=244^2, $$
$$ 117^2+240^2=13689+57600=71289=267^2 $$
で、面の対角線は $125$、$244$、$267$ と 3 本とも整数である。一方、空間の対角線の 2 乗は $1936+13689+57600=73225$ で、$270^2=72900<73225<73441=271^2$ なので平方数でない。空間の対角線は整数でない。

縦 44・横 117・高さ 240 の直方体では、3 種類の面の対角線 125、244、267 が整数になるが、空間の対角線(破線)は整数にならない 縦 44・横 117・高さ 240 の直方体では、3 種類の面の対角線 125、244、267 が整数になるが、空間の対角線(破線)は整数にならない
図 1 は ex-ebr-start2 の直方体である。この記事では、3 辺と面の対角線 3 本がすべて整数の直方体について、次の問いに答える。

  1. このような直方体はどうやって作れるか。→ thm-ebr-saunderson
  2. 3 辺にはどんな性質があるか。→ thm-ebr-div
  3. 空間の対角線まで整数にできるか。→ rem-ebr-perfect
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    面の対角線を三平方の定理で求める3 組のピタゴラス数3 つの 2 次式を同時に平方数にする
    ピタゴラス数 $(u,v,w)$ から式を作る媒介変数による構成曲面の有理点の族
    $3$ や $16$ で割った余り辺の約数の性質合同式による障害

言葉の準備:Euler の直方体

Euler の直方体

正の整数 $a,b,c$ で、
$$ a^2+b^2,\qquad a^2+c^2,\qquad b^2+c^2 $$
がすべて平方数であるものの組を、3 辺とする直方体を Euler の直方体 という。3 辺が $a,b,c$ の Euler の直方体を、単に「Euler の直方体 $(a,b,c)$」ともいう。

定義は、3 つの組 $(a,b)$、$(a,c)$、$(b,c)$ がどれもピタゴラス数の直角をはさむ 2 辺になる、ということと同じである。

Euler の直方体の例と、そうでない例
  1. ex-ebr-start2 の $(44,117,240)$ は Euler の直方体である。
  2. $(44,117,240)$ を $2$ 倍した $(88,234,480)$ も Euler の直方体で、面の対角線は $250,488,534$ である。一般に、Euler の直方体の 3 辺を同じ正の整数 $k$ 倍すると、面の対角線も $k$ 倍になり、また Euler の直方体である。
  3. $(3,4,12)$ は Euler の直方体でない(ex-ebr-start)。

3 辺の最大公約数が $1$ の Euler の直方体を 原始的 という。どの Euler の直方体も、3 辺を最大公約数で割ると原始的な Euler の直方体になる($a^2+b^2=d^2$ なら、最大公約数 $k$ で割って $\left(\dfrac ak\right)^2+\left(\dfrac bk\right)^2=\left(\dfrac dk\right)^2$ となる。左辺は整数なので、$\dfrac dk$ は 2 乗が整数の有理数であり、整数である)。

主定理 1:ピタゴラス数から作る

面の対角線を 3 本とも整数にするには、ピタゴラス数を 3 組同時にそろえる必要がある。1 組のピタゴラス数 $(u,v,w)$ から、3 組がそろう辺を作る公式がある。

ピタゴラス数から Euler の直方体を作る

正の整数 $u,v,w$ が $u^2+v^2=w^2$ を満たすとき、
$$ a=u\,\lvert4v^2-w^2\rvert,\qquad b=v\,\lvert4u^2-w^2\rvert,\qquad c=4uvw $$
とおくと、$a,b,c$ は正の整数で、$(a,b,c)$ は Euler の直方体である。面の対角線は
$$ \sqrt{a^2+b^2}=w^3,\qquad \sqrt{a^2+c^2}=u(4v^2+w^2),\qquad \sqrt{b^2+c^2}=v(4u^2+w^2) $$
である。

