双対加群

同義語:dual module

概要

双対加群(dual module)とは、環 $R$ 上の加群 $M$ から $R$ への $R$ 線形写像の全体 $M^*=\operatorname{Hom}_R(M,R)$ に、値への右からの掛け算で右加群の構造を入れたものであり、体上の双対空間を環上に広げた概念である。双対をとる操作は直和を直積に移し、右完全列を左完全列に移す。$M$ が有限生成射影加群なら、$M^*$ も有限生成射影的で、評価写像 $M\to M^{**}$ は同型になり、可換環上では $M^*\otimes_RN\cong\operatorname{Hom}_R(M,N)$ が成り立つ。とくに可逆加群では $M\otimes_RM^*\cong R$ となって双対が Picard 群の逆元を与える一方、$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ のように双対が $0$ になる加群もある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 加群, 双対空間(線形代数), 射影加群, テンソル積

ベクトル空間 $V$ の 双対空間(線形代数) $V^*$ は、$V$ から係数体への線形写像の全体である。係数を環 $R$ に取り替えたものが 双対加群 $M^*=\operatorname{Hom}_R(M,R)$ である。体の上では有限次元なら $V\cong V^{**}$ が成り立つが、環の上では事情が変わる。$\mathbb{Z}$ 加群 $\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ の双対は $0$ で、双対をとると情報が丸ごと消える。有限生成でねじれのない加群でも、$M\to M^{**}$ が同型にならないことがある。
この記事の主定理は、有限生成射影加群 ではこうした不都合が起こらないことを示す。有限生成射影加群 $M$ について、双対 $M^*$ も有限生成射影的で、$M\to M^{**}$ は同型になり、可換環の上では $M^*\otimes_RN\cong\operatorname{Hom}_R(M,N)$ が成り立つ。さらに階数 $1$ の射影加群(可逆加群)では $M\otimes_RM^*\cong R$ となり、双対は Picard群 での逆元を与える。証明は「$R$ では明らかに同型で、同型は有限な直和と直和因子に受け継がれる」という一つの補題に集約される。

定義

$R$ を単位元をもつ環(可換とは限らない)とする。加群は断らない限り左 $R$ 加群とする。

双対加群

左 $R$ 加群 $M$ について、$R$ 線形写像 $M\to R$ の全体
$$ M^*=\operatorname{Hom}_R(M,R) $$
に、$(\varphi+\psi)(m)=\varphi(m)+\psi(m)$ と $(\varphi r)(m)=\varphi(m)\,r$($r\in R$)で和と右からのスカラー倍を入れた右 $R$ 加群を、$M$ の 双対加群(dual module)という。$\varphi\in M^*$、$m\in M$ について $\langle\varphi,m\rangle=\varphi(m)$ と書くこともある。

$\varphi r$ が再び左 $R$ 線形であるのは、$(\varphi r)(sm)=s\varphi(m)r$ だからである。左からの $r\varphi$ は一般には左 $R$ 線形にならないので、双対は右加群になる。$R$ が可換なら左右の区別はなく、$M^*$ は $R$ 加群である(双線形写像 の例「積として現れる双線形写像」の 7「評価の対」は、このときの $M^*\times M\to R$ である)。右加群の双対 $\operatorname{Hom}_R(P,R)$ も同様に、$(r\varphi)(p)=r\varphi(p)$ で左加群になる。

双対写像と評価写像
  1. $R$ 線形写像 $f\colon M\to N$ について、$f^*(\psi)=\psi\circ f$ で定まる右 $R$ 線形写像 $f^*\colon N^*\to M^*$ を $f$ の 双対写像 という。
  2. $M^{**}=(M^*)^*$ を右加群 $M^*$ の双対(左加群)とし、
    $$ \mathrm{ev}_M\colon M\to M^{**},\qquad\mathrm{ev}_M(m)(\varphi)=\varphi(m) $$
    を 評価写像 という。$\mathrm{ev}_M$ が同型のとき、$M$ は 反射的(reflexive)であるという。

