連分数(continued fraction)とは、$a_0+\cfrac{1}{a_1+\cfrac{1}{a_2+\cdots}}$ の形の式で、$[a_0;a_1,a_2,\dots]$ と書く。実数 $x$ は、整数部分 $a_0=\lfloor x\rfloor$ を取り出して残りの逆数に同じ操作を繰り返すと、$a_1,a_2,\dots$ が正の整数の単純連分数に展開される。有理数の展開は Euclid の互除法の商の列で有限に終わり、無理数の展開は無限に続く。無理数の収束子 $p_n/q_n$ は $|x-p_n/q_n|<1/q_n^2$ を満たし、$\pi$ の $22/7$ が例である。無理数の展開が循環することは、整数係数の2次方程式の根(2次無理数)であることと同値で、$\sqrt2=[1;2,2,\dots]$、黄金比 $=[1;1,1,\dots]$ となる。
前提知識: 有理数, 無理数, Euclidの互除法, 床関数, 数列の極限
分数 $\frac{1071}{462}$ に Euclidの互除法 を施すと
$$
1071=2\cdot462+147,\qquad 462=3\cdot147+21,\qquad 147=7\cdot21
$$
となり、商は順に $2,3,7$ である。これを分数の形で書き直すと
$$
\frac{1071}{462}=2+\frac{147}{462}=2+\cfrac{1}{\dfrac{462}{147}}=2+\cfrac{1}{3+\cfrac{1}{7}}
$$
となる(実際 $2+\frac{1}{3+1/7}=2+\frac{7}{22}=\frac{51}{22}=\frac{1071}{462}$)。このように「整数部分+1 分の(残り)」を繰り返して書いた式を連分数という。無理数にも同じ操作を施すことができ、たとえば円周率は $\pi=3+\cfrac{1}{7+\cfrac{1}{15+\cfrac{1}{1+\cdots}}}$ と展開される。途中で打ち切ると $3,\ \frac{22}{7},\ \frac{333}{106},\ \frac{355}{113}$ という分数が得られ、$\frac{22}{7}$ は $\pi$ との差が約 $0.00126$、$\frac{355}{113}$ は差が約 $2.7\times10^{-7}$ という、分母の大きさの割に非常によい近似になっている。また $\sqrt2=1+\cfrac{1}{2+\cfrac{1}{2+\cdots}}$ のように $2$ が永遠に続き、打ち切ると $\frac32,\frac75,\frac{17}{12},\frac{41}{29}$ が得られる。
$n\ge0$ とし、実数 $a_0,a_1,\dots,a_n$ は $a_1,\dots,a_n>0$ を満たすとする。実数 $[a_0;a_1,\dots,a_n]$ を $n$ に関して再帰的に
$$
[a_0]:=a_0,\qquad [a_0;a_1,\dots,a_n]:=a_0+\frac{1}{[a_1;a_2,\dots,a_n]}\quad(n\ge1)
$$
で定め、これを 有限連分数(finite continued fraction)という。$a_k$ を第 $k$ 部分商という。すべての $a_k$ が整数で $a_1,\dots,a_n\ge1$ であるものを 単純連分数(simple continued fraction)という。$0\le m\le n$ に対し $[a_0;a_1,\dots,a_m]$ を第 $m$ 収束子(近似分数、convergent)という。
$a_1,\dots,a_n>0$ ならば $[a_1;a_2,\dots,a_n]\ge a_1>0$ であることが $n$ に関する数学的帰納法で分かる($[a_1;\dots,a_n]=a_1+1/[a_2;\dots,a_n]$ で第 2 項は正)。したがって定義の中の割り算はつねに意味をもつ。セミコロンは整数部分を区切る記号で、$[a_0,a_1,\dots,a_n]$ とコンマだけで書く本もある(Ste17 §5.1)。
実数を連分数に展開する手続きは次のとおりである。
実数 $x$ に対し、$x_0:=x$ とおき、$k=0,1,2,\dots$ について
$$
a_k:=\lfloor x_k\rfloor,\qquad x_k\ \text{が整数でなければ}\quad x_{k+1}:=\frac{1}{x_k-a_k}
$$