方針:3 つの和をそれぞれ展開し、平方の形にまとめる。2 つは「$(X-Y)^2+4XY=(X+Y)^2$」の形、残りの 1 つは $u^2+v^2=w^2$ を 2 回使う。
段 1($a,b$ が正)。$4v^2-w^2=0$ だとすると $w=2v$ で、$u^2=w^2-v^2=3v^2$ となる。すると $\left(\dfrac uv\right)^2=3$ で、$\sqrt3$ が有理数になってしまう。$\sqrt3$ は無理数なので、$4v^2\ne w^2$ である。同じく $4u^2\ne w^2$ である。よって $a>0$、$b>0$ であり、$c=4uvw>0$ である。
段 2($a^2+c^2$)。$X=4v^2$、$Y=w^2$ とおくと、
$$ a^2+c^2=u^2(4v^2-w^2)^2+16u^2v^2w^2=u^2\bigl((X-Y)^2+4XY\bigr)=u^2(X+Y)^2=\bigl(u(4v^2+w^2)\bigr)^2 $$
である。ここで $(X-Y)^2+4XY=X^2-2XY+Y^2+4XY=X^2+2XY+Y^2=(X+Y)^2$ を使った。
段 3($b^2+c^2$)。段 2 の $u$ と $v$ を入れかえると、$b^2+c^2=\bigl(v(4u^2+w^2)\bigr)^2$ である。
段 4($a^2+b^2$)。それぞれ展開すると
$$ u^2(4v^2-w^2)^2=16u^2v^4-8u^2v^2w^2+u^2w^4,\qquad v^2(4u^2-w^2)^2=16u^4v^2-8u^2v^2w^2+v^2w^4 $$
で、足すと
$$ a^2+b^2=\underbrace{16u^2v^2(u^2+v^2)}_{=16u^2v^2w^2}-16u^2v^2w^2+\underbrace{(u^2+v^2)w^4}_{=w^6}=w^6=(w^3)^2 $$
である。$u^2+v^2=w^2$ を 2 か所で使った。$\square$

$(3,4,5)$ から作る

$u=3$、$v=4$、$w=5$ とすると、$4v^2-w^2=64-25=39$、$4u^2-w^2=36-25=11$ なので
$$ a=3\cdot39=117,\qquad b=4\cdot11=44,\qquad c=4\cdot3\cdot4\cdot5=240 $$
で、ex-ebr-start2 の直方体 $(117,44,240)$ が得られる。面の対角線は
$$ w^3=125,\qquad u(4v^2+w^2)=3\cdot89=267,\qquad v(4u^2+w^2)=4\cdot61=244 $$
で、ex-ebr-start2 の計算と一致する。$u$ と $v$ を入れかえて $(4,3,5)$ から作ると、$a$ と $b$ が入れかわるだけである。

$(5,12,13)$ から作る

$u=5$、$v=12$、$w=13$ とすると、$4v^2-w^2=576-169=407$、$4u^2-w^2=100-169=-69$ なので、絶対値をとって
$$ a=5\cdot407=2035,\qquad b=12\cdot69=828,\qquad c=4\cdot5\cdot12\cdot13=3120 $$
である。面の対角線は $w^3=2197$、$u(4v^2+w^2)=5\cdot745=3725$、$v(4u^2+w^2)=12\cdot269=3228$ である。

平方数になることを数で確かめる計算を開く

$2035^2+828^2=4141225+685584=4826809=2197^2$、$2035^2+3120^2=4141225+9734400=13875625=3725^2$、$828^2+3120^2=685584+9734400=10419984=3228^2$ である。

thm-ebr-saunderson の公式は、Dic05b の p. 497 に N. Saunderson の 1740 年の代数の本の解法として記録されていて、$3,4,5$ から $117,44,240$ を得る例も書かれている。同じ頁の最初には、P. Halcke が 1719 年の本で与えた解として $44,240,117$ が挙がっている。

