双曲線(hyperbola)とは、相異なる 2 点 $F$、$F'$(焦点)からの距離の差の絶対値が一定値 $2a$($0<2a< FF'$)である点全体である。焦点を $(\pm c,0)$($0<a< c$)に置くと、この条件は $\frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}=1$($b=\sqrt{c^2-a^2}$)と同値で、曲線は $x\ge a$ と $x\le-a$ の 2 つの枝に分かれ、右の枝では $F$、左の枝では $F'$ のほうが近い。直線 $y=\pm\frac bax$(漸近線)とは交わらず、2 本の漸近線までの距離の積は一定である。反比例のグラフ $xy=k$($k>0$)は焦点 $(\pm\sqrt{2k},\pm\sqrt{2k})$(複号同順)の直角双曲線である。
楕円は 2 つの焦点からの距離の 和 が一定の点の集まりだった(楕円(高校数学))。和を 差 に替えると何が描けるか。また、数学 III で習う反比例のグラフ $y=\frac1x$ は、どんな曲線の仲間なのか。この 2 つの問いが、同じ答え「双曲線」につながる。
曲線 $\frac{x^2}9-\frac{y^2}{16}=1$ の上の点で、2 点 $F(5,0)$、$F'(-5,0)$ までの距離を測る。
双曲線 x²/9−y²/16=1 の 2 つの枝と漸近線 y=±(4/3)x、右の枝の点 P(5, 16/3) から焦点 F(5,0)、F'(−5,0) までの距離 16/3 と 34/3(差は 6)を見る図
$y=\frac1x$ のグラフの上の点で、2 点 $G(\sqrt2,\sqrt2)$、$G'(-\sqrt2,-\sqrt2)$ までの距離を測る。
2 つの例から、次の問いが出てくる。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| 根号を移して 2 回 2 乗する | 枝ごとに、どちらの焦点が近いかが決まる | thm-hyp-standard |
| 漸近線 $y=\pm\frac bax$ を描く | 曲線は漸近線と交わらず、2 本の漸近線までの距離の積は一定 | thm-hyp-asymptote |
| 反比例のグラフ $y=\frac kx$ | 座標を $45^\circ$ 回すと $X^2-Y^2=2k$ になる | thm-hyp-rectangular |
平面上の相異なる 2 点 $F$、$F'$ と、$0<2a< FF'$ を満たす数 $a$ について、$|PF-PF'|=2a$ を満たす点 $P$ 全体を、$F$、$F'$ を 焦点 とする 双曲線 という。線分 $FF'$ の中点をこの双曲線の 中心 という。
「$2a< FF'$」も三角不等式から来る。どの点 $P$ でも $|PF-PF'|\le FF'$ なので、$2a>FF'$ なら満たす点はなく、$2a=FF'$ なら 2 本の半直線になってしまう(ex-hyp-degenerate)。以下、焦点を $F(c,0)$、$F'(-c,0)$($c>0$)に置く。条件は $0< a< c$ である。この置き方での標準形の導き方と漸近線の式は Abr21 §10.2 にもある。
$0< a< c$ とし、$b=\sqrt{c^2-a^2}$ とおく。点 $P(x,y)$ について、次の 2 つは同値である。
楕円のときと同じく、展開して比べると、どの点 $P(x,y)$ についても
$$
a^2PF^2-(cx-a^2)^2=-\bigl(b^2x^2-a^2y^2-a^2b^2\bigr)\qquad(\dagger)
$$
が成り立つ。左辺は $a^2(x^2-2cx+c^2+y^2)-(c^2x^2-2a^2cx+a^4)=-(c^2-a^2)x^2+a^2y^2+a^2(c^2-a^2)$ で、$c^2-a^2=b^2$ である。$PF^2$ を $PF'^2$ に、$cx-a^2$ を $cx+a^2$ に替えても同じ右辺になる。
方針:1 ⇒ 2 は、差の符号を $\varepsilon=\pm1$ で表して根号を 1 つずつ外す。2 ⇒ 1 は $(\dagger)$ から距離を $x$ の 1 次式の絶対値で表し、$|x|\ge a$ を使って枝ごとに絶対値を外す。
