被覆空間作用

同義語:covering space action

概要

被覆空間作用(covering space action)とは、群 $G$ の空間 $Y$ への同相写像による作用で、各点が開近傍 $U$ をもち、$G$ の異なる元 $g_1,g_2$ について $g_1U$ と $g_2U$ が交わらないものである。このとき商写像 $Y\to Y/G$ は被覆写像で、$Y$ が連結なら被覆変換群は $G$ に一致し、$Y$ が単連結なら $\pi_1(Y/G)\cong G$ となる。有限群の Hausdorff 空間への自由な作用はこの条件を満たし、トーラス・実射影空間・レンズ空間はいずれも被覆空間作用の商として得られる。一方、$\mathbb{R}^2\setminus\{0\}$ への $(x,y)\mapsto(2x,y/2)$ の作用のように、商が Hausdorff でない被覆空間作用もある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 群の作用, 被覆空間, 商空間(位相), 基本群

群 $G$ が空間 $Y$ に同相写像で作用し、各点が「$G$ の異なる二つの元で動かした像が互いに交わらない」近傍をもつとき、この作用を被覆空間作用という。このとき軌道空間への商写像 $Y\to Y/G$ は被覆写像になり、$Y$ が単連結なら $Y/G$ の基本群は $G$ そのものになる。トーラス、実射影空間、レンズ空間、Klein の壺はこうして得られる。一方、被覆空間作用による商は Hausdorff とは限らず、平面から原点を除いた空間への $(x,y)\mapsto(2x,y/2)$ の作用がその例になる。この記事では、商写像が被覆写像であること、商の基本群の計算、被覆空間作用であるための判定法を証明し、条件を外したときの反例を確かめる。

定義

群 $G$ が位相空間 $Y$ に左から作用し(群の作用)、各 $g\in G$ について $y\mapsto gy$ が連続であるとする。$g^{-1}$ の作用が逆写像なので、各 $g$ は $Y$ の同相写像である。軌道 $Gy$ による同値関係の商空間(位相)を軌道空間 $Y/G$ と書き、商写像を $q\colon Y\to Y/G$ とする。

被覆空間作用

群 $G$ の $Y$ への作用が被覆空間作用(covering space action)であるとは、各点 $y\in Y$ が開近傍 $U$ で、
$$ g_1\neq g_2\ \Longrightarrow\ g_1U\cap g_2U=\emptyset\qquad(g_1,g_2\in G) $$
を満たすものをもつことをいう。このような $U$ を $y$ の分離近傍とよぶ。

$g_1U\cap g_2U=g_1(U\cap g_1^{-1}g_2U)$ なので、条件は「単位元 $e$ 以外のすべての $g$ について $U\cap gU=\emptyset$」と同値である。とくに $gy=y$ なら $y\in U\cap gU$ なので $g=e$ であり、被覆空間作用は自由な作用である。名前は Hat02 §1.3(p. 72)による。この条件を「自由で固有不連続な作用」とよぶ文献もある(被覆空間 の命題「自由で固有不連続な作用から得られる被覆」)。ただし「固有不連続」はコンパクト集合についての別の条件を指すこともあり、二つは一致しない(rem-csa-proper)。

商写像は開写像

任意の群作用について、$q\colon Y\to Y/G$ は開写像である。

$W\subset Y$ が開集合なら、$q^{-1}(q(W))=\bigcup_{g\in G}gW$ は開集合の和で開集合である。商位相の定義により $q(W)$ は開集合である。$\square$

直感

分離近傍 $U$ の像 $gU$($g\in G$)は互いに重ならない「タイル」で、$G$ はタイルを入れ替えるだけである。軌道空間ではタイルが一枚に重ねられるので、$q(U)$ の上には $G$ の元と同じ枚数のシートが並び、$q$ は被覆写像になる。基点のループを持ち上げると、終点は始点を $G$ のある元で動かした点になり、この元がループの類を $G$ の元に写す。$Y$ が単連結なら、この対応で基本群と $G$ が一致する。