主定理 2:$3$ の倍数の辺と $4$ の倍数の辺

ex-ebr-start2 の $(44,117,240)$ では、$3$ の倍数の辺が $117$ と $240$、$4$ の倍数の辺が $44$ と $240$ で、どちらも 2 本ずつある。これが一般に成り立つことを示す。道具は、1 組のピタゴラス数についての次の補題である。

ピタゴラス数の直角をはさむ辺

正の整数 $x,y,z$ が $x^2+y^2=z^2$ を満たすならば、
(R1) $x,y$ の少なくとも一方は $3$ の倍数である。
(R2) $x,y$ の少なくとも一方は $4$ の倍数である。

(i) 整数の 2 乗を $3$ で割った余りは、$(3m)^2=9m^2$、$(3m\pm1)^2=3(3m^2\pm2m)+1$ より、$0$ か $1$ である。$x,y$ がどちらも $3$ の倍数でないとすると、$x^2\equiv1$、$y^2\equiv1\pmod3$ なので $z^2=x^2+y^2\equiv2\pmod3$ となり、$z^2$ の余りが $0$ か $1$ であることに反する。
(ii) 整数の 2 乗を $16$ で割った余りを調べる。

  • $k$ が奇数のとき:$k=2m+1$ とすると $k^2=4m(m+1)+1$ で、$m(m+1)$ は連続する 2 整数の積なので偶数である。よって $k^2\equiv1\pmod8$ で、$16$ で割った余りは $1$ か $9$ である。
  • $k$ が「$4$ で割って $2$ 余る数」のとき:$k=2j$($j$ は奇数)とすると $k^2=4j^2$ で、$j^2=8i+1$ と書けるので $k^2=32i+4\equiv4\pmod{16}$ である。
  • $k$ が $4$ の倍数のとき:$k=4j$ とすると $k^2=16j^2\equiv0\pmod{16}$ である。
    よって整数の 2 乗を $16$ で割った余りは $0,1,4,9$ のどれかである。
    $x,y$ がどちらも $4$ の倍数でないとする。すると $x,y$ はそれぞれ「奇数」か「$4$ で割って $2$ 余る数」で、2 乗の余りは奇数なら $1$ か $9$、そうでなければ $4$ である。和 $x^2+y^2$ の余りは次の表のとおりである。
    $x,y$ の種類$x^2,y^2$ の余り$x^2+y^2$ の余り
    奇数と奇数$1$ か $9$ と $1$ か $9$$2$ か $10$
    奇数と「$4$ で割って $2$ 余る数」$1$ か $9$ と $4$$5$ か $13$
    「$4$ で割って $2$ 余る数」どうし$4$ と $4$$8$
    どの場合も余りは $0,1,4,9$ のどれでもないので、$x^2+y^2$ は平方数 $z^2$ になりえない。これは矛盾なので、$x,y$ の少なくとも一方は $4$ の倍数である。$\square$
補題を小さいピタゴラス数で確かめる
  1. $(3,4,5)$:$3$ の倍数は $3$、$4$ の倍数は $4$ で、別の辺である。
  2. $(5,12,13)$:$12$ が $3$ の倍数でも $4$ の倍数でもある。1 つの辺が両方を担ってもよい。
  3. $(6,8,10)$:$3$ の倍数は $6$、$4$ の倍数は $8$ である。原始的でないピタゴラス数でも補題は成り立つ。

原始的なピタゴラス数の偶奇(一方の辺だけが偶数)は ピタゴラス数と円の有理点 の補題「原始的なピタゴラス数の偶奇」にある。lem-ebr-legs はそれより細かく、$4$ の倍数まで言っている。

Euler の直方体の辺の約数

Euler の直方体 $(a,b,c)$ では、次が成り立つ。
(R1) 3 辺 $a,b,c$ のうち、少なくとも 2 辺は $3$ の倍数である。
(R2) 3 辺 $a,b,c$ のうち、少なくとも 2 辺は $4$ の倍数である。