$\mathrm{ev}_M(m)$ は右 $R$ 線形($\mathrm{ev}_M(m)(\varphi r)=\varphi(m)r$)で、$\mathrm{ev}_M$ は左 $R$ 線形($\mathrm{ev}_M(sm)(\varphi)=s\varphi(m)$)である。$f\colon M\to N$ について $f^{**}\circ\mathrm{ev}_M=\mathrm{ev}_N\circ f$ が成り立つ(両辺とも $m$ を $\psi\mapsto\psi(f(m))$ に送る)。$(g\circ f)^*=f^*\circ g^*$、$\mathrm{id}^*=\mathrm{id}$、$(f+g)^*=f^*+g^*$ なので、$M\mapsto M^*$ は左加群の圏から右加群の圏への反変な加法的関手である。

基本性質

直和の双対と左完全性
  1. 加群の族 $(M_i)_{i\in I}$ について、$\varphi\mapsto(\varphi|_{M_i})_i$ は同型 $\bigl(\bigoplus_iM_i\bigr)^*\cong\prod_iM_i^*$ を与える。とくに有限個の直和では $(M_1\oplus\cdots\oplus M_n)^*\cong M_1^*\oplus\cdots\oplus M_n^*$ である。
  2. 完全列 $M'\xrightarrow{f}M\xrightarrow{g}M''\to0$ について、$0\to M''^*\xrightarrow{g^*}M^*\xrightarrow{f^*}M'^*$ は完全である。
  3. $M=R^n$ を標準基底 $e_1,\dots,e_n$ をもつ自由加群とし、$e_i^*\in M^*$ を $e_i^*(e_j)=\delta_{ij}$($\sum_jr_je_j$ を $r_i$ に送る写像)で定めると、$e_1^*,\dots,e_n^*$ は右 $R$ 加群 $M^*$ の基底である。

要点:直和からの写像は各成分への制限で決まり、余核からの写像は $g$ で消える写像と同じである。

詳しい証明を開く

1:直和の普遍性により、$\bigoplus M_i\to R$ は各 $M_i$ への制限の族を任意に与えて一意に決まる。制限は和と右スカラー倍を保つ。

2:$g$ は全射なので $\psi\circ g=0$ なら $\psi=0$ であり、$g^*$ は単射である。$f^*g^*=(g\circ f)^*=0$ である。$\varphi\in M^*$ が $\varphi\circ f=0$ をみたせば、$\varphi$ は $\ker g=\operatorname{im}f$ の上で $0$ なので、$\psi(g(m))=\varphi(m)$ で $\psi\in M''^*$ が矛盾なく定まり、$\varphi=g^*\psi$ である。

3:$\varphi\in M^*$ について $\varphi(\sum_jr_je_j)=\sum_jr_j\varphi(e_j)=\sum_je_j^*(\cdot)\varphi(e_j)$ なので $\varphi=\sum_je_j^*\varphi(e_j)$ と書ける。$\sum_je_j^*c_j=0$ なら $e_i$ での値 $c_i$ が $0$ である。$\square$

2 の右端は一般には全射にならない(ex-dualmod-torsion)。$R$ が可換なら、3 の基底で $f\colon R^n\to R^m$ を行列 $X$ で表すとき、$f^*$ の行列は転置 ${}^tX$ である($f^*(e_i^*)(e_j)=e_i^*(f(e_j))=X_{ij}$)。体の上では 双対空間(線形代数) の定理「双対写像の性質と転置行列」にあたる。

主定理:有限生成射影加群の双対

射影加群 の定理「射影加群の特徴づけ」により、左 $R$ 加群 $M$ が有限生成射影的であることは、ある $M'$ と $n$ について $M\oplus M'\cong R^n$ となること($R^n$ の直和因子であること)と同値である。以下の証明はすべて次の補題に帰着する。

直和因子への受け継ぎ

$F$、$G$ を左 $R$ 加群の圏からアーベル群の圏への加法的関手で、どちらも共変かどちらも反変なものとし、$\eta\colon F\to G$ を自然変換とする。$\eta_R$ が同型なら、$R^n$ の直和因子であるすべての $M$ について $\eta_M$ は同型である。

要点:$\eta_M$ は同型 $\eta_{R^n}$ の「レトラクト」なので同型である。

詳しい証明を開く

共変の場合を示す(反変の場合は以下で $F(i)$ と $F(p)$ の役割を入れ替える)。加法的関手は有限直和を保つ:$R^n$ の入射 $u_k$ と射影 $v_k$ は $v_ku_l=\delta_{kl}$、$\sum_ku_kv_k=\mathrm{id}$ をみたし、$F$ を施しても同じ等式が成り立つので $F(R^n)\cong F(R)^n$ であり、自然性から $\eta_{R^n}$ は $\eta_R$ の $n$ 個の直和と同一視され、同型である。