主定理

商写像は被覆写像

群 $G$ の $Y$ への作用が被覆空間作用であるとする。

  1. $q\colon Y\to Y/G$ は被覆写像である。$U$ が $y$ の分離近傍なら $q(U)$ は均一に被覆され、そのシートは $gU$($g\in G$)である。各ファイバー $q^{-1}(q(y))$ は軌道 $Gy$ で、$g\mapsto gy$ は $G$ からファイバーへの全単射である。
  2. $Y$ が空でない連結空間なら、$q$ の被覆変換群は、$G$ の元が定める同相写像 $y\mapsto gy$ の全体にちょうど一致する。異なる元は異なる被覆変換を定め、被覆変換群は各ファイバーに推移的に作用する。

1:$V:=q(U)$ は lem-csa-open により開集合で、$q^{-1}(V)=\bigcup_{g\in G}gU$ は互いに交わらない開集合の和である。$q|_U\colon U\to V$ は全射で連続であり、開集合 $U$ への制限なので開写像でもある。単射であることを示す。$u,u'\in U$ で $q(u)=q(u')$ なら $u'=gu$ となる $g$ があり、$u'\in U\cap gU$ なので $g=e$、すなわち $u=u'$ である。よって $q|_U$ は同相写像である。$q|_{gU}=q|_U\circ g^{-1}|_{gU}$ も同相写像なので、$V$ は均一に被覆される。各点が分離近傍をもつので $q$ は被覆写像である。ファイバーが軌道であることは定義から、$g\mapsto gy$ が単射であることは作用が自由であることから従う。
2:各 $g$ は同相写像で $q\circ g=q$ を満たすので被覆変換である。$Y$ が空でなく作用が自由なので、異なる元は異なる写像を定める。逆に $\sigma$ を被覆変換とし、点 $y_0\in Y$ をとる。$q(\sigma(y_0))=q(y_0)$ なので、$\sigma(y_0)=gy_0$ となる $g\in G$ がある。$\sigma$ と $g$ はどちらも $q$ の持ち上げ($q\circ\sigma=q=q\circ g$)で $y_0$ において一致するので、$Y$ が連結であることから 被覆空間 の定理「持ち上げの一意性」により $\sigma=g$ である。ファイバーは軌道なので、$G$ はファイバーに推移的に作用する。$\square$

$Y$ が弧状連結かつ局所弧状連結なら、2 の推移性は $q$ が正則被覆であることと同値である(被覆変換群 の系「正則被覆の特徴づけ」)。

商空間の基本群

群 $G$ の作用が被覆空間作用で、$Y$ が弧状連結空間であるとする。$y_0\in Y$、$b_0:=q(y_0)$ とおく。$b_0$ のループ $\gamma$ に対し、$y_0$ を始点とする $\gamma$ の持ち上げ $\tilde\gamma$ をとると、$\tilde\gamma(1)=gy_0$ となる $g\in G$ がただ一つある。これを $\varphi[\gamma]:=g$ と書く。

  1. $\varphi\colon\pi_1(Y/G,b_0)\to G$ は矛盾なく定まる全射な群準同型である。
  2. $\varphi$ の核は $q_*\pi_1(Y,y_0)$ である。
  3. したがって $q_*\pi_1(Y,y_0)$ は正規部分群で、$\pi_1(Y/G,b_0)/q_*\pi_1(Y,y_0)\cong G$ である。とくに $Y$ が単連結空間なら $\pi_1(Y/G,b_0)\cong G$ である。