と定める($\lfloor\cdot\rfloor$ は床関数)。ある $x_n$ が整数になればそこで止め、ならなければ無限に続ける。得られる整数の列 $a_0,a_1,a_2,\dots$ を $x$ の 連分数展開(continued fraction expansion)の部分商、$x_k$ を第 $k$ 完全商という。
$x_k$ が整数でなければ $0< x_k-a_k<1$ なので $x_{k+1}>1$ であり、したがって $k\ge1$ では $a_k\ge1$ である。つまり手続きが出力する列は単純連分数の部分商の条件を満たす。手続きが有限で止まれば $x=[a_0;a_1,\dots,a_n]$ となり(thm-cf-rational)、止まらなければ無限連分数 $[a_0;a_1,a_2,\dots]$(thm-cf-infinite で意味を与える)が $x$ に等しい(thm-cf-irrational)。
連分数展開は、Euclidの互除法を「長さの比」に対して行うことに当たる。縦 $1$・横 $x$ の長方形から一辺 $1$ の正方形をできるだけ多く($a_0$ 個)切り取り、残った細長い長方形を 90 度回して同じことを繰り返すと、各段で切り取る正方形の個数が部分商 $a_0,a_1,a_2,\dots$ になる。比が有理数なら有限回で割り切れて終わり、無理数なら永遠に終わらない(thm-cf-rational、thm-cf-irrational)。
10 進小数が $10$ という特定の数に依存するのに対し、連分数は底を選ばない表示である。そのぶん近似の質がよく、途中で打ち切った収束子 $p_n/q_n$ は誤差が $1/q_n^2$ より小さい(thm-cf-irrational)。また、小数展開が循環することは有理数であることと同値であるのに対し、連分数展開が循環することは整数係数の 2 次方程式の根(2次無理数)であることと同値である(thm-cf-periodic)。
冒頭の計算のとおり $\frac{1071}{462}=[2;3,7]$ であり、部分商は互除法の商 $2,3,7$ と一致する。最後の部分商を $7=6+\frac11$ と書き直すと
$$
[2;3,7]=[2;3,6,1]=\frac{51}{22}
$$
も成り立つ。このように有理数の単純連分数による表し方は一通りではなく、ちょうど 2 通りある(thm-cf-rational の 3)。手続き(def-cf-expansion)が出力するのは、最後の部分商が $2$ 以上のほう(部分商が 1 個だけのときは整数そのもの)である。整数 $m$ も $[m]=[m-1;1]$ と 2 通りに書ける。
$\sqrt2=1.414\ldots$ では $a_0=1$、$x_1=\frac1{\sqrt2-1}=\sqrt2+1=2.414\ldots$ なので $a_1=2$、$x_1-a_1=\sqrt2-1$ だから $x_2=x_1$ となり、以後同じことが繰り返される。よって
$$
\sqrt2=[1;2,2,2,\dots]
$$
である。収束子は $\frac11,\frac32,\frac75,\frac{17}{12},\frac{41}{29},\frac{99}{70},\dots$ で、それぞれ $p^2-2q^2=-1,1,-1,1,-1,1$ を満たす。
$\sqrt3=1.732\ldots$ では $x_1=\frac1{\sqrt3-1}=\frac{\sqrt3+1}{2}=1.366\ldots$、$x_2=\frac{1}{(\sqrt3-1)/2}=\sqrt3+1=2.732\ldots$、$x_3=\frac{1}{\sqrt3-1}=x_1$ なので $\sqrt3=[1;1,2,1,2,\dots]$ である。同様の計算で $\sqrt7=[2;1,1,1,4,1,1,1,4,\dots]$ となる。これらの展開が途中から周期的に繰り返されることは偶然ではない(thm-cf-periodic)。
$\pi$ の連分数展開の最初の部分商は
$$
\pi=[3;7,15,1,292,1,1,1,2,1,3,1,14,\dots]
$$