段 1(1 ⇒ 2:1 回目の 2 乗)。1 から $PF'-PF=2a\varepsilon$ となる $\varepsilon\in\{1,-1\}$ がある。$PF'=PF+2a\varepsilon$ の両辺を 2 乗すると $PF'^2=PF^2+4a\varepsilon\cdot PF+4a^2$($\varepsilon^2=1$)である。$PF'^2-PF^2=4cx$ なので $4cx=4a\varepsilon\cdot PF+4a^2$、両辺に $\varepsilon$ を掛けて $a\cdot PF=\varepsilon(cx-a^2)$ である。
段 2(1 ⇒ 2:2 回目の 2 乗)。2 乗すると $a^2PF^2=(cx-a^2)^2$ で、$(\dagger)$ の左辺が $0$ になる。よって $b^2x^2-a^2y^2=a^2b^2$ で、$a^2b^2$ で割ると 2 を得る。
段 3(2 ⇒ 1:距離を求める)。2 を仮定すると $(\dagger)$ の右辺が $0$ なので $a\cdot PF=|cx-a^2|$、同様に $a\cdot PF'=|cx+a^2|$ である。
段 4(2 ⇒ 1:$x$ の範囲)。2 から $\frac{x^2}{a^2}=1+\frac{y^2}{b^2}\ge1$ なので $|x|\ge a$ である。$c>a$ なので $c|x|\ge ca>a^2$ である。
段 5(2 ⇒ 1:枝ごとに絶対値を外す)。
楕円では $c^2=a^2-b^2$ だったが、双曲線では $c^2=a^2+b^2$ になる。双曲線の $a$ と $b$ にはどちらが大きいという制限がない。$|x|\ge a$ なので、帯 $-a< x< a$ の中に曲線の点はなく、曲線は左右 2 つの部分(枝)に分かれる。点 $(\pm a,0)$ を 頂点 という。
段 5 の式 $PF=\frac cax-a$(右の枝)などを焦点半径の公式といい、そこから双曲線の準線が分かる(2次曲線の焦点と準線 の系「双曲線の準線」)。
$a>0$、$b>0$ のとき、$\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=-1$ は、焦点 $(0,\pm\sqrt{a^2+b^2})$、距離の差の絶対値 $2b$ の双曲線で、頂点は $(0,\pm b)$ である。
両辺に $-1$ を掛けると $\frac{y^2}{b^2}-\frac{x^2}{a^2}=1$ である。点 $(x,y)$ と $(y,x)$ を入れかえる対応は距離を変えない(2 つの 2 乗の順番が変わるだけ)。入れかえた点 $(X,Y)=(y,x)$ は $\frac{X^2}{b^2}-\frac{Y^2}{a^2}=1$ を満たすので、thm-hyp-standard($a$ と $b$ の役を入れかえたもの)から、$(X,Y)$ は焦点 $(\pm\sqrt{a^2+b^2},0)$、差 $2b$ の双曲線の上にある。焦点を入れかえて戻すと $(0,\pm\sqrt{a^2+b^2})$ である。$\square$
$\frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}=1$ と $\frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}=-1$ は、同じ 2 本の漸近線をもつ(次の節)。この 2 つを互いに 共役 な双曲線という。
双曲線 $\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1$ と 2 直線 $\ell_1:bx-ay=0$、$\ell_2:bx+ay=0$($y=\pm\frac bax$)について、次が成り立つ。
方針:$\frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}=\left(\frac xa-\frac yb\right)\left(\frac xa+\frac yb\right)$ と因数分解し、2 つの因数を直線までの距離と結びつける。