$M\oplus M'\cong R^n$ から、$i\colon M\to R^n$、$p\colon R^n\to M$ で $p\circ i=\mathrm{id}_M$ となるものがとれる。$\theta=F(p)\circ\eta_{R^n}^{-1}\circ G(i)\colon G(M)\to F(M)$ とおくと、自然性 $\eta_M F(p)=G(p)\eta_{R^n}$、$\eta_{R^n}F(i)=G(i)\eta_M$ から

$$\eta_M\theta=G(p)\,\eta_{R^n}\eta_{R^n}^{-1}G(i)=G(pi)=\mathrm{id},\qquad\theta\eta_M=F(p)\,\eta_{R^n}^{-1}\eta_{R^n}F(i)=F(pi)=\mathrm{id}$$

である。$\square$

有限生成射影加群の双対

$M$ を有限生成射影的な左 $R$ 加群とする。

  1. $M^*$ は有限生成射影的な右 $R$ 加群である。
  2. 評価写像 $\mathrm{ev}_M\colon M\to M^{**}$ は同型である。すなわち $M$ は反射的である。
    以下 $R$ を可換環とする。
  3. すべての $R$ 加群 $N$ について、
    $$ \theta_M\colon M^*\otimes_RN\to\operatorname{Hom}_R(M,N),\qquad\theta_M(\varphi\otimes n)(m)=\varphi(m)\,n $$
    は同型である。とくに $N=M$ として $M^*\otimes_RM\cong\operatorname{End}_R(M)$ である。
  4. 素イデアル $\mathfrak p$ について、$\lambda\colon(M^*)_{\mathfrak p}\to(M_{\mathfrak p})^*=\operatorname{Hom}_{R_{\mathfrak p}}(M_{\mathfrak p},R_{\mathfrak p})$、$\lambda(\varphi/s)(m/t)=\varphi(m)/(st)$ は同型である。
  5. すべての素イデアル $\mathfrak p$ で $M_{\mathfrak p}\cong R_{\mathfrak p}$ なら、$\varepsilon\colon M\otimes_RM^*\to R$、$m\otimes\varphi\mapsto\varphi(m)$ は同型である。
$R$ で確かめて直和因子に移す