であり、収束子は $3,\ \frac{22}{7},\ \frac{333}{106},\ \frac{355}{113},\ \frac{103993}{33102},\dots$ である(Ste17 例 5.3.4、p. 103)。これらは $\pi$ の十分な桁数の小数値に def-cf-expansion を適用して得られる。誤差は $\frac{22}{7}-\pi=0.00126\ldots$、$\frac{333}{106}-\pi=-0.0000832\ldots$、$\frac{355}{113}-\pi=0.000000266\ldots$ で、符号が交互に変わる(prop-cf-alternating)。$\frac{355}{113}$ が特によいのは、次の部分商 $292$ が大きく、thm-cf-irrational の評価 $1/(q_nq_{n+1})$ で $q_{n+1}=292\cdot113+106=33102$ が大きいからである。$\pi$ の部分商には、$e$ のような規則性は見つかっていない(Ste17 pp. 103–104)。
一方、ネイピア数 $e$ の展開は
$$
e=[2;1,2,1,1,4,1,1,6,1,1,8,\dots]
$$
と規則的であり、$1,2k,1$ の組が $k=1,2,3,\dots$ と続く。これは Euler が示した(証明は Ste17 §5.4、pp. 107–110)。
def-cf-finite では $a_1,\dots,a_n>0$ を課した。この条件を外すと値が定まらないことがある。たとえば $a_0=0$、$a_1=1$、$a_2=-1$ とすると $[a_1;a_2]=1+\frac{1}{-1}=0$ となり、$[a_0;a_1,a_2]=0+\frac10$ は定義できない。部分商に $0$ を許すと $[1;0,1]=1+\frac{1}{0+1}=2=[2]$ のように、単純連分数の表し方の一意性(thm-cf-rational の 3、thm-cf-irrational の 2)も崩れる。満たさない性質:$a_1,\dots,a_n>0$。破る含意:「整数の列 $a_0,\dots,a_n$ から連分数の値が定まる」「値から部分商が(最後の項の書き方を除いて)一意に決まる」。
thm-cf-irrational により、無理数 $x$ の収束子 $p/q$ はすべて $|x-p/q|<1/q^2$ を満たす。逆は成り立たない。$x=\sqrt2$ と $\frac43$ について
$$
\left|\sqrt2-\frac43\right|=0.0808\ldots<\frac19=\frac{1}{3^2}
$$
であるが、$\sqrt2$ の収束子は $\frac11,\frac32,\frac75,\dots$(ex-cf-square-roots)であり、分母 $3$ のものは無い。満たす性質:$|x-p/q|<1/q^2$。満たさない性質:$p/q$ が収束子である。破る含意:「$|x-p/q|<1/q^2$ ならば $p/q$ は $x$ の収束子である」は成り立たない。
$n\ge0$、$a_0$ を実数、$a_1,\dots,a_n>0$、$t>0$ とすると
$$
[a_0;a_1,\dots,a_n,t]=\Bigl[a_0;a_1,\dots,a_{n-1},a_n+\frac1t\Bigr]
$$
である($n=0$ のときは $[a_0;t]=[a_0+1/t]$)。
$n=0$ では定義より $[a_0;t]=a_0+1/[t]=a_0+1/t=[a_0+1/t]$ である。$n\ge1$ とし、長さの短い場合に正しいとすると
$$
[a_0;a_1,\dots,a_n,t]=a_0+\frac{1}{[a_1;\dots,a_n,t]}=a_0+\frac{1}{[a_1;\dots,a_{n-1},a_n+1/t]}=\Bigl[a_0;a_1,\dots,a_{n-1},a_n+\frac1t\Bigr]
$$
である(2 つ目の等号が帰納法の仮定、$a_n+1/t>0$ に注意)。$\square$
部分商 $a_0,a_1,a_2,\dots$($a_k>0$、$k\ge1$)に対し、数 $p_n,q_n$($n\ge-2$)を
$$
p_{-2}=0,\quad p_{-1}=1,\quad p_n=a_np_{n-1}+p_{n-2};\qquad q_{-2}=1,\quad q_{-1}=0,\quad q_n=a_nq_{n-1}+q_{n-2}\qquad(n\ge0)
$$
で定める。$q_0=1$ であり、$q_{n-1}>0$、$q_{n-2}\ge0$ から $q_n>0$ が帰納的に従うので、$n\ge0$ で $q_n>0$ である。
$n\ge0$ と実数 $t>0$ について
$$