(i) $3$ の倍数の辺が 1 本以下だったとする。すると、$3$ の倍数でない辺が 2 本以上あるので、そのうち 2 本を選ぶ。定義から、選んだ 2 本を 2 辺とする面の対角線は整数で、この 2 本は 1 組のピタゴラス数の直角をはさむ 2 辺になる。lem-ebr-legs の (i) により、その一方は $3$ の倍数である。これは 2 本とも $3$ の倍数でないことに反する。よって $3$ の倍数の辺は 2 本以上ある。
(ii) (i) の「$3$ の倍数」を「$4$ の倍数」に替え、lem-ebr-legs の (ii) を使えば、同じ議論で示せる。$\square$

証明のかなめは、Euler の直方体では「どの 2 辺を選んでも」面の対角線が整数になることである。面の対角線が 2 本だけ整数の直方体では、thm-ebr-div は成り立たないことがある(ex-ebr-cx-two)。

主定理 2 を例で確かめる
  1. $(44,117,240)$:$3$ の倍数は $117=3\cdot39$ と $240=3\cdot80$、$4$ の倍数は $44=4\cdot11$ と $240=4\cdot60$ である。
  2. $(85,132,720)$:$3$ の倍数は $132$ と $720$、$4$ の倍数も $132$ と $720$ である。$85$ は $3$ でも $4$ でも割り切れない。
  3. thm-ebr-saunderson で作った直方体では、$c=4uvw$ はいつも $4$ の倍数である。$(2035,828,3120)$ では $3$ の倍数は $828$ と $3120$、$4$ の倍数も $828$ と $3120$ である。

thm-ebr-div から、Euler の直方体の 3 辺の積 $abc$ は $3^2\cdot4^2=144$ の倍数である($3$ の倍数が 2 本で $3^2$、$4$ の倍数が 2 本で $4^2$ が積を割る)。$(44,117,240)$ では $abc=1235520=144\cdot8580$ である。

小さい Euler の直方体の表

3 辺がすべて $1500$ 未満の Euler の直方体は $17$ 個あり、そのうち原始的なものは $6$ 個である($a< b< c<1500$ のすべての組について、3 つの和が平方数かを計算機で調べた)。原始的な 6 個を表にする。

3 辺面の対角線空間の対角線の 2 乗$3$ の倍数の辺$4$ の倍数の辺
$44,117,240$$125,244,267$$73225$$117,240$$44,240$
$240,252,275$$348,365,373$$196729$$240,252$$240,252$
$140,480,693$$500,707,843$$730249$$480,693$$140,480$
$85,132,720$$157,725,732$$543049$$132,720$$132,720$
$160,231,792$$281,808,825$$706225$$231,792$$160,792$
$1008,1100,1155$$1492,1533,1595$$3560089$$1008,1155$$1008,1100$
3 辺が 1500 未満の 17 個をすべて開く
3 辺最大公約数面の対角線空間の対角線の 2 乗3 の倍数の辺4 の倍数の辺
$44,117,240$$1$$125,244,267$$73225$$117,240$$44,240$
$240,252,275$$1$$348,365,373$$196729$$240,252$$240,252$
$88,234,480$$2$$250,488,534$$292900$$234,480$$88,480$
$480,504,550$$2$$696,730,746$$786916$$480,504$$480,504$
$140,480,693$$1$$500,707,843$$730249$$480,693$$140,480$
$85,132,720$$1$$157,725,732$$543049$$132,720$$132,720$
$132,351,720$$3$$375,732,801$$659025$$132,351,720$$132,720$
$160,231,792$$1$$281,808,825$$706225$$231,792$$160,792$
$720,756,825$$3$$1044,1095,1119$$1770561$$720,756,825$$720,756$
$176,468,960$$4$$500,976,1068$$1171600$$468,960$$176,468,960$
$960,1008,1100$$4$$1392,1460,1492$$3147664$$960,1008$$960,1008,1100$
$1008,1100,1155$$1$$1492,1533,1595$$3560089$$1008,1155$$1008,1100$
$220,585,1200$$5$$625,1220,1335$$1830625$$585,1200$$220,1200$
$1200,1260,1375$$5$$1740,1825,1865$$4918225$$1200,1260$$1200,1260$
$280,960,1386$$2$$1000,1414,1686$$2920996$$960,1386$$280,960$
$170,264,1440$$2$$314,1450,1464$$2172196$$264,1440$$264,1440$
$264,702,1440$$6$$750,1464,1602$$2636100$$264,702,1440$$264,1440$