持ち上げ $\tilde\gamma$ は 被覆空間 の定理「道の持ち上げ」によりただ一つ存在し、$q(\tilde\gamma(1))=b_0$ から $\tilde\gamma(1)\in Gy_0$ である。$g$ の一意性は作用が自由であることによる。
1:$\gamma\simeq\gamma'$ なら、被覆空間 の系「道のホモトピー類と持ち上げの終点」により $\tilde\gamma(1)=\tilde\gamma'(1)$ なので、$\varphi$ は類の上で定まる。準同型であること:$\varphi[\gamma]=g$、$\varphi[\delta]=h$ とする。道 $t\mapsto g\tilde\delta(t)$ は $q\circ(g\tilde\delta)=q\circ\tilde\delta=\delta$ を満たし、$gy_0=\tilde\gamma(1)$ から始まるので、$\tilde\gamma$ とつないだ $\tilde\gamma\cdot(g\tilde\delta)$ は $\gamma\cdot\delta$ の $y_0$ からの持ち上げである。その終点は $ghy_0$ なので $\varphi([\gamma][\delta])=gh$ である。全射であること:$g\in G$ について、$Y$ は弧状連結なので $y_0$ から $gy_0$ への道 $\alpha$ がある。$q\circ\alpha$ は $b_0$ のループで、その $y_0$ からの持ち上げは $\alpha$ 自身なので、$\varphi[q\circ\alpha]=g$ である。
2:$\varphi[\gamma]=e$ なら $\tilde\gamma$ は $y_0$ のループで、$[\gamma]=[q\circ\tilde\gamma]=q_*[\tilde\gamma]$ である。逆に $y_0$ のループ $\alpha$ について、$q\circ\alpha$ の持ち上げは $\alpha$ で終点は $y_0$ なので、$\varphi(q_*[\alpha])=e$ である。
3:準同型定理による。$Y$ が単連結なら $q_*\pi_1(Y,y_0)$ は自明である。$\square$

$Y$ に局所弧状連結性を仮定していないことに注意する。$q_*$ は単射なので(被覆空間 の定理「基本群との関係」の 1)、短完全列 $1\to\pi_1(Y,y_0)\to\pi_1(Y/G,b_0)\to G\to1$ が得られる。3 の後半は Hat02 Proposition 1.40(p. 72)では $Y$ が弧状連結かつ局所弧状連結な場合に述べられ、§1.3 Exercise 28(p. 82)で局所弧状連結性を外した形が問われている。

被覆空間作用であるための判定

有限性による判定

群 $G$ が Hausdorff空間 $Y$ に自由に作用し、各点 $y$ が近傍 $U$ で $\{g\in G\mid U\cap gU\neq\emptyset\}$ が有限集合になるものをもつとする。このとき作用は被覆空間作用である。とくに、有限群の Hausdorff 空間への自由な作用は被覆空間作用である。

$y$ と $U$ をとり($U$ は開集合としてよい)、$F:=\{g\neq e\mid U\cap gU\neq\emptyset\}$ とおく。$g\in F$ について、作用は自由なので $gy\neq y$ であり、Hausdorff 性から互いに交わらない開集合 $O_g\ni y$、$T_g\ni gy$ がある。
$$ W:=U\cap\bigcap_{g\in F}\bigl(O_g\cap g^{-1}T_g\bigr) $$
は有限個の開集合の共通部分で、$y$ を含む($gy\in T_g$)。$g\in F$ なら $W\subset O_g$、$gW\subset T_g$ なので $W\cap gW=\emptyset$ である。$g\notin F\cup\{e\}$ なら $W\cap gW\subset U\cap gU=\emptyset$ である。よって $W$ は分離近傍である。後半は $G$ が有限なら条件の集合が自動的に有限になることによる。$\square$

これは Hat02 §1.3 Exercise 23(p. 81)の主張である。

有限群の商は Hausdorff

有限群 $G$ が Hausdorff 空間 $Y$ に作用するなら、$Y/G$ は Hausdorff 空間である。

$q(y)\neq q(z)$ とすると、すべての $g$ について $gy\neq z$ である。各 $g$ について互いに交わらない開集合 $O_g\ni gy$、$P_g\ni z$ をとり、$U:=\bigcap_gg^{-1}O_g$、$V:=\bigcap_gP_g$ とおく。どちらも有限個の開集合の共通部分で、$y\in U$、$z\in V$ であり、$gU\subset O_g$、$V\subset P_g$ から $gU\cap V=\emptyset$($g\in G$)である。lem-csa-open により $q(U)$、$q(V)$ は開集合で、$q(u)=q(v)$($u\in U$、$v\in V$)なら $v=gu\in gU\cap V$ となって矛盾するので、二つは交わらない。$\square$