[a_0;a_1,\dots,a_{n-1},t]=\frac{tp_{n-1}+p_{n-2}}{tq_{n-1}+q_{n-2}}
$$
である($n=0$ のときの左辺は $[t]=t$)。とくに $t=a_n$ とおくと $[a_0;a_1,\dots,a_n]=p_n/q_n$ である。
$n=0$ では右辺は $(t\cdot1+0)/(t\cdot0+1)=t$ で正しい。$n$ で(すべての $t>0$ について)正しいとする。lem-cf-last-term と帰納法の仮定($t$ を $a_n+1/t>0$ として使う)により
$$
[a_0;\dots,a_n,t]=\Bigl[a_0;\dots,a_{n-1},a_n+\frac1t\Bigr]=\frac{(a_n+\frac1t)p_{n-1}+p_{n-2}}{(a_n+\frac1t)q_{n-1}+q_{n-2}}=\frac{p_n+\frac1tp_{n-1}}{q_n+\frac1tq_{n-1}}=\frac{tp_n+p_{n-1}}{tq_n+q_{n-1}}
$$
であり、$n+1$ でも正しい。分母はどれも正である。$\square$
たとえば $[2;3,7]$ では $(p_0,q_0)=(2,1)$、$(p_1,q_1)=(3\cdot2+1,\ 3\cdot1+0)=(7,3)$、$(p_2,q_2)=(7\cdot7+2,\ 7\cdot3+1)=(51,22)$ で、ex-cf-rational の $\frac{51}{22}$ が得られる(Ste17 命題 5.2.5、p. 97)。
$n\ge-1$ で $p_nq_{n-1}-p_{n-1}q_n=(-1)^{n-1}$ であり、$n\ge0$ で $p_nq_{n-2}-p_{n-2}q_n=(-1)^na_n$ である。したがって $n\ge1$ で
$$
\frac{p_n}{q_n}-\frac{p_{n-1}}{q_{n-1}}=\frac{(-1)^{n-1}}{q_nq_{n-1}},\qquad n\ge2\ \text{で}\quad \frac{p_n}{q_n}-\frac{p_{n-2}}{q_{n-2}}=\frac{(-1)^na_n}{q_nq_{n-2}}
$$
である。
$n=-1$ では $p_{-1}q_{-2}-p_{-2}q_{-1}=1=(-1)^{-2}$ である。$n\ge0$ で $n-1$ について正しいとすると
$$
p_nq_{n-1}-p_{n-1}q_n=(a_np_{n-1}+p_{n-2})q_{n-1}-p_{n-1}(a_nq_{n-1}+q_{n-2})=-(p_{n-1}q_{n-2}-p_{n-2}q_{n-1})=-(-1)^{n-2}=(-1)^{n-1}
$$
である。また $p_nq_{n-2}-p_{n-2}q_n=a_n(p_{n-1}q_{n-2}-p_{n-2}q_{n-1})=a_n(-1)^{n-2}=(-1)^na_n$ である。後半は両辺を $q_nq_{n-1}$(または $q_nq_{n-2}$)で割ればよい($n\ge1$ で $q_{n-1}>0$、$n\ge2$ で $q_{n-2}>0$)。$\square$
部分商が整数なら $p_n,q_n$ は整数であり、$p_n$ と $q_n$ の正の公約数は $(-1)^{n-1}$ を割り切るので $1$ に限る。つまり 単純連分数の収束子 $p_n/q_n$ は既約分数である(Ste17 命題 5.2.7・系 5.2.10、p. 98)。また単純連分数では $q_1=a_1\ge1$ であり、$n\ge2$ で $q_n\ge q_{n-1}+q_{n-2}\ge q_{n-1}+1$ なので、$n\ge1$ で $q_n\ge n$、$n\ge2$ で $q_n>q_{n-1}$ である。より詳しく $q_n\ge F_{n+1}$(Fibonacci数)であり、等号はすべての部分商が $1$ のとき、すなわち 黄金比 の展開のときに成り立つ。
手続き def-cf-expansion の完全商について、$x_k$ が定まる限り
$$
x=[a_0;a_1,\dots,a_{k-1},x_k]
$$
が成り立つ。実際 $k=0$ では $x=x_0=[x_0]$ であり、$k$ で成り立ち $x_k$ が整数でなければ、$x_k=a_k+1/x_{k+1}$ と lem-cf-last-term から $[a_0;\dots,a_{k-1},x_k]=[a_0;\dots,a_{k-1},a_k,x_{k+1}]$ となる。