1。 $M\oplus M'\cong R^n$ とすると、prop-dualmod-basic の 1 と 3 により $M^*\oplus M'^*\cong(R^n)^*$ は階数 $n$ の自由右加群なので、$M^*$ はその直和因子として有限生成射影的である。
2。 $\mathrm{ev}$ は恒等関手から共変関手 $M\mapsto M^{**}$ への自然変換である(def-dualmod-ev のあとの式)。$M=R$ では、$R^*\to R$、$\varphi\mapsto\varphi(1)$ が右加群の同型($\varphi(r)=r\varphi(1)$ なので $\varphi$ は $\varphi(1)$ で決まり、どの値もとれる)で、同様に $R^{**}\cong R$、$\Psi\mapsto\Psi(\mathrm{id}_R)$ である。この同一視で $\mathrm{ev}_R(r)$ は $\mathrm{ev}_R(r)(\mathrm{id}_R)=r$ に対応するので、$\mathrm{ev}_R$ は恒等写像にあたり同型である。lem-dualmod-summand により $\mathrm{ev}_M$ は同型である。
3。 $\theta_M$ は well-defined($(\varphi,n)\mapsto(m\mapsto\varphi(m)n)$ は $R$ 双線形)で、$M$ について反変な 2 つの加法的関手 $M\mapsto M^*\otimes_RN$、$M\mapsto\operatorname{Hom}_R(M,N)$ の間の自然変換である($f\colon M\to M'$ について、$\theta_M((f^*\psi)\otimes n)(m)=\psi(f(m))n=\theta_{M'}(\psi\otimes n)(f(m))$)。$M=R$ では、$R^*\otimes_RN\cong N$($\varphi\otimes n\mapsto\varphi(1)n$)、$\operatorname{Hom}_R(R,N)\cong N$($h\mapsto h(1)$)と同一視すると $\theta_R$ は $\theta_R(\varphi\otimes n)(1)=\varphi(1)n$ なので恒等写像にあたる。lem-dualmod-summand により $\theta_M$ は同型である。
4。 $\lambda$ の well-defined 性:$\varphi/s=\varphi'/s'$ なら $u(s'\varphi-s\varphi')=0$($u\notin\mathfrak p$)で、両辺の値は $R_{\mathfrak p}$ で一致する。$m/t$ の表し方にもよらない。$\lambda$ は反変な加法的関手 $M\mapsto(M^*)_{\mathfrak p}$、$M\mapsto(M_{\mathfrak p})^*$ の間の自然変換で、$M=R$ では両辺とも $R_{\mathfrak p}$ と同一視され($\varphi/s\mapsto\varphi(1)/s$、$\chi\mapsto\chi(1/1)$)、$\lambda$ は恒等写像にあたる。lem-dualmod-summand により同型である。
5。 素イデアル $\mathfrak p$ で局所化すると、局所化 の命題「局所化とテンソル積」、テンソル積の結合法則による同型 $R_{\mathfrak p}\otimes_R(M\otimes_RM^*)\cong(R_{\mathfrak p}\otimes_RM)\otimes_{R_{\mathfrak p}}(R_{\mathfrak p}\otimes_RM^*)$ と 4 により
$$ (M\otimes_RM^*)_{\mathfrak p}\cong M_{\mathfrak p}\otimes_{R_{\mathfrak p}}(M^*)_{\mathfrak p}\xrightarrow[\ \lambda\ ]{\sim}M_{\mathfrak p}\otimes_{R_{\mathfrak p}}(M_{\mathfrak p})^* $$
となり、$\varepsilon_{\mathfrak p}$ はこの同一視で $R_{\mathfrak p}$ 加群 $M_{\mathfrak p}$ の同じ形の写像 $m'\otimes\chi\mapsto\chi(m')$ にあたる($(m/1)\otimes\lambda(\varphi/s)\mapsto\varphi(m)/s$)。$M_{\mathfrak p}\cong R_{\mathfrak p}$ なので、これは $R_{\mathfrak p}\otimes R_{\mathfrak p}^*\to R_{\mathfrak p}$、$a\otimes\chi\mapsto\chi(a)=a\chi(1)$ と同型で、同型である。よって $\ker\varepsilon$ と $\operatorname{Coker}\varepsilon$ の局所化はすべて $0$ であり(局所化 の命題「局所化の完全性」)、命題「零加群であることの局所判定」により $\varepsilon$ は同型である。$\square$

5 の加群は可逆加群(可逆層 の加群版)であり、$M\otimes_RM^*\cong R$ は、Picard群 の群構造で $M^*$ の類が $M$ の類の逆元であることを述べている。Cartier双対 で有限局所自由加群 $M$ の双対 $M^\vee=\operatorname{Hom}_R(M,R)$ を使うのは、2 と 3 によって $M^{\vee\vee}=M$、$M^\vee\otimes M\cong\operatorname{End}(M)$ のように双対を取る操作が情報を失わないからである。有限生成射影加群と有限局所自由加群が同じものであることは、有限射影加群 の定理「有限射影加群の局所自由判定」による。

例

自由加群と双対基底

$R$ が可換で $M=R^n$ なら、prop-dualmod-basic の 3 の双対基底により $M^*\cong R^n$ で、$\mathrm{ev}_M$ は $e_i\mapsto(e_i^*)^*$ と書ける。この同型 $M\cong M^*$($e_i\mapsto e_i^*$)は基底の選び方による(体の場合は 双対空間(線形代数) の例「反例:基底から作る同型は基底に依存する」)が、$\mathrm{ev}_M$ は基底によらない。

可逆イデアルの双対

$R$ を整域、$K$ をその商体、$I\subset R$ を $0$ でないイデアルとする。$\varphi\in I^*$ と $0\ne a,b\in I$ について $a\varphi(b)=\varphi(ab)=b\varphi(a)$ なので、$c=\varphi(a)/a\in K$ は $a$ によらず、$\varphi(x)=cx$ である。よって
$$ I^*\cong(R:I)=\{c\in K\mid cI\subset R\} $$
である。$I$ が可逆イデアル($I(R:I)=R$)なら、これは $I^{-1}$ であり、5 の $I\otimes I^*\to R$ の像は $I\,I^{-1}=R$ である。たとえば $R=\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$、$I=(2,1+\sqrt{-5})$ は射影的だが自由でない(射影加群 の例「Dedekind 整域の単項でないイデアル」)。