「固有不連続」との違い

「固有不連続な作用」(properly discontinuous action)という語は文献によって意味が違う。Hat02 pp. 72–73 によれば、多くの場合は prop-csa-criterion の有限性の条件(各点が近傍 $U$ で $U\cap gU\neq\emptyset$ となる $g$ が有限個のものをもつ)を指し、固定点を許す。たとえば平面の正六角形のタイル張りの対称性の群はこの条件を満たすが、頂点を固定する回転を含むので被覆空間作用でない。別の流儀では、コンパクト集合 $K$ ごとに $K\cap gK\neq\emptyset$ となる $g$ が有限個であることを指す。局所コンパクト Hausdorff 空間への自由な作用がこの意味で固有不連続なら、各点のコンパクトな近傍 $K$ の内部を $U$ として prop-csa-criterion が使えるので、被覆空間作用である。逆は成り立たない:ex-csa-hyperbolic の作用は被覆空間作用だが、コンパクト集合の意味では固有不連続でない。

例

格子による平行移動とトーラス

$\mathbb Z^n$ は $\mathbb R^n$ に平行移動 $v\mapsto v+m$ で作用する。各点を中心とする半径 $\frac12$ の開球 $U$ について、$m\neq0$ なら $U\cap(U+m)=\emptyset$ なので、被覆空間作用である。商 $\mathbb R^n/\mathbb Z^n$ は $n$ 次元トーラス $T^n$ である(トーラス の定理「トーラスの基本的な性質」の後の記述)。$\mathbb R^n$ は凸なので単連結であり、thm-csa-pi1 により $\pi_1(T^n)\cong\mathbb Z^n$ である。

実射影空間とレンズ空間

位数 $2$ の群 $\{\pm1\}$ は球面 $S^n$ に $x\mapsto\pm x$ で自由に作用し、$S^n$ は Hausdorff なので、prop-csa-criterion により被覆空間作用である。商は実射影空間 $\mathbb{RP}^n$ であり、$n\ge2$ なら $S^n$ は単連結(単連結空間 の命題「球面の単連結性」)なので、thm-csa-pi1 により $\pi_1(\mathbb{RP}^n)\cong\mathbb Z/2\mathbb Z$ である。同様に、$p$ と互いに素な整数 $q_1,\dots,q_n$ について $\mathbb Z/p\mathbb Z$ が $S^{2n-1}\subset\mathbb C^n$ に $(z_j)\mapsto(\zeta_p^{q_jm}z_j)$ で作用するとき($\zeta_p:=e^{2\pi i/p}$)、$q_j$ と $p$ は互いに素なので各 $j$ について $\zeta_p^{q_jm}=1$ となるのは $m\equiv0\pmod p$ のときだけであり、$S^{2n-1}$ の点はどれかの成分が $0$ でないから作用は自由である。よって prop-csa-criterion により被覆空間作用であり、商のレンズ空間の基本群は $n\ge2$ なら $\mathbb Z/p\mathbb Z$ である。被覆変換群 の例「トーラスから Klein の壺への 2 重被覆」は、同じ方法でKleinの壺の基本群を求めている。

反例:商が Hausdorff でない被覆空間作用

双曲的な線形写像の作用

$Y:=\mathbb R^2\setminus\{0\}$ とし、$\phi(x,y):=(2x,\tfrac12y)$ が生成する群 $\mathbb Z$ の作用($n\cdot v:=\phi^n(v)$)を考える。