1:$r_{-1}:=a$、$r_0:=b$ とし、$r_k>0$ である限り $r_{k-1}=c_kr_k+r_{k+1}$、$0\le r_{k+1}< r_k$ と整数 $c_k,r_{k+1}$ を定める(除法の原理)。これが互除法である。$x_k=r_{k-1}/r_k$ を $k$ に関する帰納法で示す。$k=0$ では $x_0=a/b$ である。$x_k=r_{k-1}/r_k$ ならば $x_k=c_k+r_{k+1}/r_k$、$0\le r_{k+1}/r_k<1$ なので $a_k=\lfloor x_k\rfloor=c_k$ である。$r_{k+1}=0$ なら $x_k$ は整数で手続きは止まり、そうでなければ $x_{k+1}=1/(x_k-a_k)=r_k/r_{k+1}$ である。$r_0>r_1>r_2>\cdots\ge0$ は整数の狭義減少列なので、ある $n$ で $r_{n+1}=0$ となって止まる。上の式 $x=[a_0;\dots,a_{n-1},x_n]$ で $x_n=a_n$ なので $x=[a_0;\dots,a_n]$ である。$n\ge1$ なら $x_n=r_{n-1}/r_n$ は $r_n< r_{n-1}$ から $1$ より大きい整数なので $a_n\ge2$ である。
2:prop-cf-recurrence により値は整数の比 $p_n/q_n$($q_n>0$)である。
3:まず、2 つの表し方が実際に同じ値をもつことは lem-cf-last-term($a_n=(a_n-1)+\frac11$)から分かる。逆に $x=[b_0;b_1,\dots,b_m]$ を任意の単純連分数表示とする。$m\ge1$ かつ $b_m=1$ なら、lem-cf-last-term より $x=[b_0;\dots,b_{m-2},b_{m-1}+1]$ と 1 つ短くでき、その最後の部分商は $2$ 以上である($m=1$ なら整数 $[b_0+1]$ になる)。したがって、「$m=0$ または $b_m\ge2$」を満たす表示が手続きの出力と一致することを示せばよい。$m$ に関する帰納法による。$m=0$ なら $x=b_0$ は整数で、手続きは $a_0=x$ で止まる。$m\ge1$ なら $y:=[b_1;\dots,b_m]$ は、$m=1$ のとき $b_1\ge2$、$m\ge2$ のとき $b_1+1/[b_2;\dots,b_m]>b_1\ge1$ なので、いずれも $y>1$ である。よって $x=b_0+1/y$、$0<1/y<1$ から $a_0=\lfloor x\rfloor=b_0$、$x_1=1/(x-a_0)=y$ である。$y$ の表示 $[b_1;\dots,b_m]$ は長さが 1 短く同じ条件を満たすので、帰納法の仮定により $y$ の手続きの出力は $b_1,\dots,b_m$ であり、それは $x$ の手続きの $a_1,a_2,\dots$ に等しい。$\square$
1 は Euclid の互除法の商が連分数の部分商になることを述べている(Ste17 命題 5.2.14・命題 5.3.12、pp. 100–101・p. 107)。互除法の割り算の回数が連分数の長さ $n+1$ である。
以下、$a_0$ は整数、$a_1,a_2,\dots$ は正の整数の無限列とし、$c_n:=[a_0;a_1,\dots,a_n]=p_n/q_n$ とおく。
偶数番目の収束子は狭義に増加し($c_0< c_2< c_4<\cdots$)、奇数番目の収束子は狭義に減少し($c_1>c_3>c_5>\cdots$)、どの偶数番目の収束子もどの奇数番目の収束子より小さい。
prop-cf-determinant より $n\ge2$ で $c_n-c_{n-2}=(-1)^na_n/(q_nq_{n-2})$ であり、$a_n,q_n,q_{n-2}>0$ なので、$n$ が偶数なら正、奇数なら負である。また $c_{2k+1}-c_{2k}=1/(q_{2k+1}q_{2k})>0$ である。任意の $m,k$ について $N:=\max(m,k)$ とおくと $c_{2m}\le c_{2N}< c_{2N+1}\le c_{2k+1}$ である。$\square$
極限 $x:=\lim_{n\to\infty}c_n$ が存在する。これを $[a_0;a_1,a_2,\dots]$ と書き、無限単純連分数の値という。すべての $m,k$ について $c_{2m}< x< c_{2k+1}$ であり、すべての $n\ge0$ について