段 1(共有点がない)。$\ell_1$ 上では $bx=ay$ なので $\frac xa=\frac yb$、つまり第 1 の因数が $0$ で、左辺は $0\ne1$ である。$\ell_2$ 上では第 2 の因数が $0$ で、同じく $0\ne1$ である。
段 2(距離の積)。点と直線の距離の公式から $d_1=\dfrac{|bx-ay|}{\sqrt{a^2+b^2}}$、$d_2=\dfrac{|bx+ay|}{\sqrt{a^2+b^2}}$ である(直線の方程式と点と直線の距離)。掛けると
$$
d_1d_2=\frac{|b^2x^2-a^2y^2|}{a^2+b^2}=\frac{a^2b^2}{a^2+b^2}
$$
である。最後の等号は、双曲線上で $b^2x^2-a^2y^2=a^2b^2$ であることによる。
段 3($d_1\to0$)。$x\ge a$、$y=\frac ba\sqrt{x^2-a^2}\ge0$ の点では $bx-ay=b\bigl(x-\sqrt{x^2-a^2}\bigr)>0$ で、分子を有理化すると
$$
x-\sqrt{x^2-a^2}=\frac{x^2-(x^2-a^2)}{x+\sqrt{x^2-a^2}}=\frac{a^2}{x+\sqrt{x^2-a^2}}
$$
である。よって $d_1=\dfrac{a^2b}{\sqrt{a^2+b^2}\,\bigl(x+\sqrt{x^2-a^2}\bigr)}$ で、分母は $x$ とともに限りなく大きくなるので、$d_1$ は限りなく $0$ に近づく。$\square$
3 と同じことが、対称性によりほかの 3 つの象限の部分でも成り立つ。2 本の直線 $y=\pm\frac bax$ を双曲線の 漸近線 という。漸近線の一般の定義と求め方は グラフの概形と漸近線 で扱う。
$\frac{x^2}9-\frac{y^2}{16}=1$ の漸近線は $4x-3y=0$ と $4x+3y=0$($y=\pm\frac43x$)で、$d_1d_2=\frac{9\cdot16}{25}=\frac{144}{25}$ である。頂点 $(3,0)$ では $d_1=d_2=\frac{12}5$ で、積は $\frac{144}{25}$ になっている。右の枝の点 $\left(5,\frac{16}3\right)$ では $d_1=\frac{|20-16|}5=\frac45$、$d_2=\frac{20+16}5=\frac{36}5$ で、積は $\frac{144}{25}$ である。$x=30$ では $d_1=\frac{36}{5(30+\sqrt{891})}\approx0.12$ まで小さくなる。
$a=b$ のとき、漸近線 $y=\pm x$ は直交する。このような双曲線を 直角双曲線 という。$x^2-y^2=2k$ を $45^\circ$ 回すと、反比例のグラフ $xy=k$ になる。
$k>0$ とし、$s=\sqrt{2k}$ とおく。曲線 $xy=k$($y=\frac kx$ のグラフ)は、焦点 $G(s,s)$、$G'(-s,-s)$、距離の差の絶対値 $2s$ の双曲線である。漸近線は $x$ 軸と $y$ 軸である。
方針:座標を $45^\circ$ 回す対応 $R$ が距離を変えないことを示し、$R$ で曲線と焦点を標準形の位置に移す。
段 1(回転 $R$)。点 $(x,y)$ に点 $R(x,y)=\left(\frac{x+y}{\sqrt2},\frac{-x+y}{\sqrt2}\right)$ を対応させる。$R$ は 1 対 1 で、逆は $(X,Y)\mapsto\left(\frac{X-Y}{\sqrt2},\frac{X+Y}{\sqrt2}\right)$ である(代入すると元に戻る)。
段 2($R$ は距離を変えない)。2 点の座標の差を $(p,q)$ とすると、$R$ で移した 2 点の座標の差は $\left(\frac{p+q}{\sqrt2},\frac{-p+q}{\sqrt2}\right)$ で、その 2 乗の和は
$$
\frac{(p+q)^2+(q-p)^2}2=\frac{2p^2+2q^2}2=p^2+q^2
$$
である。よって移した 2 点の距離はもとの距離に等しい。