  1. この作用は被覆空間作用である。
  2. 軌道空間 $Y/\mathbb Z$ は Hausdorff でない。
  3. $Y/\mathbb Z$ は、$Y$ の四つの開半平面 $\{x>0\}$、$\{x<0\}$、$\{y>0\}$、$\{y<0\}$ の像である四つの開集合の和で、それぞれは $S^1\times\mathbb R$ と同相である。
  4. $Y$ は弧状連結で $\pi_1(Y)\cong\mathbb Z$ なので、thm-csa-pi1 により短完全列 $1\to\mathbb Z\to\pi_1(Y/\mathbb Z)\to\mathbb Z\to1$ がある。

1:$(x,y)\in Y$ で $x\neq0$ とする。$U:=\{(x',y')\in Y\mid x'x>0,\ 2^{-1/2}|x|<|x'|<2^{1/2}|x|\}$ は開近傍で、$\phi^n(U)$ の点の第 1 座標の絶対値は区間 $(2^{n-1/2}|x|,2^{n+1/2}|x|)$ に入る。$n\neq0$ ならこの区間は $n=0$ の区間と交わらないので $U\cap\phi^n(U)=\emptyset$ である。$x=0$ なら $y\neq0$ で、第 2 座標について同じ議論をする($\phi^n$ は第 2 座標を $2^{-n}$ 倍する)。
2:$p:=(1,0)$ と $p':=(0,1)$ の軌道はそれぞれ $x$ 軸上と $y$ 軸上にあるので、$q(p)\neq q(p')$ である。$w_n:=(1,2^{-n})$ とおくと $w_n\to p$、$\phi^{-n}(w_n)=(2^{-n},1)\to p'$ である。$q(p)$ と $q(p')$ が交わらない開近傍 $A,B$ をもつとすると、十分大きい $n$ で $w_n\in q^{-1}(A)$、$\phi^{-n}(w_n)\in q^{-1}(B)$ となり、$q(w_n)=q(\phi^{-n}(w_n))\in A\cap B$ が矛盾を生む。
3:四つの開半平面は $\phi$ で不変で、$Y$ を覆う。$\{x>0\}$ について、$\Psi(x,y):=(\log_2x,\,xy)$ は $\{x>0\}$ から $\mathbb R^2$ への同相写像(逆写像は $(s,t)\mapsto(2^s,2^{-s}t)$)で、$\Psi\circ\phi=\tau\circ\Psi$($\tau(s,t):=(s+1,t)$)を満たす。不変な開集合 $W\subset Y$ について、$q|_W\colon W\to q(W)$ は開かつ連続な全射なので商写像であり、$q(W)$ は $W/\mathbb Z$ と同相である。よって $q(\{x>0\})\cong\mathbb R^2/\langle\tau\rangle\cong S^1\times\mathbb R$ である(最後の同相は $(s,t)\mapsto(e^{2\pi is},t)$ による)。ほかの三つも同様である($\{y>0\}$ では $(-\log_2y,\,xy)$ を使う)。
4:$Y$ は $S^1$ を変位レトラクトにもつので $\pi_1(Y)\cong\mathbb Z$ であり(基本群 の注意「反例:円周は単連結でない」)、$q_*$ は単射である。$\square$

$Y/\mathbb Z$ は局所的には平面と同相だが Hausdorff でない。2 の点列は、コンパクト集合 $K:=\{v\mid|v-p|\le\frac12\}\cup\{v\mid|v-p'|\le\frac12\}$ が無限個の $n$ について $\phi^{-n}(K)\cap K\neq\emptyset$ を満たすことも示しており、作用はコンパクト集合の意味では固有不連続でない(rem-csa-proper)。同じ型の写像を $\mathbb C^2\setminus\{0\}$ で考えた例が Hopf曲面 の反例の表にある。Hat02 §1.3 Exercise 25(p. 81)はこの例の基本群をさらに詳しく求めさせている。

条件を外した反例

prop-csa-criterion と prop-csa-hausdorff の仮定を一つずつ外す。

外す条件反例成り立たなくなること
作用が自由(prop-csa-criterion)$\{\pm1\}$ が $\mathbb R$ に $x\mapsto\pm x$ で作用被覆空間作用であること、$q$ が被覆写像であること
$U\cap gU\neq\emptyset$ となる $g$ が有限個(prop-csa-criterion)$\mathbb Z$ が $S^1$ に無理数角の回転で作用被覆空間作用であること
$Y$ が Hausdorff(prop-csa-criterion)原点を2つもつ直線と原点を入れ替える反転被覆空間作用であること
$G$ が有限(prop-csa-hausdorff)ex-csa-hyperbolic$Y/G$ が Hausdorff であること
反例の確かめ