$$
\left|x-\frac{p_n}{q_n}\right|<\frac{1}{q_nq_{n+1}}
$$
である。
prop-cf-alternating より $(c_{2m})$ は増加して $c_1$ で上に有界、$(c_{2k+1})$ は減少して $c_0$ で下に有界なので、それぞれ極限 $\alpha,\beta$ をもち(単調収束定理)、$\alpha\le\beta$ である。$q_n\ge n$($n\ge1$)より
$$
0\le\beta-\alpha\le c_{2k+1}-c_{2k}=\frac{1}{q_{2k+1}q_{2k}}\le\frac{1}{(2k+1)\cdot2k}\qquad(k\ge1)
$$
で右辺は $0$ に収束するので $\alpha=\beta$ であり、$(c_n)$ はこの値 $x$ に収束する。狭義の単調性から $c_{2m}< c_{2m+2}\le x\le c_{2k+3}< c_{2k+1}$ である。したがって $x$ は $c_n$ と $c_{n+1}$ の真に間にあり、$|x-c_n|<|c_{n+1}-c_n|=1/(q_nq_{n+1})$ である。$\square$
1:手続きが第 $n$ 段で止まれば $x=[a_0;\dots,a_n]$ は有理数になる(thm-cf-rational の 2)ので、止まらない。上の節「有理数の連分数展開」の冒頭で示した式 $x=[a_0;\dots,a_{k-1},x_k]$ と prop-cf-recurrence($t=x_{n+1}$)より
$$
x=[a_0;\dots,a_n,x_{n+1}]=\frac{x_{n+1}p_n+p_{n-1}}{x_{n+1}q_n+q_{n-1}}
$$
であり、prop-cf-determinant を使うと
$$
x-\frac{p_n}{q_n}=\frac{(x_{n+1}p_n+p_{n-1})q_n-p_n(x_{n+1}q_n+q_{n-1})}{q_n(x_{n+1}q_n+q_{n-1})}=\frac{p_{n-1}q_n-p_nq_{n-1}}{q_n(x_{n+1}q_n+q_{n-1})}=\frac{(-1)^n}{q_n(x_{n+1}q_n+q_{n-1})}
$$
である。$x_{n+1}$ は整数でないので $a_{n+1}< x_{n+1}< a_{n+1}+1$ であり、分母は $q_n(a_{n+1}q_n+q_{n-1})=q_nq_{n+1}$ より大きく、$q_n(q_{n+1}+q_n)$ より小さい。$q_{n+1}\ge q_n$ から最後の不等式を得る。右辺は $0$ に収束するので $p_n/q_n\to x$ であり、$p_n/q_n$ は無限単純連分数 $[a_0;a_1,\dots]$ の収束子なので $x=[a_0;a_1,a_2,\dots]$ である。
2:$y:=[a_1;a_2,a_3,\dots]$ とおく(thm-cf-infinite により定まる)。thm-cf-infinite を列 $a_1,a_2,\dots$ に使うと、$y$ はその第 $0$ 収束子 $a_1$ より真に大きいので $y>1$ である。定義から $[a_0;a_1,\dots,a_n]=a_0+1/[a_1;\dots,a_n]$ であり、$n\to\infty$ とすると右辺の $[a_1;\dots,a_n]$ は $y>0$ に収束するので $x=a_0+1/y$ である。$0<1/y<1$ なので手続きの最初の段は $a_0=\lfloor x\rfloor$、$x_1=1/(x-a_0)=y$ を与える。$y$ は整数でない($y=a_1+1/[a_2;a_3,\dots]$ で、同じ理由で $[a_2;a_3,\dots]>1$)ので手続きは続き、同じ議論を $y$ に繰り返すと、$k$ に関する帰納法により第 $k$ 段の部分商は $a_k$、完全商は $x_k=[a_k;a_{k+1},\dots]$ である。手続きが止まらないので、thm-cf-rational の 1 により $x$ は有理数でない。$\square$