どの行でも、空間の対角線の 2 乗は平方数でない。たとえば $196729$ は $443^2=196249$ と $444^2=197136$ の間にある。

例と反例

外す条件反例成り立たなくなること
3 本目の面の対角線も整数3 辺 $5,9,12$$4$ の倍数の辺が 2 本以上
$u^2+v^2=w^2$$(u,v,w)=(1,1,1)$ から $3,3,4$面の対角線が 3 本とも整数
三角形が直角三角形(直方体の面の三角形)3 本の面の対角線でできる三角形 $PQR$(直方体 $(44,117,240)$)3 辺が整数なら面積も有理数
反例:面の対角線が 2 本だけ整数の直方体

共通の辺 $12$ をもつピタゴラス数 $(5,12,13)$ と $(9,12,15)$ を使い、3 辺を $5,9,12$ とする。
$$ 5^2+12^2=169=13^2,\qquad 9^2+12^2=225=15^2,\qquad 5^2+9^2=106 $$
で、$106$ は $10^2=100$ と $11^2=121$ の間にあるので平方数でない。面の対角線は 2 本だけ整数である。$4$ の倍数の辺は $12$ だけで、thm-ebr-div の (ii) の結論は成り立たない。
逆向きに使うこともできる。3 辺のうち $4$ の倍数が 1 本以下の直方体は、thm-ebr-div の (ii) により Euler の直方体でない。$5,9,12$ は、$5^2+9^2$ を計算しなくても、この理由で Euler の直方体でないと分かる。

図 2 は ex-ebr-cx-two の直方体である。
3 辺が 5, 9, 12 の直方体では、12 を含む 2 つの面の対角線 13 と 15 は整数だが、残りの面の対角線は根号 106 で整数でない 3 辺が 5, 9, 12 の直方体では、12 を含む 2 つの面の対角線 13 と 15 は整数だが、残りの面の対角線は根号 106 で整数でない

反例:ピタゴラス数でない 3 数から作る

thm-ebr-saunderson の式に、$u^2+v^2=w^2$ を満たさない $u=v=w=1$ を入れると、$4v^2-w^2=3$、$4u^2-w^2=3$ で
$$ a=3,\qquad b=3,\qquad c=4 $$
となる。$a^2+c^2=b^2+c^2=25=5^2$ は平方数だが、$a^2+b^2=18$ は平方数でない。thm-ebr-saunderson の証明で、段 2・段 3 は $u^2+v^2=w^2$ を使っていないので $a^2+c^2$、$b^2+c^2$ はいつも平方数になる。段 4 だけが $u^2+v^2=w^2$ を使っていて、ここが崩れる。

反例:面の対角線でできる三角形は Heron 三角形とは限らない

直方体 $(44,117,240)$ の 1 つの頂点 $O$ から出る 3 辺の端を $P,Q,R$ とすると、三角形 $PQR$ の 3 辺は面の対角線 $125,244,267$ で、整数である。しかし面積は整数でも有理数でもない。$O$ で 3 つの辺が直角に交わる四面体 $OPQR$ では、de Guaの定理 により
$$ (\triangle PQR)^2=\left(\frac{44\cdot117}2\right)^2+\left(\frac{117\cdot240}2\right)^2+\left(\frac{240\cdot44}2\right)^2=\frac{926501904}4 $$
である。$926501904=144\cdot6434041$ で、$2536^2=6431296<6434041<6436369=2537^2$ なので $6434041$ は平方数でない。面積は $6\sqrt{6434041}$ で無理数である。3 辺が整数でも Heron 三角形とは限らないことは Heron三角形 で見たとおりで、Euler の直方体の対角線もその例になる。