1 行目:群は有限で $\mathbb R$ は Hausdorff だが、$-1$ は $0$ を固定するので作用は自由でない。$q^{-1}(q(0))=\{0\}$ は 1 点、$t\neq0$ について $q^{-1}(q(t))=\{\pm t\}$ は 2 点である。$q(0)$ のどの開近傍 $V$ も、$q^{-1}(V)$ が $0$ の開近傍なので小さい $t\neq0$ の像を含む。被覆写像のファイバーの濃度は局所的に一定である(被覆空間 の命題「ファイバーの濃度の局所定数性」)から、$q$ は被覆写像でなく、thm-csa-covering により作用は被覆空間作用でない。
2 行目:$\alpha$ を無理数とし、$n\in\mathbb Z$ を $z\mapsto e^{2\pi in\alpha}z$ として $S^1\subset\mathbb C$ に作用させる。$e^{2\pi in\alpha}=1$ なら $n\alpha\in\mathbb Z$ で $n=0$ なので、作用は自由である。$S^1$ は Hausdorff である。$z\in S^1$ の任意の近傍 $U$ は、ある $\varepsilon>0$ について弧 $\{e^{i\theta}z\mid|\theta|<\varepsilon\}$ を含む。$N>2\pi/\varepsilon$ をとると、$N+1$ 個の数 $k\alpha-\lfloor k\alpha\rfloor$($0\le k\le N$)のうち二つは区間 $[0,1)$ の長さ $\frac1N$ の小区間の同じものに入るので、$n\neq0$ と整数 $m$ で $|n\alpha-m|<\frac1N$ となるものがある。このとき $e^{2\pi in\alpha}z$ は上の弧に入るので $U\cap(n\cdot U)\ni e^{2\pi in\alpha}z$ である。$N$ を大きくすると $|n\alpha-m|$ はいくらでも小さくなり、$n\alpha\notin\mathbb Z$ なので、このような $n$ は無限個ある。よって有限性の条件が破れ、作用は被覆空間作用でもない。
3 行目:原点を2つもつ直線 $L$ を、$\mathbb R\times\{1,2\}$ で $x\neq0$ について $(x,1)\sim(x,2)$ とした商とし、$j_i(x)$ を $(x,i)$ の類、$0_i:=j_i(0)$ とする(原点を2つもつ直線 の定義「原点を2つもつ実直線」)。$(x,i)\mapsto(-x,3-i)$ は同値関係を保つので連続写像 $\tau\colon L\to L$ を誘導し、$\tau\circ\tau=\mathrm{id}$ である。$x\neq0$ なら $\tau(j_1(x))=j_1(-x)\neq j_1(x)$、また $\tau(0_1)=0_2$ なので、位数 $2$ の群 $\{\mathrm{id},\tau\}$ は自由に作用し、群は有限である。$L$ は Hausdorff でない(原点を2つもつ直線 の命題「原点を2つもつ実直線の基本性質」)。$0_1$ の任意の開近傍 $U$ について $j_1^{-1}(U)$ は $0$ の開近傍なので、ある $\varepsilon>0$ について $P:=\{j_1(x)\mid0<|x|<\varepsilon\}\subset U$ である。$\tau(P)=P$ なので $P\subset U\cap\tau U$ であり、作用は被覆空間作用でない。
4 行目:$\mathbb Z$ は無限群で、$Y=\mathbb R^2\setminus\{0\}$ は Hausdorff であり、作用は被覆空間作用である(ex-csa-hyperbolic の 1)。商 $Y/\mathbb Z$ は Hausdorff でない(同じ例の 2)。

関連項目

参考文献

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