Ste17 の定理 5.3.6・定理 5.3.10・系 5.3.11(pp. 104–107)に同じ内容がある。$n\ge2$ で $q_n$ は狭義に増加し、収束子は既約分数なので、1 の収束子はすべて異なる。よって、無理数 $x$ には $|x-p/q|<1/q^2$ を満たす有理数 $p/q$ が無限個ある。これは 鳩の巣原理 の記事の定理「Dirichlet の近似定理」から導かれる事実の、連分数による別証明であり、収束子という具体的な近似を与える。
無理数 $x$ が $ax^2+bx+c=0$($a,b,c$ は整数、$a\neq0$)を満たすとき、$x$ を 2次無理数(quadratic irrational)という。部分商の列が、ある $m\ge0$ と $h\ge1$ について $k\ge m$ で $a_{k+h}=a_k$ を満たすとき、展開は 循環する(周期的である)といい、$[a_0;\dots,a_{m-1},\overline{a_m,\dots,a_{m+h-1}}]$ と書く。たとえば $\sqrt2=[1;\overline{2}]$、$\sqrt3=[1;\overline{1,2}]$ である。
無理数 $x$ の連分数展開が循環することと、$x$ が 2 次無理数であることは同値である。
完全商 $x_k$ は thm-cf-irrational の証明の 2 より $x_k=[a_k;a_{k+1},\dots]$ であり、部分商の列の $k$ 番目以降だけで決まる。また $x_k$ に手続きを施したときの完全商は $x_k,x_{k+1},\dots$ である。
循環するならば 2 次無理数:$k\ge m$ で $a_{k+h}=a_k$ とする。$x_{m+h}$ と $x_m$ は同じ列 $a_m,a_{m+1},\dots$ で決まるので $y:=x_m=x_{m+h}$ である。有限列 $a_m,\dots,a_{m+h-1}$ から作った $p,q$ を $P:=p_{h-1}$、$P':=p_{h-2}$、$Q:=q_{h-1}$、$Q':=q_{h-2}$ とおくと、prop-cf-recurrence を $y$ に使って $y=[a_m;\dots,a_{m+h-1},y]=(yP+P')/(yQ+Q')$ となり、
$$
H(u):=Qu^2+(Q'-P)u-P'
$$
について $H(y)=0$ である。$Q\ge1$ なので $H$ は $0$ でない。次に、$x$ の $p,q$ で $\alpha:=p_{m-1}$、$\beta:=p_{m-2}$、$\gamma:=q_{m-1}$、$\delta:=q_{m-2}$ とおくと、$x=(\alpha y+\beta)/(\gamma y+\delta)$、$\alpha\delta-\beta\gamma=(-1)^m$ である($m=0$ なら $x=y$)。$\alpha-\gamma x\neq0$ である($\gamma\neq0$ なら $x$ が有理数になり、$\gamma=0$ なら $m=0$ で $\alpha=1$)。$x(\gamma y+\delta)=\alpha y+\beta$ を $y$ について解くと $y=(\delta x-\beta)/(\alpha-\gamma x)$ となる。整数係数の多項式
$$
g(t):=Q(\delta t-\beta)^2+(Q'-P)(\delta t-\beta)(\alpha-\gamma t)-P'(\alpha-\gamma t)^2
$$
は、$\alpha-\gamma t\neq0$ のとき $g(t)=(\alpha-\gamma t)^2H\bigl(\frac{\delta t-\beta}{\alpha-\gamma t}\bigr)$ を満たすので $g(x)=0$ である。$g$ が零多項式だとすると、$\alpha-\gamma t\neq0$ を満たす無限個の有理数 $t$ について $u(t):=\frac{\delta t-\beta}{\alpha-\gamma t}$ が $H$ の根になる。ところが $u(t)=u(s)$ から分母を払うと $(\alpha\delta-\beta\gamma)(t-s)=0$、すなわち $t=s$ が出るので $u(t)$ は互いに異なり、$0$ でない高々 2 次の多項式 $H$ が無限個の根をもつことになって矛盾する。よって $g$ は $0$ でない高々 2 次の整数係数多項式で、無理数 $x$ を根にもつ。1 次以下なら根は有理数か存在しないので、$g$ はちょうど 2 次であり、$x$ は 2 次無理数である。