ねじれ加群の双対

$R=\mathbb{Z}$、$M=\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$($n\ge2$)なら、$\varphi\in M^*$ について $n\varphi(1)=\varphi(n\cdot1)=0$ なので $\varphi=0$ であり、$M^*=0$、$M^{**}=0$ である。$\mathrm{ev}_M$ は単射でない。また、完全列 $\mathbb{Z}\xrightarrow{n}\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}\to0$ の双対は $0\to0\to\mathbb{Z}\xrightarrow{n}\mathbb{Z}$ で、右端の $n$ 倍は全射でない。$\mathbb{Q}$ も同様で、$\varphi(1)=k\varphi(1/k)$ がすべての $k\ge1$ で割り切れることから $\mathbb{Q}^*=0$ である。

有限生成でねじれのない反射的でない加群

$k$ を体、$R=k[x,y]$、$\mathfrak m=(x,y)$ とする。$\varphi\in\mathfrak m^*$ について $x\varphi(y)=\varphi(xy)=y\varphi(x)$ であり、$R$ は一意分解整域なので $x\mid\varphi(x)$、すなわち $\varphi(x)=xr$ と書け、$\varphi(y)=yr$ となる。よって $\varphi$ は $r$ 倍で、$\mathfrak m^*\cong R$($r\leftrightarrow r$ 倍)であり、$\mathfrak m^{**}\cong R^*\cong R$ である。この同一視で $\mathrm{ev}_{\mathfrak m}(m)$ は $1$ 倍写像での値 $m$ にあたるので、$\mathrm{ev}_{\mathfrak m}$ は包含 $\mathfrak m\hookrightarrow R$ であり、全射でない。$\mathfrak m$ は有限生成でねじれもないが、反射的でない(したがって射影的でもない)。

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
$M$ が有限生成体 $k$ 上の可算次元のベクトル空間 $V=k^{(\mathbb{N})}$(自由加群)thm-dualmod-fgp の 2:$\mathrm{ev}_V$ が全射
$M$ が射影的$R=\mathbb{Z}$、$M=\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$2:$\mathrm{ev}_M$ が単射、3:$\theta_M$ が同型
すべての $\mathfrak p$ で $M_{\mathfrak p}\cong R_{\mathfrak p}$(階数 $1$)$R$ を $0$ でない可換環、$M=R^2$5:$\varepsilon$ が単射
確かめ

1 行目:$V$ は無限次元なので、双対空間(線形代数) の定理「二重双対への自然な写像」の 4 により $\mathrm{ev}_V$ は全射でない。$V^*\cong k^{\mathbb{N}}$ である。

2 行目:ex-dualmod-torsion で $M^{**}=0$ なので $\mathrm{ev}_M$ は単射でない。$N=M$ とすると $M^*\otimes M=0$ だが $\operatorname{Hom}(M,M)\cong\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\ne0$ である。

3 行目:$M\otimes M^*\cong R^2\otimes R^2\cong R^4$ で、$\varepsilon$ は $e_i\otimes e_j^*\mapsto\delta_{ij}$ なので $e_1\otimes e_2^*\ne0$ を $0$ に送る($R^4$ の基底の元なので $0$ でない)。

無限生成の自由加群については、双対が自由ですらないことがある。$\mathbb{Z}$ 上の可算階数の自由加群の双対 $\mathbb{Z}^{\mathbb{N}}$ は自由でも射影的でもない(DF04 §10.5 Exercise 13、p. 404。演習であり、この記事では証明しない)。

補足

文献

双対加群の定義と右加群の構造、有限生成自由加群・有限生成射影加群の双対は DF04 §10.5 Exercise 11(p. 404)に演習として述べられている。階数 $1$ の局所自由加群 $M$ について $M\otimes\operatorname{Hom}(M,R)\cong R$ となることは AK13 Exercise (25.18)(p. 154)とその解答(p. 245。局所化で評価写像を確かめる方法)にある。直和因子への受け継ぎによる thm-dualmod-fgp の証明は記事の中で完結している。

関連項目

参考文献

[1]
David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., John Wiley & Sons, 2004, §10.5 Exercises 11(双対加群の定義と右加群の構造、有限生成自由・射影加群の双対)・13(可算階数の自由 Z 加群の双対は自由でも射影的でもない)、p. 404

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