段 3(曲線を移す)。$(X,Y)=R(x,y)$ とおくと $X^2-Y^2=\frac{(x+y)^2-(y-x)^2}2=\frac{4xy}2=2xy$ である。よって $xy=k$ と $X^2-Y^2=2k$、つまり $\frac{X^2}{s^2}-\frac{Y^2}{s^2}=1$ は同値である。
段 4(焦点を移す)。$\frac{X^2}{s^2}-\frac{Y^2}{s^2}=1$ は thm-hyp-standard で $a=b=s$、$c=\sqrt{2s^2}=\sqrt{4k}$ の場合で、焦点は $H(\sqrt{4k},0)$、$H'(-\sqrt{4k},0)$、差は $2s$ である。$R(s,s)=\left(\frac{2s}{\sqrt2},0\right)=(\sqrt2\,s,0)=(\sqrt{4k},0)=H$、同様に $R(-s,-s)=H'$ である。
段 5(まとめる)。点 $P$ について、$P$ が $xy=k$ の上にある $\iff$ $R(P)$ が $\frac{X^2}{s^2}-\frac{Y^2}{s^2}=1$ の上にある(段 3)$\iff$ $|R(P)H-R(P)H'|=2s$(thm-hyp-standard)$\iff$ $|PG-PG'|=2s$(段 2、段 4)である。漸近線 $Y=\pm X$ は、$\frac{-x+y}{\sqrt2}=\pm\frac{x+y}{\sqrt2}$ から $x=0$ と $y=0$ に戻る。$\square$
$k=1$ では $s=\sqrt2$ で、ex-hyp-start-reciprocal の 2 点 $G(\sqrt2,\sqrt2)$、$G'(-\sqrt2,-\sqrt2)$ が焦点、差 $2\sqrt2$ はちょうど $2s$ である。$k<0$ のときは、焦点が直線 $y=-x$ の上の $\left(\sqrt{-2k},-\sqrt{-2k}\right)$ と $\left(-\sqrt{-2k},\sqrt{-2k}\right)$ に来る($x$ を $-x$ に替えれば $k>0$ の場合に帰着する)。数学 III の分数関数 $y=\frac{ax+b}{cx+d}$ のグラフも、平行移動すると $y=\frac k x$ の形になるので、直角双曲線である。
$y=\frac{2x+1}{x-1}=2+\frac3{x-1}$ のグラフは、$y=\frac3x$ のグラフを $x$ 方向に $1$、$y$ 方向に $2$ 平行移動したものである。$y=\frac3x$ の焦点は $s=\sqrt6$ として $(\sqrt6,\sqrt6)$、$(-\sqrt6,-\sqrt6)$ なので、このグラフは中心 $(1,2)$、焦点 $(1+\sqrt6,2+\sqrt6)$、$(1-\sqrt6,2-\sqrt6)$、漸近線 $x=1$、$y=2$、差 $2\sqrt6$ の直角双曲線である(平行移動は距離を変えない)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $2a< FF'$(等号にする) | $F(\pm3,0)$、$2a=6$ | 点の集まりが双曲線(2 つの枝)になる(ex-hyp-degenerate の 1) |
| $2a< FF'$(逆向きにする) | $F(\pm3,0)$、$2a=8$ | 条件を満たす点がある(ex-hyp-degenerate の 2) |
| 差に絶対値をつける | $PF'-PF=2a$ だけ | 2 つの枝がそろう(ex-hyp-one-branch) |
$F(3,0)$、$F'(-3,0)$、$FF'=6$ とする。三角不等式から、どの点 $P$ でも $|PF-PF'|\le FF'=6$ である。
$F(5,0)$、$F'(-5,0)$ で、絶対値をつけずに $PF'-PF=6$ とすると、thm-hyp-standard の証明の段 5 から、満たす点は右の枝 $\frac{x^2}9-\frac{y^2}{16}=1$、$x\ge3$ だけである。ex-hyp-start-difference の点 $\left(-5,\frac{16}3\right)$ では $PF'-PF=-6$ で、この条件を満たさない。
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