2 次無理数ならば循環する:$f(t):=at^2+bt+c$($a\neq0$)、$f(x)=0$ とし、判別式を $D:=b^2-4ac$ とおく。$f$ のもう一つの根 $x'$ は $x+x'=-b/a$ を満たすので無理数であり、$f$ は有理数の根をもたない。$n\ge1$ について $x=(x_np_{n-1}+p_{n-2})/(x_nq_{n-1}+q_{n-2})$ を $f(x)=0$ に代入し $(x_nq_{n-1}+q_{n-2})^2$ を掛けると、$A_nx_n^2+B_nx_n+C_n=0$ となる。ここで
$$
A_n=ap_{n-1}^2+bp_{n-1}q_{n-1}+cq_{n-1}^2,\quad B_n=2ap_{n-1}p_{n-2}+b(p_{n-1}q_{n-2}+p_{n-2}q_{n-1})+2cq_{n-1}q_{n-2},\quad C_n=ap_{n-2}^2+bp_{n-2}q_{n-2}+cq_{n-2}^2
$$
は整数であり、両辺を展開して比べると $B_n^2-4A_nC_n=D\,(p_{n-1}q_{n-2}-p_{n-2}q_{n-1})^2=D$ が成り立つ(prop-cf-determinant)。$A_n=q_{n-1}^2f(p_{n-1}/q_{n-1})$ であり、$f$ は有理数の根をもたないので $A_n\neq0$ である。
$r:=p_{n-1}/q_{n-1}$ とおくと、thm-cf-irrational の 1 より $|r-x|<1/q_{n-1}^2\le1$ である。$f(r)=f(r)-f(x)=(r-x)\bigl(a(r+x)+b\bigr)$ なので
$$
|A_n|=q_{n-1}^2|r-x|\,|a(r+x)+b|<|a|(2|x|+1)+|b|=:M
$$
である。$n\ge2$ では $C_n=A_{n-1}$ なので $|C_n|< M$ であり、$B_n^2=D+4A_nC_n\le|D|+4M^2$ である。したがって $n\ge2$ で整数の組 $(A_n,B_n,C_n)$ は有限個の値しかとらない。各 $x_n$ は $A_n\neq0$ の 2 次方程式の根で、1 つの方程式の根は高々 2 個なので、$\{x_n\mid n\ge2\}$ は有限集合である。よって $2\le m< m+h$ で $x_m=x_{m+h}$ となるものがある。$x_{k+1}$ は $x_k$ だけで決まる($a_k=\lfloor x_k\rfloor$、$x_{k+1}=1/(x_k-a_k)$)ので、$k\ge m$ で $x_{k+h}=x_k$、したがって $a_{k+h}=a_k$ である。$\square$
この定理とその証明は Ste17 定理 5.5.5(pp. 112–114)にある。後半の証明の要は、係数 $A_n,B_n,C_n$ が有界な整数になることである。
平方数でない正の整数 $d$ について、$\sqrt d$ の収束子 $p/q$ の中に $p^2-dq^2=\pm1$ を満たすものが現れる。たとえば $\sqrt2$ では $3^2-2\cdot2^2=1$、$7^2-2\cdot5^2=-1$(ex-cf-square-roots)、$\sqrt7=[2;\overline{1,1,1,4}]$ では収束子 $\frac83$ が $8^2-7\cdot3^2=1$ を満たし、$\sqrt{13}=[3;\overline{1,1,1,1,6}]$ では収束子 $\frac{18}{5}$ が $18^2-13\cdot5^2=-1$ を満たす。方程式 $x^2-dy^2=1$ の整数解を連分数で求める方法は Pell方程式 の記事で扱う。
thm-cf-periodic は 2 次の無理数を連分数で完全に特徴づけるが、3 次以上の代数的数については、連分数展開について知られていることは少ない。たとえば $\sqrt[3]2=[1;3,1,5,1,1,4,1,1,8,1,14,1,10,2,\dots]$ の部分商の規則は見つかっておらず、Ste17 は未解決問題 5.5.7(p. 114)として挙げている。これと対照的に、$e$ は超越数でありながら規則的な展開をもつ(ex-cf-pi-e、超越数)。すべての部分商が $1$ の展開 $[1;1,1,1,\dots]$ は黄金比であり(Ste17 例 5.3.2、p. 102)、その収束子は隣り合う Fibonacci数 の比 $F_{n+2}/F_{n+1}$ である。
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