Heron の公式で同じ値になることの確認を開く

3 辺 $125,244,267$ について $(125+244+267)(-125+244+267)(125-244+267)(125+244-267)=636\cdot386\cdot148\cdot102=3706007616$ で、これは $16\cdot\dfrac{926501904}4=3706007616$ と一致する。

図 3 は四面体 $OPQR$ である。
直方体の 1 つの頂点を切り落とすと、3 本の面の対角線 125、244、267 を辺とする三角形ができる(縮尺は正確でない) 直方体の 1 つの頂点を切り落とすと、3 本の面の対角線 125、244、267 を辺とする三角形ができる(縮尺は正確でない)

大学数学で見る:完全直方体と新しい直方体の作り方

完全直方体

Euler の直方体で、空間の対角線 $\sqrt{a^2+b^2+c^2}$ まで整数になるものを 完全直方体 という。MathWorld の頁 Wei26b には、奇数の辺を $10^{10}$ まで探しても完全直方体は見つかっていないと書かれている。存在しないことも証明されていない(この記事ではこれ以上の現状には立ち入らない)。表の 17 個でも、空間の対角線の 2 乗はどれも平方数でない。

辺を 2 つずつ掛けた直方体

$(a,b,c)$ が Euler の直方体ならば、$(ab,bc,ca)$ も Euler の直方体である。

$(ab)^2+(bc)^2=b^2(a^2+c^2)$ で、$a^2+c^2$ は平方数なので、右辺は平方数 $b^2$ と平方数の積で平方数である。同じく $(ab)^2+(ca)^2=a^2(b^2+c^2)$、$(bc)^2+(ca)^2=c^2(a^2+b^2)$ も平方数である。$\square$

$(44,117,240)$ から作る

$(44\cdot117,\ 117\cdot240,\ 240\cdot44)=(5148,28080,10560)$ で、3 数の最大公約数 $12$ で割ると原始的な Euler の直方体 $(429,2340,880)$ になる。面の対角線は $\sqrt{429^2+2340^2}=2379$、$\sqrt{429^2+880^2}=979$、$\sqrt{2340^2+880^2}=2500$ である。辺の 1 つが $1500$ を超えるので、表には入っていない。

prop-ebr-derived は Dic05b の p. 497 に Euler の方法の説明の中で記されている。MathWorld の頁 Wei26a には、thm-ebr-saunderson の公式はいつも Euler の直方体を与えるが、すべての Euler の直方体を与えるわけではないこと、Euler が 1770 年と 1772 年に少なくとも 2 通りの媒介変数の解を見つけたことが書かれている。3 つの 2 次式 $a^2+b^2$、$a^2+c^2$、$b^2+c^2$ を同時に平方数にする問題は、曲面の上の有理点を探す問題として大学の数論で扱われる。

さらに先へ

  • 三角形で「3 辺と面積が有理数」を考えたのが Heron三角形 である。直方体の 3 辺と面の対角線は、Heron 三角形の貼り合わせで使った「直角三角形 2 つが辺を共有する」形を 3 組に増やしたものになっている。
  • 直角三角形の面積に注目すると 合同数(高校数学) の問題になる。そこでは、余りの議論だけでは足りず、無限降下法を使う。
  • 直方体の角を切り落とした四面体の面積の関係は de Guaの定理 で扱う。
  • 1 次の不定方程式や、余りで解がないことを示す方法は 不定方程式の解法 にまとめてある。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する